(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、四輪自動車等の車両においては、駆動システムに内燃機関であるエンジンと電動モータとを協働して用いるハイブリッド自動車が普及してきている。
【0003】
かかるハイブリッド自動車においては、エンジンと電動モータとを協働した状態で稼働させる電子制御装置の一つとして、電力変換装置を内蔵した電力制御装置が用いられている。このような電力変換装置は、相対的に大きな電力を入出力するものであるため、電気配線として、金属材から成る平板状の複数のバスバーが配策されている。
【0004】
かかる複数のバスバーは、電力変換の際にスイッチング動作を行う複数の半導体素子等が収容されたケース内に配策されるものであるため、電力変換装置のサイズを不要に増大しないようにケース内に配策される必要がある。
【0005】
かかる状況下で、特許文献1は、電力半導体装置及びインバータブリッジモジュールに関し、筐体の第1の側面から引き出された第1のコレクタ端子5と、筐体の第1の側面から引き出された第1のエミッタ端子6と、筐体の第1の側面と反対側の第2の側面から引き出され、第1のコレクタ端子5又は第1のエミッタ端子6と筐体内部で電気的に接続された第2のコレクタ端子7又は第2のエミッタ端子8と、を備えた少なくとも一対の電力半導体装置を、Pバスバー1とNバスバー2とを挟むように配置し、出力端子を第2のコレクタ端子7又は第2のエミッタ端子8から取り出すことにより、Pバスバー1とNバスバー2とを近接して平行に並置した構成を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1の構成においては、Pバスバー1とNバスバー2とを近接して平行に並置するものであるため、Pバスバー1及びNバスバー2間の距離を小さく設定することが可能となるが、バスバーにはバッテリの電圧を昇圧等した相対的に大きな電力が入力されるものであるため、バスバーの電圧(電位)を測定することが必要な場合が考えられる。かかる必要性は、バスバーが積層構造になる等のバスバーの構成が複雑になった場合により大きくなる。
【0008】
ここで、本発明者の更なる検討によれば、特許文献1の構成においては、バスバーの電圧を測定する構成は何等開示されてはいないし、仮にバスバーの電圧を測定しようとすると、電圧測定用のハーネスや端子を別途バスバーに接続する必要があり、そのための部品点数や組立工数が増大してしまい、改良の余地がある。
【0009】
本発明は、以上の検討を経てなされたものであり、半田付け性を向上すると共に絶縁性を確保しながら、簡便な構造でバスバーの電圧を測定することができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の目的を達成するべく、本発明は、半導体素子と、前記半導体素子を冷却する冷却器と、前記半導体素子と電気的に接続する回路基板と、前記半導体素子と電気的に接続する積層バスバーと、を備えると共に、前記冷却器の上方に前記半導体素子及び前記積層バスバーを配設し、更にそれらの上方に前記回路基板を配設して、前記半導体素子のスイッチング動作により電力変換機能を呈する電力変換装置において、前記積層バスバーは、絶縁材を介していずれも板状の一対のバスバーが積層された構成を有すると共に、前記一対のバスバーがそれらの幅方向が上下方向になるように垂直配置され、前記積層バスバーは、更に、前記一対のバスバーの各々の一部から分岐して前記回路基板に向かって延在すると共に、前記回路基板と電気的に接続する一対の電圧測定端子を備え、前記一対の電圧測定端子は、前記一対のバスバーに対して対称に配設された態様で、前記一対のバスバーに交差する交差方向に延在しながら前記回路基板に向かって上方に延在して前記回路基板に電気的に接続
し、前記一対のバスバーは、各々、平板状の高背延在部と、前記高背延在部よりも上下方向の長さが短い平板状の低背延在部と、を含み、前記一対の電圧測定端子は、各々、前記高背延在部の上端部から前記交差方向に延在する突出部と、前記突出部から上方に延在する起立部と、を含み、前記突出部の上端は、対応する前記高背延在部の上端と面一に設定され、前記起立部の上部分は、測定端子部に設定されて前記回路基板に電気的に接続されることを第1の局面とする。
【0012】
また、本発明は、第
1の局面に加えて、更に、前記半導体素子を収容する樹脂ケースを備え、前記積層バスバーの一部は、前記樹脂ケースにモールド成形され、前記樹脂ケースは、その周壁の上端面を陥設した一対の凹部を有し、前記一対の電圧測定端子は、前記一対の凹部から対応して上方に対応して延出することを第
2の局面とする。
【0013】
また、本発明は、第
2の局面に加えて、前記一対の凹部は、各々、前記一対の電圧測定端子が対応して延出する部分で前記一対の凹部の底部を突設した凸部を各々有することを第
3の局面とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の本発明の第1の局面にかかる電力変換装置によれば、半導体素子と電気的に接続する積層バスバーが、絶縁材を介していずれも板状の一対のバスバーが積層された構成を有すると共に、一対のバスバーがそれらの幅方向が上下方向になるように垂直配置され、積層バスバーが、更に、一対のバスバーの各々の一部から分岐して回路基板に向かって延在すると共に、回路基板と電気的に接続する一対の電圧測定端子を備え、一対の電圧測定端子が、一対のバスバーに対して対称に配設された態様で、一対のバスバーに交差する交差方向に延在しながら回路基板に向かって上方に延在して回路基板に電気的に接続するものであるため、半田付け性を向上すると共に絶縁性を確保しながら、簡便な構造でバスバーの電圧を測定できる電力変換装置を提供することができる。特に、一対の電圧測定端子が、一対のバスバーに対して対称に配設された態様で、一対のバスバーに交差する交差方向に延在しながら回路基板に向かって上方に延在して回路基板に電気的に接続するものであるため、積層バスバーのリアクタンスへの影響を低減した態様で、部品点数の削減、省スペース化及び全体構成の小型化をすることができると共に、電圧測定端子長を長くすることができて電圧測定経路の熱抵抗が大きくなるため、一対の電圧測定端子から一対のバスバーへの熱引きを小さくすることができ、この結果、フロー半田時等の半田付け性を向上することができる。
【0015】
また、本発明の第
1の局面にかかる電力変換装置によれば、一対のバスバーが、各々、
平板状の高背延在部と、高背延在部よりも上下方向の長さが短い平板状の低背延在部と、を含み、一対の電圧測定端子が、各々、高背延在部の上端部から交差方向に延在する突出部と、突出部から上方に延在する起立部と、を含み、突出部の上端が、対応する高背延在部の上端と面一に設定され、起立部の上部分が、測定端子部に設定されて回路基板に電気的に接続されるものであるため、積層バスバーのリアクタンスを不要に増大させない態様で、一対のバスバーの成形時の歩留まりを向上することができると共に、省スペース化及び全体構成の小型化をすることができる。
【0016】
また、本発明の第
2の局面にかかる電力変換装置によれば、更に、半導体素子を収容する樹脂ケースを備え、積層バスバーの一部が、樹脂ケースにモールド成形され、樹脂ケースが、その周壁の上端面を陥設した一対の凹部を有し、一対の電圧測定端子が、一対の凹部から対応して上方に対応して延出するものであるため、部品点数を削減した態様で、積層バスバーの測定端子部を含む部分を電気的に絶縁しながら、測定端子部の半田付けの際に形成されるフィレットの逃げ空間を確保することができ、この結果、回路基板と積層バスバーとの間隔を狭くすることができて、樹脂ケースのサイズを小さくすることができる。
【0017】
また、本発明の第
3の局面にかかる電力変換装置によれば、一対の凹部が、各々、一対の電圧測定端子が対応して延出する部分で一対の凹部の底部を突設した凸部を各々有するものであるため、一対の電圧測定端子の固定強度及び位置精度を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における電力変換装置につき、詳細に説明する。なお、図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系を成し、z軸の方向は、上下方向に相当するものとする。
【0020】
〔電力制御装置の構成〕
まず、
図1を参照して、本実施形態における電力変換装置が適用される電力制御装置の構成につき、詳細に説明する。
【0021】
図1は、本実施形態における電力変換装置が適用される電力制御装置の構成を示す斜視図である。
【0022】
図1に示すように、電力制御装置1は、その最下部に配置されたロアケース10と、その上に固設されたミドルケース20と、その上に固設されたアッパケース110と、その上に固設されて電力制御装置1の最上部を塞ぐカバー120と、を備え、図示を省略するハイブリッド自動車等の車両に装着される。ロアケース10、ミドルケース20、アッパケース110及びカバー120は、典型的には、いずれもアルミニウム材等の金属製の鋳物又はプレス加工による成形品であり、これらはボルト等の締結部材130で締結されて組立体となる。かかる電力制御装置1は、典型的には、いずれも車両に装着され図示を省
略するが、2次電池であるバッテリから駆動電動モータに供給する電力、及び回生機構からバッテリに供給する電力を制御する。なお、電力制御装置1は、必要に応じ、このように供給される電力の一方のみを制御してもよい。
【0023】
具体的には、ロアケース10は、x−y平面に平行な平面上を上下軸回りに周回するロア周壁12と、その底部を塞ぐ底壁14と、ロア周壁12の四隅に配設されると共に車両への装着部である固定部16と、を備える。ロアケース10内には、図示を省略する平滑コンデンサ等が収容されて装着されると共に、底壁14を介して、それから下方に向かって延出して下端部が外方に露出した3相電流用コネクタが装着される。なお、
図1中では、入力側3相電流用コネクタ18のみを示している。
【0024】
ミドルケース20は、x−y平面に平行な平面上を上下軸回りに周回するミドル周壁22と、それに固設されると共にミドルケース20に対してクーラントを供給するクーラント供給管24と、ミドル周壁22に固設されると共にミドルケース20に対して供給されたクーラントを排出するクーラント排出管26と、ミドル周壁22に連なる張り出し部に固設された直流電流用コネクタ28と、を備える。ミドルケース20内には、図示を省略する昇降圧リアクトルが収容されて装着されると共に、詳細は後述する電力変換装置2が収容されて装着される。なお、昇降圧リアクトルは、バッテリから駆動電動モータに電力が供給される際に昇圧リアクトルとして機能し、回生機構からバッテリに電力が供給される際に降圧リアクトルとして機能する。
【0025】
アッパケース110は、x−y平面に平行な平面上を上下軸回りに周回するアッパ周壁112と、それに装着される入出力信号用コネクタ114と、を備える。アッパケース110内には、図示を省略する電力制御用のECU(Electronic Control Unit)が収容されて装着される。
【0026】
カバー120は、その外周縁部がアッパケース110のアッパ周壁112に固設される板状部材である。ロアケース10のロア周壁12、ミドルケース20のミドル周壁22、アッパケース110のアッパ周壁112、ロアケース10の底壁14、及びカバー120により、それらの内部に収容空間が画成される。
【0027】
〔電力変換装置の構成〕
次に、更に、
図2(a)から
図3(a)をも参照して、本実施形態における電力変換装置の構成につき、詳細に説明する。
【0028】
図2(a)は、本実施形態における電力変換装置の構成を示す斜視図であり、
図2(b)は、本実施形態における電力変換装置の部分拡大平面図である。また、
図3(a)は、
図2(a)のA−A部分拡大断面図である。
【0029】
図2(a)から
図3(a)に示すように、電力変換装置2は、水冷式であり、ミドルケース20に固設されると共にその内部の構成要素を冷却する冷却器40と、その上に固設されたケース50と、その内部に収容されると共に冷却器40上に装着された下回路基板90と、それに電気的に接続されると共にその上に半田層93を介して装着された複数の半導体素子94と、それらが電気的に接続すると共にそれらの上方でケース50の上部に装着された上回路基板100と、下回路基板90、複数の半導体素子94及び上回路基板100に電気的に接続しながら下回路基板90に装着されると共に、ケース50内で複数の半導体素子94間の空間を延在しながらx軸の正負両側で両端部がケース50外に延出してそれに固設され、第1のバスバー60、第2のバスバー70及びそれらの間に配設された絶縁材Iから成る積層バスバーBと、ケース50に固設された出力側3相端子86と、ケース50に固設された入力側3相端子88と、を備える。この結果、冷却器40、下
回路基板90、半田層93、半導体素子94及び上回路基板100は、上下方向に順に積層されて、下回路基板90、半田層93及び半導体素子94は、ケース50内に収容される。かかる電力変換装置2は、典型的には、バッテリからの直流電力を3相電流の電力に変換して駆動電動モータに供給するDC(Direct Current)/AC(Alternate Current)変換機能、及び回生機構からの3相電流の電力を直流電力に変換してバッテリに供給するAC/DC変換機能の双方を有する。なお、電力変換装置2は、必要に応じDC/AC変換機能及びAC/DC変換機能の一方を有していてもよい。
【0030】
冷却器40は、典型的には、アルミ材等の金属製の鋳物成形品であり、クーラント供給管24に連通するクーラント導入管42と、クーラント排出管26に連通するクーラント導出管44と、クーラント導入管42及びクーラント導出管44間を連通するクーラント流路46と、ミドルケース20に固設される4個の支持部48と、を備える。冷却器40は、クーラント流路46内を流れるクーラントにより、下回路基板90及び半田層93を介して複数の半導体素子94を冷却する。
【0031】
ケース50は、典型的には、非導電性の樹脂(合成樹脂)製の成形品であり、x−y平面に平行な平面上を上下軸回りに周回する縦周壁52と、縦周壁52の上面の一部を陥設して形成された一対の凹部54と、一対の凹部54の底部を各々突設して形成された一対の凸部56と、縦周壁52の外側の四隅に形成されると共に冷却器40の支持部48に対応して締結等により装着される装着部58と、を備える。縦周壁52は、x軸に平行な方向が長手方向でy軸に平行な方向が幅方向になる平面視で矩形状の枠体である。
【0032】
出力側3相端子86は、x軸の正方向に順に隣接すると共に、いずれもケース50の縦周壁52のy軸の負方向側の外壁部に固設された出力側U相端子86U、出力側V相端子86V及び出力側W相端子86Wを備える。これらには、複数の半導体素子94の対応する端子が電気的に接続すると共に、ロアケース10に装着された出力側3相電流用コネクタに電気的に接続する。
【0033】
入力側3相端子88は、出力側3相端子86x軸の正方向側でその方向に順に隣接すると共に、いずれもケース50の縦周壁52のy軸の負方向側の外壁部に固設された入力側U相端子88U、入力側V相端子88V及び入力側W相端子88Wを備える。これらには、複数の半導体素子94の対応する端子が電気的に接続すると共に、ロアケース10に装着された入力側3相電流用コネクタ18に電気的に接続する。
【0034】
下回路基板90は、x−y平面に平行に配設されると共に、典型的には、平板状のDCB(Direct Copper Bond)基板であり、アルミナセラミックス基板である絶縁基板91上に銅回路板92を接合した回路基板である。絶縁基板91の下面は、図示を省略する半田層を介してクーラント流路46が形成された冷却器40の上面に装着される。銅回路板92の上面の所定部位には、半田層93が接合される。
【0035】
複数の半導体素子94は、典型的には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体素子であり、半田層93を介して、下回路基板90の銅回路板92上に接合されると共に、それらの端子は、対応して下回路基板90の銅回路板92に電気的に接続される。複数の半導体素子94、ロアケース10内の平滑コンデンサ、及びミドルケース20内の昇降圧リアクトルは、電力変換回路の構成要素である。
【0036】
上回路基板100は、x−y平面に平行に配設されると共に、典型的には、平板状のPCB(Printed Circuit Board)等の回路基板であり、一対の貫通
孔102を有する。上回路基板100の上には複数の半導体素子94を駆動する図示を省略した駆動回路を構成する半導体素子等が実装される。上回路基板100の駆動回路には、複数の半導体素子94の対応する端子が電気的に接続する。かかる駆動回路による駆動制御の下で、複数の半導体素子94が協働してスイッチング動作を行い、電力変換装置2の電力変換機能が実現される。
【0037】
〔バスバーの構成〕
次に、更に、
図3(b)及び
図4をも参照して、本実施形態における電力変換装置の積層バスバーの構成につき、詳細に説明する。
【0038】
図3(b)は、本実施形態における電力変換装置の部分拡大斜視図であり、
図4は、本実施形態における電力変換装置の積層バスバーの構成を示す部分拡大斜視図である。なお、
図3(b)中では、上回路基板の図示を省略している。また、
図3(b)が示す構成は、第1のバスバー60及び第2のバスバー70で共通であるため、
図3(b)中では、第2のバスバー70に関する符号を括弧書きで示している。
【0039】
図3(b)及び
図4に示すように、積層バスバーBは、第1のバスバー60、第2のバスバー70及びそれらの間に配設された絶縁材Iから構成される積層構造体であり、下回路基板90の上方で複数の半導体素子94間の間隙部を通るようにケース50内をその長手方向に延在すると共に、ケース50のx軸の正負両方向側の縦周壁52を貫通してそれらの外部に延出する。第1のバスバー60は、バッテリの負電位に電気的に接続する一方で、第2のバスバー70は、ミドルケース20内の昇降圧リアクトルを介してバッテリの正電位に電気的に接続し、第1のバスバー60に流れる電流及び第2のバスバー70に流れる電流の向きは、逆方向である。絶縁材Iは、電気的な絶縁材であり、必要に応じて接着剤を用いて、第1のバスバー60及び第2のバスバー70をその両側に固設する。
【0040】
具体的には、第1のバスバー60は、その幅方向が上下方向になるように垂直配置された導電性の板状部材、典型的には、金属製の一枚の板状部材から成り、ケース50のx軸の負方向側の縦周壁52の外壁部に固設された第1の負電位接続端子部61と、ケース50のx軸の正方向側の縦周壁52の外壁部に固設された第2の負電位接続端子部62と、第2の負電位接続端子部62のy軸の正方向側の端部に連なってそれから縦周壁52の内方側に延在する高背延在部63と、第1の負電位接続端子部61のy軸の正方向側の端部に連なってそれから縦周壁52の内方側に延在してケース50内を延在する低背延在部64と、高背延在部63及び低背延在部64の間を接続する連絡部65と、を備え、これらはいずれも平板状である。これらは、詳細は後述する負電位側測定端子よりも板幅が相対的に広い部分であり、バスバー本体部に相当する。負電位側測定端子が付加されることをも考慮して、高背延在部63の上下方向に長さ(板幅)H1は、低背延在部64の上下方向に長さ(板幅)H2よりも長くなるように設定されることが、積層バスバーBのリアクタンスを低減する観点から好ましい。第1の負電位接続端子部61、第2の負電位接続端子部62、高背延在部63及び低背延在部64は、板幅が相対的に広い部分であり、バスバー本体部に相当する。連絡部65は、高背延在部63及び低背延在部64がy軸の方向に偏位されているためにそれらを連絡するために付加的に設けられており、これらが同一直線上に連なる場合等には設けられる必要はない。第1の負電位接続端子部61は、ロアケース10内の平滑コンデンサを介してミドルケース20に装着された直流電流用コネクタ28に電気的に接続する。第2の負電位接続端子部62の電位は、バッテリに対する複数の半導体素子94の最下流側の電位である。低背延在部64には、複数の半導体素子94の対応する端子が電気的に接続する。
【0041】
ここで、第1のバスバー60は、更に、高背延在部63のx軸の負方向側の上端部に連なってそれからy軸の負方向側に分岐するように曲げられてその方向に突出しながら連絡
部65の上方を延在する突出部66と、突出部66のy軸の負方向側の端部に連なってそれから上方側に曲げられてその方向に突出しながら延在する起立部67と、起立部67の上構成部分であって上回路基板100に電気的に接続する第1の測定端子部68と、を備える。突出部66、起立部67及び第1の測定端子部68は、高背延在部63及び低背延在部64の各々の板幅方向の長さよりも短い板幅方向の長さを各々有し、実質的に棒状の負電位側測定端子を構成する。突出部66は、負電位側測定端子の全長を長く設定してその端部間の熱抵抗を増大することに寄与し、このことは、第1の測定端子部68を上回路基板100にフロー半田等で半田付けをする際の熱引きを低減して半田付け性を向上することに寄与する。但し、突出部66の突出方向は、y軸の負方向に平行であっても、y軸の負方向に交差する方向であってもよい。突出部66の上端の高さ位置は、第1のバスバー60の成形時の歩留まりを悪化させず、かつ積層バスバーBの上端の高さ位置やケース50の縦周壁52の上端の高さ位置を不要に上昇させない観点から、突出部66の上端と高背延在部63の上端とが面一になって高背延在部63の上端の高さ位置に等しくなるように設定することが好ましい。突出部66及び起立部67は、主として直線状であるが、負電位側測定端子の全長をより長く設定するように湾曲状等に形成してもよい。
【0042】
一方で、第2のバスバー70は、第1のバスバー60と同様に、その幅方向が上下方向になるように垂直配置された導電性の板状部材、典型的には、金属製の一枚の板状部材から成り、ケース50のx軸の負方向側の縦周壁52の外壁部に固設された第1の正電位接続端子部71と、ケース50のx軸の正方向側の縦周壁52の外壁部に固設された第2の正電位接続端子部72と、第2の正電位接続端子部72のy軸の負方向側の端部に連なってそれから縦周壁52の内方側に延在する高背延在部73と、第1の正電位接続端子部71のy軸の負方向側の端部に連なってそれから縦周壁52の内方側に延在してケース50内を延在する低背延在部74と、高背延在部73及び低背延在部74の間を接続する連絡部75と、を備え、これらはいずれも平板状である。これらは、詳細は後述する正電位側測定端子よりも板幅が相対的に広い部分であり、バスバー本体部に相当する。正電位側測定端子が付加されることをも考慮して、高背延在部73の上下方向に長さ(板幅)は、低背延在部74の上下方向に長さ(板幅)よりも長くなるように設定されることが、積層バスバーBのリアクタンスを低減する観点から好ましい。連絡部75は、高背延在部73及び低背延在部74がy軸の方向に偏位されているためにそれらを連絡するために付加的に設けられており、これらが同一直線上に連なる場合等には設けられる必要はない。第1の正電位接続端子部71は、ロアケース10内の平滑コンデンサ及びミドルケース20内の昇降圧リアクトルを介してミドルケース20に装着された直流電流用コネクタ28に電気的に接続する。第2の正電位接続端子部72の電位は、バッテリに対する複数の半導体素子94の最下流側の電位である。低背延在部74には、複数の半導体素子94の対応する端子が電気的に接続する。
【0043】
ここで、第2のバスバー70は、更に、高背延在部73のx軸の負方向側の上端部に連なってそれからy軸の正方向側に分岐するように曲げられてその方向に突出しながら延在する突出部76と、突出部76のy軸の正方向側の端部に連なってそれから上方側に曲げられてその方向に突出しながら延在する起立部77と、起立部77の上構成部分であって上回路基板100に電気的に接続する第2の測定端子部78と、を備える。突出部76、起立部77及び第2の測定端子部78は、高背延在部73及び低背延在部74の各々の板幅方向の長さよりも短い板幅方向の長さを各々有し、実質的に棒状の正電位側測定端子を構成する。突出部76は、負電位側測定端子の全長を長く設定してその端部間の熱抵抗を増大することに寄与し、このことは、第2の測定端子部78を上回路基板100にフロー半田等で半田付けをする際の熱引きを低減して半田付け性を向上することに寄与する。突出部76の突出方向は、y軸の正方向に平行であっても、y軸の正方向に交差する方向であってもよい。但し、突出部76の上端の高さ位置は、第2のバスバー70の歩留まりを悪化させず、かつ積層バスバーBの上端の高さ位置やケース50の縦周壁52の上端の高
さ位置を不要に上昇させない観点から、突出部76の上端と高背延在部73の上端とが面一になって高背延在部73の上端の高さ位置に等しくなるように設定することが好ましい。突出部76及び起立部77は、主として直線状であるが、正電位側測定端子の全長をより長く設定するように湾曲状等に形成してもよい。
【0044】
より詳しくは、第1のバスバー60における突出部66、起立部67及び第1の測定端子部68から成る負電位側測定端子と、第2のバスバー70における突出部76、起立部77及び第2の測定端子部78から成る正電位側測定端子と、は、高背延在部63及び高背延在部73に対応する部分での積層バスバーBにおけるx軸方向に平行な延在方向に対してy軸の方向で対称、つまり、第1のバスバー60における高背延在部63と、第2のバスバー70における高背延在部73と、のy軸方向の中央におけるx−z平面に平行な中央面に対して面対称に配設され、この結果、突出部66及び突出部76は、互いに同一直線上を延在してそれらの長さが等しく、かつ第1の測定端子部68で終端する起立部67及び第2の測定端子部78で終端する起立部77は、互いに平行に延在してそれらの長さが等しくなるように配設されていることになる。これは、ケース50内の空間の有効容積を不要に阻害せず、かつ積層バスバーBのリアクタンスへの影響を低減するためである。かかる中央面は、絶縁材Iが平板状である場合には、x−z平面に平行なその中央面に相当する。また、第1のバスバー60における連絡部65及び第2のバスバー70における連絡部75が設けられていない場合には、負電位側測定端子及び正電位側測定端子は、積層バスバーBにおけるx軸方向に平行な延在方向に対してy軸の方向で対称に配設されると単純化して記述できる。
【0045】
また、積層バスバーBにおいて、高背延在部63、突出部66、高背延在部73及び突出部76の全体は、ケース50の縦周壁52と一体にモールド成形されていることが、これらの電気的な絶縁性を確保した態様で、装置全体の部品点数を削減しながら積層バスバーBをケース50に確実に固定する観点から好ましい。
【0046】
ここで、積層バスバーBにおいて、起立部67及び起立部77の各々の下部は、ケース50の縦周壁52と一体成形されているが、それらの上部、第1の測定端子部68及び第2の測定端子部78は、ケース50の縦周壁52の上方に露出する。併せて、縦周壁52の上端には、その上面を陥設した一対の凹部54が設けられ、起立部67及び起立部77の上部は、一対の凹部54から対応して上方に延出して露出することが好ましい。これは、第1の測定端子部68及び第2の測定端子部78が上回路基板100に一対の貫通孔102を対応して介して半田Wで半田付けされた際に、上回路基板100の下面側の一対の凹部54で半田Wの特にフィレットの逃げ部を設定するためである。かかる半田付けは、典型的にはフロー半田付けである。更に、一対の凹部54の各々の底部には、それらの上面を突設した凸部56を設けられることが好ましい。これは、縦周壁52内からその外部に延出する起立部67及び起立部77の露出下端部を、凸部56で補強して支持するためである。
【0047】
以上の説明から明らかなように、本実施形態における電力変換装置2においては、半導体素子94と電気的に接続する積層バスバーBが、絶縁材Iを介していずれも板状の一対のバスバー60、70が積層された構成を有すると共に、一対のバスバー60、70がそれらの幅方向が上下方向になるように垂直配置され、積層バスバーBが、更に、一対のバスバー60、70の各々の一部から分岐して回路基板100に向かって延在すると共に、回路基板100と電気的に接続する一対の電圧測定端子65〜68、75〜78を備え、一対の電圧測定端子65〜68、75〜78が、一対のバスバー60、70に対して対称に配設された態様で、一対のバスバー65〜68、75〜78に交差する交差方向に延在しながら回路基板100に向かって上方に延在して回路基板100に電気的に接続するものであるため、半田付け性を向上すると共に絶縁性を確保しながら、簡便な構造でバスバ
ーの電圧を測定できる電力変換装置2を提供することができる。特に、一対の電圧測定端子65〜68、75〜78が、一対のバスバー60、70に対して対称に配設された態様で、一対のバスバー60、70に交差する交差方向に延在しながら回路基板100に向かって上方に延在して回路基板100に電気的に接続するものであるため、積層バスバーBのリアクタンスへの影響を低減した態様で、部品点数の削減、省スペース化及び全体構成の小型化をすることができると共に、電圧測定端子長を長くすることができて電圧測定経路の熱抵抗が大きくなるため、一対の電圧測定端子65〜68、75〜78から一対のバスバーへの熱引きを小さくすることができ、この結果フロー半田時等の半田付け性を向上することができる。
【0048】
また、本実施形態における電力変換装置2においては、一対のバスバー60、70が、各々、平板状の高背延在部63、73と、高背延在部63、73よりも上下方向の長さが短い平板状の低背延在部64、74と、を含み、一対の電圧測定端子65〜68、75〜78が、各々、高背延在部63、73の上端部から交差方向に延在する突出部66、76と、突出部66、76から上方に延在する起立部67、77と、を含み、突出部66、76の上端が、対応する高背延在部63、73の上端と面一に設定され、起立部67、77の上部分が、測定端子部68、78に設定されて回路基板100に電気的に接続されるものであるため、積層バスバーBのリアクタンスを不要に増大させない態様で、一対のバスバー60、70の成形時の歩留まりを向上することができると共に、省スペース化及び全体構成の小型化をすることができる。
【0049】
また、本実施形態における電力変換装置2においては、更に、半導体素子94を収容する樹脂ケース50を備え、積層バスバーBの一部が、樹脂ケース50にモールド成形され、樹脂ケース50が、その周壁52の上端面を陥設した一対の凹部54を有し、一対の電圧測定端子65〜68、75〜78が、一対の凹部54から対応して上方に対応して延出するものであるため、部品点数を削減した態様で、積層バスバーBの測定端子部68、78を含む部分を電気的に絶縁しながら、測定端子部68、78の半田付けの際に形成されるフィレットの逃げ空間を確保することができ、この結果、回路基板100と積層バスバーBとの間隔を狭くすることができて、樹脂ケース50のサイズを小さくすることができる。
【0050】
また、本実施形態における電力変換装置2においては、一対の凹部54が、各々、一対の電圧測定端子65〜68、75〜78が対応して延出する部分で一対の凹部54の底部を突設した凸部56を各々有するものであるため、一対の電圧測定端子65〜68、75〜78の固定強度位置精度を向上することができる。
【0051】
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。