特許第6352760号(P6352760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352760
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】粘着テープおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20180625BHJP
   C09J 7/50 20180101ALI20180625BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C09J7/30
   C09J7/50
   C09J153/00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-205372(P2014-205372)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-74800(P2016-74800A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】宮武 祐介
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−136653(JP,A)
【文献】 特開2009−108185(JP,A)
【文献】 特開2000−328024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂を含む基材層と、前記基材層の一方の面上に積層されたアンカー層と、前記アンカー層の前記基材層に対向する面と反対側の面上に積層された粘着剤層とを備える粘着テープであって、
前記アンカー層は非完全水添スチレン系熱可塑性エラストマーを含有し、
前記粘着剤層は、アクリル酸エステルブロック構造およびメタクリル酸エステルブロック構造を含むアクリル系ブロック共重合体、ならびに非架橋型樹脂(粘着性付与剤を除く)を含有し、
前記非完全水添スチレン系熱可塑性エラストマーを形成するために用いた全単量体のうち、スチレン系化合物からなる単量体の質量割合であるスチレン含有割合は20質量%以上80質量%以下であり、
前記粘着テープは、前記粘着剤層を形成するための第1樹脂組成物、前記アンカー層を形成するための第2樹脂組成物および前記基材層を形成するための第3樹脂組成物を共押出成形することで得られたものである
ことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記アクリル系ブロック共重合体は、重量平均分子量(Mw)が10,000以上1,000,000以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記アクリル系ブロック共重合体は、分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下である、請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記基材層および前記粘着剤層に接するように、前記アンカー層は積層されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
請求項4に記載される粘着テープの製造方法であって、
前記粘着剤層を形成するための第1樹脂組成物、前記アンカー層を形成するための第2樹脂組成物および前記基材層を形成するための第3樹脂組成物を共押出成形して、前記基材層、前記アンカー層および前記粘着剤層の積層体として前記粘着テープを得る、粘着テープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープおよびその製造方法に関する。
なお、本明細書において、「テープ」にはシートの概念およびフィルムの概念が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
基材層と、基材層の一方の面上に積層された粘着剤層とを備える粘着テープにおいて、基材層および粘着剤層は粘着テープの用途に応じて様々な組成を有するものが使用されている。また、粘着テープの製造方法も様々であり、粘着剤層を形成するための組成物を、基材層上に塗布する、基材層上に押出成形する、基材層を形成するための材料とともに共押出する、といった方法が用いられている。
【0003】
こうした粘着テープにおいて、基材層と粘着剤層との間にアンカー層を設けることが採用される場合がある。基材層内に含有される材料と粘着剤層に含有される材料との物性上の相違が大きく、これらを直接積層する、特に共押出成形によって積層することが困難な場合が、アンカー層を設ける場合の具体例として挙げられる。
【0004】
このようなアンカー層を用いる粘着テープとして、特許文献1に開示されるプロテクトフィルム(粘着テープ)は、ポリオレフィン系樹脂を含む組成物と、エチレン−酢酸ビニル共重合体、または、エチレン−酢酸ビニル共重合体とアクリル系樹脂とのブレンド樹脂を含む組成物と、アクリル系粘着樹脂を含む組成物とを調製し、そして、上記の各組成物を使用し、これらを多層共押出成形により製膜化し、上記のポリオレフィン系樹脂を含む組成物によるポリオレフィン樹脂層、上記のエチレン−酢酸ビニル共重合体、または、エチレン−酢酸ビニル共重合体とアクリル系樹脂とのブレンド樹脂を含む組成物による層間接着層(アンカー層)及び上記のアクリル系粘着樹脂を含む組成物によるアクリル系粘着樹脂層の三層共押出製膜からなる積層フィルムであって、更に、上記の層間接着層を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル濃度が20重量%乃至50重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる積層フィルムからなる。
【0005】
また、特許文献2に開示される粘着テープまたはシートまたはフィルムは、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)を主成分とする粘着剤組成物が、オレフィン系重合体(B)からなる基材層上に積層されている粘着テープまたはシートまたはフィルムにおいて、アクリル系ブロック共重合体(A)を主成分とする粘着剤組成物が、オレフィン系重合体(B)からなる基材層上に、(A)と(B)の中間層(アンカー層)として変性オレフィン系重合体(C)を介して積層されている。
【0006】
特許文献3に開示される粘着テープは、基材層(A)と第1粘着剤層(B1)(アンカー層)と第2粘着剤層(B2)とをこの順に有する、少なくとも3層からなる粘着テープであって、該基材層(A)が熱可塑性樹脂を含み、該第1粘着剤層(B1)が、α−オレフィン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも1種を含み、該第2粘着剤層(B2)が、アクリル酸エステルブロック構造とメタクリル酸エステルブロック構造を含むアクリル系ブロック共重合体を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5507055号公報
【特許文献2】特開2009−249541号公報
【特許文献3】特開2012−172004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、後述するように、本発明者らが確認したところ、上記の文献において提案されているアンカー層では、粘着テープに層間剥離が生じる可能性を十分に低減させることは実現されていなかった。
【0009】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、層間剥離が生じる可能性が安定的に低減された粘着テープおよびかかる粘着テープの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者らが検討した結果、アンカー層を構成する少なくとも一部の材料として、非完全水添スチレン系熱可塑性エラストマーを用い、その非完全水添スチレン系熱可塑性エラストマーにおけるスチレン含有割合を20質量%以上80質量%以下とすることにより、当該アンカー層を備える粘着テープについて、層間剥離が生じる可能性を安定的に低減させることが可能であるとの、新たな知見を得た。
【0011】
本明細書において、「スチレン系熱可塑性エラストマー」とは、スチレンまたはその誘導体(スチレン系化合物)に由来する構成単位を含む共重合体からなり、常温を含む温度域ではゴム状の弾性を有するとともに、熱可塑性を有する材料を意味する。「非完全水添スチレン系熱可塑性エラストマー」とはスチレン系熱可塑性エラストマーであって、水添が完全に行われていないものを意味し、具体的には、非水添スチレン系熱可塑性エラストマーおよび部分水添スチレン系熱可塑性エラストマーを含む。
【0012】
本明細書において、「スチレン含有割合」とは、非完全水添スチレン系熱可塑性エラストマーを形成するために用いられた全単量体のうち、スチレン系化合物からなる単量体の質量割合を意味する。
【0013】
上記の知見に基づき完成された本発明は次のとおりである。
(1)オレフィン系樹脂を含む基材層と、前記基材層の一方の面上に積層されたアンカー層と、前記アンカー層の前記基材層に対向する面と反対側の面上に積層された粘着剤層とを備える粘着テープであって、前記アンカー層は非完全水添スチレン系熱可塑性エラストマーを含有し、前記粘着剤層は、アクリル酸エステルブロック構造およびメタクリル酸エステルブロック構造を含むアクリル系ブロック共重合体を含有し、前記非完全水添スチレン系熱可塑性エラストマーを形成するために用いた全単量体のうち、スチレン系化合物からなる単量体の質量割合であるスチレン含有割合は20質量%以上80質量%以下であることを特徴とする粘着テープ。
【0014】
(2)前記アクリル系ブロック共重合体は、重量平均分子量(Mw)が10,000以上1,000,000以下である、上記(1)に記載の粘着テープ。
【0015】
(3)前記アクリル系ブロック共重合体は、分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下である、上記(1)または(2)に記載の粘着テープ。
【0016】
(4)前記基材層および前記粘着剤層に接するように、前記アンカー層は積層されている、上記(1)から(3)のいずれかに記載の粘着テープ。
【0017】
(5)上記(4)に記載される粘着テープの製造方法であって、前記粘着剤層を形成するための第1樹脂組成物、前記アンカー層を形成するための第2樹脂組成物および前記基材層を形成するための第3樹脂組成物を共押出成形して、前記基材層、前記アンカー層および前記粘着剤層の積層体として前記粘着テープを得る、粘着テープの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、オレフィン系樹脂を含む基材層および上記のアクリル系ブロック共重合体を含有する粘着剤層の双方に対して層間剥離強度が高いアンカー層を備える粘着テープが提供される。かかる粘着テープは層間剥離が生じにくい。また、本発明によれば、上記の粘着テープを、生産性高く、かつ品質低下が生じる可能性低く、製造する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
1.粘着テープ
本発明の一実施形態に係る粘着テープは、基材層と、基材層の一方の面上に積層されたアンカー層と、アンカー層の基材層に対向する面と反対側の面上に積層された粘着剤層とを備える。
【0020】
(1)基材層
本実施形態に係る粘着テープが備える基材層はオレフィン系樹脂を含む。
【0021】
本明細書において、「オレフィン系樹脂」とは、オレフィン単量体から選ばれる1種または2種以上を重合した単独重合体または共重合体を意味する。オレフィン単量体としては、炭素数2〜8のオレフィン単量体、炭素数3〜18のα−オレフィン単量体、環状構造を有するオレフィン単量体などが例示される。炭素数2〜8のオレフィン単量体としてエチレン、プロピレン、2−ブテン、オクテンなどが例示される。α−オレフィン単量体として、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセンなどが例示される。環状構造を有するオレフィン単量体として、ノルボルネン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエンおよびテトラシクロドデセンならびにこれらの誘導体などが例示される。
【0022】
オレフィン系樹脂がポリエチレンを含有する場合には、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンのいずれであってもよいし、これらの2種以上の混合物であってもよい。
【0023】
共重合体のオレフィン系樹脂の具体例として、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体等のポリエチレン系樹脂や、プロピレン−エチレン−ジエン化合物共重合体等のポリプロピレン系樹脂、酸変性ポリオレフィン、アイオノマー系樹脂などが挙げられる。
【0024】
オレフィン系樹脂がエチレン−プロピレン共重合体を含有する場合には、エチレン−プロピレン共重合体は、ブロック重合体およびランダム重合体のいずれであってもよいし、これらの混合物であってもよい。
【0025】
オレフィン系樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
基材層は上記のオレフィン系樹脂を含有する一層の樹脂系フィルムにより構成されていてもよいし、オレフィン系樹脂を含有する樹脂系フィルムを含む複数のフィルムが積層されて基材層を構成していてもよい。また、基材層がフィルムを備える場合には、そのフィルムは未延伸のものであってもよいし、縦または横などの一軸方向または二軸方向に延伸されたものであってもよい。
【0027】
基材層に含まれるオレフィン系樹脂は、後述する押出成形での製造が容易となるように、熱可塑性を有していることが好ましい。したがって、オレフィン系樹脂が架橋構造を有している場合であっても、その架橋の程度は、適度な熱可塑性を維持できる程度であることが好ましい。
【0028】
基材層を構成する材料が着色材料(カーボンブラック、二酸化チタンなどの顔料、および染料が例示される。)を含有することにより、基材層が着色されていてもよい。さらに、機械特性を高めたり耐ブロッキング性を付与したりする観点から、基材層を構成する材料がシリカなどの微粒子を含有していてもよい。
【0029】
前述のように、近年、ポリオレフィンを主剤とするオレフィン系樹脂が、生産安定性、コストおよび特性(特に柔軟性)の観点から基材層を構成する材料の主成分として採用される傾向が高まっている。かかる樹脂の具体例を挙げれば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが例示される。なお、ポリプロピレンの中でも二軸延伸のもの(すなわちOPP)が生産安定性、コストおよび柔軟性などの特性の観点から注目されている。ところが、かかるオレフィン系樹脂は樹脂の極性が低いために、基材層の一方の面に形成されるアンカー層と基材層との間での耐剥離性が低下しやすい。そのような場合においても、本実施形態に係る粘着テープは、アンカー層が後述するような特性を備えるため、アンカー層と基材層との間での剥離強度(層間剥離強度)が高い。
【0030】
基材層の厚さに特に制限はないが、通常20μm以上300μm以下程度、好ましくは25μm以上200μm以下である。基材層の厚さが20μm未満の場合、支持体としての機械的強度(引張り、引き裂き、破裂など)が不足したり、薄くてコシがないためにハンドリング性に劣る場合がある。また、基材層の厚さが200μmを超える場合、ハンドリング性に支障が生じる場合がある。
【0031】
(2)アンカー層
本実施形態に係る粘着テープが備えるアンカー層は、スチレン系熱可塑性エラストマーを含み、当該アンカー層に含まれるスチレン系熱可塑性エラストマーは、エチレン性二重結合に部分的に水素添加された、または水素添加が行われていない、非完全水添スチレン系熱可塑性エラストマーである。
【0032】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレン−共役ジエン共重合体などが例示される。スチレン−共役ジエン共重合体の具体例として、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−イソプレン−スチレン共重合体等の未水添スチレン−共役ジエン共重合体などを挙げることができる。また、工業的には、旭化成社製タフプレン(登録商標)、クレイトンポリマージャパン社製クレイトン(登録商標)、住友化学社製住友TPE−SB、ダイセル化学工業社製エポフレンド(登録商標)、三菱化学社製ラバロン(登録商標)、クラレ社製セプトン(登録商標)、旭化成社製タフテック(登録商標)などの商品名が挙げられる。
【0033】
部分的に水添されたスチレン系熱可塑性エラストマーの具体例として、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS)の部分水素添加物、スチレン−イソプレン共重合体(SIS)の部分水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、アンカー層に含有される非完全水添スチレン系熱可塑性エラストマーは、SISの部分水素添加物を含むことが好ましく、SISの部分水素添加物からなることがより好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態に係るアンカー層が含有する非完全水添スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有割合は20質量%以上80質量%以下である。当該スチレン含有割合が上記の範囲内であることにより、アンカー層の基材層や粘着剤層に対する耐剥離性を向上させること、すなわち、粘着テープに層間剥離が生じる可能性を低下させることが可能となる。
【0035】
アンカー層の基材層に対する耐剥離性をより安定的に向上させる観点から、上記のスチレン含有割合は、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
【0036】
アンカー層の粘着剤層に対する耐剥離性をより安定的に向上させる観点から、上記のスチレン含有割合は、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
本発明の一実施形態に係るアンカー層の厚さは特に限定されないが、通常、1μm以上100μm以下である。この厚さが過度に薄い場合にはアンカー層の生産性が低下することが懸念され、過度に厚い場合には生産性が低下するなどの副次的な問題が発生することが懸念される。アンカー層の好ましい厚さは2μm以上50μm以下であり、4μm以上40μm以下であることがより好ましく、6μm以上20μm以下であることがより好ましい。
【0038】
(3)粘着剤層
本実施形態に係る粘着テープが備える粘着剤層は、アクリル酸エステルブロック構造およびメタクリル酸エステルブロック構造を含むアクリル系ブロック共重合体を含有する。アクリル系ブロック共重合体の具体例として、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸ブチル−ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸−2−エチルヘキシル−ポリメタクリル酸メチルなどのトリブロック重合体が挙げられる。
【0039】
上記のアクリル系ブロック共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は限定されない。後述する押出成形により粘着剤層を形成することを容易にする観点から、上記のアクリル系ブロック共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は1万から100万の範囲にあることが好ましく、3万から30万の範囲にあることがより好ましい。上記のアクリル系ブロック共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が1万以上であることにより、当該共重合体の凝集性が過度に低下する可能性を安定的に低減させることができる。上記の重合体の凝集性が過度に低下すると、押出成形が困難となる場合がある。また、重量平均分子量が100万以下であることにより、上記の共重合体の熱可塑性が過度に低下する可能性を安定的に低減させることができる。上記の共重合体の熱可塑性が過度に低下すると、押出成形が困難となる場合がある。
【0040】
本発明の効果を損なわない範囲内で、非架橋型樹脂、架橋型樹脂、粘着性付与剤、カップリング剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、難燃剤又は帯電防止剤などの添加剤が、上記粘着剤層を形成する材料に添加されてもよい。
【0041】
非架橋型樹脂は、粘度調整や自着防止に有効である。非架橋型樹脂は、押出機のホッパー内の温度領域において粉体となりうるものであることが好ましい。また、粘着剤層に対して相溶性を有する事が好ましい。添加樹脂が粘着剤層に対する相溶性を有することをより安定的に実現する観点から、添加樹脂は粘着剤層と同系列の樹脂であることがより好ましい。すなわち、粘着剤層がアクリル酸系樹脂からなる場合には、添加樹脂もアクリル酸系樹脂であることが好ましい。粘着剤層における添加樹脂の含有量は、粘着剤層の粘度を調整する機能を果たすことができる限り、限定されない。粘着剤層の添加樹脂の含有量については、0.01質量%超10質量%未満であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることが特に好ましい。
【0042】
上記のアクリル系ブロック共重合体のポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は限定されない。後述する押出成形により粘着剤層を形成することを容易にする観点及び粘着特性を安定化させる観点から、上記のアクリル系ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下となるように、上記のアクリル系ブロック共重合体のポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は設定されることが好ましい。上記の分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下であることにより、上記のアクリル系ブロック共重合体の凝集性が過度に低下する可能性を安定的に低減させることができる。上記のアクリル系ブロック共重合体の凝集性が過度に低下すると、押出成形が困難となる場合や、被着体に貼りつけられた後に経時で粘着力が変化し易くなる場合がある。
【0043】
なお、本明細書において、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)およびポリスチレン換算数平均分子量(Mn)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により測定される場合の値である。このような方法による測定は、たとえば、以下の装置および条件で行われる。
装置名:HLC−8220GPC、東ソー社製
カラム:TSKgelGMHXL、TSKgelGMHXLおよびTSKgel2000HXLを順次連結したもの
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
注入量:80μl
測定温度:40℃
流速:1ml/分
検出器:示差屈折計
試料濃度:1%(w/v)
【0044】
粘着剤層は、上記のアクリル系ブロック共重合体以外の成分を含有していてもよい。粘着剤層が含有していてもよいその他の粘着剤の具体例として、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤が挙げられる。
【0045】
粘着剤層の厚さは特に制限されるものではないが、通常5μm以上100μm以下の範囲内であり、10μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0046】
粘着剤層における基材層側と反対側の面は露出させていてもよいが、通常は、使用に供するまでの間において粘着剤層を保護するために剥離材を仮貼着しておく。
【0047】
剥離材はシート状の支持基材層を備え少なくとも片面が剥離性を有する剥離面からなる。この剥離面は、剥離性を有さない支持基材層の表面上に設けられた剥離材層の支持基材層側と反対側の面であってもよいし、剥離性を有する支持基材層の表面であってもよい。
【0048】
剥離材の支持基材層としては、例えば紙、合成紙、樹脂系フィルムなどが挙げられる。紙としては、例えばグラシン紙、ポリエチレンラミネート紙などが挙げられ、樹脂系フィルムとしては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂などのフィルムなどが挙げられる。剥離材層を構成する剥離処理剤として、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキル含有樹脂などが例示される。その表面が剥離性を有する支持基材層としては、ポリプロピレン樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルムなどのポリオレフィン樹脂フィルム、これらのポリオレフィン樹脂フィルムを紙や他のフィルムにラミネートしたフィルムが例示される。
【0049】
剥離材の支持基材層の厚みは特に制限されないが、通常は15μm以上300μm以下程度であればよい。
【0050】
2.粘着テープの製造方法
本発明の一実施形態に係る粘着テープの製造方法は特に限定されない。本発明の一実施形態に係る粘着剤層は、押出成形により製造されることが好適な材料(アクリル酸エステルブロック構造およびメタクリル酸エステルブロック構造を含むアクリル系ブロック共重合体を含有)を含有し、アンカー層が含有する非完全水添スチレン系熱可塑性エラストマーも押出成形に適した材料であることから、次に説明する押出成形により製造されることが好ましい。
【0051】
まず、粘着剤層を形成するための第1樹脂組成物およびアンカー層を形成するための第2樹脂組成物を用意する。第1樹脂系組成物はアクリル酸エステルブロック構造およびメタクリル酸エステルブロック構造を含むアクリル系ブロック共重合体を含有し、第2樹脂系組成物はスチレン含有割合が20質量%以上80質量%以下である非完全水添スチレン系熱可塑性エラストマーを含有する。第1樹脂組成物を押出成形して粘着剤層を形成し、第2樹脂組成物を押出成形してアンカー層を形成する。これらの押出成形は独立に行われてもよいが、粘着剤層とアンカー層との間で剥離が生じる可能性を低減させる観点から、第1樹脂組成物と第2樹脂系組成物とを共押出成形することにより、粘着剤層とアンカー層との積層体を製造することが好ましい。
【0052】
アンカー層と基材層との間で剥離が生じる可能性を低減させる観点から、基材層も共押出成形により製造することが好ましい。すなわち、基材層を形成するための第3樹脂組成物を用意する。第3樹脂組成物はオレフィン系樹脂を含む。第1樹脂組成物、第2樹脂系組成物および第3樹脂組成物を共押出成形して、基材層、アンカー層および粘着剤層の積層体として粘着テープを得ることが好ましい。このように3種の樹脂系組成物を共押出成形することにより、一回のプロセスで粘着テープを製造することができる。なお、共押出成形により粘着テープを製造するにあたり、製造された粘着テープの粘着剤層側の面が剥離材の剥離面に接するように粘着テープと剥離材とを積層させれば、剥離材により粘着剤層が保護された粘着テープを実質的に一回のプロセスで製造することができる。
【0053】
押出成形、共押出成形のいずれについても、成形条件は、各樹脂系材料、得られる粘着剤層、アンカー層および基材層の厚さなどに応じて、適宜設定される。
【0054】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0056】
〔実施例1〕
ペレット状アクリルトリブロック粘着剤(クラレ社製「クラリティLA3320」、PMMA−BA−PMMAトリブロック共重合体、PMMA比率18.7mol%、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)11.9万、ポリスチレン換算数平均分子量(Mn)10.9万、分子量分布(Mw/Mn)1.1)100質量部に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(積水化成品社製「テクポリマーMB−4、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)77.5万」0.5質量部を添加し、タンブラーで10分間混合して、粘着剤層を形成するための第1樹脂系組成物を得た。
【0057】
得られた第1樹脂系組成物と、アンカー層を形成するための第2樹脂組成物としての非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ社製「タフプレンA」、スチレン含有割合40質量%)と、基材層を形成するための第3樹脂系組成物としてポリプロピレン(プライムポリマー社製「プライムポリプロF−724NP」)とを押出機に投入し、基材層が40μm、アンカー層が10μm、および粘着剤層が20μmとなるように、Tダイを用いてフィルム化してこれらの層を積層した後、第1樹脂系組成物からなるフィルム(粘着剤層)側に剥離材(リンテック社製「SP−PET381031」)をラミネートして、基材層、アンカー層および粘着剤層からなる粘着テープ1を、粘着剤層の面が剥離材により保護された状態で得た。
【0058】
〔実施例2〕
第2樹脂系組成物として部分水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ社製「タフテックP1500」、スチレン含有割合30質量%)を使用した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ2を得た。
【0059】
〔実施例3〕
第2樹脂系組成物として非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ社製「アサプレン439」、スチレン含有割合45質量%)を使用した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ3を得た。
【0060】
〔実施例4〕
第2樹脂系組成物として非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(クラレ社製「ハイブラー5127」、スチレン含有割合20質量%)を使用した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ4を得た。
【0061】
〔実施例5〕
第2樹脂系組成物として部分水添スチレン系熱可塑性エラストマーSBBS1(トリブロック共重合体、スチレン含有割合65質量%、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)13万、ポリスチレン換算数平均分子量(Mn)10.8万、分子量分布(Mw/Mn)1.2)を使用した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ5を得た。
【0062】
〔比較例1〕
第2樹脂系組成物として完全水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ社製「タフテックH1041」、スチレン含有割合30質量%)を使用した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ6を得た。
【0063】
〔比較例2〕
第2樹脂系組成物として酸変性ポリエチレン(三井化学社製「アドマーSE810」)を使用した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ7を得た。
【0064】
〔比較例3〕
第2樹脂系組成物としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル社製「エバフレックスEV260」)を使用した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ8を得た。
【0065】
〔比較例4〕
第2樹脂系組成物としてポリスチレン(PSジャパン社製「GPPS 679」)を使用した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ9を得た。
【0066】
〔比較例5〕
第2樹脂系組成物としてスチレン系熱可塑性エラストマー(カネカ社製「SIBSTAR 072T」、スチレン含有割合20質量%)を使用した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ10を得た。
【0067】
〔比較例6〕
第2樹脂系組成物としてブタジエンゴムBR1(宇部興産社製「ポリブタジエンラバー UBEPOL BR150L」)を使用した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ11を得た。
【0068】
〔比較例7〕
第2樹脂系組成物としてエチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル社製「ニュクレルN0903HC」)を使用した以外は実施例1と同様にして、粘着テープ12を得た。
【0069】
〔試験例1〕<層間剥離強度の測定>
実施例および比較例により製造された粘着テープ1から12のそれぞれについて2枚用意し、これらの粘着剤層の面を表出させて貼り合せて積層体を得た。得られた積層体を、設定温度150℃で5分間加熱し、加熱後の積層体を幅25mm×長さ100mmに切り取って評価用サンプルを得た。得られた評価用サンプルについて、JIS K6854−3:1999(ISO 11339:1993)に準じ、23℃の環境において、T剥離、剥離速度300mm/分の条件で引き剥がし、層間剥離強度(単位:N/25mm)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0070】
〔試験例2〕<加熱促進試験後の剥離性>
粘着テープを縦25mm×横50mmの平面形状を有するように切断し、試験片を得た。この試験片の剥離材を剥離し、試験片における表出した粘着剤層側の面を、ステンレス板(SUS304)に対し、23℃、相対湿度50%の環境下、2kgローラーにて1往復の加圧貼付を行い、60℃で7日間静置した。その後、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置した。次に、試験片の長さ方向の端部を手で把持し、試験片をステンレス板から高速で剥離した。剥離後に、ステンレス板上に粘着剤層が残った糊残り部分の面積S1(単位:mm)を測定した。下記式に基づいて糊残り度(単位:%)を算出し、加熱促進試験後の剥離性を下記の評価基準により評価した。
【0071】
糊残り度(%)=100×S1/1250
〔加熱促進試験後の剥離性の評価基準〕
A:糊残り度が1%未満
B:糊残り度が1%以上、10%未満
C:糊残り度が10%以上
評価結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示されるように、本発明の条件を満たす実施例の粘着テープは、層間剥離強度が高く、粘着テープを被着体から剥離した際に、被着体に粘着剤層を構成する材料(糊)がほとんど残らない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の粘着テープは、基材層内に含有される材料と粘着剤層に含有される材料との物性上の相違が大きい、具体的には、オレフィン系樹脂を含む基材層およびアクリル系ブロック共重合体を含有する粘着剤層を備える粘着テープに好適に使用できる。