【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電装置の運転方法は、
ブレードが取り付けられたハブを含む風車ロータと、
前記風車ロータの回転エネルギーによって駆動されるように構成された発電機と、
少なくとも1つの油使用機器を含み、前記風車ロータの回転エネルギーを前記発電機に伝えるためのドライブトレインと、
前記油使用機器に供給される油を貯留するための貯留タンクと、
前記貯留タンクと前記油使用機器との間で循環される油が流れる循環ラインと、を備える風力発電装置の運転方法であって、
下記条件(a)及び下記条件(b)の両方を含む第1油漏れ判定条件を用いて、前記油使用機器からの油漏れが発生したか否かを判定する油漏れ判定ステップと、
前記油漏れ判定ステップにおいて油漏れが発生したと判定された場合に前記風力発電装置を停止させる風車停止ステップと、
前記油漏れ判定ステップにおいて油漏れが発生したと判定された場合に、前記風力発電装置の補機を停止させる補機停止ステップと、を備え、
前記油漏れ判定ステップでは、下記条件(a)または下記条件(b)の何れかを満たさない場合に、前記油使用機器からの油漏れが発生したと判定する。
条件(a):前記貯留タンクにおける油の液面レベルが閾値より大きい。
条件(b):前記循環ライン内の圧力が閾値より大きい、または、前記油使用機器内における圧力が閾値より大きい。
【0008】
上記(1)の構成では、油漏れ判定ステップにおいて、油が循環する循環ライン内の圧力又は油使用機器内の圧力を基準として油漏れの検出を行う(条件(b))とともに、油が貯留される貯留タンクにおける液面レベルを基準として油漏れの検出を行う(条件(a))。
比較的急速な油漏れが発生している場合には、油漏れの影響が、循環ライン内又は油使用機器内における圧力変化として表れる。すわなち、急速な油漏れの影響により、油使用機器の運転状態から想定される圧力よりも循環ライン内又は油使用機器内の圧力が低くなってしまう。よって、条件(b)を用いて、循環ライン内又は油使用機器内の圧力低下を監視することで、比較的急速な油漏れを検知することができる。
一方、比較的ゆっくりとした油漏れの場合、循環ライン内又は油使用機器内の圧力の低下の程度が小さいために、上記条件(b)を用いて循環ライン内又は油使用機器内の圧力低下を監視しても、油漏れを十分な精度で検知できないことがある。そこで、上記構成(1)のように、条件(b)だけでなく、条件(a)を用いて貯留タンクの液面レベルの低下も監視するようにしている。油使用機器で油漏れが発生していれば、油使用機器の運転状態から想定される液面レベルよりも貯留タンクの液面が徐々に低くなっていくから、条件(a)による液面レベルの監視によって、比較的ゆっくりとした油漏れを検知することができる。
なお、油漏れの影響が貯留タンクの液面レベルの変化として表れるまでに少なからず時間を要する。このため、急速な油漏れの場合、条件(a)のみでは、油漏れの検知までに相当量の油が漏出してしまう。これに対し、循環ライン内における圧力は、油漏れの発生に応じて比較的速やかに変化する。よって、上記構成(1)では、条件(a)だけでなく、条件(b)による循環ライン内又は油使用機器内の圧力低下の監視も行うようにしている。
このように、上記(1)の構成では、貯留タンクの液面レベルを基準とした条件(a)及び循環ライン内又は油使用機器内の圧力を基準とした条件(b)の2種類の条件を用いて、いずれか一方の条件を満たさなくなった段階で油漏れが発生したと判定するので、確実かつ迅速に油漏れを検知することができる。
また、上記(1)の構成では、油漏れが発生したと判定された場合には、風力発電装置及び風力発電装置の補機を停止させるので、油漏れが発生した際に、さらなる油漏れを防ぐことができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記油漏れ判定ステップでは、下記条件(c)をさらに含む前記第1油漏れ判定条件を用いて、前記条件(a)、前記条件(b)または下記条件(c)の何れかを満たさない場合に、前記油使用機器からの油漏れが発生したと判定する。
条件(c):前記風力発電装置に設けられた油漏れ検知センサから油漏れ検出信号が出力されていない。
上記(2)の構成では、油漏れの判定条件として、条件(a)及び(b)に加えて、油漏れ検知センサを用いて油漏れを検知する条件(c)を用いて、いずれか1つの条件を満たさなくなった段階で油漏れが発生したと判定する。よって、より確実かつ迅速に油漏れを検出することができる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、前記風力発電装置は、前記油使用機器から漏出した漏出油を受けるように構成されたオイルパンをさらに備え、
前記油漏れ検知センサは、オイルパンで受けた前記漏出油を検知するように構成される。
上記(3)の構成によれば油漏れ検知センサを用いてオイルパンで受けた漏出油を検出することにより、油漏れを容易に検知することができる。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、前記油漏れ判定ステップでは、さらに前記油漏れ検知センサの異常の有無を判定し、前記油漏れ検知センサの異常が検知されたとき、前記第1油漏れ判定条件における前記条件(c)を満たさない場合であっても、前記条件(a)及び(b)の両方を満たしていれば、前記油使用機器からの油漏れは発生してないと判定する。
上記(4)の構成によれば、油漏れ判定ステップにおいて、条件(c)によって油漏れ検知センサにより油漏れが検知されたとしても、該油漏れ検知センサの異常が検知された場合には、条件(c)によっては油漏れが発生したとは判定しない。
これにより、異常のある油漏れ検知センサによって油漏れが誤って検知された場合には、風力発電装置や補機を停止させないようにすることができるので、風力発電装置を安定的に運転できる。
【0012】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(4)のいずれかの構成において、
前記ドライブトレインは、
前記風車ロータのハブに接続される主軸と、
前記主軸と前記発電機との間に設けられるトランスミッションと、
を含み、
前記油使用機器は、前記トランスミッションを含み、
前記循環ラインは、前記貯留タンクから前記トランスミッションに供給される油が流れる給油ラインを含み、
前記補機は、前記給油ラインに設けられ、前記貯留タンクから前記トランスミッションに油を供給するための給油ポンプを含む。
上記(5)の構成によれば、ドライブトレインがトランスミッションを含む場合において、貯留タンクの液面レベル、及び、貯留タンクからトランスミッションに供給される油が流れる給油ライン内の圧力を基準として、トランスミッションで発生する油漏れを検知することができる。また、トランスミッションで油漏れが発生したと判定された場合、貯留タンクからトランスミッションに油を供給するための給油ポンプを停止させるので、トランスミッションへの油の供給を停止させることができ、さらなる油漏れを防ぐことができる。
【0013】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記トランスミッションは、前記主軸の回転を増速して前記発電機に出力するための増速ギアと、前記増速ギアを収納するケーシングと、を含む機械式増速機であり、
前記貯留タンクは、前記ケーシングの内部に形成されており、
前記循環ラインは、前記ケーシングの外部に設けられており、
前記補機は、前記ケーシング内の前記貯留タンクに貯留された油を前記循環ラインを介して前記ケーシング内部の前記増速ギアに供給するための給油ポンプを含み、
前記油漏れ判定ステップでは、前記条件(b)として、前記循環ラインのうち前記給油ポンプよりも下流側における圧力が閾値よりも大きいという条件を用いる。
上記(6)の構成によれば、トランスミッションが機械式増速機である場合において、貯留タンクの液面レベル、及び、循環ラインのうち、機械式増速機に油を供給するための給油ポンプよりも下流側の圧力を基準として、機械式増速機で発生する油漏れを検知することができる。また、機械式増速機で油漏れが発生したと判定された場合、貯留タンクから機械式増速機に油を供給する給油ポンプを停止させるので、機械式増速機への油の供給を停止させることができ、さらなる油漏れを防ぐことができる。
【0014】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記トランスミッションは、
前記主軸によって駆動されて作動油を加圧して圧油を生成するように構成された油圧ポンプと、
前記油圧ポンプで生成された前記圧油によって駆動されるように構成された油圧モータと、
前記油圧ポンプの吐出側と前記油圧モータの吸込側とを接続する高圧ラインと、
前記油圧モータの吐出側と前記油圧ポンプの吸込側とを接続する低圧ラインと、を含み、
前記補機は、前記貯留タンクから前記トランスミッションの前記低圧ラインに油を供給するためのブーストポンプを含み、
前記油漏れ判定ステップでは、前記条件(b)として、前記高圧ラインの圧力が第1閾値より大きく、且つ、前記低圧ラインの圧力が第2閾値よりも大きいという条件を用いる。
上記(7)の構成によれば、トランスミッションが、油圧ポンプ、油圧モータ、高圧ライン及び低圧ラインを含む油圧トランスミッションである場合、貯留タンクの液面レベル、及び、高圧ライン及び低圧ラインの圧力を基準として、油圧トランスミッションで発生する油漏れを検知することができる。また、油圧トランスミッションで油漏れが発生したと判定された場合、貯留タンクから油圧トランスミッションに油を供給するブーストポンプを停止させるので、油圧トランスミッションへの油の供給を停止させることができ、さらなる油漏れを防ぐことができる。
【0015】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、
前記トランスミッションは、前記油圧モータを経由せずに前記高圧ライン内の油を前記低圧ラインに流すためのバイパスラインをさらに含み、
前記油圧ポンプを作動させて、前記高圧ライン、前記バイパスライン及び前記低圧ラインを含む循環路内において油を循環させて、該油の温度を規定値以上に上昇させる油昇温ステップと、
前記油昇温ステップの後、前記油圧ポンプを停止させて、前記油圧ポンプ、前記油圧モータ、前記高圧ライン及び前記低圧ラインにおいて油を循環させない状態にて、前記貯留タンクの昇温後の油の液面レベルを検出するステップと、をさらに備え、
前記油漏れ判定ステップでは、前記条件(a)として、検出された前記昇温後の油の液面レベルを基準に決定された閾値L1よりも、前記風力発電装置の運転中における前記貯留タンクにおける油の液面レベルが大きいという条件を用いる。
油圧トランスミッションの運転中、油圧トランスミッション内の油(作動油)の温度は、油圧機械での機械的な摺動や、作動油がバルブを通過する際の減圧等に起因する熱エネルギーにより上昇する。また、油の体積は、温度が上昇するに従い増加する。このため、仮に、条件(a)において、油が低温であるとき(例えば風力発電装置の運転前等)の貯留タンクの液面レベルを基準として、それよりも低い液面レベルを閾値とした場合、風力発電装置の運転中の温度上昇により増加した体積分の油が漏れてからでないと、条件(a)では油漏れを検知できないこととなる。
この点、上記(8)の構成では、例えば風力発電装置の運転時に近い温度まで油を昇温させた状態での貯留タンクの液面レベルを基準として決定された閾値を用いるので、より適切に油漏れを検知することができる。
【0016】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(8)の何れかの構成において、前記油漏れ判定ステップにおいて前記第1油漏れ判定条件に従って油漏れが発生したと判定された場合に、前記風車停止ステップを行うことによって前記風力発電装置の主軸又は発電機軸の回転数が閾値以下になってから、前記補機停止ステップを行う。
である。
上記(9)の構成では、風力発電装置を停止させることで風力発電装置の主軸又は発電機軸の回転数が閾値以下に低下した状態で補機を停止させるので、主軸又は発電機軸の回転数が閾値まで低下するまでの間、補機によって貯留タンクの油を油使用機器に供給することができる。このため、油を供給しないことによる損傷等から油使用機器を保護することができる。
【0017】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(9)の何れかの構成において、
前記油漏れ判定ステップでは、前記第1油漏れ判定条件に加えて、下記条件(d)を含む第2油漏れ判定条件を用いて、下記条件(d)を満たさない場合に前記油使用機器からの油漏れが発生したと判定し、
前記油漏れ判定ステップにおいて前記第1油漏れ判定条件に従って油漏れが発生したと判定された場合に、前記風車停止ステップを行うことによって前記風力発電装置の主軸又は発電機軸の回転数が閾値以下になってから、前記補機停止ステップを行い、
前記油漏れ判定ステップにおいて前記第2油漏れ判定条件に従って油漏れが発生したと判定された場合に、前記回転数にかかわらず、前記風車停止ステップとともに前記補機停止ステップを行う。
条件(d):前記第1油漏れ判定条件における条件(a)の液面レベルの前記閾値をL1としたとき、前記貯留タンクにおける油の液面レベルが閾値L2(但し、L1>L2)よりも大きい。
上記(10)の構成では、条件(a)で設定したよりも低い液面レベルに設定された閾値を用いて、この閾値よりも液面レベルが低下した場合には、主軸又は発電機軸の回転数が低下するのを待たずに、補機を停止するようにした。この場合、補機の停止により、補機から油使用機器に油が供給されなくなるので、風力発電装置停止後の油漏れを低減することができる。
【0018】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(10)の何れかの構成において、前記風車停止ステップでは、前記ブレードのピッチ角をフェザー側に制御する。
【0019】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(11)の何れかの構成において、前記風車停止ステップでは、前記ドライブトレイン又は前記発電機の少なくとも一方を制御して、前記回転エネルギーの電気エネルギーへの変換を停止する。
【0020】
(13)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電装置は、
ブレードが取り付けられたハブを含む風車ロータと、
前記風車ロータの回転エネルギーによって駆動されるように構成された発電機と、
少なくとも1つの油使用機器を含み、前記風車ロータの回転エネルギーを前記発電機に伝えるためのドライブトレインと、
前記油使用機器に供給される油を貯留するための貯留タンクと、
前記貯留タンクと前記油使用機器との間で循環される油が流れる循環ラインと、
前記油使用機器からの油漏れを検知するための油漏れ検知部と、
を備える風力発電装置であって、
前記油漏れ検知部は、
下記条件(a)及び下記条件(b)の両方を含む第1油漏れ判定条件を用いて、前記油使用機器からの油漏れが発生したか否かを判定するように構成され、かつ、
前記油使用機器からの油漏れが発生したと判定した場合に、前記風力発電装置及び前記風力発電装置の補機を停止させるように構成され、
前記油漏れ検知部は、下記条件(a)または下記条件(b)の何れかを満たさない場合に、前記油使用機器からの油漏れが発生したと判定する。
条件(a):前記貯留タンクにおける油の液面レベルが閾値より大きい。
条件(b):前記循環ライン内の圧力が閾値より大きい、または、前記油使用機器内における圧力が閾値より大きい。
【0021】
上記(13)の構成では、貯留タンクの液面レベルを基準とした条件(a)及び循環ライン内又は油使用機器内の圧力を基準とした条件(b)の2種類の条件を用いて、いずれか一方の条件を満たさなくなった段階で油漏れが発生したと判定するので、確実かつ迅速に油漏れを検知することができる。
また、上記(13)の構成では、油漏れが発生したと判定された場合には、風力発電装置及び風力発電装置の補機を停止させるので、油漏れが発生した際に、さらなる油漏れを防ぐことができる。