特許第6352784号(P6352784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352784
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】スクリュ押出機
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/60 20060101AFI20180625BHJP
   B29B 7/40 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B29C47/60
   B29B7/40
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-240322(P2014-240322)
(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公開番号】特開2016-101671(P2016-101671A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 謙介
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−155368(JP,U)
【文献】 特公昭40−017505(JP,B1)
【文献】 実開昭51−126363(JP,U)
【文献】 特開平05−049889(JP,A)
【文献】 特開2003−320525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のバレル内に、回転軸の外周面に螺旋状の羽根を備えたスクリュを収容してなり、前記バレルの入口から供給したゴム材料を、前記スクリュを回転させることにより出口側へと搬送するスクリュ押出機であって、
前記スクリュは、少なくとも前記入口を含む領域に位置する羽根の搬送面に、前記入口から前記出口に向かってゴム材料に対して作用させる力を軽減するように複数の突出部を備えたことを特徴とするスクリュ押出機。
【請求項2】
前記突出部は、前記入口から前記出口に向かって数が少なくなることを特徴とする請求項1に記載のスクリュ押出機。
【請求項3】
前記突出部は、前記入口から前記出口に向かってサイズが小さくなることを特徴とする請求項1又は2に記載のスクリュ押出機。
【請求項4】
前記突出部は、前記入口から前記出口に向かって形状が丸みを帯びることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスクリュ押出機。
【請求項5】
前記突出部は、三角錐形状の突起であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスクリュ押出機。
【請求項6】
前記突出部は、搬送方向の複数の領域毎に、数、サイズ、又は、形状が相違することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のスクリュ押出機。
【請求項7】
前記突出部は、前記羽根の螺旋方向に連なった突条であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスクリュ押出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ押出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリュ押出機として、シール端部からノーズコーン端部に延びるコアの外周面に、らせん状パターンでフライトを形成し、互いに隣接するフライトの間に形成される通路内に、複数の細長突起を形成したものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来のスクリュ押出機では、突起が通路の底面に形成されているため、供給したゴム材料に対して作用させる力が不十分となる。特に、低燃費タイヤに使用されるシリカは硬度が高いため、スムーズな搬送、供給が望めない。このため、ゴム材料の詰まり等が発生し、その量が減少した領域で温度上昇により熱収縮し、形状不良を発生する。そして、この形状不良が原因で、ゴム材料のユニフォーミティ(重量バランスや剛性バランスの均一性)が損なわれる。またゴム材料の搬送速度が低下する原因ともなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−189737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ゴム材料を高速度、しかも安定した状態で搬送することにより、ユニフォーミティを向上させることができるスクリュ押出機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
円筒状のバレル内に、回転軸の外周面に螺旋状の羽根を備えたスクリュを収容してなり、前記バレルの入口から供給したゴム材料を、前記スクリュを回転させることにより出口側へと搬送するスクリュ押出機であって、
前記スクリュは、少なくとも前記入口を含む領域に位置する羽根の搬送面に、前記入口から前記出口に向かってゴム材料に対して作用させる力を軽減するように複数の突出部を備えたことを特徴とするスクリュ押出機を提供する。
【0007】
この構成により、スクリュの回転によって搬送されるゴム材料に対して突出部が作用し、ゴム材料の混練を促進する。このため、ゴム材料の種類(硬度の高いもの)、幅寸法、厚み寸法等の違いに拘わらず、ゴム材料の混練状態を良好なものとすることができる。したがって、スクリュの回転によってゴム材料の詰まり等を発生させることなくスムーズに搬送し、安定した状態で供給することができる。
【0008】
前記突出部は、前記入口から前記出口に向かって数を少なくするのが好ましい。
【0009】
前記突出部は、前記入口から前記出口に向かってサイズを小さくしてもよい。
【0010】
前記突出部は、前記入口から前記出口に向かって形状が丸みを帯びさせてもよい。
【0011】
これらの構成により、入口側から出口7側に向かってゴム材料の混練が進むに連れて突出部による混練度合いを抑制することができる。したがって、ゴム材料が必要以上に高温となって劣化することを防止することが可能となる。
【0012】
前記突出部は、三角錐形状の突起であるのが好ましい。
【0013】
前記突出部は、搬送方向の複数の領域毎に、数、サイズ、又は、形状が相違するのが好ましい。
【0014】
前記突出部は、前記羽根の螺旋方向に連なった突条であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スクリュの羽根の搬送面に複数の突出部を形成するようにしたので、搬送するゴム材料を効果的に混練することができ、詰まり等を抑制してスムーズに搬送し、供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るスクリュ押出機の一部を示す概略断面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3図1のスクリュ押出機で形成するトレッド部の断面図である。
図4】他の実施形態に係る突出部の例を示す平面図及び正面図である。
図5】他の実施形態に係るスクリュ押出機の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0018】
図1は、本実施形態に係るスクリュ押出機を示す。このスクリュ押出機は、円筒状のバレル1と、このバレル1内に収容されるスクリュ2とを備える。
【0019】
バレル1は、軸心が水平方向に向かうように配置され、一端側上面に形成された開口(入口3)にはホッパー4が接続されている。ホッパー4は上方に向かうに従って徐々に断面積が大きくなるテーパ状に形成され、このホッパー4を介してゴム材料が供給されるようになっている。供給されるゴム材料は帯状で、シリカが配合された硬質なものである。またバレル1の一端部にはスクリュ2を回転駆動するためのモータ5が設けられている。一方バレルの他端部にはダイ6が設けられている。ダイ6にはバレル1の他端開口(出口7)から徐々に断面積を縮小する案内通路8が形成されている。ダイ6の先端には口金9が設けられている。口金9にはダイ6の案内通路8の先端開口と合致した矩形孔が形成されている。口金9の先端開口はシャッター10によって開閉可能となっている。またバレル1には、図示しないヒータが設けられ、搬送するゴム材料を温調できるようになっている。
【0020】
スクリュ2は、回転軸11の外周面に羽根12を形成したものである。回転軸11の一端部はモータ5の回転軸11に連結され、他端部は先端に向かうに従って徐々に断面積を小さくする円錐状に形成されている。回転軸11は、モータ5の駆動により、図1中、右側から見て時計回り方向に回転する。羽根12は、所定のリード角を有する螺旋状で、図1中、右側から左側に向かって、右側面から見て回転方向と同じ時計回り方向に延びている。
【0021】
図2に示すように、羽根12の間の溝部底面(回転軸11の外周面)には凸部13が形成されている。凸部13は、搬送するゴム材料の混練を促進するためのものである。また羽根12には、搬送方向に面する搬送面14(図2中、左側面から目視可能な面)には複数の突出部15が形成されている。
【0022】
突出部15は、先端に向かうに従って徐々に断面積が小さくなる円錐状の突起で構成されている。ここでは、突出部15は、直径と高さの比が1:2となるように構成されている。また突出部15は、その軸線が羽根12の搬送面14に直角となるように一体化されている。突出部15の加工方法としては、例えば、機械加工による削出しや放電加工等が挙げられる。また突出部15は、バレル1の入口3に対応する領域から搬送方向側に向かって羽根12の外縁に沿う位置、詳しくは羽根12の外縁と回転軸11の外周面の中央位置に形成されている。突出部15を設ける間隔は、入口3側から搬送方向側に向かうに従って徐々に広がっている。つまり、単位面積当たりの突出部15の数は、ゴム材料が供給される入口3側から離れるに従って少なくなっている。このため、搬送するゴム部材に作用する突出部15の数が減少する。これにより、入口3からバレル1内に投入されたばかりのゴム材料であれば、多くの突起が接触して早期に良好な混練状態を得ることができる。そして、搬送方向下流側に向かうに従って作用する突出部15の数が少なくなり、必要以上に温度上昇してしまうことを防止することができる。なお、突出部15を形成するのは、少なくともバレル1の入口3に対応する領域であればよい。具体的には、バレル1の入口側3の端部から約1mの範囲である。
【0023】
前記構成のスクリュ押出機は、例えば、タイヤのトレッド部を形成する場合、4台設置して使用する。各スクリュ押出機は、図3に示すように、トレッド部16を構成する、ベース17と、その上面のキャップ18と、これらの両側のストリップ19、20とにそれぞれ対応している。そして、ベース17とキャップ18に使用されるゴム材料にはシリカが含有され、ストリップに比べて硬度が高くなっている。このため、スクリュ2の羽根12に突出部15を形成したスクリュ押出機は、ベース17とキャップ18に使用されるゴム材料を押し出すものに使用する。各スクリュ押出機から押し出されたゴム材料がダイ6で一体化された後、口金9から排出される。
【0024】
次に、前記構成のスクリュ押出機の動作について説明する。
ホッパー4を介して供給されたゴム材料は、モータ5を駆動することにより回転するスクリュ2によって出口7側へと温調されながら搬送される。通常、スクリュ2の回転速度に対する出口9からのゴム材料の吐出量は比例している。しかしながら、バレル1の入口3から供給されるゴム材料にシリカが含有されていたり、ゴム材料の供給形態が肉厚や幅広のものであったりした場合、混練がスムーズに行われず、詰まり等が発生し、吐出量が減少する。またゴム材料が詰まった部分の前後でその量にバラツキが生じ、温度の上昇度合いが相違する。
【0025】
前記構成のスクリュ押出機であれば、ゴム材料は、入口近傍では、スクリュ2の回転により羽根12の搬送面14に形成した多数の突出部15がゴム材料に作用し、早期に良好な混練状態となる。また、溝底に設けた凸部13によってもゴム材料の混練が促進される。このため、ゴム材料を、スクリュ2の回転により詰まり等を発生させることなくスムーズに搬送することができる。そして、ゴム材料が出口7側に向かって搬送されるに従って、作用する突出部15の数が減少する。このため、ゴム材料が必要以上に混練されて粘度や温度を上昇させることがなく、ゴム材料の劣化を防止することができる。バレル1の出口7でのゴム材料の温度は110〜120℃となる。
【0026】
このようにして混練されたゴム材料はダイ6に至り、所定の厚み及び幅寸法へと圧縮されて、口金9を介して帯状となって排出される。排出された帯状のゴム材料は、タイヤの材料として次の工程へと搬送されて使用される。前述のように、得られたゴム材料は、スクリュ2による搬送時に十分に混練されると共に必要以上に加熱されることもなく良好な(ユニフォーミティに優れた)状態となっている。したがって、形成されたタイヤでは、振動等が発生しにくく、良品となる。
【0027】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0028】
前記実施形態では、バレル1の入口3から出口7側に向かうに従って羽根12に形成する突出部15の間隔を広げるようにしたが、次のように構成することもできる。
図4(a)では、突出部15は三角錐形状に形成されている。ここでは、底面が正三角形に形成され、その1辺と高さの比が1:2となるように構成されている。突出部15を三角錐形状とすることで、ゴム材料に対して鋭角に切り込むことができ、硬質なゴム材料であっても容易に混練させることができる。但し、四角錐等で構成することもできる。
図4(b)では、突出部15は円柱状に形成されており、その先端部分は半球状に形成されている。この突出部15は、直径と高さの比が1:2とされている。
図4(c)では、突出部15は円柱状に形成されており、その先端部分は円錐状に形成されている。
但し、これらの形状に限らず、四角柱等、種々の形状とすることができる。また、一定の長さを有する突条に形成することもできる。突条とする場合、羽根12が延びる螺旋方向に沿って形成してもよいし、この螺旋方向に交差するように形成してもよい。
【0029】
前記実施形態では、突出部15を羽根12が延びる方向に沿って螺旋状に1列で配置するようにしたが、2列以上で配置することもできる(図5では、2列の例を図示)。この場合も、前記同様、バレル1の出口7側に向かうに従って突出部15の数が少なくなるように構成すればよい。また途中で列数が減少するようにしてもよい。
【0030】
前記実施形態では、バレル1の入口3から出口7側に向かって突出部15の数を変化させるようにしたが、次のように構成することもできる。
例えば、バレル1の入口3から出口7側に向かって突出部15のサイズを小さくするようにしてもよい。突出部15のサイズを小さくする方法としては、突出寸法を小さくするだけでもよく、要は羽根12の螺旋方向に直交する断面積が小さくなるように構成できればよい。
【0031】
また、バレル1の入口3から出口7側に向かって突出部15の形状を変化させるようにしてもよい。例えば、入口3側では円錐状とし、出口7側に向かうに従って徐々に丸みを帯びた形状とすればよい。具体的に、突出部15の形状を、図4(a)の三角錐となったもの、図4(c)の円柱の先端部分が円錐状となったもの、図4(b)の円柱の先端部分が半球状となったものの順で形状を変化させるようにすればよい。但し、変化させる形状はこれらのものに限らず、徐々に形状が丸みを帯びてゴム材料に対して作用させる力を軽減できる形状変化であればよい。これにより、ゴム材料が過度に混練されて温度上昇するといった不具合の発生を防止することができる。
【0032】
前記実施形態では、バレル1の入口3から出口7側に向かって突出部15の数等を一様に変化させるようにしたが、複数の領域に分割して各領域で突出部15の数等を変更することもできる。例えば、入口側領域、出口側領域、及び、それらの間の中間領域からなる3領域に分割し、入口側領域、中間領域及び出口側領域の順で段階的に突出部15の数等を変更するようにすればよい。具体的に、数を変更する場合、入口側領域、中間領域及び出口側領域での単位面積当たりの突出部15の数は、6:3:1とすればよい。
【0033】
前記実施形態では、突出部15を搬送面14に対して直交する方向に突出させるように形成したが、傾斜角度を設けることも可能である。
【0034】
前記実施形態では、突出部15のみをバレル1の出口7側に向かって数を減らす等によりゴム材料への影響を抑制するようにしたが、突出部15と同様に、凸部13も同様に、数、サイズ、形状を変更するようにしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、タイヤ等に使用するゴム材料を混練して温調するのに適したスクリュ押出機である。
【符号の説明】
【0036】
1…バレル
2…スクリュ
3…入口
4…ホッパー
5…モータ
6…ダイ
7…出口
8…案内通路
9…口金
10…シャッター
11…回転軸
12…羽根
13…凸部
14…搬送面
15…突出部
16…トレッド部
17…ベース
18…キャップ
19、20…ストリップ
図1
図2
図3
図4
図5