特許第6352788号(P6352788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352788
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】回転電機の回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   H02K13/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-245300(P2014-245300)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-111768(P2016-111768A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】中山 真哉
(72)【発明者】
【氏名】福田 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】野本 義弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 英之
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/111126(WO,A1)
【文献】 特開昭50−85747(JP,A)
【文献】 実開昭53−19706(JP,U)
【文献】 実開昭52−48604(JP,U)
【文献】 特開平7−79549(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/009901(WO,A1)
【文献】 実開昭49−60202(JP,U)
【文献】 特開平9−213444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の回転子主軸と、
前記回転子主軸の軸心部に配設され、それぞれ絶縁状態で保持された一対の中心孔銅帯と、
前記回転子主軸の軸端部に締結固定され、外周面に界磁電流を供給するための一対のコレクタリングが装着されたコレクタ軸と、
前記コレクタ軸の外周部位に前記コレクタ軸の軸方向に沿って延設されたリード溝内に挿入され、それぞれ前記コレクタリングに導電性のスタッドを介して接続された複数の軸方向リードバーと、
前記回転子主軸における前記コレクタ軸との連結部側の軸端部に配設され、内端部がそれぞれ前記中心孔銅帯に接続された複数の径方向リードバーと、
前記コレクタ軸における前記回転子主軸との連結部側の軸端部に前記コレクタ軸の軸方向に沿って延設された複数の軸方向貫通孔内に挿入され、一端がそれぞれ前記径方向リードバーの外端部と接続され、他端がそれぞれ前記軸方向リードバーに接続された複数の導電性の軸方向スタッドとを具備することを特徴とする回転電機の回転子。
【請求項2】
前記回転子主軸と前記コレクタ軸との接合面、および前記コレクタ軸の前記軸方向貫通孔にそれぞれ水素シール機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項3】
前記コレクタ軸は、前記リード溝が偶数個設けられ、且つ前記コレクタ軸の円周方向に均等に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機の回転子。
【請求項4】
前記コレクタ軸は、前記一対のリード溝が同一の長さであることを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機の回転子。
【請求項5】
前記回転子主軸は、前記中心孔銅帯の端部に前記径方向リードバーが溶接により取り付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機の回転子。
【請求項6】
前記回転子主軸は、前記中心孔銅帯の端部に前記径方向リードバーがボルト締結により取り付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機の回転子。
【請求項7】
前記軸方向リードバーの一部、若しくは全体が金属箔を積層することにより構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機の回転子。
【請求項8】
前記コレクタ軸は、前記軸方向リードバーが絶縁物の楔部材によって前記リード溝内に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機の回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機、一例としてタービン発電機における回転子を励磁するために、界磁巻線に対して界磁電流を供給する必要がある。そのための手段として、カーボンブラシをコレクタリングに対して摺接させることにより、回転体に対して直接電流を供給する方式が一般に知られている。
【0003】
図9は、上記コレクタリングを用いた一般的な回転電機の回転子aの構造の一例を示す。陽極側、陰極側で対となるコレクタリングb1、b2は一般的に回転子aの反直結側の機外部に位置しており、中空の回転子軸である回転子主軸cに対してコレクタリング絶縁筒dを介して絶縁保持される構造となっている。
【0004】
中空の回転子主軸cの軸中心部には、陽極側、陰極側の中心孔銅帯g1、g2が互いに絶縁状態で並設されている。一対のコレクタリングb1、b2はそれぞれ径方向に設けられた貫通孔eを貫通する接続コレクタスタッドfによって陽極側、陰極側の各中心孔銅帯g1、g2へとそれぞれ電気的に接続され、さらに中心孔銅帯g1、g2が界磁巻線側へと同じく接続スタッド等により接続されることで界磁電流が供給される。
【0005】
特に発電機の内部が水素により冷却される方式の場合には、中心孔銅帯g1、g2に接続されるコレクタスタッドfの挿入部の周縁部位に水素シールパッキンhが設けられる。また、回転子主軸cの中心孔c1の開口部においては水素シールプラグiが取り付く構造となる。
【0006】
図9における発電機の駆動方式は片側にのみ蒸気タービン等の駆動機器が備わったものであるが、図10に示すように発電機Aの両側から蒸気タービンB1やガスタービンB2により駆動される両軸駆動方式も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4832618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
両軸駆動方式の場合、コレクタリングが位置する側の回転軸においてもタービン出力に応じた伝達トルクが負荷される。そのため、運転中においては回転軸に対して捻り応力が発生する。また、短絡事故等が発生した場合においては、過渡的に過大なトルクが課せられることとなる。
【0009】
図9に示す回転電機の回転子構造においては、中空の回転子軸である回転子主軸cに対して、径方向に貫通孔eが存在することから、この貫通孔eの部分に捻り応力集中が発生することが知られている。
【0010】
また、当該貫通孔eはコレクタリングb1、b2の部位に設けられることとなるが、コレクタリングb1、b2の外径はカーボンブラシ摺動面の周速により制約を受けるため、回転子主軸cの径を増大させることは困難となる。そのため、コレクタリングb1、b2から軸方向に延設されるリードバーを接続し、且つ径方向の貫通穴位置のコレクタ軸の外径をコレクタリングb1、b2の外径よりも大きくすることにより、平均応力を抑える構造が提案されている。
【0011】
しかしながら、上記構造の場合でも、コレクタ軸には、径方向の貫通穴および中心孔は存在しており、高い応力集中場となることが想定される。また、コレクタリング挿入のために、コレクタ軸の両側に軸カップリングを焼嵌する構造であることから、組立性が低下することが考えられる。
【0012】
実施の形態は上記事情に着目してなされたもので、より機器としての信頼性および組立・メンテナンス性の向上を実現することが可能となる回転電機の回転子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施の形態の回転電機の回転子は、一対の中心孔銅帯を有する回転電機の回転子主軸と、外周面に一対のコレクタリングが装着されているコレクタ軸と、複数の軸方向リードバーと、複数の径方向リードバーと、複数の導電性の軸方向スタッドとを具備する。複数の軸方向リードバーは、前記コレクタ軸の外周部位に軸方向に沿って延設された複数のリード溝内にそれぞれ挿入され、それぞれ前記コレクタリングに導電性のスタッドを介して接続されている。複数の径方向リードバーは、前記回転子主軸における前記コレクタ軸との連結部側の軸端部に配設され、内端部がそれぞれ前記中心孔銅帯に接続されている。複数の導電性の軸方向スタッドは、前記コレクタ軸の軸方向に沿って延設された複数の軸方向貫通孔内に挿入され、一端がそれぞれ前記径方向リードバーの外端部と接続され、他端がそれぞれ前記軸方向リードバーに接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態の回転電機の回転子主軸とコレクタ軸との連結部分を示す要部の縦断面図。
図2図1のII−II線断面図。
図3】第1の実施の形態の回転電機の回転子主軸とコレクタ軸および焼嵌カップリングとの連結部分を示す斜視図。
図4】第1の実施の形態の回転電機の回転子主軸の中心孔銅帯と径方向リードバーとの連結部分を示す斜視図。
図5】第2の実施の形態の回転電機の回転子主軸の中心孔銅帯と径方向リードバーとの連結部分を示す要部の縦断面図。
図6】第3の実施の形態の回転電機の回転子主軸とコレクタ軸との連結部分を示す要部の縦断面図。
図7】第4の実施の形態の回転電機のコレクタ軸の軸方向リードバーを示す斜視図。
図8】第5の実施の形態の回転電機のコレクタ軸の軸方向リードバーとリードバー楔の装着状態を示す断面図。
図9】一般的な回転電機の回転子の構造の一例を示す断面図。
図10】タービントレイン構成の一例を表す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
(構成)
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。図1乃至図4は、第1の実施の形態を示す。図1は、本実施形態に係る回転電機の回転子の回転子主軸1とコレクタ軸2との連結部分を示す要部の縦断面図である。ここで、回転子主軸1の軸端部には、大径な接続フランジ1a、コレクタ軸2の軸端部には、大径な接続フランジ2aがそれぞれ形成されている。そして、本実施の形態の回転電機の回転子は、回転子主軸1の接続フランジ1aと、コレクタ軸2の接続フランジ2aとが突き当てられた状態で、回転子主軸1に対してコレクタ軸2が締結ボルト3等により締結固定される構成である。コレクタ軸2には、界磁電流を供給するための一対のコレクタリング(例えば陽極側の第1のコレクタリング4と陰極側の第2のコレクタリング5)が備わる。これら第1のコレクタリング4と第2のコレクタリング5は、それぞれ対地絶縁のためにコレクタリング絶縁筒6を介してコレクタ軸2に対して、焼嵌等により固定される。コレクタ軸2に対して、更に軸が接続される場合には、図1に示すとおり焼嵌カップリング7を用いることで、軸の結合が可能となる。これにより、本実施の形態の回転電機の回転子の軸構造は、回転子主軸1と、この回転子主軸1に対して締結固定されるコレクタ軸2、若しくはコレクタ軸2を含む複数の分割軸により構成される。
【0016】
また、コレクタ部の冷却およびカーボンダストの排出の目的のため、コレクタファン8がコレクタファンボス9に対して取り付けられる。図1においては、第1のコレクタリング4と第2のコレクタリング5との間にコレクタファン8およびコレクタファンボス9が配置されているが、これらを軸端部へと配置する構造であっても同様の機能は確保される。
【0017】
コレクタ軸2に焼嵌される第1のコレクタリング4、第2のコレクタリング5は、それぞれカーボンブラシ(図示せず)と摺触することにより、回転体に対して界磁電流を供給することが可能となる。
【0018】
図2および図3に示すように、コレクタ軸2の外周部位には、偶数(本実施の形態では6個)のリード溝10が軸方向に沿って延設されている。ここで、6個のリード溝10は、コレクタ軸2の円周方向に等間隔で均等に配置されている。さらに、6個のリード溝10は、全てコレクタ軸2の軸方向に同一の長さで形成されている。
【0019】
各リード溝10には、軸方向リードバー11とリードバー楔12とがそれぞれ挿入されている。軸方向リードバー11は、各リード溝10の内底部に挿入されている。リードバー楔12は、各リード溝10の開口部側を塞ぐ状態で装着されている。これにより、各リード溝10内の軸方向リードバー11は、リードバー楔12により遠心力に対して保持される構造となっている。
【0020】
さらに、各軸方向リードバー11は、リード溝10内に挿入される直線状のリードバー本体11aと、このリードバー本体11aの先端にほぼL字状に湾曲形成された先端湾曲部11bとを有する。なお、6個の軸方向リードバー11は、すべて同じ大きさで、同一形状に形成されている。そして、6個の軸方向リードバー11のリードバー本体11aの基端部は、第2のコレクタリング5の一部と対応する位置まで延設されている。
【0021】
また、6個のリード溝10内の軸方向リードバー11のうち、例えば3個の軸方向リードバー11は、導電性の第1のコレクタスタッド13aを介して第1のコレクタリング4に接続されている。残りの3個の軸方向リードバー11は、導電性の第2のコレクタスタッド13bを介して第2のコレクタリング5に接続されている。ここで、第1のコレクタスタッド13a、第2のコレクタスタッド13bや、軸方向リードバー11は、第1のコレクタリング4や、第2のコレクタリング5と同様に対地絶縁が行われている。
【0022】
コレクタ軸2の接続フランジ2aには、軸方向に沿って延設された6個の貫通孔14が加工されている。6個の貫通孔14は、コレクタ軸2の周方向に沿って6個のリード溝10と同一の円周方向位置に配置されている。各貫通孔14には、それぞれ棒状の軸方向スタッド15が挿入され、この貫通孔14に対して対地絶縁が行われた状態で装着されている。各軸方向スタッド15の基端部は、軸方向リードバー11の先端湾曲部11bにそれぞれ接続されている。
【0023】
回転子主軸1の軸心部には、中心孔1bが軸方向に延設されている。この中心孔1bには、それぞれ絶縁状態で保持された一対の中心孔銅帯(陽極側の中心孔銅帯16と、陰極側の中心孔銅帯17)が挿入されている。各中心孔銅帯16、17は、それぞれ断面形状が半円形状に形成されている。各中心孔銅帯16、17の基端部は、回転電機の図示しない回転子巻線に対して接続されている。
【0024】
また、回転子主軸1におけるコレクタ軸2との連結部側の軸端部には、コレクタ軸2の軸方向リードバー11と対応する6個の径方向リードバー18が配設されている。6個の径方向リードバー18は、それぞれ回転子主軸1の中心位置から放射方向に延設され、回転子主軸1の周方向にそれぞれ等間隔で配置されている。図4に示すように6個の径方向リードバー18のうち、例えば3個の径方向リードバー18の内端部は、陽極側の中心孔銅帯16の先端部に接続されている。残りの3個の径方向リードバー18の内端部は、陰極側の中心孔銅帯17の先端部に接続されている。ここで、各径方向リードバー18の内端部は、例えば溶接により中心孔銅帯16、17にそれぞれ取り付けられている。
【0025】
さらに、陽極側の中心孔銅帯16に接続されている3個の径方向リードバー18の外端部は、第1のコレクタリング4側に接続されている3個の軸方向スタッド15の先端部に接続されている。陰極側の中心孔銅帯17に接続されている3個の径方向リードバー18の外端部は、第2のコレクタリング5側に接続されている3個の軸方向スタッド15の先端部に接続されている。
【0026】
また、本実施の形態の回転電機は、内部が水素にて冷却される方式である。このように回転電機の内部が水素にて冷却される方式においては、機外に水素が漏洩しない構造とする必要がある。本実施の形態の回転電機の回転子では、回転子主軸1とコレクタ軸2の結合部には水素シールOリング19を挿入している。さらに、コレクタ軸2の軸方向貫通孔14に水素シールパッキン20が装着されている。これらの水素シールOリング19と水素シールパッキン20とによって水素のリーク経路となる可能性がある箇所の水素シールを行う水素シール機構を備えている。
【0027】
(作用)
上記構成の本実施の形態の回転電機の回転子では、陽極側の第1のコレクタリング4と陰極側の第2のコレクタリング5は、それぞれ図示しないカーボンブラシと摺触することにより、界磁電流が供給される。ここで第1のコレクタリング4から供給された界磁電流は、それぞれ3個の第1のコレクタスタッド13a、軸方向リードバー11、軸方向スタッド15、径方向リードバー18を順次介して陽極側の中心孔銅帯16に通電される。同様に、第2のコレクタリング5は、それぞれ3個の第2のコレクタスタッド13b、軸方向リードバー11、軸方向スタッド15、径方向リードバー18を順次介して陰極側の中心孔銅帯17に通電される。さらに、陽極側の中心孔銅帯16および陰極側の中心孔銅帯17は、図示しない回転電機の回転子巻線に対してそれぞれ通電される。
【0028】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の回転電機の回転子では、コレクタ軸2の外周部位に軸方向に沿って延設されたリード溝10内に軸方向リードバー11を配設している。そして、陽極側の第1のコレクタリング4から供給される界磁電流が第1のコレクタスタッド13aを介して軸方向リードバー11に、また陰極側の第2のコレクタリング5から供給される界磁電流が第2のコレクタスタッド13bを介して軸方向リードバー11にそれぞれ通電される。さらに、軸方向リードバー11から軸方向スタッド15を通じて回転子主軸1側の径方向リードバー18に通電される。そのため、コレクタ軸2の内部に径方向の貫通孔を用いずに陽極側の第1のコレクタリング4および陰極側の第2のコレクタリング5から回転子主軸1側に電気的な接続が可能となる。さらに、コレクタ軸2のコレクタリング部には従来のような中心孔が存在しない。
【0029】
したがって、従来構造において必要であったコレクタ軸2の径方向の貫通穴および中心孔が不要となり、特に軸トルクが作用する条件においてもコレクタ軸2のコレクタリング部に過度な集中応力を回避することができる。
【0030】
また、径方向リードバー18は、回転子主軸1の軸端部の接続フランジ1aと、コレクタ軸2の軸端部の接続フランジ2aとの締結固定部に配置されている。そのため、回転子主軸1や、コレクタ軸2に径方向の貫通穴を設ける必要がないので、貫通穴の部分に捻り応力集中が発生することを防止することができる。
【0031】
また、コレクタ軸2のような回転体における曲げ剛性に異方性が存在すると、同期回転速度のN倍の振動を励起することとなる。本実施の形態では、コレクタ軸2の外周部位には、偶数、本実施の形態では6個のリード溝10が軸方向に沿って延設され、かつ6個のリード溝10は、コレクタ軸2の円周方向に等間隔で均等に配置されている。そのため、コレクタ軸2の曲げ剛性の均一化を図ることができる。なお、図2においては、コレクタ軸2の外周部位にリード溝10が計6個設けられている例を示したが、リード溝10の個数は界磁電流の値に応じて任意の個数の偶数とすることが可能である。
【0032】
さらに、コレクタ軸2に設けられたリード溝10は、コレクタスタッドの位置に応じて必要となる溝長は異なる。すなわち、第1のコレクタスタッド13aの位置と、第2のコレクタスタッド13bの位置とでは、必要となるリード溝10の長さは異なる。しかしながら、本実施の形態では、6個のリード溝10は、全てコレクタ軸2の軸方向に同一の長さで形成されている。このように全てのリード溝10の長さを同一とすることにより、任意の断面における曲げ剛性の均一化を図ることが可能となる。したがって、コレクタ軸2の全体のバランスを均一化することができ、コレクタ軸2の回転時の振動の発生を抑制することができる。
【0033】
また、回転子主軸1の一対の中心孔銅帯16、17は、コレクタ軸2の陽極側・陰極側のコレクタリング(陽極側の第1のコレクタリング4と陰極側の第2のコレクタリング5)に対して、それぞれ接続される構造である。そのため、コレクタリング4、5と同様に一対となっている。各中心孔銅帯16、17に対しては、コレクタ軸2のリード溝位置と同一の円周方向位置にて、径方向リードバー18がそれぞれ配置される。そして、例えば3個の径方向リードバー18の内端部は、陽極側の中心孔銅帯16の先端部に接続されている。残りの3個の径方向リードバー18の内端部は、陰極側の中心孔銅帯17の先端部に接続されている。本実施形態においては、図4に示すようにこれらの径方向リードバー18は、中心孔銅帯16、17に対してそれぞれ溶接にて取付けている。本構造により、中心孔銅帯16、17および径方向リードバー18を電気的、機械的に強固な結合とすることが可能となる。
【0034】
[第2の実施の形態]
(構成)
図5は、第2の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図4参照)の回転電機の回転子主軸1の中心孔銅帯16(17)と3つの径方向リードバー18との連結部分の第1の変形例である。本変形例は、回転子主軸1の中心孔銅帯16(17)におけるコレクタ軸2との連結部側の軸端部の角部に位置決め用の切欠部16a(17a)を設けている。これらの切欠部16a(17a)に径方向リードバー18の内端部を係合させた状態で、径方向リードバー18の内端部を中心孔銅帯16(17)に固定ボルト21によって固定する構成になっている。
【0035】
(作用・効果)
本変形例においては、中心孔銅帯16(17)と径方向リードバー18の接続を固定ボルト21によってボルト締結にて行うことができる。本構造においては溶接における熱変形の影響を回避することが可能であり、より簡易な製造工程にて接続構造を実現することが可能となる。
【0036】
[第3の実施の形態]
(構成)
図6は、第3の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図4参照)の回転電機の回転子主軸1の中心孔銅帯16(17)と3つの径方向リードバー18との連結部分の第2の変形例である。本変形例は、回転子主軸1の中心孔銅帯16(17)におけるコレクタ軸2との連結部側の軸端部に径方向リードバー18の内端部を当接させた状態で、径方向リードバー18の内端部を中心孔銅帯16(17)に固定ボルト22によって固定する構成になっている。
【0037】
(作用・効果)
本変形例の構造においては図5の第1の変形例と同様に溶接における熱変形の影響を回避することが可能である。さらに、本変形例では、中心孔銅帯16(17)におけるコレクタ軸2との連結部側の軸端部に位置決め用の切欠部16a(17a)を設ける必要がないので、さらに簡易な製造工程にて接続構造を実現することが可能となる。
【0038】
[第4の実施の形態]
(構成)
図7は、第4の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図4参照)の回転電機のコレクタ軸2の軸方向リードバー11の変形例である。本変形例は、軸方向リードバー11の一部である先端湾曲部11bの近傍部位が金属箔、例えば銅箔31を積層することにより構成されている。
【0039】
(作用・効果)
通常、軸方向リードバー11は界磁電流により発生する熱によって熱伸びが生じる。一方で軸方向リードバー11は軸方向に対しては、第1のコレクタスタッド13a(第2のコレクタスタッド13b)や、リード溝10により固定された構造であることから、熱応力が発生する。そのため、経年的に軸方向リードバー11の変形や、それに伴う破損等が想定される。そこで、本変形例では、軸方向リードバー11の一部である先端湾曲部11bの近傍部位を銅箔31の積層体にて構成することにより、軸方向リードバー11の軸方向の熱伸びに対するフレキシビリティを確保し、熱応力を緩和することが可能となる。
なお、軸方向リードバー11は、全体が銅箔31を積層した構造にしてもよい。
【0040】
[第5の実施の形態]
(構成)
図8は、第5の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図4参照)の回転電機のコレクタ軸2のリードバー楔12の変形例である。本変形例では、リードバー楔12は、電気絶縁物にて製造されている。
【0041】
(作用・効果)
本実施形態においては、軸方向リードバー11の固定に使用するリードバー楔12を電気絶縁物にて製造している。ここで、軸方向リードバー11は界磁電流が流れるため、コレクタ軸2等の対地構造物に対しては絶縁が要求される。そのため、図2における軸方向リードバー11の周囲は絶縁物で保護する必要がある。例えばリードバー楔12が導電性の場合はリードバー11とリードバー楔12の間においても絶縁構造が必要となる。本構造のようにリードバー楔12を電気絶縁物とすることにより、軸方向リードバー11のリードバー楔12側の接触面に対しては絶縁が不要となり、リード溝10の深さを浅くすることが実現される。その結果、伝達トルクによるコレクタ軸2の部分での捻り応力をより緩和することが可能となる。
【0042】
これらの実施形態によれば、より機器としての信頼性および組立・メンテナンス性の向上を実現することができる回転電機の回転子を提供することができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1…回転子主軸、1b…中心孔、2…コレクタ軸、4…第1のコレクタリング、5…第2のコレクタリング、10…リード溝、11…軸方向リードバー、13a…第1のコレクタスタッド、13b…第2のコレクタスタッド、14…軸方向貫通孔、15…軸方向スタッド、16…陽極側の中心孔銅帯、17…陰極側の中心孔銅帯、18…径方向リードバー、19…水素シールOリング(水素シール機構)、20…水素シールパッキン(水素シール機構)。
図1
図2
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図4
図5
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図7
図8
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図10