特許第6352794号(P6352794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352794
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/042 20140101AFI20180625BHJP
【FI】
   H01L31/04 500
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-253055(P2014-253055)
(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-115790(P2016-115790A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】西中 大之
【審査官】 山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/073608(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0345674(US,A1)
【文献】 特開2003−178734(JP,A)
【文献】 特開2000−068542(JP,A)
【文献】 特開2001−339091(JP,A)
【文献】 特開2002−164671(JP,A)
【文献】 特開2002−9324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)太陽電池セルが形成された基板を用意する工程と、
(B)前記太陽電池セル上に、第一の保護材を配置する工程と、
(C)前記第一の保護材上に、太陽電池セルと電気的に接続されたリード線を配設する工程と、
(D)前記リード線を、前記基板に対して、立ち上げる工程と、
(E)立ち上がっている前記リード線に、チューブを被せ、前記リード線の立ち上がっている部分を完全に覆う工程と、
(F)開口部を有する第二の保護材を用意し、当該開口部に、前記チューブで被覆されている部分の前記リード線を通して、前記基板上に当該第二の保護材を配置させる工程と、
(G)前記工程(F)の後に、前記チューブで被覆されている部分の前記リード線を、前記第二の保護材上に倒す工程と、
(H)前記工程(G)の後に、前記基板上の積層部材に対して圧力を印加する工程と、
(I)前記工程(H)の後に、前記チューブで被覆されている部分の前記リード線を、前記基板に対して立ち上げる工程とを、備えている、
ことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記チューブには、
切れ目が形成されており、
(J)前記工程(I)の後に、前記切れ目に沿って、前記チューブを切り離し、前記チューブの端部部分を露出させる工程を、さらに備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの製造方法に関する発明であり、特に、太陽電池セルと電気的に接続されているリード線を端子ボックスに接続する場合に適用される。
【背景技術】
【0002】
従来の薄膜太陽電池モジュールにおいては、太陽電池セルが形成された基板の両端部にある集電電極から電気を、外部接続ための端子ボックスに送るために、集電電極から端子ボックスまでの間に、リード線が引き回されている(配設されている)。
【0003】
一般的に、太陽電池モジュールは、EVA(エチレンビニルアセテート)などの封止材および保護シートで覆われるが、これらの部材の外部にリードを出す必要がある。つまり、これらの部材(封止材および保護シート)に開口部を設け、当該開口部にリード線を通して、これらの部材を基板上に配設する必要がある。これにより、これらの部材が、太陽電池セルが形成された基板上に形成されたとしても、開口部を介してリード線の一部を外側(保護シートの上側)に出すことができる。
【0004】
ラミネート処理の際には、外部に出されているリードを保護膜シートの表面上に倒した状態で、封止材のラミネート処理が実施される。そして、ラミネート処理後に、端子ボックスに対してリード線を接続させるために、リード線を起こしていた。
【0005】
ここで、真空でラミネート処理が実施されるために、外部に出したリード線は保護シートに埋もれてしまい、当該埋もれているリード線を、容易には起こすことはできない。また、EVA(封止材)が開口部からはみ出して、リード線にEVAが付着することもある。リード線に対するEVAの付着は、導通不良の原因となり、リード線を起こす際の障害になる。
【0006】
上記問題に鑑みて、保護シートからのリード線を保護する方法が、従来技術として存在している(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−124693号公報
【特許文献2】特開平9−326497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の太陽電池モジュール製造方法では、外部に出したリード線を粘着テープなどで覆っていた。ラミネート処理後において、リード線を端子ボックスに接合するに当たり、リード線を基板に対して立ち上げる必要がある。そこで、従来の方法では、リード線立ち上げの前に、リード線上の粘着テープを剥がす必要がある。
【0009】
しかしながら、粘着テープは薄手であるため、粘着テープの剥がす作業が困難であった。また、粘着テープを剥がすために器具を使用すると、保護シートを傷つけるおそれがある。つまり、リード線を基板に対して立ち上げる作業が困難となり、当該立ち上げの際に保護シートにダメージを与えることがあった。
【0010】
また、リード線に粘着テープの粘着成分が付着し、端子ボックスとリード線との接続において、接合不良や接合時間が多くかかるなどの問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、ラミネート処理後において、リード線を端子ボックスに接続するに際して、リード線を、簡単にかつ保護材にダメージを与えることなく、基板に対して立ち上げることができる、太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。また、端子ボックスに接続されるリード線部分に、接続不良との原因となる付着物が付着することを防止することができる、太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、(A)太陽電池セルが形成された基板を用意する工程と、(B)前記太陽電池セル上に、第一の保護材を配置する工程と、(C)前記第一の保護材上に、太陽電池セルと電気的に接続されたリード線を配設する工程と、(D)前記リード線を、前記基板に対して、立ち上げる工程と、(E)立ち上がっている前記リード線に、チューブを被せ、前記リード線の立ち上がっている部分を完全に覆う工程と、(F)開口部を有する第二の保護材を用意し、当該開口部に、前記チューブで被覆されている部分の前記リード線を通して、前記基板上に当該第二の保護材を配置させる工程と、(G)前記工程(F)の後に、前記チューブで被覆されている部分の前記リード線を、前記第二の保護材上に倒す工程と、(H)前記工程(G)の後に、前記基板上の積層部材に対して圧力を印加する工程と、(I)前記工程(H)の後に、前記チューブで被覆されている部分の前記リード線を、前記基板に対して立ち上げる工程とを、備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、(A)太陽電池セルが形成された基板を用意する工程と、(B)前記太陽電池セル上に、第一の保護材を配置する工程と、(C)前記第一の保護材上に、太陽電池セルと電気的に接続されたリード線を配設する工程と、(D)前記リード線を、前記基板に対して、立ち上げる工程と、(E)立ち上がっている前記リード線に、チューブを被せ、前記リード線の立ち上がっている部分を完全に覆う工程と、(F)開口部を有する第二の保護材を用意し、当該開口部に、前記チューブで被覆されている部分の前記リード線を通して、前記基板上に当該第二の保護材を配置させる工程と、(G)前記工程(F)の後に、前記チューブで被覆されている部分の前記リード線を、前記第二の保護材上に倒す工程と、(H)前記工程(G)の後に、前記基板上の積層部材に対して圧力を印加する工程と、(I)前記工程(H)の後に、前記チューブで被覆されている部分の前記リード線を、前記基板に対して立ち上げる工程とを、備えている。
【0014】
リード線は、厚みを有するチューブにより被覆されているので、当該リード線を人の手で容易に立ち上げることができる。また、人の手によりリード線を立ち上げることができるので(つまり、特別な器具を用いる必要がないので)、第二の保護材にダメージを与えることも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造方法を説明するための工程拡大断面図である。
図2】本実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造方法を説明するための工程拡大断面図である。
図3】本実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造方法を説明するための工程拡大断面図である。
図4】本実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造方法を説明するための工程拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0017】
<実施の形態>
以下、工程拡大断面図を用いて、本実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造方法について、説明する。
【0018】
図1を参照して、太陽電池モジュールのベースとなるガラス基板4を用意する。当該ガラス基板4の厚さは、3〜4mm程度である。ガラス基板4には、発電層および電極層等から成る太陽電池セルが形成されている。ガラス基板4の上面に保護テープ(第一の保護材と把握できる)3を貼り付け、当該保護テープ3上に、リード線1を配線する。
【0019】
ここで、保護テープ3は、ガラス基板4の上面の保護およびガラス基板4とリード線1との間の絶縁のために、配設される。また、リード線1の一方端は、太陽電池セル(より具体的には、集電電極)と電気的に接続されている。
【0020】
次に、リード線1を、ガラス基板4に対して、立ち上げる(起こす)。つまり、保護テープ3上に配線されているにリード線1において、他方端から所定の領域を、上方に向けて曲げて、リード線1を保護テープ3に固定する。ここで、リード線1の立ち上げる部分の長さは、20mm程度である。リード線1は、金属製なので容易に曲げることができる。ここで、リード線1は、一例として、幅2〜3mm、厚み0.1〜0.3mmであり、材質は、メッキした銅リボンまたはアルミリボンなどである。
【0021】
次に、立ち上がっている部分のリード線1に対して、チューブ2を被せる。保護チューブ2は、例えばゴムのような樹脂性であり、内部にリード線1が通る空洞部が設けられている。つまり、当該空洞部にリード線1を通すことにより、チューブ2により、立ち上がっている部分のリード線1を完全に覆うことができる。ここで、チューブ2の厚みは0.5〜1mm程度である。チューブ2には切れ目8が形成されている。つまり、人が後に容易に手でチューブ2を切断できるように、当該チューブ2にはハーフカット(切れ目8)が形成されている。
【0022】
当該工程までにより、図1に示す構成が完成する。
【0023】
次に、図2を参照して、ガラス基板4上に、EVAなどの封止材5と保護シート6(封止材5と保護シート6を第二の保護材と把握できる)とを、当該順に配置する。なお、封止材5は、ラミネートフィルムである。
【0024】
ここで、封止材5と保護シート6には、開口部7が形成されている。したがって、封止材5と保護シート6を配置する際に、当該開口部7に、立ち上がっている部分のリード線1(換言すれば、チューブ2で被覆されている部分のリード線1)を通す。
【0025】
上記までの工程により、保護シート6の開口部7からは、チューブ2で被覆されたリード線1が突出している(立ち上がっている)。次に、当該チューブ2で被覆されている部分のリード線1を、保護シート6上に倒す。
【0026】
当該工程までにより、図2に示す構成が完成する。
【0027】
次に、図2に示した構造(積層部材と把握できる)に対して、ラミネート処理を施す(つまり、封止材5により、太陽電池セルおよびリード線1等が形成されたガラス基板4の全体をラミネート)。ラミネート処理は、温度上げた真空中において、図2に示した構造に対して圧力(外力)を印加することにより、実施される。
【0028】
上記の通り、ラミネート処理では、図2に示した構造の上方向からガラス基板4を押し付ける圧力(外力)が印加されるので、保護シート6上に倒されている、チューブ2が被覆されているリード線1は、当該保護シート6の上面に押し付けられる。
【0029】
ここで、チューブ2は樹脂性で柔軟性のあるために、ラミネート処理装置の真空環境の影響を与えることはない。また、ラミネート処理の加熱温度は、封止材5の材質によっても異なるが、一例として150℃程度である。なお、チューブ2は、ラミネート処理際の加熱温度に対しても影響を受けない耐熱性である。
【0030】
次に、図3を参照して、チューブ2で被覆されている部分のリード線1を、ガラス基板4に対して、再度立ち上げる。ここで、ラミネート処理により、リード線1は、保護シート6の上面に押し付けられている。しかしながら、リード線1は、厚みを有するチューブ2により被覆されているので、当該リード線1を人の手で容易に立ち上げることができる。また、人の手によりリード線1を立ち上げることができるので(つまり、特別な器具を用いる必要がないので)、保護シート6にダメージを与えることも防止できる。
【0031】
次に、切れ目8に沿って、リード線1の先端部領域のチューブ2を切り離す(切り取る)。チューブ2の一部を切り取ることにより、図3に示す状態となる。上記までの一連の工程により不純物等がチューブ2に付着したとしても、切れ目8に沿ってチューブ2の一部を剥離することにより、切り取られたチューブ2と共に不純物(付着物)も除去される。したがって、リード線1を端子ボックスに接続する直前に、清浄なリード線1の他方端部分を露出させることができる。
【0032】
なお、チューブ2において切れ目8は、保護シート6の上面より上方で、端子ボックスに接続できる程度の長さのリード線1が露出できるような位置に、配設されている。
【0033】
当該工程までにより、図3に示す構成が完成する。
【0034】
次に、図4を参照して、端子ボックス11の下面を、接着材等を用いて、保護シート6の上面に接着する。ここで、図4に示すように、端子ボックス11の下面側には、開口部10が設けられている。したがって、端子ボックス11を保護シート6上に配置する際、当該開口部10にリード線1を通す。
【0035】
また、端子ボックス11の内部には、端子9が配設されている。そこで、開口部10を貫通しているリード線1と端子9とを、はんだ付け等で電気的に接続する。ここで、端子9に接続される部分のリード線1は、チューブ2に被覆されていない。なお、端子ボックス11の上部は開口して、端子ボックス11の上面側から、リード線1と端子9との接続処理が実施される。なお、リード線1と端子9との接続処理後、内部の充填処理後、上面の開口部が閉じられ、端子ボックス11内は封止される。
【0036】
以上のように、本実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造方法においては、リード線1にチューブ2を被せた上で、ラミネート処理が実施される。
【0037】
ラミネート処理により、リード線1は、保護シート6の上面に押し付けられている。しかしながら、リード線1は、厚みを有するチューブ2により被覆されているので、当該リード線1を人の手で容易に立ち上げることができる。また、人の手によりリード線1を立ち上げることができるので(つまり、特別な器具を用いる必要がないので)、保護シート6にダメージを与えることも防止できる。なお、チューブ2は、柔軟性・耐熱性がある樹脂等が好ましい。
【0038】
また、リード線1の先端に付着物があると、はんだ付けにより、リード線1と端子9とが接続ができない問題が生じる。また、リード線1に不純物が付着している状態で、ハンダ付け接続ができたとしても、不純物が端子9とリード線1との間における電気抵抗となり、太陽電池モジュールにおける変換効率が低下する。
【0039】
そこで、本実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造方法では、チューブ2に切れ目8が形成されており、ラミネート処理後、リード線1を端子ボックス11接続する目に、当該切れ目8に沿ってチューブ2の先端領域を切り離し、リード線1の先端部分を露出させる。
【0040】
したがって、剥離されるチューブ2とともに、当該チューブ2に付着していた不純物も取り除かれ、清浄なリード線1の先端を露出させることができる。つまり、リード線1を端子ボックス11に接続する直前において、当該リード線1には不純物は付着していない。また、切れ目8の存在により、人の手により簡単に、チューブ2の剥離を行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
1 リード線
2 チューブ
3 保護テープ
4 ガラス基板
5 封止材
6 保護シート
7 開口部
8 切れ目
9 端子
10 開口部
11 端子ボックス
図1
図2
図3
図4