(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補間手段は、前記補間処理が実行された前記ギャップデータにおいて、前記平均値で補間された補間データの前後を含む補間領域の値を、前記補間領域の前記補間データの前後それぞれの平均値を用いて線形補間する
ことを特徴とする請求項1に記載の形状計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
(加工装置の構成)
図1は、本実施形態に係る形状計測装置が搭載された加工装置200の構成を例示する図である。
【0011】
加工装置200は、
図1に示されるように、可動テーブル10、テーブル案内機構11、砥石ヘッド15、砥石16、案内レール18、制御装置20、表示装置40を有する。なお、以下の図面において、X方向は可動テーブル10の移動方向、Y方向はX方向に直交する砥石ヘッド15の移動方向、Z方向はX方向及びY方向に直交する高さ方向である。
【0012】
可動テーブル10は、テーブル案内機構11によってX方向に移動可能に設けられており、加工対象及び計測対象となる物体12が載置される。テーブル案内機構11は、可動テーブル10をX方向に移動させる。
【0013】
砥石ヘッド15は、下端部に砥石16が設けられており、X方向に移動可能且つZ方向に昇降可能に案内レール18に設けられている。案内レール18は、砥石ヘッド15をX方向及びZ方向に移動させる。砥石16は、円柱形状を有し、その中心軸がY方向に平行になるように砥石ヘッド15の下端部に回転可能に設けられている。砥石16は、砥石ヘッド15と共にX方向及びZ方向に移動し、回転して物体12の表面を研削する。
【0014】
制御装置20は、可動テーブル10及び砥石ヘッド15の位置を制御し、砥石16を回転させることで、物体12の表面を研削するように加工装置200の各部を制御する。
【0015】
表示装置40は、表示手段の一例であり、例えば液晶ディスプレイ等である。表示装置40は、制御装置20によって制御され、例えば物体12の加工条件等が表示される。
【0016】
(形状計測装置の構成)
図2は、加工装置200に搭載されている形状計測装置100の構成を例示する図である。
図2に示されるように、形状計測装置100は、制御装置20、センサヘッド30、表示装置40を含む。
【0017】
制御装置20は、上記したように、物体12の表面を研削するように加工装置200の各部を制御すると共に、センサヘッド30の各変位センサ31a,31b,31cから出力される測定値に基づいて、物体12の表面形状を求める。
【0018】
制御装置20は、センサデータ取得部21、ギャップデータ算出部23、補間処理部25、形状算出部27を有する。制御装置20は、例えばCPU,ROM,RAM等を含み、CPUがRAMと協働してROMに記憶されている制御プログラムを実行することで各部の機能が実現される。
【0019】
センサデータ取得部21は、センサヘッド30に設けられている各変位センサ31a,31b,31cからセンサデータを取得する。ギャップデータ算出部23は、ギャップ算出手段の一例であり、センサデータ取得部21が取得したセンサデータからギャップデータを算出する。補間処理部25は、補間手段の一例であり、ギャップデータ算出部23により算出されたギャップデータに対して補間処理を実行する。形状算出部27は、形状算出手段の一例であり、補間処理部25により補間処理が実行されたギャップデータに基づいて物体12の表面形状を算出する。
【0020】
センサヘッド30は、検出器の一例であり、第1変位センサ31a、第2変位センサ31b、第3変位センサ31cを備え、加工装置200の砥石ヘッド15の下端に設けられている。
図3は、実施形態に係るセンサヘッド30の構成を例示する図である。
【0021】
センサヘッド30は、
図3に示されるように、第1変位センサ31a、第2変位センサ31b、第3変位センサ31cがX方向に一列に配設されている。
【0022】
第1変位センサ31a、第2変位センサ31b、第3変位センサ31cは、変位計の一例であり、例えばレーザ変位計である。第1変位センサ31a、第2変位センサ31b、第3変位センサ31cは、測定点が物体12の表面上においてX方向に平行な直線状に等間隔で並ぶように配設され、それぞれ物体12の表面上の測定点との間の距離を測定する。物体12が可動テーブル10に載せられてX方向に移動すると、センサヘッド30が物体12に対して相対移動し、各変位センサ31a,31b,31cが物体12の表面を走査して測定値を出力する。
【0023】
表示装置40は、制御装置20により制御され、例えば形状算出部27によって求められた表面形状の計測結果等が表示される。
【0024】
なお、本実施形態では、形状計測装置100と加工装置200とが、制御装置20及び表示装置40を共用する構成になっているが、形状計測装置100及び加工装置200のそれぞれに制御装置と表示装置とが設けられてもよい。また、可動テーブル10が物体12と共にX方向に移動する構成になっているが、センサヘッド30が物体12に対してX方向に移動する構成であってもよい。
【0025】
(形状計測の基本原理)
次に、形状計測装置100において物体12の表面形状を求める方法について説明する。
図4は、表面形状の計測方法について説明するための図である。
【0026】
変位センサ31a,31b,31cは、
図4に示されるように、間隔PでX方向に一列に配設され、それぞれ物体12表面のa点、b点、c点との距離を測定する。変位センサ31a,31b,31cによって求められる各変位センサ31a,31b,31cと物体12の表面との距離をそれぞれA,B,Cとすると、
図4(A)に示されるZ方向におけるb点からa点とc点とを結ぶ直線との距離g(ギャップ)は、以下の式(1)により求められる。
【0027】
【数1】
次に、物体12表面のb点における変位zの2階微分(d
2z/dx
2)は、b点の曲率(1/r)であり、
図4(B)に示されるように、a点とb点とを結ぶ直線の傾き(dz
ab/dx)と、b点とc点とを結ぶ直線の傾き(dz
bc/dx)とを用いて、以下の式(2)により表される。
【0028】
【数2】
式(2)に、以下の式(3),(4)を代入し、さらに式(1)を用いると、式(5)で表されるように、変位zの2階微分である曲率をギャップg及びセンサ間の距離Pから求められることが分かる。
【0031】
【数5】
センサ間の距離Pは予め定められているため、各変位センサ31a,31b,31cによるセンサデータから式(1)に基づいてギャップgを求め、式(5)により求められる曲率をセンサ間隔Pで2階積分することで、b点における変位zを求めることができる。
【0032】
ただし、物体12の表面にゴミ、油等の異物や傷等が存在し、センサデータが異物等の影響を受けて大きく変動すると、物体12の表面形状を正確に求めることが出来なくなる場合がある。そこで、本実施形態に係る形状計測装置100は、以下で説明する形状計測処理によって、物体12の表面形状を計測する。
【0033】
(形状計測処理)
図5は、実施形態における形状計測処理のフローチャートを例示する図である。
【0034】
本実施形態における形状計測処理では、まずステップS101にて、可動テーブル10が測定対象物である物体12と共にX方向に移動し、センサヘッド30の各変位センサ31a,31b,31cが物体12の表面を走査する。
【0035】
次にステップS102にて、センサデータ取得部21が、各変位センサ31a,31b,31cからセンサデータを取得する。
図6は、実施形態におけるセンサデータを例示する図である。各変位センサ31a,31b,31cは、物体12表面の測定点との距離をセンサデータとして出力する。
図5に示されるグラフでは、第1変位センサ31aのデータが一点鎖線、第2変位センサ31bのデータが実線、第3変位センサ31cのデータが破線で示されている。
【0036】
ここで、物体12の表面に異物等が存在すると、
図6に例示されるように、異物等が存在する部分でセンサデータが大きく変動する。
図6に示される例では、変位センサ31aでは150mm付近、変位センサ31bでは250mm付近、変位センサ31cでは350mm付近で、異物等の影響によりそれぞれセンサデータが非常に大きな値となっている。なお、各変位センサ31a,31b,31cは、走査方向であるX方向に離間して設けられているため、同一表面の計測結果でも異物等によるデータ変動位置が異なる。
【0037】
図5のフローチャートに戻り、次にステップS103にて、ギャップデータ算出部23が、各変位センサ31a,31b,31cのセンサデータから、式(1)に基づいてギャップデータを算出する。
図7は、
図6に示されるセンサデータからのギャップデータ算出例である。
【0038】
このように物体12の表面に異物等が存在すると、異物等の影響を受けてギャップデータが大きく変動する部分が生じ、正確に物体12の表面形状を求めることが困難になる。そこで、本実施形態における形状計測処理では、ステップS104にて、補間処理部25がギャップデータに対して補間処理を実行する。
【0039】
(補間処理)
図8は、実施形態における補間処理のフローチャートを例示する図である。
【0040】
補間処理では、まずステップS201にて、補間処理部25が、ギャップデータの平均値及び標準偏差σを算出する。次にステップS202にて、補間処理部25は、ギャップデータにおいて(平均値±3σ)の範囲外のデータの有無を判定する。
【0041】
(平均値±3σ)の範囲外のデータが無い場合(ステップS202:NO)、ステップS203に進み、補間処理部25が、物体12の表面に異物等が無いと判断して異物フラグを「False」に設定し、補間処理を終了する。
【0042】
(平均値±3σ)の範囲外のデータが有る場合(ステップS202:YES)、ステップS204に進み、補間処理部25が、物体12の表面に異物等が有ると判断して異物フラグを「True」に設定する。次にステップS205にて、補間処理部25は、ギャップデータにおいて(平均値±3σ)の範囲外のデータを平均値で補間する。
【0043】
例えば
図9に示されるギャップデータは、(平均値±3σ)の範囲外のデータが存在する。この場合において、補間処理部25は、例えば
図10(A)のように(平均値+3σ)を超えるデータを削除し、
図10(B)のように削除した部分を平均値で補間する。補間処理部25は、同様に、(平均値−3σ)未満のデータを削除し、削除した部分を平均値で補間する。このような処理により、ギャップデータにおける物体12の表面に存在する異物の影響が低減される。
【0044】
次にステップS206にて、補間処理部25は、再びギャップデータの平均値及び標準偏差を算出する。
図11は、
図9に示されるギャップデータから、(平均値±3σ)の範囲外のデータを平均値で補間した後のギャップデータである。
図11に示されるように、(平均値±3σ)の範囲外のデータが有る場合には、ステップS207にて、補間処理部25が、同様に(平均値±3σ)の範囲外のデータを平均値で補間する。
【0045】
ステップS208では、補間処理部25は、算出した標準偏差σ
nと、直前に算出した標準偏差σ
n−1との変化率|(σ
n−σ
n−1)/σ
n×100|(%)を算出し、標準偏差σの変化率が0.1%未満か否かを判定する。補間処理部25は、標準偏差σの変化率が例えば0.1%未満になるまでステップS206,S207の処理を繰り返し実行する。ステップS206,S207の処理を繰り返し実行することで、ギャップデータから物体12の表面に存在していた異物の影響がより低減されていく。
【0046】
図12は、標準偏差σの変化率が0.1%未満になるまでステップS206,S207の処理が繰り返し実行されたギャップデータである。
図9に示される補間処理前のギャップデータと比較すると、
図12に示されるギャップデータでは物体12の表面に存在していた異物によるデータ変動が大きく低減されていることが分かる。なお、標準偏差σの変化率の目標値は、0.1%に限られるものではなく、例えば必要な測定精度等に応じて適宜設定される。
【0047】
次にステップS209にて、補間処理部25は、ギャップデータにおける補間データの前後を含む補間領域のデータを、補間データの前後それぞれの平均値を用いて線形補間する。ステップS209の処理を、
図13を用いて具体的に説明する。
【0048】
補間処理部25は、
図13(A)に示されるように、ギャップデータにおいて平均値で補間した補間データと、補間データの前後のデータ(例えば前後各3mm分)とを含む範囲を補間領域とする。なお、補間領域は、補間データの前後各3mmを含む範囲に限られるものではなく、例えば計測条件等に応じて適宜設定される。
【0049】
次に、補間処理部25は、補間領域における補間データの前後それぞれの平均値を算出する。
図13(A)の例では、補間データ前(
図13において補間データの左側)の平均値がa、補間データ後(
図13において補間データの右側)の平均値がbとなっている。補間処理部25は、
図13(B)に示されるように、補間領域におけるギャップデータを削除し、補間領域を平均値aと平均値bとを結ぶ直線で線形補間する。
【0050】
図14は、
図12に示されるギャップデータから補間領域が線形補間された後のギャップデータを例示する図である。
図14に示されるギャップデータでは、
図12のギャップデータにおいてX座標の150mm付近、250mm付近、350mm付近にそれぞれ残っていた物体12の表面に存在する異物の影響が低減されていることが分かる。
【0051】
なお、ステップS201からS208までの処理によってギャップデータから異物等の影響を低減できている場合には、ステップS209における補間領域の線形補間を実行しなくてもよい。
【0052】
補間処理部25によって、以上で説明した補間処理が実行され、ギャップデータから物体12の表面に存在した異物の影響が取り除かれると、
図5に示される形状計測処理に戻り、ステップS105に進む。
【0053】
ステップS105では、補間処理部25によって補間処理が実行されたギャップデータを用いて、形状算出部27が、式(5)に基づいて物体12の表面形状を算出する。また、形状算出部27によって算出された物体12の表面形状が、表示装置40に表示される。
【0054】
次にステップS106では、補間処理部25が、異物フラグが「True」であるか否かを判定する。異物フラグが「True」の場合(ステップS106:YES)には、ステップS107にて、例えば「先頭より136mm付近にゴミ等の異物が検出されました」等といった異物検出結果が警告として表示装置40に表示される。異物フラグが「False」の場合(ステップS106:NO)には、異物検出結果を表示せずに処理を終了する。
【0055】
形状計測装置100を使用する作業者は、表示装置40に表示される警告から異物等の存在を認識し、より高精度に計測を行いたい場合には、異物等を除去して再度計測を実行できる。
【0056】
図15は、
図14に示される補間処理が実行されたギャップデータに基づいて算出された、表面に異物等が存在する物体12の表面形状計測結果である。また、表面にゴミ等の異物が存在しない物体12の表面形状計測結果を
図16に示す。
図15と
図16とは、同じ物体12の同一部分の表面形状計測結果であり、異物の有無が異なるものである。さらに、
図7に示される異物等の影響を受けたギャップデータを用いて補間処理を実行せずに求められた表面形状計測結果を
図17に示す。
【0057】
図17に示されるように、表面に異物等が存在する物体12の表面形状を補間処理を実行せずに計測した結果は、
図16に示される異物等が無い場合の物体12の表面形状計測結果とは大きく異なっている。このように、ギャップデータが物体12の表面に存在する異物等の影響を受けている場合には、物体12の実際の表面形状とは大きく異なる結果になることが分かる。
【0058】
これに対して、
図15に示される本実施形態における表面形状計測結果は、
図16に示される異物が無い場合の物体12の表面形状計測結果と同様の結果が得られていることが分かる。このように、本実施形態によれば、上記した補間処理を実行してギャップデータにおける異物の影響を低減することで、物体12の表面に異物等が存在する場合であっても、異物等が無い場合と同様の表面形状計測結果を得ることが可能になる。
【0059】
以上で説明したように、本実施形態に係る形状計測装置100によれば、ゴミ、油等の異物、傷等が表面に存在する物体12であっても、表面形状を精度良く計測することが可能になる。
【0060】
また、本実施形態に係る形状計測装置100が搭載された加工装置200は、物体12の表面を研削した後、物体12を可動テーブル10に載せたまま形状計測装置100によって実行される表面形状計測結果に基づいて、補正加工等を行うことができる。したがって、物体12の加工を効率良く、高精度に行うことができる。
【0061】
以上、実施形態に係る形状計測装置、加工装置及び形状計測方法について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0062】
例えば、形状計測装置100は、本実施形態とは異なる構成で物体12の研削等の加工を行う加工装置に搭載されてもよい。