(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、前記弾性係止片は、先端に突設された抜け止め用の爪を有し、前記爪が弾性係止片の揺動を伴って嵌合状態と嵌合解除状態に切り換えられることを特徴とするアシストグリップ。
請求項1又は3において、前記弾性係止片は、前記案内溝の終端付近又は/及び前記軸受穴を区画している壁部分の一部をスリット状空部により区画形成したものであり、前記空部側へ揺動可能になっていることを特徴とするアシストグリップ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各構造において、文献1では、各軸受穴に通じる案内溝を有し、支持ピンの両端が対応する案内溝から軸受穴に嵌合される。同じく、文献2では、各軸受穴に通じる案内溝を有し、両取付け部材のボスが対応する案内溝から軸受穴に嵌合される。このため、両文献では、案内溝がない場合に比べ嵌合操作し易くなるが、以下のような問題がある。
【0006】
すなわち、文献1や2の構造では、支持ピンの両端又は両側のボスを対応する案内溝に沿って同時に動かすが、左右で偏って動かされると、支持ピンの端又はボスが案内溝を区画している内側面に局部的に当たって軸受穴まで良好に摺動できなくなる。この点は、特にロボット等の自動組立で行う場合に正常な稼動を維持できなくなる。また、文献1の支持ピンは、両端が溝内に突出された突起部を押し潰しながら軸受穴に嵌合されるため、突起部を乗り越えるときに過大な荷重を要し、その点からも作業性が悪くなる。
【0007】
本発明の目的は、一対の軸支部を案内溝の導入溝から終端まで安定して摺動したり、一対の軸支部を対応する軸受穴(案内溝の終端を含む)に嵌合し易くして組立性を向上する。他の目的は以下の内容説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、
図5と
図9の例を参照して特定すると、パネ
ルの取付面に固定される固定部(4や39等)、及び一対の軸支部(36)を有したリテーナ(1,1A)と、長手方向の両端に設けられた一対の凹部(22)、及び前記凹部の内周面のうち長手方向で対向した両内側面の少なくとも一方に形成されて前記軸支部が摺動可能な案内溝(23)、並びに前記両内側面に同軸線上に設けられた軸受穴とを有したグリップ本体(2)とを備え、前記グリップ本体が前記軸支部を支点として回動されて前記取付面に沿った格納位置と前記取付面から突出した使用位置とに切り換えられるアシストグリップであって、前記案内溝(23)は前記凹部(22)の開口縁から内底面側に延びていると共に、前記両内側面の軸受穴の少なくとも一方は前記案内溝の終端又は前記軸受穴に
対応して設けられて前記軸支部(36)の端部を嵌合可能又は抜け止め係止する弾性係止片(25)を有していることを特徴とするアシストグリップ。
【0009】
また、請求項2の発明は、
図5と
図9の例を参照して特定すると、請求項1の前提要件「・・・であって」が同じ。加えて、前記軸受穴(24)は、前記案内溝(23)の終端(23b)に繋がるよう設けられた構成、前記案内溝の終端(23b)又は軸受穴(24)に
対応して設けられて前記軸支部(36)の端部を嵌合可能又は抜け止め係止する弾性係止片(28)を有している構成、前記案内溝(23)
が省略されて軸受穴単独で設けられた構成の何れかであり、前記リテーナ(1,1A)を前記グリップ本体(2)に取り付ける場合は、前記両内側面(22A,22B)の間の幅(X)を、前記両内側面の少なくとも一方に形成された前記案内溝(23)に対応する
内側面間の幅より大きい幅を有した前記軸支部の挿入により拡開して、前記各軸支部を対応する前記軸受穴に嵌合
し、前記グリップ本体の使用位置において、前記軸支部に加わる荷重を略水平状態になった前記案内溝の終端又は/及び前記軸受穴で受けることを特徴としている。
【0010】
以上の各発明において、『パネ
ルの取付面』は、車体のボディパネルを構成しているアウターパネルやインナーパネル、それらパネルに装着された天井トリム等の内装材、更にそれらに類似の部材を含む。
【0011】
以上の請求項1や2の各発明としては以下のように具体化されることがより好ましい。
(ア)請求項1において、前記弾性係止片は、先端に突設された抜け止め用の爪を有し、前記爪が弾性係止片の揺動を伴って嵌合状態と嵌合解除状態に切り換えられる構成である(請求項3)。
(イ)請求項1又は3において、前記弾性係止片は、前記案内溝の終端付近又は/及び前記軸受穴を区画している壁部分の一部をスリット状空部により区画形成したものであり、前記空部側へ揺動可能になっている構成である(請求項4)。
【0012】
(ウ)請求項3において、前記案内溝の溝幅から前記爪の突出量を引いた溝幅最小寸法A、前記軸支部の端部の径寸法B、前記案内溝の溝幅寸法Cとした場合、A<B<Cの関係になっている構成である(請求項5)。
【0013】
(エ)請求項
1において
、前記グリップ本体の使用位置において、前記軸支部に加わる荷重を略水平状態になった前記案内溝の終端又は/及び前記軸受穴で受ける構成である(請求項6)。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、特に、案内溝としては
図5に例示にされるごとく両内側面の軸受穴の少なくとも一方が案内溝の終端(23b)又は軸受穴(24)に
対応して設けられて軸支部の端部を嵌合可能又は抜け止め係止する弾性係止片(25)を有している。この弾性係止片は、
図5と
図7(a)に示されるごとく、リテーナ両側の軸支部が案内溝の入口ないしは導入溝から終端まで摺動される過程で、左右で偏って摺動操作されても、自身が弾性揺動して局部的な応力を分散・吸収して軸支部の良好な摺動を保ち易く、組立性を向上したり、軸支部の端部を抜け止め係止して外れ難い枢支構造を実現可能にする。なお、この弾性係止片は、例えば
図5(b)の右側の構成では案内溝の終端を軸受穴として区画形成し、同(a)の左側の構成では案内溝より深い軸受穴と共に形成されている。
【0015】
請求項2の発明では、まず、軸受穴としては例えば
図5(b)の左図のごとく案内溝の終端に繋がる穴又は凹として形成されている構成、その構成に更に弾性係止片を有した構成、
図5(b)の右図のごとく案内溝の終端に位置して弾性係止片にて区画されている構成、
図9(b)の右図のごとく案内溝
が省略されて軸受穴単独で穴又は凹として形成されている構成の何れかである。そして、この発明では、グリップ本体に対するリテーナの取り付け操作において、リテーナをグリップ本体に取り付ける場合は、両内側面の間の幅(X)を、両内側面の少なくとも一方に形成された案内溝に対応する
内側面間の幅より大きい幅を有した軸支部の挿入により拡開して、各軸支部を対応する軸受穴に嵌合する。この構造では、例えば、凹部を区画している内側面の肉厚設定や案内溝等の欠肉部を設けるという簡単な構成により、組立性を向上できるようにする。
また、グリップ本体の使用位置において、軸支部に加わる大きな荷重を略水平状態になった案内溝の終端又は/及び軸受穴で受けるため、耐荷重性を向上できるようにする。
【0016】
請求項3の発明では、弾性係止片が先端に突設された抜け止め用の爪を有し、爪が弾性係止片の揺動を伴って嵌合状態と嵌合解除状態に切り換えられるため、請求項1で述べた作用効果をより確実に得られるようにする。
【0017】
請求項4の発明では、弾性係止片が案内溝の終端付近又は/及び軸受穴を区画している壁部分の一部をスリット状空部により区画形成されるため、簡単な構成で実施容易となる。
【0018】
請求項5の発明では、
図5(b)の左側の図から明らかなごとく、案内溝の溝幅から爪の突出量を引いた溝幅最小寸法A、軸支部の端部の径寸法B、案内溝の溝幅寸法Cとした場合、A<B<Cの関係になっているため、軸支部が案内溝を摺動しながら弾性係止片に係合する上で最も好ましい構成となる。
【0019】
請求項6の発明では、
請求項1において、特にグリップ本体の使用位置において、軸支部に加わる大きな荷重を略水平状態になった案内溝の終端又は/及び軸受穴で受けるため、耐荷重性を向上できるようにする。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の形態例を図面を参照しながら説明する。この説明では、アシストグリップの基本構造つまり請求項1と2の各発明の前提要件を明らかにした後、請求項1と2に対応した第1形態の要部及びその作動、変形例1と2、変形例3、請求項2に対応した第2形態の要部及びその作動、変形例4の順に詳述する。
【0022】
(基本構造)
図1から
図3において、アシストグリップ15は、車体側に装着されるリテーナ1,1Aと、リテーナ1,1Aに対し軸支部である枢軸36により回動可能に連結保持されたグリップ本体2とからなる。また、リテーナ1,1Aは、保持部材3又は3Aと、保持部材3,3Aに取り付けられる金属製クリップ4及びカバー7と、保持部材3に設けられた収納部35に配置されてリテーナ1及びグリップ本体2の一方が他方に対し相対的に回動されるよう付勢する捻りコイルばね5と、保持部材3Aに設けられた収納部35aに配置されてグリップ本体2の回動速度を制動するダンパー6とを備えている。なお、グリップ本体2、保持部材3A,3B、カバー7は共に樹脂成形品であるが、他の材質であってもよい。
【0023】
ここで、グリップ本体2は、略コ形の中間部分が手で握る把持部20であり、その長手方向の両端21が背面側を開口形成した凹部22を有している。各凹部22は、保持部材3,3Aに対応した大きさであり、長手方向に対向した内側の内側面22A及び外側の内側面22Bに左右対称形に設けられた案内溝23を有している。また、保持部材3を配置する一方凹部22には、ばね係止用係止穴22aが設けられている。保持部材3Aを配置する他方凹部22には、ダンパー6の一部つまり後述する外筒の凸部8b,8cに当接する段部22b,22c(
図3(a)を参照)が設けられている。
【0024】
各案内溝23は、
図5(b)に示されるごとく略逆L形となっており、凹部開口縁より凹部内底面22C側に延びている導入溝23aと、導入溝23aから屈曲された箇所に位置する終端23bとからなる。また、内側面22Aには、案内溝の終端23bに繋がる軸受穴24が設けられている。これに対し、内側面22Bの案内溝23は、その終端23bが後述する弾性係止片25で区画された箇所を軸受穴24aとして形成している。
【0025】
リテーナ1,1Aは、以上のグリップ本体2の各凹部22に連結された状態で、
図3に示されるごとくボディパネル10に設けられた取付孔10aにクリップ4を介して装着される。この場合、ボディパネル10は図示を省いた天井トリムで覆われており、リテーナ1,1Aはその天井トリムの上に配置される。リテーナ1は、保持部材3に設けられた収納部35に捻りコイルばね5を配置している。リテーナ1Aは、保持部材
3Aに設けられた収納部35aにダンパー6を配置している。なお、リテーナ1と1A、又は、保持部材3と3Aは、収納部35,35aを除いてほぼ同じ形状である。
【0026】
捻りコイルばね5は、
図1及び
図2に示されるごとくコイル形の両端部5aに延長形成された当接部5b,5cを有している。ダンパー6は、
図1〜
図3に示されるごとく肉厚内に断面円形空間を形成している外筒8と、前記円形空間に対し流体を入れた状態で回動自在に嵌合された内筒9とからなる。外筒8は、一端側の開口8aと、外周の2箇所に設けられて段部22b,22cと係合しグリップ本体2と一体回動可能にする凸部8b,8c(
図3を参照)を有している。内筒9は凸形閉鎖端部9aを有している。
【0027】
保持部材3,3Aは、上下略中間に配置された略矩形状の基板30と、基板30の上側に突出されている支持部34と、基板30の下側に突出されている略舌状脚部39とを有している。また、保持部材3,3Aには、金属製クリップ4が脚部39から支持部34の内側に配置されると共に、カバー7が支持部34の内側を覆うように装着される。
【0028】
このうち、基板30には、2つの貫通孔31が上下に貫通形成されている。各貫通孔31は、左右中間に設けられた矩形の開口であり、該開口の両側に設けられている不図示のスリットを有している。基板30の下面には四隅に凸部32が設けられている。脚部39は、突出端面に突設された突起39aを有している。
【0029】
支持部34は、中央部に開口された不図示の係合穴と、上両側より後方に張り出している張出部33と、両張出部33の間に区画された捻りコイルばね用収納部35又はダンパー用収納部35aと、各張出部33の外面に同軸線上に突設された軸支部である枢軸36と、収納部35を区画している各張出部33の内面に突設されたばね保持用突起部37,38と、収納部35aを区画している各張出部33の内面に突設されたダンパー用連結部35b,35c(
図2(c)を参照)とを有している。連結部35bは略凸状である。連結部35bには外筒の一端側開口8aが回動可能に係合される。連結部35cは略凹状である。連結部35cには内筒の閉鎖端部9aが回動不能に係合される。
【0030】
次に、保持部材3,3Aに対するクリップ4及びカバー7の組み込み構造を明らかにする。クリップ4は、
図1(b)に示されるごとく略U形状をなし、対向している板部4a及び両板部4aを連結している中間部からなる。各板部4aには、下側個所に略コ形のスリットにより区画された弾性係合爪4bと、その上側に対向して開口された掛け止め用穴4cとが設けられている。前記中間部には、上記突起39aと係合する係合穴4c(
図2(b)を参照)が設けられている。そして、以上のクリップ4は、
図3に示されるごとく脚部39が板部4a同士の間に挿入され、かつ、突起39aが係合穴4cと係合することで保持部材3や3Aに対し組立てられる。組立状態では、各係合爪4bが脚部39の前後面上に配置され、また、各板部4aが対応する貫通孔31に差し込まれて、板部先端側を支持部34の内側空間に突出している。
【0031】
カバー7は、
図1(b)及び
図3に示されるごとく、支持部34の内側空間を覆う形状であり、片側側面の下側に突出された取付片部7a、内下側に突出されてクリップ側各板部の穴4cなどに挿入される係止腕部7bを有している。取付片部7aは、下端側に設けられた凹を対応する枢軸36に係合することで、カバー7を保持部材3や3Aに装着可能にする。係止腕部7bは、縦断面が枠状に形成されていると共に、枠状の一辺を両側に設けられたスリットにより揺動可能に形成している。つまり、枠状の一辺は、板部の穴4cの縁部に弾性係合すると共に、
図3(a)のごとく揺動端7cがカバー上面に延びてドライバー等の工具で解除操作可能となっている。以上のカバー7は、支持部34に対して、係止腕部7bが穴4cに圧接し、かつ取付片部7aが対応枢軸36に前記凹を係合することで装着される。この装着状態では、クリップ4が各板部の穴4cに串刺し状態に挿通している係止腕部7bにより抜け止めされる。カバー7は、前記した揺動端7cを押し、かつ支持部34から離れる方向に動かされることで外れる。
【0032】
また、上記収納部35は、張出部33同士の間にあって略L形に形成されている。L形の縦壁面には、突起部37に近い側にリブ34bが設けられている。このリブ34bは、捻りコイルばね5の一方当接部5bを係止する箇所である。枢軸36及び突起部37,38は、
図2(c)に示されるごとく略回動軸線上にある。そして、捻りコイルばね5は、両端部5aを対応する突起部37,38の軸回りに保持した後、一方当接部5bがリブ34bに係止され、他方当接部5cが付勢力に抗して上記係止穴22aに係止される。すると、グリップ本体2は、捻りコイルばね5の付勢力で回動されて
図3の実線で示されるごとくボディパネル10に沿って配される不使用状態(格納位置)となる。
【0033】
これに対し、収納部35aは、張出部33同士の間を切り欠いた形状であり、張出部33同士の間にダンパー6を配置している。各張出部33の対向内面には、連結部35b,35cが設けられている。そして、ダンパー6は、収納部35aに対し、外筒の一端開口8aが凸形の連結部35bと回動可能に係合され、内筒の閉鎖端部9aが凹形の連結部35cと係合固定された状態で組み込まれている。
【0034】
以上の保持部材3及び3Aは、グリップ本体端部21の凹部22に配置されて枢軸36により回動可能に枢支される。この枢支構造は後述する第1形態の要部の箇所で詳述する。そして、アシストグリップ15は、
図3において、グリップ本体2がコイルばね5の付勢力に抗して実線の格納位置から一点鎖線に示した使用位置に回動操作され、使用位置で手を離すと捻りコイルばね5の付勢力により格納位置に再び回動される。その際、グリップ本体2は、段部22bと22cのダンパーを構成している一方が外筒の凸部8b又は凸部8cに当接した状態を保って回動され、その結果、外筒8が内筒9に対して流体抵抗を受けながらグリップ本体2と共に制動されてゆっくり回動される。
【0035】
(第1形態の要部及びその作動)上記したように、内側面22Aの案内溝23と、内側面22Bの案内溝23とは、
図5及び
図6に示すごとく左右対称となっている。また、内側面22Aの案内溝23には、終端23bに繋がる一段深い軸受穴24が設けられている。内側面22Bの案内溝23には、そのような一段深い軸受穴が設けられていないが、後述する弾性係止片25で区画された端部23bの箇所が軸受穴24aを兼ねている。このため、内側面22Bの案内溝23は、導入溝23aから屈曲された箇所にある案内溝の終端23bが内側面22Aの案内溝23の終端23bより軸受穴24に相当する分だけ長く形成されている。なお、例えば、
図5及び
図6において、内側面22Aに設けられた軸受穴24と、内側面22Bに設けられた案内溝23の終端23bに位置して弾性係止片25で区画された軸受穴24aとは同軸線上に位置している。
【0036】
また、この構造では、
図5及び
図6、
図9から
図11の各(a)に示したごとく、内側面22Aと内側面22Bとの間の幅Xが拡開可能となっている。すなわち、内側面22A及び内側面22Bは、案内溝23及び後述するスリット状空部26等の欠肉部の存在により、幅Xを拡開する方向に変位し易く形成されている。このため、この構造では、両内側面22A,22Bの少なくとも一方に形成された案内溝23に対応する枢軸36の挿入により幅Xを拡開して、
図9に例示されるごとく一方の枢軸36と軸受穴24及び他方の枢軸36と案内溝の終端23bに繋がる軸受穴24とを嵌合したり、
図5に例示されるごとく各枢軸36と対応する軸受穴24,24aにそれぞれ案内溝23を通じて嵌合することにより、リテーナ1のグリップ本体2への取り付けがなされる。
【0037】
各案内溝23は、枢軸36を軸受穴を兼ねる案内溝の終端23b又は/及び軸受穴24に嵌合可能にしたり抜け止め係止する弾性係止片25を有している。この弾性係止片25は、先端に設けられて案内溝23ないしは導入溝23a内に突出している爪25aを有している。すなわち、弾性係止片25は、例えば
図5(b)の右側のごとく案内溝の終端23bの箇所(この弾性係止片25は案内溝の終端23bの箇所を軸受穴24aとして区画している)、又は、同図の左側のごとく軸受穴24に対応して設けられている。また、弾性係止片25は、案内溝の終端23bを区画している壁部分の一部、又は/及び軸受穴24を区画している壁部分の一部をスリット状空部26により区画形成されている。空部26は、グリップ本体2の格納態様において、弾性係止片25の背面側に位置して上下に延びる所定幅のスリットであり、スリットの上方が導入溝23aに通じている。
【0038】
ところで、以上の案内溝23、弾性係止片の爪25a、枢軸36としては、
図5(b)の左側に示したごとく案内溝23の溝幅Cから爪25aの突出量を引いた溝幅最小寸法Aと、枢軸36の径寸法B、案内溝23の溝幅寸法Cとした場合、A<B<Cの関係になっている。この構成は、枢軸36が案内溝23を終端23bまでスムースに摺動させるようにし、加えて、枢軸36が弾性係止片の爪25aに係合したり抜け止めする上で最も好ましいものとなる。
【0039】
以上の弾性係止片25は、例えば、枢軸36が導入溝23aを摺動する過程で係止片上側に当たると、その応力により案内溝の終端23b又は/及び軸受穴24側に揺動変位し、また、枢軸36が導入溝23aから終端23bへ移行する過程で係止片上側に当たると、その応力によりスリット状空部26側へ揺動変位する。この構造では、それらの作用により枢軸36から受ける局部的な応力を分散・吸収して枢軸36の良好な摺動を保ち易くする。その結果、従来に比べて組立性を向上できる。
【0040】
図7(a)は、枢軸36が案内溝の終端36bから軸受穴24に嵌合する過程を示している。この過程では、弾性係止片25が左図のごとく枢軸36で押されて空部
26側へ揺動変位し、枢軸36が爪25aを通過して軸受穴24と嵌合する。この嵌合と同期して、弾性係止片25は、右図のごとく元の状態に復帰して爪25aにより枢軸36の嵌合解除を確実に防ぐ。この点は、例えば
図5(b)の右側のごとく案内溝の終端36bを利用した軸受穴24aでも同様である。換言すると、この構造では、枢軸36を爪25aで抜け止め係止して外れ難い枢支構造を実現している。
【0041】
更に、以上の構造において、
図3及び
図6から推察されるごとく、案内溝23は
グリップ本体2の格納位置において、凹部22の開口縁から内底面22C側へ略水平に延びる導入溝23a、及び導入溝23aから下向きに屈曲された箇所に位置する終端23bを有している。そして、グリップ本体2の使用位置において、枢軸36に加わる荷重を略水平状態になった案内溝の終端23bつまり軸受穴24a又は/及び軸受穴24で受ける構成であるため、耐荷重性を向上できる。
【0042】
(変形例1と2)
図8(a)と(b)は上記した弾性係止片25の構成を変更した2例を
図5(b)に対応して示している。なお、各変形例の説明では、以上の第1形態と同一又は類似する箇所には同じ符号を付し、重複した記載を極力省く。
【0043】
同(a)の変形例1において、各案内溝23は、略直線形であり、凹部開口縁より凹部内底面22C側に延びている導入溝23aからなる。つまり、内側面22Aの案内溝23には導入溝23aの奥側に軸受穴24が設けられている。内側面22Bの案内溝23には、そのような軸受穴が設けられていないが、導入溝23aの奥側に案内溝の終端23bつまり軸受穴24aを兼ねる終端23bが位置しており、内側面22Aの導入溝23aより軸受穴24に相当する分だけ長く形成されている。この換言すると、内側面22Aに設けられた軸受穴24と、内側面22Bに設けられた案内溝の終端23bに位置して後述する弾性係止片27で区画された軸受穴24aとは同軸線上に位置している。
【0044】
また、各案内溝23は、枢軸36を軸受穴24又は案内溝の終端23b(上記した軸受穴24aを兼ねる終端23b)に嵌合可能にしたり抜け止め係止する弾性係止片27を有している。この弾性係止片27は、先端に設けられて導入溝23a内に突出している爪27aを有している。また、弾性係止片27は、例えば同(a)の右側のごとく案内溝の終端23bの箇所又は同(a)の左側のごとく軸受穴24に対応して設けられていると共に、案内溝23を区画している壁部分の一部を空部26により区画形成されている。空部26は、第1形態とは向きが異なっており、グリップ本体2の格納態様において、弾性係止片27の背面側にあって略水平に延びる所定幅のスリットである。
【0045】
以上の構造において、弾性係止片27は、保持部材3を凹部22に連結枢支する場合、同左図のごとく枢軸36で押されて空部26側へ揺動変位し、枢軸36が爪27aを通過して軸受穴24と嵌合する。また、同右図のごとく枢軸36が導入溝23aから終端23bを利用した軸受穴24aへ移行する過程で爪28aに当たると、その応力により空部26側へ揺動変位する。この構造では、それらの作用により枢軸36から受ける局部的な応力を分散・吸収して枢軸36の良好な摺動を保ち易くする。その結果、従来に比べて組立性を向上できる。すなわち、各弾性係止片27は、各図のごとく元の状態に復帰して爪27aにより枢軸36の不用意な嵌合解除を確実に防ぐ。換言すると、この構造でも、枢軸36を爪27aで抜け止め係止して外れ難い枢支構造を実現している。
【0046】
図8(b)の変形例2において、各案内溝23は、略コ形状であり、凹部開口縁より凹部内底面22C側に延び、更に向きを変えている導入溝23a及び終端23bを有している。また、内側面22Aには終端23bに通じている軸受穴24が設けられているが、内側面22Bにはそのような軸受穴が設けられていない。但し、内側面22Bの案内溝23は、内側面22Aの案内溝23より軸受穴24に相当する分だけ長く形成されている。この長くなった終端23bが弾性係止片27で区画された軸受穴24aとなる。換言すると、内側面22Aに設けられた軸受穴24と、内側面22Bに設けられた案内溝の終端23bを利用した軸受穴24aとは同軸線上に位置している。
【0047】
また、各案内溝23は、枢軸36を軸受穴24又は案内溝の終端23bを利用した軸受穴24aに嵌合可能にしたり抜け止め係止する弾性係止片28を有している。この弾性係止片28は、先端に設けられて終端23b内に突出している爪28aを有している。また、弾性係止片28は、略コ形の案内溝23により区画形成されている。
【0048】
以上の構造において、弾性係止片28は、保持部材3を凹部22に連結枢支する場合、左図のごとく枢軸36で押されて揺動変位し、枢軸36が爪27aを通過して軸受穴24と嵌合する。また、同右図のごとく枢軸36が導入溝23aから終端23bを利用した軸受穴24aへ移行する過程で爪28aに当たると、その応力により揺動変位する。この構造では、それらの作用により枢軸36から受ける局部的な応力を分散・吸収して枢軸36の良好な摺動を保ち易くする。その結果、従来に比べて組立性を向上できる。勿論、この構造でも、弾性係止片28は、同図のごとく元の状態に復帰して爪28aにより枢軸36の不用意な嵌合解除が確実に防止される。
【0049】
(変形例3)
図9(a)及び(b)の変形例3は、案内溝23を内側面22Aにだけ設けるようにした一例を
図5に対応して示している。この変形例3でも、以上の第1形態と同一又は類似する箇所には同じ符号を付し、重複説明を極力省く。
【0050】
変形例3において、内側面22Aには、
図5と同じく案内溝23と軸受穴24及び弾性係止片25が設けられている。しかし、内側面22Bには、軸受穴24だけが設けられて、案内溝23及び弾性係止片27が省略されている。以上の構造において、保持部材3を凹部22に連結枢支する場合は、同(a)の左図に示したごとく一方の枢軸36を内面側22Bの軸受穴24に嵌合した状態から、他方の枢軸36を内側面22Aの案内溝である導入溝23aから終端23b、更に爪25aを通過して軸受穴24と嵌合する。その際は、両内側面22A,22Bの少なくとも一方に形成された案内溝23に対応する枢軸36の挿入により幅Xを拡開して、各枢軸36と対応する軸受穴24とをそれぞれ嵌合する。この場合、枢軸36が導入溝23aから終端23bへ移行する過程などで爪25aに当たると、弾性係止片25はその応力により揺動変位して、枢軸36の軸受穴24への嵌合を許容する。この構造では、それらの作用により枢軸36から受ける局部的な応力を分散・吸収して枢軸36の良好な摺動を保ち易く、従来に比べて組立性を向上できる。勿論、この構造でも、弾性係止片25は、同図のごとく元の状態に復帰して爪25aにより枢軸36の不用意な嵌合解除を確実に防止できる。
【0051】
(第2形態の要部及びその作動)
図10は第2形態の要部を
図5に対応させて示している。第2形態の説明でも、上記した第1形態と同一又は類似する箇所には同じ符号を付し、重複した記載を極力省く。第2形態は、上記した爪25a付きの弾性係止片25を、爪を持たない溝幅拡開部29として構成した一例である。
【0052】
内側面22A及び内側面22Bは、案内溝23及び後述するスリット状空部26等の欠肉部の存在により、幅Xを拡開する方向に変位し易く形成されている。このため、この構造でも、両内側面22A,22Bの少なくとも一方に形成された案内溝23に対応する枢軸36の挿入により幅Xを拡開して、同図のごとく各枢軸36と対応する軸受穴24とをそれぞれ嵌合することでリテーナ1や1Aのグリップ本体2への取り付けがなされる。また、この構造では、上記凹部22に関し、内側面22Aの案内溝23と、内側面22Bの案内溝23とは左右対称形となっている。内側面22A,22Bの各案内溝23には、終端23bに通じている軸受穴24が同軸線上に設けられている。各案内溝23は、凹部22の開口縁から内底面22C側に延びる導入溝23aと、導入溝23aから屈曲された箇所に位置する案内溝の終端23bと、終端23bに繋がっている軸受穴24とを有している。
【0053】
加えて、案内溝23の溝幅が拡開可能となるよう設けられて枢軸36を案内溝23に沿って摺動したり、軸受穴24に嵌合する際に溝幅を拡開する方向に変位可能な溝幅拡開部29を有している。この溝幅拡開部29は、軸受穴24に対応して設けられ、導入溝23aの後半部及び終端23b付近を区画している壁部分の一部、又は/及び軸受穴24を区画している壁部分の一部をスリット状空部26により区画形成したものである。空部26は、グリップ本体2の格納態様において、
溝幅拡開部29の背面側にあって上下に延びるスリットであり、スリットの上方が導入溝23aに通じている。
【0054】
換言すると、以上の溝幅拡開部29は、グリップ本体2の格納態様において、上が導入溝23a、両側が終端23b及び軸受穴24と空部26で区画されている。このため、溝幅拡開部29は、
図7(b)に例示したごとく、リテーナ両側の枢軸36が案内溝23の入口ないしは導入溝23aに嵌合した初期態様から案内溝の終端36bまで摺動される過程で、左右で偏って摺動操作されても、局部的な応力を溝幅を拡開する方向に変位することで分散・吸収して枢軸36の良好な摺動を保ち易くする。
【0055】
従って、この構造では、組立性を向上でき、例えばロボット等を用いた自動組立を実施する場合にも良好な稼動を維持可能にする。また、溝幅拡開部29の存在により枢軸36に対する案内溝23の溝幅を多少なりとも小さくし、それにより枢軸36が案内溝23から外れ難くい構造を実現可能にする。
【0056】
(変形例4)
図11(a)及び(b)の変形例4は、溝幅拡開部29を内側面22Aの案内溝23にだけ設け、内側面22Bの案内溝23の方は上記弾性係止片25を設けるようにした一例を
図5に対応して示している。この変形例4でも、以上の第2形態と同一又は類似する箇所には同じ符号を付し、重複説明を極力省く。
【0057】
変形例4において、内側面22Aの案内溝23と、内側面22Bの案内溝23とはほぼ左右対称となっている。また、内側面22Aの案内溝23には終端23bに繋がる軸受穴24が設けられているが、内側面22Bの案内溝23にはそのような軸受穴が設けられていない。但し、内側面22Bの案内溝23は、導入溝23aから屈曲された箇所にある案内溝の終端23bが内側面22Aの案内溝23の終端23bより軸受穴24に相当する分だけ長く形成されており、その長くなった箇所が弾性係止片25で区画された軸受穴24aとなっている。換言すると、内側面22Aに設けられた軸受穴24と、内側面22Bに設けられて案内溝の終端23bを利用した軸受穴24aとは同軸線上に位置している。
【0058】
内側面22Aの案内溝23には、
図10と同じ溝幅拡開部29が設けられている。内側面22Bの案内溝23には、
図5と同じ弾性係止片25が設けられている。このため、この構造では、上記した溝幅拡開部29と、上記した弾性係止片25との各作動や利点を兼ね備えることができる。
【0059】
なお、本発明のアシストグリップは、請求項1又は2で特定される構成を備えておればよく、細部は形態例や変形例を参考にして更に展開可能なものである。その例としては、クリップ4を省略して、脚部39を係合可能な形状に形成し、脚部自体でパネルの取付孔10aに係合固定つまり締結することである。
【0060】
また、溝幅拡開部29としては、
図10の構成に代えて、例えばグリップ本体2の格納態様において、
図8(b)の弾性係止片28のごとく水平方向に長い形状にし、上側の導入溝23a側へ変位したり、下側の案内溝の端部23b及び軸受穴24側へ変形するようにしてもよい。