(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記筐体は、前記開口部を形成する前記筐体の一部を外側に捲ることが可能な柔軟性を有する材料で構成されている、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のプローブ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る撮像装置は、口腔内の歯の三次元形状を取得するための口腔内スキャナである。しかし、本発明に係る撮像装置は、口腔内スキャナに限定されるものではなく、同様の構成を有する撮像装置である三次元スキャナについて適用することができる。例えば、口腔内以外に人の耳の内部を撮像して、外耳内の三次元形状を取得することができる三次元スキャナにも適用できる。
【0025】
[口腔内スキャナの構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る口腔内スキャナ100の構成を示すブロック図である。
図1に示す口腔内スキャナ100は、プローブ10、接続部20、光学計測部30、制御部40、表示部50、電源部60を含んでいる。プローブ10は、観察対象200である口腔内に差込み、観察対象200にパターンを有する光(以下、パターンともいう)を投影し、パターンが投影された観察対象200からの反射光を光学計測部30に導いている。また、プローブ10は、光学計測部30に対して着脱可能であるので、感染対策として、生体に接触する可能性のあるプローブ10だけを光学計測部30から取り外して滅菌処理(例えば高温高湿環境での処理)を施すことが可能である。口腔内スキャナの装置全部を滅菌処理した場合、光学部品や電子部品などが多く含まれるため装置の寿命が短くなる欠点があるが、プローブ10だけを取り外して滅菌処理した場合当該欠点は生じない。なお、プローブを着脱できない構成の口腔内スキャナでは、感染対策としてプローブに透明の使い捨てカバーを取付ける場合があるが、当該カバーにより撮像する画像の精度が低下する欠点がある。接続部20は、プローブ10と嵌合可能な形状をしており、光学計測部30から突出した部分である。接続部20は、プローブ10で採光した光を光学計測部30へ導くためのリレーレンズ等を有していてもよい。
【0026】
光学計測部30は、プローブ10を介して観察対象200にパターンを投影し、投影したパターンを撮像する。光学計測部30は、図示していないが観察対象200に投影するパターンを生成する光学部品および光源、パターンを観察対象200の表面に結像するためのレンズ部品、レンズのピントを調整するためのピント調整機構、投影したパターンを撮像する撮像素子などを有している。なお、光学計測部30は、合焦法の技術を用いて三次元形状を取得する構成として以下説明するが、当該構成に限定されず、共焦点法、三角測量法、白色干渉法、ステレオ法、フォトグラメトリ法、SLAM法(Simultaneous Localization and Mapping)、光干渉断層法(Optical Coherence Tomography: OCT)などの技術を用いて三次元形状を取得する構成でもよい。つまり、光学計測部30は、光学的な手法を用いて三次元形状を取得する構成であればいずれの原理を用いた構成であっても適用することが可能である。なお、接続部20と光学計測部30とで、口腔内を撮像するためのハンドピースを構成している。
【0027】
制御部40は、光学計測部30の動作を制御するとともに、光学計測部30で撮像した画像を処理して三次元形状を取得する。制御部40は、制御中枢としてのCPU(Central Processing Unit)、CPUが動作するためのプログラムや制御データ等を記憶しているROM(Read Only Memory)、CPUのワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)、周辺機器との信号の整合性を保つための入出力インターフェイス等が設けられている。また、制御部40は、取得した三次元形状を表示部50に出力することが可能であるとともに、光学計測部30の設定などの情報を図示していない入力装置などで入力可能である。なお、前記画像を処理して三次元形状を取得するための演算の少なくとも一部は、制御部40のCPUによってソフトウェアとして実現されてもよいし、当該CPUとは別に処理を行うハードウェアとして実現されてもよい。また、当該CPUやハードウェアなどの処理部のうち少なくとも一部は、光学計測部30の内部に組み込まれていてもよい。また、
図1では口腔内スキャナ100の各構成要素(30、40、50、60)がケーブル(図中の太線)によって配線されているように描かれているが、これらの配線のうち一部または全部が無線通信によって接続されていてもよい。また、制御部40が片手で持ち上げられるほど十分に小型かつ軽量であれば、制御部40と光学計測部30とが一体化され、ひとつのハンドピースとして構成されていてもよい。
【0028】
表示部50は、制御部40で得られた観察対象200の三次元形状の結果を表示するための表示装置である。また、表示部50は、光学計測部30の設定情報や、患者情報、スキャナの起動状態、取扱説明書、ヘルプ画面などの、その他の情報を表示するための表示装置としても利用することができる。電源部60は、光学計測部30および制御部40を駆動するための電力を供給するための装置である。電源部60は、
図1に示すように制御部40の外部に設けられていても、制御部40の内部に設けられていてもよい。また、電源部60は、制御部40、光学計測部30、表示部50に対し、別々に給電できるよう、複数設けられていてもよい。
【0029】
[プローブの構成]
次に、プローブ10の構成についてさらに詳しく説明する。
図2は、本発明の実施の形態1に係るプローブ10の構成を説明するための概略図である。まず、
図2(a)を用いてプローブ10の構成について説明する。プローブ10は、接続部20と接続するための開口部11を有する筐体12と、開口部11とは反対側の筐体12に設けられた計測窓13(採光部)と、計測窓13から取り込んだ光を開口部11の方向に反射するミラー14(反射部)とを備えている。開口部11は、接続部20を挿入するための挿入部である。
図2(b)のように、開口部11に挿入された接続部20の外面と筐体12の内面とが接し、筐体12と接続部20とが嵌合する。これにより、筐体12に外力が加わっても、プローブ10が接続部20から容易に外れ難くなる。また、開口部11を形成してあるプローブ10の端部は、
図2(b)に示すように光学計測部30と接している。これにより、プローブ10が光学計測部30の方向に押し込まれても、プローブ10がさらに光学計測部30の方向に移動することはない。
【0030】
筐体12は、柔軟性を有するシリコーン樹脂で形成されており、
図2(c)に示すように外力を加えることで上下、左右、捩れのいずれの方向に対しても可動する。なお、
図2(c)に示すプローブ10の破線図は、上下方向に可動している様子を示している。筐体12が可動することで筐体12の内部に設けたミラー14の位置も変化させることができる。なお、筐体12は、接続部20が挿入されている部分については外力が加わっても可動することはなく、接続部20が挿入されていない先の部分が可動する。ここで、筐体12の断面形状は、矩形に限定されるものではなく、円形などの他の形状であってもよい。また、筐体12の材料はシリコーン樹脂に限定されず、他の柔軟性を有する材料(例えば、FEP(フッ化エチレンプロピレン)、PFA(過フルオロアルコキシ)など)で構成されてもよい。
【0031】
次に、筐体12に外力を加えて可動させる具体的な場面について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係るプローブ10の口腔内での可動について説明するための概略図である。
図3に示すように大臼歯の後ろ側を口腔内スキャナ100で撮像する場合、大臼歯の一部が死角201となり撮像するのが困難であった。しかし、プローブ10は、柔軟性を有する筐体12で構成されているので、上下の奥歯の間にプローブ10を差込むと、当該プローブ10の上面が上側奥歯に押し当てられ、図中下側に筐体12が曲げられる。筐体12が曲げられることで、筐体12の内部に設けたミラー14の位置が可動する。ミラー14の位置を可動することで、死角201の位置が、接続部20および光学計測部30に設けたレンズ21,22および撮像素子23を通る光路上になり、撮像素子23で当該大臼歯の死角201を撮像することが可能となる。なお、接続部20および光学計測部30は、硬質な材料で筐体が構成されているので、外部に押し当てても容易に曲がることはない。そのため、接続部20および光学計測部30に設けたレンズ21,22および撮像素子23の位置精度を維持することができる。
【0032】
図3では、筐体12のうち接続部20が挿入されていない部分(柔軟性を有する部分)を、対向する歯に対して矢印Aの方向に押し当てることでミラー14の位置を矢印Bの方向に変化させている。柔軟性を有する筐体12が曲がることで、上下の奥歯の間に差込まれたプローブ10を無理に動かさなくても大臼歯の死角201を撮像することができ、顎関節に負担をかけて患者に苦痛を与える虞がない。また、図示していないが歯の側面を撮像する場合にも、同様に柔軟性を有する筐体12が曲がるので、歯と頬肉との間に差込んだプローブ10を大きく動かさなくても歯の死角を撮像することができ、頬肉を引っ張って患者に苦痛を与える虞がない。
【0033】
なお、
図3では動作の一例として、筐体12の上部を押し当てることで、筐体12が下方向(矢印Bの方向)に曲がる様子のみが示されているが、これに限定されず、
図2(c)に示されるように、その他の方向に筐体12を曲げることも可能である。例えば、筐体12の下面を下側の歯に押し当てることで筐体12を上方向に曲げられるよう構成してもよいし、筐体12の紙面手前側の側面を上側の歯の紙面奥側の側面に押し当てることで筐体12を紙面奥側方向に曲げられるよう構成してもよいし、筐体12の下面を下側の歯に押し当てながら光学計測部30を捩ることで筐体12を捩れ方向に曲げられるよう構成してもよいし、前記各方向の組合せ、あるいは前記全ての方向に曲げられるように構成してもよい。上記により、あらゆる方向に存在する死角部分の撮像が可能となる。
【0034】
以上のように、実施の形態1に係る口腔内スキャナ100では、プローブ10と、プローブ10と着脱可能に接続する接続部20と、接続部20に接続したプローブ10から取り込んだ光を処理する光学計測部30および制御部40とを備えている。そして、プローブ10は、接続部20の少なくとも一部と接続するための開口部11を有する筐体12と、開口部11とは反対側の筐体12に設けられた計測窓13と、計測窓13から取り込んだ光を開口部11の方向に反射するミラー14とを備えている。さらに、筐体12は、筐体12の少なくとも一部を外部に押し当てることでミラー14の位置を変化させるので、患者への負担を軽減しつつ、撮像する範囲を可動させることができる。
【0035】
特に、実施の形態1に係る筐体12は、少なくとも一部を曲げることができる柔軟性を有する材料(例えば、シリコーン樹脂など)で構成され、当該柔軟性を有する筐体12の少なくとも一部を外部に押し当てることでミラー14の位置を変化させることができる。なお、筐体12は可動するが、接続部20は可動しない硬い材料で構成されているので、内蔵するレンズなどの光学部品の位置を固定でき、取得する三次元形状の精度を高く維持できる。
【0036】
[変形例]
なお、
図2に示す計測窓13(採光部)は筐体12に設けた穴であり、ミラー14(反射部)は光を反射する一般的な鏡である。しかし、計測窓13およびミラー14は例示であって、これに限定されるものではない。
図4は、本発明の実施の形態1に係る採光部および反射部の変形例の構成を説明するための概略図である。まず、
図4(a)では、ミラー14に代えて、反射部にプリズム14aを設けている。プリズム14aの一面には、銀などを蒸着した反射膜14bが形成してある。これにより、プリズム14aは、反射膜14bで計測窓13から取り込んだ光を開口部11の方向に反射することができる。また、
図4(b)では、計測窓13に平板ガラス14dが嵌め込まれ、筐体12の長手方向に対して直交する位置にも平板ガラス14eが嵌め込まれている。これにより、プローブ10を口腔内に差し込んだ場合でも唾液などが筐体12内部に侵入することを防ぐことができる。
【0037】
なお、
図4(b)では、平板ガラス14d,14eの表面の垂直方向と光路の方向とが一致するように平板ガラス14d,14eを配置しているが、
図4(c)に示すように平板ガラス14d,14eの表面の垂直方向と光路の方向とが一致しないように平板ガラス14d,14eの配置を少し傾けてもよい。これにより、口腔内スキャナ100は、平板ガラス14d,14eの表面で反射した不要光が、光学計測部30に入光することがなく、平板ガラス14d,14eの表面で反射した不要光による計測ノイズを低減することができる。ここで、反射部および採光部に設ける光学素子(14、14a、14b、14d、14e)は、計測窓13から取り込んだ光に対して、集光、発散といったレンズ効果を付与することなく開口部11の方向に反射する部材であればよく、例えば平面ミラー、プリズム、平板状の回折格子、平板ガラス、透明プラスチック平板、平板状の光学フィルタ(波長選択フィルタや濃淡フィルタなど)、平板状の偏光素子(偏光板、位相差板、偏光スプリッタなど)などの光学素子である。仮に、反射部および採光部に設ける光学素子にレンズや曲面ミラーのようにレンズ効果を有する光学素子を用いた場合、筐体12を曲げることで当該光学素子も可動することになり、光学素子の光軸がカメラの光軸に対してずれを生じ、収差の度合いなどが大きく変化し、取得する三次元形状の精度が低下する虞がある。そのため、反射部および採光部に設ける光学素子にレンズ効果を有していない光学素子を用いることで、取得する三次元形状の精度を向上させることができる。なお、反射部および採光部に設ける光学素子として、レンズ効果を有する光学素子を用いる場合であっても、当該光学素子の焦点距離が十分に大きい場合には、筐体12の曲げによって当該光学素子に多少の位置ずれが生じたとしても、収差の度合いが大きく変化せず、取得する三次元形状の精度に大きく影響しないため、問題とならない場合がある。
【0038】
また、
図2および
図4に示した反射部は、筐体12の内面にミラー14またはプリズム14aを直接接触させて固定する構成について説明したが、筐体12と反射部との間に、別の部材を介して間接的に接触されて構成する構成でもよい。例えば、後述するように筐体12とミラー14との間にヒータを介して間接的に接触される構成でもよい。さらに、反射部は、ミラー14やプリズム14aのように筐体12とは別部材の光学素子である必要はなく、筐体12の内面に銀などを蒸着したり、筐体12の内面を鏡面状に研磨したりするなど筐体12の一部であってもよい。なお、反射部を筐体12の内面に銀などを蒸着したり、筐体12の内面を鏡面状に研磨したりするなどして形成する場合でも、レンズや曲面ミラーのようなレンズ効果は奏しない。
【0039】
(実施の形態2)
実施の形態1に係るプローブ10では、筐体12がすべて同じ材料のシリコーン樹脂で形成され、筐体12のすべてにおいて同じ柔軟性を有する構成について説明した。しかし、実施の形態2に係るプローブでは、筐体の少なくとも一部が、筐体の他の部分より硬い構成について説明する。
図5は、本発明の実施の形態2に係る筐体12の構成を説明するための概略図である。なお、本実施の形態2に係るプローブ10では、
図2に示した実施の形態1に係るプローブ10と同じ構成について同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。まず、
図5(a)では、ミラー14を設ける筐体12の先端部分12aを筐体12の他の部分12bより硬くしてある。筐体12の先端部分12aは、ミラー14を含んでおり、患者が誤って当該先端部分12aを噛んだ場合でもミラー14が破損しないように保護している。
【0040】
また、筐体12の先端部分12aだけでなく、接続部20と接続する部分も硬くしてもよい。具体的に、
図5(b)では、ミラー14を設ける筐体12の先端部分12a、および、接続部20と接続する筐体12の接続部分12cを筐体12の他の部分12bより硬くしてある。接続部分12cは、接続部20と接続するため柔らかすぎると着脱の作業が煩雑となる可能性があるため、硬くすることで作業効率が向上する。なお、先端部分12aの硬さと、接続部分12cの硬さとは同じであっても、異なる硬さでもよい。
【0041】
次に、先端部分12aおよび接続部分12cの硬さを、他の部分12bより硬くするための具体的な構成について説明する。まず、筐体12を一つの材料で形成する場合、筐体12に少なくとも一部を曲げることができる構造部を設けることで、筐体12の先端部分12a以外の他の部分12bを柔らかくすることが考えられる。
図6は、本発明の実施の形態2に係る構造部を有する筐体12の構成を説明するための概略図である。
図6(a)では、筐体12の材料の厚みを場所によって変更することで、先端部分12aの硬さを、他の部分12bより硬くしてある。つまり、筐体12は、先端部分12aの材料の厚みをt
2、他の部分12bの厚みをt
1(<t
2)として、先端部分12aを硬くしてある。逆に、
図6(a)に示す筐体12では、他の部分12bの厚みを先端部分12aの厚みより薄くすることで、当該他の部分12bに曲げることができる構造部121を形成したと考えることができる。
【0042】
また、
図6(b)では、筐体12の一部に削る部分を設けることで、筐体12の先端部分12a以外の他の部分12bを柔らかくし、筐体12の先端部分12aを硬くしてある。つまり、筐体12は、硬い材料を使用し、他の部分12bに複数の貫通孔を設けて筐体12の一部を削り、先端部分12aより他の部分12bを柔らかくしてある。逆に、
図6(b)に示す筐体12では、他の部分12bに複数の貫通孔を設けることで、当該他の部分12bに曲げることができる構造部122を形成したと考えることもできる。なお、筐体12の一部を削ることで形成される構造部は、貫通孔である必要はなく凹み穴や空洞でもよい。構造部122に形成する貫通孔の大きさ、個数、配列密度は、筐体12に用いる材料の硬さ、筐体12の曲げ量などを考慮して決定する。
【0043】
さらに、
図6(c)では、筐体12の先端部分12aをリブ構造やハニカム構造にすることで、先端部分12aの硬さを、他の部分12bより硬くしてある。つまり、筐体12に柔軟性のある材料を使用し、先端部分12aのみにリブ構造123を形成して、先端部分12aを硬くしてある。逆に、
図6(c)に示す筐体12では、他の部分12bにリブ構造123を形成しないことで当該他の部分12bに曲げることができる構造部を形成したと考えることもできる。
【0044】
また、
図6(d)では、筐体12の一部に蛇腹部分を設けることで、筐体12の先端部分12a以外の他の部分12bを柔らかくし、筐体12の先端部分12aを硬くしてある。逆に、
図6(d)に示す筐体12では、他の部分12bに蛇腹部分を設けることで、当該他の部分12bに曲げることができる構造部124を形成したと考えることもできる。なお、筐体12の一部に設けた蛇腹部分に代え、バネ状の部分などを設けてもよい。また、筐体12の一部に蛇腹部分を設けた場合、外部に押し当てて筐体12を曲げたときの形状を記憶させることができる。つまり、筐体12の一部に蛇腹部分を設けた場合、外力を取除いても自然状態では元の形状に戻ることがないので、常に筐体12を外部に押し当てて曲げた形状を維持させる必要がなく、術者の腕を疲れさせないなどのメリットがある。なお、構造部124として蛇腹部分を設ける場合であっても、筐体12の材料の硬度や厚みを調整することにより、曲げた形状を記憶させない、すなわち自然状態で元の形状に戻るよう構成することも可能である。
【0045】
さらに、
図6(e)では、筐体12の一部に関節部分を設けることで、筐体12の先端部分12a以外の他の部分12bを柔らかくし、筐体12の先端部分12aを硬くしてある。逆に、
図6(e)に示す筐体12では、他の部分12bに関節部分を設けることで、当該他の部分12bに曲げることができる構造部125を形成したと考えることもできる。
【0046】
次に、筐体12を一つの材料で形成する場合に、熱可塑性の材料(例えば、TPE(熱可塑性エラストマー)など)で構成することが考えられる。筐体12を熱可塑性の材料で形成した場合、
図5(a)に示す先端部分12aを加熱せずに他の部分12bを加熱することで、先端部分12aの硬さに対して、他の部分12bを柔らかくすることができる。つまり、加熱することで他の部分12bに柔軟性を与えて、筐体12の少なくとも一部を外部に押し当てることで筐体12を曲げることが可能となる。なお、筐体12を加熱する加熱手段については後述する。
【0047】
次に、筐体12を複数の材料を組合わせて構成することで他の部分12bに対して先端部分12aを硬くすることが考えられる。
図7は、本発明の実施の形態2に係る複数の材料を組合わせる筐体12の構成を説明するための概略図である。
図7(a)では、外力を加えても容易に曲がらない硬さの材料(例えば、PSF(ポリサルフォン)、金属など)を先端部分12aに用いて、外力を加えることで容易に曲がる柔軟性を有する材料(例えば、シリコーン樹脂、FEP、PFAなど)を他の部分12bに用いることで、先端部分12aの硬さを、他の部分12bより硬くしてある。つまり、筐体12は、硬さの異なる二つの材料を
図7(a)の破線部分で接合して組合わせて、先端部分12aを硬くしてある。なお、柔軟性を有する材料と硬い材料とを組合わせる場合、材料を組合わせる位置により筐体12の柔軟性を有する位置を異ならせることができる。
【0048】
また、上記接合を伴わなくとも、複数の材料を組合わせて筐体12の先端部分12aを、他の部分12bに対して硬くすることも可能である。例えば、筐体12を光硬化性樹脂で構成し、光を照射して筐体12を成形する際に、先端部分12aと他の部分12bとで、光の照射条件(照射光強度や照射時間など)を徐々に異なるように設定すれば、硬化後に、先端部分12aと他の部分12bとで、分子重合度がそれぞれ異なる樹脂として成形され、柔軟性が異なりかつ接合部の無い構成とすることが可能である。
【0049】
同様に、例えば筐体12を二液混合により硬化する樹脂で構成し、2種の原液を混合した際の化学反応によって筐体12を成形する際に、先端部分12aと他の部分12bとで、反応条件(原液の混合比率など)を徐々に異なるように設定すれば、硬化後に、先端部分12aと他の部分12bとで、分子重合度がそれぞれ異なる樹脂として成形され、柔軟性が異なりかつ接合部の無い構成とすることが可能である。
【0050】
また、
図7(b)では、筐体12の材料として柔軟性を有する材料(例えば、シリコーン樹脂、FEP、PFAなど)を使用しつつ、外力を加えても容易に曲がらない硬さの材料(例えばPSF、金属など)を内蔵プレート128として先端部分12aに設けることで先端部分12aの硬さを、他の部分12bより硬くしてある。つまり、先端部分12aは、筐体12の材料と内蔵プレート128との2層構造にして硬くしてある。
図7(b)に示す筐体12では、内蔵プレート128を先端部分12aに設けることによって、筐体12の位置により柔軟性が異なるように構成される。なお、先端部分12aの硬さは、内蔵プレート128の有無、内蔵プレート128の厚さや形状などによって調整してもよい。また、
図7(b)では、外力を加えても容易に曲がらない硬さの内蔵プレート128が、柔軟性を有する筐体12よりも内側に配置されている例を示したが、反対に、外力を加えても容易に曲がらない硬さの外装プレートが柔軟性を有する筐体12よりも外側に配置されるよう構成されていてもよい(図示せず)。
【0051】
さらに、
図7(c)では、筐体12の材料として柔軟性を有する材料(例えば、シリコーン樹脂、FEP、PFAなど)を使用しつつ、外力を加えても容易に曲がらない硬さの棒状の材料(例えば、PSF、金属など)を内蔵ワイヤ129として先端部分12aに内蔵することで先端部分12aの硬さを、他の部分12bより硬くしてある。
図7(c)に示す筐体12では、内蔵ワイヤ129を先端部分12aに設けることによって、筐体12の位置により柔軟性が異なるように構成される。なお、先端部分12aの硬さは、内蔵ワイヤ129の有無、内蔵ワイヤ129の太さや配置密度などによって調整してもよい。
【0052】
なお、実施の形態2に係るプローブ10の筐体12は、前述した構成(例えば、
図6、
図7で説明した構成)を組合わせてもよい。例えば、筐体12の材料に熱可塑性の材料を使用しつつ、先端部分12aに内蔵プレート128を設け、他の部分12bに蛇腹部分(構造部124)を設けてもよい。
【0053】
以上のように、実施の形態2に係るプローブ10の筐体12は、少なくとも一部を曲げることができる構造部で構成され、当該構造部を有する筐体12の少なくとも一部を外部に押し当てることでミラー14の位置を変化させることができる。また、実施の形態2に係るプローブ10の筐体12は、少なくとも一部が熱可塑性の材料で構成され、当該熱可塑性の筐体12の部分を加熱し、筐体12の少なくとも一部を外部に押し当てることでミラー14の位置を変化させることができる。さらに、実施の形態2に係るプローブ10の筐体12は、異なる複数の材料を組み合わせることによって、筐体12の位置により柔軟性が異なるように構成される。そのため、実施の形態2に係るプローブ10を用いた口腔内スキャナ100は、患者への負担を軽減しつつ、撮像する範囲を可動させることができる。
【0054】
(実施の形態3)
実施の形態1に係るプローブ10では、柔軟性を有する筐体12に外力を加えることで筐体12を曲げることが可能であることについて説明した。実施の形態3に係るプローブ10では、過度に筐体12が曲げられることを防止することについて説明する。
図8は、本発明の実施の形態3に係る変化防止部を設けたプローブ10の構成を説明するための概略図である。
図8に示すプローブ10は、プローブ10の下面に過度の変化を防止するための変化防止部15を設けている。なお、本実施の形態3に係るプローブ10では、
図2に示した実施の形態1に係るプローブ10と同じ構成について同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。
【0055】
変化防止部15は、プローブ10の先端側に設けられた可動部15aと、接続部側に設けられた固定部15bとを有している。外力が加わり筐体12が図中下方向に曲げられると可動部15aが固定部15bの方向に移動し、可動部15aと固定部15bとが接触する。可動部15aと固定部15bとが接触することで、筐体12がそれ以上曲がらない。つまり、変化防止部15は、可動部15aの移動を固定部15bで止めることで、予め定められた位置以上に筐体12が変化することを防止している。
【0056】
仮に、プローブ10に変化防止部15を設けない場合、プローブ10が過度に曲がるような外力が筐体12に加わると、筐体12に塑性変形や疲労破壊などが生じ、プローブ10の寿命が縮む欠点を生じさせることがある。変化防止部15をプローブ10に設けることで当該欠点を回避することができる。また、同様に、プローブ10に変化防止部15を設けない場合、プローブ10を過度に曲げると、ミラー14で反射した光が接続部20および光学計測部30に至る光路をプローブ10の内面で完全に遮ってしまう欠点を生じさせることがある。変化防止部15をプローブ10に設けることで当該欠点を回避することができる。さらに、同様に、プローブ10に変化防止部15を設けない場合、口腔内にプローブ10を差込むスペースを確保するために、筐体12の少なくとも一部を外部に押し当てて当該スペースを拡げる場合、プローブ10が過度に曲がってしまうと当該ペースを確保できない欠点を生じさせることがある。例えば、歯の側面を計測する際に、プローブ10を使って患者の頬肉を押し広げ、歯と頬肉の間にプローブを差し込むためのスペースを確保しようとした場合、プローブ10がどこまでも曲がってしまうと、頬肉を押し広げるために必要な力が入らず、操作性が低下する、といった欠点である。変化防止部15をプローブ10に設けることで当該欠点を回避することができる。
【0057】
以上のように、実施の形態3に係るプローブ10では、予め定められた変化量以上のミラー14の位置変化を生じさせないように、筐体12に変化防止部15設けるので、プローブ10が過度に曲がることを防止することができる。なお、変化防止部15は、プローブ10が過度に曲がることを防止したい方向にそれぞれ設ける必要がある。例えば、
図8に示すプローブ10が図中上方向に過度に曲がることを防止したいのであれば、プローブ10の上面に過度の変化を防止するための変化防止部15を設ける必要がある。また、
図8に示すプローブ10では、筐体12の外面に変化防止部15を設ける例を説明したが、変化防止部を筐体12の内面や筐体12に内蔵してもよい。
【0058】
(実施の形態4)
実施の形態1に係るプローブ10では、開口部11に接続部20を抜差しすることで光学計測部30に対して着脱可能な構成であると説明した。実施の形態4に係るプローブ10では、開口部11に接続部20を抜差しするのではなく、筐体12の柔軟性を利用して接続部20と接している筐体12の一部を外側に捲ることで光学計測部30に対して着脱可能な構成を実現している。
図9は、本発明の実施の形態4に係るプローブを光学計測部30から着脱する構成について説明するための概略図である。なお、本実施の形態4に係るプローブ10では、
図2に示した実施の形態1に係るプローブ10と同じ構成について同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。
【0059】
まず、
図9(a)では、筐体12の柔軟性を利用して筐体12の一部12dを外側に捲り、捲った筐体12の開口部に接続部20を当てて捲った筐体12の一部12dを元に戻すことで接続部20にプローブ10を装着する。逆に、接続部20からプローブ10を外す場合、筐体12の一部12dを外側に捲り、接続部20を露出させてプローブ10を取外す。これにより、筐体12に柔軟性のある材料を用いたプローブ10であっても、当該プローブ10を光学計測部30に対して容易に着脱することが可能となる。特に、摩擦が大きく抜差しによる脱着が難しいゴム材などの材料を筐体12の材料に使用した場合に有効な方法となる。
【0060】
さらに、接続部20に装着するプローブ10の位置決めのために、
図9(b)のように接続部20にガイド突起25を設け、プローブ10の内面にガイド溝12eを設けてもよい。接続部20にガイド突起25、プローブ10の内面にガイド溝12eをそれぞれ設けることで、接続部20とプローブ10とを接続したときにガイド突起25とガイド溝12eとが嵌合する位置で必ず接続部20にプローブ10装着することができる。そのため、接続部20に装着するプローブ10の位置を一定に保つことができ、ミラー14の位置が安定して、口腔内スキャナ100は精度の高い三次元形状を取得することができる。
【0061】
また、接続部20にガイド突起25、プローブ10の内面にガイド溝12eをそれぞれ設けることで、プローブ10を接続部20から引抜く方向に力が加わった場合でも、ガイド突起25にガイド溝12eが引っ掛かりプローブ10が接続部20から抜けることがない。なお、
図9(b)では、接続部20にガイド突起25を設け、プローブ10の内面にガイド溝12eを設けているが、反対に接続部20にガイド溝を設け、プローブ10の内面にガイド突起を設けてもよい。また、ガイド突起25およびガイド溝12eは、プローブ10の長辺方向に長い矩形状であるが、円形状、横長状などの他の形状でもよく、個数も一個に限られず複数設けてもよい。さらに、ガイド突起25は、接続部20の上面に設ける場合に限られず他の面に設けてもよい。同様に、ガイド溝12eもプローブ10の上側の内面に設ける場合に限られず他の面に設けてもよい。
【0062】
また、
図9(a)に示す接続部20の形状は角柱形状で、プローブ10側から光学計測部30側に至るまでの断面形状は同じ断面形状である。しかし、
図9(c)に示す接続部20aでは、プローブ10を装着した際に採光部に近い部分(プローブ10側の部分)を太く、光学計測部30側に至る部分を細くしている。つまり、接続部20aは、プローブ10側の断面形状が光学計測部30側の断面形状より大きい。一定の太さの接続部20を口腔内に差込む場合に比べ、一部が細くなっている接続部20aを口腔内に差込む場合の方が、プローブ10を口腔内で動かす際の自由度が高く患者の負担が少ない。ただ、柔軟性のない硬い材料を使用して接続部20aの形状に沿うように形成したプローブは、接続部20aに挿入することができない。仮に、接続部20aに挿入できるように、接続部20aの太い部分に合わせてプローブを形成したのでは、細くなった接続部20aの部分も当該プローブを装着することで太くなり患者の負担を軽減できない。
【0063】
図9(c)に示すように、筐体12の一部12dを外側に捲ることができる柔軟性を有するプローブ10を用いることで、筐体12が接続部20aの形状に沿うようにプローブ10を接続部20aに装着することができる。接続部20aはプローブ10と接続する側の断面形状の大きさが、少なくとも他の部分の一部の断面形状の大きさに比べて大きいので、当該接続部20aの形状に沿ってプローブ10を装着することができれば、接続部20aからのプローブ10の抜けを防止することができる。なお、接続部の形状は、
図9(c)に示す接続部20aのように、プローブ10と接続する側の断面形状が大きく、光学計測部30側の断面形状が小さい場合に限られず、プローブ10と接続する側の断面形状と、光学計測部30側の断面形状が大きく、その間の断面形状が小さい場合でもよい。
【0064】
以上のように、実施の形態4に係るプローブ10では、筐体12が、開口部を形成する筐体12の一部12dを外側に捲ることが可能な柔軟性を有する材料で構成されているのでプローブ10を光学計測部30に対して容易に着脱できる。
【0065】
(実施の形態5)
実施の形態2に係るプローブ10では、筐体12を熱可塑性の材料で構成することを説明した。実施の形態5に係るプローブ10では、熱可塑性の筐体12を加熱する加熱手段について説明する。
図10は、本発明の実施の形態5に係る加熱手段を有するプローブ10の構成について説明するための概略図である。なお、本実施の形態5に係るプローブ10では、
図2に示した実施の形態1に係るプローブ10と同じ構成について同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。
図10(a)では、ミラー14と筐体12との間にヒータ16を設けている。このヒータ16は、口腔内でプローブ10を使用した際にミラー14が曇るのを防止するための曇り止め用ヒータとして設けられているだけでなく、筐体12を熱可塑性の材料で構成する場合に筐体自体を温め筐体12の柔軟性を確保するためのヒータとして設けられている。
【0066】
また、プローブ10は外力を加えることで曲げられることが前提であるため、ヒータ16から接続部20に至る配線16aもプローブ10の内面にすべて固定されていない。つまり、
図10(a)に示すように、ヒータ16からの配線16aは、プローブ10の内面に固定されていない部分を設け、配線16aの一部に弛みを持たせている。そのため、プローブ10は外力を加えることで曲げられても、配線16aが断線する可能性を低減している。なお、筐体12が断熱材であれば、ヒータ16で発生する熱を効率よくミラー14に伝えることができるため曇り止め用ヒータとしての効果が大きくなる。
【0067】
さらに、熱可塑性の材料の筐体12を効率よく加熱するには、
図10(b)に示すようにヒータ16をミラー14と筐体12との間だけでなく、筐体12の内面まで延ばして設けてもよい。これにより、ヒータ16は、筐体12を直接加熱することができるようになり、筐体12を外部に押し当てて曲げることができる柔軟性を得ることができるまで、筐体12を加熱することが容易になる。なお、ヒータ16を内面まで延ばした場合、プローブ10の内面にすべて固定されていない。つまり、
図10(b)に示すように、ヒータ16は、プローブ10の内面に固定されていない部分を設け、一部に弛みを持たせている。そのため、プローブ10は外力を加えることで曲げられても、ヒータ16が破損する可能性を低減している。
【0068】
また、プローブ10に設ける加熱手段は、ヒータのように直接加熱する熱源である必要はなく、
図10(c)に示すようにヒータで加熱される伝熱材17でもよい。伝熱材17には、アルミ、銅などの金属材料が用いられる。伝熱材17を設けたプローブ10を接続部20に接続した場合、接続部20に設けてあるヒータ26で伝熱材17が加熱される。伝熱材17を加熱した熱は、図中の矢印が示すように筐体12およびミラー14に伝わり筐体12およびミラー14を加熱する。なお、接続部20に設けてあるヒータ26と伝熱材17とは、直接接触していても接触していなくてもよく、少なくともヒータ26で伝熱材17を加熱することができればよい。
【0069】
伝熱材17を設けたプローブ10は、ヒータ16を設けていない分だけコストを低減することができるとともに、滅菌処理で劣化する可能性のあるヒータ16を設けていない分だけ寿命を延ばすことができる。なお、接続部20に設けてあるヒータ26に代えて、CPU、光源、レンズのピント調整機構などからの廃熱を利用した加熱手段でもよい。また、伝熱材17は、プローブ10の内面にすべて固定されていない。つまり、
図10(c)に示すように、伝熱材17は、プローブ10の内面に固定されていない部分を設け、一部に弛みを持たせている。そのため、プローブ10は外力を加えることで曲げられても、伝熱材17が破損する可能性を低減している。
【0070】
図10(d)に示すように複数のヒータを使用し、ミラー14と筐体12との間に設けられるヒータ16bと、筐体12の内面に設けられるヒータ16cとを設け、各ヒータ同士が配線16aで電気的に接続されるよう構成されてもよい。ヒータ16bは、主にミラー14の曇り止め用で、ヒータ16cは、主に筐体12の加熱用である。複数のヒータを加熱が必要な部分にのみ配置することができるので、1つの大面積なヒータのみでプローブ全体を加熱する構成に比べて効率良く加熱することができ、消費電力を削減することができる。
【0071】
なお、曇り止めに用いるヒータ16bと、柔軟性を確保するために用いるヒータ16cとで、発熱量が異なるよう構成されていてもよい。また、ヒータ16bの加熱の対象は、ミラー14ではなく、
図4(b)(c)に記載されている平板ガラス14dを曇り止めするために加熱するよう構成されていてもよい。
【0072】
また、図示していないが、ヒータ16bおよびヒータ16cの代わりに、伝熱材を使用し、ミラー14と筐体12との間に設けられる伝熱材と、筐体12の内面に設けられる伝熱材とを設け、各伝熱材同士を、別の伝熱材を用いて熱的に接続し、加熱が必要な箇所のみを効率的に加熱できるよう構成されてもよい。
【0073】
以上のように、実施の形態5に係るプローブ10は、筐体12の一部を加熱するヒータ16または伝熱材17を有するので、ミラー14の曇り止め、および筐体12の加熱のうち少なくとも1つが可能になる。ヒータの加熱によって曇り止めを行うことができる対象は、ミラー14に限定されず、筐体12の内面に銀などを蒸着したり、筐体12の内面を鏡面状に研磨したりするなど筐体12の一部であっても、計測窓13(採光部)に設けた平板ガラス14d,14eなどであってもよい。また、ヒータ16、ヒータ16から延びる配線16aおよびヒータ16から延びる伝熱材17のうち少なくとも一つは、弛みを持たせて筐体12の少なくとも一部に固定してあるので、外力を加えることでプローブ10が曲げられても、ヒータ16、ヒータ16から延びる配線16aおよびヒータ16から延びる伝熱材17が破損する可能性を低減することができる。
【0074】
(実施の形態6)
実施の形態1に係る口腔内スキャナ100では、プローブ10を接続部20に抜差しすることで光学計測部30に対して着脱可能な構成であると説明した。実施の形態6に係る口腔内スキャナでは、プローブを接続部に抜差しするのではなく、光学計測部の一部として一体化してある。
図11は、本発明の実施の形態6に係る口腔内スキャナの一部の構成について説明するための概略図である。
【0075】
図11に示す口腔内スキャナ300は、
図1に示す口腔内スキャナ100のプローブ10、接続部20および光学計測部30の一部に対応した部分が図示されている。口腔内スキャナ300の制御部、表示部および電源部は、口腔内スキャナ100の制御部40、表示部50および電源部60と同じ構成であるため詳しい説明を繰り返さない。
【0076】
口腔内スキャナ300では、一体化されたプローブ80が光学計測部70(処理部)の入光部として設けられている。プローブ80は、光学計測部70に入光するための開口部61を有する筐体62と、開口部61とは反対側の筐体62に設けられた計測窓63(採光部)と、計測窓63から取り込んだ光を開口部61の方向に反射するミラー64(反射部)とを備えている。
【0077】
筐体62は、例えばシリコーン樹脂のように柔軟性を有する材料で形成されており、
図11の破線図に示すように外力を加えることで上下に対しても可動する。もちろん、筐体62は、図示していないが左右、捩れのいずれの方向に対しても可動する。筐体62が可動することで筐体62の内部に設けたミラー64の位置も変化させることができる。
【0078】
プローブ80は、プローブ80の上面を外部(例えば、歯)に押し当てて、筐体62の内部に設けたミラー64の位置を可動させる。ミラー64の位置を可動することで、観察対象の死角の位置が、光学計測部70に設けたレンズ71,72および撮像素子73を通る光路上になり、撮像素子73で当該死角を撮像することが可能となる。
【0079】
以上のように、実施の形態6に係る口腔内スキャナ300では、光を取り込むためのプローブ80と、プローブ80から取り込んだ光を処理する光学計測部70および制御部とを備えている。つまり、プローブ80が口腔内スキャナ300に一体化されている。当該プローブ80は、光学計測部70に入光するための開口部61を有する筐体62と、開口部61とは反対側の筐体62に設けられた計測窓63と、計測窓63から取り込んだ光を開口部61の方向に反射するミラー64とを備えている。さらに、筐体62は、筐体62の少なくとも一部を外部に押し当てることでミラー64の位置を変化させるので、患者への負担を軽減しつつ、撮像する範囲を可動させることができる。
【0080】
(実施の形態7)
実施の形態1に係る口腔内スキャナ100では、筐体12の少なくとも一部を外部に押し当てることでミラー14の位置を変化させ、撮像する範囲を可動させる構成について説明した。実施の形態7に係る口腔内スキャナでは、筐体を外部に押し当てて筐体を曲げることで撮像素子の視野の一部をミラー14の枠部分や筐体の内面が遮った場合に処理について説明する。
図12は、本発明の実施の形態7に係る口腔内スキャナにおける犠牲視野を除外する処理を説明するための概略図である。
図13は、本発明の実施の形態7に係る制御部での除外処理を説明するためのブロック図である。なお、本実施の形態7に係る口腔内スキャナは、
図1および
図2に示した実施の形態1に係る口腔内スキャナ100と同じ構成を用いるため、同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。
【0081】
図12(a)には、観察対象200の死角201を撮像するために、筐体12を外部に押し当てて破線の位置の筐体12が実線の位置の筐体12に曲げられた様子が図示されている。筐体12が破線の位置にある場合、ミラー14と撮像素子23の視野(有効撮像領域)23aとの関係は
図12(b)に示す関係となる。つまり、ミラー14の枠14fの内側にある反射面14gの範囲内に撮像素子23の視野23aが収まっている。そのため、視野23aの範囲の画像をすべて三次元形状の演算に使用することができる。一方、筐体12が曲げられ、実線の位置にある場合、ミラー14と撮像素子23の視野23aとの関係は
図12(c)に示す関係となる。つまり、撮像素子23の視野の一部を枠14fや筐体12の内面が遮るので、ミラー14の反射面14gの範囲内に撮像素子23の視野23aが収まらず、視野23aの一部と枠14fとが重なる。そのため、枠14fと重なった視野23aの一部は観察対象200の画像を得られない犠牲視野(除外領域)23bとなる。この犠牲視野23bは、三次元形状を演算する際のノイズとなり、取得する三次元形状の精度が低下する虞がある。
【0082】
そこで、
図13に示す制御部40では、撮像素子23で撮像した画像から犠牲視野23bの画像を除外して三次元形状を演算する。制御部40では、撮像素子23で撮像した画像から犠牲視野23bを検出する検出部41と、犠牲視野23bを撮像素子23で撮像した画像から除外する除外処理部42と、犠牲視野23bを除外した画像から三次元形状を演算する三次元形状処理部43とを備えている。なお、検出部41、除外処理部42および三次元形状処理部43は、制御部40のCPUによって処理されるソフトウェアとして実現しても、当該CPUとは別に処理を行うハードウェアとして実現してもよい。また、当該CPUやハードウェアなどの三次元形状処理部43のうち少なくとも一部が、制御部40の内部に設けてあってもよいし、光学計測部30の内部に設けてあってもよい。
【0083】
検出部41は、光学計測部30で得られた撮像画像から枠14fより外側の領域と重なった範囲を除外画像(除外領域)として検出する。検出部41が除外画像を検出する方法としては、例えば枠14fに画像処理で識別できる識別情報を予め付与しておき、撮像画像に当該識別情報が写り込んでいる範囲を除外画像として検出する。識別情報としては、例えば枠14fに塗る色、蛍光材、枠14fに貼付けるバーコード、口腔内に通常存在しないような模様を有するテクスチャや凹凸による刻印パターンなどである。具体的に、枠14fに色を塗り識別情報とする場合、観察対象200である歯および歯肉は白色か赤色であることが多いので、枠14fを青色や緑色で塗り識別情報とするのが有利である。検出部41は、青色や緑色が塗られた枠14fが写り込んだ撮像画像から青色や緑色の画像を除外画像として検出する。
【0084】
なお、識別情報は、枠14fに設ける場合に限定されず、枠14fの外側に位置する筐体12に設けてもよい。枠14fの外側に位置する筐体12に識別情報を設けることで、筐体12の一部が撮像画像に写り込んでも除外画像として検出することができる。また、枠14fに識別情報を設けずに、枠14fの外側に位置する筐体12にのみ識別情報を設ける場合でもよい。また、検出部41は、識別情報で除外画像を検出する以外に、枠14fの部分に焦点が合うように調整された別のセンサを設けて、撮像画像に写り込んだ枠14fの位置を特定し除外画像を検出してもよい。さらに、口腔内スキャナが合焦法の技術を用いて三次元形状を取得する撮像装置であれば、枠14fの外には焦点が合わないように設計することができ、検出部41は、撮像画像に枠14fが写り込んでも焦点が合わないので、ピント調整機構により調整されるすべてのピント範囲にわたって一度も合焦しない画素を検出するだけで、除外画像を検出することができる。なお、この場合、枠14fに画像処理で識別できる識別情報を予め付与しておく必要がない。
【0085】
次に、除外処理部42は、検出部41で検出した除外画像を、撮像画像から除外した処理画像に加工する。三次元形状処理部43は、除外処理部42で加工された処理画像に対して三次元形状を演算する。なお、三次元形状処理部43で演算する処理画像のサイズを一定にするために、除外処理部42は、撮像画像から除外した除外画像の部分に演算に影響を与えない画像を付加してもよい。三次元形状処理部43で演算された結果は表示部50に出力され、表示部50に観察対象200の三次元形状が表示される。
【0086】
なお、ここでは、先に検出部41と除外処理部42によって処理画像を加工し、その後処理画像を用いて三次元形状処理部43にて三次元形状を演算する手順について説明したが、これとは異なる手順で処理を行ってもよい。すなわち、先に未加工の撮像画像を用いて三次元形状を取得し、その後、検出部41と除外処理部42によって除外画像を求め、先に求めておいた三次元形状データから、除外画像に対応する座標点(ノイズ)を除外する、という手順で処理してもよい。
【0087】
ここまでは、除外画像を検出する手法として識別情報を利用する手法について説明したが、別の手法として、歪みセンサを用いる手法でもよい。筐体12のうち筐体12が曲がった際に歪みを生じる部分には歪みセンサ(図示せず)が設けられ、当該歪みセンサは、筐体12の曲げによって発生する歪みの量に応じた歪み量情報を出力する。検出部41は、歪み量情報に基づいて、除外領域を検出する。例えば、あらかじめ歪みセンサから出力される歪み量情報と、筐体12の曲げによって除外領域が発生する条件とを対応付けておけば、口腔内スキャナ100を使用中に、歪みセンサから出力される歪み量情報が所定条件を満たした場合に、除外処理部42が動作するよう設定し、除外処理部42は撮像画像から所定の除外画像を除外し、処理画像を加工するような手順で処理することが可能である。その後は同様に、三次元形状処理部43は処理画像を用いて三次元形状を演算し、表示部50にて三次元形状を表示すればよい。歪みセンサとして、例えば歪みゲージや、光ファイバ式歪みセンサなどが利用できる。上記歪みセンサはシート状または細線状であるため、筐体12の内部に組み込んだり、ヒータ16の回路上や伝熱材17の上にレイアウトしたりすることが可能である。歪みセンサは、上下、左右、捩れなどの各方向の歪み量を検知できるよう、筐体12の内部に複数設置されていてもよい。歪みセンサを用いる手法は、識別情報を用いる手法に比べ、部品数は増えるものの、複雑な画像処理のための演算が不要であるため、演算負荷が低く、撮像の高速化に有利となる。
【0088】
以上のように、本発明の実施の形態7に係る口腔内スキャナでは、ミラー14の位置の変化により、ミラー14の枠および枠14fの外側に位置する筐体12のうち少なくとも一方と、撮像素子23の視野23aとが重なった除外画像を検出する検出部41と、検出部41で検出した除外画像を撮像素子23の撮像画像から除外する除外処理部42とを備えるので、取得する三次元形状の精度を向上させることができる。なお、撮像画像を表示部50に表示させて使用者が操作を行なう場合、除外処理部42で撮像画像から除外画像を除外して表示部50に表示することで、画面内にミラー枠や筐体内面などの不要なものが写らず、使用者は観察対象200のみに集中して観察することができ、操作性が向上する。
【0089】
また、本発明の実施の形態7に係る口腔内スキャナでは、枠14fおよび枠14fの外側に位置する筐体12のうち少なくとも一方に識別情報を設け、検出部41が、撮像画像から識別情報を識別して除外画像を検出するので、容易に除外画像を検出することができる。あるいは、筐体12に歪みセンサを設け、当該歪みセンサが、ミラー14の位置の変化によって筐体12に発生する歪みの量に応じた歪み量情報を出力し、検出部41が歪みセンサから出力される歪み量情報に基づいて除外画像を検出する場合、検出部41の演算処理を低負荷にでき、高速で除外画像を検出することが可能となる。
【0090】
(変形例)
本発明の実施の形態1〜7に係るプローブおよび撮像装置は口腔内スキャナに用いると説明したが、これに限定されるものではない。例えば、口腔内カメラ、光干渉断層診断装置(Optical Coherence Tomography: OCT)、紫外・赤外・テラヘルツイメージング装置、蛍光イメージング装置などの撮像装置に対して、本発明の実施の形態1〜7に係るプローブおよび撮像装置を用いてもよい。
【0091】
また、本発明の実施の形態1〜7に係る撮像装置の撮像の対象は、口腔内の歯や歯肉に限ったものではなく、外耳道などの生体組織や、建築物の壁の隙間、配管の内部や、空洞を有する工業製品などであっても良く、本発明は、狭隘で死角の生じやすい空間内を計測/観察する用途に対し広く適用可能である。
【0092】
また、本発明の実施の形態1〜7に係るプローブでは、プローブの筐体を外部に押し当てることで当該筐体を曲げて、ミラーの位置を変化させることを説明したが、これに限定されるものではない。例えば、プローブの筐体を外部に押し当てても当該筐体自体は曲がらないが、プローブの筐体を外部に押し当てることで当該筐体から露出するミラーの一部(例えばミラーの裏面に当接する棒状物)も一緒に押され、ミラーの位置のみが変化する構成でもよい。なお、ミラーは、裏面の一部が弾性体によって筐体に保持されているので、裏面を押すことでミラーの位置を変化させることができる。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。