(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352903
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】生物製剤用の注入カテーテルチップ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20180625BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20180625BHJP
【FI】
A61M25/00 530
A61M25/10 510
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-512698(P2015-512698)
(86)(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公表番号】特表2015-519948(P2015-519948A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】US2013040396
(87)【国際公開番号】WO2013173166
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2016年4月15日
(31)【優先権主張番号】13/473,988
(32)【優先日】2012年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516111177
【氏名又は名称】クック リージェンテック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディブ、ナビル
【審査官】
鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表平11−504233(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0071496(US,A1)
【文献】
特開平8−38607(JP,A)
【文献】
米国特許第5964223(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入システムであって、
近位端と遠位端の間に伸びる中央管腔を持つ細長いカテーテルと、
中に粒子が浮遊している液状媒体の源であって、カテーテルの近位端と流体連結で接続する液状媒体の源と、
近位端と遠位端とを有する分離器であって、それら近位端と遠位端との間に伸びる複数の平行な管腔を有し、前記カテーテルの中央管腔内で前記カテーテルの遠位端から距離「d」のところに位置付けられて該遠位端に再収集室を形成するとともに、前記分離器の各管腔を前記中央管腔と個別に流体連結し、また各個別の管腔は、その中を通して粒子を順次受け入れるような寸法とされ、各管腔は、前記粒子が互いに凝集しないように効果的に分離するのに十分なだけ小さく、それにより前記粒子は、個別にまたは小グループで前記管腔に入るように前記管腔内に受け入れられる、分離器と、
注入機器であって、浮遊粒子を持つ液状媒体を前記カテーテルの管腔を通して移動させ、前記分離器の個別の管腔を通して分離して整列させた粒子を更に移動させ、分離した粒子を持つ液状媒体を再収集室内で復元する、注入機器と、
を含む注入システム。
【請求項2】
前記カテーテルは外面を有し、また管状であって軸線を定義し、また前記システムは更に、
前記カテーテルの前記外面上に位置して、前記分離器の近くで前記カテーテルを取り囲む膨張可能なバルーンと、
前記バルーンと流体連結で接続し、前記バルーンを膨張させて前記バルーンと前記カテーテルの外面の周りの血流を選択的に制御する膨張器と、
を含む、請求項1に記載の注入システム。
【請求項3】
患者の血管系内に粒子を導入するためのシステムであって、
近位端と遠位端の間に伸びる中央管腔を持ち、或る軸線を定義する、細長いカテーテルと、
流体内に浮遊する粒子の源であって、前記カテーテルの近位端と流体連結で接続する源と、
前記粒子源と流体連結する実質的に円筒形の分離器であって、近位端と遠位端とを有し、複数の縦軸方向に整列した平行な管腔を持ち、各管腔は、中を通る粒子を受け入れる寸法とされ、また各管腔は、前記粒子が互いに凝集しないように効果的に分離するのに十分なだけ小さく、それにより前記粒子は、個別にまたは小グループで前記管腔に入るように前記管腔内に受け入れられ、また前記分離器は、前記カテーテル内で前記カテーテルの遠位端から距離「d」のところに位置付けられて前記分離器と前記カテーテルの遠位端の間に再収集室を形成する、分離器と、
前記カテーテルの周りに設けてこれに取り付けられる膨張可能なバルーンであって、前記カテーテルから外向きの半径方向に拡張可能であり、それにより前記カテーテルの周りの、前記軸線に実質的に平行な方向の血流を制御する、バルーンと、
前記源から、前記分離器を通して、患者の血管系に粒子を移動させる注入機器と、
前記バルーンを基本形から二次形に選択的に形成するための膨張器であって、前記バルーンは基本形で収縮し、二次形で膨張する、膨張器と、
を含む粒子を導入するためのシステム。
【請求項4】
前記カテーテル内の液状媒体の流体速度は、前記分離器を通して加速された後、前記再収集室によって遅くされる、請求項1から3までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記再収集室は約1ミリメートル(mm)の長さ「d」を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記粒子は、遺伝子治療、薬品治療およびタンパク質治療に有用な薬物から成るグループから選択される、請求項1から5までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記粒子は幹細胞である、請求項1から6までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記カテーテルは軸線を定義し、前記分離器の近位端は前記軸線に関して角度「α」だけ傾斜し、前記分離器の遠位端は前記軸線に実質的に垂直である、請求項1から7までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記分離器内の各管腔の近位端は前記分離器の軸線に実質的に垂直な方向に合わせられ、それにより前記分離器の近位端を階段形にする、請求項1から8までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記バルーンは、前記分離器の近くで前記カテーテルの周りに位置決めされる、請求項1から9までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記再収集室は実質的に管状であり、且つ前記中央管腔と同じ直径を有している、請求項1から10までのいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現在係属中の出願番号第12/563,876号、2009年9月21日出願の一部継続出願である。出願番号第12/563,876号の内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明は一般に粒子を流体内に導入するための注入システムに関する。より特定すると、本発明は、生体物質(例えば、幹細胞)の治療有効性を減少させずに生体物質の粒子を患者の血管系内に導入する(注入する)ための注入システムに関する。本発明は特に、ただし排他的ではなく、個別の粒子または粒子の小グループを分離器の管腔内に入れ、次に患者の血管系内に注入することを可能にする多重管腔フィルタを用いるシステムとして有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】出願番号第12/563,876号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粒子を患者の血管系内に導入するには、いくつかの異なる関心事または検討事項を同時に解決する必要がある。関係する粒子のタイプに従って、非常に大きな関心事は、粒子を血管系内に注入すなわち導入するときに粒子が凝集する(すなわち、互いに塊になる)のを防ぐことである。これが特に関心事になるのは、凝集することはあるが、個別の細胞または細胞の小グループとして機能させると治療に非常に有効である幹細胞の場合である。粒子が凝集するのを防ぐことの更なる利点は、細胞の塊が冠状動脈循環システム内に入って心臓発作を起こすのを防ぐことができることである。また、バルブまたはバルーンを用いて血流を減らし、血流が遅くなったときに幹細胞を注入すると、心臓や他の目的の組織内の幹細胞の保持率が高くなる可能性がある。
【0005】
全てのタイプの血管内(すなわち、冠動脈内、動脈内、静脈内)治療において、治療薬(例えば、生物製剤または薬品)を予測制御しながら注入または投与することは常に重大な関心事である。また、治療薬を血管系内の目的の部位に効果的に届けることが大切である。これら全ては投薬量および投与率を考慮しなければならない。更に、治療薬の注入中に損傷またはその他の障害が起こらないようにするには治療薬の扱いを注意深く行うことが必要である。
【0006】
機械的な観点からは、流体通路の直径は通路を通る流量の速度に影響を与える一つの要因であることが知られている。凝集してない粒子の小グループを血管系の血管内に注入するというプロトコル(protocol)では、通路の直径は粒子の小グループをそれぞれ通すように十分大きくなければならない。他方で、直径は、粒子(細胞)のやや大きなグループを分離して互いに凝集するのを防ぐように十分小さくなければならない。その結果、粒子が通路を通って流れる速度は通路の寸法により制限される。更なる結果として、通路を出るとき粒子は血管系の血管内の流体(すなわち、血液)の流れに影響される。プロトコルの目的に従って、このことは血管系内の下流の流量もある程度調整する必要があることを意味する。
【0007】
上記のことから、本発明の目的は、粒子の小グループだけを流体の流れの中に効果的に導入することができる注入システムを提供することである。本発明の別の目的は、粒子/液状媒体(すなわち、第1の流体)の流量の速度と、粒子/液状媒体を導入する相手の流体(すなわち、第2の流体)の流量の速度とを調整する注入システムを提供することである。本発明の更に別の目的は、流体がカテーテルから出て血管に入るときに血管壁にかかる衝撃を減らすために、低出口圧力を作る注入システムを提供することである。本発明の更に別の目的は、使いやすく、製作が簡単で、コスト効率が比較的に高い注入システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、注入システムはカテーテルの近位端と遠位端の間に伸びる中央管腔を持つ細長いカテーテルを含む。好ましくは、カテーテルは滑らかで円形の外面を持つ管であり、説明のためであるが、カテーテルは縦軸を定義する。中に粒子が浮遊している液状媒体(すなわち、粒子/液状媒体)の源がカテーテルの近位端と流体連結で接続し、また分離器がカテーテルの遠位端に接続する。本発明の目的では、分離器は、粒子を患者の血管系内の血管内に注入すなわち導入するときに粒子が凝集するのを防ぐために設ける。本発明で想定されるように、粒子は生物製剤(すなわち、細胞、遺伝子、またはタンパク質)かまたは薬品でよい。また、粒子は冠動脈内、動脈内、または静脈内の治療のために血管系内に導入してよい。
【0009】
構造的に、分離器は複数の平行な管腔を持つ。したがって、分離器をカテーテルの遠位端に取り付けると、分離器の各管腔はカテーテルの中央管腔と個別に流体連結する。重要なことは、各管腔の寸法を、中を通る粒子の小グループ(すなわち、10未満)だけを順次受ける大きさにすることである。特定すると、各管腔は複数の粒子を一度に受けることができるが、各管腔は十分小さくて、粒子を管腔内に受けるときに互いに凝集しないように粒子を効果的に分離する。またこのシステムは、カテーテルの管腔を通して粒子/液状媒体を移動させ、整列した粒子を分離器の個別の管腔を通して更に移動させるための手段も含む。本発明の目的では、この粒子/液状媒体を移動させる手段は、点滴(IV)のポール、注射器、またはポンプなどの、当業者に周知の任意の手段でよい。
【0010】
上記の分離器に加えて、本発明のシステムはバルーンなどの構成可能な(膨張可能な)バルブも含んでよい。特定すると、構成可能なバルブをカテーテルの外面上に設けて、分離器の近位の位置でカテーテルを囲む。更に、バルブはカテーテルの軸の周りに配置された複数の開口を持つ。これらの開口の目的は、カテーテルの軸に実質的に平行に遠位方向にカテーテルを通る流体(すなわち、血液)の軸方向の動きを制御することである。好ましくはこの制御は膨張器が行い、バルブの開口を選択的に圧縮して開口を通る流体の流量を制御する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態では、バルブは軸を中心とする環として形成する。この構造では、環はカテーテルの外面に取り付けられる内径を有する。バルブは、バルブが膨張して基本形になったときにカテーテルから所定の半径距離のところに外形を保持する、環の外周上に位置する実質的に非準拠(non−compliant)の材料も有する。前に述べたように、バルブは当業者が一般に用いるバルーンでよく、またこのバルーンはこのタイプの処置に適した任意の材料でよい。例えば、バルーンはナイロン、ポリエチレン、またはポリエチレンテレフタレート(PET)でよい。非準拠の材料はさておき、環の残りは準拠した材料で作る。重要であるが、この準拠した材料は膨張器に応じて開口を選択的に圧縮する。したがって、操作において、その基本形を超えてバルブを更に膨張させると、開口を徐々に圧縮しながら、所定の半径位置での外径を実質的に保持する。
【0012】
本発明の更なる特徴は、モノレールタイプのガイドワイヤによりカテーテルを血管系内で位置決めする手段を含むことである。また、選択された流体圧力で源からカテーテルの中央管腔内に流れ込む流量を計測する流量コントローラを設けてよい。
【0013】
本発明の文脈内で、患者の血管系内に生物製剤を注入しやすくするいくつかの構造的変化形を想定することができる。かかる変化形も心臓による幹細胞、薬品、タンパク質、または粒子の拡散および保持率を高めることができる。これらは、(1)生物製剤の流体注入速度を安全かつ効果的にするために、カテーテルの遠位端に再収集室を作ること、(2)注入前に生物製剤が互いから分離しやすくなるように分離器の近位(上流)面の方向を決めること、および(3)生物製剤の注入と連携して血管系を通る血流を調整し制御する膨張可能なバルーンを持つこと、を含む。追加の1つの変化形は、前に開示したカテーテルの代わりにバタフライカテーテルを用いることである。
【0014】
静脈内または動脈の注入中に用いる再収集室はカテーテルの遠位端に設け、カテーテルの中央管腔内に、カテーテルの遠位端から距離「d」のところに分離器を置くことにより作る。このように位置決めした再収集室は実質的に管状であり、長さ「d」を有し、中央管腔と同じ直径を有する。バルブまたはバルーンはカテーテルの遠位端に近いこの位置までは伸びないことに注意すべきである。
【0015】
分離器の構造的変化形に関して述べると、上に開示した分離器の別の実施の形態では、近位(上流)面はカテーテルの軸に関して角度「α」だけ傾斜している。好ましくは、角度「α」は約60°であり、その結果、分離器が作る各管腔は異なる長さを有する。1つの型では、分離器の近位(上流)面は平らであり、各管腔への入り口はカテーテルの軸から角度「α」だけ傾斜している。別の型では、この面は階段形を有するので、各管腔への入り口はカテーテルの軸に垂直である。両方の型において、カテーテルの遠位(下流)面はカテーテルの軸に垂直である。
【0016】
分離器と再収集室との組合わせは、安全に注入しているときに生体製剤の分離を促進しまた保持するよう機能する。詳しく述べると、注入流体の流体速度は分離器を通るときに加速された後、再収集室で遅くなる。血管系を通る流体の流れを更に安全に保つために、膨張可能なバルーンをカテーテルの外面に取り付けてよく、また選択的に膨張させて、血流および流体注入のそれぞれの速度を調和させてよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の特徴および本発明自体の構造およびその操作は、以下の説明と共に添付の図面を参照すれば最もよく理解することができる。図中、同じ参照符号は同じ部分を示す。
【
図1】操作環境内に置かれたシステムカテーテルと共に示す本発明のシステムの略斜視図である。
【
図2】
図1の線2−2に沿って見たシステムカテーテルの分離器および遠位部の断面図である。
【
図3】
図1の線2−2に沿って見た注入チップの別の実施の形態の断面図である。
【
図4】
図3に示す注入チップの別の実施の形態の断面図である。
【
図5A】収縮した形であって、操作環境に置かれたカテーテルと共に示す、本発明のバルーンの平面図。
【
図5B】膨張した形であって、操作環境に置かれたシステムカテーテルと共に示す、本発明のバルーンの平面図。
【
図6】本発明のバタフライカテーテルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る流体の導入(注入)のためのシステムを示し、一般に10で表わす。図に示すように、システム10はカテーテル12を含む。カテーテル12は血管14内を進み、患者(図示せず)の血管系内の所定の位置にカテーテル10は位置決めされる。本発明の目的では、血管14は患者の血管系システム内の好ましくは動脈または静脈であり、システム10は動脈内、静脈内、または冠動脈内のプロトコルに用いられる。
【0019】
詳細に述べると、
図1はシステム10が液状媒体18を保持するための源16を含むことを示す。また
図1に示すように、複数の粒子20が液状媒体18内に浮遊して粒子/液状媒体22を形成する。本発明では、粒子20は薬品のある形でよく、または最も可能性が高いのは、粒子は生物製剤(すなわち、細胞、遺伝子、またはタンパク質)のある形である。いずれにしても、粒子20は粒子/液状媒体22内に浮遊して、源16からシステム10を通り、血管14内に送られる。システム10について上に述べたように、源16は当業者に周知のタイプの注射器でよい。
【0020】
図1はまた、システム10が、源16と流体連結するコントローラ24を含むことを示す。本発明で推定されるように、コントローラ24は流体システム(例えば、システム10)を通して流体(例えば、粒子/液状媒体22)を移動させるための当業者に周知の任意のタイプの機器でよい。一般に、かかる機器はIVポンプ、IVポール、注射器、またはその他の流量計測装置でよい。しかし、源16が注射器であるシステム10の実施の形態では、コントローラ24を特に必要とはしない。
【0021】
図1はまた、システム10が、以下に説明する目的のための膨張器26を含むことを示す。コントローラ24と膨張器26の両方をシステム10で用いるときは、両者をコネクタ28で個別に接続して、カテーテルとの間にそれぞれ別個の流体連結チャネルを確立してよい。好ましくは、図に示すように、コネクタ28はカテーテル12の近位端30と流体連結で接続する。
【0022】
更に
図1に示すように、システム10はカテーテル12の遠位端34に取り付けたチップ(フィルタ)32(今後は分離器68とも呼ぶことがある)を含む。更に、バルブ36を遠位端34の近くでカテーテル12に取り付けることと、バルブ36は複数の開口(例えば、開口38aおよび38b)を持つことが示されている。カテーテル12の遠位部の実際の構造と、分離器68とバルブ36との構造上の協力関係は
図2を参照すれば最もよく理解できるであろう。
【0023】
図2を参照し、また特に分離器68を参照すると、分離器68は複数の管腔(例えば、管腔40a、40b、40c)を持つことが分かる。より特定すると、各管腔は分離器68を通って軸方向に伸び、互いに実質的に平行である。また各管腔は、カテーテル12により一般的に定義される軸42に実質的に平行である。重要なことは、各管腔は個別の粒子20または粒子の小グループだけを受ける特定の寸法の直径44を持つことである。各管腔は複数の凝集していない粒子20を同時に受けることができるが、個別の粒子20または粒子の小グループは管腔を通る間は分離されている(例えば、管腔40aを参照)。更に、分離器68は、カテーテル12を血管14内で位置決めするために、当業者に周知の方法でガイドワイヤ48と相互に作用するモノレール管腔を持ってよい。
【0024】
上述の分離器68の構造に留意すると、本発明の重要な点は、各管腔の直径44の寸法を、凝集した粒子20の大グループがカテーテル12の中央管腔50から管腔内に入るのを防ぐ大きさにすることである。具体的には、種々の治療プロトコルにおいて、粒子20が血管14に入るときに粒子を分散させることにより、血管14内で凝集が起こる可能性を最小にすることが必要であろう。凝集が起こると、細胞を管状動脈循環システム内に注入したときに心臓発作または脳卒中を引き起こすかもしれない。
【0025】
バルブ36は複数の開口を持つことを思い出していただきたい。また、
図1および
図2を相互に参照すると、理解されるように、膨張するとバルブ36は一般に環状になり、膨張室52を形成する。図に示すように、膨張室52は膨張線54を介して膨張器26と流体連結で接続する。この構造では、膨張線54をカテーテル12内に統合してよい。操作の目的では、バルブ36は準拠した膨張可能な材料で作られるバルブ体56を含む。バルブ36は管形のバルブ36の周辺上に位置する実質的に非準拠の材料で作られた縁58も含む。システム10では、バルブ36は分離器68の近位に位置し、接着や接合などの当業者に周知の方法で、カテーテル12の外面60に取り付ける。
【0026】
操作としては、バルブ36(バルーン)は収縮した形から始まり、膨張器26により膨張して基本形(
図1および
図2参照)になり、バルブ36は縁58により制約される。この基本形では、バルブ36はカテーテル12の面60から半径距離62だけ伸び、また基本形では、血管14と接触する可能性が非常に高い。また、基本形では、各開口(例えば、開口38a)は直径64を有する。しかし、膨張器26によりバルブ36が更に膨張すると、2つの異なる構造が起こる。1つの構造では、縁58は基本形から拡大しない。したがって、半径距離62は実質的に一定である。別の構造では、膨張器26に応じてバルブ体56が拡大して、開口が次第に圧縮される。言い換えると、また開口38aを特に参照すると、直径64が小さくなる。本発明の別の実施の形態では、バルブ36は必要でないことがある。
【0027】
動脈内、静脈内、または冠動脈内のプロトコルにおけるシステム10の操作では、まずガイドワイヤ48を患者の血管系内に予め位置決めする。次に、ガイドワイヤ48をカテーテル12のモノレール管腔46内に受け、カテーテル12をガイドワイヤ48に沿って進めて患者の血管系内で位置決めする。カテーテル12を正しく位置決めした後、バルブ36を膨張させてその基本形にまたはそれ以上にする。バルブ36を膨張させる程度は血管14内の開口を通る流体の望ましい流量に依る。バルブ36が膨張すると、コントローラ24が働いて、源16からカテーテル12の中央管腔50を通して粒子/液状媒体22を流す。
【0028】
粒子/液状媒体22内の粒子20が分離器68に到着すると、分離器68内の個別の管腔のそれぞれの直径44のために、個別の粒子20または粒子20の小グループだけが管腔に入ることができる。したがって、中央管腔50内の粒子の凝集は妨害され、分離器68を通った後の粒子20の凝集は最小になる。上の説明では患者の心臓血管システム内でのシステム10の適用に焦点を合わせたが、システム10は、粒子/液状媒体22内に浮遊した粒子20を個別の粒子20として液流(例えば、血管14を通る血流)内に放出する場合にいつでも用いることができる。
【0029】
図3は生物製剤の注入チップを示し、一般に66で表わす。この実施の形態では、分離器68’はカテーテル12の中央管腔内の、カテーテル12の遠位端34から距離「d」のところにある。この位置で、分離器68’はカテーテル12の遠位端34に長さ「d」の再収集室70を作る。特定すると、再収集室70はカテーテル12の遠位端34に形成される管状部分である。必要であれば、独立した管片で再収集室70を作ってカテーテル12の遠位端34に取り付けてよい。
【0030】
更に
図3に見るように、分離器68’は近位(上流)面72と遠位(下流)面74とを有する。詳細に述べると、分離器68’の近位面72はカテーテル12の軸42に関して角度「α」の方に傾斜している。しかし、分離器68’の遠位面74は軸42に垂直で、実質的に平らである。上に開示した構造に留意すると、近位面72が傾斜しているため、各管腔76a−76cの近位端はカテーテル12の軸42に関してやはり角度「α」だけ傾斜している。したがって、流体はカテーテル12内を流れてカテーテル12の傾斜した近位面72に出会うと方向を変えて、分離器68’の管腔76a−76cを通って流れる。操作上では、この方向変換を行うことにより患者の血管系に入る前に流体内の粒子20が凝集するのを妨げるのを助ける。分離器68’の管腔76a−76cから出ると流体は再収集室70に入り、ここで減速した後に患者の血管系に入る。
【0031】
図3および
図4に示す実施の形態では、ガイドワイヤ出口管腔78をカテーテル12上に、分離器68’および68”の近位の約25−30ミリメートルの位置に形成する。
【0032】
次に
図4は、分離器68”の近位面72を階段形にした注入チップ66’の変化形を示す。階段形のために、各管腔80a−80cの近位端はカテーテル12の軸42に実質的に垂直である。したがって、全ての重要な点において、
図3および
図4に示す注入チップ66および66’はそれぞれ同じであるが、ただ近位面が異なる。分離器68の近位面72は分離器32/68について
図2に示した形をとってもよいことに注意すべきである。
【0033】
次に
図5Aおよび
図5Bは、分離器68の近位でカテーテル12に取り付けられた選択的に膨張可能なバルーン82を示す。
図5Bに示すように膨張すると、バルーン82’はカテーテル12から離れて半径方向に血管壁84の方に伸びることにより、カテーテル12の周りの血液の流量を抑制する。本発明で想定されるように、カテーテル12の遠位端34での乱れを最小にするために、カテーテル12の外側の血液の流量はカテーテル12の内側の流体の流量と対応していなければならない。いずれにしても、再収集室70および膨張可能なバルーン82の全体的な目的は、血液の流量を減らすことにより粒子が分散して血管を通って流れて治療すべき組織の中に入るための追加の時間を与えて、注入中に患者の血管系に損害または損傷を与える可能性を減らすことである。
【0034】
次に
図6を参照すると、本発明に係る注入チップ66を当業者に周知のタイプのバタフライカテーテル86に用いてよいことが理解できる。バタフライカテーテル86を用いる場合、注入チップ66は他の実施の形態について上に開示したものと本質的に同じである。この場合の利点は、適当な状況では、流体を流体源16から放出する前に、バタフライカテーテル86を患者に固定してよいことである。例えば、流体18を流体源16から放出する前に翼90a−90bを患者に固定する。他の全ての重要な点において、本発明の注入チップ66を持つバタフライカテーテル86の操作は前に開示した操作と同じである。
【0035】
ここに詳細に示しまた開示した生物製剤のための特定の注入カテーテルチップは前に述べた目的を達成しまた利点を与える完全な能力を有するが、これは本発明の現在好ましい実施の形態の単なる例示であり、また添付のクレームに述べるものを除き、ここに示す構造および設計の詳細には制限がないことを理解すべきである。