【0037】
悪性腫瘍の発症/進展の危険度や進行度は、例えば以下を指標として予測または把握することができる。悪性腫瘍の発症/進展の危険度や進行度の指標をRF(RF:Risk Factor)とすると、RF値は以下のように導き出すことができる。例えば
図4に示すフローサイトメトリー・プロファイルについて、以下のように考えられる。
(A)LL: Lower Left (PpIX (-), TSLC1(-)) (下左)領域の細胞数
(B)LR: Lower Right (PpIX (-), TSCLC1(+))(下右) 領域の細胞数
(C)UR: Upper Right (PpIX (+), TSLC1(+)) (上右)領域の細胞数
RF = 0.01×(LL/total count)+ 10×(LR/total count) + 100×(UR/total count)
総細胞数(total count): 10,000 cells
健常人:LL=100% RF = 0.01
中危険度HTLV-Iキャリアー: LL=50%, LR=50%の場合RF=5.05
高危険度HTLV-Iキャリアー: LL=50%, LR=45%, UR=5%の場合 RF=9.55
急性型ATLL患者: UR=100%の場合 RF=100
なお、上記RF値は例示であって、(A)(B)(C)の細胞数から適宜決定することができる。悪性腫瘍の発症/進展の危険度や進行度の指標RF(RF:Risk Factor)はATLLの場合以下の範囲で評価することができる。
健常人:0.01<RF<1.00
低危険度HTLV-Iキャリアー:0.01<RF<2.50
中危険度HTLV-Iキャリアー:2.00<RF<6.00
高危険度HTLV-Iキャリアー:3.50<RF<20.00
くすぶり型ATLL:4.00<RF<30.00
慢性型ATLL: 5.00<RF<80.00
急性型ATLL: 20.00<RF<100.00
【実施例】
【0045】
以下に、本発明の理解を深めるために、実施例を用いて本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置について説明する。本発明を完成させるために行なった実験結果についても具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0046】
(実施例1)異常活性化細胞除去環流返血治療装置
異常活性化細胞除去環流返血治療装置は、
図5に示すように、一端に採血用の穿刺針(図示せず)を備えた採血用ライン10と、この採血用ライン10によって送給された血液検体から白血球分画を分離する遠心分離器20と、この遠心分離器20で分離された白血球分画に対して白血病細胞など異常活性化細胞を除去するセルソーター30と、このセルソーター30により白血病細胞など異常活性化細胞が除去された正常白血球分画に対して所定波長の光を照射する光照射器40と、遠心分離器20で分離された白血球分画以外の血漿成分、赤血球分画および血小板分画など血液成分からなる環流返血液と光照射器40で光が照射された環流返血用の白血球液と白血球分画以外の血漿成分、赤血球分画および血小板分画など血液成分を返血する環流返血用ライン50とで構成されている。
ここでは、「異常活性化細胞」は波長488nmの励起光を照射した際に出るPpIX特異蛍光により検出することができ、検出されたPpIX(+)白血球はセルソーターで除去することができる。
【0047】
採血用ライン10は、一般的な成分献血で用いられている採血用ラインを利用することができる。この採血用ライン10の一端には採血用の穿刺針が装着されており、他端は遠心分離器20に接続可能としている。
【0048】
遠心分離器20も成分献血で用いられている連続遠心分離器を使用することができる。採血用ライン10によって送給された血液検体について、遠心分離器20による遠心分離操作で白血球分画を分離して、血漿成分、赤血球分画および血小板分画は環流返血液として、環流返血用ライン50の第1環流返血用ライン51に送出することができる。
【0049】
遠心分離器20で血液から分離された白血球分画は、第1連結ライン61を介してセルソーター30に送給される。
【0050】
セルソーター30は、通常は、細胞分析・分離装置として使用されており、微細な粒子個々の細胞を流体中に分散させ、その流体を細く流して個々の粒子細胞に特定波長のレーザー光で励起し、発生する特異蛍光を光学的に分析してフローサイトメトリーを実行し、液滴形成後に特定の光学的特性をもつ細胞を含む液滴を帯電させて、荷電を持った偏向板により帯電している液滴に含まれる細胞を分離するセルソーティングを実行する装置である。
【0051】
本実施形態のセルソーター30は、遠心分離器20から送給された白血球分画において多量のPpIX蓄積により強い蛍光を発している白血病細胞など異常活性化細胞を検知するとともに、この白血病細胞など異常活性化細胞を分取することにより白血病細胞など異常活性化細胞を除去している。
【0052】
セルソーター30では、遠心分離器20で分離された白血球分画にシース液等のバッファ液を混合して、白血球を個別に識別可能な程度に希釈しているため、セルソーター30での白血病細胞など異常活性化細胞の除去後には、シース液に含まれている余分な成分の除去や適宜な濃縮を行っている。すなわち、図示しないが、セルソーター30には、遠心分離器等を利用した濃縮器や、生理食塩水等による濃度調整器等を接続して、成分および濃度等を適宜調整して、白血病細胞など異常活性化細胞が除去された環流返血用の正常白血球液を生成している。環流返血用の正常白血球分画は、第2連結ライン62を介して光照射器40に送給している。
【0053】
セルソーター30による分離において、PpIXからの蛍光強度のカット・オフ値の設定によって原理的にほぼ100%白血病細胞などの異常活性化細胞を除去可能である。
【0054】
セルソーター30によって除去された異常活性化細胞は、そのまま廃棄してもよいし、検査に利用してもよい。特に、除去された白血病細胞など異常活性化細胞の数から白血病の早期検査や病態モニタリングにも利用することができる。
図5中、63はセルソーター30によって除去された白血病細胞など異常活性化細胞が排出される排出ラインである。
【0055】
第2連結ライン62を介して送給された環流返血用の正常白血球分画には、光照射器40によって所定波長の光を照射し、この光によって環流返血用の正常白血球分画中に残存している白血病細胞に細胞死を生じさせることとしている。
【0056】
すなわち、光照射器40は、本実施例では、環流返血用の正常白血球分画を送給する送給管41と、この送給管41に向けて光を照射する光源42とで構成しており、送給管41は透明または半透明な配管で構成して、この配管内を送給される正常白血球分画に光を照射可能としている。光源42は、ナトリウムとリチウムを封入したメタルハライドランプ(Na-Liランプ)としている。なお、光源42は、350〜490nmまたは600〜700nmの波長を照射できるLEDランプまたはレーザー光を含む別の光源でもよい。なお、環流返血用の正常白血球分画をスムーズに送給可能とするために、例えば第2連結ライン62の中途部に送給用のポンプを設けてもよいし、光照射器40内に送給用のポンプを設けてもよい。また光照射により発生する熱を冷却する冷却装置を送給管41に設けてもよい。
【0057】
本実施形態では、照射時間が10分以上となるように、送給管41の長さおよび環流返血用の正常白血球分画の送給速度を調整している。
図5の実施態様では、光源42を1つとしているが、複数の光源を用いてもよい。
【0058】
光照射器40では、環流返血用の正常白血球分画にNa-Liランプによって350〜490nmまたは600〜700nmの波長の光を照射することにより、特に波長630nmの光を照射することにより、例えばPpIXが蓄積しているにもかかわらずセルソーター30で除去されなかった白血病細胞など異常活性化細胞に対して、光照射によるPpIXの励起を生じさせ、この励起にともなって酸素から一重項酸素を生じさせ、この一重項酸素による強い細胞破壊作用により細胞死を誘導している。なお、この装置において、
図6に示すように透析装置を連結していてもよい。
【0059】
(参考例1)株化細胞を用いたPpIXの蓄積の確認
本参考例では、TLOm1(ATLL白血病細胞株)の培養液に1 mMの5-ALAを添加した後の細胞内PpIXの蓄積について時間経過を確認した。その結果、5-ALA添加後、48時間経過後も細胞内PpIXが十分存在していることが確認された(
図1)。また、健常人の末梢血単核球(PBMC)、CD3/CD28 immuno-beads (Dynabeads
(R) human T-cell activator CD3/CD28 (Invitrogen))で細胞を刺激し、活性化させた末梢血単核球(PBMC)、TLOm1およびED-40515(ATLL白血病細胞株)について、1 mMの5-ALAを投与後48時間目の細胞のPpIXの蓄積をフローサイトメトリーで解析した。その結果、活性化T細胞および腫瘍特異的にPpIXの蓄積が確認された(
図2、3)。
【0060】
(実施例2)単核球のフローサイトメトリー・プロファイルの確認
本実施例では、健常人、HTLV-IのキャリアーまたはATLL患者の末梢血より分離した末梢血単核球(PBMC)についてフローサイトメトリー・プロファイルの確認を行った。各末梢血単核球(PBMC)を含む培養液に1 mMの5-ALAを添加して48時間培養し、これらの細胞についてPpIXの蓄積およびTSLC1の発現を確認し、フローサイトメトリーによる細胞分布パターンの解析を行なった。その結果、(1)健常者、(2)低危険度HTLV-Iキャリアー、(3)中危険度HTLV-Iキャリアー、(4)高危険度HTLV-Iキャリアー、(5)くすぶり型ATLL患者、(6)慢性型ATLL患者および(7)急性型ATLL患者由来の末梢血単核球(PBMC)について、各々独特の細胞分布パターンが確認された(
図4)。HTLV-Iキャリアーが生涯においてATLLを発症する危険性は5%程度であるが、HTLV-IキャリアーにとってはATLL発症の危険性を知ることはHTLV-Iキャリアーの生活の質(QOL)にとって非常に重要である。本発明の方法より、(3)および(4)のリスクパターンである中危険度および高危険度HTLV-Iキャリアーのパターンを認識することで、発症直前または発症初期に適切な治療方法を選択することができる。
【0061】
悪性腫瘍の発症/進展の危険度や進行度の指標をRF(RF:Risk Factor)とすると、RF値は以下のように導き出した。例えば
図4に示すフローサイトメトリー・プロファイルについて、以下のように考えられる。
(A)LL: Lower Left (PpIX (-), TSLC1(-)) 領域の細胞数
(B)LR: Lower Right (PpIX (-), TSCLC1(+)) 領域の細胞数
(C)UR: Upper Right (PpIX (+), TSLC1(+)) 領域の細胞数
RF = 0.01×(LL/total count)+ 10×(LR/total count) + 100×(UR/total count)
総細胞数(total count): 10,000 cells
健常人:LL=100% RF = 0.01
中危険度HTLV-Iキャリアー: LL=50%, LR=50% RF = 5.05
高危険度HTLV-Iキャリアー: LL=50%, LR=45%, UR=5% RF = 9.55
急性型ATLL患者: UR = 100% RF = 100
本実施例の場合、健常者:RF=0.014、低危険度HTLV-Iキャリアー:RF=0.99、中危険度HTLV-Iキャリアー:RF=3.49、高危険度HTLV-Iキャリアー:RF=6.17、くすぶり型ATLL:RF=4.68、慢性型ATLL:RF=72.11、急性型ATLL:RF=29.49となる。
【0062】
(実施例3)
本実施例では、TLOm1(ATLL白血病細胞株)または慢性型ATLL患者の末梢血単核球(PBMC)の培養液に1 mM 5-ALAを添加して48時間培養し、10分間Na-Liランプ(29 mW/cm
2)照射した。その後PI(Propidium iodide)染色およびAnnexin-V-FITC染色の二重染色によりフローサイトメトリーによる細胞死パターンを調べた。対照として、5-ALAを加えていない細胞についても同様の解析を行った。その結果、TLOm1においては1 mM 5-ALA存在下で48時間培養した後のNa-Liランプによる光を照射による光動力学的治療法により、ほぼ100%の細胞がAnnexinV(+)/PI(-)(アポトーシス)かAnnexinV(+)/PI(+)(壊死)による細胞死を起こしていることが明らかとなった。一方、0 mM 5-ALA存在下で培養した対照群のTLOm1はAnnexinV(-)/PI(-)ですべて生存していた。慢性型ATLL患者の末梢血単核球(PBMC)については、AnnexinV(+)/PI(-)(アポトーシス)かAnnexinV(+)/PI(+)(壊死)の分画の細胞死を起こしている細胞群とAnnexinV(-)/PI(-)で生存している細胞群に分離された(
図7)。この細胞死を起こしている分画と生存している分画がどのような細胞で構成されているか確認するために実施例4を行った。
【0063】
(実施例4)
本実施例は、実施例1の装置を用いて慢性型ATLL患者の末梢血単核球(PBMC)に1 mMの5-ALAを投与して48時間培養し、10分間Na-Liランプ(29mW/cm
2)照射した。その後Annexin-V-FITC、PI、TSLC1-Alexa647による3重染色を行いフローサイトメトリーによる細胞死分画の詳細な解析を行った。その結果、TSLC1(+)/ AnnexinV(+)のATLL白血病細胞が細胞死を起こしている分画(右上方)の細胞が、全ATLL白血病細胞(TSLC1(+))分画の98.7%に至り、正常単核球生存分画(TSLC1(-)/ AnnexinV(-))(左下方)では全正常単核球(TSLC1-)の77.5%が生存していることが確認された(
図8)。この結果より白血病細胞特異的に細胞死が誘導されていることが示された。
【0064】
慢性型ATLL患者の末梢血単核球(PBMC)に1 mMの5-ALAを添加して48時間処理した後にNa-Liランプによる光を照射することによる光動力学的治療法(PDT)を行った後のATLL白血病分画および正常末梢血単核球(PBMC)の存在を解析した(
図8)。
図8のAに示すように、98.7%(66.31%/(0.88%+66.31%)=98.7%)のATLL白血病細胞(ATLL白血病マーカーTSLCI(+); UL2, UR2)に細胞死(PI(+))が誘導された。細胞死の内訳は、
図8のBに示すように、壊死78.5%(Annexin V(+), PI(+); UR3)で、アポトーシス21.5%(Annexin V(+), PI(-); UL3)であった。それに対して、正常末梢血単核球(PBMC)は、
図8のAに示すように77.5%(LL2)が生存しており、高い特異性で白血病細胞の細胞死が誘導されていることを示している。すなわち、
図4の光照射器40による方法は、低侵襲性で、高い効率で白血病細胞死を誘導できる方法であることを示している。
【0065】
したがって、セルソーター30で除去されなかった白血病細胞など異常活性化細胞は、光照射器40によって細胞死させられることにより、環流返血用の正常白血球分画に白血病細胞など異常活性化細胞の残存のおそれがなく、健常な白血球のみを患者に戻すことができる。
【0066】
なお、細胞死を引き起こした白血病細胞など異常活性化細胞は、環流返血用の正常白血球分画とともに患者に戻しても、患者の肝臓・脾臓の貪色機能を利用して除去することが可能であるが、必要に応じて濾過器等によって細胞死した白血病細胞など異常活性化細胞成分を除去し腫瘍崩壊症候群の発症を防止してもよい。
【0067】
本実施形態では、光照射器40から送出される環流返血用の正常白血球分画は、光照射器40に一端を接続した環流返血用ライン50の第2環流返血用ライン52に送出され、第1環流返血用ライン51と第2環流返血用ライン52とを図示しないY字コネクタで連結することにより、遠心分離器20で分離された白血球分画以外の正常血液成分からなる環流返血液と、光照射器40で光が照射された環流返血用の正常白血球分画とを混合している。
【0068】
Y字コネクタの出口側には、一端に送血用の穿刺針(図示せず)を備えた第3環流返血用ライン53の他端を接続し、白血球分画以外の血液成分からなる環流返血液と、環流返血用の正常白血球分画との混合液を患者に戻している。
【0069】
このように、本発明の特異的異常活性化細胞除去環流返血治療装置では、セルソーター30によって白血病細胞など異常活性化細胞を除去するだけでなく、光照射器40による光の照射によって白血病細胞など異常活性化細胞の残存のおそれを解消することができる。
【0070】
本発明の特異的異常活性化細胞除去環流返血治療装置は、白血病細胞など異常活性化細胞除去の治療として用いるだけでなく、セルソーター30で除去した白血病細胞など異常活性化細胞の数のカウントや病態解析への利用が可能であることから、上述したように白血病の早期検査や病態モニタリングにも利用することができる。
【0071】
さらには、本発明の異特異的常活性化白血球除去環流返血治療装置は、ATLL以外のリンパ性白血病、骨髄性白血病を含む骨髄増殖性疾患等の他、他家臓器移植に対する患者免疫の移植臓器に対する拒絶反応、あるいは造血幹細胞移植や骨髄移植の後に発生する急性GVHD(移植片対宿主病)や慢性GVHDによるドナーのリンパ球による患者臓器への攻撃において、攻撃性の活性化リンパ球クローンの除去にも利用可能であると考えられる。さらには、各種の自己免疫疾患、あるいはアレルギー疾患などの活性化特異的クローンの異常増殖に伴う諸疾患に広く利用できる可能性がある。また血行性転移をしつつある血液中の上皮性癌腫細胞および肉腫細胞の分離/除去による転移抑制にも利用可能であると考えられる。
【0072】
(実施例5)
本実施例では、慢性型ATLL患者の末梢血全血に1 mMの5-ALAを投与して48時間培養した後Na-Liランプによる光を照射することによる光動力学的治療法を行った場合の特異的細胞死誘導についてフローサイトメトリー解析した。慢性型ATLL白血病分画(TSLC1(+))と正常単核球分画(TSLC1(-))をPpIX蛍光強度と白血病マーカーであるTSLC1発現強度の細胞分布パターンをフローサイトメトリーで解析した結果、この処理により98.83%のATLL白血病細胞が細胞死により除かれた。その結果99.50%の末梢血単核球(PBMC)が正常細胞になったことが示された。本実施例よりATLL白血病分画と正常単核球分画を高精度に分離できることが明らかであり、PpIXの蛍光強度の設定により、100%のATLL白血病細胞を除くことができると考えられた(
図9)。
【0073】
(実施例6)
本実施例では、各種株化悪性腫瘍培養細胞について1 mMの5-ALAを投与して48時間培養し、これらの細胞について腫瘍マーカーおよびPpIX蓄積を確認した。
各株化細胞としては、造血器腫瘍由来細胞としてRamos細胞(Burkittリンパ腫(悪性リンパ腫))、K562細胞(慢性骨髄性白血病)およびBALL1細胞(急性Bリンパ球性白血病)であり、各細胞については腫瘍マーカーとしてTSLC1の発現も確認した(
図10)。さらに、Jurkat細胞(T-リンパ球性白血病)、FL18(瀘胞性リンパ腫(悪性リンパ腫))についても同様に確認した(
図11)。この結果、1 mMの5-ALAを投与することで、造血器腫瘍由来細胞のPpIXの蓄積およびTSLC1の発現について、フローサイトメトリーによりPpIX陽性細胞および腫瘍マーカー陽性細胞の分布パターン(PpIX(+)/TSLCV1(+))が正常細胞(PpIX(-)/TSLC1(-))と明らかに異なることが確認された。また、固形癌では、MCF7細胞(乳癌)やHS-OS1細胞(骨肉腫)についても1 mMの5-ALAの投与によりPpIXの蓄積が認められた(
図11)。 さらに、A549細胞(肺癌)、SCCKN細胞(舌癌)およびLK79細胞(肺癌)についても1 mMの5-ALAの投与によりPpIXの蓄積が認められ、PpIX陽性細胞および腫瘍マーカー(CK19-9)陽性上皮性癌細胞の分布パターン(PpIX(+)/CK19-9(+))が正常細胞(PpIX(-)/CK19-9(-))と異なることが確認された(
図12)。
上記の結果より、造血器腫瘍および固形癌について、PpIX陽性細胞と腫瘍マーカー陽性細胞の分布パターンを解析することで正常細胞とは異なる細胞分布が確認され、腫瘍細胞について光照射等の処理による光動力学的治療を行うことで、腫瘍細胞を除去できるものと考えられた。