(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合造粒粉末は、DC(直流)プラズマ装置又はRF(高周波誘導)熱プラズマ装置にて発生する6,000K(5,727℃)以上のプラズマ炎に吹き込まれて加熱溶融されることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか記載のSiOX粉末製造法。
前記加熱炉は、黒鉛ヒーター加熱炉又は高周波誘導加熱炉であり、前記プラズマ炎で加熱溶融された前記混合造粒粉末の混合溶融液滴を、更に2,000K(1,727℃)以上に加熱気化させて、前記SiOXガスを生成させることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか記載のSiOX粉末製造法。
前記バグフィルタで回収集塵後のクリーンな排気ガスを、熱交換器で常温まで冷却し、更に高圧ブロワーにて昇圧し、前記加熱炉の出口において、前記加熱炉で気化された前記SiOXガスを急冷する前記不活性ガスとして循環使用することを特徴とする請求項15記載のSiOX粉末製造法。
前記プラズマガンは、前記プラズマ炎の中での材料飛翔速度が、150m/sec〜3m/secになるようにノズルに速度調整部を設けていることを特徴とする請求項17記載のSiOX粉末製造装置。
前記加熱炉は、黒鉛ヒーター加熱炉又は高周波誘導加熱炉であり、前記プラズマ炎で加熱溶融された前記混合造粒粉末の混合溶融液滴を、更に2,000K(1,727℃)以上に加熱気化させて、前記SiOXガスを生成させることを特徴とする請求項17又は請求項18記載のSiOX粉末製造装置。
前記バグフィルタで回収集塵後のクリーンな排気ガスを常温まで冷却する熱交換器と、前記熱交換器で常温まで冷却された前記クリーンな排気ガスを昇圧して前記冷却装置のリング状ノズルに循環する高圧ブロワーとを備える不活性ガス冷却装置を更に有することを特徴とする請求項22記載のSiOX粉末製造装置。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型の電子機器、通信機器等の著しい発展に伴い、経済性又は機器の小型化、軽量化の観点から、更には電気自動車、風力発電、太陽電池の蓄電用の観点から、高エネルギー密度、高容量の二次電池の開発が強く要望されている。リチウムイオン二次電池は、高寿命、高容量であることから、電源市場において高い需要の伸びを示している。
リチウムイオン二次電池は、正極、負極及びこれら両極の間に電解液を含浸させたセパレータを有し、充放電によってリチウムイオンが電解液を介し正極と負極との間を往復するように構成されている。
負極には、リチウムイオンの吸蔵放出が可能な活物質(負極活物質)が用いられ、現状では、カーボン系負極材が一般的である。
【0003】
ところが、カーボン系負極活物質のエネルギー密度向上は限界にきており、エネルギー密度の更なる向上を目指して様々な負極活物質の開発が進められている。その中でもSi系負極活物質が非常に有望な材料として注目を浴びている。
金属Siを負極活物質に用いると、リチウムイオン吸蔵容量はカーボン系負極活物質の10倍位の吸蔵容量がある。しかし、吸蔵容量が大きいため充放電時の金属Siの体積膨張収縮が大きく、金属コーティング皮膜の亀裂により充放電のサイクル特性が急激に低下し、実用できる状況に至っていない。
金属Siよりリチウムイオン吸蔵容量は落ちるが、充放電時の体積膨張収縮が小さく、充放電のサイクル特性が低下しにくい材料として、SiOを使用すると効果的であることが知られている。
【0004】
しかし、SiOは、SiO
XのX値の変化により、リチウムイオン吸蔵容量、充放電に伴う体積膨張収縮の程度がそれぞれ異なる。従って、どこに最適点を求めるかは、カーボン系負極活物質との配合比率、バインダーの選択等対応手段が様々である。それに併せてSiO
XのX値を任意にコントロールできる製造手段が求められている。
一般的に、SiO
Xの製造法の多くは、加熱炉でSiO
Xガスを発生させ、それを析出基体に析出させて塊状のSiO
X製品を造る。これを粉砕し粒子径の調整をしてリチウムイオン二次電池用の負極活物質粉末を製造している。
この方式で微粉末を造るには、加熱炉への材料投入や析出SiO
Xの回収がバッチ式であるため、生産性が低い。また、粉砕し粒子径を調整する工程での製造コストが非常に大きいことや粉砕時に不純物が混入し易いという問題がある。
【0005】
これに対し、SiO
Xの製造法に関する様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、一酸化珪素の製造方法が開示されている。特許文献1の製造方法は、まず、シリコン金属粉末を、キャリアガスを用いて70g/min以上の供給量で、雰囲気ガス中に噴出しているプラズマジェット中に投入する。次に、このプラズマジェット中で蒸気としたシリコン金属粉未を、キャリアガス及び雰囲気ガスのうち少なくとも何れか一方に含有されている酸素ガスと接触させて合成反応を起こさせる。次に、この合成反応で生じる反応フレームを維持しつつ連続的に一酸化珪素蒸気を生成する。次に、この生成する一酸化珪素蒸気を急冷して得られた粗生成物を1,400℃〜1,800℃で蒸留して一酸化珪素を得ている。
また、特許文献2には、リチウムイオン二次電池の負極活物質及びガスバリアフィルムの蒸着材料として用いられるSiO
X(X<1)の製造方法が開示されている。特許文献2の製造方法は、まず、金属Si粉末とSiO
2粉末又はSiO粉末からなる混合原料をプラズマ加熱により気化させてSiOガスとする。次に、析出基板に珪素酸化物SiO
X(X<1)として析出させた後、これをボールミルで破砕して粉末状の珪素酸化物を得ている。
【0006】
食品包装や医療品及び医薬品を処理する分野では、食品や医薬品等の劣化防止のため、酸素や水分が包装材料を透過しないように、包装材料には高いガスバリア性が求められている。
近年、ガスバリア性が高く、透明性に優れるSiO蒸着膜を有する包装材料が注目されている。例えば、高分子フィルムにSiO蒸着膜を成膜させた食品包装フィルム等が生産されている。なお、透明性に優れることは、外観から包装内容物を観察して変質や劣化を確認するために必要である。特に、食品等を包装する包装用材料にとっては必須の特性といえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、金属シリコン供給量70g/min以上、金属粉末粒子径400μm以下(平均粒子径100μm)が好ましいことが記載されている。また、プラズマジェット中に供給されたシリコン金属粉末は蒸気となり、酸素ガスと反応させて一酸化珪素を合成することが記載されている。更に、反応フレーム内の温度はプラズマからの熱及び反応熱により3,000K(2,727℃)以上に昇温することが記載されている。
しかし、一般的にはDC(直流)プラズマジェットのプラズマ炎の速度は300m/sec以上と非常に高速である。従って、金属Si粉末の粒子径が50μmを超えるような大きな粒子は溶融して液滴にはなっても、短時間では蒸発(気化)せず、金属Siが大量に残るという問題がある。
一方、仮に金属Siの平均粒子径を10μm以下の小さな材料にすると、材料供給が非常に不安定になる。従って、材料供給と酸素ガス供給との混合比率が時々刻々と変化して、安定したSiO
Xの組成のものを製造しにくいという問題がある。
【0009】
また、特許文献1には、プラズマ炎からの熱及び金属Si蒸気と酸素との反応熱で、プラズマ炎の温度は3,000K(2,727℃)以上に昇温すると記載されている。しかし、金属Siの気化熱は反応熱より遙かに大きく、材料供給量が多くなるとプラズマ炎の温度は急激に低下し、気化しきれない金属Siが大量に残るという問題がある。
また、材料供給量と理論酸素量とを計算して目的とするストイキメトリの原子量比で投入したとしても、プラズマ炎内は温度が均一でなく部分的に温度差が大きいため、投入され飛散した金属Siとの均一な酸化反応は起こらない。従って、部分的に酸化反応が進んで、気化した金属SiはSiO
2になる比率が非常に多くなる。
【0010】
一方、特許文献2では、金属Si粉末とSiO
2粉末又はSiO粉末からなる混合原料をプラズマ加熱により気化させてSiOガスとした後、析出基板に珪素酸化物SiO
X(X<1)として析出させることが記載されている。しかし、そのプラズマ炎の中心温度は5,000℃〜100,000℃にするのが好ましく、より好ましくは10,000℃〜20,000℃であると記載されているだけである。特許文献2には、どのようなプラズマ装置でどのようなプラズマ操業条件、原料粒子径、材料供給速度で操業させるかは記載されていない。
例えば、RF(高周波誘導)熱プラズマ装置を使用した場合、プラズマ炎の温度は10,000℃以上の超高温度であっても、プラズマ炎の熱容量は非常に小さい。従って、金属Siは粒子径の小さいものは溶融し気化するものもあるが、粒子径の大きなものは、かなり多くのものが、溶融したものがそのまま球状化固化するだけでSiOは生成しにくい。
【0011】
これは、プラズマ炎は非常に高温ガスであるが熱容量が非常に小さく、一方、金属Siの気化熱は非常に大きいため、金属Si投入によりプラズマ炎の温度が瞬時に急低下し、殆どの粒子は気化しないためである。加えて、プラズマ炎内に投入された金属Si粉末とSiO
2粉末又はSiO粉末からなる混合原料は、八方に飛散し、また気化温度が大きく異なるため、金属Si粉末とSiO
2粉末との混合粒子の合成反応が起こりにくいためである。
すなわち、10,000℃〜20,000℃のプラズマ炎に金属Si粉末とSiO
2粉末及び/又はSiO粉末との混合粉末を投入して、これら全てを完全気化させてSiO
X化反応を起こさせるためには、極めて少量の材料投入にするか、大容量のRF(高周波誘導)熱プラズマ装置にする必要がある。従って、特許文献2では金属Si粉末とSiO
2粉末及び/又はSiO粉末との混合粉末を全て完全気化させてSiO
X化反応を起こさせるには不十分である。
【0012】
更に、特許文献2ではスプラッシュを抑制するために、SiOガスを発生する原料をプラズマ炎によって高温に加熱すると、気化した金属珪素及び酸素が原子状で反応してSiOガスが発生し、このSiOガスを析出させて得られるSiO
X(X<1)は、結晶質の金属珪素及び二酸化珪素を含むことなく金属珪素が均一に分布し、非結晶質となることが有効であるとしている。
スプラッシュとは、気化したSiOガスとともに、気化していない金属珪素及び二酸化珪素の微粒子が飛散する現象である。SiO蒸着膜を成膜する際にスプラッシュが発生すると、高分子フィルム上のSiO蒸着膜に、気化していない微細な粒子が付着し、ピンホール等の欠陥が生じ、ガスバリア性を悪化させる。
【0013】
しかし、特許文献2の製造方法では、上述したように金属Si粉末及びSiO
2粉末はプラズマ炎の中で気化して原子状になるどころか、気化せずに液滴のままである場合が大半である。すなわち、どのような粒子径の粉末原料をどのようなプラズマ装置のプラズマ炎(温度、プラズマ炎の速度)の中で加熱するのかが重要であるが、特許文献2にはこれについては記載されていない。
DC(直流)プラズマ溶射ガンの10,000℃のプラズマ炎の温度の場合、プラズマ炎の速度が速いため、DC(直流)プラズマ溶射ガンで一般的に使用されている平均粒子径D
50が30μmレベルの金属Si粉末を供給しても、大半の粉末は一部が溶融するだけでほとんどガス化しない。
【0014】
また、プラズマ炎の速度の非常に遅いRF(高周波誘導)熱プラズマ装置の10,000℃のプラズマ炎の中に、更に粒子径の小さい平均粒子径D
50が20μmレベルの金属Si粉末を30g/minの少ない供給量で操業しても、気化せず金属Siがそのまま溶融球状化した粒子となって回収されるだけであることを確認している。
このように、特許文献2の製造法で、金属Siを含まない非結晶質のSiO
Xを製造することは、かなり非現実的であることが判った。
【0015】
本発明は、上述する問題点を解決するためになされたもので、その目的は、リチウムイオン二次電池の負極活物質及びガスバリアフィルムの蒸着材料として用いられるSiO
X粉末を連続的に安価に製造することができるSiO
X粉末製造法及びSiO
X粉末製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のSiO
X粉末製造法は、金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末をプラズマ炎で加熱溶融させる工程と、加熱溶融された混合造粒粉末の溶融液滴を加熱炉で気化させてSiO
X化反応を行わせる工程と、生成されたSiO
Xガスを不活性ガスで急冷却してSiO
X微粉末を析出させる工程とを有する。
また、本発明のSiO
X粉末製造装置は、プラズマ炎を噴出するプラズマガンを備えるDC(直流)プラズマ装置又はRF(高周波誘導)熱プラズマ装置と、金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末をプラズマ炎中に噴霧する粉末供給装置と、プラズマ炎にて加熱溶融された混合造粒粉末の溶融液滴を気化させてSiO
X化反応を行わせる加熱炉と、生成されたSiO
Xガスを不活性ガスで急冷却してSiO
X微粉末を析出させる冷却装置とを有する。
【0017】
本発明は、金属Si粉末原料に高純度(4N以上)Si粉末を用いる。高純度(4N以上)Si粉末は、例えば、半導体や太陽電池用等のシリコンウエーハ製造工程で発生する金属Siスラッジを高純度(4N以上)に再生して使用する。
元々、半導体や太陽電池用等に用いられる金属Siは、非常に高純度に精製されたものである。しかし、シリコンウエーハのスライス、研磨工程で発生した粉末は、非常に微粒子で扱いにくく、不純物に汚染されたスラッジとして回収され、廃棄物としてコストをかけて処理されている。
【0018】
本発明は、金属Si粉末とSiO
2粉末とが、それぞれの平均粒子径D
50が10μm以下、好ましくは平均粒子径D
50が5μm以下の金属Si粉末とSiO
2粉末とを使用し、SiO
XのX値が0.5〜1.8になるように金属Si粉末とSiO
2粉末との混合比率を設定する。
本発明は、これらの混合粉末原料に水、溶剤、分散剤、バインダーを混ぜて、ミキサーにて十分に撹拌混合し、スラリー化したものを噴霧乾燥法(スプレードライ)で平均粒子径D
50を10μm〜50μmに造粒した金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末を使用することが好ましい。
【0019】
また、金属Si粉末とSiO
2粉末とを一定比率で均一混合造粒し、その原料を二次原料として使用する。金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒であるこの二次原料は、微粉体同士の反応性を高め、プラズマ炎内での金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末の溶融と気化とに大きな効果を発揮する。しかも、金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末の粒子内には金属Si粉末とSiO
2粉末とが一定比率で存在するため、SiO
XガスのX値が非常に安定した原子比の組成に容易にすることができる。
【0020】
本発明は、プラズマ炎を発生する装置に、DC(直流)プラズマ装置又はRF(高周波誘導)熱プラズマ装置を使用し、6,000K(5,727℃)以上のプラズマ炎に金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末を吹き込み加熱溶融(一部は気化する)させる。このとき、プラズマ炎の中での材料飛翔速度が150m/sec〜3m/secになるようにプラズマガンのノズル径を調整することが好ましい。
通常、DC(直流)プラズマ装置は、プラズマ炎であるフレームの速度が高速であることが特徴である。DC(直流)プラズマ装置は、プラズマ溶射のようなマッハ2レベルのプラズマジェットに高融点のセラミックス粉末を投入し、材料を瞬時に溶融させて高速で基材に溶着させることにより、高密着力の被膜を形成するのに汎用的に用いられている。
【0021】
しかし、DC(直流)プラズマ装置は、本発明のように金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末を原料にして、この混合造粒粉末を加熱溶融(一部は気化する)させるためには、フレームの速度が速すぎる。そのため、金属Siのように溶融熱及び気化熱の大きな材料は、溶融はしても気化するには熱量、反応時間の面から不十分である。
故に、DC(直流)プラズマ装置は、プラズマガン先端部のノズル径を大きくして、プラズマ炎の中での材料飛翔速度を150m/sec以下にすることにより、反応時間を長くして溶融と気化及び化学反応を促進させる特殊な構造とする。
【0022】
ところで、プラズマ装置を使用しても、金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末の全てを溶融し気化することは難しい。
そこで、本発明では、気化しない金属SiとSiO
2粉末とを完全にガス化させ、合成反応させるためにプラズマガンの前方に加熱炉を設置する。
加熱炉には、黒鉛ヒーター加熱炉又は高周波誘導加熱炉を使用し、反応管には高耐熱性の黒鉛管を使用して黒鉛管の周囲は断熱し、更に水冷却する。プラズマ炎で溶融した液滴を更に黒鉛管内温度を2,000K(1,727℃)以上に維持して加熱し気化させて、完全にSiO
Xガスを生成させる。すなわち、プラズマ炎で溶融した液滴の全てがガス化することにより、生成されるSiO
Xは均一な組成となる。
リチウムイオン二次電池の負極活物質としてのSiO
Xもガスバリアフィルム用蒸着材としてのSiO
Xも、気化せずに未反応な金属SiとSiO
2とが残ると、負極電極の充放電特性の悪化やガスバリア特性の悪化につながる。
【0023】
次に、本発明では、加熱炉の出口に、N
2、Ar等の圧縮不活性ガスをリング状ノズルから噴出混合して、高温度SiO
Xガスを800℃以下に急冷却し、0.01μm〜10μmのSiO
X微粉末を析出させる冷却装置を備える。
加熱炉の反応管内で生成される2,000K(1,727℃)以上の高温度SiO
Xガスは、加熱炉の出口に備えた冷却装置のリング状ノズルから噴出されるN
2、Ar等の圧縮不活性ガスにより800℃以下に急冷却されることで、SiO
Xの組成のままでアモルファス状のSiO
X微粉末として析出させることができる。
もし、高温度のSiO
Xガスのみを直接水冷チャンバーの雰囲気中に噴出させると、一部のSiO
Xガスが徐冷され、管体の内壁面に析出して固化し、SiO
Xの一部は不均化反応により再度金属Si粉末とSiO
2粉末とに分離し、SiO
Xの組成の収率が下がる。
圧縮不活性ガスは、N
2を用いることが冷却効率も良く、且つコスト的にも安価で好ましい。
【0024】
また、本発明は、加熱炉内を30kPa〜80kPaの減圧下で操業することが好ましい。
加熱炉の反応管内は、30kPa〜80kPaの減圧下で操業することにより、金属Si粉末とSiO
2粉末との反応温度を下げ、SiO化反応をより促進させることができる。この減圧操業は絶対必要条件ではなく、減圧設備は投資とその効果で適宜判断すればよい。
30kPa〜80kPaの減圧の程度は特にこれに限定されるものでなく、供給材料(造粒粉末)の粒子径、供給量、プラズマ装置の出力、加熱炉の温度等、様々な操業条件によって、最適条件を設定すればよく、この減圧操業を付加することにより、更に操業の自由度を上げることができる。
30kPa未満では、設備費が高くなり、80kPaを超えると減圧操業の効果があまり期待できない。
【0025】
本発明は、析出した0.01μm〜10μmのSiO
X微粉末を水冷却サイクロンにて冷却することで、平均粒子径D
50を1μm〜20μmの微粉末に成長或いは凝集させて回収することが好ましい。
N
2、Ar等の圧縮不活性ガスによる冷却で生成されたSiO
X粉末は、粒子径が細かすぎて回収効率が悪いが、水冷却サイクロンで粒子径を成長させることでSiO
X粉末の回収率を上げる効果がある。
水冷却サイクロンは、外周が水冷却されており、800℃以下に一次冷却されたSiO
X微粉末及びN
2、Ar等の圧縮不活性ガスが円周方向に高流速で吹き込まれることで、吹き込まれたSiO
X微粉末が200℃以下に冷却されて、粒子径を成長或いは凝集させる。大半のSiO
X微粉末を水冷却サイクロン内で回収することが好ましい。回収されたSiO
X微粉末の平均粒子径D
50を1μm〜20μmとすることで、リチウムイオン二次電池の負極活物質として使う場合に、微粉砕工程等を通す必要がなく、大幅なコスト低減効果がある。
【0026】
また、本発明は、水冷却サイクロンで未回収の超微粉をバグフィルタで回収集塵することが好ましい。
水冷却サイクロンでは、サブミクロン(1μm以下)以下のSiO
X微粒子が完全に回収できないため、これらの微粒子をバグフィルタにて完全除去して、排気ガスはクリーンな状態にして大気に排出する。
また、本発明は、水冷却サイクロンで未回収の超微粉をバグフィルタで回収集塵後のクリーンな排気ガスであるN
2、Arガスを熱交換器で常温まで冷却し、更に高圧ブロワーにて昇圧し、不活性ガス冷却装置を通して循環使用する。これにより、冷却用の新しいN
2、Arガスは、稼働初期の系内ガスパージ時のみ使用し、その後は排気ガスを循環使用することにより、大幅なコスト低減が図れる。
なお、本明細書において、「平均粒子径D
50」は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒子径分布における積算値50%での粒子径を意味する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、リチウムイオン吸蔵容量が大きく、且つ、充放電による活物質コーティング被膜の体積膨張収縮が小さく、充放電サイクル特性に優れたSiO
X系活物質を、X値を任意にコントロールし、また粉砕工程を通すことなく最適な粒子径で、連続的に安価に製造することができる。
【0028】
本発明によれば、半導体や太陽電池用等のシリコンウエーハ製造工程で発生する金属Siスラッジ(廃棄物スラッジ)を高純度(4N以上)に再生して使用するので、環境対策にも優れている。
また、この廃棄物スラッジは、高純度化のための再生を安価にできるため、原料コストを低く抑えることができるという利点がある。
また、この廃棄物スラッジは、プラズマ装置で使用する投入原料である造粒粉として既に造粒目的に合った最適な粒子径分布をしており、微粉化のための粉砕工程を省略でき、非常に大きなコスト低減になる。
【0029】
本発明によれば、プラズマ炎で加熱溶融(一部は気化する)された混合造粒粉末の溶融液滴を加熱炉で気化させてSiO
X化反応を行わせ、SiO
Xガスを生成させるので、全てがガス化し、生成されるSiO
Xは均一な組成となる。
このため、未反応な金属Siが残り、リチウムイオン二次電池における充放電特性の悪化やガスバリア特性の悪化を招くという従来の問題点を解決することができるとともに、SiO
Xの回収歩留まりも高くなる。
【0030】
本発明によれば、金属Si粉末とSiO
2粉末とを造粒して平均粒子径D
50を10μm〜50μmの混合造粒粉末とするので、通常の溶射設備で汎用的に使用されている材料供給装置で安定して材料供給することができる。従って、従来の粉末供給装置のように、粒子径が細かくなればなるほど非常に供給量が不安定となり、安定して均一な混合比のものを製造しにくいという問題や、特殊な材料供給装置が必要になるという不具合を解消することができる。
【0031】
本発明によれば、加熱炉で生成される2,000K(1,727℃)以上の高温度のSiO
Xガスを、加熱炉の出口に冷却装置を備えてN
2、Ar等の圧縮不活性ガスをリング状ノズルから噴出混合して、800℃以下に急冷却し、SiO
X微粉末を析出させるので、SiO
Xの組成のままで、アモルファス状のSiO
X微粒子を析出させることができる。
この際、圧縮不活性ガスにN
2を用いると、冷却効率が良いばかりか、コスト的にも安価で好ましい。
【0032】
本発明によれば、加熱炉内を30kPa〜80kPaの減圧下で操業するので、金属Si粉末とSiO
2粉末との混合溶融液滴の気化温度を下げ、SiO
X化反応をより促進させることができる。
【0033】
本発明によれば、800℃以下に一次冷却されたSiO
X微粉末及びN
2、Ar等の圧縮不活性ガスを水冷却サイクロンに円周方向に高流速で吹き込むので、SiO
X微粉末が200℃以下に冷却されて、粒子径が成長或いは凝集するので、大半のSiO
X微粉末を水冷却サイクロン内で回収することができる。また、回収されるSiO
X微粉末の平均粒子径D
50を、1μm〜20μmとすることができる。
本発明によれば、回収されるSiO
X微粉末の平均粒子径D
50を1μm〜20μmとすることで、リチウムイオン二次電池の負極活物質として使う場合に、微粉砕工程等を通す必要がなく、大幅なコスト低減効果がある。
【0034】
本発明によれば、水冷却サイクロンでは完全に回収できないサブミクロン(1μm以下)以下のSiO
X微粒子をバグフィルタにて完全除去し、排気ガスはクリーンな状態にして大気に排出することができる。
また、本発明によれば、バグフィルタでSiO
X微粒子を回収集塵後のクリーンな排気ガスを熱交換器で常温に冷却後に高圧ブロワーにて昇圧し、冷却装置に循環使用することにより、大幅なコスト低減が可能である。
バグフィルタ後のクリーンな排気ガスを循環使用する場合は、プラズマガンで吹込まれた作動ガス(N
2、Arガス等)相当が余剰ガスとして大気放出される。
なお、どこまで不活性ガスを循環使用するかは、バグフィルタ後の排気ガスの清浄度により、そのための設備費とランニングコストで判断すればよい。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図3は、本実施形態のSiO
X粉末製造法を構成する工程(A)〜(E)及びそれに用いられるSiO
X粉末製造装置を示す。
【0037】
先ず、本実施形態のSiO
X粉末製造法を工程(A)〜(E)に基づいて説明する。
工程(A)では、DC(直流)プラズマ装置1を作動して、プラズマガン2から噴出するプラズマ炎3に、粉末供給ノズル4から金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末5を供給し、混合造粒粉末5を加熱溶融(一部は気化する)させる。
混合造粒粉末5は、粉末造粒装置13で金属Si粉末とSiO
2粉末とを混合して造粒され、次いで、粉末供給装置14を介してプラズマガン先端部2aの近傍に配置した粉末供給ノズル4からプラズマ炎3に供給される。
【0038】
次に、工程(B)では、工程(A)において加熱溶融(一部は気化する)された混合造粒粉末5の溶融液滴を高周波誘導加熱炉19の黒鉛管(反応管)15内で高温にて気化させてSiO
X化反応を行わせる。
次に、工程(C)では、工程(B)において生成されたSiO
Xガスをガス冷却装置20でN
2、Ar等の圧縮不活性ガスを用いて急冷却してSiO
X微粉末25aを析出させる。
次に、工程(D)では、工程(C)において析出したSiO
X微粉末25aを水冷却サイクロン24にて冷却して成長或いは凝集した微粉末状のSiO
X粉末25bとして回収する。
次に、工程(E)では、水冷却サイクロン24で未回収の超微粉をバグフィルタ27で回収集塵する。
以上によって、リチウムイオン二次電池の負極活物質及びガスバリアフィルムの蒸着材料として用いられるSiO
X微粉末を得ることができる。
【0039】
次に、本実施形態のSiO
X粉末製造装置を説明する。
図1〜
図3に示すように、本実施形態のSiO
X粉末製造装置は、プラズマ炎3を噴出するプラズマガン2を備えるDC(直流)プラズマ装置1を有する。DC(直流)プラズマ装置1から噴出するプラズマ炎3中に、金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末5を噴霧する粉末供給ノズル4が、プラズマガン先端部2aの近傍に配置される。
DC(直流)プラズマ装置1の前方に、DC(直流)プラズマ装置1から噴出されるプラズマ炎3にて加熱溶融(一部は気化する)された混合造粒粉末5の溶融液滴を気化させてSiO
X化反応を行わせる高周波誘導加熱炉19を配置する。
高周波誘導加熱炉19の出口に、高周波誘導加熱炉19で生成されたSiO
Xガスを不活性ガスで急冷却してSiO
X微粉末25aを析出させる冷却装置20を配置する。
冷却装置20の出口に、冷却装置20で析出したSiO
X微粉末25aを冷却して成長或いは凝集した微粉末状のSiO
X粉末25bとして回収する水冷却サイクロン24を配置する。
水冷却サイクロン24の下流側に、水冷却サイクロン24で未回収のSiO
X微粉末を回収集塵するバグフィルタ27を配置する。
【0040】
次に、工程(A)について、詳細に説明する。
本実施形態では、工程(A)の金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末5で使用される金属Si粉末に、半導体又は太陽電池用シリコンウエーハ製造工程で発生した金属Siスラッジを再生して使用する。
この場合、金属Siスラッジの発生場所により、粉末粒子径、不純物含有量、水分含有量等が様々であるため、その性状によって事前処理して金属Si粉末に精製する。
その精製法には、不純物除去、脱水、凝集粉の解砕、乾燥等それぞれの工程で様々な方法があり、特に限定するものではない。
【0041】
金属Si粉末とSiO
2粉末とは、平均粒子径D
50が10μm以下、より好ましくは、平均粒子径D
50が5μm以下のものを使用する。
それぞれの平均粒子径D
50が10μmを超えると、造粒した際の1粒子内の金属Si粉末とSiO
2粉末との混合比率のバラツキが大きくなる。また、プラズマ炎3に吹き込まれて溶融液滴化する際の金属Si粉末とSiO
2粒子との接触界面の表面積が小さくなり、金属SiとSiO
2との反応性を高める効果が出にくくなる。
なお、SiO
2粉末の平均粒子径D
50の下限値は特に限定しない。しかし、金属Si粉末は、最表面に自然酸化膜ができるが、平均粒子径D
50が1μm未満の微粒子になると、反応性が高く、扱うのが困難になる。そのため、金属Si粉末の平均粒子径D
50の下限値は1μmとする。
金属Si粉末とSiO
2粉末との混合比率は、目的とするSiO
X粉末のX値が0.5〜1.8になるように調整する。
【0042】
リチウムイオン二次電池の負極活物質にSiO
Xを使用する場合、X値の大小により、リチウムイオン吸蔵容量とSiO
Xコーティング皮膜の充放電による体積膨張収縮による充放電サイクル特性とが反比例するため、X値は0.5〜1.8の中で、最適値を選択する必要がある。
X値が0.5未満では、リチウムイオン吸蔵容量は大きくなるが、活物質皮膜の膨張収縮による充放電サイクル特性は低下するため実用的でない。
X値が1.8を超えると、活物質皮膜の膨張収縮はほとんど問題ないが、リチウムイオン吸蔵容量の増大があまり期待できない。
【0043】
一方、ガスバリア材としてシリカとアルミナとを比較すると、シリカの方がガスバリア性に優れ、柔軟性もあるが、黄色味を帯びるという欠点があり、アルミナは無色透明でコストも安いが堅くて脆く、ガスバリア性に劣るという欠点がある。
シリカ蒸着膜は、SiO
XのX値が1.5〜1.8程度の酸化状態で使われるが、X値が1.0に近づくと、ガスバリア性は上がるが黄色味を帯びる。逆に、X値が2.0に近づくと、色調は薄くなるがガスバリア性は落ちるという問題があり、酸化度の制御が重要になる。このようにガスバリア性をとるか、フィルムの透明度をとるかによってX値をいくらにするかはフィルムの用途によって使い分けられる。
【0044】
大切なことは、金属Siを含まず、ガスバリア材の場合のX値は1.5〜1.8、リチウムイオン二次電池の負極活物質の場合のX値は0.5〜1.8位の目標値に安定して造り込むことである。
金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末5の平均粒子径D
50は、10μm〜50μmが好ましく、平均粒子径D
50は15μm〜40μmがより好ましい。平均粒子径D
50が10μm未満では、プラズマガン2への粉末供給装置14の供給量のバラツキが大きく、安定したSiO
Xの製造が行えないからである。また、平均粒子径D
50が50μmを超えると、60μm以上の粗大粒子の混入が多く、これらの粗大粒子は、プラズマ炎3内及び高周波誘導加熱炉19の黒鉛管(反応炉)15内で十分気化及び反応しきれず、未反応粗大粒子として製品に混入する割合が増えるからである。
【0045】
本実施形態において、金属Si粉末とSiO
2粉末との造粒方法は、噴霧乾燥法、転動造粒法、流動造粒法、撹拌造粒法等特に限定するものではないが、一般的な噴霧乾燥法(スプレードライ)が好ましい。
噴霧乾燥法(スプレードライ)では、数μmまでの微粒子(一次粒子)と液状有機物バインダー剤とを混合タンク内に混入し、スラリー化した後、ポンプでチャンバー内に送り圧縮空気で噴霧する。これを上方から乾燥気流で凝集粒子(二次粒子)として乾燥させ、下方のコレクターで回収する。
有機物バインダー剤には、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、コンスターチ、パラフィン、レジン等が用いられる。
【0046】
次に、工程(A)で用いる装置について説明する。
工程(A)では、プラズマ加熱装置に、DC(直流)プラズマ装置1を使用した。
プラズマガン先端部2aは、例えば、
図2に示すように、陰極7を作動ガス通路8内に配置し、作動ガス(N
2等)9を陰極7に沿って作動ガス通路8から噴出する電極ホルダー6と、この電極ホルダー6に連通する陽極で構成されるノズル10とを有する。このノズル10の外周には、冷却水12で冷却するウオータージャケット11を設ける。電極ホルダー6から噴出する作動ガス(N
2等)9を陰極7と陽極との放電によってプラズマ炎3としてプラズマガン先端部2aから噴出するように構成されている。
また、プラズマガン先端部2aは、プラズマ炎3の噴出速度を遅くするため、ノズル10の径を大きくして、プラズマ炎3の速度を150m/sec以下にし、反応時間を長くして金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末5の溶融及び気化を促進させる特殊な構造としてある。
【0047】
プラズマガン先端部2aの近傍には、プラズマガン2から噴出されるプラズマ炎3に向かって金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末5をキャリアガス(N
2等)にて供給する内部供給方式の粉末供給ノズル4が配置されている。
この粉末供給ノズル4には、内部供給方式と図示しない外部供給方式とがある。プラズマ炎3の高温部に材料を効率よく供給し、材料の溶融効率を上げる面からは内部供給方式が好ましい。しかし、内部供給方式はノズル10を構成する陽極が損傷を受けやすい。また、溶融した材料が陽極で構成されるノズル10内に付着し、ノズル10の穴が閉塞しやすいという欠点がある。それぞれ一長一短があるが、何れの方式を用いることも可能である。粉末の供給箇所は、材料供給量にもよるが、ノズル10の円周方向に1〜4ヵ所からプラズマ炎3の中心に向かって供給することが望ましい。
粉末供給ノズル4には、粉末造粒装置13で造粒した金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末5を供給する粉末供給装置14が配管を介して接続されている。
【0048】
本実施形態では、工程(A)を実現するためのプラズマ装置に、DC(直流)プラズマ装置1を使用したが、本発明は、DC(直流)プラズマ装置1に限らず、RF(高周波誘導)熱プラズマ装置等を用いても良い。しかし、熱エネルギー変換効率が高く、且つ、金属Si粉末を完全気化させ、SiO
X化反応を効率よく大量処理するためには、DC(直流)プラズマ装置1が好ましい。
特に、DC(直流)プラズマ装置1は、プラズマ炎3で金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末5を6,000K(5,727℃)以上の高温度で溶融させることができるので、SiO
Xを高周波誘導加熱炉19にて2,000K(1,727℃)以上の高温で完全気化反応させる工程(B)との組み合わせを可能とすることができる。
【0049】
また、通常のDC(直流)プラズマ装置は、プラズマジェットのプラズマ炎3であるフレームの速度がマッハ2レベルの高流速で得られるのが特徴である。しかし、本実施形態では、金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末5を溶融(一部は気化する)させるため、プラズガン先端部2a出口のフレームの速度を極力遅くする。そのため、原料粉末の飛翔速度を遅くするようにプラズマガン先端部2aのノズル10の径を大きくして、SiO
X液滴の飛翔速度を150m/sec〜3m/secにして後段の高周波誘導加熱炉19に吹き込む構造にする。
プラズマガン先端部2aのノズル10の径は、SiO
X液滴の飛翔速度を調整するために、ノズル10の先端に向かって段階的又は曲線的に拡大するように構成にするとともに、陽極と陰極7との距離を適正に維持した構造に組み合わせた一対の部品として取り換えできる構造とする。
【0050】
SiO
X液滴の飛翔速度が150m/secを超えると、高周波誘導加熱炉19内での反応時間が短く、高周波誘導加熱炉19内で完全に気化させて反応を起こさせることが難しい。SiO
X液滴の飛翔速度が3m/sec未満では、気化しきれない粗大液滴が高周波誘導加熱炉19内の最適反応温度部まで飛翔せず、高周波誘導加熱炉19の底部に堆積する虞がある。
一方、RF(高周波誘導)熱プラズマ装置は、10,000K(9,727℃)以上の高温度プラズマ炎は得られるが、プラズマへの熱エネルギー変換効率が低く、また原料供給量が10g/min位と非常に少ないために生産性が悪く、生産コストが高くなり、量産装置としては好ましくない。
【0051】
次に、工程(B)について説明する。
図1に示すように、DC(直流)プラズマ装置1の先端には、工程(B)を実現するために、高周波誘導加熱炉19が接続されている。
高周波誘導加熱炉19は、水冷石英管17の内部に断熱材16で周囲を覆われた耐熱温度3,000℃の黒鉛管(反応管)15を挿入し、水冷石英管17の外周に高周波誘導コイル18を配置した構造である。
黒鉛管(反応管)15の内部温度は、1,600℃〜2,700℃に任意に温度コントロールできる構造としてある。
【0052】
図1に示すように、黒鉛管(反応管)15の上部に設けた開口部15aには、工程(C)を実現するために、N
2、Ar等の圧縮不活性ガスによる冷却を行う冷却装置20が配置されている。
工程(B)を実現するための高周波誘導加熱炉19は、黒鉛管(反応管)15内の温度を2,000K(1,727℃)以上として、SiO
X化反応を十分行わせるために、耐熱温度の高い黒鉛管を使用するのが好ましい。
なお、金属Si粉末をDC(直流)プラズマジェト中に吹き込み、作動ガスとして酸素ガスO
2を使用し、SiO
Xを製造する方法も考えられる。しかし、この方法では、DC(直流)プラズマジェット内で金属Si粉末と酸素ガスとの均一な反応が起こらない。そのため、本実施形態のようにプラズマガン2の後に高周波誘導加熱炉19を設けて、十分に気化させて均一な反応を起こさせることも考えられる。
しかし、この場合、金属Siとの未反応酸素ガスO
2が2,000K(1,727℃)以上の高温度の黒鉛管(反応管)15と反応してCOとなるため、SiO
Xとしての組成が安定しない。従って、プラズマ炎3による金属Si粉末と酸素ガスO
2との気相反応を黒鉛管(反応管)15を用いた高周波誘導加熱炉19内で行わせることは難しい。
なお、本実施形態では、加熱炉に高周波誘導加熱炉19を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、黒鉛ヒーターにより黒鉛管(反応管)を加熱する黒鉛ヒーター加熱炉を用いても良い。
【0053】
次に、工程(C)について説明する。
図1、
図3に示すように、N
2、Ar等の圧縮不活性ガスによる冷却を行う冷却装置20は、黒鉛管(反応管)15の上部に設けた開口部15aに連結され、常温のN
2、Ar等の圧縮不活性ガスをリング状に斜め方向に噴出させるリング状ノズル22と、リング状ノズル22に連結されN
2、Ar等の圧縮不活性ガスで高温度SiO
Xガスを800℃に急冷却する断熱二重管23とで構成されている。
リング状ノズル22には、常温のN
2、Ar等の圧縮不活性ガスを供給する装置(図示せず)に連絡する管路22aが接続されている。
また、断熱二重管23には、冷却水又はN
2、Ar等の圧縮不活性ガスを取り込む入口23aと、出口23bとが設けられている。
高周波誘導加熱炉19の黒鉛管(反応管)15で生成された2,000K(1,727℃)以上の高温度SiO
Xガスは、高周波誘導加熱炉19の黒鉛管(反応管)15の上部に設けた開口部15aに連結する冷却装置20内に導入される。N
2、Ar等の圧縮不活性ガスをリング状に噴出するリング状ノズル22から斜め方向に噴出させ、高温度SiO
Xガスをエジェクター効果で吸引するとともに、瞬時に800℃以下に急冷却させ、アモルファス状のSiO
X微粉末25aを析出させる。このSiO
Xガスは、800℃以下では殆ど安定な固体となる。
【0054】
よって、SiO
X析出物は、金属Si粉末とSiO
2粉末とに不均化する間もなく、サブミクロン(1μm以下)のアモルファス状のSiO
X微粉末25aとして析出する。
このSiO
X微粉末25aの粒子径はサブミクロン(1μm以下)で非常に細かいため、通常のサイクロンでは捕集しにくい。故に、一次冷却用のN
2、Ar等の圧縮不活性ガスの吹き込みで、断熱二重管23内のガス流速を高速にして、水冷却サイクロン24内に円周方向に800℃以下に一次冷却された高温度ガスを導入する。
このとき、水冷却サイクロン24への誘導パイプとなる断熱二重管23は、高温度(約800℃)のガスが通るため、断熱二重管23は冷却水又は一次冷却用のN
2、Ar等の圧縮不活性ガスを通して冷却し、また不活性ガスをリング状ノズル22から吹き込む構造とする。
【0055】
断熱二重管23は水あるいは冷却ガスで冷却されるが、冷却しすぎると、SiO
XガスがSiO
X固体として析出し、断熱二重管23内に堆積し、断熱二重管23内が詰まってしまう。この断熱二重管23内に析出堆積したSiO
Xの固体(粉末状、又はフレーク状)を回収するために、短時間周期で操業はバッチ操業とならざるを得ない。そのため、断熱二重管23を水で間接冷却する場合は、流量等を調節して断熱二重管23内でSiO
Xガスが析出しない温度に維持することが必要である。あるいは、吹き込み用のN
2、Ar等の圧縮不活性ガスで断熱二重管23を冷却すれば、断熱二重管23内温度は高温度に維持できる。また、管内ガス流速が非常に速いので、堆積物詰まり等の問題が発生しない。
【0056】
次に、工程(D)について説明する。
図1、
図3に示すように、N
2、Ar等の圧縮不活性ガスによる冷却を行う冷却装置20の断熱二重管23は、水冷却サイクロン24に連絡する。
ここで冷却されたSiO
X微粉末25aは、粒子径が成長或いは凝集してサイクロン側壁及び下部に付着堆積する。
水冷却サイクロン24の下部には、水冷却サイクロン24で冷却されて粒子径が成長或いは凝集してサイクロン側壁及び下部に付着堆積したSiO
X粉末25bを回収するホッパー26が配置されている。
【0057】
高温度のSiO
Xガスは、低温度の水冷却サイクロン24の側壁に沿って流れるため非常に冷却効率が良く、微粉のSiO
X粉末25bは更に急冷却されることにより、粒子径が二次粒子として大きく成長或いは凝集し、平均粒子径D
50が10μm〜20μmの粉末となる。
粒子径が大きくなることにより、SiO
X粉末25bは水冷却サイクロン24内で大半回収されるようになる。
水冷却サイクロン24内に溜まったSiO
X粉末25bは、下部のホッパー26内に一定以上溜まったら、定期的に回収することにより、SiO
X粉末としてほぼ連続的に製造することができる。
【0058】
高温化したSiO
Xガスは、ゆっくり徐冷されると1,700℃以下くらいから次第にSiO
Xガス中に結晶核が析出して壁面等に固着し、成長してバルク状の析出物となる。特にSiOの析出物は焼結体状のバルクとなるため、これを紛体とするためには取り出したバルク状のものを後で別途破砕する必要がある。
このため、そのバルク状の塊の取り出しはバッチ式となり作業性が悪くなるばかりでなく、それを微粉末にするのに粉砕工程を通す必要があるためコストが高くなり、また不純物も混入し易い。
一方、SiO
XガスをN
2、Ar等の圧縮不活性ガスで急冷すると、冷却速度により析出成長核の大きさは異なってくるが、一般に0.01μmから数μmの微粉となり、アモルファス状の非結晶構造とすることができる。
SiOは、通常準安定な結晶構造をもち、金属SiとSiO
2とのアモルファス状の集合構造をもつが、800℃以上の高温域で加熱されると不均化反応によって、次第に金属Si領域とSiO
2領域とに分離する。
【0059】
故に、SiO
XガスをN
2、Ar等の圧縮不活性ガスで800℃以下に希釈急冷し、アモルファス状のSiO
X微粉末として析出させて回収することが非常に重要である。その場合の粒子径は、N
2、Ar等の圧縮不活性ガスの吹き込み量を調整することで0.01μm〜10μmに調整することが好ましい。
SiO
X微粉末の粒子径が0.01μm未満のナノ粒子は、リチウムイオン二次電池の負極活物質として使用する場合には、粒子表面積が大きくバインダーとの混練が難しく電極への塗工性で問題が起こり易い。また、SiO
X微粉末の粒子径が10μmを超える粒子は、リチウムイオンの吸放出による体積膨張収縮によって電極物質の割れ、或いは電極からの剥がれが生じ易く、リチウムイオン二次電池の負極活物質としては好ましくない。
【0060】
次に、工程(E)について説明する。
水冷却サイクロン24は、ここで析出しなかったSiO
X微粉末を真空ポンプ28によって吸引して捕集するバグフィルタ27に管路24aを介して連絡している。
水冷却サイクロン24内で捕集できなかつたサブミクロン(1μm以下)以下のSiO
X微粉末は、工程(E)のバグフィルタ27で除塵し、クリーンな排気ガスを大気に放出する。勿論、ここで回収されたダストもSiO
X粉末製品として回収されるため、製品歩留まりも高くなる。
【0061】
なお、本実施形態において、高周波誘導加熱炉19内は、30kPa〜80kPaの減圧下で操業することにより、金属Si粉末とSiO
2粉末との反応温度を下げ、SiO
X化反応をより促進させることができる。
この場合、バグフィルタ27の後ろで、真空ポンプ28により吸引することにより、高周波誘導加熱炉19からバグフィルタ27までの全工程を減圧操業する。
減圧操業することによりSiO
Xの気化温度も下がるので、高周波誘導加熱炉19内の温度を低く抑えることができ、高周波誘導コイル18の加熱容量も小さくすることができる。
ただし、減圧操業の場合、バグフィルタ27の入口温度をバグフィルタ27の濾布耐熱温度以下に冷却するために、水冷却サイクロン24の伝熱面積を大きくし、水冷却サイクロン24内で十分冷却する必要がある。この場合は、バグフィルタ27後のクリーンな排気ガスを冷却装置20の冷媒として循環することは難しい。
この減圧操業は十分条件であり必ずしも絶対必要条件ではなく、減圧設備は投資とその効果で適宜判断することができる。
【0062】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態を
図4に基づいて説明する。
本実施形態は、工程(E)においてバグフィルタ27を通過したクリーンな排気ガスを、真空ポンプ28によって大気に放出する第一実施形態の方式に代えて、バグフィルタ27を通過後のクリーンな排気ガスを、不活性ガスとして循環使用するための不活性ガス循環装置を冷却装置20との間に設けた点で、第一実施形態とは相違する。
従って、本実施形態では、第一実施形態における工程(A)、工程(B)及び工程(D)の説明は省略する。
先ず、工程(C)について説明する。
冷却装置20は、
図5に示すように、リング状ノズル22に接続する管路22aに三方弁22bを介して初期投入圧縮不活性ガスを導入する管路22cと、循環圧縮不活性ガスを導入する管路22dとを接続している。
【0063】
次に、工程(E)について説明する。
不活性ガス循環装置は、バグフィルタ27と、不活性ガス冷却装置34とで構成されている。バグフィルタ27には、バグフィルタ27を通過したクリーンな排気ガスを導く管路29が設けられている。
バグフィルタ27は、水冷却サイクロン24に管路24aを介して連絡している。
不活性ガス冷却装置34は、管路29の下流側に設けられ、排気ガスを常温まで冷却する熱交換器30と、この熱交換器30の下流側に設けられる管路31と、この管路31の下流側に設けられ、排気ガスを昇圧する高圧ブロワー32と、この高圧ブロワー32の下流側と冷却装置20の管路22dとを接続する管路33とで構成されている。管路33には、プラズマガン2で吹込まれた作動ガス(N
2、Arガス等)相当の余剰ガスを大気放出する排気管35が三方弁36を介して設けられている。
【0064】
本実施形態によれば、バグフィルタ27でSiO
X微粒子を回収集塵後のクリーンな排気ガスを熱交換器30で常温に冷却後に高圧ブロワー32にて昇圧し、冷却装置20に循環使用することにより、大幅なコスト低減が可能である。
また、本実施形態によれば第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例のみに限定されることはない。
【0066】
(実施例1)
金属Si粉末の一次原料として、半導体製造用シリコンウエーハ製造工程で発生した金属Siスラッジから再生した金属Si粉末を使用した。
金属Si粉末の純度は、不純物の重金属<50μg/g、平均粒子径D
50:3.7μmであった。
また、SiO
2粉末の粒子径分布は、平均粒子径D
50:2.4μmであった。
金属Si粉末とSiO
2とを重量比(wt%)1:2.14で混合(SiO
XのX値:1.0)した粉末と、水と、有機バインダー(PVA)と、分散剤とを配合して、撹拌スラリー化し、噴霧乾燥法で造粒して二次原料粉末(混合造粒粉末5)を製造した。
混合造粒粉末5の平均粒子径D
50は、17μm(<60μm)であった。
【0067】
本実施例では、
図1に示すように、プラズマ加熱装置は、DC(直流)プラズマ装置(日本ユテク製:SG-100溶射ガン)1を使用した。ただし、プラズマ炎3の噴出速度を遅くするためプラズマガン先端部2aのノズル10の径を大きくした特殊なノズルを採用した。
DC(直流)プラズマ装置1に金属Si粉末とSiO
2粉末との混合造粒粉末5をキャリアガス(N
2)にて30g/minの供給速度で供給した。
作動ガス9にはN
2(60L/min)を使用し、出力:35V×750Aで操業した。
DC(直流)プラズマ装置1の先端に高周波誘導加熱炉19を接続した。
高周波誘導加熱炉19は、水冷石英管17内部に断熱材16と、耐熱温度3,000℃の黒鉛管(反応管)15とを挿入し、高周波誘導コイル18で加熱する構造である。
黒鉛管(反応管)15の内部温度は、1,600℃〜2,700℃に任意に温度コントロールできる構造で、2,500℃で操業した。
【0068】
プラズマ炎3で溶融液滴(一部はガス化)となったSiO
Xは、高温の高周波誘導加熱炉19に吹き込まれることにより、全てSiO
Xガスとなり、高周波誘導加熱炉19の上部から不活性ガス冷却装置20の出口パイプ21へ送られる。
出口パイプ21の出口部でリング状ノズル22から常温の圧縮N
2ガスをSiO
Xガスに400L/minで吹き込み、800℃に急冷却させた。
800℃に一次冷却されたSiO
Xはガスから微粉末となり、さらに水冷却サイクロン24に吹き込まれる。
水冷却サイクロン24で冷却されたSiO
X微粉末は、粒子径が成長して水冷却サイクロン24の側壁及び下部に付着堆積し、水冷却サイクロン24の下部に設けたホッパー26に集められる。
水冷却サイクロン24の下部に集められたSiO
X回収粉末をサンプリングし、粒子径分析及び成分分析を行った。
【0069】
(実施例2)
金属Si粉末:SiO
2=1:0.71(重量比)で混合(SiO
XのX値:0.5)した粉末を使用した以外は、実施例1と同じ条件で操業した。
水冷却サイクロン24の下部に集められたSiO
X回収粉末をサンプリングし、粒子径分析及び成分分析を行った。
【0070】
(実施例3)
金属Si粉末:SiO
2=1:6.43(重量比)で混合(SiO
XのX値:1.5)した粉末を使用した以外は、実施例1と同じ条件で操業した。
水冷却サイクロン24の下部に集められたSiO
X回収粉末をサンプリングし、粒子径分析及び成分分析を行った。
【0071】
実施例1〜実施例3のSiO
X回収粉末サンプルについて、レーザー回折式粒度分布計(LMS−2000e:SEISHIN社製)による粒子径分析、FE−SEM(SU8020:日立ハイテクノロジーズ製)による形態観察、EPMA(EPMA−1610:島津製作所製)によるSi及びOの定量分析及び粒子内におけるSi及びOの面分析結果、及びXPS(X-ray Photoelectron Spectrometer/JPS-9010/X線光電子分光法、日本電子株式会社製)を用いたSiO
Xの結合状態測定を行ったので、その結果を表1にまとめて示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示すごとく、実施例1〜実施例3のSi/SiO
2の混合比率(計算X値)に対して、SiO
X回収粉末サンプルの分析結果は、EDS分析、XPS分析の何れにおいてもX値がほぼ原料粉末混合比率での計算X値と同等の値であった。また、SiO
X回収粉末サンプルのSiO
Xの結合状態においても原料のSi成分、SiO
2成分がほとんど無くなり、Sub−oxide(Si
1+、Si
2+、Si
3+)が生成されていることが確認された。
また、SiO
X回収粉末サンプルの粒子径分布も、平均粒子径D
50:18μm〜33μm(>50μm:0%〜26%)のリチウムイオン二次電池の負極活物質の塗工に適した粒子径分布の微粉末として回収することができた。
このように、SiO
XのX値を用途に応じて最適にコントロールでき、且つ、回収するSiO
Xは、リチウムイオン二次電池の負極活物質の塗工に適した粒子径分布の粉末であるため、粒子径調整のための粉砕工程を省略でき、SiO
X粉末製造コスト低減のためにも非常に大きな効果があった。
【0074】
(比較例1)
金属Si粉末原料を粉末のまま粉末供給量70g/minで、DC(直流)プラズマ装置(日本ユテク製:SG-100溶射ガン)1のプラズマジェット中に投入し、更にプラズマ炎3内にSiOのモル比相当(Si:O=1:1)の酸素ガスO
2を吹き込んで、SiO
Xを合成させる以外は、実施例1と同じ条件で操業した。
その結果、平均粒子径D
50:5μm位の微粉末は、プラズマガン2の粉末供給装置14では、粉末が細か過ぎて、材料が安定供給できない。しかも、Si微粉末がプラズマ炎3の中心の高温度部(10,000℃)にうまく投入されにくく、多くの金属Si粉末は溶融固化して球状化するのみで、回収された粉末は酸素との合成反応が不十分な金属Si組成のものがほとんどであった。
【0075】
(比較例2)
造粒粉を使用せずに金属Si粉末:SiO
2=1:2.14(重量比)で混合(SiO
XのX値:1.0)した粉末をそのまま使用する以外は、実施例1と同じ条件で操業した。
本比較例では、材料供給が非常に不安定で、且つ、プラズマジェットの後で、高周波誘導加熱炉19での加熱を行ったにも関わらず、回収された粉末は、金属SiとSiO
2の組成のものが多く、SiO化反応があまり起こっていなかった。
金属Si粉末は、造粒していないため微粉であるにも関わらず粉末がプラズマ炎3の中心部に入り難く、且つ、金属Siは気化温度が高いため完全に気化しきれず、SiO化の気相反応が起こりにくかった。
【0076】
(比較例3)
高周波誘導加熱炉19での加熱を行わないこと以外は、実施例1と同じ条件で操業した。
造粒しているため原料粒子径が大きい分、プラズマ炎3内で材料は溶融している。しかし、プラズマ炎3の温度が急激に低下するため、混合造粒粉末5の溶融した液滴がそのまま気化しきれずに固化している。しかも、回収粉末の粒子径が非常に大きいとともに、気相反応が行われていないため、金属SiとSiO
2の混合物粒子状の粉末が多かった。
【0077】
(比較例4)
プラズマ炎3の噴出速度を遅くするためプラズマガン先端部2aのノズル10の径を大きくした特殊なノズルを採用せず、通常のDC(直流)プラズマ装置(日本ユテク製:SG-100溶射ガン)を使用する以外は、実施例1と同じ条件で操業した。
特殊なノズルを採用しない、通常のDC(直流)プラズマ装置では、溶融液滴の飛翔速度が非常に早く、高周波誘導加熱炉19での滞留時間が非常に短い。比較例3に比べると溶融液滴の気化はかなり行われているが、十分ではなかった。
【0078】
(比較例5)
圧縮N
2ガスによる一次急冷を行わず、高周波誘導加熱炉19から出た高温度ガス(約1,700℃)をそのまま、断熱二重管23内に放出する以外は、実施例1と同じ条件で操業した。
高温度のSiO
Xガスは、断熱二重管23を通して水冷却サイクロン24の雰囲気中に放出されるが、ガス流速が遅く殆どが断熱二重管23内で析出固化するか、サイクロン内に入り込んだ粒子も水冷却サイクロン24で沈降せず収率が非常に悪かった。