特許第6352936号(P6352936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6352936ねじられた戻り流路ベーンを備える遠心圧縮機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352936
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ねじられた戻り流路ベーンを備える遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20180625BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   F04D29/44 L
   F04D29/42 P
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-540160(P2015-540160)
(86)(22)【出願日】2013年11月5日
(65)【公表番号】特表2015-533403(P2015-533403A)
(43)【公表日】2015年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2013073049
(87)【国際公開番号】WO2014072288
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年10月26日
(31)【優先権主張番号】CO2012A000055
(32)【優先日】2012年11月6日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513243790
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】NUOVO PIGNONE S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】セザル,イスメイル
(72)【発明者】
【氏名】アールバーグ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】マイケラッシ,ヴィットリオ
(72)【発明者】
【氏名】サッサネッリ,ジョゼッペ
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−331793(JP,A)
【文献】 特開2004−150404(JP,A)
【文献】 実開平01−149597(JP,U)
【文献】 米国特許第03986791(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の同一の戻り流路(202、206)を備えており、前記複数の戻り流路(202、206)は、前記戻り流路(202、206)を通って流れる流体の流れを合計で少なくとも180°曲げるように構成されている、遠心圧縮機のための戻り流路アセンブリ装置(200)であって、
複数の同一の戻り流路ベーン(204、208;300;404)であって、対応する複数の戻り流路(202、206)の曲がりの頂点(210、212)の近傍の対応する複数の領域まで延びており、あるいは前記領域を過ぎて延びており、前記領域は、前記頂点(210、212)から前記対応する戻り流路(202、206)へと径方向に延びており、前記領域において前記流体の流れはすでに約90°曲げられている、前記複数の同一の戻り流路ベーン(204、208;300;404)と、
軸対称性を有するハブ表面を有しているハブ(402)と、
軸対称性を有するシュラウド表面を有しているシュラウドと
を備えており、
ハブベータ角度が、ハブ反り線の各点における角度であって、前記各点における前記ハブ反り線の接線と、前記ハブ表面に位置しかつ前記各点を通過する円周の接線との間の鋭角に相当し、
シュラウドベータ角度が、シュラウド反り線の各点における角度であって、前記各点における前記シュラウド反り線の接線と、前記シュラウド表面に位置しかつ前記各点を通過する円周の接線との間の鋭角に相当し、
ハブベータ角度から、戻り流路のベーンの前縁からの正規化された距離が同じである点におけるシュラウドベータ角度を引き算した角度の代数的な差が、前記戻り流路の前記ベーンの前縁から後縁へと移動するにつれて、最初に減少して最小の代数的な角度の差に達し、次いで増加して最大の角度の代数的な差に達し、その後に再び減少している、装置。
【請求項2】
前記複数の戻り流路ベーン(204)の前縁が、前記対応する複数の戻り流路(202)の前記領域に完全に位置している請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記最小の角度の代数的な差の絶対値は、前記最大の角度の代数的な差の絶対値よりも大きい請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記戻り流路の前記ベーンの前縁から後縁へと移動するにつれて、ハブベータ角度が、最小値へと減少し、次いで連続的に増加している請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記ハブベータ角度の曲線が、前記最小値以降について、ハブベジェ関数によって表される請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記ハブベジェ関数は、変化する数の制御点を使用する請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
ハブベータ角度の曲線が、前記最小値よりも前について、1/4の楕円の関数によって表される請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記戻り流路の前記ベーンの前縁から後縁へと移動するにつれて、シュラウドベータ角度が、極大値へと増加し、次いで最小値へと減少し、その後に連続的に増加している請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記シュラウドベータ角度の曲線が、前記極大値以降について、シュラウドベジェ関数によって表される請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記シュラウドベジェ関数は、変化する数の制御点を使用する請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
シュラウドベータ角度の曲線が、前記極大値よりも前について、1/4の楕円の関数によって表される請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
ロータおよびステータを囲んでいるケーシングと、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の戻り流路アセンブリ装置と
を備える遠心圧縮機装置。
【請求項13】
複数の同一の戻り流路(202、206)を備えており、前記複数の戻り流路(202、206)は、前記戻り流路(202、206)を通って流れる流体の流れを合計で少なくとも180°曲げるように構成されている、遠心圧縮機について、遠心圧縮機のサイズを小さくしながら遠心圧縮機の性能を保ち、あるいは遠心圧縮機のピーク性能を高めるための方法であって、
複数の同一の戻り流路ベーン(204、208;300;404)を、前記流体の流れがすでに約90°曲げられている前記対応する複数の戻り流路(202、206)の曲がりの頂点(210、212)の近傍の対応する複数の領域まで延ばし、あるいは前記領域を過ぎて延ばすこと、を含み、
ハブベータ角度から、ベーンの前縁からの正規化された距離が同じである点におけるシュラウドベータ角度を引き算した角度の代数的な差が、前記ベーンの前縁から後縁へと移動するにつれて、最初に減少して最小の角度の代数的な差に達し、次いで増加して最大の角度の代数的な差に達し、その後に再び減少するように、前記戻り流路ベーンを構成することをさらに含み、
ハブベータ角度が、ハブ反り線の各点における角度であって、前記各点における前記ハブ反り線の接線と、前記ハブ表面に位置しかつ前記各点を通過する円周の接線との間の鋭角に相当し、
シュラウドベータ角度が、シュラウド反り線の各点における角度であって、前記各点における前記シュラウド反り線の接線と、前記シュラウド表面に位置しかつ前記各点を通過する円周の接線との間の鋭角に相当する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題の実施形態は、概して、遠心圧縮機の性能に悪影響を及ぼすことなく、遠心圧縮機の効率を高め、あるいは遠心圧縮機のサイズおよびコストを小さくするために、戻り流路のベーン(vane)を設計するための方法および装置に関し、より詳しくは、機構および技術に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、今日では、多数の産業において、幅広くさまざまな用途に広く利用されている。遠心圧縮機のユーザから遠心圧縮機の製造者への一貫した要求は、既存の世代の遠心圧縮機と同じ性能特性を有しつつ、より小型かつより低コストの装置を生み出すことである。この要求は、装置の性能を下げることなく、遠心圧縮機のサイズの縮小によってより低コストの装置がもたらされるように、遠心圧縮機の効率の改善が必要であることを意味する。
【0003】
遠心圧縮機は、一般に、複数の段と、或る段の出口位置から次の段の入り口位置へと圧縮ガスの方向を変え、流れの接線方向の成分を取り除くための固定のベーンを備える戻り流路とを有している。戻り流路に組み合わせられるベーンの設計が、遠心圧縮機の性能を最適化するために重要である。
【0004】
先行技術の図1に、戻り流路ベーン104とロータベーン106とを含む戻り流路102が示されている。戻り流路ベーン104が、戻り流路102の曲がりの頂点108までは延びていないことに、注意すべきである。
【0005】
したがって、遠心圧縮機の能力を低下させることなく、所与の遠心圧縮機の性能を向上させ、遠心圧縮機のサイズおよびコストを低減する設計および方法を提供することが、望ましいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−102712号公報
【発明の概要】
【0007】
1つの典型的な実施形態によれば、複数の同一の戻り流路を備えており、前記複数の戻り流路は、前記戻り流路を通って流れる流体の流れを合計で少なくとも180°曲げるように構成されている遠心圧縮機のための戻り流路アセンブリ装置が存在し、この装置はさらに、複数の同一の戻り流路ベーンであって、対応する複数の戻り流路の曲がりの頂点の近傍の対応する複数の領域まで延びており、あるいは前記領域を過ぎて延びており、前記領域は、前記頂点から前記対応する戻り流路へと径方向に延びており、前記領域において前記流体の流れはすでに約90°曲げられている、複数の同一の戻り流路ベーンと、軸対称性を有するハブ表面を有しているハブと、軸対称性を有するシュラウド表面を有しているシュラウドと、を備え、
ハブベータ角度が、ハブ反り線(camber line)の各点における角度であって、前記各点における前記ハブ反り線の接線と、前記ハブ表面に位置しかつ前記各点を通過する円周の接線との間の鋭角に相当し、シュラウドベータ角度が、シュラウド反り線の各点における角度であって、前記各点における前記シュラウド反り線の接線と、前記シュラウド表面に位置しかつ前記各点を通過する円周の接線との間の鋭角に相当し、この装置において、戻り流路のベーンの前縁からの正規化された距離が同じである点におけるハブベータ角度およびシュラウドベータ角度の間の角度差が、前記戻り流路の前記ベーンの前縁から後縁へと移動するにつれて、最初に減少して最小角度差に達し、次いで増加して最大角度差に達し、その後に再び減少している。
【0008】
別の典型的な実施形態によれば、ロータおよびステータを取り囲むケーシングと、上述のとおりの戻り流路アセンブリ装置とを備える遠心圧縮機装置が存在する。
【0009】
別の典型的な実施形態によれば、複数の同一の戻り流路を備えており、これら複数の戻り流路は、これら戻り流路を通って流れる流体の流れを合計で少なくとも180°曲げるように構成されている遠心圧縮機について、遠心圧縮機のサイズを小さくしながら遠心圧縮機の性能を保つための方法が存在する。本方法は、複数の同一の戻り流路ベーンを、流体の流れがすでに約90°曲げられている前記対応する複数の戻り流路の曲がりの頂点の近傍の対応する複数の領域まで延ばし、あるいはこれらの領域を過ぎて延ばすことを含む。さらに、本方法は、ベーンの前縁からの正規化された距離が同じである点におけるハブベータ角度およびシュラウドベータ角度の間の角度差が、前記ベーンの前縁から後縁へと移動するにつれて、最初に減少して最小角度差に達し、次いで増加して最大角度差に達し、その後に再び減少するように、戻り流路ベーンを構成することを含むことができる。
【0010】
本発明の以上の態様および他の特徴が、添付の図面に関連して理解される以下の説明において説明される。
【0011】
本明細書に取り入れられて本明細書の一部を構成する添付の図面は、1つ以上の実施形態を示しており、それらの実施形態を明細書と協働して説明する。図面の説明は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】戻り流路ベーンおよびロータベーンを含む遠心圧縮機の戻り流路を示す先行技術の典型的な実施形態である。
図2】戻り流路の曲がりの頂点まで延びている戻り流路ベーンおよび戻り流路の曲がりの頂点を過ぎて延びている戻り流路ベーンを含んでいる遠心圧縮機の戻り流路の対を示す典型的な実施形態である。
図3】遠心圧縮機の戻り流路ベーンの3次元の図を示す典型的な実施形態である。
図4】遠心圧縮機の複数の戻り流路ベーンおよび関連するハブ表面を示す典型的な実施形態である。
図5】戻り流路ベーンの反り線と円周方向との間の局所角度としてのベータ角度を示す典型的な実施形態である。
図6】ハブおよびシュラウドにおける戻り流路ベーンのベータ角度を示すグラフである。
図7】ハブおよびシュラウドにおける戻り流路ベーンの厚さを示すグラフである。
図8】子午線長さに沿ったベーンの角度差を示すグラフである。
図9】遠心圧縮機の小型化を図りつつ遠心圧縮機の性能を維持するためのステップを説明するフロー図である。
図10】ベータ角度が何であるかを理解するうえで役に立つハブとシュラウド(図10のみ破線にて示されている)との間に位置するインペラのベーンの概略図である。
図11】ベータ角度が何であるかを理解するうえで役に立つハブとシュラウドとの間に位置するインペラのベーンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
典型的な実施形態の以下の説明は、添付の図面を参照する。種々の図において、同じ参照番号は、同一または類似の構成要素を指し示している。以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。むしろ、本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。以下の実施形態は、説明を簡単にするために、圧縮機および膨張機(ただし、これらに限られるわけではない)などのターボ機械の用語および構造に関して説明される。
【0014】
本明細書の全体を通して、「一実施形態」または「実施形態」への言及は、或る実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の種々の箇所において現れる「一実施形態において」または「実施形態において」という表現は、必ずしも同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性を、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることが可能である。
【0015】
図2に示されるとおり、典型的な実施形態200は、「半ブーメラン」ベーンと称することができる戻り流路ベーン204を備えている第1の遠心圧縮機戻り流路202と、「全ブーメラン」ベーンと称することができる戻り流路ベーン208を備えている第2の戻り流路206とを示している。典型的な実施形態において、半ブーメランベーン204が、戻り流路202の曲がりの頂点210まで延びていることに、注意すべきである。さらに、典型的な実施形態において、全ブーメランベーン208が、戻り流路206の曲がりの頂点212を過ぎて延び、戻り流路206において約180度の方向転換を形成していることに、注意すべきである。このように、半ブーメラおよび全ブーメランの両方の戻り流路ベーン(ならびに、他の形状)を含む実施形態の組を、戻り流路の曲がりの頂点または曲がりの入り口の付近の領域(図2および3の破線の楕円を参照)まで延び、あるいはそのような領域を過ぎて延びる戻り流路ベーンを有すると表現することができ、この領域において、戻り流路を流れる流体の流れは、すでに(子午面において)約90°曲げられており、典型的には、圧縮機は、戻り流路を通って流れる流体の流れを合計で少なくとも180°曲げるように構成された少なくとも1つの複数の同一の戻り流路を備えることに、注意すべきである。
【0016】
ここで図3を参照すると、戻り流路ベーン300の3次元の典型的な実施形態が示されている。典型的な実施形態の戻り流路ベーンは、該当のハブ表面の外周へと向けられた曲がりの頂点側の端部302と、該当のハブ表面の内周へと向けられたベーン端部304とを有している。戻り流路ベーン300は、戻り流路ベーン300の曲がりの頂点側の端部302が、曲がりの頂点側の端部302において180度の方向転換を有していないため、半ブーメランの設計である。典型的な実施形態において、戻り流路ベーン300の曲がりの頂点側の端部302の前縁を延長することによって、圧力の回復が戻り流路の通過においてより早期に始まり、特に図1の従来の戻り流路ベーン104の断面におけるより低い流体の速度に起因して、戻り流路における運動損失が低減されることに、注意すべきである。さらに、典型的な実施形態において、長さの延長にもとづくベーンの表面積の増加に起因して、所与の遠心圧縮機において必要とされる戻り流路ベーン300の数が少なくなることに、注意すべきである。
【0017】
ここで図4を参照すると、戻り流路ベーン404によって代表される複数の戻り流路ベーンが組み合わせられたハブ402の典型的な実施形態が示されている。
【0018】
この典型的な実施形態の図において、戻り流路ベーンが、半ブーメランベーンであることに注意すべきである。
【0019】
ここで図5を参照すると、典型的な実施形態が、戻り流路ベーンのベータ角度、すなわち戻り流路ベーンの反り線と周方向座標(circumferential coordinate)の方向との間で測定される局所角度について、具体例を示している。この典型的な実施形態をさらに参照し、子午面座標の関数としての戻り流路ベーンのベータ角度の分布が、例えばスケーラブル(scalable)かつパラメータ化された楕円および/またはベジェ関数を使用することによって定義される。実施形態が、楕円および/またはベジェ関数を用いたベータ角度の分布の定義に限定されるものではなく、他の関数(例えば、スプライン関数)も、代案として、このような定義を表現するために使用できることを、当業者であれば理解できるであろう。また、典型的な実施形態において、戻り流路ベーンの厚さの分布も同様に定義されることに、注意すべきである。さらに、典型的な実施形態において、すでに述べたように、ベーンのベータ角度が周方向座標に関して定義され、すなわちゼロ度が純粋に周方向の流れであり、90度が純粋に子午面の流れであり、すなわち軸方向または径方向あるいは両者の間のいずれかの方向であることに、注意すべきである。
【0020】
次に図6を参照すると、グラフ600は、典型的な実施形態のハブおよびシュラウドベータ角度のハブおよびシュラウド表面に沿ったベーンベータ角度の分布を示しており、これらのグラフにおいて、横軸は、該当の点について、反り線に沿ったベーンの前縁からの距離を反り線の全長によって除算したものであり、すなわち該当の点の正規化距離Mであり、したがって前縁に位置する点についてM=0.0であり、後縁に位置する点についてM=1.0であり、前縁と後縁との間の反り線に位置する点について0.0<M<1.0である。典型的な実施形態をさらに参照すると、上述したように、戻り流路ベーンの前縁が、戻り流路の曲がりの頂点まで延び、あるいは曲がりの頂点を過ぎて延びている。さらに、典型的な実施形態においては、ハブベータ角度602が、最初に最小値まで減少し、次いで連続的に増加している一方で、シュラウドベータ角度604は、最初に極大値へと増加し、次いでグラフ600に示される異なる形状を形成している。典型的な実施形態において、ハブおよびシュラウドベータ角度の分布が、第1の部分において、すなわちグラフ600の角度軸からハブベータ角度の最小値およびシュラウドベータ角度の極大値まで、1/4の楕円の式によって定義されていることに注意すべきである。さらに、典型的な実施形態において、残りの部分が、種々の数の制御点を有するベジェ関数を用いて算出されることに、注意すべきである。さらに図7に目を向けると、グラフ700が、ハブ702およびシュラウド704に沿ったベーンの厚さを表している。典型的な実施形態において、ベータ角度の分布について説明した方法と同様の方法が、戻り流路ベーンの厚さを説明するために使用されることに、注意すべきである。
【0021】
次に図8を参照すると、グラフ800は、ハブ表面およびシュラウド表面に沿った典型的な実施形態のベータ角度の差を示している。次に、典型的な実施形態において、ベーン角度の差deltaBetaは、Betahub−Betashroudとして算出される。さらに典型的な実施形態を参照すると、上記定義の角度差deltaBetaは、最初に減少して最小値802に達し、次いで増加して最大値804に達し、その後に再び減少するが、最小値802には達しない。典型的な実施形態において、最小値802の絶対値が最大値804の絶対値よりも常に大きく、最小値802が子午線の長さの最初の1/4の範囲内にある一方で、最大値804が弦の中央よりも後方にあることに、注意すべきである。さらに、典型的な実施形態において、後縁の角度の差が設計に応じてさまざまであることに、注意すべきである。
【0022】
次に図9を参照すると、遠心圧縮機の性能を維持しつつ、遠心圧縮機のサイズを小さくし、あるいは所与の遠心圧縮機のピーク性能を向上させるための典型的な方法の実施形態のフロー図900が示されている。最初に、典型的な実施形態のステップ902において、複数の戻り流路ベーンが、それぞれ複数の戻り流路の曲がりの頂点の付近の領域へと延ばされる。戻り流路ベーンのサイズ、すなわち長さを増やすことで、圧力の回復が通路においてより早期に始まり、より低い流れの速度に起因して、戻り流路における運動損失が低減される。さらに、典型的な方法の実施形態においては、付随する戻り流路ベーンの表面積の増加ゆえに、所与の遠心圧縮機について必要な戻り流路ベーンの数が少なくなる。
【0023】
次に、典型的な方法の実施形態のステップ904において、戻り流路ベーンが、関連するハブに沿ったハブベータ角度および関連するシュラウドに沿ったシュラウドベータ角度を形成するように構成される。ハブベータ角度とシュラウドベータ角度は、戻り流路ベーンの反り線と周方向との間で測定される局所的な角度である。典型的な方法の実施形態をさらに参照すると、ハブベータ角度は、最初に最小値まで減少した後に、連続的に増加する。さらに、典型的な実施形態において、シュラウドベータ角度は、最初に極大値へと増加し、次いで減少し、その後に再び連続的に増加する。典型的な方法の実施形態において、ハブおよびシュラウドの両方のベータ角度が、例えば流路の始まりから最小値/最大値のそれぞれまで1/4の楕円の関数にもとづいて計算され、最小値/最大値のそれぞれから流路の終わりまで種々の数の制御点によるベジェ関数にもとづいて計算されることに、注意すべきである。代案として、他の関数を、ハブおよび/またはシュラウドベータ角度を定めるために使用することができる。
【0024】
次に、典型的な方法の実施形態のステップ906において、戻り流路ベーンは、戻り流路の流路に沿ったハブベータ角度とシュラウドベータ角度との間の角度差が、最初に減少して最小角度差に到達し、次いで増加して最大角度差に到達し、その後に再び減少するようさらに構成される。典型的な実施形態において、最小角度の差の絶対値が最大角度差の絶対値よりも大きいことに、注意すべきである。さらに、最小角度差は、子午線の長さの最初の1/4の範囲内にあり、最大角度差は、流路の弦の中央を過ぎた位置にあることに、注意すべきである。
【0025】
開示した典型的な実施形態は、より大型の遠心圧縮機の性能特性を維持しつつ、遠心圧縮機のサイズを小さくし、あるいは所与の遠心圧縮機のピーク効率を向上させるための装置および方法を提供している。この説明が、本発明を限定しようとするものではないことを、理解すべきである。むしろ、典型的な実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定義される通りの本発明の技術的思想および技術的範囲に含まれる代案、変更、および均等物を包含するように意図されている。さらに、典型的な実施形態の詳細な説明においては、多数の具体的詳細が、請求項に記載の発明の包括的な理解をもたらすために説明されている。しかしながら、種々の実施形態をそのような具体的詳細を備えずに実施できることを、当業者であれば理解できるであろう。
【0026】
現在の典型的な実施形態の特徴および構成要素を、実施形態において特定の組み合わせにて説明したが、各々の特徴または構成要素を、実施形態の他の特徴および構成要素を備えずに単独で使用することが可能であり、もしくは本明細書に開示の他の特徴および構成要素を備え、あるいは備えない種々の組み合わせにて使用することが可能である。
【0027】
本明細書においては、本発明を最良の態様を含めて開示するとともに、あらゆる装置またはシステムの製作および使用ならびにあらゆる関連の方法の実行を含む本発明の実施を当業者にとって可能にするために、いくつかの実施例を使用している。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定められ、当業者であれば想到できる他の実施例も含むことができる。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言から相違しない構造要素を有しており、あるいは特許請求の範囲の文言に記載の構造要素と同等の構造要素を含むならば、特許請求の範囲の技術的範囲に包含される。
【0028】
以下で、明細書および特許請求の範囲において使用される用語に関するいくつかの明確化を、図10および図11を参照して提示する。これらの図が、本発明のいずれの実施形態にも対応するものではないことに、注意すべきである。また、このような明確化が当業者にとって自明であることにも、注意すべきである。
【0029】
図10に、ハブとシュラウド(破線で示されている)との間に位置するインペラのベーンが示されており、ベーンに隣接して、ハブが(円錐の表面と同様の)軸対称を有するハブ表面を有し、シュラウドが(円錐の表面と同様の)軸対称を有するシュラウド表面を有している。
【0030】
図11には、図10のベーンの反り線CLが示されており、ベーンは、複数の反り線に関連付けられており、ハブからシュラウドへと移動するにつれ、ベーンの翼形の表面の各点が、別個の異なる反り線に関連付けられており、ハブの表面に位置するベーンの翼形の表面の点に関する反り線は、通常は「ハブ反り線」と呼ばれ、シュラウドの表面に位置するベーンの翼形の表面の点に関する反り線は、通常は「シュラウド反り線」と呼ばれる。
【0031】
ベータ角度は、反り線の或る点における角度であって、インペラの軸に直交する平面内に位置する角度であり、前記点における反り線の接線(前記平面内に位置する)と、前記平面に位置しかつ前記点を通過する円周に対する接線(前記平面内に位置する)との間の鋭角に相当し、図11において、BETA−1がベーンの前縁における反り線CLのベータ角度であり、BETA−2がベーンの後縁における反り線CLのベータ角度である。ハブベータ角度が、ハブ反り線の或る点における角度であり、前記点におけるハブ反り線に対する接線と、ハブ表面に位置しかつ前記点を通過する円周に対する接線との間の鋭角に相当し、シュラウドベータ角度が、シュラウド反り線の或る点における角度であり、前記点におけるシュラウド反り線に対する接線と、シュラウド表面に位置しかつ前記点を通過する円周に対する接線との間の鋭角に相当する。
【符号の説明】
【0032】
102 戻り流路
104 戻り流路ベーン
106 ロータベーン
108 頂点
202 第1の遠心圧縮機戻り流路
204 戻り流路ベーン(半ブーメランベーン)
206 第2の戻り流路
208 戻り流路ベーン(全ブーメランベーン)
210 頂点
212 頂点
300 戻り流路ベーン
302 端部
304 ベーン端部
402 ハブ
404 戻り流路ベーン
600 グラフ
602 ハブベータ角度
604 シュラウドベータ角度
700 グラフ
702 ハブ
704 シュラウド
800 グラフ
802 最小値
804 最大値
900 フロー図
902 ステップ
904 ステップ
906 ステップ
CL 反り線
M 正規化距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11