特許第6352938号(P6352938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6352938凍結濃縮発酵体からの直接植菌方法及び関連装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352938
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】凍結濃縮発酵体からの直接植菌方法及び関連装置
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/12 20060101AFI20180625BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A23C9/12
   A23C9/123
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-545747(P2015-545747)
(86)(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公表番号】特表2016-500252(P2016-500252A)
(43)【公表日】2016年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2013075057
(87)【国際公開番号】WO2014086671
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2016年10月21日
(31)【優先権主張番号】1261614
(32)【優先日】2012年12月4日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503260310
【氏名又は名称】セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179039
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ポール ポワナン
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ランシオー
(72)【発明者】
【氏名】マリオン ピケ
(72)【発明者】
【氏名】エミリアン ランジュバン
(72)【発明者】
【氏名】ジル ディドロ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−マリー オディノ
(72)【発明者】
【氏名】マルク フェーブレー
【審査官】 池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−506410(JP,A)
【文献】 特表2007−506411(JP,A)
【文献】 特表2003−527853(JP,A)
【文献】 Int. J. Food Microbiol. (2011) vol.149, issue 3, p.185-193
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00−23/00
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/WPIX(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品、特に乳製品への、発酵体連続植菌方法であって、以下のステップ:
‐ 凍結濃縮発酵体が、凍結濃縮発酵体を含むコンテナで作動するマイクロ波装置又は水浴解凍装置によって解凍され(E05)、
当該解凍の完了後、解凍された濃縮発酵体が、前記コンテナから植菌される液体の流れに連続的に注入される(E07及びE08)
ことにより特徴付けられる、方法。
【請求項2】
前記凍結濃縮発酵体を含むコンテナが、前記コンテナの解凍前に、−20〜−70℃の温度で貯蔵される(E03)、請求項1に記載の食品の発酵体での連続植菌方法。
【請求項3】
前記コンテナが、排出の間、秤量された前記コンテナ中の残量を決定するために、連続的に秤量される(E09及びE10)、請求項1又は2に記載の植菌方法。
【請求項4】
前記注入が、使用される発酵体に応じて交換される、接続手段を介して行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の植菌方法。
【請求項5】
前記コンテナが、大気圧超の圧力で、植菌チャンバーに配置される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の植菌方法。
【請求項6】
複数のコンテナが並列配置で配置され、それらの1つが、少なくとも他の1つが待機しながら、排出される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の植菌方法。
【請求項7】
液体形態で注入される前記発酵体の流速が調節される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の植菌方法。
【請求項8】
前記水浴解凍装置を使用する前記凍結濃縮発酵体の解凍時間が、15〜300分である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の植菌方法。
【請求項9】
前記水浴解凍装置中の水浴温度が、15℃〜45℃である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の植菌方法。
【請求項10】
前記マイクロ波装置を使用する前記凍結濃縮発酵体の解凍時間が、10〜60分である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の植菌方法。
【請求項11】
前記凍結濃縮発酵体が、解凍の間、撹拌される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の植菌方法。
【請求項12】
解凍液体発酵体が、2〜12℃の範囲の温度で維持される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の植菌方法。
【請求項13】
前記解凍液体発酵体が、排出の間、均質化される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の植菌方法。
【請求項14】
前記均質化が、ブレンディングを含む、請求項13に記載の植菌方法。
【請求項15】
植菌される液体への発酵体の連続植菌のための装置(1)であって、前記発酵体が、凍結濃縮発酵体に由来し、前記装置(1)が、凍結濃縮発酵体を含むコンテナ(Cfc)を解凍するためのチャンバー(2及び20)を備え、前記チャンバーが、マイクロ波装置又は水浴解凍装置を備え、前記装置(1)が、少なくとも2つの解凍発酵体のコンテナ(Cfc1及びCfc2)を取り付けるための支持手段(4)及び排出されるコンテナにおける残量を連続的に決定することができる少なくとも1つの秤量装置(5)を備える植菌チャンバー(3)を備え、前記装置(1)が、また、前記コンテナ(Cfc1及びCfc2)を、植菌される液体の連続供給のための回路(10)に接続する注入回路(7)を備え、前記注入回路(7)が、1つのコンテナ(Cfc1)と他のコンテナ(Cfc2)とを切り替えることを可能にするバルブ(8)及び液体形態での前記発酵体の流速を調節するための手段(9)を備える、装置。
【請求項16】
前記解凍するためのチャンバー(2)が、解凍の間、熱を均一に分配することを可能にする、前記コンテナ(Cfc)を撹拌するための手段を備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記植菌チャンバー(3)が、冷却手段及び大気圧超の圧力を維持するための手段を備える、請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
前記植菌チャンバー(3)が、少なくとも1つのコンテナの均質化のための手段(6)を備える、請求項15〜17のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、潜在的な健康リスクを有する、インキュベーション、前培養又は活性化も製造中の植菌過程の中断も必要ではない凍結濃縮発酵体からの連続植菌のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工産業及び特に、乳業での植菌は、製品を製造するために極めて重要である。実際、最終製品の産業的な及び品質的な性能レベルは、使用する発酵体の特性及び効率とそれらの添加方法に依存する。
【0003】
乳の植菌のための、前培養物、またスターター培養物としても知られ、すなわち培養物の活性化の前に、誘導期を減少させるために、それを取得することは、国際公開第200170935号及び欧州特許第688864号から公知である。国際公開第99/09838号には、生鮮品を調製するための方法が記載され、ここでスターター培養物は、凍結形態であってもよい。
【0004】
これらの再活性化及び/又は希釈システムは、植菌段階の上流で濃縮発酵体を処理する必要があり、それによって汚染のリスクがあるという欠点を有する。
【0005】
さらに、凍結濃縮発酵体で植菌される液体培地の発酵は、それらを使用する製造が、植菌及び発酵段階のためのバッチ式モードで作動しなければならないことを意味する。実際、パッケージングの形態及び種類は、一般的に袋又は缶であるので、微生物は、発酵タンクに必然的に直接添加しなければならない。
【0006】
凍結濃縮発酵体を使用する他のシステムは、発酵体の中間解凍のためのコンテナの存在が必要であり、そしてそれは、汚染のリスクを増加する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者等は、驚くべきことに、凍結濃縮発酵体の導入が直接植菌によって行うことができることを見出した。これは、最終製品の製造のために発酵過程を中断することなく連続植菌を可能にする。従って、発酵製品製造率を実質的に増加させることが可能になる。
【0008】
従って、本願発明の主題は、凍結濃縮発酵体での、食品、特に乳製品の連続植菌のための方法である。
【0009】
1つの一般的な特徴によれば、方法は、以下のステップ:
‐ 凍結濃縮発酵体が、凍結濃縮発酵体を含むコンテナで作動するマイクロ波装置又は水浴解凍装置によって解凍され、
‐ 解凍された濃縮発酵体が、コンテナから植菌される液体の流れに連続的に注入される
ことを含む。
【0010】
本願発明の主題は、また、植菌される液体への発酵体の連続植菌のための装置であり、ここで、発酵体は、凍結濃縮発酵体に由来し、前記装置は、凍結濃縮発酵体を含むコンテナを解凍するためのチャンバーを備え、前記チャンバーは、マイクロ波装置又は水浴解凍装置を備え、植菌チャンバーは、少なくとも2つの解凍発酵体のコンテナを取り付けるための支持手段及び排出される容器中の残量を連続的に決定することができる少なくとも1つの秤量装置を備え、装置はさらに、コンテナを植菌される液体の連続供給のための回路に接続する注入回路を備え、注入回路は、1つのコンテナから他のコンテナへの切り替え及び液体中の発酵体の流速を調節するための手段を可能にするバルブを備える。
【0011】
1つの実施態様では、凍結濃縮発酵体を含むコンテナは、それらの解凍前に、−20〜−70℃で貯蔵される。
【0012】
有利なことに、一旦植菌チャンバー中に置かれると、解凍濃縮発酵体を含むコンテナは、排出の間、秤量されるコンテナ中の液体発酵体の残量を決定するために、連続的に秤量される。
【0013】
解凍発酵体の注入は、植菌される液体の連続供給のための回路への接続手段を介して行われる。これらの接続手段は、注入回路のパイプでもよく、そしてそれは、ラインにおいて、植菌された液体のそれぞれの通過後、洗浄しそして殺菌することができ、又は一時的な接続手段、例えば、クリップ留め又はスナップ留めなどを備えた多少柔軟なチューブ類であってもよい。
【0014】
表面の微生物汚染は、食品の変質の間に、食品の汚染の可能性を介して健康への悪影響を引き起こす。これは、例えば、細菌胞子がバイオフィルム、すなわち、お互い及び表面に付着する微生物の多細胞群で起こる場合である。実際、細菌胞子は、顕著な耐性特性を示し、そして装置及び接続パイプの表面を汚染する。製造業者において、バイオフィルムの除去は、ほとんどの場合、変質食品の優れた保存を確保し、食品汚染を避けるために、過度の衛生手順の使用を必要とする。
【0015】
従って、あるいは、植菌される液体の連続供給のための回路への接続手段は、完全な無菌状態及び使い易さを確保するために、使い捨てである。接続のこれらの手段は、また、使用される発酵体に従って、変更されてもよい。
【0016】
好ましくは、解凍後、コンテナは、大気圧超の圧力で、植菌チャンバーに配置される。
【0017】
従って、本願発明の1つの実施態様では、解凍濃縮発酵体を含む植菌チャンバーは、前記チャンバーにおいてできる限り一定の圧力を維持するために、中性殺菌ガス手段によって加圧され、そしてそれは、濃縮発酵体の流れの精度を容易にする。さらに、解凍コンテナ中の超過圧力は、外気による汚染の可能性を制限する。超過圧力、典型的には、100g/cm2は、より均一な計量が可能になる。
【0018】
本願発明の1つの実施態様では、いくつかのコンテナが、それらの1つが排出の過程である場合、解凍濃縮発酵体を含む少なくとも1つの他のコンテナが待機しているように、植菌チャンバーにおいて、並行配置で配置される。
【0019】
好ましくは、この過程によって、解凍濃縮発酵体の秤量された量が、植菌される液体の流れに連続的に導入される。この植菌された液体は、その後、販売されることを意図された、コンテナ中において直接、発酵槽、発酵製品のためのタンク又は発酵装置中に入れられる。乳製品製品の場合では、例えば、発酵ユニットは、乳製品のポットでもよい。
【0020】
この連続植菌は、最終製品の品質の規則性を改善する効果を有する。従って、本願発明は、リスクのある中間段階を含まずに、植菌される液体のラインにおいて直接、凍結濃縮発酵体の、それらのコンテナからの直接使用を可能にする。実際、なんらかの中間処理段階は、必然的に、発酵製品を製造するための後続の過程全体にとって有害である予想外の汚染のリスクにつながる。さらに、レンネット凝固直前の液体のラインへの直接植菌は、熟成ゾーンでの、ファージの任意の増殖及びバイオフィルムの形成を制限することができる。
【0021】
好ましくは、液体形態において発酵体の流速を調節するための手段は、植菌される液体の連続供給のための回路の上流に配置される。これらの手段は、ポンプであってもよい。
【0022】
コンテナにおけるこれらの凍結濃縮発酵体のための解凍時間は、コンテナ中に存在する製品の量に応じて変化してもよい。
【0023】
通常、マイクロ波装置に関して、凍結濃縮発酵体のための解凍時間は、10〜60分である。
【0024】
水浴解凍装置を使用する凍結濃縮発酵体のための解凍時間は、15〜300分である。
【0025】
製造方法の後続のステップの正しい経過に有害である任意の大きな熱ショックを引き起こさずに、濃縮発酵体の迅速な融解を確保するために、解凍チャンバー中の温度が調節される。
【0026】
好ましくは、解凍チャンバーのマイクロ波装置における周囲雰囲気の温度は、20〜30℃、そして好ましくは、25℃である。
【0027】
好ましくは、水浴解凍装置における水浴の温度は、15〜45℃である。
【0028】
好ましくは、凍結濃縮発酵体は、それらを均質化しそして不完全な融解凝集を避けるために、解凍の間、撹拌される。
【0029】
この目的のために、本願装置の1つの実施態様では、解凍チャンバーは、解凍の間、熱を均一に分配することを可能にする、コンテナを撹拌するための手段を備えてもよい。
【0030】
一旦植菌チャンバー内に配置されると、解凍された液体発酵体は、2〜12℃であってもよい比較的低温、又は発酵体の機能性を維持に適合する任意の他の温度で維持される。これは、細菌の代謝の再開を可能な限り制限し、そして経時的に一定である植菌の品質を保証することを可能にする。
【0031】
本願装置の1つの実施態様では、植菌チャンバーは、冷却手段及び大気圧超の圧力を維持するための手段を備えてもよい。
【0032】
装置の植菌チャンバーは、排出の間、少なくとも1つのコンテナの均質化の手段を有利には備えてもよい。
【0033】
従って、排出の間の解凍及び融解濃縮発酵体の混合物の均質化は、発酵体で構成された細菌培養物の混合物の均質性を確保することを可能にする。好ましくは、均質化ステップは、ブレンディングを備えてもよい。
【0034】
凍結濃縮発酵体は、200g〜数キロの範囲の多かれ少なかれ大容量パッケージングで包装され、そして貯蔵することができる。輸送は、後続の発酵過程全体に有害である何らかの汚染を避けるために、厳格な衛生条件下で行わなければならない。
【0035】
使用される凍結濃縮発酵体は、チーズ、例えば、ソフトチーズ、加熱圧搾(cooked pressed)チーズ、非加熱圧搾チーズ、スパンカード(spun‐curd)チーズなど、及び発酵乳、例えば、撹拌又はセット、フレーバー又はナチュラルヨーグルト、ドリンクヨーグルトなど、サワークリーム及びフロマージュフレを製造するために、そしてまた、他の発酵製品、例えば、ワインなどを製造するために使用される細菌からなる。
【0036】
使用される細菌は、好適な生育温度が25〜35℃である、中温性の微生物であってもよい。一般的に使用される中温性の微生物は、特に、例えば、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)亜種、ラクティス、ラクトコッカス ラクティス亜種クレモリス(cremoris)、リューコノストック クレモリス(Leuconostoc cremoris)、ラクトコッカス ラクティス次亜種ジアセチラクティス(diacetylactice)、ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ストレプトコッカス デュランス(streptococcus durans)、ストレプトコッカス フェカリス(faecalis)が挙げられる。
【0037】
好熱性の微生物、すなわち生育温度が35〜45℃でもよい生物がまた、使用されてもよい。特に、例えば、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス ラクティス、ラクトバチルス ヘルベティカス(helveticus)、ラクトバチルス デルブルッキー(delbrueckii)亜種ブルガリカス(bulgaricus)及びラクトバチルス アシドフィラス(acidophilus)又は任意の他の適切な微生物が挙げられる。
【0038】
同様に、ビフィドバクテリウム(bifidobacteria)類の偏性嫌気性の微生物、例えば、ビフィダス ビフィダム(Bifidus bifidum)及びビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)などが、使用されてもよい。
【0039】
プロピオン酸菌(propionic bacteria)、例えば、ラクトバチルス ヘルベティカス、プロピオニバクテリウム フロイデンライヒ(Propionbacterium freudenreichii)、プロピオニバクテリウム フロイデンライヒ亜種シャーマニ(shermanii)などがまた、使用されてもよい。
【0040】
使用される細菌は、ワイン細菌、例えば、オエノコッカス オエニ(Oenococcus oeni)(リューコノストック オエノス(Leuconostoc oenos)、ラクトバチルス プランタム(Lactobacillus plantarum)又はペディオコッカス(Pedicoccus)種であってもよい。
【0041】
サッカロミセス科(Saccharomycetaceae)のファミリーの酵母又はカビ、例えば、ペニシリウム属(Penicillium)又はゲオトリクム属(Geotrichum)などが、また、使用されてもよい。
【0042】
凍結濃縮発酵体又は濃縮細菌培養物植菌のレベルは、技術及び検討中の製品に応じて変化する。一般的に、この割合は、植菌される培地の全重量に基づいて、0.005%〜0.025%である。
【0043】
一般的に、製造時、発酵体は、液体窒素を使用して凍結され、その後、−20〜−70℃の温度で貯蔵される。
【0044】
それらの凍結温度に応じて、発酵体は、使用前にしばらくの間、貯蔵することができる:−20℃での貯蔵の場合、1月まで、−40℃での貯蔵の場合、6月まで、そして、−45℃での貯蔵の場合、12月までである。他の目的、特徴及び利点は、非限定的な例としてのみ与えられ、そして添付図面を参照して与えられる、以下の本願発明の実施態様及び実施形態の説明を読むことによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、本願発明の1つの実施形態に従った方法のさまざまなステップのフローチャートを模式的に示す。
図2図2は、本願発明の第一実施態様を模式的に示す。
図3図3は、本願発明の第二実施態様を模式的に示す。
図4図4は、マイクロ波オーブン中で解凍した後の、43℃での、YF‐L901培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線(凍結形態で、貯蔵のための温度(−20℃又は−40℃)の関数として)を示す。
図5図5は、マイクロ波オーブン中で解凍した後の、30℃での、CHN‐19培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線(凍結形態で、貯蔵のための温度(−20℃又は−40℃)の関数として)を示す。
図6図6は、マイクロ波オーブン中で解凍した後の、30℃での、Flora Tradi01培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線(凍結形態で、貯蔵のための温度(−20℃又は−40℃)の関数として)を示す。
図7図7は、マイクロ波オーブン中で解凍した後の、40℃での、SCC‐100培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線(凍結形態で、貯蔵のための温度(−20℃又は−40℃)の関数として)を示す。
図8a図8aは、−45℃で貯蔵した凍結発酵体の水浴解凍後の、30℃での、FMD‐0046培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線を示す。
図8b図8bは、−45℃で貯蔵した凍結発酵体の水浴解凍後の、30℃での、FMD‐0046培養物の酸性化速度に関するモニタリング曲線を示す。
図9a図9aは、−45℃で貯蔵した凍結発酵体の水浴解凍後の、30℃での、R604培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線を示す。
図9b図9bは、−45℃で貯蔵した凍結発酵体の水浴解凍後の、30℃での、R604培養物の酸性化速度に関するモニタリング曲線を示す。
図10a図10aは、−45℃で貯蔵した凍結発酵体の水浴解凍後の、40℃での、ssc1培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線を示す。
図10b図10bは、−45℃で貯蔵した凍結発酵体の水浴解凍後の、40℃での、ssc1培養物の酸性化速度に関するモニタリング曲線を示す。
図11a図11aは、−45℃で貯蔵した凍結発酵体の水浴解凍後の、44℃での、YF‐L703培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線を示す。
図11b図11bは、−45℃で貯蔵した凍結発酵体の水浴解凍後の、44℃での、YF‐L703培養物の酸性化速度に関するモニタリング曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1において模式的に示されるのは、本願発明の1つの実施態様に従った植菌方法のさまざまなステップのフローチャートである。
【0047】
植菌の前に、濃縮発酵体は、コンテナにおいて凍結される。このため、第一ステップE01において、コンテナは無菌的に濃縮発酵体で充填される。コンテナは、チーズ、発酵乳及び他の発酵製品を製造するために使用される細菌からなる濃縮発酵体を維持することができる200g〜数キロの範囲の多かれ少なかれ大容量パッケージングであってもよい。
【0048】
その後、ステップE02において、濃縮発酵体で充填された密封されたコンテナを得るために、無菌を維持しているうちに、コンテナの開口部を密封する。
【0049】
続くステップE03において、発酵体は凍結され、そしてその後、ステップE04において、これらの凍結発酵体は、−20〜−70℃の温度で、数日〜数月の比較的長時間、貯蔵される。
【0050】
同じ凍結濃縮発酵体を含む複数のコンテナを得るために、異なるコンテナでE01〜E04のステップを繰り返すことができる。
【0051】
植菌のために、ステップE05において、凍結発酵体は、予め凍結させておいたコンテナの1つについて、その場で解凍される。この解凍ステップは、コンテナに、そしてより特に、コンテナ中に含まれる発酵体に作用するマイクロ波手段又は水浴解凍装置を介して、行われる。マイクロ波又は水浴解凍手段は、コンテナが導入される解凍チャンバーを備えてもよく、解凍チャンバーは、有害な大きな熱ショックを引き起こさずに濃縮発酵体の迅速な融解を確保するために、約25℃の周囲温度で維持される。提示の実施態様では、凍結濃縮発酵体は、熱を均一に分配し、そして不完全な融解凝集を避けるために、解凍の間、撹拌される。
【0052】
続くステップE06において、解凍が遂行されたコンテナは、使い捨ての注入回路と接続される。
【0053】
続くステップE07において、注入回路に接続したコンテナは、植菌チャンバーに取り付けられ、開口される。
【0054】
解凍されたコンテナは、その後、ステップE08において排出される。排出の間、植菌チャンバーは、前記チャンバーにおいてできる限り一定の圧力を維持するために、中性殺菌ガス手段によって加圧され、そしてそれは、濃縮発酵体の流れの精度を容易にする。解凍液体発酵体は、また、細菌の代謝の再開をできる限り制限し、そして経時的に一定である植菌の品質を保証するために、2〜12℃の温度で維持される。
【0055】
排出しつつ、コンテナは、ステップE09において、チャンバー中に残っている発酵体の量を決定するために、定期的に秤量される。
【0056】
次に、ステップE10において、前のステップにおいて測定された重量が、空の又はほぼ空のコンテナの重量に相当する閾値と比較される。また、コンテナの重量に応じて、そして従って、前記コンテナ中に残っている発酵体の量に応じて、コンテナ排出操作は、ループBCL1を通じてステップE08において、それを再開することによって継続し、又は、ステップE11において、実質的に空のコンテナが、満杯の解凍コンテナと交換される。満杯のコンテナの解凍は、前のコンテナの排出の間に、又は前記前のコンテナの排出の開示前に、例えば、他の解凍チャンバーを使用する前記前のコンテナの解凍の開始後に、開始されてもよい。
【0057】
残っている発酵体の量に従って、コンテナを空にし、コンテナを秤量し、そして任意により交換するこれらのステップは、ループBCL2を通じて行われる。
【0058】
植菌チャンバーにおけるいくつかのコンテナの並行配置及び空にされたコンテナを交換するステップE11は、連続的な植菌方法を得ることを可能にし、ここで、解凍濃縮発酵体の秤量された量が、植菌される液体の流れ中に連続的に導入され、ここで、植菌された液は、その後、販売されることを意図された、コンテナ中において直接、発酵槽、発酵製品のためのタンク又は発酵装置中に入れることができる。この連続的な植菌は、最終製品の品質の規則性の改善をもたらす。
【0059】
図2において模式的に示されるのは、本願発明の第一実施態様に従った植菌装置1である。
【0060】
装置1は、マイクロ波装置又は図1において示された方法のE05ステップに従って凍結濃縮発酵体のコンテナ(Cfc)を解凍することができる任意の他の高周波機器を備える解凍チャンバー2を備える。解凍チャンバー2は、解凍の間、発酵体の均質化のための、発酵体を撹拌するための手段を備え、そしてそれは、図中に示されていない。
【0061】
装置1は、また、植菌チャンバー3を備える。この図において示される植菌チャンバーは、解凍濃縮発酵体のコンテナ(Cfc1及びCfc2)をそれぞれ支持することができる2つの支持手段4を備え、例えば、垂直取り付け装置又は所定の位置にコンテナを保持するための一連のプレート及び/又はフックを備えた、コンテナをグリップするための装置である。植菌チャンバー3において、一旦解凍しても、ある種類の濃縮発酵体を、数時間〜24時間まで貯蔵することができるが、細菌代謝の再開への特定の影響又は濃縮発酵体を構成する細菌の活性化への特定の影響なしには、好ましくは、4〜8時間の間である。
【0062】
装置1の植菌チャンバー3は、排出の間(ステップE08〜E10)、残っている発酵体の量を推定するために、コンテナを秤量するための手段5を、さらに備える。植菌チャンバー3は、コンテナにある発酵体を均質化するための均質化手段6を備える。非限定的例のために、経過時間で変化するプレートあたりの異なる圧力を適用するための複数のプレートが使用されてもよい。均質化は、必要に応じて、連続的又は断続的に行うことができる。
【0063】
また、植菌チャンバー3は、図2に示されていない空調手段を備えてもよい。従って、植菌チャンバー3は、植菌期間を通して、2〜12℃の温度に冷却することができる。
【0064】
植菌チャンバー3は、解凍濃縮発酵体のコンテナ(Cfc)を支持するための複数の手段を備えてもよく、Cfcは、植菌される液体の連続供給10のための回路に、注入回路7を介して接続される。図2において示された実施態様では、注入回路7は、第一回路部分12を通じて第一コンテナCfc1と、第二回路部分13を通じて第二コンテナCfc2と、そして第三回路部分14を通じて供給回路10と接続するバルブ8を備える。従って、バルブ8は、注入過程を中断せずに、コンテナCfc1又はCfc2を交換することができる。
【0065】
注入回路7はまた、従って、バルブ8の下流に、第三回路部分14に取り付けられたポンプ9を備える。ポンプ9は、稙菌チャンバー3において、その場で、コンテナCfc1又はCfc2の導入液体濃縮発酵体の流速を調節するために役立つ。使用される調節ポンプ、例えば、ポンプ9は、稙菌される培地の主要な回路の流速に応じて、比例させることができる;典型的には、乳業において、ポンプ流速は、0.1l/時間〜4l/時間の範囲(2〜10000l/時間の装置について)、0.75l/時間〜12l/時間までの範囲(15000〜30000l/時間の装置について)である。
【0066】
注入回路7は、また、稙菌チャンバー3において、コンテナ(複数)Cfc1及びCfc2の位置で、及び回路部分14及び供給回路10の間の接続部の位置で、接続手段15を備えてもよい。
【0067】
これらの接続手段15は、より容易に、注入回路7を殺菌し洗浄することを可能にする。他の実施態様では、これらの接続手段は、例えば、稙菌される液体の供給のために、パイプ10を稙菌するために使用される発酵体の組成を変える間に、注入回路7の12、13及び14部分を、殺菌された他のものと取り換えるために、それらを交換することを可能にする。
【0068】
稙菌チャンバー3は、また、図中に示されていないが、稙菌チャンバー3の内部の圧力をチェックするための手段を備えてもよい。
【0069】
装置1は、また、稙菌された液体を供給するための、回路10に接続される発酵ユニット11を備えてもよい。前記液体の稙菌は、供給回路10のパイプのタッピングを用いて行われ、注入回路7の第三回路部分14を接続することを可能にする。
【0070】
発酵ユニット11は、この場合、発酵槽の形態で再現されてもよい。当然、また、発酵ユニット11は、発酵製品を製造するためのタンク、又は販売されることを意図された、コンテナにおける直接発酵のための装置、例えば、乳製品のポットなどであることを想定することができる。
【0071】
解凍発酵体の定量は、発酵ユニット稙菌過程の必須の部分である。
【0072】
図3は、本願発明の第二実施態様に従った稙菌装置1を模式的に示す。いくつかの部分は、図2のものと同じ参照番号を割り当てられる。
【0073】
図3に示される第二実施態様では、装置1は、マイクロ波装置の代わりに水浴解凍装置を備える解凍チャンバー20を備える。
【0074】
どのような本願発明の実施態様でも、植菌装置は、発酵ユニットを植菌するための凍結濃縮発酵体から少量の濃縮発酵体の連続的及び正確なオンラインの流れを得ることができる。従って、本願発明は、それらのコンテナから直接、関与するリスクを伴う中間段階なしで植菌される液体のライン中に直接、凍結濃縮発酵体の使用を可能にする。任意の中間体処理段階は、実際、発酵製品を製造するためのその後の全過程にとって有害になる予想外の汚染のリスクに必然的に至る。さらに、レンネット凝固直前の液体のラインへの直接植菌は、ファージの任意の増殖を制限することができる。
【実施例】
【0075】
実施例1:マイクロ波装置を使用する解凍に続く培地の酸性化のモニタリング
発酵体YF‐L901(ストレプトコッカス サーモフィラス及びラクトバチルス ブルガリカスからなる)、CHN‐19、Flora Tradi01(ラクトコッカス ラクティス亜種ラクティス、亜種クレモリス及び次亜種ジアセチラクティス並びにリューコノストック クレモリスからなる複数株発酵体)及びSSC‐100(ストレプトコッカスサーモフィラス)を、5リットルの無菌ポーチに包装する(すなわち、−40℃又は−20℃のいずれかの温度で貯蔵された凍結顆粒形態における2.5kgの発酵体)。
【0076】
ポーチを、600Wの設定でマイクロ波オーブン(Sairem、France)に配置する。先に−40℃で貯蔵した発酵体を30分間マイクロ波に供して、完全な融解を達成した。先に−20℃で貯蔵した発酵体は、完全な融解のために25分必要である。
【0077】
濃縮発酵体の均一な融解を確保するために、ポーチを、解凍を通じて、攪拌器に配置する。
【0078】
培地の酸性化のための試験を、脱脂粉乳由来の9.5%固形含量に再構成された乳で、99℃で30分間加熱して行った。植菌量は、YF‐L901について、0.02%(熟成温度43℃)、SSC‐100について、0.01%(熟成温度40℃)、並びにCHN‐19及びFlora Tradi01(熟成温度30℃)である。
【0079】
試験したそれぞれの株の酸性化能のモニタリングの結果を、時間関数として、植菌された培地のpHにおける変化の曲線として以下に示し、試験株は、マイクロ波装置で先に解凍されている(図4〜7)。
【0080】
特に、図4は、YF‐L901培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線を示し、図5は、CHN‐19培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線を示し、図6は、30℃での、Flora Tradi01培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線を示し、そして図7は、SCC‐100培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線を示す(マイクロ波における解凍後、凍結形態での貯蔵のための温度の関数として)。
【0081】
それぞれの図において、第一曲線参照C1は、前の解凍なしの発酵体の培地に関する対照に相当し、曲線C3及びC5は、解凍する前に、それぞれ−40℃及び−20℃で貯蔵したコンテナについて、解凍した直後に得られた曲線を示す。曲線C2及びC4は、解凍する前に、それぞれ−40℃及び−20℃で貯蔵したコンテナについて、解凍後4℃で24時間貯蔵後に得られた曲線を示す。
【0082】
試験したさまざまな株に関する酸性化モニタリングは、酸性化活性の性能レベルについて、解凍前の発酵体の貯蔵温度の有意な影響がないことを推測することを可能にする。
【0083】
従って、−20℃〜−40℃の温度で、数日間、さまざまな種類の濃縮細菌培養物を貯蔵することが可能であり、そして、細菌の代謝の再開及び検討中の発酵体の活性、特に酸性化活性に特定の影響を及ぼさないで、マイクロ波オーブンにおいてそれらを解凍することができることを示した。
【0084】
実施例2:水浴を使用する解凍に続く培地の酸性化のモニタリング
さまざまな細菌培養物を、ぞれぞれの細菌に応じて調節される水浴温度を使用して解凍した。
【0085】
これらの細菌は、以下の:
‐ ラクトコッカス ラクティス亜種ラクティス及びラクトコッカスラクティス亜種クレモリスの混合物からなるFMD‐0046
‐ ラクトコッカス ラクティス亜種ラクティス、ラクトコッカス ラクティス亜種クレモリス及びラクトコッカス ラクティス亜種ラクティス次亜種ジアセチラクティスの混合物からなるR604
‐ ストレプトコッカス サーモフィラスの混合物からなるSSC‐1
‐ ストレプトコッカス サーモフィラス及びラクトバチルス デルブルッキー亜種ブルガリカス
である。
【0086】
中温性の発酵体、例えば、FMD‐0046及びR‐604について、水浴温度は、30℃で、45分の解凍持続時間である。好熱性発酵体、例えば、SSC‐1及びYF‐L703について、水浴温度は、40℃で、30分の解凍持続時間である。
【0087】
発酵体コンテナを、均一な融解を確保し、そして不完全な融解凝集を避けるために、解凍持続期間を通して撹拌する。
【0088】
培地の酸性化のための試験を、脱脂粉乳由来の9.5%乾燥固形含量に再構成された乳で、99℃で30分間加熱して行った。植菌量は、FDM‐0046について、0.01%(熟成温度30℃)、R‐604について、0.01%(熟成温度30℃)、SSC‐1について、0.01%(熟成温度40℃)、及びYF‐L703について、0.02%(熟成温度44度)である。
【0089】
試験したそれぞれの株の酸性化活性のモニタリングの結果を、時間関数として、植菌された培地のpHにおける変化の曲線として以下に示し、試験株は、−45℃で貯蔵後、水浴装置で先に解凍されている(図8〜11)。
【0090】
特に、図8a及び8bは、FMD‐0046培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線を示し、図9a及び9bは、R‐604培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線を示し、図10a及び10bは、SSC‐1培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線を示し、そして図11a及び11bは、YF‐L703培養物の培地の酸性化に関するモニタリング曲線を示す(44℃、水浴において凍結発酵体の解凍後)。
【0091】
試験したさまざまな株に関する酸性化モニタリングは、使用される操作条件において、解凍後、酸性化活性の性能レベルへの、発酵体の低温貯蔵の持続期間の有意な影響がないことを推測することを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b