(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、十分な接続抵抗を維持しつつ、低温、低圧力、及び短時間での接続が可能な異方性導電フィルム、並びに該異方性導電フィルムを用いた接続方法、及び前記異方性導電フィルムを用いた接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とを異方性導電接続させる異方性導電フィルムであって、
結晶性樹脂と、非晶性樹脂と、導電性粒子とを含有し、
前記結晶性樹脂が、前記非晶性樹脂が有する樹脂を特徴づける結合と同じ、樹脂を特徴づける結合を有する結晶性樹脂を含有することを特徴とする異方性導電フィルムである。
<2> 下記の測定温度範囲、昇温速度、及び降温速度での示差走査熱量測定において、昇温時の溶融開始温度と吸熱ピーク温度との差の絶対値(ΔT1)と、降温時の結晶化開始温度と発熱ピーク温度との差の絶対値(ΔT2)とが、次式ΔT1>ΔT2を満たす前記<1>に記載の異方性導電フィルムである。
測定温度範囲:30℃〜250℃
昇温速度:10℃/分間
降温速度:20℃/分間
<3> 結晶性樹脂と非晶性樹脂との質量比(結晶性樹脂:非晶性樹脂)が、25:75〜75:25である前記<1>から<2>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
<4> 結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂を含有し、
非晶性樹脂が、非晶性ポリエステル樹脂を含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
<5> 更にエラストマーを含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
<6> 結晶性樹脂の含有量及び非晶性樹脂の含有量の和(X)と、エラストマーの含有量(Y)との質量比(X:Y)が、160:40〜60:140である前記<5>に記載の異方性導電フィルムである。
<7> 導電性粒子の平均粒子径が、2μm〜40μmである前記<1>から<6>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
<8> 下記の測定温度範囲、昇温速度、及び降温速度での示差走査熱量測定において、昇温時の吸熱ピーク温度(P1)と、降温時の発熱ピーク温度(P2)との差(P1−P2)が、11.0℃以上である前記<1>から<7>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
測定温度範囲:30℃〜250℃
昇温速度:10℃/分間
降温速度:20℃/分間
<9> 下記の測定温度範囲、昇温速度、及び降温速度での示差走査熱量測定において、昇温時の吸熱量が、1.0J/g〜12J/gであり、降温時の発熱量が、1.0J/g〜6.0J/gである前記<1>から<8>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
測定温度範囲:30℃〜250℃
昇温速度:10℃/分間
降温速度:20℃/分間
<10> 第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とを異方性導電接続させる接続方法であって、
前記第2の電子部品の端子上に前記<1>から<9>のいずれかに記載の異方性導電フィルムを配置する第1の配置工程と、
前記異方性導電フィルム上に前記第1の電子部品を、前記第1の電子部品の端子が前記異方性導電フィルムと接するように配置する第2の配置工程と、
前記第1の電子部品を加熱押圧部材により加熱及び押圧する加熱押圧工程とを含むことを特徴とする接続方法である。
<11> 端子を有する第1の電子部品と、端子を有する第2の電子部品と、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品との間に介在して前記第1の電子部品の端子と前記第2の電子部品の端子とを電気的に接続する異方性導電フィルムとを有し、
前記異方性導電フィルムが、前記<1>から<9>のいずれかに記載の異方性導電フィルムであることを特徴とする接合体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、十分な接続抵抗を維持しつつ、低温、低圧力、及び短時間での接続が可能な異方性導電フィルム、並びに該異方性導電フィルムを用いた接続方法、及び前記異方性導電フィルムを用いた接合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(異方性導電フィルム)
本発明の異方性導電フィルムは、結晶性樹脂と、非晶性樹脂と、導電性粒子とを少なくとも含有し、好ましくはエラストマーを含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記異方性導電フィルムは、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とを異方性導電接続させる異方性導電フィルムである。
【0015】
<結晶性樹脂、及び非晶性樹脂>
前記結晶性樹脂としては、前記非晶性樹脂が有する樹脂を特徴づける結合と同じ、樹脂を特徴づける結合を有する結晶性樹脂(以下、「前記非晶性樹脂と同種の結晶性樹脂」と称することがある。)を含有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
前記結晶性樹脂が、前記非晶性樹脂と同種の結晶性樹脂を含有しない場合は、平滑性のある異方性導電フィルムが得られず、その結果、接続抵抗が不十分となる。
一方、前記結晶性樹脂が、前記非晶性樹脂と同種の結晶性樹脂を含有することにより、前記結晶性樹脂と前記非晶性樹脂とを混合して前記結晶性樹脂が溶媒に溶解しやすい状態を作製できるため、前記結晶性樹脂がほぼ均一に含有された異方性導電フィルムを得ることができる。
そして、得られる異方性導電フィルムは、低温、低圧力、及び短時間での接続を可能にする。これは、得られる異方性導電フィルムを加熱して軟化した後に、加熱状態が解かれて常温に戻る際に、前記結晶性樹脂に由来して速やかに凝固するためと考えられる。
【0017】
ここで、前記樹脂を特徴づける結合とは、その樹脂を重合により合成する際に形成される結合を意味する。例えば、ポリエステル樹脂においては、その樹脂を重合により合成する際に形成されるエステル結合を指し、ポリウレタン樹脂においては、その樹脂を重合により合成する際に形成されるウレタン結合を指し、ポリオレフィン樹脂については、その樹脂を重合により合成する際に形成される炭素−炭素結合を指す。前記樹脂を特徴づける結合とは、言い換えれば、その樹脂の主たる結合ということもできる。
そのため、前記非晶性樹脂と、前記非晶性樹脂が有する樹脂を特徴づける結合と同じ、樹脂を特徴づける結合を有する結晶性樹脂との組合せとしては、例えば、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との組合せ、非晶性ポリオレフィン樹脂と結晶性ポリオレフィン樹脂との組合せ、非晶性ポリウレタン樹脂と結晶性ポリウレタン樹脂との組合せなどが挙げられる。
【0018】
前記結晶性樹脂は、前記非晶性樹脂が有する樹脂を特徴づける結合と同じ、樹脂を特徴づける結合を有する結晶性樹脂以外の結晶性樹脂を含有していてもよい。
前記非晶性樹脂と、前記結晶性樹脂との組合せとしては、例えば、非晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリオレフィン樹脂を含有する結晶性樹脂との組合せなどが挙げられる。
【0019】
ここで、前記結晶性樹脂とは、結晶領域を有する樹脂をいい、前記結晶性樹脂かどうかは、例えば、示差走査熱量分析において、昇温過程で吸熱ピークが観察されることにより確認できる。
前記結晶性樹脂は、結晶領域を有する樹脂の混合物であってもよい。
【0020】
前記結晶性樹脂と前記非晶性樹脂との質量比(結晶性樹脂:非晶性樹脂)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15:85〜85:15が好ましく、25:75〜75:25がより好ましい。
【0021】
<導電性粒子>
前記導電性粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。
【0022】
前記金属粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウム、半田などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ニッケル、銀、銅が好ましい。これらの金属粒子は、表面酸化を防ぐ目的で、その表面に金、パラジウムを施していてもよい。更に、表面に金属突起や有機物で絶縁皮膜を施したものを用いてもよい。
【0023】
前記金属被覆樹脂粒子としては、樹脂粒子の表面を金属で被覆した粒子であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂粒子の表面をニッケル、銀、半田、銅、金、及びパラジウムの少なくともいずれかの金属で被覆した粒子などが挙げられる。更に、表面に金属突起や有機物で絶縁皮膜を施したものを用いてもよい。低抵抗を考慮した接続の場合、樹脂粒子の表面を銀で被覆した粒子が好ましい。
前記樹脂粒子への金属の被覆方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無電解めっき法、スパッタリング法などが挙げられる。
前記樹脂粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−シリカ複合樹脂などが挙げられる。
【0024】
前記導電性粒子は、異方性導電接続の際に、導電性を有していればよい。例えば、金属粒子の表面に絶縁皮膜を施した粒子であっても、異方性導電接続の際に前記粒子が変形し、前記金属粒子が露出するものであれば、前記導電性粒子である。
【0025】
前記導電性粒子の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2μm〜40μmが好ましく、5μm〜30μmがより好ましく、10μm〜25μmが更により好ましく、10μm〜20μmが特に好ましい。
前記平均粒子径は、任意に10個の導電性粒子について測定した粒子径の平均値である。
前記粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡観察により測定できる。
【0026】
前記導電性粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0027】
<エラストマー>
前記エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン樹脂(ポリウレタン系エラストマー)、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどが挙げられる。
【0028】
前記エラストマーは、ゴム状の弾力性を有する点で、前記結晶性樹脂、及び前記非晶性樹脂とは異なる。
【0029】
前記結晶性樹脂の含有量及び前記非晶性樹脂の含有量の和(X)と、前記エラストマーの含有量(Y)との質量比(X:Y)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、160:40〜60:140が好ましい。
【0030】
前記エラストマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
<第1の電子部品及び第2の電子部品>
前記第1の電子部品及び前記第2の電子部品としては、前記異方性導電フィルムを用いた異方性導電接続の対象となる、端子を有する電子部品であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス基板、フレキシブル基板、リジッド基板、IC(Integrated Circuit)チップ、TAB(Tape Automated Bonding)、液晶パネルなどが挙げられる。前記ガラス基板としては、例えば、Al配線形成ガラス基板、ITO配線形成ガラス基板などが挙げられる。前記ICチップとしては、例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)における液晶画面制御用ICチップなどが挙げられる。
【0032】
前記異方性導電フィルムは、下記の測定条件A(測定温度範囲、昇温速度、及び降温速度)での示差走査熱量測定において、昇温時の溶融開始温度と吸熱ピーク温度との差の絶対値(ΔT1)と、降温時の結晶化開始温度と発熱ピーク温度との差の絶対値(ΔT2)とが、次式ΔT1>ΔT2を満たすことが好ましい。
〔測定条件A〕
測定温度範囲:30℃〜250℃
昇温速度:10℃/分間
降温速度:20℃/分間
【0033】
前記式ΔT1>ΔT2を満たすことは、前記結晶性樹脂の結晶化が速やかに起こることを意味する。
前記式ΔT1>ΔT2を満たすことにより、前記異方性導電フィルムを加熱して軟化した後に、加熱状態が解かれて常温に戻る際に、前記結晶性樹脂に由来する凝固がより速やかに起こるようになる。その結果、低温、低圧力、及び短時間での接続をより確実に実現でき、前記接続においても接続抵抗に優れた異方性導電フィルムが得られる。
【0034】
前記ΔT1と前記ΔT2との差(ΔT1−ΔT2)としては、15℃以上がより好ましく、18℃〜50℃が特に好ましい。
【0035】
前記測定条件Aでの示差走査熱量測定における吸熱ピーク温度(P1)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70℃〜115℃が好ましく、100℃〜115℃がより好ましく、105℃〜110℃が特に好ましい。
【0036】
前記測定条件Aでの示差走査熱量測定における発熱ピーク温度(P2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃〜105℃が好ましく、85℃〜105℃がより好ましく、90℃〜100℃が特に好ましい。
【0037】
前記異方性導電フィルムは、前記測定条件Aでの示差走査熱量測定において、昇温時の吸熱ピーク温度(P1)と、降温時の発熱ピーク温度(P2)との差(P1−P2)が、11.0℃以上が好ましく、11.0℃〜14.0℃がより好ましい。
【0038】
前記異方性導電フィルムは、前記測定条件Aでの示差走査熱量測定において、昇温時の吸熱量が、1.0J/g〜12J/gであり、降温時の発熱量が、1.0J/g〜6.0J/gであることが好ましい。
昇温時に吸熱現象が観察されることは、結晶性樹脂成分の結晶状態が解かれて溶融することを意味する。そして、前記吸熱量が、1.0J/g〜12J/gであると、前記異方性導電フィルムは、異方性導電接続において前記導電性粒子を潰す際に潰し易い溶融状態になる。前記吸熱量が、1.0J/g未満であると、異方性導電接続において前記導電性粒子が潰し難いために導通不良を起こすことがある。前記吸熱量が、12J/gを超えると、前記異方性導電フィルムの溶融時の粘度変化が大きいため、前記異方性導電フィルムの圧着部の気泡が多くなり接続外観が損なわれ、場合によっては気泡過多により接続信頼性が劣ることがある。
一方、降温時に発熱現象が観察されることは、結晶性樹脂成分の溶融状態が結晶化により急速に固化することを意味する。そして、前記発熱量は、結晶化で固化する度合いを示す。前記発熱量が、1.0J/g未満であると、環境試験で接続抵抗が上昇し、接続信頼性が劣ることがある。前記発熱量が、6.0J/gを超えると、室温で前記異方性導電フィルム自体が硬くなり過ぎることにより、前記異方性導電フィルムを貼り付ける時の仮接着性などの使い勝手が劣ったり、ピール強度の低下を招くことがある。
【0039】
前記異方性導電フィルムは、硬化剤を含有せず、加熱により樹脂が架橋しない。そのため、低温、かつ短時間の接続に使用する異方性導電フィルムであっても、長期保存を可能にする。
【0040】
前記異方性導電フィルムの平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜100μmが好ましく、10μm〜60μmがより好ましく、20μm〜50μmが特に好ましい。
【0041】
前記異方性導電フィルムの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記結晶性樹脂と前記非晶性樹脂とを溶剤に溶解させて混合ワニスを得た後に、前記混合ワニスに必要に応じて前記エラストマーを混合し、更に前記導電性粒子を混合して得た異方性導電組成物を、剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布する方法などが挙げられる。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
(接続方法)
本発明の接続方法は、第1の配置工程と、第2の配置工程と、加熱押圧工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記接続方法は、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とを異方性導電接続させる方法である。
【0043】
前記第1の電子部品、及び前記第2の電子部品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記異方性導電フィルムの説明で例示した前記第1の電子部品、及び前記第2の電子部品がそれぞれ挙げられる。
【0044】
<第1の配置工程>
前記第1の配置工程としては、前記第2の電子部品の端子上に本発明の前記異方性導電フィルムを配置する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0045】
<第2の配置工程>
前記第2の配置工程としては、前記異方性導電フィルム上に前記第1の電子部品を、前記第1の電子部品の端子が前記異方性導電フィルムと接するように配置する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0046】
<加熱押圧工程>
前記加熱押圧工程としては、前記第1の電子部品を加熱押圧部材により加熱及び押圧する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記加熱押圧部材としては、例えば、加熱機構を有する押圧部材などが挙げられる。前記加熱機構を有する押圧部材としては、例えば、ヒートツールなどが挙げられる。
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100℃〜140℃が好ましい。
前記押圧の圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5MPa〜10MPaが好ましい。
前記加熱及び押圧の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5秒間〜10秒間が好ましい。
【0047】
(接合体)
本発明の接合体は、第1の電子部品と、第2の電子部品と、異方性導電フィルムとを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0048】
前記第1の電子部品、及び前記第2の電子部品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記異方性導電フィルムの説明で例示した前記第1の電子部品、及び前記第2の電子部品がそれぞれ挙げられる。
【0049】
前記異方性導電フィルムは、本発明の前記異方性導電フィルムである。
前記異方性導電フィルムは、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品との間に介在して前記第1の電子部品の端子と前記第2の電子部品の端子とを電気的に接続している。
【0050】
前記接合体は、例えば、本発明の前記接続方法により製造できる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
<異方性導電フィルムの作製>
結晶性樹脂であるアロンメルトPES−111EE(東亜合成株式会社製、結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結晶性樹脂)25質量部、非晶性樹脂であるエリーテルUE3500(ユニチカ株式会社製、非晶性ポリエステル樹脂)75質量部、及び混合溶剤(トルエン:メチルエチルケトン=1:1(質量比))400質量部を混合及び撹拌し、混合ワニスを得た。
続いて、得られた混合ワニスに、固形分量で100質量部に相当する量のニッポランN−5196(日本ポリウレタン工業株式会社製、ポリカーボネート骨格のポリウレタン系エラストマー、固形分30質量%)を混合した。
続いて、平均粒子径20μmの球状Agめっき樹脂粒子(下記の製造方法で得られた導電性粒子)7質量部を更に加えて、異方性導電組成物を得た。
得られた異方性導電組成物を、50μm厚みのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に乾燥後の平均厚みが35μmとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥させ、異方性導電フィルムを作製した。
【0053】
−導電性粒子の製造−
−−ジビニルベンゼン系樹脂粒子の製造−−
ジビニルベンゼン、スチレン、及びブチルメタクリレートの混合比を調整した溶液に、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを投入して高速で均一攪拌しながら加熱を行い、重合反応を行うことにより微粒子分散液を得た。前記微粒子分散液をろ過し減圧乾燥することにより微粒子の凝集体であるブロック体を得た。更に、前記ブロック体を粉砕することにより、ジビニルベンゼン系樹脂粒子を得た。
−−樹脂粒子の銀めっき−−
銀塩として硝酸銀4.25gを純水625mLに室温で溶解した溶液に、還元剤としてベンズイミダゾール15gを加えて溶解し、当初生成した沈殿が完全に溶解したのを確認した後、錯化剤としてコハク酸イミド5g、及びクエン酸1水和物3gを溶解し、その後、結晶調整剤としてグリオキシル酸13gを投入し完全溶解させ無電解銀メッキ液を調製した。
次に、上記で得られた前記ジビニルベンゼン系樹脂粒子を前記無電解銀メッキ液に投入し、この液を攪拌しながら加熱して温度を50℃に保った。その後、ブフナー漏斗で濾別して粒子を分離し真空乾燥機で80℃2時間乾燥し、平均粒子径20μmの球状Agめっき樹脂粒子(導電性粒子)を得た。
【0054】
<示差走査熱量測定(DSC測定)>
以下の条件でDSC測定を行い、昇温時における溶融開始温度、吸熱ピーク温度、及び吸熱量、並びに降温時における結晶化開始温度、発熱ピーク温度、及び発熱量を求めた。結果を表1−1に示す。
測定装置:Q100、ティー・エイ・インスツルメント社製
測定試料:5mg
測定温度範囲:30℃〜250℃
昇温速度:10℃/分間
降温速度:20℃/分間
【0055】
<接合体の製造、及び接合体の評価>
以下の方法により接合体を製造し、以下に示す評価を行った。結果を表1−1に示す。
第2の電子部品として、プリント配線板〔0.4mmピッチ(ライン/スペース=0.2/0.2)、銅パターン厚み35μm、ニッケル/金めっき処理、基材厚み1.0mm〕を用いた。
第1の電子部品として、フレキシブルプリント基板〔0.4mmピッチ(ライン/スペース=0.2/0.2)、ポリイミド厚み25μm、銅パターン厚み12μm、ニッケル/金めっき処理〕を用いた。
前記第2の電子部品の端子上に、上記で得られた異方性導電フィルム(フィルム幅2.0mm)を配置した。続いて、前記異方性導電フィルム上に、前記第1の電子部品を配置した。続いて、緩衝材(シリコーンラバー、厚み0.2mm)を介して、加熱ツール(幅2.0mm)により120℃、2MPa、3秒間の条件で、前記第1の電子部品を加熱及び押圧し、接合体を得た。
【0056】
<<導通抵抗値(接続抵抗)>>
得られた接合体の初期抵抗値、及び高温高湿試験(60℃95%RH環境下で500時間放置)後の抵抗値を以下の方法で測定し、評価を行った。
デジタルマルチメーター(品番:デジタルマルチメーター34401A、アジレント社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの抵抗値を測定した。30チャンネルについて抵抗値を測定し、最大の抵抗値を以下の評価基準で評価した。結果を表1−1に示す。
〔評価基準〕
○:抵抗値が0.11Ω未満
△:抵抗値が0.11Ω以上0.15未満
×:抵抗値が0.15Ω以上
【0057】
<<ピール強度>>
フレキシブルプリント基板をプリント配線板から90°方向で剥離する90°剥離試験(JIS K6854−1)を行った。剥離試験には、1cm幅にカットした試験片を用いた。ピール強度を測定し以下の評価基準で評価した。結果を表1−1に示す。
〔評価基準〕
○:8.0N/cm以上
△:6.0N/cm以上8.0N/cm未満
×:6.0N/cm未満
【0058】
(実施例2〜6、比較例1〜2)
実施例1において、結晶性樹脂、非晶性樹脂、及びエラストマーの配合を表1−1に記載の配合に変えた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルム及び接合体を作製した。
得られた異方性導電フィルム及び接合体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示す。
【0059】
実施例6で得られた異方性導電フィルムのDSC測定結果を
図1及び
図2に示す。
図1は、昇温時のDSCチャートである。
図2は、降温時のDSCチャートである。
図1のDSCチャートでは、77.0℃に溶融開始温度が観察され、107.5℃に吸熱ピークが観察された。また、吸熱ピーク面積から計算した吸熱量は7.3J/gであった。
図2のDSCチャートでは、99.3℃に結晶化開始温度が観察され、95.3℃に発熱ピークが観察された。また、発熱ピーク面積から計算した発熱量は、3.7J/gであった。
【0060】
比較例2で得られた異方性導電フィルムのDSC測定結果を
図3及び
図4に示す。
図3は、昇温時のDSCチャートである。
図4は、降温時のDSCチャートである。
図3のDSCチャートでは、吸熱ピークは観察されなかった。
図4のDSCチャートでは、発熱ピークは観察されなかった。
【0061】
(実施例7〜10)
実施例1において、結晶性樹脂、非晶性樹脂、及びエラストマーの配合を表1−2に記載の配合に変えた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルム及び接合体を作製した。
得られた異方性導電フィルム及び接合体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−2に示す。
【0062】
(実施例11)
実施例5において、結晶性樹脂をバイロンGA−6400(東洋紡株式会社製、結晶性ポリエステル樹脂)に代え、非晶性樹脂をエリーテルUE3600(ユニチカ株式会社製、非晶性ポリエステル樹脂)に代えた以外は、実施例5と同様にして、異方性導電フィルム及び接合体を作製した。
得られた異方性導電フィルム及び接合体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−2に示す。
【0063】
(実施例12)
実施例5において、エラストマーをテイサンレジンSG−80H(ナガセケムテックス株式会社製、アクリルゴム系エラストマー)に代えた以外は、実施例5と同様にして、異方性導電フィルム及び接合体を作製した。
得られた異方性導電フィルム及び接合体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−2に示す。
【0064】
(実施例13)
実施例6において、導電性粒子を平均粒子径10μmの球状Agめっき樹脂粒子に代えた以外は、実施例6と同様にして、異方性導電フィルム及び接合体を作製した。
得られた異方性導電フィルム及び接合体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−2に示す。
【0065】
(比較例3)
実施例5において、非晶性樹脂(非晶性ポリエステル樹脂)をYP−50(新日鐵化学株式会社製、非晶性フェノキシ樹脂)に代えた以外は、実施例5と同様にして、異方性導電フィルム及び接合体を作製した。
得られた異方性導電フィルム及び接合体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−3に示す。
【0066】
(比較例4〜5)
実施例1において、結晶性樹脂、及び非晶性樹脂の配合を表1−3に記載の配合に変えた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルム及び接合体を作製した。
得られた異方性導電フィルム及び接合体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−3に示す。
【0067】
【表1-1】
【0068】
【表1-2】
【0069】
【表1-3】
表1−1〜表1−3における各組成の配合量(含有量と同じ)の単位は質量部である。
表1−1〜表1−3におけるΔT1は、示差走査熱量測定における昇温時の溶融開始温度と吸熱ピーク温度との差の絶対値であり、ΔT2は、示差走査熱量測定における降温時の結晶化開始温度と発熱ピーク温度との差の絶対値である。
【0070】
実施例1〜13から、本発明の異方性導電フィルムが、十分な接続抵抗を維持しつつ、低温(120℃)、低圧力(2MPa)、及び短時間(3秒間)での接続が可能であることが確認できた。また、ピール強度についても優れていることが確認できた。
実施例1〜3及び実施例9〜10の結果から、結晶性樹脂と非晶性樹脂との質量比(結晶性樹脂:非晶性樹脂)が、25:75〜75:25であると、導通抵抗値及びピール強度の接続特性がより優れることが確認できた。
実施例4〜6、及び8の結果から、結晶性樹脂の含有量及び非晶性樹脂の含有量の和(X)と、エラストマーの含有量(Y)との質量比(X:Y)が、160:40〜60:140であると、高温高湿試験後でも接続抵抗値がより優れることが確認できた。
比較例1は、非晶性樹脂を含まないために、平滑な異方性導電フィルムが得られず、その結果、高温高湿試験後の導通抵抗値が不十分となった。
比較例2及び5は、結晶性樹脂を含まないために、異方性導電フィルムの凝集力が低く、その結果、高温高湿試験後の導通抵抗値が不十分となった。
比較例3は、結晶性樹脂と非晶性樹脂との種類が異なる(樹脂を特徴づける結合が異なる)ために、平滑な異方性導電フィルムが得られず、その結果、高温高湿試験後の導通抵抗値が不十分となった。
比較例4は、非晶性樹脂を含まないために、平滑な異方性導電フィルムが得られず、その結果、高温高湿試験後の導通抵抗値が不十分となった。また、結晶性樹脂の含有量が多く、エラストマーに均一に分散していない為、局所的に硬い部分が生じたことで、ピール強度が不十分となった。