【実施例】
【0075】
化合物の塩形態が指定されない場合では、化合物は、適用される合成条件ならびに後処理および精製の方法に応じて、遊離塩基または塩として存在する場合がある。当業者なら、化合物が遊離塩基またはある特定の塩形態に限定されないことは正しく認識されよう。化合物の塩形態が指定される場合では、対イオンの化学量論性は除外されるのが普通である。当業者なら、化合物が単塩に限定されないこと、ならびに二塩、三塩、または他の化合物:対イオン化学量論量として存在する場合もあることは正しく認識されよう。さらに、当業者なら、このような化合物が、適用される合成条件ならびに後処理および精製の方法に応じて、思いがけなく、遊離塩基として、または異なる対イオンとの塩として存在する場合があることも正しく認識されよう。
【0076】
7.1 中間体の合成
中間体A.1
3,5−ジアミノ−6−クロロピラジン−2−カルボン酸
【化27】
A.1
メチル3,5−ジアミノ−6−クロロピラジン−2−カルボキシレート(100g、494mmol)、メタノール(1l)、およびNaOH(水中6mol/L、240mL、1.44mol)の混合物を3時間還流させる。混合物を室温に冷却し、次いで、塩酸(水中6mol/l、およそ240mL)を加えて中和する。水(200mL)を加える。生成した沈殿を吸引によって濾別し、水で洗浄し、60℃で乾燥させる。
C
5H
5ClN
4O
2 ESI質量スペクトル:m/z=189[M+H]+;m/z=187[M−H]
-
【0077】
中間体A.2
3,5−ジアミノ−6−ブロモピラジン−2−カルボン酸を、メチル3,5−ジアミノ−6−ブロモピラジン−2−カルボキシレート(メチル3,5−ジアミノ−6−クロロピラジン−2−カルボキシレートから、J.Med.Chem. 10 (1967) 66-75に記載のとおりに調製する)から、中間体A.1の合成について記載した手順と似たようにして調製する。
中間体B.1
1−(tert−ブチルカルバモイル)プロパ−1−エン−2−イル3,5−ジアミノ−6−クロロピラジン−2−カルボキシレート
【化28】
B.1
段階1:
tert−ブタノール(21.0mL、226mmol)と5−メチルイソオキサゾール(18.0mL、221mmol)の混合物を、氷浴で冷却する。冷却を続けながら、トリフルオロメタンスルホン酸(20.0mL、221mmol)を滴下する。得られる混合物を、これ以降冷却せずに1時間撹拌する。
【0078】
段階2:
3,5−ジアミノ−6−クロロピラジン−2−カルボン酸(中間体A.1、14.0g、74.2mmol)およびトリエチルアミン(31.0mL、222mmol)のDMF(100mL)溶液または懸濁液に、段階1で調製した混合物を加える。得られる混合物を室温で4時間撹拌する。撹拌しながら、氷水を加える。生成した沈殿を吸引によって濾別し、水で洗浄し、65℃で乾燥させて、表題化合物を得る。
C
13H
18ClN
5O
3 ESI質量スペクトル:m/z=328[M+H]+;m/z=326[M−H]
-
TLC(シリカ、DCM/MeOH 9:1):R
f=0.4
【0079】
中間体B.2
1−(2−メチル−2−ブチル−カルバモイル)プロパ−1−エン−2−イル3,5−ジアミノ−6−ブロモピラジン−2−カルボキシレート
【化29】
B.2
段階1:
2−メチル−2−ブタノール(5.75mL、51mmol)と5−メチルイソオキサゾール(4.42mL、51mmol)の混合物を、氷浴で冷却する。撹拌を続けながら、トリフルオロメタンスルホン酸(4.84mL、54mmol)を滴下する。得られる混合物を、これ以降冷却せずに、終夜撹拌する。
【0080】
段階2:
氷浴で冷却した、3,5−ジアミノ−6−ブロモピラジン−2−カルボン酸(中間体A.2、5.00g、21.5mmol)およびトリエチルアミン(7.48mL、54mmol)のDMF(50mL)溶液または懸濁液に、段階1で調製した混合物を滴下する。得られる混合物を室温で4時間撹拌し、次いで氷水に注ぐ。生成した沈殿を吸引によって濾別し、水で洗浄し、50℃で乾燥させて、表題化合物を得る。
C
14H
20BrN
5O
3 ESI質量スペクトル:m/z=386[M+H]+;m/z=384[M−H]
-
【0081】
中間体C.1
3,5−ジアミノ−6−クロロ−N−[(メチルスルファニル)メタンイミドイル]ピラジン−2−カルボキサミド
【化30】
C.1
NaOH(水中1mol/l、9.2mL、9.2mmol)に、S−メチルイソチオ尿素硫酸塩(1.78g、6.1mmol)を加える。完全な溶液が得られるまで、混合物を撹拌する。TBME/THF(1:1、30mL)、次いで1−(tert−ブチルカルバモイル)プロパ−1−エン−2−イル3,5−ジアミノ−6−クロロピラジン−2−カルボキシレート(中間体B.1、2.00g、6.10mmol)を加え、混合物を室温で終夜撹拌し、次いで水(6mL)を加える。生成した沈殿を吸引によって濾別し、水、メタノール、次いでジエチルエーテルで次々に洗浄し、次いで50℃で乾燥させて、表題化合物を得る。
C
7H
9ClN
6OS ESI質量スペクトル:m/z=261[M+H]+;m/z=259[M−H]
-
【0082】
中間体C.2
3,5−ジアミノ−6−ブロモ−N−[(メチルスルファニル)メタンイミドイル]ピラジン−2−カルボキサミド
【化31】
C.2
NaOH(水中1mol/l、30mL、30mmol)に、S−メチルイソチオ尿素硫酸塩(5.42g、19.5mmol)を加える。完全な溶液が得られるまで、混合物を撹拌する。TBME/THF(1:1、100mL)、次いで1−(2−メチル−2−ブチル−カルバモイル)プロパ−1−エン−2−イル3,5−ジアミノ−6−ブロモピラジン−2−カルボキシレート(中間体B.2、7.52g、19.5mmol)を加え、混合物を室温で終夜撹拌し、次いで水(100mL)を加える。生成した沈殿を吸引によって濾別し、THF/水(1:2)で洗浄し、次いで50℃で乾燥させて、表題化合物を得る。
C
7H
9BrN
6OS ESI質量スペクトル:m/z=305[M+H]+
【0083】
中間体I.1
【化32】
I.1
それぞれのBOC保護化合物(XIV.1)(2.00g、5.72mmol)、TFA(4.42ml、57.1mmol)、およびDCM(50ml)の混合物を、室温で3時間撹拌する。揮発性物質を蒸発させ、残渣をTBMEで摩砕し、吸引によって濾別し、真空乾燥して、表題化合物をTFA塩として得る。
C
13H
19N
3O
2二TFA塩 ESI質量スペクトル:m/z=250[M+H]+
【0084】
以下の一般式I.Aの中間体は、示すとおりの一般式I.BのそれぞれのBOC保護化合物から、それに応じて調製する。油状物として得られる生成物を、事前の摩砕なしで、後続の合成に適用する。適用する条件によって、合成により、遊離塩基、塩酸もしくは二塩酸塩、双性イオン、または以下に記載する例化合物の合成に等しく適用することのできる他の塩形態が得られる場合がある。
【0085】
【化33】
【化34】
【0086】
中間体II.1
【化35】
II.1
4−(4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−ピペリジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−カルボン酸(XIII.1)(0.30g、0.89mmol)、TBTU(345mg、1.08mmol)、およびDIPEA(180μl、1.0mmol)をDMF(5mL)に混ぜた混合物を、20分間撹拌する。アミン2−(2−ヒドロキシ−エチルアミノ)−エタノール(100μl、1.1mmol)を加え、混合物を終夜撹拌する。炭酸ナトリウムおよび水を加え、混合物をDCMで抽出する。有機層をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発にかける。残渣をTBMEと共に蒸発にかけ直す。
C
21H
34N
4O
5 ESI質量スペクトル:m/z=423[M+H]
+;m/z=467[M+HCOO]
-
【0087】
以下の一般式II.Aの中間体は、示すとおりのそれぞれのカルボン酸およびアミンから、それに応じて調製する。適用する条件に応じて、合成により、遊離塩基、TFA塩、または以下に記載する例化合物の合成に等しく適用することのできる他の塩形態が得られる場合がある。
【化36】
【化37】
【0088】
中間体III.1
【化38】
III.1
[1−(6−ピリジン−3−イルエチニル−ピリジン−3−イルメチル)−ピペリジン−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(XI.1)(0.145g、純度80% 0.23mmol)、20mgのラネーニッケル、および10mLのメタノールからなる混合物を、室温で3時間、50PSIで水素化する。混合物を濾過し、蒸発にかける。残渣をRP−HPLC(カラム:sunfire、水−MeOH、改質剤TFA)によって精製する。
C
23H
32N
4O
2 ESI質量スペクトル:m/z=397[M+H]
+;m/z=297[M+2H−BOC]
+
【0089】
中間体IV.1
【化39】
IV.1
[1−(6−オキソ−1−ピリジン−3−イルメチル−1,6−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボキサルデヒド(X.1)(0.550g、2.57mmol)、BOC−4−アミノピペリジン(520mg、2.60mmol)、および10mLのTHFからなる混合物を、1時間還流させる。酢酸でpHをpH4〜5に調整し、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(700mg、3.30mmol)を加え、混合物を終夜還流させる。水を加え、混合物を酢酸エチルで抽出する。有機層をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発にかける。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(勾配:DCM/メタノール3〜10%)によって精製する。
C
22H
30N
4O
3 ESI質量スペクトル:m/z=399[M+H]
+;m/z=443[M+HCOO]
-
【0090】
中間体V.1
【化40】
V.1
(5−トリメチルシラニルエチニル−ピリジン−3−イル)−メタノール(VIII.1)(4.6g、15.23mmol)、トリエチルアミン(4.3mL、30.47mmol)、および40mLのDCMからなる溶液に、塩化メタンスルホニル(1.8mL、22.85mmol)をゆっくりと加え、混合物を室温で終夜撹拌する。水を加えた後、抽出する。有機層をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発にかける。残渣を30mLのACNに溶解させ、BOC−4−アミノピペリジン(3.36g、16.76mmol)およびトリエチルアミン(4.3mL、30.47mmol)を加え、混合物を70℃で3時間撹拌する。混合物を蒸発にかけ、残渣に酢酸エチルおよび水を加えた後、抽出する。有機層をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発にかける。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(勾配:DCM/メタノール0〜10%)によって精製する。
C
21H
33N
3O
2Si ESI質量スペクトル:m/z=388[M+H]
+;m/z=432[M+HCOO]
-
【0091】
中間体VI.1
【化41】
VI.1
2−クロロメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−6−カルボン酸メチルエステル(IX.1)(1.48g、6.59mmol)の30mLのACN溶液に、炭酸カリウム(1.82g、13.18mmol)およびBOC−4−アミノピペリジン(1.39g、6.92mmol)を加え、混合物を室温で終夜撹拌する。水および酢酸エチルを加えた後、抽出する。有機層をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発にかける。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(勾配:DCM/(メタノール/アンモニア水溶液9:1)0〜10%)によって精製する。
C
20H
28N
4O
4 ESI質量スペクトル:m/z=389[M+H]
+;m/z=387[M−H]
-
【0092】
以下の一般式VI.Aの中間体は、示すとおりのそれぞれのクロロメチル中間体から、それに応じて調製する。適用する条件に応じて、合成により、遊離塩基、TFA塩、または以下に記載する例化合物の合成に等しく適用することのできる他の塩形態が得られる場合がある。
【化42】
【化43】
【0093】
中間体VII.1
【化44】
VII.1
1,3−ジクロロアセトン(6.36g、50.11mmol)および2−アミノ−5−ヨードピリジン(11g、50mmol)を30mLのジメトキシエタンに溶かした溶液を、室温で終夜撹拌する。生成した沈殿を濾別し、ジメトキシエタンで洗浄する。残渣に150mLのエタノールを加え、混合物を2時間還流させる。混合物を濃縮し、水およびNaOHを加え、水層をDCM/メタノールで2回抽出する。有機層をMgSO
4で乾燥させ、溶媒を蒸発させる。
C
8H
6ClIN
2 ESI質量スペクトル:m/z=293[M+H]
+;m/z=337[M+HCOO]
-
【0094】
中間体VIII.1
【化45】
VIII.1
(5−ブロモ−ピリジン−3−イル)−メタノール(5g、26.5mmol)の30mLのTHF溶液に、トリエチルアミン(11.1mL、79.8mmol)を加え、フラスコをアルゴンでフラッシュする。ヨウ化銅(I)(202mg、1.0mmol)、ビス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム−II−クロリド(746mg、1.0mmol)、トリフェニルホスフィン(279mg、1.0mmol)、およびトリメチルシリルアセチレン(4.8mL、34.57mmol)を加え、得られる懸濁液を80℃で1時間撹拌する。懸濁液を濃縮し、DCMで希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(勾配:DCM/メタノール9:1)によって精製する。
C
11H
15NOSi ESI質量スペクトル:m/z=206[M+H]
+;m/z=250[M+HCOO]
-
【0095】
中間体IX.1
【化46】
IX.1
メチル−6−アミノニコチネート(2.17g、14.26mmol)および1,3−ジクロロアセトン(2.0g、15.7mmol)を20mLの1,2−ジメトキシエタンに混ぜた混合物を、終夜還流させる。生成した沈殿を濾別する。水および炭酸ナトリウムを加え、混合物を数分間撹拌する。沈殿を濾別し、50℃で乾燥させる。
C
10H
9ClN
2O
2 ESI質量スペクトル:m/z=225[M+H]
+;m/z=269[M+HCOO]
-
【0096】
中間体X.1
【化47】
X.1
6−ヒドロキシ−ピリジン−3−カルバルデヒド(500mg、4.06mmol)および10mLのDMFからなる溶液に、炭酸セシウム(1.40g、4.30mmol)を加え、混合物を室温で30分間撹拌する。3−ピコリルクロリド−塩酸塩(680mg、4.15mmol)を加え、混合物を室温で2時間撹拌する。混合物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(勾配:DCM/メタノール2〜4%)によって精製する。
C
12H
10N
2O
2 ESI質量スペクトル:m/z=215[M+H]
+;m/z=213[M−H]
-
【0097】
中間体XI.1
【化48】
XI.1
3−エチニルピリジン(66mg、0,64mmol)、トリエチルアミン(0.3mL、1.9mmol)、および中間体XII.1(200mg、0.54mmol)を5mLのジオキサンに混ぜた混合物を、アルゴンでフラッシュする。DPPF(155mg、0.19mmol)およびヨウ化銅(I)(7mg、0.04mmol)を加え、アルゴン中にて室温で終夜撹拌する。DCMを加え、混合物を水で抽出する。有機層をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発にかける。残渣にDMFを加え、RP−HPLC(カラム:sunfire、水/MeOH、改質剤TFA)によって精製する。
C
23H
28N
4O
2*C
2HF
3O
2 ESI質量スペクトル:m/z=393[M+H]
+;m/z=437 [M+HCOO]
-
【0098】
中間体XII.1
【化49】
XII.1
6−ブロモ−ピリジン−3−カルボキサルデヒド(1g、5.38mmol)およびBoc−4−アミノピペリジン(1.08g、5.38mmol)を10mLのTHFに混ぜた混合物を、室温で30分間撹拌する。pHを酢酸でpH5〜6に調整し、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(2.28g、10.7mmol)をゆっくりと加える。混合物を室温で24時間撹拌する。炭酸カリウム溶液(20%)を加え、混合物を酢酸エチルで3回抽出する。有機層をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発にかける。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/メタノール9:1)によって精製する。
C
16H
24BrN
3O
2 ESI質量スペクトル:m/z=370[M+H]
+;m/z=414[M+HCOO]
-
【0099】
中間体XIII.1
【化50】
XIII.1
中間体XIV.1(1g、2.86mmol)の20mLのメタノール溶液に、水酸化ナトリウム溶液2mol/L(4.3mL、8.6mmol)を加え、混合物を室温で終夜撹拌する。混合物を濃縮し、水で希釈し、2N HClで中和し、凍結乾燥させる。
C
17H
25N
3O
4
HPLC−MS:RT 0.89分(HPLC方法1)
【0100】
中間体XIV.1
【化51】
XIV.1
メチル4−ヒドロキシメチル−ピリジン−2−カルボキシレート(3g、17.95mmol)およびトリエチルアミン(5.0mL、35.89mmol)を50mLのDCMに溶かした溶液に、塩化メタンスルホニル(1.9mL、25.1mmol)をゆっくりと加える。反応液を室温で1時間撹拌する。混合物を水で抽出し、分離し、有機層をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発にかける。Boc−4−アミノピペリジン(3.59g、17.95mmol)、トリエチルアミン(5.0mL、35.9mmol)、およびACN 50mLを加え、混合物を85℃で2時間撹拌する。反応液を室温に冷却し、生成した沈殿を濾別し、50℃で真空乾燥する。
C
18H
27N
3O
4 ESI質量スペクトル:m/z=350[M+H]
+;m/z=394[M+HCOO]
-
【0101】
中間体XV.1
【化52】
XV.1
中間体VI.1(2.30g、5.92mmol)の20mLのメタノール溶液に、20mLの1mol/L水酸化ナトリウム溶液を加え、混合物を室温で3時間撹拌する。塩酸(1mol/l)を加えて混合物を中和し、凍結乾燥する。
C
19H
26N
4O
4 ESI質量スペクトル:m/z=375[M+H]
+;m/z=373[M−H]
-
【0102】
中間体XVI.1
【化53】
XVI.1
中間体VI.3(260mg、0.57mmol)、Pd/C(50mg)、および15mLの酢酸からなる混合物を、室温で3日間、50PSIで水素化する。不溶性物質を濾別し、濾液を濃縮し、RP−HPLC(カラム:sunfire、水/ACN、改質剤TFA)によって精製する。残渣に500μLのTFAおよび20mLのDCMを加える。混合物を室温で3時間撹拌し、蒸発にかける。
C
13H
18N
4*C
2HF
3O
2 ESI質量スペクトル:m/z=231[M+H]
+;m/z=275[M+HCOO]
-
【0103】
中間体XVII.1
【化54】
XVII.1
6−オキソ−1−プロパ−2−イニル−1,6−ジヒドロ−ピリジン−3−カルバルデヒド(XVIII.1)(1.85g、11.48mmol)、BOC−4−アミノピペリジン(2.3g、11.48mmol)、および50mLのTHFからなる混合物を、1時間還流させる。pHを酢酸でpH4〜5に調整し、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(2.9g、13.8mmol)を加え、混合物を終夜還流させる。水を加え、混合物を酢酸エチルで抽出する。水層に、塩基性になるまで炭酸ナトリウムを加え、混合物を酢酸エチルで3回抽出する。有機層をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発にかける。
C
19H
27N
3O
3 ESI質量スペクトル:m/z=346[M+H]
+;m/z=390[M+HCOO]
-
【0104】
中間体XVIII.1
【化55】
XVIII.1
6−ヒドロキシ−ピリジン−3−カルボキサルデヒド(5.0g、40.6mmol)、臭化プロパルギル(5mL、44.7mmol)、炭酸セシウム(15.9g、48.7mmol)、および200mLのDMFからなる混合物を、室温で3時間撹拌する。混合物を濾過し、濃縮する。残渣に水およびDCMを加える。混合物をセライトで濾過し、層を分離する。有機層をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発にかける。
C
9H
7NO
2 ESI質量スペクトル:m/z=162[M+H]
+;m/z=160[M−H]
-
【0105】
中間体XIX.1
【化56】
XIX.1
2−クロロメチル−3H−キナゾリン−4−オン(4g、20mmol)、BOC−4−アミノピペリジン(4g、20mmol)、DIPEA(3.6g、30mmol)、30mLのACN、および50mLのDMFからなる混合物を、還流させながら2時間撹拌する。混合物に250mLの水を加え、生成した沈殿を濾別し、水で洗浄し、乾燥させる。
C
19H
26N
4O
3
融点:231℃
【0106】
7.2 例の合成
(例1.1)
【化57】
1.1
3,5−ジアミノ−6−クロロ−N−[(メチルスルファニル)メタンイミドイル]ピラジン−2−カルボキサミド(中間体C.1、1.48g、5.66mmol)、第一級アミン中間体I.1(TFA塩として、2.70g、5.66mmol)、およびTEA(4.92mL、35mmol)をDMF(60mL)に混ぜた混合物を、80℃で終夜撹拌する。揮発性物質を蒸発させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/(メタノール:アンモニア 9:1)100:0→80:20)によって精製する。生成物をエーテルで摩砕し、吸引によって濾別し、乾燥させて、表題化合物を得る。
C
19H
24ClN
9O
3 ESI質量スペクトル:m/z=462[M+H]+
HPLC分析:RT=0,83分(HPLC方法1)
【0107】
以下の一般式1.Aの化合物は、示すとおりのそれぞれの第一級アミンを使用して、それに応じて調製する。適用する条件に応じて、手順により、遊離塩基、塩酸塩もしくは二塩酸塩、TFA塩もしくはビスTFA塩、双性イオン、または他の塩形態が得られる場合がある。
【化58】
【化59】
a:RP−HPLC(カラム:Xbridge、水−ACN、改質剤NH
3)による精製
b:RP−HPLC(カラム:sunfire、水−ACN、改質剤TFA)による精製
c:分取TLC(シリカ、DCM/(メタノール:アンモニア 9:1)70:30)による引き続いての精製
d:TMS保護された生成物を、K
2CO
3/メタノール/水中で2時間撹拌することにより、事前のクロマトグラフィーなしでさらに反応させて、TMS基を除去する。氷水が加えられて生成した沈殿を濾別し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/(メタノール:アンモニア 9:1)100:0→90:10)によって精製する。
e:出発材料1−ピリジン−2−イルメチル−ピペリジン−4−イルアミンの合成は、WO2006/38001に記載されている。
f:出発材料1−チアゾール−4−イルメチル−ピペリジン−4−イルアミンの合成は、Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, 22,5 (2012) 2052 - 2062に記載されている。
g:出発材料1−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−ピペリジン−4−イルアミン三HClは、2−クロロメチル−1H−ベンゾイミダゾールとBoc−4−アミノピペリジンとから、中間体VI.1の合成について記載した手順と似たようにして調製する。
【0108】
(例1.19)
【化60】
化合物は、中間体C.2と中間体I.1とから、例1.1について記載したとおりに調製する。粗生成物をRP−HPLC(カラム:Xbridge、水−ACN、改質剤NH
3)によって精製する。
C
19H
24BrN
9O
3 ESI質量スペクトル:m/z=506[M+H]+
HPLC分析:RT=0.97分(HPLC方法7)
【0109】
(例2.1)
【化61】
例1.18(400mg、0.874mmol)、2−アジドメチル−ピリジン(234mg、1.75mmol)、およびDMF(5.0ml)からなる混合物に、酢酸銅(II)(24mg、0.131mmol)およびアスコルビン酸ナトリウム(52mg、0.242mmol)の水(0.50ml)溶液を加える。混合物を70℃で終夜撹拌する。揮発性物質を蒸発させ、残渣をまずシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/(メタノール:アンモニア 9:1)100:0→80:20)によって、次いでRP−HPLC(カラム:sunfire、水−ACN、改質剤TFA)によって精製して、表題化合物を得る。
C
26H
30ClN
13O
2二TFA ESI質量スペクトル:m/z=592[M+H]+
HPLC分析:RT=1.02分(HPLC方法5)
以下の化合物(例2.2)は、示すとおりのそれぞれのアルキンおよびアジドを使用して、それに応じて調製する。適用する条件によって、手順により、遊離塩基、塩酸塩もしくは二塩酸塩、TFA塩もしくはビスTFA塩、双性イオン、または他の塩形態が得られる場合がある。
【0110】
(例2.2)
【化62】
適用するアルキン:例1.12、適用するアジド:1−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカン−11−オール
C
27H
39ClN
12O
5 ESI質量スペクトル:m/z=647[M+H]+
HPLC分析:RT=1.00分(HPLC方法5)
【0111】
(例3.1)
【化63】
エステル化合物の例1.1(150mg、0.325mmol)、水酸化リチウム(1M水溶液、0.649ml、0.649mmol)、およびTHF(2.0ml)からなる混合物を、室温で7日間撹拌する。揮発性物質を蒸発させ、残渣をRP−HPLC(カラム:C18、水−ACN、改質剤TFA)によって精製して、表題化合物を得る。
C
18H
22ClN
9O
3二TFA ESI質量スペクトル:m/z=448[M+H]+
HPLC分析:RT=0.74分(HPLC方法3)
【0112】
以下の化合物(例3.2)は、示すとおりのそれぞれのエステル化合物を使用して、それに応じて調製する。適用する条件によって、手順により、遊離塩基、塩酸塩もしくは二塩酸塩、TFA塩もしくはビスTFA塩、双性イオン、または他の塩形態が得られる場合がある。
【0113】
(例3.2)
【化64】
適用するエステル:例1.11
C
17H
21ClN
8O
3S ESI質量スペクトル:m/z=453[M+H]+
HPLC分析:RT=0.94分(HPLC方法3)
【0114】
(例4.1)
【化65】
例1.19(200mg、0.288mmol)、アンモニア水溶液(32%、0.20ml)、およびDMFからなる混合物を、室温で終夜撹拌する。水酸化ナトリウム(4mol/l、0.20ml)を加え、混合物を再び終夜撹拌し、次いで、塩酸(4mol/l)を加えて酸性化する。水(2ml)を加え、沈殿を濾別し、50℃で真空乾燥して、表題化合物を得る。
C
18H
22BrN
9O
3三HCl ESI質量スペクトル:m/z=492[M+H]+
HPLC分析:RT=0.45分(HPLC方法8)
【0115】
8.分析方法および分取クロマトグラフィー
通例、調製した化合物について、
1H−NMRおよび質量スペクトルを取得している。示した質量ピーク(たとえば、(M+H)+、(M+HCOO)−)は、モノアイソトピック分子量を指す。TLCからのR
f値は、既製のシリカゲル60TLCプレートF
254(E.Merck、ダルムシュタット、品目番号1.05714)を、チャンバーを飽和させずに使用し、または既製の酸化アルミニウム60F
254TLCプレート(E.Merck、ダルムシュタット、品目番号1.05713)を、チャンバーを飽和させずに使用して求める。溶離液について示す比は、問題の溶媒の体積単位に関する。NH
3についての体積単位は、NH
3の濃水溶液に関する。シリカゲルクロマトグラフィー精製については、Milliporeのシリカゲル(MATREX(商標)、35−70my)を使用する。
【0116】
分取薄層クロマトグラフィー(TLC):
Merckの分取TLCプレート(PLCシリカゲル60F
254+366、2mm)を使用する。生成物を含有するバンドをこそげ落とし、得られる、生成物の付着したシリカ粉末を、(生成物の溶解性に応じて)DCM、メタノール、またはこれらの混合物で抽出する。シリカを濾別し、濾液を蒸発乾燥させて、精製された化合物を得る。
分取HPLC:
固定相:XBridge C18、10μm、またはSunfire C18、10μm(どちらもwaters、www.waters.comのもの)
分析HPLC/MS方法
示したHPLC保持時間は、次のパラメータのもとで測定している。
【0117】
HPLC方法1
【表1】
【0118】
HPLC方法2
【表2】
【0119】
HPLC方法3
【表3】
【0120】
HPLC方法4
【表4】
【0121】
HPLC方法5
【表5】
【0122】
HPLC方法6
【表6】
【0123】
HPLC方法7
【表7】
【0124】
HPLC方法8
【表8】
【0125】
上記および以下では、次の略語を使用する。
ACN アセトニトリル
BOC tert−ブトキシカルボニル
DCM 塩化メチレン
DIPEA ジイソプロピル−エチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DPPF 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
ESI エレクトロスプレーイオン化
h 時間
HATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
MeOH メタノール
Min 分
Mp 融点
n.d. 算出せず
Pd/C パラジウムチャコール
r.t. 室温(約20℃)
RT 保持時間
TBME メチルtert−ブチルエーテル
TBTU 2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム−テトラフルオロボレート
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TMS トリメチルシリル
【0126】
【化66】
矢印およびアステリスクによって、化学的存在(ここでは、基「A−R」によって例示される)内の結合部位、すなわち、結合点(ここでは、原子「A」)が示される。
【0127】
9.薬理学的試験法
ウッシングチャンバー:5%のFCSおよび5μMのデキサメタゾンを含有するDMEMにおいて、マウス腎臓M−1細胞を、ポリエステルtranswellフィルター上で10〜12日間培養した。フィルターは、社内ウッシングチャンバーシステムに適合する、テフロンコーティングされたウェルプレートに挿入した。測定の前に、M−1細胞の培地を、Caco−2輸送緩衝液(Invitrogen、ドイツ国)と交換した。測定の間、ウッシングチャンバー温度は、37℃に保った。社内で構築した増幅器(Boehringer Ingelheim、Biberach)を使用して、電圧固定モードで短絡電流(I_sc)を測定し、データ取得および分析については、ソフトウェアパッケージLab Viewを用いた。毎5秒±5mVの電圧ステップを適用して、経上皮電気抵抗(TEER)を求めた。頂部溶液に、3μMの最終濃度または漸増濃度(1〜3〜10μM)で化合物を投与した。各実験の終盤に、頂部区画に3μMのアミロライドを加えることで、アミロライド感受性I_SCを測定した。結果は、アミロライド効果の阻害パーセントとして、またはIC
50として示す。
【0128】
上で示した例化合物では、ウッシングチャンバー検定において次のIC
50値が求められた。
【表9】
【0129】
10.適応症
既知とおり、式(I)の化合物は、治療分野におけるその広範な用途を特徴とする。ENaC阻害薬としてのその薬学的効果のために、本発明による式(I)の化合物が好ましく適する、そうした用途について詳細に言及すべきである。例としては、呼吸器疾患もしくは愁訴、または気道のアレルギー性疾患が挙げられる。
気道の粘液産生の増加、炎症、および/または閉塞性疾患を伴う気道および肺の疾患の予防および治療について詳細に言及すべきである。例としては、急性、アレルギー性、もしくは慢性気管支炎、慢性閉塞性気管支炎(COPD)、咳、肺気腫、アレルギー性もしくは非アレルギー性鼻炎もしくは副鼻腔炎、慢性鼻炎もしくは副鼻腔炎、喘息、肺胞炎、農夫病、気道反応亢進、感染性気管支炎もしくは肺臓炎、小児喘息、気管支拡張症、肺線維症、ARDS(急性成人呼吸促迫症候群)、気管支浮腫、肺浮腫、気管支炎、誤嚥や毒ガス吸入などの種々の原因が引き金となる肺炎もしくは間質性肺炎、または心不全、放射線照射、化学療法、嚢胞性線維症もしくは膵臓線維症、もしくはα−1−アンチトリプシン欠損症の結果としての気管支炎、肺炎、もしくは間質性肺炎が挙げられる。
【0130】
特に好ましくは、本発明は、肺を含めた上方および下方の呼吸路の炎症性または閉塞性疾患、たとえば、アレルギー性鼻炎、慢性鼻炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症、COPD、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、および喘息を治療する医薬組成物を調製するための、式(I)の化合物の使用に関する。
式(I)の化合物は、炎症性および閉塞性疾患、たとえば、COPD、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、喘息、嚢胞性線維症、特に、COPD、慢性気管支炎、喘息、および嚢胞性線維症の治療に使用することが最も好ましい。
実際の薬学的有効量または治療投薬量は、当然のことながら、患者の年齢および体重、投与経路、疾患の重症度など、当業者に知られている要素に応じて決まる。いかなる場合でも、組合せは、患者特有の条件下で薬学的有効量の送達が可能になる投薬量および要領で投与される。
【0131】
11.組合せ
式(I)の化合物は、それだけで、または本発明による他の(I)の活性物質と共に使用することができる。所望であれば、式(I)の化合物は、薬学的に活性のある他の物質と組み合わせて使用してもよい。
したがって、本発明はさらに、1種または複数の式(I)の化合物の他に、さらなる活性物質として、別のENaC阻害薬、ベータ模倣薬、抗コリン薬、副腎皮質ステロイド、PDE4阻害薬、LTD4拮抗薬、EGFR阻害薬、ドーパミン作動薬、H1抗ヒスタミン薬、PAF拮抗薬、MAPキナーゼ阻害薬、MPR4阻害薬、iNOS阻害薬、SYK阻害薬、嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)の補正薬およびCFTR増強剤またはこれらの二重もしくは三重の組合せの範疇の中から選択される1種または複数の化合物を含有することが好ましい、医薬組み合わせに関する。
【0132】
12.製剤
投与に適する形態は、たとえば、吸入用の粉末またはエアロゾルである。各場合における薬学的に有効な化合物の含有量は、全組成物の0.2〜50質量%、好ましくは5〜25質量%の範囲、すなわち、以下で指定する投薬量範囲を実現するのに十分な量にすべきである。
活性物質の組合せは、吸入によって投与するとき、粉末として、水溶液もしくは水−エタノール溶液として、または噴射剤ガス製剤を使用して投与することができる。
したがって、医薬製剤は、上記の好ましい実施形態による1種または複数の(I)の化合物を含有することを特徴とすることが好ましい。
また、式(I)の化合物は、吸入によって投与されれば好ましく、1日1回または2回投与されれば特に好ましい。この目的では、式(I)の化合物は、吸入に適する形態において利用可能にする必要がある。吸入用調製物としては、吸入用粉末、噴射剤を含有する定量エアロゾル、または無噴射剤吸入用溶液が挙げられ、これらは、場合によって、生理学的に許容される従来の賦形剤と混合されて存在する。
本発明の範囲内では、無噴射剤吸入用溶液という用語は、濃縮液、または使用準備済みの吸入用滅菌溶液も包含する。本発明に従って使用することのできる調製物については、本明細書の次の部においてより詳細に記載する。
【0133】
吸入用粉末
式(I)の活性物質が生理学的に許容される賦形剤と混合されて存在する場合、本発明による吸入用粉末の調製に、次の生理学的に許容される賦形剤:単糖(たとえば、グルコースやアラビノース)、二糖(たとえば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、少糖および多糖(たとえば、デキストラン)、多価アルコール(たとえば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(たとえば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、またはこれら賦形剤の互いとの混合物を使用することができる。単糖または二糖を使用することが好ましく、ラクトースまたはグルコースは、は、特に、限定的ではないが、その水和物の形で使用することが好ましい。本発明の目的では、ラクトースが特に好ましい賦形剤であり、ラクトース一水和物が、最も格別に好ましい。粉砕および微粉砕し、最後に成分を混ぜ合わせることによる、本発明による吸入用粉末の調製方法は、先行技術より知られている。
【0134】
噴射剤含有吸入用エアロゾル
本発明に従って使用することのできる、噴射剤含有吸入用エアロゾルは、噴射剤ガスに溶解し、または分散した形の、式(I)の化合物を含有してよい。本発明による吸入エアロゾルの調製に使用することのできる噴射剤ガスは、先行技術より知られている。適切な噴射剤ガスは、n−プロパン、n−ブタン、イソブタンなどの炭化水素、およびメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン、シクロブタンの好ましくはフッ素化された誘導体などのハロ炭化水素の中から選択される。上で言及した噴射剤ガスは、それだけで、またはその混合物として使用してよい。特に好ましい噴射剤ガスは、TG134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)、TG227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)、およびこれらの混合物から選択されるフッ素化アルカン誘導体である。本発明による使用の範囲内で使用される、噴射剤を動力とする吸入エアロゾルは、共溶媒、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、潤滑剤、pH調製剤などの他の成分も含有してよい。こうした成分はすべて、当業界で知られている。
【0135】
無噴射剤吸入用溶液
本発明による式(I)の化合物は、無噴射剤吸入用溶液および吸入用懸濁液の調製に好ましく使用される。この目的で使用する溶媒としては、水溶液またはアルコール溶液、好ましくはエタノール溶液が挙げられる。溶媒は、水だけでもよいし、または水とエタノールの混合物でもよい。溶液または懸濁液は、適切な酸を使用して、pH2〜7、好ましくは2〜5に調整する。pHは、無機酸または有機酸から選択される酸を使用して調整することができる。特に適切な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、および/またはリン酸が挙げられる。特に適切な有機酸の例としては、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、ギ酸、および/またはプロピオン酸などが挙げられる。好ましい無機酸は、塩酸および硫酸である。活性物質の1つと付加塩をすでに形成している酸を使用することも可能である。有機酸の中でも、アスコルビン酸、フマル酸、およびクエン酸が好ましい。所望であれば、特に、その酸性化する性質に加えて、たとえば、着香剤、酸化防止剤、または錯化剤としての他の特性を有する酸、たとえば、クエン酸やアスコルビン酸の場合では、上記酸の混合物を使用してもよい。本発明によれば、pHの調整には塩酸を使用することが特に好ましい。
【0136】
本発明による目的で使用する無噴射剤吸入用溶液に、共溶媒および/または他の賦形剤を加えてもよい。好ましい共溶媒は、ヒドロキシル基または他の極性基を含んでいるもの、たとえば、アルコール−特にイソプロピルアルコール、グリコール−特に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール、およびポリオキシエチレン脂肪酸エステルである。この文脈での賦形剤および添加剤という用語は、活性物質ではないが、活性物質製剤の質的特性を向上させるために、薬学的に適切な溶媒中の1種または複数の活性物質に配合することのできる、薬学的に許容される任意の物質を意味する。こうした物質は、薬理学的効果をもたない、または、所望の療法に関連して、感知できないもしくは少なくとも望ましくない薬理学的効果をもたないことが好ましい。賦形剤および添加剤には、たとえば、界面活性剤、たとえば、ダイズレシチン、オレイン酸、ポリソルベートなどのソルビタンエステル、ポリビニルピロリドン、他の安定剤、錯化剤、酸化防止剤、および/または完成医薬製剤の有効期間を保証もしくは延長する保存剤、着香剤、ビタミン、および/または当業界で知られている他の添加剤が含まれる。添加剤には、等張剤としての塩化ナトリウムなどの、薬学的に許容される塩も含まれる。好ましい賦形剤としては、たとえばpH調製にすでに使用されていないという前提でアスコルビン酸、ビタミンA、ビタミンE、トコフェロール、および人体に見出される同様のビタミンまたはプロビタミンなどの、酸化防止剤が挙げられる。保存剤を使用して、製剤を病原体の混入から守ってもよい。適切な保存剤は、当業界で知られているもの、詳細には、先行技術より知られている濃度の、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、または安息香酸もしくは安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩である。
【0137】
上述の治療形態について、たとえば呼吸器疾患、COPD、または喘息という言葉を含む、同梱された説明書と、本発明による化合物と、上述のものから選択される1種または複数の組合せパートナーとを収容する、呼吸器愁訴治療用の医薬の使用準備済みパックが提供される。
【0138】
以下の例で、本発明について、その範囲を制限することなく例示する。
粉末吸入用のカプセル剤
1カプセルは、次のものを含有する:
活性物質 0.5mg
吸入用ラクトース 5.0mg
5.5mg
【0139】
調製:
活性物質を吸入用ラクトースと混合する。混合物を、カプセル製造機でカプセルに詰める(空カプセルの質量 およそ50mg)。
カプセル剤の質量:55.5mg
カプセルサイズ=3