特許第6353049号(P6353049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6353049-乾燥粉末吸入組成物の製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353049
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】乾燥粉末吸入組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/72 20060101AFI20180625BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20180625BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A61K9/72
   A61K9/14
   A61K47/26
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-536546(P2016-536546)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公表番号】特表2016-539151(P2016-539151A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】FI2014000038
(87)【国際公開番号】WO2015082756
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年10月25日
(31)【優先権主張番号】61/913,024
(32)【優先日】2013年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300046083
【氏名又は名称】オリオン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッチラ、テルヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハッポネン、アニタ
(72)【発明者】
【氏名】ハイカライネン、ユッシ
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−533697(JP,A)
【文献】 特表2006−515830(JP,A)
【文献】 特表2012−517987(JP,A)
【文献】 特表2005−507881(JP,A)
【文献】 特表平08−501056(JP,A)
【文献】 特開2004−018440(JP,A)
【文献】 特表2003−534273(JP,A)
【文献】 特表2003−527412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1活性成分および第2活性成分を微粉化形態で含む乾燥粉末吸入組成物の製造方法であって、
(a)第1活性成分と第2活性成分の一部とを第1微粒子賦形剤と混合し、第1プリブレンドを提供する工程;
(b)第2活性成分の残部を第2微粒子賦形剤と混合し、第2プリブレンドを提供する工程;および
(c)第1プリブレンドと第2プリブレンドを一緒に混合する工程
を含み、
より細かい微粒子賦形剤のVMD(体積メジアン直径)が、より粗い微粒子賦形剤のVMDの90%未満となるように、第1微粒子賦形剤と第2微粒子賦形剤とがメジアン粒子径において異なる製造方法。
【請求項2】
より細かい微粒子賦形剤のVMDがより粗い微粒子賦形剤のVMDの85%未満である請求項1記載の方法。
【請求項3】
より細かい微粒子賦形剤のVMDが約30〜約70μmの範囲内であり、かつより粗い微粒子賦形剤のVMDが約80〜約150μmの範囲内である請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
第1活性成分および第2活性成分を微粉化形態で含む乾燥粉末吸入組成物の製造方法であって、
(a)第1活性成分と第2活性成分の一部とを約30〜約70μmの範囲内のVMDを有する第1微粒子賦形剤と混合し、第1プリブレンドを提供する工程;
(b)第2活性成分の残部を、約80〜約150μmの範囲内のVMDを有する第2微粒子賦形剤と混合し、第2プリブレンドを提供する工程;および
(c)第1プリブレンドと第2プリブレンドを一緒に、任意にはさらに第1微粒子賦形剤または第2微粒子賦形剤を一緒に混合する工程と、
(d)任意には得られたブレンドを追加の第1微粒子賦形剤または第2微粒子賦形剤と混合する工程
を含む製造方法。
【請求項5】
第1微粒子賦形剤および第2微粒子賦形剤がラクトースである請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第1活性成分および第2活性成分が抗炎症性ステロイドおよび気管支拡張薬から選択される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
第1活性成分が抗炎症性ステロイドであり、第2活性成分が気管支拡張薬である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第1活性成分が気管支拡張薬であり、第2活性成分が抗炎症性ステロイドである請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
抗炎症性ステロイドがブデソニド、フルチカゾン、ベクロメタゾンまたは薬学的に許容され得るそれらの塩である請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
気管支拡張薬がホルモテロール、サルメテロールまたは薬学的に許容され得るそれらの塩である請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
第1活性成分がブデソニドまたは薬学的に許容され得るその塩であり、第2活性成分がホルモテロールまたは薬学的に許容され得るその塩である請求項7記載の方法。
【請求項12】
第1活性成分がフルチカゾンまたは薬学的に許容され得るその塩であり、第2活性成分がサルメテロールまたは薬学的に許容され得るその塩である請求項7記載の方法。
【請求項13】
第1活性成分がベクロメタゾンまたは薬学的に許容され得るその塩であり、第2活性成分がホルモテロールまたは薬学的に許容され得るその塩である請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つ以上の活性成分および不活性微粒子賦形剤を含む乾燥粉末吸入組成物の製造方法、ならびにその組成物の性能を調整するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息およびCOPDなどの呼吸器系疾患の治療用吸入医薬は、しばしば乾燥粉末として処方され、乾燥粉末吸入器(DPI)を用いて送達される。その医薬は、典型的には0.5〜10μmの領域である呼吸域空気動力学直径を有するように微粉化される。そのように微粉化された粒子は、凝集する傾向があり、流動性が乏しい。流動性および投薬精度を向上させるため、通常、呼吸域サイズの微細薬物粒子を規則的な混合物を形成するためにより粗い賦形剤粒子と混合され、微細薬物粒子がより粗い賦形剤粒子に付着される。この技術は、それらが患者の口や喉に入る前の薬物/賦形剤凝集体の離散を必要とし、そこで個々の大きな粒子ならびに凝集した大きなおよび小さな粒子が堆積する。粉末の有効なエアロゾル化および脱凝集には、呼吸域サイズの医薬粒子の高い微細粒子含量(FPD)が得られるように、粒子に与える力(例えば、粒子とデバイスの表面との間の力、薬物粒子と賦形剤粒子との間の力、または薬物粒子同士の間の力)を克服する必要がある。賦形剤粒子のサイズ範囲を適切に調節することによるFPDおよび含量均一性の改善が報告されている。
【0003】
薬物と賦形剤との間の相互作用は、吸入粉末が2つ以上の異なる活性成分を含む場合にさらに複雑なものとなる。そのような併用製品の開発においては、しばしば各活性成分のFPDレベルを独立して調節することが望まれる。しかしながら、1つの活性成分のFPDに影響を与える試みは、組み合わせの他の活性成分のFPDにも影響を与えるため、これが多くの場合に困難であることが分かる。
【0004】
2つ以上の活性成分を有する乾燥粉末吸入製剤の性能を制御するための試みが最近報告されている。特許文献1は、まず、各異なる活性成分を異なる賦形剤(その粒子サイズの点で異なる)とプリブレンドし、その後、得られたプリブレンドを本ブレンド工程で一緒にして最終組成物を得る方法を開示している。この方法は、1つの賦形剤への活性成分の各々の付着を可能とするが、他の賦形剤への付着はできないとされる。1つの活性物質のFPDは、その結果、各賦形剤の粒子サイズを好適に調整することにより、他の活性物質から独立して調節することができる。
【0005】
特許文献1の方法は、異なる粒子サイズ分布を有する様々なラクトースの等級が各調節工程のために必要であるという欠点に悩まされる。市販のラクトースの等級は、粒子サイズ以外の特徴においても異なる可能性があり、FPDに予期せぬ影響が生じ得る。したがって、吸入用乾燥粉末併用製剤において各活性物質のFPDレベルを独立して調整するための簡易な方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2221048号明細書
【発明の概要】
【0007】
併用の各活性成分のFPDレベルは、組成物に使用される賦形剤の等級を変更する必要なく、独立して調整できることを見出した。これは、メジアン粒子径の異なる2つの等級の賦形剤を提供し、第1活性成分とを第2活性成分の一部とを第1賦形剤と混合して第1プリブレンドを提供し、第2活性成分の残部と第2賦形剤とを混合して第2プリブレンドを提供し、そして最後に第1プリブレンドと第2プリブレンドを一緒に混合することにより達成される。第2活性成分のFPDレベルは、第1賦形剤と第2賦形剤とに分割される比率を変化させることにより単純に調整することができる。より粗い賦形剤とのプリブレンドは、より低いFPDレベルと関連付けられることが分かる。したがって、第2活性成分のFPD値は、より粗い賦形剤とプリブレンドする第2活性成分の割合を変化させることにより所望のレベルに調整することができる。その一方で、第1活性成分のFPDレベルはごくわずかしか影響を受けない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1a】サルメテロールキシナホ酸塩の微細粒子含量(FPD)において、プリブレンドパラメータを調整することにより観察された変化を示す図である(より細かいラクトースのパーセントおよびより粗い賦形剤とプリブレンドされたサルメテロールキシナホ酸塩の割合)。
図1b】インビトロでのプロピオン酸フルチカゾンのFPDにおいて、種々の予備パラメータを用いて観察された変化を示す図である(より細かいラクトースのパーセントおよびより粗い賦形剤とプリブレンドされたサルメテロールキシナホ酸塩の割合)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施態様において、本発明は、第1活性成分および第2活性成分を微粉化形態で含む乾燥粉末吸入組成物の製造方法であって、
(a)第1活性成分と第2活性成分の一部とを第1微粒子賦形剤と混合し、第1プリブレンドを提供する工程;
(b)第2活性成分の残部を第2微粒子賦形剤と混合し、第2プリブレンドを提供する工程;および
(c)第1プリブレンドと第2プリブレンドを一緒に混合する工程
を含み、
より細かい微粒子賦形剤のVMD(体積メジアン直径)が、より粗い微粒子賦形剤のVMDの90%未満となるように、第1微粒子賦形剤と第2微粒子賦形剤とがメジアン粒子径において異なる製造方法を提供する。
【0010】
用語「約」は、示した数値から5%の変動を意味する。
【0011】
本明細書において使用する場合、用語「より細かい微粒子賦形剤」は、第1微粒子賦形剤および第2微粒子賦形剤から選択される最も小さいVMD値を有する賦形剤を意味する。
【0012】
本明細書において使用する場合、用語「より粗い微粒子賦形剤」は、第1微粒子賦形剤および第2微粒子賦形剤から選択される最も大きいVMD値を有する賦形剤を意味する。
【0013】
用語「微粉化形態」は、約10μmよりも小さい粒子サイズを意味し、例えば、0.5〜10μmの範囲、特に1〜6μmの範囲である。
【0014】
粒状物質の粒子サイズ、例えば、体積メジアン直径(VMD)は、乾燥分散法およびフラウンホーファー近似を用いてレーザー回析計(例えば、マルベルン インスツルメント社(Malvern Instruments Ltd)、UK)により測定することができる。
【0015】
また別の実施態様において、本発明は、第1活性成分および第2活性成分を微粉化形態で含む乾燥粉末吸入組成物の製造方法であって、
(a)第1活性成分と第2活性成分の一部とを、約30〜約70μmの範囲のVMDを有する第1微粒子賦形剤と混合し、第1プリブレンドを提供する工程;
(b)第2活性成分の残部を、約80〜約150μmの範囲のVMDを有する第2微粒子賦形剤と混合し、第2プリブレンドを提供する工程;および
(c)第1プリブレンドと第2プリブレンドとを一緒に、任意にはさらに第1微粒子賦形剤または第2微粒子賦形剤を一緒に混合する工程と、
(d)任意には得られたブレンドを追加の第1微粒子賦形剤または第2微粒子賦形剤と混合する工程
を含む製造方法を提供する。
【0016】
第1活性成分および第2活性成分は、本明細書において異なるものであると理解され、通常、乾燥粉末で併用として吸入により投与されるのに適した任意の2つの活性成分とすることができる。特に、活性成分は、喘息およびCOPDなどの呼吸器系疾患の治療に有用である成分から選択することができる。本発明の方法は、2つよりも多くの異なる活性成分を組み込む乾燥粉末吸入組成物の製造、例えば3つの活性成分の組み合わせの製造にも使用することができる。
【0017】
本発明の1つの実施形態によれば、第1活性成分および第2活性成分は、抗炎症性ステロイドおよび気管支拡張薬から選択される。抗炎症性ステロイドの例としては、特に限定されるものではないが、ブデソニド、フルチカゾン、ベクロメタゾン、シクレソニド、フルチカゾン、モメタゾンおよび薬学的に許容され得るそれらの塩が挙げられる。気管支拡張薬の例としては、特に限定されるものではないが、ホルモテロール、サルメテロール、アクリジニウム、アルフォルモテロール、カルモテロール、フェノテロール、グリコピロニウム、インダカテロール、イプラトロピウム、オロダテロール、サルブタモール、チオトロピウム、ウメクリジニウム、ビランテロールおよび薬学的に許容され得るそれらの塩が挙げられる。
【0018】
本発明の1つの特有の実施形態によれば、第1活性成分が抗炎症性ステロイドであり、第2活性成分が気管支拡張薬である。本発明の別の特有の実施形態によれば、第1活性成分が気管支拡張薬であり、第2活性成分が抗炎症性ステロイドである。本発明のまた別の特有の実施形態によれば、第1活性成分はブデソニドまたはその薬学的に許容され得る塩であり、第2活性成分はホルモテロールまたはその薬学的に許容され得る塩である。本発明のまた別の特有の実施形態によれば、第1活性成分はフルチカゾンまたはその薬学的に許容され得る塩であり、第2活性成分はサルメテロールまたはその薬学的に許容され得る塩である。
【0019】
活性成分は、肺の標的領域に堆積することができるように、微粉化形態、すなわち約10μmよりも小さい粒径、例えば約0.5〜約10μmの範囲の粒径、特に約1〜約6μmの粒径を有する形態とすべきである。粉砕(milling)などの従来の方法は、活性成分を微粉化形態で提供するために使用することができる。
【0020】
乾燥粉末吸入組成物における活性成分の量は、例えば、使用される活性成分、乾燥粉末吸入器の種類などに依存して変えることができる。通常、乾燥粉末吸入組成物における活性成分の量は、組成物の重量に対して、0.02〜30%、典型的には0.05〜10%、より典型的には0.1〜5%の範囲内である。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、乾燥粉末吸入組成物において使用される賦形剤は、単糖または二糖、とりわけラクトースまたはマンニトール、例えばアルファラクトース一水和物である。通常、賦形剤の粒子径は、気流に乗せることができるが、肺に深く入り込まないものとすることが好ましい。しかしながら、呼吸域サイズ(<10μm)を有する粒子のごく一部は、より大きいFPD値を達成するために役立ち得る微粒子賦形剤として賦形剤中に存在することができる。組成物において使用される賦形剤、例えばラクトースなどのVMDは、好適には、例えば、約30〜約150μmの範囲である。所望のVMDを有する賦形剤は、商業的供給源から得ることができるか、あるいは既知の粒子径の賦形剤粉末と一緒にブレンドすることや、または篩分けなどの既知の方法を用いて製造することができる。
【0022】
本発明の方法においては、より細かい微粒子賦形剤のVMDが、より粗い微粒子賦形剤のVMDの90%未満となるようにそれらのメジアン粒子径が異なる2つの微粒子賦形剤が使用される。本発明の1つの実施形態によれば、より細かい微粒子賦形剤のVMDは、より粗い微粒子賦形剤の85%未満である。本発明の別の実施形態によれば、より細かい微粒子賦形剤のVMDは、約30〜約70μm、例えば約35〜65μmの範囲内であり、より粗い微粒子賦形剤のVMDは、約80〜約150μm、例えば約90〜約120μmの範囲内である。
【0023】
乾燥粉末吸入組成物におけるより細かい微粒子賦形剤のより粗い微粒子賦形剤に対する重量比は、広い範囲内で変化させることができるが、典型的には、0.2〜5の範囲、より典型的には0.25〜3、例えば0.5〜1.5である。
【0024】
好ましくは、第1微粒子賦形剤および第2微粒子賦形剤はラクトースである。
【0025】
混合プロセスの第1工程において、第1活性成分の全量と、第2活性成分の一部とを、第1微粒子賦形剤(例えばより細かい微粒子賦形剤)と混合し、第1プリブレンドを提供する。この工程において、全第1賦形剤の全てまたは一部が使用され得る。第1賦形剤の一部しかこの工程において使用されない場合、その割合は、典型的には、組成物に使用される全量の5〜80%、例えば10〜75%である。第1微粒子賦形剤の残部は、その後続くブレンド工程において使用することができる。第1プリブレンドの成分は、好適な混合装置、例えば、低せん断力混合機、または高せん断力混合機などにおいて混合される。混合速度および混合時間は、使用される混合装置に依存して広い範囲で変化し得るが、通常、均一な粉末組成物を製造するなどのために選択される。混合速度は、例えば、10〜50rpm、例えば20〜40rpmの範囲とすることができる。混合時間は、例えば、1〜60分、例えば3〜15分の範囲とすることができる。
【0026】
第2プリブレンドは、第2活性成分の残部を第2微粒子賦形剤(例えば、より粗い微粒子賦形剤)と混合し、第2プリブレンドを提供するために製造される。この工程において、全第2賦形剤の全てまたは一部のみが使用され得る。第2賦形剤の一部しかこの工程において使用されない場合、その割合は、典型的には、組成物に使用される全量の1〜50%、例えば1〜30%である。第2微粒子賦形剤の残りは、その後、最終混合工程において使用され得る。上記と同じ混合条件を使用することができる。
【0027】
次に、第1プリブレンドおよび第2プリブレンドは、好適には、篩過され、その後一緒に混合される。第1プリブレンドの製造において第1賦形剤の一部のみが使用された場合、第1賦形剤の残り(例えば、より細かい微粒子賦形剤の残り)が、この工程において第1プリブレンドおよび第2プリブレンドと混合され、第1活性成分および第2活性成分を含有するブレンドが得られる。そのブレンドは、その後好ましくは篩過される。上記と同じ混合条件を使用することができる。
【0028】
第2プリブレンドの製造において第2賦形剤の一部のみが使用された場合、第2賦形剤の残り(例えば、より粗い微粒子賦形剤の残り)は、最終乾燥粉末吸入組成物を得るなどのために、ここで第1活性成分および第2活性成分を含有する先に得られたブレンドと混合される。上記と同じ混合条件を使用することができる。最終組成物は、適切な乾燥粉末吸入器に充填することができる。
【0029】
所望の場合、さらなる賦形剤または活性成分を、上記混合工程を通してまたはさらなる混合工程により組成物に加えることができる。
【0030】
活性成分の組み合わせを組み込んだ乾燥粉末吸入組成物の開発においては、しばしば1つの活性成分の微細粒子含量(FPD)を他の活性成分と独立して調整する要求が生じる。本発明の方法によれば、組成物の第2活性成分のFPDを、第1微粒子賦形剤と混合させる第2活性成分の割合を単に変化させることにより独立して調整することができる。活性成分とより粗い賦形剤との予備混合が、より低いFPD値と関連付けられることが見出された。したがって、第1微粒子賦形剤がより細かい微粒子賦形剤である場合、第2活性成分のFPDは、第1微粒子賦形剤と混合される第2活性成分の割合を増加させることにより上昇させることができる。反対に、第2活性成分のFPDは、第1微粒子賦形剤と混合される第2活性成分の割合を減少させることにより減少させることができる。
【0031】
本発明は、以下の例によりさらに説明される。
【実施例】
【0032】
例1
表1にしたがって吸入用乾燥粉末製剤を製造した。
【0033】
【表1】
【0034】
第1プリブレンドは、0.855gの微粉化ホルモテロールフマル酸塩二水和物、60.9gの微粉化ブデソニドおよび287gのラクトースAをスウィング混合型粉末混合器において混合し、その後混合物を篩過し、残りのラクトースA(575g)とスウィング混合型粉末混合器において混合することにより製造した。第2プリブレンドは、0.855gの微粉化ホルモテロールフマル酸塩二水和物および192gのラクトースBとをスウィング混合型粉末混合器において混合し、その後混合物を篩過し、それを192gのラクトースBとスウィング混合型粉末混合器において混合することにより製造した。2つのプリブレンドを篩過により合せ、その後、残りのラクトースB(191g)と共にスウィング混合型粉末混合器で混合し、最終製剤を得た。各工程の混合時間は、35rpmで5分であった。
【0035】
例2(参考例)
全てのホルモテロールフマル酸塩二水和物を第2プリブレンドに(ラクトースBと共に)組み込んだ以外は、例1に従い吸入用乾燥粉末製剤を製造した。
【0036】
例3(参考例)
全てのホルモテロールフマル酸塩二水和物を第1プリブレンドに(ラクトースAと共に)組み込んだ以外は、例1に従い吸入用乾燥粉末製剤を製造した。
【0037】
例4
例1、2および3の製剤をEasyhaler(登録商標)粉末吸入装置に充填し、活性成分(ホルモテロールフマル酸塩二水和物およびブデソニド)のFPD値をインビトロで当該技術分野で周知の方法を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
ホルモテロールフマル酸塩二水和物のFPDは、ホルモテロールフマル酸塩二水和物の一部をラクトースB(より粗いラクトース)と混合することにより調整することができ、一方ブデソニドのFPDは、ほとんど影響を受けないことが分かる。FPDの変化は、ラクトースB(より粗いラクトース)と混合されるホルモテロールの割合に依存する。
【0040】
例5
表3に従って吸入用乾燥粉末製剤を製造した。
【0041】
【表3】
【0042】
第1プリブレンドは、0.95gの微粉化サルメテロールキシナホ酸塩、13.0gの微粉化プロピオン酸フルチカゾンおよび107.3gのラクトースAをスウィング混合型粉末混合器において混合することにより製造した。第2プリブレンドは、0.95gの微粉化サルメテロールキシナホ酸塩および7.3gのラクトースBとをスウィング混合型粉末混合器において混合することにより製造した。2つのプリブレンドを篩過により合せ、その後、38.2gのラクトースと共にスウィング混合型粉末混合器で混合した。得られた混合物を篩過し、最終的に332.3gのラクトースBとスウィング混合型粉末混合器において混合し、最終製剤を得た。各工程の混合時間は、35rpmで5分であった。
【0043】
例6
第2プリブレンドのサルメテロール/ラクトース比率の微細粒子含量(FPD)に対する作用
第2プリブレンドにおけるサルメテロール/ラクトースBの比率の変化がどのように最終的なサルメテロール/フルチカゾン製剤の微細粒子含量(FPD)に影響を与えるのかを調べた。一連のサルメテロール/フルチカゾン製剤を、第2プリブレンドに使用するサルメテロールの割合を変化させ、かつ製剤に使用するラクトースAの割合(全ラクトースの)を変化させた以外は、先の実施例と同様に製造した。製剤をEasyhaler(登録商標)粉末吸入装置に充填し、活性成分のFPD値をインビトロで当該技術分野で周知の方法を用いて測定した。結果を、活性成分のFPDの変数の影響を証明する数理モデルにフィッティングした。サルメテロールキシナホ酸塩およびプロピオン酸フルチカゾンの観察されたFPDの変化は、図1aおよび図1bにそれぞれ示す。図において、第1プリブレンドにおいてラクトースA(より細かいラクトース)と混合されたサルメテロールキシナホ酸塩(SX)の割合(全体の%)をx軸に示す。組成物に使用したラクトースAの割合(全ラクトースの%)をy軸に示す。得られたサルメテロールキシナホ酸塩のFPD値を図1aに約4μg/用量から約10μg/用量の範囲の帯域として示す。得られたプロピオン酸フルチカゾンのFPD値を図1bに同様に示す。
【0044】
図より、組成物の各活性成分のFPD値(四角中に示す)は、組成物におけるラクトースA(より細かいラクトース)の割合を増加させることにより上昇させることができることが分かる。例えば、サルメテロールのFPDは、ラクトースA(より細かいラクトース)の割合を0%〜30%まで増加させることにより約4μg/用量から約10μg/用量まで増加できる(図1a)。同時に、フルチカゾンのFPDは、約60μg/用量〜約100μg/用量まで増加する(図1b)。
【0045】
一方、組成物のサルメテロールの一部をラクトースB(より粗いラクトース)と混合させる場合、サルメテロールのFPD値は減少する。その減少は、ラクトースB(より粗いラクトース)と混合するサルメテロールの割合に依存する。例えば、ラクトースAのラクトースBに対する比率は、組成物において10:90(すなわち、ラクトースAの割合が10%)に固定される場合、サルメテロールのFPDは、ラクトースB(より粗いラクトース)と混合するサルメテロールの一部を0%〜100%まで増加させることにより、約7.2μg/用量から約5.5μg/用量まで直線的に減少させ得る。これは、サルメテロールのFPDの24%の減少に相当する。重要なことには、同時にフルチカゾンのFPD値がたった5%(約74μg/用量から約70μg/用量まで)しか下がらないことである。したがって、組み合わせの第2活性成分の一部を、第1ラクトース等級とは異なる粒子径の第2ラクトース等級と混合することにより、第2活性成分のFPDを調整すると同時に組成物の第1活性成分のFPDにはごくわずかしか影響しない方法が提供される。
図1a
図1b