(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353051
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】滑動式縫合糸把持器
(51)【国際特許分類】
A61B 17/04 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
A61B17/04
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-537959(P2016-537959)
(86)(22)【出願日】2014年12月9日
(65)【公表番号】特表2016-539726(P2016-539726A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】US2014069286
(87)【国際公開番号】WO2015089034
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2016年8月9日
(31)【優先権主張番号】61/913,906
(32)【優先日】2013年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515257519
【氏名又は名称】テレフレックス メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】バガオイサン セルソ
(72)【発明者】
【氏名】パイ スレッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラバーベラ ブラッド
【審査官】
中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0218175(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0191260(US,A1)
【文献】
特開2007−275386(JP,A)
【文献】
特開平09−135841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合糸の一部分を固定すると共に保持するための縫合糸把持器であって、前記縫合糸把持器は、
内部ルーメンを備えた細長い管状本体を有し、前記細長い管状本体は、近位端部及び遠位端部を有し、
前記細長い管状要素の前記近位端部に取り付けられたハンドルを有し、
前記細長い管状本体の前記ルーメン内に滑動可能に設けられた内側部材要素を有し、前記内側部材要素は、前記ハンドルから滑動可能に伸長したり前記ハンドル内に引っ込んだりするよう構成された近位端部を有し、
前記ハンドルの近位端部から延びる押しボタンを有し、前記押しボタンは、前記内側部材要素を遠位側の方向又は近位側の方向に作動させ又は動かすことができるよう前記内側部材要素に結合され、
前記押しボタン内に設けられた近位ばねを更に有し、前記近位ばねは、前記内側部材要素を遠位側に付勢するよう前記内側部材要素の前記近位端部に当接し、
前記ハンドル内に設けられた遠位ばねであって、この遠位ばねは、前記近位ばねが圧縮されていないとき前記押しボタンを前記ハンドルの近位端部に向けて付勢すると共に前記内側部材要素を前記近位側の方向に付勢するように構成された遠位ばねを更に有し、
前記細長い管状本体の前記遠位端部は、組織を横切り又は穿刺することができる鋭利な先端部を含み、
前記内側部材要素の遠位端部は、少なくとも1つの把持要素を含む、縫合糸把持器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの把持要素は、少なくとも2つの拡張可能なアームを有する、請求項1記載の縫合糸把持器。
【請求項3】
前記少なくとも2つの拡張可能なアームは、前記少なくとも1つの把持要素が前記細長い管状本体の前記遠位端部を越えて伸長されているときに拡張する、請求項2記載の縫合糸把持器。
【請求項4】
前記押しボタンは、戻り止め端部を有し、前記遠位ばねは、前記押しボタンが解除位置にあるとき、前記戻り止め端部を付勢して該戻り止め端部が前記ハンドルの内側近位壁に当たって休止する、請求項1記載の縫合糸把持器。
【請求項5】
前記押しボタンの前記戻り止め端部は、前記押しボタンが押されたときに前記遠位ばねを圧縮し、この遠位ばねの圧縮が、前記内側部材要素を前記遠位側の方向に作動させる力の伝達を可能にする、請求項4記載の縫合糸把持器。
【請求項6】
前記少なくとも1つの把持要素は、少なくとも2つの拡張可能なアームを有し、
前記少なくとも2つの拡張可能なアームは、前記少なくとも1つの把持要素が細長い管状本体の前記遠位端部を越えて伸長されているときに拡張する、請求項5記載の縫合糸把持器。
【請求項7】
前記押しボタンを付勢する中間ばねを更に有する、請求項1記載の縫合糸把持器。
【請求項8】
前記押しボタンの遠位端部は、前記押しボタンが押されたときに前記中間ばねを圧縮し、前記中間ばねが圧縮されると、前記内側部材要素を前記遠位側の方向に作動させる力が伝達される、請求項7記載の縫合糸把持器。
【請求項9】
前記ハンドルの遠位端部と前記細長い管状本体のフランジ付き近位端部との間に設けられた遠位ばねを更に有し、
前記押しボタンは、前記フランジ付き近位端部に接触する遠位端部を有する、請求項8記載の縫合糸把持器。
【請求項10】
前記中間ばねの圧縮後に前記押しボタンを所定の箇所を越えて前記遠位側の方向に作動させると、前記押しボタンの前記遠位端部は、前記フランジ付き近位端部を介して前記遠位ばねを圧縮し、前記フランジ付き近位端部は、力を伝達して前記管状本体を前記内側部材要素に対して遠位側に作動させて前記少なくとも1つの把持要素を作動させて閉じる、請求項9記載の縫合糸把持器。
【請求項11】
前記少なくとも1つの把持要素は、少なくとも2つの拡張可能なアームを有し、
前記少なくとも2つの拡張可能なアームは、前記少なくとも1つの把持要素が前記細長い管状本体の遠位端部を越えて伸長されているときに拡張する、請求項10記載の縫合糸把持器。
【請求項12】
前記内側部材要素の前記近位端部は、側柱を有し、
前記ハンドルは、停止要素を有し、前記停止要素は、前記フランジ付き近位端部との当接により前記近位側の方向への前記細長い管状本体の移動を制限し、前記停止要素は、前記側柱との当接により前記遠位側の方向への前記内側部材要素の移動を制限する、請求項10記載の縫合糸把持器。
【請求項13】
前記ハンドルは、内側近位壁を有し、前記内側近位壁は、前記側柱との当接により前記近位側の方向への前記内側部材要素の移動を制限する、請求項10記載の縫合糸把持器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容、即ち本発明は、組織閉鎖器具、特に腹腔内縫合手技の実施中又は外科用トロカール又は他の穿刺器具によって生じた穿刺創の縫合中、縫合糸の一部分を固定すると共に保持するための縫合糸把持器具に関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2013年12月9日に出願された米国特許仮出願第61/913,906号の優先権主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
手術を体内臓器、組織、靱帯及び骨に対して実施する低侵襲法は、極めて小型の器械、例えばカテーテル、腹腔鏡等を用いている。器械は、例えば直径が5mm〜18mmオーダーの極めて小さな切開創を用いて導入され、トロカール又は他の導入器具がかかる切開創中に配置される。トロカールは、例えば3mm〜30mmの直径を有する場合があり、小型のトロカールは、開口を実質的に変わらない状態のままにする。大型トロカールは、開口を拡大する場合がある。トロカールは、外科的処置中に用いられる種々の外科用器械、観察器具及び他の器械を導入したり取り出したりするための信頼性の高い且つ固定された開口をもたらす。
【0004】
切開創及びトロカール開口は、伝統的な外科的基準によれば極めて小さいが、切開創及びトロカール開口は、外科的処置の完了後に閉鎖を依然として必要とする。外科的閉鎖により、術後感染の恐れ、術後ヘルニア形成(例えば、腹部手術の場合)の恐れ、その後の出血の恐れ又は他の副作用の恐れが減少する。閉鎖は、手作業による縫合か閉鎖を完了するために用いられる縫合器械かのいずれかにより達成できる。いずれの場合においても、縫合は、例えば縫合糸を操作するためだけでなく手技を視覚化するためにも小さな開口サイズでは困難になる。閉鎖は、上に位置する皮膚の閉鎖とは別個の皮下組織、例えば筋膜層を縫合し、そして皮膚にあけた極めて小さな開口を通ってこれを行う一方で、かかる手技中に体内臓器への外傷又は損傷の恐れを回避する必要性によっても一層困難になる。
【0005】
例えば腹壁にあけた開口を閉鎖するための従来の閉鎖技術では、元のトロカール切開創から距離を置いたところで縫合糸を腹壁組織中に通す。次に、1本又は2本以上の縫合糸を結紮して皮下層を閉鎖し、次に皮膚層の適当な閉鎖を行う。確実な閉鎖を形成する上で、元の切開創としての開口からの縫合糸所在場所の距離は、適当な量の腹壁組織を固定するためには重要であることが注目された。この距離が小さすぎる場合、閉鎖は、後の合併症を生じさせないで開口を確実に閉鎖するには十分ではない場合がある。
【0006】
組織閉鎖器具、例えば腹腔鏡ポート閉鎖器具をトロカール器具の取り外し後に開口中に導入してトロカール開口の縫合を容易にする場合がある。種々の方法及び種々の構造体が開口を閉鎖するのに役立つ場合があるが、閉鎖を完了する上で相当多くのステップを必要とする場合がある。器具の中には、開口を縫合して縫合糸を結紮する際に相当多量の用手配慮並びに閉鎖を達成するための厳密な視覚化を必要とするものがある。加うるに、器具の中には、閉鎖を達成するために相当多数のコンポーネント又は専用器具を有するものがあり、或いは、通常の手術環境下であっても一貫し且つ信頼性の高い結果をもたらさないものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、外科用縫合器具を含む組織閉鎖器具並びに腹腔内縫合及び外科用トロカール及び他の穿刺器具によって生じた穿刺創の腹腔内縫合のために使用できるかかる器具に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
滑動式縫合糸把持器具を用いると、体腔内に設けられた縫合糸の一部分を当初捕捉し、次に体腔からの器具の引っ込み中に器具先端部のところ又は器具先端部内で縫合糸の自由運動又は滑動を容易にすることによって、組織支持構造を横切って縫合糸を回収することができる。
【0009】
滑動式縫合糸把持器は、針と、挿入及び回収手技を案内するために用いられるテンプレートから縫合糸を回収するための手段を組み合わせることができる。例えば、滑動式縫合糸把持器をテンプレート本体上の出口箇所からテンプレートの中心線に対して横方向に位置するテンプレートの近位部分上の挿入箇所中に挿入して把持器を、軟組織を通ってテンプレートの近位部分によって保持された縫合糸部分に向かって案内し、それにより縫合糸部分の捕捉及び回収を行うことができる。次に、この回収操作をテンプレートの反対側で繰り返し実施して例えば組織支持構造に設けられた開口の反対側で縫合糸の他端部の回収を容易にするのが良い。
【0010】
縫合糸把持器は、側方に拡張して縫合糸を囲むことができる少なくとも1つの要素を有するのが良く、かかる少なくとも1つの要素は、縫合糸を捕捉した後に縫合糸が自由に滑って動くことができるよう構成されている。
【0011】
把持器は、近位ハンドルに設けられたキー止め特徴部を含むのが良く、このキー止め特徴部は、テンプレートの近位端部に設けられたキー溝と相互作用する。キーとキー溝は、側方拡張要素がキーがキー溝内に位置したときにテンプレート内に保持されるべき縫合糸に対して全体として直交するよう構成されるのが良い。キー/キー溝特徴部は、停止部として作用して針の穿刺距離を制限するのが良い。
【0012】
縫合糸把持器は、自動的に動作状態になって縫合糸標的に接近するときに拡張し、リトリーバを引っ込める際に非動作状態になり又は閉じ、それにより引っ込み操作中に縫合糸を捕捉するよう構成されているのが良い。
【0013】
例示の一実施形態では、縫合糸把持器が内部ルーメンを備えた細長い管状本体を有し、細長い管状本体は、近位端部及び遠位端部を有する。縫合糸把持器は、細長い管状要素の近位端部に取り付けられたハンドルと、細長い管状本体のルーメン内に滑動可能に設けられた内側部材要素とを更に有し、内側部材要素は、ハンドルから滑動可能に伸長したりハンドル内に引っ込んだりするよう構成された近位端部を有し、縫合糸把持器は、ハンドルの近位端部から延びる押しボタンを更に有し、押しボタンは、内側部材要素を遠位側の方向又は近位側の方向に作動させ又は動かすことができるよう内側部材要素に結合されている。細長い管状本体の遠位端部は、組織を横切り又は穿刺することができる鋭利な先端部を含む。内側部材要素の遠位端部は、少なくとも1つの把持要素を含む。
【0014】
一観点では、少なくとも1つの把持要素は、少なくとも2つの拡張可能なアームを有する。
【0015】
一観点では、少なくとも2つの拡張可能なアームは、少なくとも1つの把持要素が細長い管状本体の遠位端部を越えて伸長されているときに拡張する。
【0016】
一観点では、縫合糸把持器は、押しボタン内に設けられた近位ばねを更に有し、近位ばねは、内側部材要素を遠位側に付勢するよう内側部材要素の近位端部に当接する。
【0017】
一観点では、縫合糸把持器は、ハンドル内に設けられていて押しボタン及び内側部材要素を近位側の方向に付勢する遠位ばねを更に有する。
【0018】
一観点では、押しボタンは、戻り止め端部を有し、遠位ばねは、押しボタンが解除位置にあるとき、戻り止め端部を付勢してこの戻り止め端部がハンドルの内側近位壁に当たって休止する。
【0019】
一観点では、押しボタンの戻り止め端部は、押しボタンが押されたときに遠位ばねを圧縮し、遠位ばねが圧縮されると、内側部材要素を遠位側の方向に作動させる力が伝達される。
【0020】
一観点では、少なくとも1つの把持要素は、少なくとも2つの拡張可能なアームを有し、少なくとも2つの拡張可能なアームは、少なくとも1つの把持要素が細長い管状本体の遠位端部を越えて伸長されているときに拡張する。
【0021】
一観点では、縫合糸把持器は、押しボタン及び内側部材要素を近位側の方向に付勢する中間ばねを更に有する。
【0022】
一観点では、押しボタンの遠位端部は、押しボタンが押されたときに中間ばねを圧縮し、中間ばねが圧縮されると、内側部材要素を遠位側の方向に作動させる力が伝達される。
【0023】
一観点では、縫合糸把持器は、ハンドルの遠位端部と細長い管状本体のフランジ付き近位端部との間に設けられた遠位ばねを更に有し、押しボタンは、フランジ付き近位端部に接触する遠位端部を有する。
【0024】
一観点では、中間ばねの圧縮後に押しボタンを所定の箇所を越えて遠位側の方向に作動させると、押しボタンの遠位端部は、フランジ付き近位端部を介して遠位ばねを圧縮し、フランジ付き近位端部は、力を伝達して管状本体を内側部材要素に対して遠位側に作動させて少なくとも1つの把持要素を作動させて閉じる。
【0025】
一観点では、少なくとも1つの把持要素は、少なくとも2つの拡張可能なアームを有し、少なくとも2つの拡張可能なアームは、少なくとも1つの把持要素が細長い管状本体の遠位端部を越えて伸長されているときに拡張する。
【0026】
一観点では、内側部材要素の近位端部は、側柱を有し、ハンドルは、停止要素を有し、停止要素は、フランジ付き近位端部との当接により近位側の方向への細長い管状本体の移動を制限し、停止要素は、側柱との当接により遠位側の方向への内側部材要素の移動を制限する。
【0027】
一観点では、ハンドルは、内側近位壁を有し、内側近位壁は、側柱との当接により近位側の方向への内側部材要素の移動を制限する。
【0028】
本明細書に組み込まれてその一部をなす添付の図面は、本発明と一致した種々の実施形態を示しており、詳細な説明と一緒になって、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の或る特定の観点による滑動式縫合糸把持器の断面側面図である。
【
図2】本発明の或る特定の観点に従って或る特定の使用状態にある
図1の滑動式縫合糸把持器を示す断面側面図である。
【
図3】本発明の或る特定の観点に従って別の使用状態にある
図1の滑動式縫合糸把持器を示す断面側面図である。
【
図4】本発明の或る特定の実施形態に従って縫合糸の捕捉部分を含む別の使用状態にある
図1の滑動式縫合糸把持器を示す断面側面図である。
【
図5】本発明の他の観点による滑動式縫合糸把持器の断面側面図である。
【
図6】本発明の或る特定の観点に従って或る特定の使用状態にある
図5の滑動式縫合糸把持器を示す断面側面図である。
【
図7】本発明の或る特定の観点による別の使用状態にある
図5の滑動式縫合糸把持器を示す断面側面図である。
【
図8】本発明の或る特定の実施形態に従って縫合糸の捕捉部分を含む別の使用状態にある
図5の滑動式縫合糸把持器を示す断面側面図である。
【
図9】本発明の他の観点による滑動式縫合糸把持器の側面図である。
【
図10】
図9の滑動式縫合糸把持器のA‐A線矢視正面断面図である。
【
図11】或る特定の使用状態にある本発明の或る特定の観点による滑動式縫合糸把持器の正面図である。
【
図12】別の使用状態にある本発明の或る特定の観点による滑動式縫合糸把持器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、図面を参照して本発明を説明し、図全体にわたって、同一の参照符号は、同一の部分を示している。
【0031】
滑動式縫合糸把持器具の種々の観点は、互いに結合され、取り付けられ、しかも/或いは接合されるコンポーネントを説明することによって例示できる。本明細書で用いられる「結合され」、「取り付けられ」、及び/又は「接合され」という用語は、2つのコンポーネント相互間の直接的な連結か該当する場合には介在する又は中間のコンポーネントによる相互の間接的な連結かのいずれかを示すために用いられている。これとは対照的に、コンポーネントが別のコンポーネントに「直接結合され」、「直接取り付けられ」、しかも/或いは「直接接合され」と記載されている場合、中間要素が存在することはない。
【0032】
相対的な用語、例えば「下方」又は「底部」及び「上方」又は「頂部」は、本明細書では、図示の1つの要素と別の要素の関係を説明するために用いられる場合がある。理解されるように、相対的な用語は、図示の向きに加えて、滑動式縫合糸把持器具の互いに異なる向きを含むことを意図している。一例を挙げると、図示の滑動式縫合糸把持器具全体を逆さまにした場合、他の要素の「底部」側に位置すると説明されている要素は、かかる他の要素の「頂部」側に差し向けられる。したがって、「底部」という用語は、器械の特定の向きに応じて「底部」と「頂部」の両方の向きを含むことができる。
【0033】
図1〜
図4に示されているように、滑動式縫合糸把持器具又は把持器100は、近位端部112及び遠位端部114を備えた細長い管状本体110で構成されている。遠位端部114は、組織を横切り又は穿刺することができる鋭利な先端部116を提供するよう斜切されるのが良い。細長い管状本体110のルーメン内には、近位端部122及び遠位端部124を備えた内側部材要素120が位置し、この内側部材要素は、細長い管状本体110の長さに沿って自由に動くことができる。細長い管状本体110は、ハンドル又は取っ手130に取り付けられるのが良く、内側部材要素120の近位端部122は、次に摺動可能にハンドル130から滑動可能に伸長したりハンドル130内に引っ込んだりすることができるようになっている。内側部材要素120の遠位端部124は、少なくとも1つの把持要素140を有するのが良く、かかる少なくとも1つの把持要素140は、把持要素が細長い管状本体110の遠位側に伸長させられたときに細長い管状本体110の直径よりも大きく拡張する少なくとも1つの把持要素140を有するのが良い。内側部材要素120の近位端部122は、押しボタン160内に位置する近位ばね150に当たっている。押しボタン160は、ハンドル130の近位端部内に位置し、この押しボタンを遠位側の方向に押すことによって作動させることができ、それにより内側部材要素120を遠位側に前進させて把持要素140が拡張することができるようにする。ハンドル130内に且つ押しボタン160の遠位側に遠位ばね170が位置し、この遠位ばねは、押しボタン160を近位側の方向にハンドル130の近位端部に押し付けると共に更に内側部材要素120を近位側の方向に付勢する。
【0034】
図2に示されているように、使用の際、把持器具100を組織支持構造中に挿入するのが良い。このようにする際、内側部材要素120を組織の抵抗に起因して近位側に押すのが良く、それにより伝統的なベレス(Veress)針と非常に良く似た仕方で近位ばね150を圧縮する。このように、把持要素140は、少なくとも2つの拡張可能なアーム142(
図3参照)を備えるのが良く、かかる少なくとも2つの拡張可能なアームは、拡張把持位置にはないとき、球状の丸形遠位端部を形成する。かくして、把持要素140は、
図1に示されているように鋭利な頂部又は先端部116を越えて延びる丸形遠位端部を提供することによって鋭利な先端部116に起因した偶発的なつつきに対して或る程度の安全性を提供することができる。内側部材120を近位側に押すのが良く、ついには、把持要素140は、もはや遠位先端部116を越えて伸長することがなくなり、それにより遠位先端部116が組織支持構造を穿刺することができる。
【0035】
器具の遠位先端部116が組織を出て例えば体腔内に入ると、把持要素140に対する圧力が除かれ、内側部材要素120は、押しボタン160の戻り止め端部162が
図1に示されているようにハンドル130の近位壁132に当たって休止するその休止状態に戻る。かくして、器具100を捕捉されるべき縫合糸180の一部分に近接して位置決めすることができる。
【0036】
図3に示されているように、このようにして器具100が縫合糸180の近くに位置決めされた状態で、次に、押しボタン160を押して押しボタン160の戻り止め端部162で遠位ばね170を圧縮するのが良い。遠位ばね170の圧縮により、力が内側部材要素120に伝達され、それにより内側部材要素120が遠位側の方向に作動される。把持要素140の拡張可能なアーム142は、或る特定の形状を維持するよう形成された適当な材料で構成されることによって作動されるばねであるのが良く、かかる拡張可能なアームは、細長い管状本体110の遠位端部114から解除されると、拡張することができる。
図4に示されているように、押しボタン160の解除時、遠位ばね170は、押しボタン160を近位側に駆動し、ついには、押しボタン160の戻り止め端部162は、ハンドル130の近位壁132に着座するようになる。遠位ばね170が押しボタン160を近位側に駆動しているとき、内側部材120を近位側の方向に作動させるのが良く、それにより拡張可能なアーム142は、縫合糸の部分180の周りで閉じる。この時点で、少なくとも1つの把持要素140は、器具100の遠位先端部116内の又はその近くに位置するその近位側の縫合糸の部分180を捕捉して固定している。把持要素140は、縫合糸部分180が体腔からの器具100の引っ込み時、把持要素140を通って自由に滑動することができる仕方で縫合糸部分180を固定するよう構成されている。
【0037】
図5〜
図8は、本発明の更に別の観点による滑動式縫合糸把持器具200を示している。器具200を用いると、体腔内に設けられた縫合糸の一部分を当初捕捉し、次に体腔からの器具の引っ込み中に器具先端部のところ又は器具先端部内で縫合糸の自由運動又は滑動を容易にすることによって、組織支持構造を横切って縫合糸を回収することができる。滑動式把持器具200は、縫合糸の近くに位置する手段を採用し、把持要素140を縫合糸の周りに拡張させ又は開き、次に、押しボタンシステムの連続動作の一部として縫合糸を捕捉して保持する。
【0038】
図5〜
図8に示されているように、把持器具200は、近位端部212及び遠位端部214を備えた細長い管状本体210、近位端部222、遠位端部224を有すると共にその遠位端部224のところに把持要素240を備えた内側部材要素220、ハンドル又は取っ手230、近位ばね250、中間ばね255、押しボタン260、及び遠位ばね270を有するのが良い。細長い管状本体210は、組織を横切り又は穿刺することができる鋭利な先端部216を提供するよう斜切された遠位端部214を有する。細長い管状本体210の近位端部212は、ハンドル230の遠位部分232内に滑動可能に設けられるようフランジ付きであると共に/構成されるのが良い。細長い管状本体210は、ハンドル230の遠位部分232内で所定の距離にわたって自由に動くことができ、この細長い管状本体は、近位端部212とハンドル230内に設けられた特徴部、例えば停止要素234の相互作用によって制限されるストロークを有する。
【0039】
細長い管状本体210は、遠位ばね270が細長い管状本体210の近位端部222とハンドル230との配置されることによって近位側に付勢されるのが良い。細長い管状本体210のルーメン内には、近位端部222及び遠位端部224を備えた内側部材要素220が滑動可能に位置しており、内側部材要素220は、細長い管状本体210の長手方向長さに沿って自由に動くことができる。内側部材要素220の近位端部222も又、フランジ付きであるのが良く、かかる近位端部は、フランジ付き端部222の遠位端部に位置する側柱又はサイドポスト223を有するのが良い。内側部材要素220のフランジ付き近位端部222は、内側部材要素220を押しボタン260の内側コア内に維持すると共に固定する。
【0040】
内側部材要素の遠位端部は、例えば1つ又は2つ以上の拡張可能なアーム242から成るのが良い少なくとも1つの把持要素240を有する。把持要素240の拡張可能なアーム242は、或る特定の形状を維持するよう形成された適当な材料で構成されることによって作動されるばねであるのが良く、かかる拡張可能なアームは、細長い管状本体210の遠位端部214からの解除時に拡張するよう構成されているのが良い。拡張可能なアーム242は、把持要素240を管状本体210の遠位端部214の遠位側に伸長させたときに細長い管状本体210の直径よりも大きく拡張するのが良い。管状本体210の遠位端部214が本発明の観点に従って斜切されるのが良いので、把持要素240の各アーム242は、各アーム242が斜切端部214から延びる互いに異なる距離に起因して一方のアームが半径方向にそれ以上拡張するのを阻止するよう異なる曲率半径を有するのが良い。例えば、アーム242が共通のヒンジ箇所を共有しない形態では、左側アーム及び右側アームは、第1のアームが第1のアームについて第2のアームとは異なる斜切端部214により形成される有効ヒンジ箇所に起因して第2のアームの片持ち長さよりも長い片持ち長さを有することによって、互いに異なる距離半径方向に互いに遠ざかることになる。例えば、曲率半径が異なることにより、両方のアーム242は、器具200の長手方向中心線に関してほぼ対称に開くことができる。
【0041】
近位ばね250は、内側部材要素220を押しボタン260の遠位端部に向かって付勢する手段として内側要素のフランジ付き端部222の近位側に且つ押しボタン260の内側コア内に位置する。近位ばね250は、既知の一定のばね定数の単一のばね、長さに沿って可変ばね定数を備えた単一のばね、又は様々なばね定数を有する多数のばねから成るのが良い。これら多数のばねは、好ましくは、同軸又は平行ではなく、縦一列に並んで配置される。内側部材要素220の側柱223は、ハンドル230における近位側の方向と遠位側の両方向への内側部材の長手方向運動又はストロークを制限する。例えば、側柱223は、内側部材ストロークの一方の限界端のところでハンドル230の近位端部236に当接し、また、細長い管状本体210の近位端部212に着座するよう形成された同一の停止要素234に当接するよう形成されているのが良い。本発明の他の観点によれば、停止要素234は、細長い管状部材210及び内側部材要素220の別々のストロークを制限するために多数の戻り止めの状態に分離されても良い。
【0042】
中間ばね255は、押しボタン260の伸長遠位端部262に着座して押しボタン260を近位側の方向に付勢するよう構成されているのが良い。押しボタン260は、かくして、中間ばね255を伸長させると、ハンドル230の近位壁236に設けられた押しボタン戻り止め238に当たって位置決め可能である。中間ばね255の遠位端部256は、停止部234又は細長い管状本体210及び遠位ばね270から隔離されたハンドル230の任意適当な部分に設けられた内側フランジ237に着座するのが良い。
【0043】
押しボタン260は、ハンドル230の近位端部内に位置し、この押しボタンは、遠位側の方向にこれを押すことによって作動されて内側部材要素220を遠位側に前進させ、それにより把持要素240が拡張することができる。押しボタン260は、内側部材要素220の側柱223の非束縛長手方向運動を可能にするよう設計された側開口又はスロットを有するのが良い。
【0044】
使用にあたり、
図5〜
図8に示されているように、先ず最初に、器具200を組織支持構造に向かって所定の方向に案内するために器具200をテンプレート中に導入するのが良い。
図5に示されているように、器具200を組織支持構造中に挿入すると、内側部材要素220を2つのアーム242が互いに向かってクランプ方式で圧縮されたときに形成される把持要素240の球状丸形端部に加わる組織の抵抗に起因して近位側に押すのが良い。内側部材要素220を近位側に押しているときに、近位ばね250を圧縮すると共に/或いは中間ばね255を引き伸ばすのが良く、その結果、内側部材要素220は、細長い管状本体210中に引っ込んで鋭利な斜切先端部216を露出させ、それにより伝統的なベレス針と非常に良く似た仕方で組織支持構造を穿刺する。次に器具200の遠位先端部216が組織支持構造から出て体腔中に入っているときに、抵抗が除かれ、内側部材要素220がその休止状態に戻る。穿刺深さは、ハンドル又は取っ手230とテンプレートの近位部分の衝突によって制限されるのが良く、それにより器具200の遠位端部が捕捉される縫合糸の一部分280の上方に且つこれに密接して位置決めされる。次に、押しボタン260を作動させて近位ばね250、中間ばね255及び最後に遠位ばね270を順次圧縮する。
【0045】
図6及び
図7に示されているように、押しボタン260を遠位側の方向に作動すると、最初に、内側部材要素220が遠位側に動き、ついには側柱223がハンドル230に設けられた停止部234に当接するようになる。この時点で、把持要素240の拡張可能なアーム242は、管状本体210の遠位端部214を越えて伸長するのが良く、その結果、アーム242が縫合糸部分280に向かって伸長されてこの周りで半径方向に開かれる。側柱223が停止部234に当接した状態では、内側部材要素220は、ハンドル230に対して遠位側の方向へのそれ以上の長手方向運動が阻止される。
【0046】
これとは異なり、
図8に示されているように、押しボタン260の連続作動により、押しボタン260の遠位端部262は、細長い管状本体210のフランジ付き近位端部212に当接するようになる。押しボタン260の遠位端部262が細長い管状本体210を遠位側に押しているときに近位ばね250、中間ばね255、及び遠位ばね270が全て圧縮される。管状部材210の遠位端部214が把持要素240の拡張状態のアーム242上でこれに沿って滑動しているとき、拡張状態のアーム242は、縫合糸を滑動可能に捕捉するために縫合糸部分280の周りで閉じるようになる。押しボタン260は、外科医によって手作業で保持されるのが良く、或いは、変形例として、縫合糸が把持要素240内に滑動包囲状態で固定されている状態で把持要素240の固定状態を閉じ位置で維持するために以下に詳細に説明するロック特徴部を有しても良い。次に、器具200を体腔の外側に引き出し、ついには、縫合糸の端部が器具200を完全に出るようになる。押しボタン260及び/又はロックの解除時、種々のばねは、これらの伸長位置に戻り、そしていつでも次の縫合糸回収操作ができる状態にある。
【0047】
図9〜
図12は、本発明の更に別の観点としての滑動式縫合糸把持器具300を示している。器具300は、近位端部312及び遠位端部314を備えた細長い管状本体310と、近位端部322及び遠位端部324を備えた内側部材要素320とを有するのが良く、遠位端部324は、把持要素340を備えている。一観点では、器具300は、ハンドル又は取っ手330、近位ばね350、中間ばね355、遠位ばね360、及び押しボタン370を有するのが良い。一観点では、押しボタン370は、押しボタン370の軸方向に対して側方外方に延びるよう付勢されるのが良いロック部材375を有するのが良い。一観点では、ハンドル330は、押しボタン370が所定の軸方向配置場所に保持されるようロック部材375を固定する開口部335を有するのが良い。一観点では、押しボタン370を所定の軸方向配置場所に固定することにより、把持要素340は、縫合糸が把持要素内に摺動包囲状態で固定された状態で閉じ位置に維持される。
【0048】
理解されるように、上述の説明は、本発明のシステム及び技術の実施例を提供している。しかしながら、本発明の他の具体化例が上述の実施例とは細部において異なる場合のあることが想定される。本発明又は本発明の実施例に対する全ての参照は、その時点で説明されている特定の実施例を参照することを意図しており、本発明のより一般的な範囲に関して何ら限定を課すものではない。或る特定の特徴に関する全ての差別的記載及び軽視的記載は、これらの特徴について優先性又は好適性がないことを示すものであるが、別段の指定がなければ本発明の範囲からかかる特徴を全く排除するものではない。
【0049】
本明細書に示されている値の範囲についての記載は、本明細書において別段の指定がなければ、その範囲に含まれる別々の値の各々を個々に参照する簡潔な表記法として役立つことを意図しているに過ぎず、別々の値の各々は、これが個別的に本明細書に記載されているかのごとく本明細書中に組み込まれる。本明細書において説明した方法の全ては、別段の指定がなければ又は文脈上明らかに矛盾しない限り、任意適当な順序で実施できる。