特許第6353062号(P6353062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6353062電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、平衡化のための方法
<>
  • 特許6353062-電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、平衡化のための方法 図000002
  • 特許6353062-電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、平衡化のための方法 図000003
  • 特許6353062-電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、平衡化のための方法 図000004
  • 特許6353062-電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、平衡化のための方法 図000005
  • 特許6353062-電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、平衡化のための方法 図000006
  • 特許6353062-電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、平衡化のための方法 図000007
  • 特許6353062-電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、平衡化のための方法 図000008
  • 特許6353062-電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、平衡化のための方法 図000009
  • 特許6353062-電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、平衡化のための方法 図000010
  • 特許6353062-電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、平衡化のための方法 図000011
  • 特許6353062-電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、平衡化のための方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353062
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、平衡化のための方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20180625BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20180625BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20180625BHJP
   B60L 11/18 20060101ALN20180625BHJP
【FI】
   H02J7/34 D
   H02J7/02 J
   H02J7/02 H
   H02J7/00 302C
   H02J7/00 P
   !B60L11/18 A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-545915(P2016-545915)
(86)(22)【出願日】2014年12月30日
(65)【公表番号】特表2017-504300(P2017-504300A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2014079449
(87)【国際公開番号】WO2015104205
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2016年7月8日
(31)【優先権主張番号】102014200329.6
(32)【優先日】2014年1月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】ブッツマン、シュテファン
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−141970(JP,A)
【文献】 特開2008−029050(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/140894(WO,A1)
【文献】 特開2000−116014(JP,A)
【文献】 特開2010−029015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12、
7/00−13/00、
15/00−15/42
H01M10/42−10/48
H02J7/00−7/12、
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電圧源及び電流源として利用可能なモジュールを用いて、電気化学的な蓄電池モジュール(10)の複数の互いに並列に接続された線を平衡化する方法であって、以下の工程、即ち、
‐第1の蓄電池モジュール(M1)の第1の充電状態(I)を検出する工程(S100)と、
‐第2の蓄電池モジュール(M2)の第2の充電状態(II)を検出する工程(S200)であって、前記第2の蓄電池モジュール(M2)は電圧源及び電流源として利用可能な前記モジュールである、前記検出する工程(S200)と、
‐前記第1の充電状態(I)と前記第2の充電状態(II)とを互いに調整するために、前記第2の蓄電池モジュール(M2)を電流源として駆動する工程(S300)と、
を含み、
‐線(S1、S2、S3)ごとに1つより多い蓄電池モジュール(M1、M2、Mn)が含まれ、最高の充電状態を有する蓄電池モジュール(M1、M2、Mn)が電流源モードで駆動され、ブロックモード又はバイパスモードに置かれていない残りの前記電気化学的なモジュールは、電圧源モードで駆動される、方法。
【請求項2】
前記第1の蓄電池モジュール(M1)も電圧源及び電流源として利用可能な前記モジュール(M)であり、前記平衡化の間電圧源として駆動される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
全ての蓄電池モジュール(M1、M2、Mn)が電圧源及び電流源として利用可能な前記モジュール(M)であり、前記第2の蓄電池モジュール(M2)を除く全ての蓄電池モジュールが前記平衡化の間電圧源として駆動される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の蓄電池モジュール(M1)は、「充電状態が制御されている」、「充電状態が制御されていない」、「バック(buck)」、「ブースト(boost)」という一群から選択された第1の駆動モードで駆動され、
前記第2の蓄電池モジュール(M2)は、「充電状態が制御されている」、「充電状態が制御されていない」、「バック(buck)」、「ブースト(boost)」という一群から選択された第2の駆動モードで駆動される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の蓄電池モジュール(M1)は、充電状態が制御されることなく駆動され、前記第2の蓄電池モジュール(M2)は、ブースト(Boost)‐電流源‐駆動モードで駆動され、又は、前記第1の蓄電池モジュール(M1)は、バック(Buck)‐充電モードで駆動され、前記第2の蓄電池モジュール(M2)は、電流源モードで駆動される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の蓄電池モジュール(M1、M2、Mn)は、更なる別の電気化学的な蓄電池モジュールを含み、前記更なる別の電気化学的な蓄電池モジュールは、平衡化に関与しない線(S0)に属する場合はブロックモードに置かれ、及び/又は、平衡化に関与する線(S1、S3)に属する場合はバイパスモードに置かれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の電気化学的な蓄電池モジュール(10)に印加される充電電流は、前記蓄電池モジュール(10)の各充電状態に従って制御されるため、前記蓄電池モジュールの所定の充電状態が、ほぼ同じ時点に実現される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の電気化学的な蓄電池モジュール(10)に印加される充電電流は、前記蓄電池モジュール(10)の各充電状態に従って制御されるため、前記蓄電池モジュールの完全な充電状態が、ほぼ同じ時点に実現される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
所定の最大電圧に達した電気化学的な蓄電池モジュール(10)は、ブロックモードに置かれる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記線(S1、S2、S3)は、ほぼ同じ充電状態となるために、前記線(S1、S2、S3)の各平均的な充電状態に従って、前記複数の電気化学的な蓄電池モジュール(10)から供給される総電流に寄与する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
‐電気化学的な蓄電池モジュール(M1、M2、Mn)の複数の互いに並列に接続された線(S1、S2、S3)と、
‐請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成された処理ユニットと、
を備える、電気化学的なエネルギー貯蔵器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、電気化学的なエネルギー貯蔵器の電気化学的な蓄電池モジュールの複数の互いに並列に接続された線を平衡化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的なエネルギー貯蔵器は、個々の構成要素(「モジュール」)で構成され、幾つかの適用のために必要な、1つのモジュールではもはや提供できない高い電流を提供することが可能である。このような適用のために、モジュールを並列に接続する必要がある。このことは、標準モジュールを用いても必ずしも可能とは限らない。なぜならば、望まれぬ駆動状態を引き起こしうる循環電流が、モジュールの間を流れる可能性があるからである。典型的に、現在の蓄電池セルのモジュールは、リチウムベースの化学反応を起こす流体を含む。このセルは、過充電にも、深放電にも影響を受けやすい。セル又はモジュールごとに約4.2V以上の過充電によって、セルの破壊に繋がる可能性がある発熱過程が起こる。セル又はモジュールごとに約2.5V以下の深放電によって、セルのエネルギー貯蔵容量及びアンペア容量が恒常的に低下することになる。セルが直列に接続される場合、セルは一緒に充電され、放電される。換言すれば、線の各セルの電荷の変化は同じである。セルの特性は様々であるため、利用されるほど、セルの充電状態(SOC:state of charge)はもはや同じではなくなる。このことによって、充電の際に個々のセルが過充電する可能性があるが、その一方で、他のセルが未だ完全に充電していないということが起こりうる。後者のケースでは、放電時に、他のセルが未だ完全に放電していないにも関わらず、個々のセルが深放電する可能性があるというリスクが生じうる。このような理由から、蓄電池セルの状態は恒常的に監視され、充電又は放電が、場合によっては中断される。「平衡化」(Balancing)とも呼ばれる、蓄電池パック(「電気化学的なエネルギー貯蔵器))のセル間の充電補正は、全てのセルが同じSOCを有することを目指している。モジュールの内部のセルの平衡化のために、このために設計された、集積された測定及び平衡化回路が用いられる。
【0003】
さらに、従来技術では、所謂UniBB(Universelle Buck−Boost、ユニバーサル・バックブースト)モジュールが公知であり、このUniBBモジュールは、(例えば、リチウムイオンベース又はリチウム重合体ベースの)電気化学的なエネルギー貯蔵器と、電気回路と、を備え、この電気化学的なエネルギー貯蔵器及び電気回路によって、様々な端子特性を実現することが可能である。例えば、UniBBモジュールは、電圧源としても電流源としても利用可能である。UniBBモジュール内の電気回路は、インダクタを含む「結合ユニット」とも呼ぶことが出来るであろう。UniBBモジュールの構成及び機能形態は、例えば従来技術で公知である。
【0004】
中国特許第102496970号明書は、電気で駆動する移動手段の電気化学的なエネルギー貯蔵器のための平衡化システムを示している。電気化学的なエネルギー貯蔵器は、互いに並列に接続された2つ蓄電池線を含む。各貯蔵器線は、個別の蓄電池セルを含む。抵抗及びキャパシタを介して、蓄電池線のSOC値が定められ、個々のセルのエネルギーが、SOCがより低い他のセルへと移動する。
【0005】
米国特許出願公開第2011/025258号明細書は、電気化学的な蓄電池セルの結合体を示しており、ここでは、セルの過充電又は深放電を回避するために平衡化が行われる。本公報は、セルのSOCを監視し、そのSOCによってセルを放電可能なセルと充電可能なセルとに分類する制御ユニットを開示している。セルはその分類属性に従って個別に又は一緒に充電される。
【0006】
米国特許出願公開第2009/208824号明細書は、互いに並列に接続された電気化学的な蓄電池セルの結合体を示している。セルは、バックブーストコントローラ(Buck−Boost−Controller)として構成可能な各コントローラを有する。セルの充電状態が様々であることが検出された場合には、個々のセルから取得されるエネルギーが変更される。このようにして、様々なセルが長期間に渡って充電状態が異なっていることが回避される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、並列に接続された電気化学的な蓄電池の平衡化を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、本発明に基づいて、電気化学的なエネルギー貯蔵器、及び、少なくとも1つのUniBBモジュールを用いて、電気化学的な蓄電池モジュールの複数の互いに並列に接続された線を平衡化する方法によって解決される。本方法は、第1の蓄電池モジュールの第1の充電状態を検出する工程を含む。さらに、第2の蓄電池モジュールの充電状態が検出される。第1の蓄電池モジュールと第2の蓄電池モジュールとは異なる線に配置されている。第2の蓄電池モジュールは、UniBBモジュールとして構成され、第1の充電状態と第2の充電状態とを互いに調整するために電流源として駆動される。UniBBモジュールが電流源として駆動されることで、第1の蓄電池モジュールと第2の蓄電池モジュールとの間で、制御された電荷移動が行われ、その際には、充電状態の違いが大きく及び/又は端子電圧の違いが大きいために、許容しえない高い循環電流が流れないであろう。
【0009】
従属請求項によって、本発明の好適な発展形態が示される。
【0010】
好適に、第1の蓄電池モジュールもUniBBモジュールであり、上記の平衡化の間、電圧源として駆動される。特に、電気化学的なエネルギー貯蔵器の内部の全ての他の蓄電池モジュールも、UniBBモジュールとして構成される。この場合には、第2の蓄電池モジュールを除く全ての蓄電池モジュールが電圧源として駆動される。このようにして、電流源としての各蓄電池モジュールによる本発明に係る平衡化を制御することが可能である。
【0011】
好適に、第2の充電状態は第1の充電状態よりも低い。換言すれば、充電状態がより低い蓄電池モジュールが電流源として接続される。充電状態がより低い蓄電池モジュールが、電流の流れを制御し、それによって自身のSOCが上げられる。代替的に、第1の充電状態がより低くてもよく、従って、第1の蓄電池モジュールは、電流源として接続され、自身のSOCを上げる。当然のことながら、電流源モードの蓄電池モジュールが自身のSOCを下げるように、電流源モードで各蓄電池モジュールを駆動することも可能である。
【0012】
例えば、第1の蓄電池モジュールは、「制御されている」、「制御されていない」、「バック(Buck)」、又は「ブースト(Boost)」という一群から成る第1の駆動モードで駆動されうる。対応して、第1の蓄電池モジュールとは異なる線に配置された第2の蓄電池モジュールは、同一の一群から成る第2の駆動モードで駆動され、その際に、第2の駆動モードは、好適に、第1の駆動モードと同一ではない。この状況によって、許容しえない駆動状態が回避され、特に、エネルギーコストの増大、及び、平衡化の際の消耗が回避される。
【0013】
さらに好適に、第1の蓄電池モジュールは、制御されることなく駆動され、第2の蓄電池モジュールは、ブースト(Boost)‐電流源‐駆動モードで駆動されうる。代替的に、第1の蓄電池モジュールは、バック(Buck)‐充電モードで駆動され、第2の蓄電池モジュールは、電流源モードで駆動されうる。この状況は、異なる線に配置された蓄電池モジュールの2つの駆動状態の、好適な特に有利な組み合わせを示している。
【0014】
さらに好適に、電気化学的なエネルギー貯蔵器の内部の複数の蓄電池モジュールは、更なる別の電気化学的な蓄電池モジュールを含む。この更なる別の電気化学的な蓄電池モジュールは、平衡化に関与しない線に属する場合はブロックモードに置かれ、平衡化に関与する線に属する場合はバイパスモードに置かれる。ここで、ブロックモードとは、電流回路の遮断を意味し、バイパスモードは、各蓄電池モジュールの外部短絡に相当し、従って、電流が支障なく各蓄電池モジュールに沿って流れうる。このようにして、平衡化に関与する線を簡単に効率良く選択することが可能である。
【0015】
線ごとに蓄電池モジュールが1つだけ含まれる場合には、最高の充電状態を有する蓄電池モジュールが電圧源として駆動され、ブロックモードに置かれていない残りの電気化学的なモジュールが電流源モードで駆動されうる。しかしながら、線ごとに1つより蓄電池モジュールが含まれる(換言すれば、電気化学的なエネルギー貯蔵器内に直列に接続された蓄電池モジュールが存在する)場合には、最高の充電状態を有する蓄電池モジュールが電流源モードで駆動され、ブロックモード又はバイパスモードに置かれていない残りの電気化学的なモジュールが電圧源モードで駆動される。このようにして、可能な限り小さな電気損失で平衡化が行われうる。
【0016】
さらに好適に、複数の電気化学的な蓄電池モジュールに印加される充電電流は、蓄電池モジュールの各充電状態に従って制御される。充電電流の制御は、好適に、蓄電池モジュールの所定の充電状態、特に完全な充電状態がほぼ同じ時点に実現されるように、行われる。このようにして、充電過程は時間的に最適化されて行われ、電力損失がさらに削減される。
【0017】
さらに好適に、電気化学的なエネルギー貯蔵器の内部の電気化学的な蓄電池モジュールは、所定の最高電圧に達し次第、ブロックモードに置かれる。このことは、特に、電気化学的な蓄電池モジュールが、自身の線の唯一の蓄電池モジュールである場合に行われる。その線の第2のモジュールを充電する必要があり、第1の蓄電池モジュールがその所定の最高電圧に達している限りにおいて、完全に充電された電気化学的な蓄電池モジュールが、残りの蓄電池モジュールの充電過程を引き続き可能とするために、バイパスモードに置かれる。各線の最後のモジュールがその最高電圧に達した場合に初めて、残りの線での他の平衡化プロセスの間に不必要な電気損失を生じさせないために、少なくとも1つの蓄電池モジュールがブロックモードに置かれる。
【0018】
当然のことながら、平衡化は、電気化学的なエネルギー貯蔵器の複数の電気化学的な蓄電池モジュールが駆動している最中にも行われうる。このために上記線は、ほぼ同じ充電状態となるために、上記線の各平均的な充電状態に従って、供給される総電流に寄与する。線単位での放電電流の制御は、特に損失が低減された本発明に係る平衡化のバリエーションとなりうる。なぜならば、平衡化のために、全てのモジュールがエネルギー取得(充電過程)又はエネルギー放出(放電過程)を実行し、その際に、平衡化のためにのみ電荷が移動することはない。
【0019】
本発明の第2の観点によれば、電気化学的な蓄電池モジュールの複数の互いに並列に接続された線と、最初に挙げた本発明の観点に係る方法を実行するよう構成された処理ユニットと、を備える電気化学的なエネルギー貯蔵器が提案される。その際に、各線は、1つの電気化学的な蓄電池モジュール、又は、直列に接続された複数の電気化学的な蓄電池モジュールを含む。蓄電池モジュールは、最初に挙げた本発明の観点に応じて、全てがUniBBモジュールとして構成されてもよく、その動作形態は、上位の処理ユニットにより制御又は調整される。代替的な構成において、処理ユニットが、冒頭で挙げた本発明の観点に係る方法を実行又は調整することで(一時的に)マスタ機能を引き継ぐ電気化学的な蓄電池モジュールに含まれている。基本的に、各蓄電池モジュールが処理ユニットを備えることが可能であり、これにより各蓄電池モジュールは、上記のマスタ機能を引き継ぐよう構成される。本発明に係る電気化学的なエネルギー貯蔵器の機能形態は、最初に挙げた本発明の観点から明らかであり、従って、特徴、特徴の組み合わせ、及び効果の説明については、重複説明を避けるため上記の実施形態を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下では、本発明の実施例が、添付の図面を参照して詳細に記載される。
図1】本発明に基づき利用可能なUniBBモジュールの一実施例の回路図を示す。
図2】本発明に基づき利用可能なUniBBモジュールの代替的な実施例の回路図を示す。
図3】電気化学的な蓄電池モジュールを並行して駆動させるための概略的な回路図を示す。
図4】並列に接続された電気化学的な蓄電池モジュールを放電させるための概略的な回路図を示す。
図5】並列に接続された電気化学的な蓄電池モジュールを平衡化させるための概略的な回路図を示す。
図6】他の駆動モードにある、並列に接続された電気化学的な蓄電池モジュールを平衡化させるための概略的な回路図を示す。
図7】電気化学的な蓄電池モジュールの並列な線を駆動するための概略的な回路図を示す。
図8】第1の駆動状態にある電気化学的な蓄電池モジュールの並列な線を平衡化させるための概略的な回路図を示す。
図9】第2の駆動状態にある電気化学的な蓄電池モジュールの並列な線を平衡化させるための概略的な回路図を示す。
図10】第3の駆動状態にある電気化学的な蓄電池モジュールの並列な線を平衡化させるための概略的な回路図を示す。
図11】本発明に係る方法の一実施例の工程を示すフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、UniBBモジュール10の一実施例の回路図を示している。第1の端子11及び第2の端子12を介して、UniBBモジュール10は、他のUniBBモジュール10と相互接続されて1つの線となるよう構成されている。第1の端子11と第2の端子12との間には、好適にMOSFET(metal−oxide semiconductor field−effect transistor、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)又はIGBT(insulated gate bipolar transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)として構成された4つの半導体スイッチT1、T2、T3、T4が、対応するフリーホイールダイオードD1、D2、D3、D4と共に配置されている。半導体スイッチT1〜T4は、各フリーホイールダイオードD1、D2、D3、D4と共に、電気的な2端子回路ZP1〜ZP4として統合される。その際に、第1の2端子回路ZP1の第1端子は、エネルギー貯蔵器7の正の端子と接続されている。第1の2端子回路ZP1の第2の端子は、一方では第4の2端子回路ZP4の第1の端子と接続され、他方ではインダクタLを介して、第2の2端子回路ZP2の第1の端子と接続され、及び、第3の2端子回路ZP3の第2の端子と接続されている。第3の2端子回路Z3の第1の端子は、UniBBモジュール10の第1の端子11と接続されている。第1の端子11には、キャパシタCの第1の端子も接続されており、キャパシタCの第2の端子は、第2の2端子回路ZP2の第2の端子と接続されている。第2の2端子回路ZP2又は第4の2端子回路ZPの第2の端子は、一方ではUniBBモジュール10の第2の端子12と接続され、他方では電気エネルギー貯蔵器7の第2の端子と接続されている。エネルギー貯蔵器7は、モジュール電圧Uを伝達する。示されるUniBBモジュール10は、第1の端子では正極(プラス極)を有し、第2の端子では負極(マイナス極)を有する。半導体T1〜T4を駆動するための制御線は、分かり易さのために示されていない。電流センサについても同様のことが言える。電気エネルギー貯蔵器7は、この場合モジュール電圧Uを一緒に提供する1つ以上の電気化学的なセル又は他の電気エネルギー貯蔵ユニットから成る。UniBBモジュール10は、半導体スイッチT1〜T4がどのように操作されるかに従って、複数の様々な駆動状態となりうる。特に、バイパス、バック(Buck)モード又はブースト(Boost)モードにおける電圧源、バックモード又はブーストモードにおける電流源、充電回路、及び、逆流防止素子(Sperrung)が実現されうる。詳細については従来技術を参照されたい。
【0022】
図2は、図1で示されたUniBBモジュール10に対する代替的なUniBBモジュール10を示している。図1で示された構成に対して、キャパシタC及びトランジスタT4が無くなっている(しかしながら、トランジスタT4のダイオードD4は存在する)。さらに、分かり易いように、蓄電池セル1が1つだけ含まれている。
【0023】
図3は、構成100の回路図を示しており、ここでは、並列に接続された蓄電池モジュール(個別には、M1、M2、Mnで示されている)が、充電装置Lと消費機器Vとの間に配置されている。充電装置Lは、充電接触器SLを介して、並列に接続されたモジュール10に接続可能であり、消費機器Vは、消費機器接触器SVを介して、並列に接続されたモジュール10に接続可能である。矢印Pを介して、更なるモジュール10がさらに追加されうることが示唆されている。モジュール10は、その負の端子が、アース接続され、その正の端子が、共有の母線へと接続されている。以下で示す図との関連で、様々な切り替え状態について詳細に述べることにする。
【0024】
図4は、充電装置接触器SLが開放されているため充電装置Lが機能形態に対して影響を及ぼさず、従って示されていない状態の、図3に示した回路100を示している。消費機器Vも、消費機器接触器SVが開放されているため、モジュール10とは接続されていない。示される構成は、例えば、電気で駆動する車両が充電ステーションに接続しておらず停止状態にある場合を表している。モジュールMnは完全な充電状態SOCIを有するが、モジュールM1は、充電状態Iよりも低い第2の充電状態SOCIIを有する。電流Iを介して、モジュールM1、Mn間の平衡化が行われる。このために、モジュールM1は電圧源として駆動され、モジュールMnは電流源として駆動され、又は反対に、モジュールM1は電流源として駆動され、モジュールMnは電圧源として駆動される。双方の状況において、「制御されている」、「制御されていない」、「ブースト(Boost)」、「バック(Buck)」という一群から成る駆動状態の複数の組み合わせが可能である。例えば、モジュールM1が電圧源として駆動され、モジュールMnが電流源として駆動される際には、制御されていなくてもよい。なぜならば、モジュールMnは、その電圧がモジュールM1の端子電圧よりも高い必要があるため、ブースト(Boost)電流源モードで動作しなければならないからである。代替的に、モジュールM1がバック(Buck)充電モードで動作する(印加される電圧が、モジュールMnの端子電圧よりも低い)ということが可能である。その際には、モジュールMnは電流源モードで駆動される。実際には、発生する損失が最も小さい方法が利用される。変圧器の当業者には、対応する考察はありふれたものであり、より詳しい考察については関連する専門書を参照されたい。モジュールM2は、平衡化処理に関与しない線S0を形成する。モジュールM2は、S0を通る電流の流れが生じえないブロックモードに置かれる。換言すれば、アースと線S0内の母線2との間の電気接続が遮断される。2つより多いモジュール、例えば3つ以上のモジュールが平衡化の際に相互作用する場合には、SOCが最も高いモジュール(例えばモジュールMn)が電圧源として動作し、充電すべきモジュール(モジュールM1、M2)が電流源モードで動作すると仮定される。或るモジュール内での内部の平衡化は、通常では、抵抗法(resistive Methode)によって行われる。即ち、高いSOCを有するセル1の充電状態が、抵抗型負荷によって、より低いSOCを有するセル1の状態に置かれる。この過程は、車両が停止状態になり次第、又は消費機器Vが消費機器接触器SVを介してモジュール10から分離され次第、周期的に行われる。従って、モジュール10のSOCも、当該モジュール1が上記の平衡化処理に加わっていない場合にも経時的に変化する。このような理由から、上記の形態で全てのモジュール10を考慮した相互作用的な平衡化が必要である。
【0025】
図5は、充電中に平衡化が行われる駆動状態での、図3に示された回路100を示している。示される例では、ここでも、モジュールM1は、(より高いSOCIを有する)モジュールMnよりも低い充電状態SOCIIを有する。充電装置Lは電圧源として作用する。なぜならば、モジュールM1への充電電流I1が、モジュールMnへの充電電流Inよりも少し高いように、モジュール10の充電電流調整が制御されるからである。充電電流I1、Inの適切な設定によって、双方のモジュール10は同じ時間で完全に充電される。この原則は、全てのモジュール10に当てはまる。SOCがより低いモジュール10は、より高いモジュール10よりも強く充電される。蓄電池セル1(例えば蓄電池)が最高電圧に達しているモジュールは、ブロックモードに置かれる。場合によっては、内部での(抵抗的な)平衡化が開始され、この内部での(抵抗的な)平衡化が終了した後で、モジュール10全体が、そのSOCを最大化するために、充電モードに再び移行することが可能である。簡単に言えば、消費機器接触器SVが開放されており、従って、回路100は純粋な充電状態にある。
【0026】
図6は、放電中の平衡化処理における、図3に示された回路100を示している。換言すれば、充電装置Lは、充電装置接触器SLの開放によってモジュール10から分離されており、消費機器Vは、閉鎖された消費機器接触器SVによって、母線2を介してモジュール10と接続されている。充電状態I、IIは、比較すると、図4及び図5との関連で検討された状態に対応する。全てのモジュール10が同じSOCである際には、全てのモジュール10での放電電流I1、I2、Inが同じであることが望ましい。しかしながら、SOCが異なっている(充電状態I、IIが異なっている)場合には、SOCがより高いモジュール10がより強く放電され、SOCがより低いモジュール10はより弱く放電されることが望ましい。このために図6では、I1はInより小さくなければならない。モジュール10はいずれにせよ電流源モードにあるため、このような制御が簡単に実行される。電流強度のための制御変数は、モジュール10の各SOCである。充電装置Lは、充電装置接触器SLが開放されているため平衡化には関与しておらず、従って、純粋な放電過程が示されている。
【0027】
図7は、モジュール10が、直列に接続された他のモジュール10(個別には、M1−1〜M3−3で示される)と置換された場合の、図3に示された回路100を示している。モジュールM1−Xは、第1の線S01を形成する。モジュールM2−xは、第2の線S02を形成する。
モジュールM3−xは、第3の線S02を形成する。当然のことながら、現実的には、更なる別の並列の線が設けられうる。
【0028】
図8は、停止状態での(充電が行われていない)平衡化の間の、図7に示されたエネルギー貯蔵器100を示している。これは、示される電気化学的なエネルギー貯蔵器100によって駆動される機械又は適用物(例えば、消費機器Vとしての車両又は乗用車(PKW))が、充電装置Lが関与することなく、例えば充電接触器SL及び消費機器接触器SVが開放されることで、停止している状態である。最も単純な実施形態では、異なる線S1、S2、S3に存在する2つのモジュール10のみが相互作用する。図8では例えば、モジュールM1‐2が、(より高いSOCIを有する)モジュールM2‐nよりも低いSOCIIを有すると仮定される。最初に、線接触器SS1及びSS2が閉鎖され、該当しないモジュールM3−1〜M3‐nは、例えば、線接触器SS3の閉鎖によりバイパスモードに置かれる。SOCI、SOCIIを平衡化するために、平衡化電流Iが、モジュールM2‐nからモジュールM1‐2の方向に流れる必要がある。従って、モジュールM1−2が電圧源として接続され、モジュールM2‐nが電流源として接続され、又は反対に、モジュールM1−2が電流源として接続され、モジュールM2‐nが電圧源として接続されうる。双方の場合に、「制御されている」、「制御されていない」、「バック(Buck)」、「ブースト(Boost)」の一群から成る駆動状態の複数の組み合わせが可能である。例えば、モジュールM1‐2が電圧源として駆動される際には、モジュールM1−2は制御されていなくてもよい。その場合には、モジュールM2−nが、自身の電圧がモジュールM1‐2の端子電圧よりも高い必要があるため、ブースト(Boost)電流源モードで動作する必要がある。代替的に、モジュールM1−2がバック(Buck)充電モードで動作し(その際、印加される電圧は、モジュールM1−2の蓄電池セル1の端子電圧よりも低い)、モジュールM2−nが電流源モードで動作するということも可能である。実際には、生じる損失が最も小さい方法が利用される。該当しないモジュール10は、各線を通る電流の流れを支障なく許容するバイパスモードに置かれる。2つより多いモジュール、例えば3つ(以上)のモジュール10が相互作用する場合には、SOCが最も高いモジュールが電流源として動作し、充電されるモジュールが電圧源モードで動作することが仮定される。よりSOCが高いモジュール10は、SOCがより低い2つのモジュール10とは異なる線に存在する必要があり、このSOCがより低い2つのモジュール10は、同じ線S1、S2、S3に直列で存在している必要がある。その充電状態に関して平衡化されるモジュール10が同じ線S1、S2、S3に存在し、例えば、より低いSOCIIを有するモジュールM1−2と、より高いSOCIを有するモジュールM1−nと、が同じ線に存在する場合には、該当するモジュールの間での直接的な平衡化は可能ではない。最初に、隣の線S1、S2、S3のモジュール10、例えばモジュールM3−1が、より弱いモジュールM1−2のための充電源として利用される必要がある。続いて、モジュールM3−1は、より強いモジュールM1−nによって再び充電されうる。この中間工程を介して、同じ線S1、S2、S3の2つの任意のモジュール10を、その充電状態SOCに関して平衡化することが可能である。モジュール10の内部の平衡化は、通常では抵抗法によって行われる。即ち、高いSOCを有するセル1の充電状態が、抵抗型負荷によって、より低いSOCを有するセル1の状態に置かれる。この過程は、車両が停止状態になり次第、又は消費機器V及び充電装置Lがモジュール10に接続されなくなり次第、周期的に行われる。従って、モジュール10のSOCも、当該モジュール10が上記の平衡化処理に加わっていない場合にも経時的に変化する。このような理由から、上記の形態で全てのモジュール10を考慮した相互作用的な平衡化が必要である。
【0029】
図9は、充電過程の最中の平衡化の間の、図7との関連で紹介された回路100を示している。例えば、モジュールM1−2は、(より高いSOCIを有する)モジュールM2−nよりも低い充電状態SOCIIを有する。充電装置Lは電圧源として作用し、線S1、S2への充電電流調整は、第1の線S1の充電電流I1が第2の線S2の充電電流I2よりも少し高いように、制御される。2つのモジュールM1−2、M2−nは、このようにして、同じ時間で完全に充電される。より低いSOCIIを有する線S1は、より高いSOCIを有する線S2よりも強く充電される。蓄電池セル1(例えば蓄電池)が最高電圧に達しているモジュールは、バイパスモードに置かれる。この場合には、電流I3が支障なくモジュールM3−1〜M3−nに沿って案内される。線の最後のモジュール10が完全に充電された場合には、全てのモジュール10がブロックモードに置かれ、又は、対応する線接触器SS1、SS2、SS3が開放される。
【0030】
図10は、放電の最中の平衡化の間の、図7との関連で紹介された回路100を示している。全ての線S1、S2、S3のSOCが同じである場合には、全ての線S1、S2、S3の放電電流I1、I2、I3が同じであることが望ましい。しかしながら、SOCIとSOCIIとが異なっている場合には、図10で示されるように、より高い平均的なSOCIを有する線S2がより強く放電され、より低い平均的なSOCIIを有する線S1がより弱く放電されることが望ましい。その場合、図10ではI1<I2となるであろう。線S1、S2、S3は放電の最中で電流源モードにあるため、このような制御が簡単に実行される。その際に、制御変数は、線S1、S2、S3の平均的なSOCである。消費機器Vの電力要求が許容する場合には、弱いモジュールM1−2が一時的に丸ごとバイパスモードに置かれる。その場合に、弱いモジュールM1−2の役割は、同じ線S1のブーストモードにある、より高いSOCを有するモジュールが引き継ぐことが可能である。このような仕組みによって、線S1、S2、S3の中でのモジュール平衡化が行われる。
【0031】
図11は、本発明に係る方法の一実施例の工程を示すフロー図を示している。工程S100では、第1の蓄電池モジュール10の第1の充電状態が検出される。工程S200では、第2の蓄電池モジュール10の第2の充電状態が検出される。第2の蓄電池モジュール10は、UniBBモジュールである。この第2の蓄電池モジュール10は、工程S300において、第1の充電状態SOCIと第2の充電状態SOCIIを互いに調整するために、電流源として駆動される。換言すれば、UniBBモジュールが電流源として駆動されることによって、第1の蓄電池モジュール10と第2の蓄電池モジュール10との間の平衡化が実行される。
【0032】
本発明に係る観点及び有利な実施形態を、添付の図面と関連して解説される実施例を用いて詳細に記載してきたが、当業者にとっては、その保護範囲が添付の請求項により定義される本発明の範囲を逸脱することなく、提示された実施例の特徴の変更及び組み合わせが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11