(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353080
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ランスノズルの製造方法,及びランスノズルの製造装置
(51)【国際特許分類】
B21K 21/08 20060101AFI20180625BHJP
C21C 5/52 20060101ALN20180625BHJP
【FI】
B21K21/08
!C21C5/52
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-564217(P2016-564217)
(86)(22)【出願日】2015年10月8日
(65)【公表番号】特表2017-513715(P2017-513715A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】KR2015010688
(87)【国際公開番号】WO2016056868
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0136500
(32)【優先日】2014年10月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511205563
【氏名又は名称】ソウル エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヘ−ヤン
【審査官】
豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭53−012726(JP,Y2)
【文献】
特開2007−319894(JP,A)
【文献】
特開2006−297427(JP,A)
【文献】
特公昭50−036405(JP,B1)
【文献】
特開平08−269653(JP,A)
【文献】
特許第2971334(JP,B2)
【文献】
特開2001−193607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21K 21/08
C21C 5/46 − 5/52
C21B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口側を介して供給されたガスを出口側に排出する複数の排出管と,該排出管の出口側がそれぞれ連結される複数の排出孔を有する前方壁を含むランスノズルを鋳造加工で1次製造する鋳造ステップと,
前記排出管と反対側に位置する前記前方壁の前方面のうち前記排出孔の外周を鍛造加工して鍛造組織を形成する鍛造ステップとを含み,
前記鋳造ステップにおいて,前記排出管の内部に閉鎖部材が形成されて前記閉鎖部材によって前記排出管の内部のうち前端部を除く残りの部分が閉鎖され,
前記鍛造ステップは,前記閉鎖部材が形成された状態で前記鍛造加工が行われることを特徴とするランスノズルの製造方法。
【請求項2】
前記鍛造ステップの後,前記閉鎖部材を除去して前記排出管を開放するステップを更に含むことを特徴とする請求項1記載のランスノズルの製造方法。
【請求項3】
前記鋳造ステップと前記鍛造ステップとの間に,
前記ランスノズルの前記前方面を荒削り加工する荒削りステップを更に含むことを特徴とする請求項1記載のランスノズルの製造方法。
【請求項4】
前記鍛造ステップの後,仕上げ削り加工を介して前記前方面のうち,前記鍛造組織と該鍛造組織以外の部分との間の段差を除去する仕上げ削りステップを更に含むことを特徴とする請求項3記載のランスノズルの製造方法。
【請求項5】
前記仕上げ削りステップの前において,前記鍛造組織の高さは,前記前方面の高さに比べ低いことを特徴とする請求項4記載のランスノズルの製造方法。
【請求項6】
前記鍛造ステップは,前記排出孔の直径より大きい外径を有するハンマーを利用して前記鍛造組織を形成することを特徴とする請求項1記載のランスノズルの製造方法。
【請求項7】
入口側を介して供給されたガスを出口側に排出する複数の排出管と,該排出管の出口側がそれぞれ連通する複数の排出孔を有する前方壁を含むランスノズルを製造する装置において,
前記ランスノズルが載置され,前記前方壁の前方面が水平を維持した状態で上部を向くように支持するベッドと,
該ベッドの上部に設置されて前記排出孔の直径より大きい外径を有するハンマーと,
該ハンマーを駆動して前記前方面のうち前記排出孔の外周を鍛造加工するハンマー駆動部材とを含み,
前記ベッドは,前記前方壁の内部に挿入されて前記ランスノズルを支持し,前記前方壁の内部と同じ形状を有することを特徴とするランスノズルの製造装置。
【請求項8】
前記ハンマーの下部面から突出されて前記排出孔の直径より小さい外径を有し,前記ハンマーの下部面が前記前方面と接触すると前記排出孔内に位置するガイドチップを更に含むことを特徴とする請求項7記載のランスノズルの製造装置。
【請求項9】
複数の開口が形成された内側前方壁と,該内側前方壁によって前端が閉鎖される中心管と,該中心管の外周に同軸方向に配列されて前記中心管との間に冷却水が供給される内部環状空洞が形成される内部管と,該内部管の外周に同軸方向に配列されて前記内部管との間に前記第1環状空洞内に供給された前記冷却水を排出する外部環状空洞が形成される外部管と,前記中心管の前方に位置し,前記開口とそれぞれ一列に配列される複数の排出孔を有し,前記外部管の前端を閉鎖する外側前方壁と,一列に配列された前記開口及び前記排出孔にそれぞれ連通して,前記開口を介して供給されたガスを前記排出孔を介して排出する複数の排出管を含むランスノズルを鋳造加工で1次製造する鋳造ステップと,
前記排出孔の直径より大きい外径を有するハンマーの下部面を利用し,前記排出管と反対側に位置する前記外側前方壁の前方面のうち前記排出孔の外周を鍛造加工して鍛造組織を形成する鍛造ステップとを含み,
前記鋳造ステップにおいて前記排出管の内部に閉鎖部材が形成され,該閉鎖部材によって前記排出管の内部のうち前端部を除く残りの部分が閉鎖され,
前記鍛造ステップは,前記閉鎖部材が形成された状態で前記鍛造加工が行われることを特徴とするランスノズルの製造方法。
【請求項10】
前記鍛造ステップの後,前記閉鎖部材を除去し,前記排出管を開放するステップを更に含むことを特徴とする請求項9記載のランスノズルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ランスノズル及び該ランスノズルの製造方法,並びに前記ランスノズルの製造装置に関するものであり,より詳しくは,ランスノズル及び鍛造加工を含む前記ランスノズルの製造方法,そしてこのランスノズルの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ランスノズルは酸素を噴射して鋼を製造する電炉に使用されて溶鋼を攪拌し,約1,600℃の温度を維持する電炉内の溶鋼に近接した状態で酸素を噴出する。このような作動条件の下,ランスノズルの表面温度は一次的に400℃以上まで速く上昇し,ランスノズルが上部に後退する際に20℃まで急激に冷却される。よって,ランスは非常に優れた熱伝導体材料(例えば,銅)で製造され,内部の壁に沿って高速で流動する冷却流体と効果的な熱交換が行われる。
【0003】
しかし,ランスノズルは,酸素を排出する過程で排出管の先端側が磨耗するか破損するため,一定の使用回数を設定しておき,設定した使用回数に到達するとこれを交換する方式を採用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は,耐久性が改善されたランスノズル及び該ランスノズルの製造方法,そして前記ランスノズルの製造装置を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は,製造の際に必要とされる時間及びコストを節減することのできるランスノズル及び該ランスノズルの製造方法,そして前記ランスノズルの製造装置を提供することにある。
【0006】
本発明の更に他の目的は,以下の詳細な説明と添付した図面からより明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によるランスノズルの製造方法は,入口側を介して供給されたガスを出口側に排出する複数の排出管と,該排出管の出口側がそれぞれ連結される複数の排出孔を有する前方壁を含むランスノズルを鋳造加工で1次製造する鋳造ステップと,前記排出管と反対側に位置する前記前方壁の前方面のうち前記排出孔の外周を鍛造加工して鍛造組織を形成する鍛造ステップとを含む。
【0008】
前記鋳造ステップの際,前記排出管の内部に閉鎖部材が形成されて該閉鎖部材によって前記排出管の内部のうち前端部を除く残りの部分が閉鎖され,前記鍛造ステップは,前記閉鎖部材が形成された状態で前記鍛造加工が行われる。
【0009】
前記ランスノズルの製造方法は,前記鍛造ステップの後,前記閉鎖部材を除去して前記排出管を開放するステップを更に含む。
【0010】
前記ランスノズルの製造方法は,前記鋳造ステップと前記鍛造ステップとの間に,前記ランスノズルの前記前方面を荒削り加工する荒削りステップを更に含む。
【0011】
前記ランスノズルの製造方法は,前記鍛造ステップの後,仕上げ削り加工を介して前記前方面のうち,前記鍛造組織と該鍛造組織以外の部分との間の段差を除去する仕上げ削りステップを更に含む。
【0012】
前記仕上げ削りステップの前に,前記鍛造組織の高さは前記前方面の高さに比べ低い。
【0013】
前記鍛造ステップは,前記排出孔の直径より大きい外径を有するハンマーを利用して前記鍛造組織を形成する。
【0014】
本発明の他の実施形態によるランスノズルの製造装置は,入口側を介して供給されたガスを出口側に排出する複数の排出管と,該排出管の出口側がそれぞれ連結される複数の排出孔を有する前方壁を含み,前記ランスノズルが載置され,前記前方壁の前方面が水平を維持した状態で上部を向くように支持するベッドと,該ベッドの上部に設置されて前記排出孔の直径より大きい外径を有するハンマーと,該ハンマーを駆動して前記前方面のうち前記排出孔の外周を鍛造加工するハンマー駆動部材を含む。
【0015】
前記ランスノズルの製造装置は,前記ハンマーの下部面から突出されて前記排出孔の直径より小さい外径を有し,前記ハンマーの下部面が前記前方面と接触すると前記排出孔内に位置するガイドチップを更に含む。
【0016】
本発明の一実施形態によるランスノズルは,入口側を介して供給されたガスを出口側に排出する複数の排出管と,該排出管の出口側がそれぞれ連結される複数の排出孔を有する前方壁とを含み,前記前方壁は,鍛造組織及び鋳造組織を備え,該鍛造組織は前記排出孔の外周に位置して予め設定された深さを有する。
【0017】
本発明の他の実施形態によるランスノズルの製造方法は,複数の開口が形成された内側前方壁と,該内側前方壁によって前端が閉鎖される中心管と,該中心管の外周に同軸方向に配列されて,前記中心管との間に冷却水が供給される内部環状空洞が形成される内部管と,該内部管の外周に同軸方向に配列されて前記内部管との間に,前記第1環状空洞内に供給された前記冷却水を排出する外部環状空洞が形成される外部管と,前記中心管の前方に位置し,前記開口とそれぞれ一列に配列される複数の排出孔を有し,前記外部管の前端を閉鎖する外側前方壁と,一列に配列された前記開口及び前記排出孔にそれぞれ連結されて,前記開口を介して供給されたガスを前記排出孔を介して排出する複数の排出管を含むランスノズルを,鋳造加工で1次製造する鋳造ステップと,前記排出孔の直径より大きい外径を有するハンマーの下部面を利用し,前記排出管と反対側に位置する前記外側前方壁の前方面のうち前記排出孔の外周を鍛造加工して鍛造組織を形成する鍛造ステップを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態によると,鋳造加工を介して1次製造されたランスノズルを鍛造加工して攪拌ガス(例えば,酸素)が噴出される排出管の先端側が容易に磨耗するか破損することを防止し,これによってランスノズルの交換周期を延長することができる。また,鋳造加工を介してランスノズルを1次的に製造した後,重要部位のみ鍛造加工を経るため,2つ以上の鍛造加工された部品をブレージング(brazing)加工して製造するランスノズルに比べ製造に必要とされる時間及びコストを節減することができる。また,ランスノズルのブレージング加工の際に発生し得る欠陥などの短所を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態によるランスノズルを概略的に示す図である。
【
図2】
図2〜
図4は,
図1に示すランスノズルを製造する本発明方法を連続して示す図で,
図2は,鍛造加工工程までを示し,
【
図3】本発明の
図1に示すランスノズルを製造する方法における鍛造工程による段差dの形成までを示す。
【
図4】本発明の
図1に示すランスノズルを製造する方法における仕上げ削り工程を示す図である。
【
図5】鋳造加工の後,鍛造加工の実施の有無によるランスノズルを比較した写真である。
【
図6】
図5に示す排出孔の外周を拡大した写真である。
【
図7】鍛造加工の実施の有無による排出孔外周の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【
図8】鍛造加工の実施の有無による排出孔の外周の磨耗試験の結果を示すグラフである。
【
図9】
図1に示すランスノズルを製造する装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,本発明の好ましい実施形態を,添付した
図1乃至
図9を参照して,より詳細に説明する。本発明の実施形態は様々な形に変形されてもよく,本発明の範囲が後述する実施形態に限定されると解釈してはならない。本実施形態は,当該発明の属する技術分野の通常の知識を有する者に,本発明を,より詳細に説明するために提供されるものである。よって,図面に示す各要素の形状はより明確な説明を強調するために誇張されている可能性がある。
【0021】
図1は,本発明の一実施形態によるランスノズルを概略的に示す断面図である。ランスノズル1は,攪拌ガス(例えば,酸素)を供給する中心管2を含む。中心管2は,開口4が形成された前方壁3によって閉鎖され,開口4は,軸19を基準に外周に等角を成して配置される。
【0022】
内部管5は,中心管2の外周に同軸方向に配列されており,環状空洞6が内部管5と中心管2との間に形成され,矢印F
1方向に冷却水が供給される。
【0023】
外部管10は,中心管2の外周に同軸方向に配列されており,環状空洞11が,内部管5と外部管10との間に形成されて,矢印F
2方向に冷却水を排出する。外部管10は,攪拌される前炉に対向し,臨界熱応力を受ける前方壁12によって閉鎖される。冷却水は,前方壁3と前方壁12との間に形成された熱交換空間13を流れ(F
3,F
4),冷却水と加熱された前方壁12との間の十分な熱交換のために,前方壁12を高い熱伝達係数を有する熱伝導体材料,例えば銅で製造することが好ましい。すなわち,空洞6から出る冷却水が排出管15を迂回して通路8(F
4)を介して熱交換領域13に流入されF
3,空洞11に向かって矢印(F
4)の方向に流動する。
【0024】
また,前方壁12は,前方壁3に形成された開口4と一列に配列される排出孔14を有し,排出管15が,開口4及び排出孔14を連通して攪拌ガス(例えば,酸素)をランスノズル1の外部に噴出する。排出管15は,軸19を基準に前方に向かって外側に傾斜するように配置され,ランスノズル1の前方面は,排出管15の中心軸と略直交する。よって,前方壁12の前方面はランスノズル1の軸19を中心に外側に向かって下向き傾斜する形状を有する。また,前方壁12は,中心部に通路8に向かって窪んだ沈下部16を有し,冷却水噴出口9が排出管15と内部管5との間に形成される。
【0025】
図2乃至
図4は,
図1に示すランスノズルを製造する方法を順に示す図である。上述した
図1に示すランスノズルは,以下で説明する方法を介して製造される。
【0026】
まず,ランスノズル1は鋳造加工を介して一体に製造されるか,2つ以上に製造されてから溶接を介して連結される。鋳造加工は同じ模型で鋳型を製造するため形状寸法が同じものが多く得られ,特に,複雑な形状の製品を容易に製作することができるため加工コストを節減する長所がある。
【0027】
次に,
図2に示すように荒削り(rough machining)加工を経て,この荒削り加工を完了した状態で,ランスノズル1の仕上げ削り加工までの余裕部分C(厚さ=約10mm)を有する。このような状態で,トーチを利用してランスノズル1を500℃乃至750℃まで予熱した後,ハンマー22を介して排出孔14の外周に鍛造加工を実施する。ハンマー22は排出孔14の直径より大きい外径を有し,ハンマー22は,衝撃を加える方式(例えば,駆動シリンダを介してハンマー22を持ち上げてから自由落下するか,駆動シリンダを介して持ち上げられたハンマー22を強制落下する方式)で前方面12aに圧縮荷重(又は衝撃荷重)を加える。ハンマー22は,前方壁3の前方面のうち排出孔14の外周を鍛造加工するためのものであるため,ハンマー22は鍛造加工が完了するまで排出孔14の内周面と接触せず,排出孔14の内部に挿入されない。
【0028】
このとき,閉鎖部材15aは,鋳造加工を介して排出管15の内部に形成されて排出管15の内部のうちの一部を閉鎖し,鍛造加工に際して閉鎖部材15aは,排出管15または排出孔14が変形(例えば,直径の増減)することを防止する。すなわち,ランスノズルの鋳造加工の際,排出管15は前端部の一部のみ前方面12aから陥没して形成されて排出管15の内部のうち一部が閉鎖された状態になり,鍛造加工が完了されてから閉鎖部材15aを除去して排出管15を
図1に示すように開放することで,完全な排出管15を形成する。
【0029】
ガイドチップ24はハンマー22の下部面から突出され,鍛造加工が完了された状態で排出孔14の直径より小さい外形を有する。ガイドチップ24は上部直径が下部直径より大きい台形の断面積を有する。ハンマー22が,前方面12aと接触するとガイドチップ24は排出孔14内に挿入され,ハンマー22が排出孔14の外周に正確に圧縮加重を加えるようにガイドする。但し,本実施形態とは異なって,ガイドチップは省略されてもよい。
【0030】
図3に示すように,鍛造加工が完了されると排出孔14の外周に鍛造組織Fが形成され,鍛造組織Fはリング状に一定厚さ及び深さで形成される。この際,鍛造加工を介して組織が粗密になる過程で鍛造組織Fと前方面12aとの間に段差dが形成され,段差の厚さdは上述した余裕部分Cの厚さと一致する。よって,
図4に示すように,仕上げ削りを介して余裕部分C(または段差)を除去し閉鎖部材15aを除去すると最終的なランスノズル1が完成される。
【0031】
一方,本実施形態は鋳造加工の長所と鍛造加工の長所を活用すると共に,鋳造加工の短所を鍛造加工を介して補完し,鍛造加工の短所を鋳造加工を介して補完する。すなわち,鋳造は金属を溶解してそれを冷却,凝固して製品を得る工程であって,この際に生じる鋳物の組織はいわゆる鋳造組織という荒い結晶組織となり,同じ材料で他の加工によって製作した製品より機械的性質が落ちる短所がある。よって,上述したランスノズル1の場合,攪拌ガスを噴出する排出管15の先端側(または排出孔14の周辺)が容易に磨耗するか破損する問題が発生する。
【0032】
一方,鍛造は素材に圧縮荷重を加えるため,鋳造に比べ金属組織が粗密になって強度などの機械的性質を増大することができ,ランスノズル1の寿命を大幅に延長することができる一方,製造の際に多くの時間及びコストを要する問題点がある。
【0033】
よって,鋳造加工を介してランスノズルを1次的に製造し,製造の際に必要とされる時間及びコストを節減すると共に,鍛造加工を介して機械的性質を増大することで,容易に磨耗ないし破損する排出管15の先端側(または排出孔14の周辺)を補強する。
【0034】
図5は,鋳造加工の後,鍛造加工の実施の有無によるランスノズルを比較した写真であり,
図6は,
図5に示す排出孔の外周を拡大した写真である。
図5及び
図6は,約150回程度使用したランスノズルを示すが,同図紙面左側は鍛造加工を実施していない場合であって,右側は鍛造加工を実施している場合である。
図5及び
図6に示すように,鍛造加工を実施していない場合には排出管15の先端側(または排出管14の周辺)に発生した亀裂を確認することができるが,鍛造加工を実施している場合には排出管15の先端側(または排出孔14の周辺)にいかなる亀裂も発生していないことが分かる。
【0035】
図7は,鍛造加工の実施可否による排出孔の外周の金属組織写真であり,同図紙面左側は鍛造加工を実施している場合であって,右側は鍛造加工を実施していない場合である。
図7に示すように,鍛造加工を実施している場合には金属組織が粗密に変わり,鋳造に比べ金属組織が粗密になって強度などの機械的性質が増大する。一方,鍛造加工を実施していない場合には相対的に金属組織が粗密ではなく,少数の結晶粒界(grain boundary)を有する。一方,鋳造加工の後で行われる鍛造加工の程度に応じて鍛造組織と鋳造組織が共存することができ,鍛造加工の回数が増大するほど鍛造組織が増加する。
【0036】
図8は,鍛造加工の実施可否による排出孔の外周の磨耗試験の結果を示すグラフである。下記表1のような条件で,鍛造加工を実施していないランスノズル1の組織と鍛造加工を実施しているランスノズル1の組織に対する磨耗試験を行った。
【0038】
その結果,
図8に示すように,鍛造加工を実施していないランスノズル1の磨耗量は0.7mgである一方,10mm鍛造加工を実施したランスノズル1の磨耗量(実施形態の磨耗損失)は0.1mgであったため,鍛造加工を介してランスノズル1の機械的性質が大幅に改善されたことが分かり,特に耐摩耗性が7倍以上増加したことが分かる。
【0039】
図9は,
図1に示すランスノズルを製造する装置を概略的に示す図である。ランスノズルの製造装置は,ベース32の上部に載置されたベッド36を含み,ベッド36はランスノズル1の前方面12aが水平状態を維持するようにランスノズル1を固定支持する。
【0040】
ランスノズルの製造装置は支持フレーム29を更に含み,支持フレーム29は本体30に固定された状態を維持する。支持ロッド26は,支持フレーム29を貫通して設置され,ハンマー22は,支持ロッド26の下端に固定される。支持ロッド26は,別途の駆動装置(図示せず)を介して作動し,作動の際にハンマー22は,ランスノズル1の前方面に圧縮荷重(または衝撃荷重)を加えて鍛造加工を実施する。
【0041】
詳説すれば,ランスノズル1は,前方面12aが上部を向くようにランスノズル1をベッド36に固定し,トーチを介してランスノズル1を鍛造加工に適した温度(例えば,500〜750℃)に加熱する。次に,ベッド36を本体30に向かって移動し,ランスノズル1の鍛造しようとする排出孔14がハンマー22の真下に位置するようにベッド36の位置を調整する。ベッド36の位置調整が完了すると,駆動装置(例えば,駆動シリンダ)を作動してハンマー22を介して排出孔14の外周に鍛造加工を行う。以後,鍛造加工が完了すると,ベッド36を本体30の反対側に移動して,ランスノズル1をベッド36から除去する。
【0042】
以上,本発明を好ましい実施形態を介して詳細に説明したが,これらとは異なる実施形態ないし実施例も可能である。よって,後述する特許請求の範囲の技術的思想と範囲は好ましい実施形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は多様な形態のランスノズル及びランスノズルの製造方法,そしてランスノズルの製造装置に応用される。