特許第6353088号(P6353088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6353088反応残留物からのハイドロハロシラン類の回収
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353088
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】反応残留物からのハイドロハロシラン類の回収
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/107 20060101AFI20180625BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20180625BHJP
   C02F 11/12 20060101ALI20180625BHJP
   C02F 11/14 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C01B33/107 ZZAB
   C02F11/00 C
   C02F11/12 A
   C02F11/14 E
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-575212(P2016-575212)
(86)(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公表番号】特表2017-526598(P2017-526598A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】US2014046979
(87)【国際公開番号】WO2016003478
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2017年5月10日
(31)【優先権主張番号】14/321,700
(32)【優先日】2014年7月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507002985
【氏名又は名称】アールイーシー シリコン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】ペイ ヨーン コー
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー ディー トンプソン
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−261324(JP,A)
【文献】 特表2006−521914(JP,A)
【文献】 特開平02−075301(JP,A)
【文献】 特開平06−166512(JP,A)
【文献】 特表2013−510068(JP,A)
【文献】 米国特許第03428530(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
C02F 11/00−11/20
B01B 1/00−1/08
B01D 1/00−8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応残留物から無機ハロシラン類を回収する方法であって、
(i)揮発性ハロシラン類、(ii)ケイ素粒子、及び、(iii)重質類を含む無機ハロシランスラリーを、薄膜乾燥機の気化領域に流して前記揮発性ハロシラン類を気化するステップであり、前記気化領域は、大気圧以上の内圧を有し、当該気化領域の前記内圧における前記揮発性ハロシラン類の沸点範囲の上限超の内部温度Tを有するステップであって、前記薄膜乾燥機は、前記気化領域内にローターを有し、当該ローターは、前記薄膜乾燥機の内壁表面に向かって延びた複数のブレードを有する、ステップと、
前記ローターを回転させて、平均厚みが2mm以下のスラリー膜を前記内壁表面に形成し、前記スラリー膜は乾燥してケイ素粒子を含む固体残留物を形成する、ステップと、
前記気化領域から気化された前記揮発性ハロシラン類を回収するステップと、
前記ローターが回転する時に前記ブレードを用いて前記固体残留物を前記内壁表面から削り落とすことによって前記固体残留物を回収するステップと、
前記薄膜乾燥機の排出口から前記固体残留物を流動性粉末として回収するステップとを含む方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記スラリーが当初において50重量%超の前記揮発性ハロシラン類を含む方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記重質類は、金属ハロゲン化物類、ポリハロシラン類、ポリハロオキシラン類、又は、これらの混合物である方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記スラリーが当初において50重量%以下の前記重質類を含む方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記固体残留物は、70%以上の乾燥度を有する方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、当該方法はさらに、0.001kgs−1−2〜0.1kgs−1−2のスラリー質量流速を維持できる速度で前記無機ハロシランスラリーを流すステップを含む方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、当該方法はさらに、前記内圧を101kPa〜170kPaの範囲に維持するステップを含む方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、当該方法はさらに、前記固体残留物を処理して、周囲大気に曝されても反応性を示さない固体物質を生成するステップを含む方法。
【請求項9】
請求項記載の方法において、前記固体残留物を処理するステップは、当該固体残留物をアルカリ性水和物に接触させるステップを含む方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、
前記気化領域から回収された、気化された前記揮発性ハロシラン類はさらに、混入微粒子を含み、
当該方法はさらに、前記混入微粒子を前記揮発性ハロシラン類から分離するステップを含む方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法において、
前記内部温度Tは、前記内圧における前記重質類の沸点範囲又は昇華点範囲の上限未満であり、
前記固体残留物はさらに、前記重質類の少なくとも一部を含む方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記気化領域から回収された蒸気は、実質的には重質類を含まない方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法において、
前記無機ハロシランスラリーは、(i)四塩化ケイ素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、又は、これらのいずれかの混合物、(ii)ケイ素粒子、及び、(iii)重質類を含む無機クロロシランスラリーであり、
前記内部温度Tは、80℃〜200℃である方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、当該方法はさらに、前記内部温度Tを80℃〜115℃に維持するステップを含む方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、前記固体残留物はさらに、前記重質類の少なくとも一部を含む方法。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法において、前記薄膜乾燥機は、前記気化領域と前記排出口との間に位置付けられた第2気化領域を有し、当該方法はさらに、
前記第2気化領域における内部温度T、ここで、T>Tである、を維持するステップと、
前記スラリーを、前記第1気化領域及び前記第2気化領域に順次流すステップと
を含む方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、当該方法はさらに、
前記内部温度Tを、前記内圧における前記重質類の少なくとも1種の沸点超又は昇華点超の温度に維持するステップと、
前記第2気化領域において、前記重質類の少なくとも一部を気化して、重質蒸気を形成するステップと、
前記重質蒸気を回収するステップと
を含む方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記固体残留物は、少なくとも70%の乾燥度を有する方法。
【請求項19】
請求項16記載の方法において、
前記無機ハロシランスラリーは、無機クロロシランスラリーであり、
当該方法はさらに、前記内部温度Tを80℃〜115℃に維持し、前記内部温度Tを115℃〜200℃の範囲内に維持するステップを含む方法。
【請求項20】
前記内部温度Tは、前記内圧における前記重質類の沸点温度範囲又は昇華点温度範囲の上限超であり、
前記固体残留物は実質的に重質類を含まない、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本発明は、2014年7月1日出願の米国特許出願第14/321,700号の出願日を優先権として主張し、この全内容を参照により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、使用済みの反応残留物からの無機ハロシラン類の回収に関する。
【背景技術】
【0003】
冶金級ケイ素のハロゲン化水素化、又は、水素及び冶金級ケイ素の存在下でのテトラハロシランの水素化によって、ハロシラン類、特にトリハロシランを製造する際、結果として生じるプロセス流にはスラリーが含まれることがある。スラリーは、典型的には、未反応のケイ素粒子及びその他のポリハロシラン/ポリハロオキシラン生成物(例えば、Si,、SiOX、ここで、X=F、Cl、Br、又はIである)、並びに、金属ハロゲン化物類(例えば、AlX)を伴う所望のハロシラン類を有する。スラリーから液体を回収し、それにより、固体の高塩素残留物を生成することが望ましい。固体残留物をさらに処理することにより、より高価なヒドロクロロシランの損失を最小限にして塩化物値を取り戻すことができる(例えば、米国特許出願公開第2006/0183958A号を参照のこと)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッチ乾燥機は、ハロシラン類をスラリーから除去するのに効果的だが、欠点もある。例えば、不十分な加熱能力、及び/又は、テトラハロシラン(SiX)に比べて高い沸点を有する重質類(例えば、ポリハロシラン類、ポリハロオキシラン類、及び、金属ハロゲン化物類)の存在により、10時間超も時間がかかることがある。場合によっては、沸点はSiXの沸点より100℃も高い。また、スラリー中の研磨性固体により、乾燥機の壁が腐食される。バッチ乾燥機は、典型的には、広範囲に及ぶ磨耗や破損により、ハロシランユニットの寿命の間、例えば、4〜5年毎に数回の交換を必要とする。したがって、スラリー液と固体とを分離するための、より良い方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
反応残留物からハイドロハロシラン類を回収する方法が開示されている。方法は、ハロシラン類の製造中に生成された無機ハロシランスラリーを乾燥するステップを含む。方法は、(i)揮発性ハロシラン類(テトラハロシラン、トリハロシラン、ジハロシラン、又は、これらの組み合わせ)、(ii)ケイ素粒子、及び、(iii)重質類(例えば、高沸点のオリゴマー性又はポリマー性のケイ素系種、及び/又は、金属ハロゲン化物類)を含む無機ハロシランスラリーを、薄膜乾燥機の気化領域に流して揮発性ハロシラン類を気化するステップであり、気化領域は、大気圧以上の内圧を有し、内圧における揮発性ハロシラン類の沸点範囲の上限超の内部温度Tを有するステップと、気化領域から気化された揮発性ハロシラン類を回収するステップと、薄膜乾燥機の排出口からケイ素粒子、及び、作動条件によっては、より高沸点の化合物(重質類)を含む固体残留物を回収するステップとを含む。より高沸点の化合物は、金属ハロゲン化物類、ポリハロシラン類、ポリハロオキシラン類、又は、これらの混合物を含むことができる。適切な薄膜乾燥機は、気化領域内にローターを有し、当該ローターは、当該薄膜乾燥機の内壁表面に向かって延びた複数のブレードを有する。効果的な構成として、温度Tは、重質類の沸点範囲又は昇華点範囲の上限未満であり、生成物はさらに、重質類の少なくとも一部を含む。特定の例では、気化領域から回収された蒸気は実質的に重質類を含まない。
【0006】
いくつかの態様では、薄膜乾燥機はさらに、気化領域と排出口との間に位置付けられ、内部温度T、ここで、T>Tである、を有する第2気化領域を有し、当該方法はさらに、スラリーを、第1気化領域及び第2気化領域に順次流すステップを含む。内部温度Tが、内圧における重質類の少なくとも1種の沸点超又は昇華点超の温度であるとき、方法はさらに、第2気化領域において、重質類の少なくとも一部を気化して、重質蒸気を形成するステップと、重質蒸気を回収するステップとを含む。
【0007】
回収された蒸気は、混入微粒子を含むことができる。いくつかの態様では、回収後の蒸気を処理して、揮発性ハロシラン類から混入微粒子を分離する。薄膜乾燥機から回収された固体残留物は、周囲大気に曝されると反応性を示すことがある。いくつかの態様では、固体残留物を処理して、周囲大気に曝されても反応性を示さない固体物質を生成する。例えば、固体残留物をアルカリ性水和物と接触させて、安定した中和された固体を得ることができる。
【0008】
本発明の上記及びその他の特徴及び効果は、添付の図面を参照しながら進められる以下の詳細な説明からさらに容易に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】縦型の薄膜乾燥機の一実施形態を示す概略図である。
図2】1bar(100kPa)の圧力におけるSiCl−SiClOの気液平衡を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
無機ハロシランスラリーを乾燥する方法及び装置が開示されている。スラリーは、典型的には、ハロシラン類、重質類(例えば、Si若しくはSiOXといったポリハロシラン類/ポリハロオキシラン類、及び/又は、AlXといった金属ハロゲン化物類)、混入金属粒子、及び/又は、ケイ素粒子を有する。いくつかの実施形態では、スラリーは、無機クロロシランスラリーである。スラリーからハロシラン類を回収して、流動性粉末といった乾燥生成物を形成するために、薄膜乾燥機が使用される。また、スラリーから重質類を回収するか、又は、重質類の少なくとも一部が生成物に含まれることとすることができる。
【0011】
I.定義及び略語
以下、本開示をより良く説明し、本開示を実行する当業者をガイドするために、用語及び略語について説明する。本明細書で使用されるとき、「から成る(comprising)」は「含む(including)」ことを意味し、単数形(a、an、又は、the)は、文脈に明確に断りがない限り、複数のものも包括する。「又は」との用語は、文脈に明確に断りがない限り、記載の選択的な要素、又は、2以上の要素の組み合わせのうち1つの要素を指す。
【0012】
断りがない限り、本明細書で使用される技術的用語及び科学的用語は、本開示の属する分野の当業者に通常理解されるのと同一の意味を有する。本開示の実施又はテストには、本明細書に記載された方法及び物質と同様又は均等のものを使用することができるが、適した方法及び物質が以下に記載されている。こうした物質、方法、及び、例は、例示にすぎず、限定を意図するものではない。本開示のその他の特徴は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかである。
【0013】
断りがない限り、本明細書又は特許請求の範囲に使用される成分量、百分率、温度、及び、時間等を示す数字は全て「約」との用語で修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、断りがない限り、暗示的又は明示的に、記載の数値パラメータ及び/又は非数値特性は、求められる所望の特性、標準的テスト条件/方法で検出された限界(値)、処理方法の制限、及び/又は、パラメータ若しくは特性の性質に基づき得る近似である。
泡立ち点:気液平衡に対し、泡立ち点とは、液状混合物が最初に気化し始める温度である。
DCS:ジクロロシラン(SiHCl
露点:気液平衡に対し、露点とは、ガス状混合物が最初に凝縮し始める温度である。
微粒子:本明細書で使用されるとき、「微粒子」との用語は、10〜250μmの平均径を有する粒子を指す。
重質類:本明細書で使用されるとき、「重質類」との用語は、標準的な温度及び圧力において、テトラハロシランより高い沸点又は昇華点を有する反応生成物を包括する。クロロシラン類の製造プロセスでは、重質類は、STPにおいて58℃超の(すなわち、STPにおけるテトラクロロシランの沸点より高い)沸点又は昇華点を有する反応生成物である。重質類は、金属ハロゲン化物類(例えば、AlClといった塩化アルミニウム類)、ポリハロシラン類、及び/又は、ポリハロオキシラン類(例えば、SiCl、SiOCl)、並びに、これらの組み合わせを含む。
質量流速:単位表面積当たりの質量流量であり、典型的には、kgs−1−2の単位で測定される。
スラリー:微細な固体及び液体の、半液状の流動性混合物。
STC:四塩化ケイ素又はテトラクロロシラン
TCS:トリクロロシラン(SiHCl
VLE:気液平衡
揮発性ハロシラン類:テトラハロシラン、トリハロシラン、ジハロシラン、モノハロシラン、及び、これらの組み合わせ。
【0014】
II.典型的実施形態の概要
いくつかの実施形態にかかる、反応残留物から無機ハロシラン類を回収する方法は、(i)揮発性ハロシラン類、(ii)ケイ素粒子、及び、(iii)重質類を含む無機ハロシランスラリーを、薄膜乾燥機の気化領域に流して揮発性ハロシラン類を気化するステップであって、気化領域は、大気圧以上の内圧を有し、当該気化領域の内圧における揮発性ハロシラン類の沸点範囲の上限超の内部温度Tを有するステップと、気化領域から気化された揮発性ハロシラン類を回収するステップと、薄膜乾燥機の排出口からケイ素粒子を含む固体残留物を回収するステップとを含む。
【0015】
上記実施形態のいずれか又は全てにおいて、スラリーが当初において50重量%超の揮発性ハロシラン類を含むことができる。上記実施形態のいずれか又は全てにおいて、重質類は、金属ハロゲン化物類、ポリハロシラン類、ポリハロオキシラン類、又は、これらの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、スラリーが当初において50重量%以下の重質類を含む。上記実施形態のいずれか又は全てにおいて、固体残留物は、70%以上の乾燥度を有することができる。
【0016】
上記実施形態のいずれか又は全てにおいて、当該方法はさらに、0.001kgs−1−2〜0.1kgs−1−2のスラリー質量流速を維持できる速度で無機ハロシランスラリーを流すステップを含むを含むことができる。上記実施形態のいずれか又は全てにおいて、当該方法はさらに、内圧を101kPa〜170kPaの範囲に維持するステップを含むことができる。
【0017】
上記実施形態のいずれか又は全てにおいて、薄膜乾燥機は、気化領域内にローターを有することができ、当該ローターは、薄膜乾燥機の内壁表面に向かって延びた複数のブレードを有することができ、当該方法はさらに、ローターを回転させて、平均厚みが2mm以下のスラリー膜を内壁表面に形成するステップを含むことができる。
【0018】
上記実施形態のいずれか又は全てにおいて、当該方法はさらに、固体残留物を処理して、周囲大気に曝されても反応性を示さない固体物質を生成するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、固体残留物を処理するステップは、当該固体残留物をアルカリ性水和物に接触させるステップを含む。上記実施形態のいずれか又は全てにおいて、気化領域から回収された、気化された揮発性ハロシラン類はさらに、混入微粒子を含むことができ、当該方法はさらに、混入微粒子を揮発性ハロシラン類から分離するステップを含むことができる。
【0019】
上記実施形態のいずれか又は全てにおいて、内部温度Tは、内圧における重質類の沸点範囲又は昇華点範囲の上限未満とすることができ、固体残留物はさらに、重質類の少なくとも一部を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、気化領域から回収された蒸気は、実質的には重質類を含まない。
【0020】
上記実施形態のいずれか又は全てにおいて、無機ハロシランスラリーが、(i)四塩化ケイ素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、又は、これらのいずれかの混合物、(ii)ケイ素粒子、及び、(iii)重質類を含む無機クロロシランスラリーであるとき、内部温度Tは、80℃〜200℃とすることができる。いくつかの実施形態では、内部温度Tは80℃〜115℃に維持される。そうした実施形態では、固体残留物はさらに、重質類の少なくとも一部を含むことができる。
【0021】
上記実施形態のいずれか又は全てにおいて、薄膜乾燥機は、気化領域と排出口との間に位置付けられた第2気化領域を有することができ、当該方法はさらに、第2気化領域における内部温度T、ここで、T>Tである、を維持するステップと、スラリーを、第1気化領域及び第2気化領域に順次流すステップとを含むことができる。いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、内部温度Tを、内圧における重質類の少なくとも1種の沸点超又は昇華点超の温度に維持するステップと、第2気化領域において、重質類の少なくとも一部を気化して、重質蒸気を形成するステップと、重質蒸気を回収するステップとを含む。特定の実施形態では、固体残留物は、70%以上の乾燥度を有する。いくつかの実施形態では、無機ハロシランスラリーは、無機クロロシランスラリーであり、当該方法はさらに、内部温度Tを80℃〜115℃に維持し、内部温度Tを115℃〜200℃の範囲内に維持するステップを含む。
【0022】
III.反応残留物から無機ハロシラン類を回収する方法
無機ハロシラン類の製造により得られるスラリーは、固体及び気化可能なハロシラン類を有する。スラリーは、揮発性ハロシラン類、重質類(例えば、Si若しくはSiOXといったポリハロシラン類/ポリハロオキシラン類、及び/又は、AlXといった金属ハロゲン化物類)、混入金属粒子、及び/又は、ケイ素粒子を有し得る。いくつかの商業的な実施形態では、クロロシランプラントといったハロシランプラントは、毎分30リットル以下のスラリーを生成する。スラリーは、例えば、60〜92.5重量%又は80〜90重量%といった50〜95重量%の流体を有することができる。また、スラリーは、例えば、1〜40重量%、1〜30重量%、若しくは、2〜15重量%といった50重量%以下の重質類、又は、1〜40モル%の重質類、1〜30モル%の重質類、若しくは、1〜20モル%の重質類を有することができる。スラリーからハロシラン類を回収又は取り出すことが望ましい。いくつかの場合には、スラリーから重質類を回収することもできる。重質類は、ハロシラン類と同時の取り出し、及び/又は、ハロシラン除去後の取り出しが可能である。
【0023】
回収後のハロシラン類は、保管、及び/又は、高純度結晶ケイ素に基づく電子機器の製造に使用することができる。ケイ素含有ガスを熱分解して、高純度ケイ素を形成することができる。テトラハロシランを水素と反応させて、その他のハロシラン類及び/又はシランを生成することもできる。回収後の重質類は、保管、及び/又は、その他のプロセスに使用することができる。例えば、ポリハロシラン類及び/又はポリハロオキシラン類は、例えば、熱分解により、ハロシラン類の生成に使用することができる。また、ポリハロシラン類及び/又はポリハロオキシラン類を熱分解して、非結晶ケイ素及び/又は結晶ケイ素を得ることもできる。スラリーから除去された金属ハロゲン化物類は、保管、及び/又は、その他のプロセス(処理)に使用することができる。例えば、塩化アルミニウムは、アルミニウム金属及び/若しくはハロゲン化水素類の生成、石油精製、又は、塗料、合成ゴム、木材防腐剤、若しくは、制汗剤の製造に使用することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、スラリー液は、薄膜乾燥機を用いて単一パスで固体から分離され、実質的に乾燥した固体残留物が生成される。薄膜乾燥機の動作条件において気化されるその他の成分(例えば、AlCl)も固体から分離することができる。「実質的に乾燥している」とは、生成物が、70%以上、例えば、75%以上、80%以上、又は、85%以上の乾燥度を有することを意味する。逆に言えば、「実質的に乾燥している」とは、固体残留物が30重量%以下の回収可能なハロシラン類(すなわち、揮発性ハロシラン類)、例えば、25重量%以下、20重量%以下、又は、15重量%以下の回収可能なハロシラン類を含むことを意味する。乾燥度は、固体残留物サンプルの重量を測り、それから、一定重量まで、例えばホットプレートの上で乾燥させることにより求められる。百分率で表された乾燥度は、(最終重量/初期重量)×100%で算出される。百分率で表された乾燥度は、回収可能な液体(例えば、揮発性ハロシラン類)に基づいており、固体残留物は固体粒子中にいくらかの混入流体を含むことができる。固体残留物は、ペースト状からダンプパウダーまで多様であり得る。望ましくは、固体残留物は流動性粉末である。固体残留物は、ケイ素粒子を有し、さらに、(例えば、触媒及び/又はハロシラン処理機器からの)金属粒子を有することができる。乾燥機の条件(例えば、温度及び滞留時間)によっては、固体残留物はさらに、重質類を有することができる。
【0025】
適した薄膜乾燥機としては、市販されているもの(例えば、モデルNo.CP−0500[5−m乾燥機]、ノースカロライナ州シャーロット、LCI Corporation製)を、さらなる変更を加えて又は加えずに使用することができる。薄膜乾燥機の向きは、縦であっても横であってもよい。図1は、例示的な縦型の薄膜乾燥機10を示す図である。薄膜乾燥機10は、チャンバ13が規定された被加熱容器12を有する。チャンバ13は、1以上の気化領域と、チャンバ13内に1又は複数のブレード16を有するローター14とを有する。図1の被加熱容器12は、内壁12aと、内壁12aを取り囲み、内壁12aとの間に環状空間12cを規定する外壁12bとを有する。被加熱容器12は、例えば、空間12c内に加熱流体を循環させるといった任意の適切な手段により加熱することができる。適した加熱流体として、以下に限定されるわけではないが、蒸気及びオイルが挙げられる。適切な膜乾燥機のサイズは、少なくとも部分的には、プラント容量及び/又はスラリー生成速度により決定することができる。いくつかの構成では、薄膜乾燥機は、5〜20mの内壁表面積、例えば、5〜10mの内壁表面積を有することができる。
【0026】
チャンバ13内の温度は、空間12c内を循環する加熱流体の温度を調節して制御することができる。いくつかの例では、異なる温度(例えば、〜90℃及び〜200℃)の2種のオイル供給物を様々な割合で混合して、所望の温度の加熱流体を得ることができる。
【0027】
導入口18から導入されたスラリー供給物17が乾燥機に流れてローター14が回転すると、ブレード16の作用により、内壁12aの内表面に薄いスラリー膜が形成される。乾燥機が縦向きの場合は、導入口18は乾燥機の上部に配され、スラリー供給物は下向きに乾燥機を流れる。薄膜乾燥機は、連続モードで作動することができる。蒸気21及び23は、上側排出口2から向流方向に、及び/又は、下側排出口22から並流方向に、薄膜乾燥機から出ることができる。所望の場合は、蒸気21及び23を収集して任意の適切な手段により凝縮してもよい。ケイ素粒子を含む固体を有する固体残留物24は、下側排出口22から回収される。
【0028】
いくつかの実施形態では、ブレード16は、平均厚みが<2mmの薄いスラリー膜を形成する。この薄膜は、熱交換のための大きな表面積を作るため、それにより、薄膜乾燥機は、単一パスでスラリーを乾燥させて固体生成物を形成することができる。流動性固体残留物24が形成されると、当該粉末24はブレード16により内壁12aから削り落とされる。いくつかの例では、粉末が壁から削り落とされた後は、さらなる乾燥は行われない。
【0029】
薄膜乾燥機の内部温度薄膜の乾燥機の内部温度は、少なくとも部分的にはスラリーの組成に基づいて選択することができる。例えば、温度は、重質類濃度の異なる様々なスラリーを許容するように、及び/又は、固体残留物の組成を調製するように調節することができる。効果的な構成として、温度は、チャンバ13の作動圧力におけるスラリー中の揮発性ハロシラン類(例えば、テトラハロシラン、トリハロシラン、及び/又は、ジハロシラン)の沸点範囲より高い。揮発性ハロシラン類のみをスラリーから除去して、重質類を固体残留物に保持することが望ましいと考えられる。重質類が固体残留物に保持される場合、温度は、薄膜乾燥機内の圧力における重質類の少なくとも1種の沸点未満に選択される。特定の実施形態では、温度は、気化領域から回収された蒸気が実質的に重質類を含まないように選択される。「実質的に含まない」とは、蒸気が、5重量%未満の重質類、例えば、2重量%の重質類又は1重量%の重質類を含むことを意味する。
【0030】
いくつかの例では、スラリーは、クロロシランスラリーであり、薄膜乾燥機のチャンバ13内の温度は、80℃〜200℃の範囲に維持される。ハロシラン類がクロロシラン類である一構成では、温度が80℃〜115℃(すなわち、チャンバ13内の作動圧力におけるSTCの沸点超であり、重質類の沸点温度範囲/昇華点温度範囲の上限未満で)であり、固体残留物は重質類の少なくとも一部を含む。固体残留物は、重質類の略全て、例えば、重質類の95%以上、重質類の98%以上、又は、重質類の99%以上を有する。実質的に重質類を含まない固体残留物が望ましい場合は、温度は、チャンバ13の作動圧力における重質類の沸点温度範囲/昇華点温度範囲の上限超の温度、例えば、115℃〜200℃の範囲の温度といった、少なくとも115℃の温度に維持することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、被加熱容器12のチャンバ13は、第1(例えば、上側)気化領域Z1と第2(例えば、下側)気化領域Z2とを有する。この構成では、乾燥機の内壁と外壁との間の環状空間は、第1温度の第1加熱流体が第1領域Z1に相当する環状空間を循環し、第2温度の第2加熱流体が第2領域Z2に相当する環状空間を循環することができるように、構成又は分割されている。第1温度は、第2温度以下である。いくつかの構成では、第1温度は第2温度未満であり、揮発性成分(例えば、DCS、TCS、及び/又は、STC)は乾燥機の第1気化領域で気化及び回収し、揮発性の低い成分(例えば、ポリクロロシラン類といった重質類)は乾燥機の第2気化領域で気化及び回収することができる。また、重質類の一部は、乾燥機の上側排出口から出ることができる。2つの温度を用いた構成は、効果的な構成として、乾燥効率を低下させる乾燥機の導入口の膜沸騰を最小限に抑え、第1気化領域Z1からの揮発性種の選択的な回収を容易にする。一実施形態では、スラリーはクロロシランスラリーであり、第1領域Z1は80℃〜115℃の内部温度Tに維持され、第2領域Z2は115℃〜200℃の範囲内の内部温度Tに維持される。いくつかの場合、第1領域Z1で流動性粉末が生成されるならば、第2領域Z2では追加的な乾燥は行われない。
【0032】
乾燥機は、大気圧から僅かに高い圧力に及ぶチャンバ13内圧力、例えば、101kPa〜170kPa、又は、105kPa〜170kPaの範囲の圧力で作動することができる。いくつかの場合には、乾燥機は大気圧、すなわち、約101kPaで作動する。
【0033】
乾燥機内のスラリーの流量は、少なくとも部分的には、スラリーの組成、所望の残留物の乾燥度、乾燥機の内壁表面積、及び/又は、乾燥機の状態に基づいて選択することができる。流量は、例えば、スラリー中の固体濃度、スラリー中の重質類濃度、乾燥機の(1又は複数の)内部温度、ローターの回転速度、乾燥機の内壁表面積、薄膜の厚み、所望の残留物の乾燥度、又は、これらの組み合わせによる影響を受けることがある。一般的には、その他の変数を一定に保つとすれば、流量が低いほど乾燥度の高い固体残留物が生成される。一実施形態では、スラリーの単位面積当たりの質量流量(質量流速)は、0.001〜0.1kgs−1−2(3.6〜360kgh−1−2又は0.74〜74lbh−1ft−2)であり、例えば、質量流速は、0.002〜0.1kgs−1−2、0.002〜0.07kgs−1−2、0.002〜0.05kgs−1−2、0.005〜0.05kgs−1−2、0.007〜0.05kgs−1−2、0.01〜0.05kgs−1−2、0.02〜0.05kgs−1−2、又は、0.02〜0.04kgs−1−2である。
【0034】
滞留時間(RT)は、体積流量、内壁表面積、及び、膜の厚みから以下のように決定することができる。
RT=(内壁表面積×膜の厚み)/流量(リットル毎分)
したがって、10m(100,000cm)の内壁表面積を有し、厚み2mm(0.2cm)の膜を生成する乾燥機を毎分24リットル(24,000cm)の速度で流れるスラリーは、0.83分又は50秒の滞留時間を有することになる。
【0035】
いくつかの(例えば、10mの内壁表面積を有する乾燥機が使用される)実施形態では、開示の方法は、100〜150kg/時間の固体残留物を80%の乾燥度で生成することができ、この結果、25〜40kg/時間の液体除去能力が得られる。
【0036】
薄膜乾燥機の上側排出口から回収された蒸気は、スラリーから取り出された揮発性ハロシラン類を有する。回収された蒸気はさらに、蒸気流に混入された固体粒子である微粒子を有する。効果的な構成として、微粒子は、回収された蒸気流から分離される。微粒子は、凝縮機に蒸気流を通過させ、その後、セトラー容器に凝縮後の蒸気及び微粒子を流し、ここで重力により混入固体を凝縮後の蒸気から沈殿させて分離することができる。いくつかの実施形態では、凝縮後の蒸気の一部を再循環させて、凝縮機に入る蒸気流と結合させる。再循環された液体は蒸気の凝縮を促進し、凝縮機の壁を洗い流して微粒子によるファウリングを防ぐ。
【0037】
薄膜乾燥機から除去された固体残留物は、通常は、金属ハロゲン化固体を有し、周囲大気に曝されると反応性を示すままの状態である。固体残留物は、周囲大気に曝されると腐食性のハロゲン化水素ガス及び/又はハロゲン化水素酸を生成し、可燃性であり得る。例えば、ハロシランスラリーがクロロシラン類を有する場合、固体残留物は、金属塩化物類を有し得る。こうした金属塩化物類は、周囲大気に曝されると塩化水素ガス及び/又は塩化水素酸を生成することがある。そのため、固体残留物が周囲大気に対して反応性を示さないようにするために、さらに処理することができる。
【0038】
固体残留物を処理する適切な方法については、先行技術、例えば、米国特許出願公開第2006/0183958A号に記載されており、この内容を参照により本明細書に組み込むものとする。いくつかの実施形態では、アルカリ性水和物を用いて固体残留物を処理し、処分又は貴金属回収に適した、安定した中和された固体を得ることができる。固体残留物は、70℃超の温度(例えば、70〜150℃、70〜100℃、80〜100℃、又は、80〜90℃の温度)でアルカリ性水和物を用いて処理することができる。一般的には、処理後の固体残留物においてpH≧7を得るために、十分なアルカリ性水和物が加えられる。このプロセスに使用可能な適切なアルカリ性水和物類としては、例えば、セスキ炭酸ナトリウム、セスキ炭酸カリウム、硫酸アルミニウムナトリウム十二水和物、酢酸ナトリウム三水和物、リン酸アンモニウムナトリウム四水和物、炭酸ナトリウム十水化物、クエン酸三ナトリウム脱水物、リン酸二水素ナトリウム脱水物、並びに、炭酸カルシウム若しくは炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及び/又は、その他の塩基性塩類の混合物が挙げられる。加えて、アルミナイト、魚眼石、ブローダイト、斜方沸石、ゲイリュサック石、グメリン沸石、輝沸石、カイナイト、硫酸苦土石(キーゼル石)、ラウモニタイト、レビネ、中沸石、ミラビル石、モンモリロナイト、モルデン沸石、ソーダ沸石、ニューベリアイト、フィリップサイト、灰沸石(スコレス沸石)、束沸石、スツルバイト、及び、ダンプソイル(damp soil)といった、不活性な含水鉱物類を使用することができる。ダンプソイルの場合には、過剰な含水量は処理の困難性の原因となることがあるため、約5%(w/w)の含水量がほとんどの目的のために適切である。土壌は、石灰(炭酸カルシウム)、トロナ(炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及び、水を有する天然鉱物)、又は、その他のアルカリ固体と混合して、十分な中和強度を提供することができる。有害でない埋立て処分の要件を満たすためには、塩基性陰イオン(類)は、概して、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及び、マグネシウムに制限され、また、リチウム、ルビジウム、バリウム、及び、ストロンチウム等は除かれる。
【0039】
例示的な一方法では、固体残留物を水と混合してスラリーを形成する。スラリーに十分な炭酸カルシウムを加えて、スラリーを中和し、pH≧7を得る。それから、スラリーを遠心分離し、回収された固体(主に、塩化カルシウム)を収集及び処分、又は、いくつかの場合には、貴金属回収のためにさらに処理する。
【0040】
ハロシラン類の生成時に生じる固体残留物を処理するその他の方法については、特許文献、例えば、米国特許第5,182,095号、米国特許第5,246,682号、米国特許第8,119,086号、及び、独国特許第4116925A1号に記載されている。
【実施例】
【0041】
IV.実施例
スラリーをパイロット規模の、3ft(0.28m)の加熱表面を有する薄膜乾燥機で乾燥させた。薄膜乾燥機は、温度390oF(199℃)の熱油で加熱した。ローターは、可変速度制御を有し、概して600〜1000rpmに保たれた。ローターは、供給物分配リング、振り子振動式ブレード、及び、底部スタブ軸を有していた。スラリーは加熱領域上方に接線方向に入り、ローターにより本体の壁の内周にわたって均等に分配された。スラリーは、乾燥機に入った後、ローターブレードにより絶えず攪拌されながら、加熱された内壁を下向きに流れた。乾燥機のある地点で、固体が分離し始め、「ゼロクリアランス」ローターブレードにより壁から削り落とされた。粉末が形成され、乾燥機の底部から出て、ポータブルな容器内に落とされた。なお、容器の中身は定期的に空にした。蒸気はスラリーに対して向流方向に流れ、乾燥機の上部から容器に出された。
【0042】
加熱表面の膜沸騰を防ぐために、熱油を流し始める前に、スラリーを1〜2分間、乾燥機に導入した。乾燥機へのスラリー流量は、流量計弁を調節して制御した。流量の変動性が(すなわち、供給ラインにおける固体沈殿により)高いため、流量計は手動に設定し、弁位置は所望の流量が維持されるように調節した。
【0043】
初期の実験では、スラリー供給量は150〜250lb/hr(68〜113kg/hr)であった。その結果、236oF/113℃もの高い実験的蒸気温度(STCの沸点=135oF/57℃、TCSの沸点=89oF/32℃)、及び、275oF/135℃もの高い粉末温度で、STC及びTCSの完全な回収が実証された。固体残留物は、ペースト状からダンプパウダーまで多様であった。
【0044】
供給量及びスラリー組成を変化させていくつかの追加的な実験を行った。それぞれの実験で安定状態に達した後、スラリー、粉末、及び、蒸気のサンプルを収集した。スラリーの液体及び蒸気の組成をガスクロマトグラフィーにより判定した。既知量のスラリーサンプルをホットプレート上のアルミニウムボートで乾燥させて、スラリーの固体含有量を判定した。乾燥後の固体残留物の重量を判定し、スラリー中の固体率を算出するために用いた。
S%=(乾燥後スラリーの最終重量/スラリーの初期重量)×100%
【0045】
固体残留物サンプルの重量を測り、それから、一定重量まで、例えばホットプレートの上で乾燥させることにより、乾燥度を判定した。
%乾燥度=(乾燥後残留物の最終重量/残留物の初期重量)×100%
【0046】
揮発性シラン(例えば、STC、TCS、及び/又は、DCS)の回収率は、以下のように算出した。
=S%×F
LS=(100%−%乾燥度)×W
%回収=(((F−W)−WLS)/(F−W))×100%
ここで、W=供給物中の固体重量(kg/時間)、WLS=乾燥粉末に保持された液体重量(kg/時間)、F=供給量(kg/時間)、及び、S=固体重量百分率である。
【0047】
概して、スラリーは60重量%の揮発性物質(STC及びTCS)と、40重量%の重質類(SiCl及びSiOCl)とを含んでいた。これらの重質類の沸点は、135〜145℃の範囲である。スラリーは概して20〜36重量%の固体を含んでいた。25℃において、スラリーの密度は、固体含有量に応じて1665〜1810kg/m(104〜113lb/ft)の範囲であった。表1に、代表的なスラリー液の組成を示す。
【0048】
【表1】
【0049】
以下の表2に、試験結果の概要を示す。5回の実験から11のデータセットが収集された。詰まりが生じることなく供給ラインに一定の流れを維持するためには、約135kg/時間の最小供給量が必要であることが分かった。136kg/時間では、スラリーの体積流量は1.44L/分であった。これは、内径25.4mmのパイプにおいて約0.05m/秒のスラリー速度に等しい。供給量が低いほど、高い乾燥度に相関付けられ、揮発性ハロシラン類の含有量が低い流動性粉末が生成された。供給量が範囲にわたる場合は、範囲の上限を、単位時間当たりの、百分率で表された液体回収(率)の算出に用いた。
【0050】
【表2】
【0051】
表2の結果から、平均して、約135kg/時間の供給量で得られた乾燥後の残留物サンプルは76%の乾燥度を有し、液体回収率は87〜94%の範囲であった。乾燥度はスラリー中の固体率及びローター速度とは無関係であった。残留物が流動性粉末になると、これらはローターブレードにより加熱された壁から削り落とされるため、さらなる乾燥度は得られない。スラリーが19重量%の固体を含んでいた場合は、94%以下の液体(すなわち、揮発性ハロシラン類)が回収された。固体率が倍増すると、液体回収(率)は87%に低下した。残留物の乾燥度はスラリーの固体含有量とは無関係であったが、固体割合が増加すると、より多くの液体が固体に混入され、回収される液体量が低下した。ローター速度は、液体気化率に大きな影響を与えなかった。
【0052】
図2は、1barにおけるSTC及びSiClOの予測気液平衡(VLE)を示すグラフである。グラフ上側の曲線(実線)は露点を示し、下側の曲線(鎖線)は泡立ち点を示す。これらの予測された測定は、温度プローブが、上側蒸気排出口から測定して乾燥機から7フィート(2.1m)離れた位置に置かれていると想定したものであった。
【0053】
実験5及び6から得られたスラリーの液体部分は、0.23重量%のDCS、11.74重量%のTCS、46.96重量%のSTC、6.48重量%のSiOCl、及び、34.15重量%のSiClを含んでいた。この流体組成は、実験5及び6に予測された蒸気温度プロフィールと一貫性があった。
【0054】
開示の発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態に鑑みて、示された実施形態は単に例にすぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことが認識されるべきである。むしろ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲により規定される。
図1
図2