特許第6353150号(P6353150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6353150
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】インナーウェア
(51)【国際特許分類】
   A41C 1/00 20060101AFI20180625BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A41C1/00 E
   A41C1/00 F
   A41C1/00 D
   A41C1/00 G
   A41D13/05 125
   A41D13/05 136
   A41D13/05 143
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-209853(P2017-209853)
(22)【出願日】2017年10月30日
【審査請求日】2018年1月4日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)展示会で発表 展示日 平成29年9月27日〜平成29年9月29日 展示会名 第44回国際福祉機器展 開催場所 東京ビッグサイト(東京国際展示場)東展示ホール(東京都江東区有明3−11−1) (2)パンフレットを配布 配布日 平成29年9月27日〜平成29年9月29日 配布場所 東京ビッグサイト(東京国際展示場)東展示ホール(東京都江東区有明3−11−1)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(72)【発明者】
【氏名】正尾 菜実
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 利之
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−077407(JP,A)
【文献】 特開2017−053050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 1/00 − 5/00
A41D 13/00 − 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者に着用されるインナーウェアであって、
前記着用者の下腹部及び太腿を少なくともカバーするベース生地と、
前記ベース生地に連結されており、単独で又は他の生地とともに前記ベース生地よりも高弾性の部位を形成し、前記着用者の腸腰筋に筋繊維方向の伸縮を補助する力が作用するように、前記腸腰筋又は前記太腿の付け根付近をカバーする腸腰筋生地と、
前記ベース生地に連結されており、単独で又は他の生地とともに前記ベース生地よりも高弾性の部位を形成し、前記着用者のハムストリングに筋繊維方向の伸縮を補助する力が作用するように、前記ハムストリング又は前記太腿の裏側をカバーするハムストリング生地と
を備え
前記ハムストリング生地の長手方向は、前記ハムストリングの長手方向に沿って概ね上下方向に延びている、インナーウェア。
【請求項2】
前記ベース生地に連結されており、単独で又は他の生地とともに前記ベース生地よりも高弾性の部位を形成し、前記着用者の臀部を持ち上げるように前記臀部の下部をカバーするヒップアップ生地
をさらに備える、請求項1に記載のインナーウェア。
【請求項3】
前記ハムストリング生地と前記ヒップアップ生地とは、別体である、
請求項2に記載のインナーウェア。
【請求項4】
前記ハムストリング生地の高さ方向の弾性率は、水平方向の弾性率より小さい、
請求項1から3のいずれかに記載のインナーウェア。
【請求項5】
前記腸腰筋生地は、長手方向が前記太腿の付け根に沿って延在する、
請求項1から4のいずれかに記載のインナーウェア。
【請求項6】
前記腸腰筋生地の、前記太腿の付け根に沿う第1方向の弾性率は、前記第1方向に直交する第2方向の弾性率よりも小さい、
請求項1から5のいずれかに記載のインナーウェア。
【請求項7】
前記腸腰筋生地の、前記太腿の付け根に沿う第1方向の弾性率は、前記第1方向に直交する第2方向の弾性率よりも大きい、
請求項1から5のいずれかに記載のインナーウェア。
【請求項8】
前記ベース生地に連結されており、単独で又は他の生地とともに前記ベース生地よりも高弾性の部位を形成し、前記着用者の下腹部をカバーする下腹部生地
をさらに備える、
請求項1から7のいずれかに記載のインナーウェア。
【請求項9】
前記ベース生地に連結されており、単独で又は他の生地とともに前記ベース生地よりも高弾性の部位を形成し、前記着用者の骨盤をベルト状にカバーする骨盤生地
をさらに備える、
請求項1から8のいずれかに記載のインナーウェア。
【請求項10】
前記腸腰筋生地は、前記ベース生地よりも高弾性である、
請求項1から9のいずれかに記載のインナーウェア。
【請求項11】
前記ハムストリング生地は、前記ベース生地よりも高弾性である、
請求項1から10のいずれかに記載のインナーウェア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーウェアに関し、特に、骨盤を正しい傾きに導くことのできるインナーウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
骨盤を固定して腰を保護する最も一般的な腰痛対策器具として、コルセットが知られている。コルセットは、緊急対策に用いることが可能であり、即効性が高く、着脱が容易であるという利点を有する。その一方で、コルセットは、正しい装着位置からのズレ上がりにより効果が低下する虞がある。また、コルセットは、長期使用によりむしろ筋力が低下してしまう可能性があり、着用者は益々コルセットの装着が必要になり、手放せなくなるという悪循環が生じ得る。また、特許文献1のような骨盤矯正用の下半身用下着も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3183358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、骨盤周りの筋力のバランスが悪いと、骨盤が前傾又は後傾する。図1Aは、骨盤が正しい位置にある人の模式的な骨盤付近の側面図であり、図1Bは、反り腰の人の模式的な骨盤付近の側面図ある。これらの図において模式的に三角形で示されているのが、骨盤である。一般的には女性に多く見られがちであるが、腹筋、腸腰筋及び太腿の裏側のハムストリング等の骨盤周りの筋肉が弱く、一方で背筋が比較的強いと、図1Bのように骨盤が前傾する。また、特に図示しないが、骨盤周りの筋力のバランスが悪いと、骨盤が後傾することもある。骨盤の前傾及び後傾は、腰痛の原因ともなり得るため、その対策が重要であるが、コルセットのような骨盤周りのみの保護では、効果が乏しい。また、特許文献1の下半身用下着も、骨盤の前傾及び後傾の矯正には不十分である。
【0005】
本発明は、骨盤を正しい傾きに導くことのできるインナーウェアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点に係るインナーウェアは、着用者に着用されるインナーウェアであって、ベース生地と、腸腰筋生地と、ハムストリング生地とを備える。前記ベース生地は、前記着用者の下腹部及び太腿を少なくともカバーする。前記腸腰筋生地は、前記ベース生地に連結されており、単独で又は他の生地とともに前記ベース生地よりも高弾性の部位を形成し、前記着用者の腸腰筋に筋繊維方向の伸縮を補助する力が作用するように、前記腸腰筋又は前記太腿の付け根付近をカバーする。ハムストリング生地は、前記ベース生地に連結されており、単独で又は他の生地とともに前記ベース生地よりも高弾性の部位を形成し、前記着用者のハムストリングに筋繊維方向の伸縮を補助する力が作用するように、前記ハムストリング又は前記太腿の裏側をカバーする。
【0007】
第2観点に係るインナーウェアは、第1観点に係るインナーウェアであって、前記ベース生地に連結されており、単独で又は他の生地とともに前記ベース生地よりも高弾性の部位を形成し、前記着用者の臀部を持ち上げるように前記臀部の下部をカバーするヒップアップ生地をさらに備える。
【0008】
第3観点に係るインナーウェアは、第2観点に係るインナーウェアであって、前記ハムストリング生地と前記ヒップアップ生地とは、別体である。
【0009】
第4観点に係るインナーウェアは、第1観点から第3観点のいずれかに係るインナーウェアであって、前記ハムストリング生地の高さ方向の弾性率は、水平方向の弾性率より小さい。
【0010】
第5観点に係るインナーウェアは、第1観点から第4観点のいずれかに係るインナーウェアであって、前記腸腰筋生地は、長手方向が前記太腿の付け根に沿って延在する。
【0011】
第6観点に係るインナーウェアは、第1観点から第5観点のいずれかに係るインナーウェアであって、前記腸腰筋生地の、前記太腿の付け根に沿う第1方向の弾性率は、前記第1方向に直交する第2方向の弾性率よりも小さい。
【0012】
第7観点に係るインナーウェアは、第1観点から第5観点のいずれかに係るインナーウェアであって、前記腸腰筋生地の、前記太腿の付け根に沿う第1方向の弾性率は、前記第1方向に直交する第2方向の弾性率よりも大きい。
【0013】
第8観点に係るインナーウェアは、第1観点から第7観点のいずれかに係るインナーウェアであって、前記ベース生地に連結されており、単独で又は他の生地とともに前記ベース生地よりも高弾性の部位を形成し、前記着用者の下腹部をカバーする下腹部生地をさらに備える。
【0014】
第9観点に係るインナーウェアは、第1観点から第8観点のいずれかに係るインナーウェアであって、前記ベース生地に連結されており、単独で又は他の生地とともに前記ベース生地よりも高弾性の部位を形成し、前記着用者の骨盤をベルト状にカバーする骨盤生地をさらに備える。
【0015】
第10観点に係るインナーウェアは、第1観点から第9観点のいずれかに係るインナーウェアであって、前記腸腰筋生地は、前記ベース生地よりも高弾性である。
【0016】
第11観点に係るインナーウェアは、第1観点から第10観点のいずれかに係るインナーウェアであって、前記ハムストリング生地は、前記ベース生地よりも高弾性である。
【発明の効果】
【0017】
以上の観点によれば、着用者の下腹部及び太腿を少なくともカバーするベース生地と、腸腰筋又は太腿の付け根付近をカバーする腸腰筋生地と、ハムストリング又は太腿の裏側をカバーするハムストリング生地とを備えるインナーウェアが提供される。腸腰筋生地及びハムストリング生地は、各々、単独で又は他の生地とともにベース生地よりも高弾性の部位を形成し、それぞれ着用者の腸腰筋及びハムストリングに筋繊維方向の伸縮を補助する力を作用させることができる。その結果、骨盤周りの筋肉のバランスを保ち、骨盤を正しい傾きに導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】骨盤が正しい位置にある人の模式的な骨盤付近の側面図。
図1B】反り腰の人の模式的な骨盤付近の側面図。
図2A】本発明の一実施形態に係るインナーウェアの前面側の表面を示す外観図。
図2B図2Aのインナーウェアの背面側の表面を示す外観図。
図2C図2Aのインナーウェアの前面側の裏面を示す外観図。
図2D図2Aのインナーウェアの背面側の裏面を示す外観図。
図3A】下腹部生地の展開図。
図3B】もう一枚の下腹部生地の展開図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るインナーウェアについて説明する。
【0020】
<1.インナーウェアの全体構成>
図2A図2Dに、本実施形態に係るインナーウェア100の外観図を示す。図2A及び図2Bは、着用者に着用されたときのインナーウェア100の表面を示しており、前者が着用者の前面側から見た図であり、後者が背面側から見た図である。一方、図2C及び図2Dは、インナーウェア100を表面が内側にくるように裏返したときの外観図である。よって、図2C及び図2Dは、インナーウェア100の裏面を示しており、前者が着用者の前面側から見た図であり、後者が背面側から見た図である。なお、ここでは、特に断らない限り、前面及び背面、並びに上下及び左右は、インナーウェア100を着用した状態の着用者を基準に定義される。また、高さ方向は上下方向を意味し、水平方向は左右方向を意味する。
【0021】
図2A図2Dに示すように、本実施形態に係るインナーウェア100は、一般的にガードルと称されるタイプのインナーウェアであり、着用者の下半身、より具体的には、着用者の臀部、下腹部及び太腿を含む、腰から膝上までの部位をカバーする。インナーウェア100は、腰から膝上までの部位全体をカバーするベース生地1を有するとともに、このベース生地1に連結される各種生地20、30、40、50、60、70及び80をさらに有する。これらの生地20、30、40、50、60、70及び80は、ベース生地1に付加的な各種機能を付与し、当て布として、ベース生地1に重なり合うように縫い付けられる。インナーウェア100は、ベース生地1及び生地20、30、40、50、60、70及び80の所定の箇所を縫製し、繋ぎ合わせることにより作製される。
【0022】
生地20、40、50、60、70及び80は、身体の所定の部位をサポートする機能を有するサポート生地である。本実施形態では、サポート生地20、40、50、60、70及び80は、ベース生地1よりも高弾性の素材からなり、サポート生地20、40、50、60、70及び80にカバーされる身体の部位を締め付ける。本実施形態のインナーウェア100において特に重要な機能は、骨盤及び骨盤周りの筋肉をサポートし、骨盤の位置を矯正する機能であり、着用者の腰痛を予防及び改善することができる。
【0023】
<2.各部の構成>
以下、インナーウェア100を構成する各種生地1、20、30、40、50、60、70及び80について説明する。
【0024】
<2−1.ベース生地>
ベース生地1は、3種類の生地11、12及び13により構成される。生地11は、主として右臀部、右下腹部及び右太腿をカバーする右身頃11Rと、主として左臀部、左下腹部及び左太腿をカバーする左身頃11Lとを含み、生地11Rと11Lとは、左右対称の形状を有する。
【0025】
生地12は、下腹部の左右中央付近をカバーする生地であり、略逆台形である。生地12の台形の脚に対応する左右の縁12L及び12Rが、それぞれ左身頃11L及び右身頃11Rの前面側の縁の上部と縫い合わされる。生地13は、股部をカバーする生地であり、略矩形状である。生地13の1辺に対応する縁は、生地12の底辺に対応する縁12Dと縫い合わされる。また、生地13の別の2辺に対応する縁は、生地12の下方において、それぞれ左身頃11L及び右身頃11Rの前面側の縁の上下中央部に縫い合わされる。さらに、左身頃11L及び右身頃11Rの背面側の縁の上部どうしが互いに縫い合わされる。これにより、臀部及び下腹部をカバーする筒状の部位が形成される。
【0026】
右身頃11Rの前面側の縁の下部と、背面側の縁の下部とが縫い合わされる。これにより、着用者の右脚が通り抜け、右太腿を覆う筒状の部位が形成される。同様に、左身頃11Lの前面側の縁の下部と、背面側の縁の下部とが縫い合わされる。これにより、着用者の左脚が通り抜け、左太腿を覆う筒状の部位が形成される。なお、生地13の残りの1辺に対応する縁は、左身頃11L及び右身頃11Rにおける背面側の縁の上下中央部に縫い合わされる。
【0027】
以上のとおり、右身頃11R及び左身頃11L、並びに生地12及び13の4枚の生地を全て連結すると、ガードルの形状のベース生地1が形成される。なお、本実施形態では、ベース生地1を構成するこれらの4枚の生地11R、11L、12及び13は、全て同じ素材からなり、上下方向及び左右方向の伸縮性に富む。その結果、ベース生地1は、着用者がインナーウェア100を着用したときに、適度な圧迫力を以って、着用者の臀部、下腹部及び太腿にぴったりとフィットするように構成されている。
【0028】
<2−2.下腹部生地>
生地20は、下腹部の左右中央付近をカバーする生地であり、2層構造である。図3A及び図3Bにそれぞれ、2層構造の生地20を構成する2枚の生地20A及び20Bを示す。以下、これらの生地20A及び20Bを下腹部生地と呼ぶ。下腹部生地20A及び20Bは、ベース生地1に含まれる下腹部の左右中央付近をカバーする生地12と略同じ形状を有しており、略逆台形である。下腹部生地20A及び20Bと、生地12とは、互いに3層構造に重ね合わされ、3枚の生地20A、20B及び12の外周どうしが縫い合わされる。より具体的には、下腹部生地20Bは、生地12の内側(着用者側)に重ねられ、さらに下腹部生地20Bの内側(着用者側)に下腹部生地20Aが重ねられる。すなわち、下腹部生地20Bは、生地12と下腹部生地20Aとの間に閉じ込められる中布である。下腹部生地20A及び20Bは、インナーウェア100の内側に縫い付けられるため、外観に響かない。
【0029】
本実施形態では、2枚の下腹部生地20A及び20Bは、上下方向及び左右方向のいずれにもベース生地1よりも高弾性の素材からなり、さらに互いに同じ素材からなる。ただし、これらの下腹部生地20A及び20Bは、伸縮性の配向が異なる。より具体的に説明すると、図3A及び図3Bには、それぞれ上下方向及び左右方向に延びる矢印が示されているが、これらの矢印は、弾性率が最も低い方向を示している。これらの図に示すとおり、本実施形態では、下腹部生地20A及び20Bは、最も伸縮性に富む方向が互いに直交するように配向される。本実施形態では、下腹部生地20Aは、上下方向に最も伸縮し易く、下腹部生地20Bは、左右方向に最も伸縮し易い。しかしながら、この伸縮方向の配向は、逆であってもよい。なお、図2C及び図2Dにも、図3A及び図3Bと同様の矢印が示されるが、これらの矢印も弾性率が最も低い方向を示している。
【0030】
以上の結果、下腹部生地20A及び20Bは、着用者がインナーウェア100を着用したときに、ベース生地1よりも強い圧迫力を以って、着用者の下腹部にぴったりとフィットするように構成されている。よって、下腹部生地20A及び20Bは、インナーウェア100を着用した着用者の腹筋に圧迫力を作用させ、腹筋及びその周囲を引き締めることができる。図1A及び図1Bには、腹筋の位置が示されている。これらの図から分かる通り、下腹部生地20A及び20Bによる腹筋の引き締めは、例えば、反り腰の人の前傾した骨盤の前面側を引っ張り上げる効果をもたらすことができる。
【0031】
<2−3.股部生地>
生地30は、股部をカバーする生地である。以下、生地30を股部生地と呼ぶ。股部生地30は、ベース生地1に含まれる股部をカバーする生地13と略同じ形状を有しており、略矩形状である。股部生地30と、生地13とは、互いに2層構造に重ね合わされ、2枚の生地30及び13の外周どうしが縫い合わされる。より具体的には、股部生地30は、生地13の内側(着用者側)に重ねられる。よって、股部生地30は、インナーウェア100の内側に縫い付けられるため、外観に響かない。
【0032】
<2−4.ゴムテープ>
生地40は、細長いゴムテープ(以下、ゴムテープにも、符号40を付す)であり、ベース生地1の最上部において、腰周りに沿って一周するように延在する。ゴムテープ40と、ベース生地1の最上部とは、互いに2層構造に重ね合わされ、ゴムテープ40の短手方向の両端(上下端)においてそれぞれ長手方向に沿って縫い合わされる。また、長手方向の両端においてもそれぞれ短手方向に沿って縫い合わされる。ゴムテープ40は、ベース生地1の内側(着用者側)に重ねられる。よって、ゴムテープ40は、インナーウェア100の内側に縫い付けられるため、外観に響かない。
【0033】
本実施形態では、ゴムテープ40は、上下方向及び左右方向のいずれにもベース生地1よりも高弾性の素材からなる。本実施形態では、ゴムテープ40は、長手方向(左右方向)に最も伸縮し易い。よって、着用者がインナーウェアを着脱するときに、インナーウェア100の腰周りの部分が臀部の膨らみ等を容易に乗り越えることができ、着脱が容易となる。また、ゴムテープ40は、着用者がインナーウェア100を着用したときに、ベース生地1よりも強い圧迫力を以って、着用者の腰周りにぴったりとフィットするため、着用時のインナーウェア100のずれを防止することができる。
【0034】
<2−5.骨盤生地>
生地50は、骨盤をベルト状にカバーするメッシュゴムからなる生地である。以下、生地50を骨盤生地と呼ぶ。骨盤生地50は、生地50L及び50Rを含み、生地50Lと生地50Rとは、左右対称の形状を有する。生地50Lは、主として骨盤の左側をカバーする生地であり、生地50Rは、主として骨盤の右側をカバーする生地であり、生地50L及び50Rは、2枚一組となり、骨盤周りを概ね一周カバーする。骨盤生地50L及び50Rは、それぞれベース生地1に含まれる左身頃11L及び右身頃11Rの骨盤周りをカバーする部位と、2層構造を構成するように重ね合わされ、骨盤生地50L及び50Rの短手方向の両端(上下端)においてそれぞれ長手方向に沿って縫い合わされる。また、長手方向の両端においてもそれぞれ短手方向に沿って縫い合わされる。骨盤生地50L及び50Rは、ベース生地1の外側に重ねられる。
【0035】
本実施形態では、骨盤生地50L及び50Rは、上下方向及び左右方向のいずれにもベース生地1よりも高弾性の素材からなり、さらに互いに同じ素材からなる。本実施形態では、骨盤生地50L及び50Rは、長手方向(左右方向)に最も伸縮し易い。よって、着用者がインナーウェアを着脱するときに、インナーウェア100の腰周りの部分が臀部の膨らみ等を容易に乗り越えることができ、着脱が容易となる。
【0036】
また、以上の結果、骨盤生地50L及び50Rは、着用者がインナーウェア100を着用したときに、ベース生地1よりも強い圧迫力を以って、着用者の骨盤周りにぴったりとフィットするように構成されている。よって、着用時のインナーウェア100のずれを防止することができる。さらに、骨盤生地50R及び50Lは、インナーウェア100の着用者の骨盤に締め付け力を作用させ、骨盤を締めるようにサポートすることができる。
【0037】
<2−6.腸腰筋生地>
生地60は、腸腰筋又は太腿の付け根付近をカバーする細長い生地である。以下、生地60を腸腰筋生地と呼ぶ。生地60は、生地60L及び60Rを含み、生地60Lと生地60Rとは、左右対称の形状を有する。生地60Lは、主として腸腰筋又は太腿の付け根付近の左側をカバーする生地であり、生地60Rは、主として腸腰筋又は太腿の付け根付近の右側をカバーする生地である。腸腰筋生地60L及び60Rは、それぞれベース生地1に含まれる左身頃11L及び右身頃11Rの腸腰筋又は太腿の付け根付近をカバーする部位と、2層構造を構成するように重ね合わされ、腸腰筋生地60L及び60Rの短手方向の両端においてそれぞれ長手方向に沿って縫い合わされる。また、長手方向の両端においてもそれぞれ短手方向に沿って縫い合わされる。以上より、腸腰筋生地60L及び60Rは、それぞれその長手方向が左右の太腿の付け根に沿って延在するように縫い合わされる。より正確には、本実施形態では、腸腰筋生地60は、太腿の付け根のラインに略平行に、当該ラインから数センチ離れた位置を延びる。腸腰筋生地60L及び60Rは、ベース生地1の内側(着用者側)に重ねられる。よって、腸腰筋生地60L及び60Rは、インナーウェア100の内側に縫い付けられるため、外観に響かない。
【0038】
本実施形態では、腸腰筋生地60L及び60Rは、上下方向及び左右方向のいずれにもベース生地1よりも高弾性の素材からなり、さらに互いに同じ素材からなる。よって、着用者がインナーウェア100を着用したときに、ベース生地1よりも強い圧迫力を以って、着用者の太腿の付け根の近傍において付け根に略平行に延びる部位にぴったりとフィットするように構成されている。その結果、腸腰筋生地60L及び60Rは、インナーウェア100の着用者の太腿の付け根付近において、身体内部に存在する腸腰筋に筋繊維方向の伸縮を補助する力を作用させ、腸腰筋及びその周囲を引き締めることができる。図1A及び図1Bには、腸腰筋の位置が示されている。これらの図から分かる通り、腸腰筋生地60L及び60Rによる腸腰筋の引き締めは、例えば、反り腰の人の前傾した骨盤の前面側を引っ張り上げる効果をもたらすことができる。
【0039】
また、本実施形態では、図2Cのとおり、腸腰筋生地60L及び60Rは、長手方向に最も伸縮し易く、太腿の付け根のラインに沿う長手方向の弾性率は、太腿の付け根のラインに直交する短手方向の弾性率よりも小さく、短手方向に伸縮し難い。しかしながら、腸腰筋生地60L及び60Rを、短手方向に最も伸縮し易く、短手方向の弾性率が、長手方向の弾性率よりも小さく、長手方向に伸縮し難い構成とすることも可能である。いずれの場合においても、腸腰筋生地60L及び60Rは、太腿の付け根のラインに沿って、つまりは大まかに腸腰筋が延びる方向に沿って、腸腰筋に強力な筋繊維方向の伸縮を補助する力を作用させることができる。
【0040】
<2−7.ヒップアップ生地>
生地70は、臀部を持ち上げるように臀部の下部をカバーするやや細長い生地である。以下、生地70をヒップアップ生地と呼ぶ。生地70は、生地70L及び70Rを含み、生地70Lと生地70Rとは、左右対称の形状を有する。生地70Lは、主として臀部の左側の下部をカバーする生地であり、生地70Rは、主として臀部の右側の下部をカバーする生地である。ヒップアップ生地70L及び70Rは、それぞれベース生地1に含まれる左身頃11L及び右身頃11Rの臀部の下部をカバーする部位と、2層構造を構成するように重ね合わされ、ヒップアップ生地70L及び70Rの短手方向の両端においてそれぞれ長手方向に沿って縫い合わされる。また、長手方向の両端においてもそれぞれ短手方向に沿って縫い合わされる。以上より、ヒップアップ生地70L及び70Rは、それぞれその長手方向が臀部の下部に沿って延在するように縫い合わされる。ヒップアップ生地70L及び70Rは、ベース生地1の内側(着用者側)に重ねられる。よって、ヒップアップ生地70L及び70Rは、インナーウェア100の内側に縫い付けられるため、外観に響かない。
【0041】
本実施形態では、ヒップアップ生地70L及び70Rは、上下方向及び左右方向のいずれにもベース生地1よりも高弾性の素材からなり、さらに互いに同じ素材からなる。よって、着用者がインナーウェア100を着用したときに、ベース生地1よりも強い圧迫力を以って、着用者の臀部の下部にぴったりとフィットするように構成されている。その結果、ヒップアップ生地70L及び70Rは、インナーウェア100を着用した着用者の臀部の下部にこれを持ち上げるような力を作用させ、臀部を持ち上げた状態を固定するようにサポートする。
【0042】
また、本実施形態では、ヒップアップ生地70L及び70Rは、短手方向(概ね上下方向)に最も伸縮し易い。すなわち、長手方向(概ね左右方向)の弾性率は、短手方向の弾性率よりも大きく、伸縮し難い。その結果、ヒップアップ生地70L及び70Rは、左右方向に沿って、臀部の下部に強力な圧迫力を作用させ、これを持ち上げることができる。
【0043】
<2−8.ハムストリング生地>
生地80は、ハムストリング又は太腿の裏側をカバーするやや細長い生地である。以下、生地80をハムストリング生地と呼ぶ。生地80は、生地80L及び80Rを含み、生地80Lと生地80Rとは、左右対称の形状を有する。生地80Lは、主として左脚のハムストリング又は太腿の裏側をカバーする生地であり、生地80Rは、主として右脚のハムストリング又は太腿の裏側をカバーする生地である。ハムストリング生地80L及び80Rは、それぞれベース生地1に含まれる左身頃11L及び右身頃11Rのハムストリング又は太腿の裏側をカバーする部位と、2層構造を構成するように重ね合わされ、ハムストリング生地80L及び80Rの短手方向の両端においてそれぞれ長手方向に沿って縫い合わされる。ハムストリング生地80L及び80Rは、ベース生地1の内側(着用者側)に重ねられる。よって、ハムストリング生地80L及び80Rは、インナーウェア100の内側に縫い付けられるため、外観に響かない。
【0044】
本実施形態では、ハムストリング生地80L及び80Rは、上下方向及び左右方向のいずれにもベース生地1よりも高弾性の素材からなり、さらに互いに同じ素材からなる。よって、ハムストリング生地80L及び80Rは、着用者がインナーウェア100を着用したときに、ベース生地1よりも強い圧迫力を以って、着用者の太腿の裏側にぴったりとフィットするように構成されている。その結果、ハムストリング生地80L及び80Rは、インナーウェア100を着用した着用者の太腿の裏側において、身体内部に存在するハムストリングに筋繊維方向の伸縮を補助する力を作用させ、ハムストリング及びその周囲を引き締めることができる。図1A及び図1Bには、ハムストリングの位置が示されている。これらの図から分かる通り、ハムストリング生地80L及び80Rによるハムストリングの引き締めは、例えば、反り腰の人の前傾した骨盤の背面側を引っ張り下げる効果をもたらすことができる。
【0045】
また、図2Dに示す通り、本実施形態では、ハムストリング生地80L及び80Rの上方に、それぞれヒップアップ生地70L及び70Rが存在しており、上記のとおり、ヒップアップ生地70L及び70Rにより臀部が適切な位置に固定される。その結果、ハムストリング生地80L及び80Rが、太腿の裏側に確実に位置合わせされる。特に本実施形態では、ハムストリング生地80L及び80Rと、ヒップアップ生地70L及び70Rとが別体であり、ハムストリング生地80L及び80Rの上部がヒップアップ生地70L及び70Rの下部に連結されているため、以上の位置合わせの効果が顕著となる。
【0046】
さらに、本実施形態では、ハムストリング生地80L及び80Rの長手方向(概ね上下方向)の弾性率は、短手方向(概ね左右方向)の弾性率よりも小さく、長手方向に最も伸縮し易い。その結果、ハムストリング生地80L及び80Rは、ハムストリングが延びる上下方向に沿ってハムストリングの伸縮を阻害し難く、ハムストリングの筋力を適度に発揮させることができる。
【0047】
<3.特徴>
上記実施形態によれば、ガードルの形状を有するベース生地1を備えるインナーウェア100が提供される。ベース生地1には、骨盤周りをベルト状にカバーする高弾性の骨盤生地50が縫い付けられている。よって、骨盤生地50の締め付け力により、インナーウェア100の着用者の骨盤を締めつけ、固定するようにサポートすることができる。また、ベース生地1には、腸腰筋又は太腿の付け根付近をカバーする腸腰筋生地60と、ハムストリング又は太腿の裏側をカバーするハムストリング生地80とがさらに縫い付けられており、これらの生地60及び80も、ベース生地1よりも高弾性である。従って、インナーウェア100の腸腰筋及びハムストリングに筋繊維方向の伸縮を補助する力を作用させることができる。その結果、骨盤周りの筋肉のバランスを保ち、骨盤を正しい傾きに導くことができる。また、ベース生地1にさらに縫い付けられている下腹部生地20A及び20Bによっても、腹筋に圧迫力を作用させ、腹筋及びその周囲を引き締めることで骨盤を正しい傾きに導くことができる。
【0048】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0049】
<4−1>
上記実施形態では、インナーウェア100のベース生地1は、ガードルの形状とされたが、スパッツや全身ボディスーツのような形状とすることもできる。
【0050】
<4−2>
上記実施形態では、インナーウェア100のベース生地1と、各種生地20、30、40、50、60、70及び80とは重ね合わされたが、生地20、30、40、50、60、70及び80の少なくとも一部が存在する場所においてベース生地1が存在せず、つぎはぎの態様でベース生地1に連結されていてもよい。
【0051】
<4−3>
上記実施形態では、各種サポート生地20、40、50、60、70及び80が、ベース生地1よりも高弾性とされたが、サポート生地20、40、50、60、70及び80の少なくとも1つが、ベース生地1よりも高弾性でなくてもよい。この場合であっても、サポート生地20、40、50、60、70及び80が、単独で、又は他の生地(典型的には、ベース生地1)と重ね合わせられることで当該生地とともに、ベース生地1よりも高弾性の部位を形成すれば、上記したような身体の所定の部位をサポートする機能を発揮することができる。
【実施例】
【0052】
腸腰筋生地60L及び60Rを長手方向に最も伸縮し難く、短手方向に最も伸縮し易い構成とした点以外は、上記実施形態に係るインナーウェア100と同様のインナーウェアを用意し、実施例とした。そして、骨盤角度が12.2°被験者に、実施例に係るインナーウェアを装着させたところ、骨盤角度が10°に改善した。なお、骨盤角度は、8°〜10°が適切であり、ここでは、「整形外科・スポーツ傷害診察ハンドブック」(チャド・スターキーら著、ナップ出版社、2012年)の89頁に記載の「角度計検査 骨盤位の評価」と同様の方法で測定した。よって、実施例に係るインナーウェアの骨盤矯正効果が確認された。
【符号の説明】
【0053】
100 インナーウェア
1 ベース生地
20A、20B 下腹部生地
50 骨盤生地
60 腸腰筋生地
70 ヒップアップ生地
80 ハムストリング生地
【要約】
【課題】骨盤を正しい傾きに導くことのできるインナーウェアを提供する。
【解決手段】着用者に着用されるインナーウェアであって、ベース生地と、腸腰筋生地と、ハムストリング生地とを備えるインナーウェアが提供される。前記ベース生地は、前記着用者の下腹部及び太腿を少なくともカバーする。前記腸腰筋生地は、前記ベース生地に連結されており、単独で又は他の生地とともに前記ベース生地よりも高弾性の部位を形成し、前記着用者の腸腰筋に筋繊維方向の伸縮を補助する力が作用するように、前記腸腰筋又は前記太腿の付け根付近をカバーする。ハムストリング生地は、前記ベース生地に連結されており、単独で又は他の生地とともに前記ベース生地よりも高弾性の部位を形成し、前記着用者のハムストリングに筋繊維方向の伸縮を補助する力が作用するように、前記ハムストリング又は前記太腿の裏側をカバーする。
【選択図】図2C
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B