特許第6353189号(P6353189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353189
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】土質判定方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/00 20060101AFI20180625BHJP
   G01N 3/40 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   E02D1/00
   G01N3/40 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-3852(P2013-3852)
(22)【出願日】2013年1月11日
(65)【公開番号】特開2014-134064(P2014-134064A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年12月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第47回地盤工学研究発表会 第47回地盤工学研究発表会DVD梗概集
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505294218
【氏名又は名称】ジャパンホームシールド株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505359023
【氏名又は名称】末政 直晃
(72)【発明者】
【氏名】末政 直晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
(72)【発明者】
【氏名】大和 眞一
【審査官】 清藤 弘晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−133164(JP,A)
【文献】 特開平11−200355(JP,A)
【文献】 特開2007−321385(JP,A)
【文献】 特開2010−160067(JP,A)
【文献】 米国特許第04649741(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00− 3/115
G01N 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に貫入体を有する貫入ロッドを地中に回転貫入し、段階的に貫入ロッドに負荷する
荷重Wを変化させながら、1回転あたりの貫入ロッドの最大トルクTmaxおよび平均ト
ルクT(−)を測定し、最大トルクTmaxと平均トルクT(−)との比に基づいて砂質土、
粘性土および腐植土を判別することを特徴とする土質判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫入体を地中に回転貫入するときの回転トルクに基づく土質判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロータリーパーカッションドリルによる貫入試験において、貫入中のロッドに作用する荷重及びトルクを測定し、これら測定値に基づいて土質を調査する方法が知られている(特許文献1)。この土質調査は、試験パラメータとしてトルク増加勾配At(At=回転トルク増分/荷重増分)を用いており、所定の深度毎にトルク増加勾配Atの分布を求め、土質判別の境界値を求めることにより、粘性土と砂質土を判別しようとするものである。
【0003】
【特許文献1】特開平11−200355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記試験パラメータは、無次元化されていないので、割合を表す指標とはいえない。このような試験パラメータの変動パターンに基づいて土質を判別することは、工学上好ましくなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、貫入体の形状が土質判定に影響を及ぼすことを排除した土質判定方法を提供することを目的とするに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の土質判定方法は、先端に貫入体を有する貫入ロッドを地中に回転貫入し、段階的に貫入ロッドに負荷する荷重Wを変化させながら、1回転あたりの貫入ロッドの最大トルクTmaxおよび平均トルクT(−)を測定し、最大トルクTmaxと平均トルクT(−)との比に基づいて砂質土、粘性土および腐植土を判別することを特徴する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の土質判定方法は、荷重Wの変化に対する回転トルクTの変化の割合dT/dWを貫入体の最大直径Dで正規化した値dT/dWDを試験パラメータとしている。この試験パラメータは無次元数であり、荷重の変化に対する回転トルクの変化の割合を真に示すものとなる。試験パラメータを無次元数とすることにより、試験パラメータの変動をパターン化することができるので、貫入体の大きさが異なる貫入試験による回転トルクに基づく土質判定においても同次元での相対的な比較が可能となる。
【0011】
また、前記試験パラメータdT/dWDと土の硬さを表す指標Cpとの関係に基づく判定によれば、土質判定のみならず、その土質特性まで評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、図1乃至図3は、本発明に用いる試験パラメータ(回転トルクT)を取得するための貫入試験を示す。この貫入試験は、ロッド2の先端に、貫入体の一例であるスクリューポイント3を備えて成る貫入ロッド1を地中に回転貫入するものであり、試験深度区間0.25mに対して最大7段階(250N,375N,500N,625N,750N,875N,1kN)の荷重Wを錘4により載荷しながら、貫入ロッド1の1回転あたりの回転トルクT及び貫入量Sを測定する。具体的には、図1及び図3に示すように、まず、初期荷重250Nを貫入ロッド1に載荷した状態で1回転貫入させる(S01)。このとき、貫入量Stが25cmに達していない場合(S02)には、次の荷重375Nを貫入ロッド1に載荷して1回転貫入させる(S03)。1回転毎に荷重125Nを加算し、累積貫入量ΣStが0.25mに到達するまで回転貫入する。
【0013】
また、図2及び図3に示すように、最大荷重1kNを載荷した状態において(S04)、累積貫入量ΣStが0.25mに到達していない場合は、最大荷重1kNを載荷した状態で累積貫入量ΣStが0.25mに到達するまで回転貫入を繰り返す(S05)。そして、最初の試験深度区間(深度0m〜0.25m)の測定が終了すると、回転貫入を停止し(S06)、次の試験深度区間(深度0.25m〜0.5m)を測定する。このような場合には、試験区間における測定ポイントは、7箇所以上となる。反対に、最大荷重1kNを載荷する前に累積貫入量ΣStが0.25mに到達した場合には、図1に示すように、測定ポイントは、1乃至6箇所となる。
【0014】
ところで、上記貫入試験による測定値は、ロッド2の周面摩擦による影響を受けているため、スクリューポイント3に作用する荷重W及び回転トルクが測定できていない。そこで、0.25m貫入する毎に貫入ロッド1を1cm引き上げて回転させ(S07)、このときの回転トルクTmを測定し(S08)、元の位置へ戻す(S09)。この回転トルクTmは、ロッド2の周面摩擦の算定に用いる。算定方法としては、ロッド2に作用する鉛直及び水平方向の周面摩擦をそれぞれWf、Tfとした場合、スクリューポイント3に作用する荷重W及び回転トルクTは、貫入ロッド1全体に作用する荷重Wa及びTaを用いて次式で表される。
Wa=Wf+W、Ta=Tf+T
したがって、スクリューポイント3に作用する荷重W及び回転トルクTは、次式で表される。
W=Wa−Wf、T=Ta−Tf
以下の説明においては、貫入ロッド1の回転トルクTは、ロッド2の周面摩擦を考慮したものとする。
【0015】
図4(a)は、上記貫入試験により測定した回転トルクTの変動を示すものである。
【0016】
さらに、上記貫入試験は、一回転あたりの回転トルクTについて、最大値Tmax、最小値Tmin及び平均値T(−)を測定する。
【0017】
(第1の実施形態)
第1の実施形態による土質判定方法では、上記貫入試験による測定値に基づいて、試験パラメータとしてdT/dWDを設定する。この試験パラメータdT/dWDは、回転トルクTの増分/荷重Wの増分を、スクリューポイント3の最大直径Dで除して正規化したものであり、無次元数である。これは、荷重Wの変化に対する回転トルクTの変化の割合であり、図4に示すように、測定区間毎に作成した荷重Wと回転トルクTの関係を示す近似線の傾きを表す。この近似線の傾きは、砂質土及び粘性土によって、次のような特徴を示す。粘性土では、荷重Wの増加に対して回転トルクT/Dが一定若しくは減少する一方、砂質土では、荷重Wの増加に対して回転トルクT/Dが増大する。このため、砂質土及び粘性土を明確に判別することができる。
【0018】
また、土の硬さを示す指標Cpは次式で表され、Nswは貫入ロッドを0.25m貫入させるための回転数であり、Dはスクリューポイント3の最大直径である。
Cp=NswD/πT/WD
図5は、各調査場所における前記試験パラメータdT/dWDと試験パラメータCpの関係をプロットしたものであり、試験パラメータdT/dWDを横軸に、試験パラメータCpを縦軸に示したものである。これによれば、砂質土データはグラフ右側に多く分布し、粘性土データはグラフ左側に、貫入しにくい密な土であれば上側に分布し、貫入しやすい軟らかい土であれば下側に多く分布する傾向となっていることが分かる。このため、土質の特性まで判別することができる。
【0019】
上記土質判定方法は、回転トルクTの増分/荷重Wの増分を、貫入体の形状に合わせて無次元化した試験パラメータを用いるので、スクリューポイント、杭、コーン等、貫入体の形状が異なる貫入試験によって得られた回転トルクに基づく土質判定においても、相対的な比較が可能となる。
【0020】
(第2の実施形態)
第2の実施形態による土質判定方法は、上記貫入試験による一回転あたりの回転トルクTについて、最大値Tmax、最小値Tmin及び平均値T(−)に基づく土質判定である。砂質土での回転トルクTの傾向として、最大トルクTmaxと平均トルクT(−)がほぼ等しく、粘性土では、平均トルクT(−)が最大トルクTmaxの6.7 割の値である傾向にある。また、図6に示すように、試験パラメータとして最大トルク/平均トルクをトルク比として定義した土質判定によれば、トルク比が粘性土に比べると腐植土ではトルク比が大きくなることが判る。これは、腐植土では貫入ロッド1が回転中に腐植物に絡まる影響で瞬間的に回転トルクTが大きくなることにより、最大トルクTmaxが平均値T(−)より大幅に上回る傾向にあるからである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の土質判定方法に係る試験パラメータを測定するための貫入試験の第1例である。
図2】本発明の土質判定方法に係る試験パラメータを測定するための貫入試験の第2例である。
図3】本発明の土質判定方法に係る試験パラメータを測定するための貫入試験の手順を示すフローチャートである。
図4】本発明の土質判定方法に係る試験パラメータdT/dWDを示すグラフである。
図5】本発明の土質判定方法に係る試験パラメータdT/dWD及びCpの関係を示すプロット図である。
図6】本発明の土質判定方法に係る試験パラメータであるトルク比を示すグラフである。
【符号の説明】
【0022】
1 貫入ロッド
2 ロッド
3 スクリューポイント
4 錘
図1
図2
図3
図4
図5
図6