特許第6353210号(P6353210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353210
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】裁断加工ユニット
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/18 20060101AFI20180625BHJP
   B26D 1/24 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B26D7/18 E
   B26D1/24 Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-222431(P2013-222431)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2015-83328(P2015-83328A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002129
【氏名又は名称】デュプロ精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】船瀬 公資
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−213997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/18
B26D 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送しながら用紙に対して加工を施す用紙加工装置において用いられ、用紙を搬送方向に沿って裁断する裁断加工機を複数有する、裁断加工ユニットにおいて、
裁断加工機が、1つの上回転刃と1つの下回転刃とを擦り合わせて裁断を行うようになっており、
裁断加工機による裁断によって発生した裁ち屑を排除するための、裁ち屑排除手段を、備えており、
裁ち屑排除手段が、裁ち屑に上方から当接して裁ち屑を下方へ案内する排除部材を、裁断加工機の上回転刃の、搬送方向に対する直交方向の両側の各々に、有しており、
裁ち屑排除手段は、排除部材の作動位置を、当接位置と非当接位置との間で変位させる、変位機構を、有しており、
排除部材及び変位機構は、それぞれの裁断加工機に設けられている、
ことを特徴とする裁断加工ユニット。
【請求項2】
変位機構は、上回転刃の両側の排除部材の作動位置を一体的に変位させるとともに、一方の側の排除部材の作動位置Xと他方の側の排除部材の作動位置Yとを、次の2つの状態にできるように、構成されている、
(A)Xが当接位置且つYが非当接位置、
(B)Xが非当接位置且つYが当接位置、
請求項記載の裁断加工ユニット。
【請求項3】
変位機構は、作動位置Xと作動位置Yとを、更に、次の状態にできるように、構成されている、
(a)Xが非当接位置且つYが非当接位置、
請求項記載の裁断加工ユニット。
【請求項4】
変位機構は、作動位置Xと作動位置Yとを、更に、次の状態にできるように、構成されている、
(i)Xが当接位置且つYが当接位置、
請求項2又は3に記載の裁断加工ユニット。
【請求項5】
変位機構は、上回転刃の両側の排除部材の作動位置を各々独立して変位させるようになっている、
請求項1記載の裁断加工ユニット。
【請求項6】
排除部材は、回転することによって、作動位置が変位するようになっており、排除部材の回転中心が、搬送方向に対する直交方向から見た場合に上回転刃内に位置している、
請求項1〜のいずれか一つに記載の裁断加工ユニット。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一つに記載の裁断加工ユニットを備えている、
ことを特徴とする用紙加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裁断加工ユニットに関するものである。この裁断加工ユニットは、用紙を搬送しながら用紙に対して加工を施す用紙加工装置において用いられ、用紙を搬送方向に沿って裁断する裁断加工機を有している。
【背景技術】
【0002】
用紙を搬送しながら用紙に対して加工を施す用紙加工装置においては、用紙に裁断加工を施すと、不要な用紙片すなわち裁ち屑が発生する。裁ち屑は、そのまま放置しておくと、ジャム等の不具合を発生させる恐れがある。それ故、そのような用紙加工装置においては、裁ち屑を排除するのが好ましい。そこで、特許文献1、2の装置では、裁ち屑を排除するための裁ち屑排除手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−239309号公報
【特許文献2】特開2007−319969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、裁ち屑排除手段に関しては、簡素な構成で、効率的に且つ迅速に、裁ち屑を排除できることが、強く望まれている。
【0005】
本発明は、そのような裁ち屑排除手段を有する裁断加工ユニットを提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、用紙を搬送しながら用紙に対して加工を施す用紙加工装置において用いられ、用紙を搬送方向に沿って裁断する裁断加工機を複数有する、裁断加工ユニットにおいて、
裁断加工機が、1つの上回転刃と1つの下回転刃とを擦り合わせて裁断を行うようになっており、
裁断加工機による裁断によって発生した裁ち屑を排除するための、裁ち屑排除手段を、備えており、
裁ち屑排除手段が、裁ち屑に上方から当接して裁ち屑を下方へ案内する排除部材を、裁断加工機の上回転刃の、搬送方向に対する直交方向の両側の各々に、有しており、
裁ち屑排除手段は、排除部材の作動位置を、当接位置と非当接位置との間で変位させる、変位機構を、有しており、
排除部材及び変位機構は、それぞれの裁断加工機に設けられている、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、裁断加工機によって裁断を行う位置において、幅方向内側で発生した裁ち屑でも、幅方向外側で発生した裁ち屑でも、裁ち屑発生直後に排除することができる。したがって、裁ち屑の排除を効率的に行うことができる。
【0008】
しかも、裁ち屑の排除を、裁断加工機を幅方向に移動させることなく、また、裁ち屑排除のための他の部材を移動させて来ることもなく、実行できる。したがって、裁ち屑の排除を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態の裁断加工ユニット、を備えた用紙加工装置の、模式断面図である。
図2図1の装置における第3加工装置部の部分を示す模式断面図である。
図3】裁断加工ユニットを下流側から見た斜視図である。
図4】裁断加工ユニットを下流側から見た正面図である。
図5図4の右側の裁断加工機の拡大正面図である。
図6図4の右側の裁断加工機の要部を示す拡大正面図である。
図7図6の上体の拡大左斜視図である。
図8図6の上体の拡大右斜視図である。
図9】受容部を上流側から見た正面図である。
図10】本発明の第2実施形態の裁断加工ユニットの裁断加工機の要部を幅方向の内側から見た略図である。
図11図10に示される裁断加工機の要部を幅方向の外側から見た略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の裁断加工ユニット、を備えた用紙加工装置について、説明する。
【0011】
[全体構成]
図1は、本実施形態の裁断加工ユニット、を備えた用紙加工装置の、模式断面図である。用紙加工装置1は、装置本体10の両端に、給紙トレイを有する給紙部11と、排紙トレイを有する排紙部12と、を備えている。給紙部11から排紙部12へは、多数個の対のローラ21からなる搬送機構2によって搬送経路20が構成されている。搬送機構2は、用紙を、給紙部11から排紙部12へ向けて、矢印S方向に、搬送するようになっている。矢印Sが示す搬送方向において、給紙部11側を「上流側」と称し、排紙部12側を「下流側」と称する。そして、搬送経路20上には、給紙部11側から、搬送補正部、情報読取部、及びリジェクト部等(図示せず)を、経て、第1加工装置部3、第2加工装置部4、及び第3加工装置部5等が設けられている。これらは全て装置本体10に支持されている。なお、加工装置部の数は、加工の数に応じて定まり、3個に限らない。
【0012】
また、用紙加工装置1は、装置全体の作動を制御する制御部6を装置本体10内に備えている。制御部6は、操作パネル60に接続したCPUを有している。更に、用紙加工装置1は、用紙の加工によって発生する切り屑(裁ち屑も含む)を収容するためのゴミ箱101を装置本体10内の底部に有している。
【0013】
更に、操作パネル60は、設定部601及び表示部602を有している。作業者は、設定部601によって、用紙の加工情報、すなわち、用紙に対する加工の種類及び位置を含む加工内容を、設定することができる。表示部602は、加工情報を表示できる。
【0014】
[加工装置部]
第3加工装置部5について、説明する。なお、第1加工装置部3及び第2加工装置部4としては、この種の用紙加工装置の分野において公知の加工装置部を用いてもよく、又は、第3加工装置部5と同様の構成を有する加工装置部を用いてもよい。
【0015】
図2は、用紙加工装置1における第3加工装置部5の部分を示している。第3加工装置部5は、本実施形態の裁断加工ユニット51と、裁断加工ユニット51が着脱自在に装着される受容部52と、からなっている。受容部52には、裁断加工ユニット51を駆動する駆動部(後述する)と、ユニット検出部の一部と、が設けられている。受容部52は、装置本体10に構成されている。
【0016】
(裁断加工ユニット)
図3は、裁断加工ユニット51を下流側から見た斜視図である。図4は、裁断加工ユニット51を下流側から見た正面図である。
【0017】
裁断加工ユニット51は、天板511と、天板511の両端部から垂下された左側板512及び右側板513と、両側板512、513の下端部を連結した底フレーム514と、によって外枠体50が構成されている。天板511の上面には、裁断加工ユニット51を受容部52に対して着脱する際に把持する取手5111が、1個設けられている。
【0018】
裁断加工ユニット51は、外枠体50の内部スペース500に、2個の裁断加工機7A、7Bを、有している。裁断加工機7Aは、上回転刃と下回転刃とを擦り合わせることによって、用紙を搬送方向に沿って裁断するようになっている。裁断加工機7Bも同様である。裁断加工ユニット51は、更に、2個の裁断加工機7A、7Bの下回転刃を回転させるための回転機構と、裁断加工機7A、7Bを、それぞれ独立して、搬送方向に対する直交方向である幅方向Wに移動させるための、幅方向移動機構と、裁断加工機7A、7Bにおいて発生した裁ち屑を排除するための、裁ち屑排除手段と、を備えている。
【0019】
(a)裁断加工機
図5は、図4の裁断加工機7Aの拡大正面図である。図6は、裁断加工機7Aの要部を示す拡大正面図である。なお、裁断加工機7Aの構成と裁断加工機7Bの構成とは、幅方向において鏡像関係にある。
【0020】
裁断加工機7Aは、上回転刃71と下回転刃72とを搬送経路20の搬送面200にて擦り合わせることにより、搬送面200上の用紙を裁断するようになっている。裁断加工機7Aは、上回転刃71を保有する上体73と、下回転刃72を保有する下体74と、上体73と下体74とを連結する連結部材75と、からなっている。
【0021】
(b)回転機構
回転機構は、駆動軸64を有している。駆動軸64は、左側板512と右側板513との間に渡設されている。下回転刃72は、駆動軸64と共に回転するように、設けられている。上回転刃71は、搬送される用紙に連れられて、下回転刃72と共に回転するように、設けられている。
【0022】
(c)幅方向移動機構
裁断加工機7Aにおいて、上体73は、螺合部731を通るねじ軸711Aの回転に伴って、上ガイド軸712に沿って移動できるようになっており、下体74は、連結部材75により連結された上体73と共に一体的に下ガイド軸713に沿って移動できるようになっている。すなわち、ねじ軸711A、上ガイド軸712、及び下ガイド軸713によって、裁断加工機7Aの幅方向移動機構が構成されている。また、裁断加工機7Bにおいて、上体73は、螺合部731を通るねじ軸711Bの回転に伴って、上ガイド軸712に沿って移動できるようになっており、下体74は、連結部材75により連結された上体73と共に一体的に下ガイド軸713に沿って移動できるようになっている。すなわち、ねじ軸711B、上ガイド軸712、及び下ガイド軸713によって、裁断加工機7Bの幅方向移動機構が構成されている。
【0023】
(d)裁ち屑排除手段
裁ち屑排除手段は、裁ち屑に上方から当接して裁ち屑を下方へ案内する排除部材と、排除部材の作動位置を、当接位置と非当接位置との間で変位させる、変位機構と、変位機構を駆動する変位駆動機構と、を有している。排除部材及び変位機構は、裁断加工機7A、7B内に、それぞれ設けられている。
【0024】
(d-1)排除部材
図7は、図6の上体73の拡大左斜視図である。図8は、図6の上体73の拡大右斜視図である。裁断加工機7Aにおいて、上回転刃71の幅方向両側には、排除部材81、82が設けられている。排除部材81は、円板体811及び当接部812からなっている。排除部材82も、円板体821及び当接部822からなっている。
【0025】
排除部材81、82は、上回転刃71の支持軸800に回転自在に設けられている。すなわち、排除部材81、82の回転中心は、幅方向から見た場合すなわち矢印Y方向から見た場合に、上回転刃71内に位置している。裁断加工機7Bにおいても、同様である。したがって、排除部材81、82は、上回転刃71を収容している搬送方向スペースから、大きくはみ出ることなく、設けることができ、それ故、省スペース化を実現できる。
【0026】
(d-2)変位機構
裁断加工機7Aにおいて、支持軸800と平行に、支持軸801及び回転軸802が設けられており、両軸801、802には、排除部材81に対するカム機構83と、排除部材82に対するカム機構84とが、設けられている。すなわち、支持軸801、回転軸802、及びカム機構83、84によって、変位機構80が構成されている。
【0027】
カム機構83は、回転軸802に固定された偏心部材831と、偏心部材831によって押し引きされるアーム部832と、を有している。アーム部832は、基端8321が支持軸801に回転自在に支持されており、先端8322が円板体811の側面のピン8111に係合されている。ピン8111は、先端8322の長孔8323内に挿通している。これにより、カム機構83は、次のように作動するようになっている。すなわち、偏心部材831の膨出部8311によってアーム部832の中央の回転体8324が押されると、アーム部832の先端8322が下向きに移動するとともに、円板体811が矢印R1方向に回転し、当接部812が当接位置となる。これに対して、偏心部材831の膨出部8311がアーム部832の中央の回転体8324から離れると、アーム部832の先端8322が上向きに移動するとともに、円板体811が矢印R2方向に回転し、当接部812が非当接位置となる。ここで、当接部812の当接位置とは、当接部812が搬送面200上の裁ち屑に上方から当接して裁ち屑を下方へ案内する位置である。また、当接部812の非当接位置とは、当接部812が搬送面200上の用紙に当接しない位置である。
【0028】
カム機構84は、回転軸802に固定された偏心部材841と、偏心部材841によって押し引きされるアーム部842と、を有している。アーム部842は、基端8421が支持軸801に回転自在に支持されており、先端8422が円板体821の側面のピン8211に係合されている。ピン8211は、先端8422の長孔8423内に挿通している。これにより、カム機構84は、次のように作動するようになっている。すなわち、偏心部材841の膨出部8411によってアーム部842の中央の回転体8424が押されると、アーム部842の先端8422が下向きに移動するとともに、円板体821が矢印R1方向に回転し、当接部822が当接位置となる。これに対して、偏心部材841の膨出部8411がアーム部842の中央の回転体8424から離れると、アーム部842の先端8422が上向きに移動するとともに、円板体811が矢印R2方向に回転し、当接部822が非当接位置となる。ここで、当接部822の当接位置とは、当接部822が搬送面200上の裁ち屑に上方から当接して裁ち屑を下方へ案内する位置である。また、当接部822の非当接位置とは、当接部822が搬送面200上の用紙に当接しない位置である。
【0029】
これにより、上記構成の変位機構は、排除部材81の当接部812の作動位置を、当接位置と非当接位置との間で変位させるとともに、排除部材82の当接部822の作動位置も、当接位置と非当接位置との間で変位させるようになっている。すなわち、上記構成の変位機構は、排除部材81、82の作動位置を一体的に変位させるようになっている。
【0030】
そして、上記構成の変位機構は、排除部材81の当接部812の作動位置Xと、排除部材82の当接部822の作動位置Yとを、次の4つの状態にできるように、構成されている。
(1)Xが当接位置且つYが非当接位置(以下「状態1」という)、
(2)Xが当接位置且つYが当接位置(以下「状態2」という)、
(3)Xが非当接位置且つYが当接位置(以下「状態3」という)、
(4)Xが非当接位置且つYが非当接位置(以下「状態4」という)。
【0031】
裁断加工機7Bにおいても、同様である。
【0032】
なお、排除部材81、82の上記作動位置X、Yは、具体的には、偏心部材831の膨出部8311の作用角αと、偏心部材841の膨出部8411の作用角βと、膨出部8311と膨出部8411との位相差γと、によって、決まるようになっている。すなわち、作用角αは、回転軸802の回転に伴って、膨出部8311が、回転して、アーム部832の回転体8324を押し始めて押し終わるまでの、回転軸802の回転領域の角度である。作用角βは、回転軸802の回転に伴って、膨出部8411が、回転して、アーム部842の回転体8424を押し始めて押し終わるまでの、回転軸802の回転領域の角度である。上記構成の変位機構において、位相差γは、膨出部8311の作用角αの終点と膨出部8411の作用角βの始点とが一致するように、設定されている。これにより、膨出部8311が作用角αの始点と終点との間で回転体8324を押している時には、作動位置Xは当接位置にあるが、膨出部8411は、作用角βの範囲内に無いので、すなわち、回転体8424を押してはいないので、作動位置Yは非当接位置にある。すなわち、上記状態1になっている。次に、膨出部8311が作用角αの終点で回転体8324を押している時には、膨出部8411も作用角βの始点で回転体8424を押しているので、作動位置X及び作動位置Yは共に当接位置にある。すなわち、上記状態2になっている。次に、膨出部8411が作用角βの始点と終点との間で回転体8424を押している時には、作動位置Yは当接位置にあるが、膨出部8311は、作用角αの範囲内に無いので、すなわち、回転体8324を押してはいないので、作動位置Xは非当接位置にある。すなわち、上記状態3になっている。そして、膨出部8311が作用角αの範囲内に無く、膨出部8411も作用角βの範囲内に無い時には、膨出部8311は回転体8324を押してはおらず、膨出部8411も回転体8424を押してはいないので、作動位置X及び作動位置Yは共に非当接位置にある。すなわち、上記状態4になっている。
【0033】
(d-3)変位駆動機構
変位駆動機構は、図3に示されるように、左側板512と右側板513との間に渡設された回転軸85と、天板511の上に設置されたモータ86と、を有している。モータ86は、右側板513の外側において、ベルト伝達機構87を介して、回転軸85に連結されている。裁断加工機7Aにおいて、回転軸85は、ギヤ851を介して、回転軸802の端部のギヤ8021に連結されている。裁断加工機7Bにおいても、同様に、回転軸85は、ギヤ852を介して、回転軸802の端部のギヤに連結されている。
【0034】
(e)ユニット検出部の一部
底フレーム514の2箇所には、遮光板716、717が設けられている。遮光板716、717は、裁断加工ユニット51が受容部52に装着された際に、受容部52のセンサー981、982と共働して、裁断加工ユニット51の種類を検出するユニット検出部として、機能する。
【0035】
(受容部)
図9は、受容部52を下流側から見た正面図である。受容部52は、左側板91及び右側板92と下フレーム93とで構成された枠体90に、複数の駆動部とユニット検出部の一部とを備えている。
【0036】
(a)駆動部
複数の駆動部は、第1駆動部94、第2駆動部95、及び第3駆動部96である。
【0037】
第1駆動部94は、左側板91の上部に設けられており、左側板91の内側に位置するギヤ941と、左側板91の外側に位置してギヤ941を回転駆動するモータ942とからなっている。
【0038】
第2駆動部95は、右側板92の上部に設けられており、右側板92の内側に位置するギヤ951と、右側板92の外側に位置してギヤ951を回転駆動するモータ952とからなっている。
【0039】
第3駆動部96は、左側板91の下部に設けられており、左側板91の内側に且つ下フレーム93の上方に位置するギヤ961と、左側板91の内側に且つ下フレーム93の下方に位置するモータ962と、左側板91の外側に位置してモータ962の駆動力をギヤ961に伝達するギヤ、プーリー等の動力伝達部963とからなっている。
【0040】
裁断加工ユニット51が受容部52に装着されると、第1駆動部94は、加工機7Bの幅方向移動機構のねじ軸711Bに連結し、第2駆動部95は、加工機7Aの幅方向移動機構のねじ軸711Aに連結し、第3駆動部96は、加工機7A、7Bの回転機構の駆動軸64に連結するようになっている。すなわち、第1駆動部94及び第2駆動部95は、幅方向移動機構の駆動部として機能し、第3駆動部96は、回転機構の駆動部として機能するようになっている。
【0041】
(b)ユニット検出部の一部
下フレーム93の2箇所には、光学式のセンサー981、982が設けられている。センサー981、982は、裁断加工ユニット51の遮光板716、717と対向する位置に、設けられており、遮光板716、717と共にユニット検出部を構成している。裁断加工ユニット51が受容部52に装着されると、センサー981、982の通光が遮光板716、717によって遮断され、これによって、装着されたことが検出される。また、遮光板716、717の有無のパターンを加工ユニットの種類に応じて異ならせておくことにより、ユニット検出部は、加工ユニットの種類を識別することができる。
【0042】
[作動]
まず、裁断加工ユニット51を受容部52に装着する。このとき、ユニット検出部が作動して、受容部52に裁断加工ユニット51が装着されたことが、検出される。
【0043】
次に、操作パネル60の設定部601から、用紙の加工情報を入力する。これにより、第1加工装置部3、第2加工装置部4、及び第3加工装置部5における、加工条件が設定される。なお、加工情報は、予め用紙に印刷されているバーコード等の情報媒体を、情報読取部で読み取ることによって、入力してもよい。
【0044】
そして、用紙加工装置1の作動が開始すると、給紙部11に載置されている用紙が、搬送経路20の搬送面200上を搬送されながら、設定された加工条件に従って、第1加工装置部3及び第2加工装置部4で加工され、第3加工装置部5へ搬送される。
【0045】
第3加工装置部5へ搬送されて来た用紙は、設定された加工条件に従って、次のように加工される。なお、設定された加工条件は、用紙を裁断加工機7Aのみによって幅方向Wの所定位置W1で裁断し、それによって、幅方向内側に裁ち屑が発生し、その裁ち屑を排除する、という内容であると仮定する。
(a)まず、幅方向移動機構が作動して、裁断加工機7Aが所定位置W1へ移動するとともに、裁断加工機7Bが左側板512近傍のホームポジション(退避位置)に移動する。
(b)モータ86が作動して、回転軸85が回転し、ギヤ851、8021を経て、回転軸802が回転し、それによって、カム機構83、84が作動する。その結果、排除部材81が当接位置に設定されると同時に排除部材82が非当接位置に設定される。すなわち、変位駆動機構及び変位機構が作動することによって、排除部材81、82が、裁ち屑排除に関する加工条件を実現できる状態となる。
(c)そして、搬送されて来た用紙は、裁断加工機7Aにおいて、上回転刃71と下回転刃72との擦り合わせによって搬送方向に裁断され、それとともに、幅方向内側で発生した裁ち屑は、排除部材81の当接部812によって下方へ案内されてゴミ箱101内へ排除される。
【0046】
このように、第3加工装置部5へ搬送されて来た用紙は、設定された加工条件に従って、加工される。そして、加工された用紙は、更に、搬送経路20の搬送面200上を搬送され、排紙部12へ送られる。
【0047】
なお、第3加工装置部5に対して設定された加工条件が、上記加工条件に対して次の点のみで異なっている場合には、第3加工装置部5は次のように作動する。
(A)幅方向外側で裁ち屑が発生する場合。この場合には、カム機構83、84が作動して、排除部材81が非当接位置に設定されると同時に排除部材82が当接位置に設定され、幅方向外側で発生した裁ち屑は、排除部材82の当接部822によって下方へ案内されてゴミ箱101内へ排除される。
(B)幅方向の内側及び外側で裁ち屑が発生する場合。この場合には、カム機構83、84が作動して、排除部材81が当接位置に設定されると同時に排除部材82が当接位置に設定され、幅方向内側で発生した裁ち屑は、排除部材81の当接部812によって下方へ案内されて、同時に、幅方向外側で発生した裁ち屑は、排除部材82の当接部822によって下方へ案内されて、ゴミ箱101内へ排除される。
(C)裁ち屑が発生しないので、裁ち屑を排除しない場合。この場合には、カム機構83、84が作動して、排除部材81、82は共に非当接位置に設定され、裁ち屑の排除は行われない。
(D)裁断加工機7Bのみが裁断を行う場合。この場合には、幅方向移動機構が作動して、裁断加工機7Bが幅方向Wの所定位置へ移動するとともに、裁断加工機7Aが右側板513近傍のホームポジション(退避位置)に移動する。そして、裁断加工機7Bは、上述した裁断加工機7Aと同様に作動する。
(E)裁断加工機7A、7Bが裁断を行う場合。この場合には、幅方向移動機構が作動して、裁断加工機7A、7Bが幅方向Wの所定位置へ移動する。そして、裁断加工機7A、7Bは、上述した裁断加工機7Aと同様に作動する。
【0048】
[効果]
上記構成の裁断加工ユニット51によれば、裁断加工機7A、7Bによって裁断を行う位置において、排除部材81の当接部812の作動位置Xと、排除部材82の当接部822の作動位置Yとを、状態1及び状態3のいずれか一方に選択的に設定することができるので、幅方向内側で発生した裁ち屑でも、幅方向外側で発生した裁ち屑でも、裁ち屑発生直後に排除することができる。したがって、裁ち屑の排除を効率的に行うことができる。
【0049】
しかも、裁ち屑の排除を、裁断加工機7A、7Bを幅方向に移動させることなく、また、裁ち屑排除のための他の部材を移動させて来ることもなく、実行できる。したがって、裁ち屑の排除を迅速に行うことができる。
【0050】
更に、裁ち屑排除手段は、1本の回転軸85で駆動されるカム機構83、84によって構成されているので、簡素な構成を有している。
【0051】
なお、上記構成の裁断加工ユニット51は、大きな裁ち屑を更に裁断して排除するために、大きな裁ち屑が発生する加工装置部の下流に、配設してもよい。この場合には、例えば、排除部材81の当接部812の作動位置Xと、排除部材82の当接部822の作動位置Yとを、共に当接位置(すなわち状態2)に設定することにより、大きな裁ち屑を、幅方向内側の裁ち屑と幅方向外側の裁ち屑との、2つの裁ち屑に分けることができる。すなわち、裁断加工機7A、7Bにおける上回転刃の幅方向両側で裁ち屑が発生する場合でも、両方の裁ち屑を排除できる。
【0052】
また、上記構成の裁断加工ユニット51は、裁断加工機7A、7Bにおける上回転刃の幅方向両側で裁ち屑が発生しない場合には、排除部材81の当接部812の作動位置Xと、排除部材82の当接部822の作動位置Yとを、共に非当接位置(すなわち状態4)に設定することにより、裁断した用紙を排除せずに下流側に搬送することができる。
【0053】
<第2実施形態>
本実施形態の裁断加工ユニット51においては、排除部材81の作動位置と排除部材82の作動位置とを、独立して設定できるようになっている。それ以外は、第1実施形態と同様である。図10は、裁断加工機7Aの要部を幅方向Wの内側から見た略図である。図11は、裁断加工機7Aの要部を幅方向Wの外側から見た略図である。
【0054】
図10において、排除部材81は、回転軸804回りに回転可能に設けられている。回転軸804は、上回転刃71の支持軸800に対して平行に、且つ、支持軸800の下方に、且つ、幅方向内側から見た場合に上回転刃71内に位置するように、且つ、上回転刃71の幅方向内側において片持ち支持で、設けられている。そして、回転軸804には、ベルト伝達機構881を介して、回転軸882が連結されている。回転軸882は、第1モータ86の駆動を受ける回転軸85に、ギヤ8821、8831を介して、連結されている。これにより、第1モータ86が作動して、ギヤ8831がQ1方向へ所定量だけ回転すると、ギヤ8821、回転軸882、ベルト伝達機構881、及び回転軸804を経て、排除部材81がR1方向へ所定量だけ回転し、その結果、排除部材81は、当接位置となる。また、第1モータ86が作動して、ギヤ8831がQ2方向へ所定量だけ回転すると、ギヤ8821、回転軸882、ベルト伝達機構881、及び回転軸804を経て、排除部材81がR2方向へ所定量だけ回転し、その結果、排除部材81は、非当接位置となる。
【0055】
図11において、排除部材82は、回転軸805回りに回転可能に設けられている。回転軸805は、上回転刃71の支持軸800に対して平行に、且つ、支持軸800の下方に、且つ、幅方向外側から見た場合に上回転刃71内に位置するように、且つ、上回転刃71の幅方向外側において片持ち支持で、設けられている。そして、回転軸805には、ベルト伝達機構884を介して、回転軸885が連結されている。回転軸885は、第2モータ(図示せず)の駆動を受ける回転軸886に、ギヤ8851、8861を介して、連結されている。これにより、第2モータが作動して、ギヤ8861がQ1方向へ所定量だけ回転すると、ギヤ8851、回転軸885、ベルト伝達機構884、及び回転軸805を経て、排除部材82がR1方向へ所定量だけ回転し、その結果、排除部材82は、当接位置となる。また、第2モータが作動して、ギヤ8861がQ2方向へ所定量だけ回転すると、ギヤ8851、回転軸885、ベルト伝達機構884、及び回転軸805を経て、排除部材82がR2方向へ所定量だけ回転し、その結果、排除部材82は、非当接位置となる。
【0056】
すなわち、本実施形態においては、変位機構は、回転軸804、805及びベルト伝達機構881、884によって構成されており、変位駆動機構は、回転軸882、85、885、886、ギヤ8821、8831、8851、8861、第1モータ86、及び第2モータによって、構成されている。そして、排除部材81、82は、それぞれ独立して、当接位置と非当接位置との間を変位できる。
【0057】
本実施形態においては、上回転刃71の幅方向内側のみに裁ち屑が発生する場合には、排除部材81が当接位置に設定され、排除部材82は非当接位置に設定される。すなわち、上記状態1に設定される。また、上回転刃71の幅方向外側のみに裁ち屑が発生する場合には、排除部材81は非当接位置に設定され、排除部材82が当接位置に設定される。すなわち、上記状態3に設定される。また、上回転刃71の幅方向両側で裁ち屑が発生しない場合には、排除部材81、82は共に非当接位置に設定される。すなわち、上記状態4に設定される。また、上回転刃71の幅方向両側で裁ち屑が発生する場合には、排除部材81、82は共に当接位置に設定される。すなわち、上記状態2に設定される。
【0058】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、次のような効果を発揮できる。
(i)第1モータの作動量を適宜設定することにより、排除部材81の当接位置を微妙に調整でき、すなわち、排除部材81の裁ち屑への当接具合を調整できる。排除部材82に関しても同様である。したがって、裁ち屑となる用紙のコシの強弱に応じて、当接具合を変更し、それによって、裁ち屑を良好に且つ確実に排除できる。
【0059】
<変形構成>
(a)裁断加工ユニット51が有する裁断加工機の数は、2個に限らず、1個でもよく、3個以上でもよい。
(b)変位駆動機構は、モータを廃して、手動で駆動するように構成してもよい。
(c)第1実施形態の変位機構は、カム機構に代えて、同様の機能を有する他の機構、例えば非円形歯車機構等を、採用してもよい。
【0060】
(d)排除部材の形状は、裁ち屑を下方に案内できる形状であれば、図示の形状に限定されない。
(e)操作パネル60は、表示部602を有していなくてもよい。
(f)第1実施形態の変位駆動機構は、ベルト伝達機構に代えて、カム機構又は歯車機構を用いてもよい。
【0061】
(g)第2実施形態の変位機構は、ベルト伝達機構に代えて、カム機構又は歯車機構を用いてもよい。
(h)排除部材の回転中心は、幅方向から見た場合に、上回転刃内に位置しているのが、好ましいが、必ずしも、そうでなくてもよい。
【0062】
(i)排除部材81の当接部812の作動位置Xと、排除部材82の当接部822の作動位置Yとは、上記状態1〜4のうち、少なくとも、状態1及び状態3のいずれか一方に選択的に設定できればよく、必ずしも、状態2及び/又は状態4に設定できなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の裁断加工ユニットは、裁ち屑が裁断加工機の回転刃の幅方向のいずれの側で発生したとしても、裁断加工機を幅方向に移動させることなく、また、裁ち屑排除のための他の部材を移動させて来ることもなく、裁ち屑を発生直後に排除できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0064】
1 用紙加工装置 51 裁断加工ユニット 7A、7B 裁断加工機 71 上回転刃 72 下回転刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11