(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353216
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】荷台可動車両
(51)【国際特許分類】
B60R 21/34 20110101AFI20180625BHJP
【FI】
B60R21/34
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-237155(P2013-237155)
(22)【出願日】2013年11月15日
(65)【公開番号】特開2015-96387(P2015-96387A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2016年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】足立 大志
(72)【発明者】
【氏名】小山 和益
(72)【発明者】
【氏名】岩本 幸司朗
【審査官】
野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−119302(JP,A)
【文献】
特開2011−005967(JP,A)
【文献】
特開平08−142922(JP,A)
【文献】
実開昭58−147858(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R21/34
B60R19/38
B60R19/56
B62D35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに対して移動可能に設けられた荷台と、
前記車体フレームの側方に位置するサイドカバーと、
前記車体フレームに固定されて、当該車体フレームの側方に張り出すステーと、
前記ステーに対して前記サイドカバーを、前後方向に延びる軸を中心として回動可能に連結するヒンジ部と、
前記ステーに対して前記サイドカバーを係止する止め具とを備え、
前記荷台は、移動前においても移動後においても前記車体フレームに対して設けられている荷台可動車両。
【請求項2】
前記ステーは、前記車体フレームから側方に延びる側方ステーと、該側方ステーから下方に延びる上下ステーとを備え、
前記上下ステーには、前後方向に延びるバーが取り付けられ、
前記ヒンジ部は前記バーに設けられた請求項1に記載の荷台可動車両。
【請求項3】
複数の止め具が用いられ、該複数の止め具は、主止め具と、該主止め具とは係止方式が異なる副止め具とから構成された請求項1または2に記載の荷台可動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドガードを備えた荷台可動車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サイドガードを備えた車両が知られており、例えば特許文献1に示されている。サイドガードとは、車両の側方における、側面視で前輪と後輪との間に設置された板状部材であって、衝突事故の際等に、車体フレームに取り付けられたバッテリー、燃料タンク、スペアタイヤ等を衝突物から保護したり、歩行者や物体の巻き込みを防止したりするために設けられている。
【0003】
このサイドガードは、車両の本体に対しヒンジを介して回動可能に支持され、かつ、ロック機構により車両の本体に係止されるよう構成されている。このため、ロック機構を開放した上でサイドガードを車両の本体に対して回動させることにより、サイドガードによって隠されていたバッテリー等を露出させることができるため、車両のメンテナンス作業等を容易に行うことができる。
【0004】
ここで、特許文献1に記載の車両は、荷台が車体フレームに対して固定されている。そして、前記ロック機構は荷台に位置している。このため、例えば荷台が車体フレームに対して前後方向に移動可能な車両(荷台可動車両)である場合に特許文献1に記載の構成を適用しようとすると、荷台を移動させるに先立ってロック機構を開放しなければならない。そして、もしもロック機構を開放せずに荷台を移動させてしまった場合には、ロック機構が破損してしまう。このように、特許文献1に記載のサイドガードを荷台可動車両に適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭54−1844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、荷台を支障なく移動させることのできる、サイドガードを備えた荷台可動車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車体フレームと、前記車体フレームに対して移動可能に設けられた荷台と、前記車体フレームに固定されて、当該車体フレームの側方に位置するサイドカバーと、前記車体フレームの側方に張り出すステーと、前記ステーに対して前記サイドカバーを、前後方向に延びる軸を中心として回動可能に連結するヒンジ部と、前記ステーに対して前記サイドカバーを係止する止め具とを備え
、前記荷台は、移動前においても移動後においても前記車体フレームに対して設けられている荷台可動車両である。
【0008】
この構成によれば、サイドカバーがサイドガードとして機能するものとでき、荷台の移動に際し、移動の都度止め具を開放させる必要がない。また、ヒンジ部、止め具等を破損してしまう可能性を小さくできる。
【0009】
また、前記ステーは、前記車体フレームから側方に延びる側方ステーと、該側方ステーから下方に延びる上下ステーとを備え、前記上下ステーには、前後方向に延びるバーが取り付けられ、前記ヒンジ部は前記バーに設けられるものとできる。
【0010】
この構成によれば、ヒンジ部は前記バーに設けられる。このため、ヒンジ部がステーではなくバーに位置することから、複数のステーの配置間隔が異なる車両に対しても、ヒンジ部を位置変更することなく取り付けることができる。
【0011】
また、複数の止め具が用いられ、該複数の止め具は、主止め具と、該主止め具とは係止方式が異なる副止め具とから構成されたものとできる。
【0012】
この構成によれば、複数の止め具が主止め具と副止め具ととから構成されたことにより、複数の止め具が単一の係止方式の止め具のみから構成された場合に比べてサイドカバーを確実に係止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、荷台の移動に際し、移動の都度止め具を開放させる必要がない。また、ヒンジ部、止め具等を破損してしまう可能性を小さくできる。このため、荷台を支障なく移動させることのできる、サイドガードを備えた荷台可動車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による荷台可動車両を示す側面図である。
【
図2】同車両のサブフレーム、ステー、サイドカバーを示す分解斜視図である。
【
図3】(a)は
図1のA−A矢視図、(b)は
図1のB−B矢視図、(c)は(a)のC部拡大図、(d)は(b)のD部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明につき一実施形態を取り上げて説明を行う。なお、以下の方向に関する記載において、前後方向及び幅方向は車両の前後方向及び幅方向に対応している。また、内外方向については、「内側」は車両の幅方向中心線に近い側、「外側」は同中心線から遠い側を示す。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の荷台可動車両(以下、「車両」)1は車体フレーム2と荷台3とを備える。車体フレーム2はシャシフレーム21とシャシフレーム21上に固定されるサブフレーム22とからなる。サブフレーム22は、前後方向に並行に延びる二本の前後部材221,221と、二本の前後部材221,221を結ぶ複数(形状はそれぞれ異なる)の幅部材222…222を備える。荷台3はサブフレーム22上に、このサブフレーム22に対して前後方向M1に移動可能に設けられている。図示はしないが、この荷台3は、後端部よりも前端部が高くなるように傾動されつつ後方に移動されることにより路面や地面に接地させることができる。荷台3を移動可能とする構成としては、例えば、本願出願人による特開2009−67299号公報に記載の構成を採用でき、荷台3上に乗用車や土木機械を搭載できる。
【0017】
図2に示すように、ステー4はサブフレーム22から幅方向外方に延びる棒状の部分である。本実施形態では、幅方向の片側当たりで4本のステー4…4が、
図3(a)(b)に示すようにサブフレーム22にボルト固定されている。本実施形態のステー4では、基端部がサブフレーム22に対して固定されており、サブフレーム22から水平方向に延びる側方ステー41と、側方ステー41の先端部に一体に設けられて下方向に延びる上下ステー42とを備えている。上下ステー42の先端にはバー5が固定されている。幅方向の片側当たりで4本の上下ステー42…42のうち、後方3本は鉛直方向に延びており、前方1本は前方に向かうような斜め下方に延びている。これら上下ステー42…42は前後方視では全て鉛直方向に延びているため、この上下ステー42…42に沿わせるように、閉じた状態のサイドカバー6を鉛直方向に配置できる。なお本実施形態において、サイドガードはバー5とサイドカバー6とから構成される。
【0018】
バー5は、前後方向に延びる棒状の部材である。本実施形態のバー5は鋼板が折り曲げられて断面略正方形に形成されており、このバー5の前後方向両端には、歩行者等が接触して負傷することのないように、樹脂製の保護部材51が取り付けられている。
【0019】
サイドカバー6は、鋼板が折り曲げられて形成された板状部材である。このサイドカバー6は側面視において前後方向に細長い長方形とされている。サイドカバー6は車両1において、前後方向については前輪11と後輪12との間、上下方向については車体フレーム2とバー5との間に位置している。このようにサイドカバー6が位置していることにより、シャシフレーム21等に取り付けられたバッテリー、燃料タンク、スペアタイヤ、工具箱等を側面視において隠すことができる。このため、衝突事故の際等に、バッテリー等を衝突物から保護したり、歩行者や物体の巻き込みを防止したりできる。また、バッテリー等が露出しないため、側面視における美観を向上できる。
【0020】
詳しくは後述するが、サイドカバー6は、上下ステー42の上端近くに位置する止め具8により閉じた状態で係止される。つまり、
図3(a)(b)から明瞭に理解できるように、サイドカバー6は荷台3とは縁が切られている。このため、荷台3を前後に移動させる際、いちいち止め具8を開放しなくてよい。そして、もし止め具8を開放せずに荷台を移動させてしまった場合にも止め具8が破損してしまうことがない。
【0021】
このサイドカバー6は、ヒンジ部7によりバー5に固定されている。つまり、ヒンジ部7はステー4に対して(バー5を介して)サイドカバー6を連結する。本実施形態のヒンジ部7としては蝶番が用いられており、
図3(c)に示すように、バー5の上端面とサイドカバー6の下端面との間に位置する。このヒンジ部7により、サイドカバー6は、前後方向に延びる軸71を中心として、
図2及び
図3(a)に示す方向M2に回動可能に支持される(
図3(a)に開放時のサイドカバー6を二点鎖線で示す)。なお、ヒンジ部7がバー5の上端面に位置することから、複数のステー4…4の配置間隔が異なる車両に対しても、ヒンジ部7を位置変更することなく取り付けることができる。
【0022】
止め具8は、ステー4にサイドカバー6を係止する。本実施形態の止め具8は片側当たり3個が用いられており、主止め具81が2個と副止め具82が1個から構成されている。
【0023】
主止め具81として、本実施形態では周知の構造であるリングラッチが用いられている。主止め具81は、片側当たり、サイドカバー6の前方寄りと後方寄りに2個が設けられており、本体811がサイドカバー6に、被係止部813がステー4のうち上下ステー42の上端近くに位置している。なお、後方に位置する被係止部813は、副止め具82の本体821の取付ブラケットを兼ねている。このリングラッチは建物等のドアに内蔵されるラッチと同様の構造を有しており、本体811におけるケーシング811aに対し出没可能に設けられ、ばねにより突出方向に付勢された可動爪である爪部812が被係止部813の有する孔に係止されることで、被係止部813に対して本体811が(車両1における)幅方向に移動することを阻止する。そして、リング状の操作部814を作業者等が操作することにより爪部812をケーシング811aに引っ込めることができ、これにより係止解除がなされて、本体が幅方向に移動することが可能となる。
【0024】
なお、
図3(d)に示すように、爪部812は車両1の幅方向外側が垂直面を有し、同内側が斜面を有する。このため、サイドカバー6を係止させる際には、サイドカバー6を作業者等が幅方向内側に押し込むことにより、リングラッチの爪部812を被係止部813に係止させることができる。
【0025】
一方、副止め具82として、本実施形態では周知の構造であるパチン錠が設けられている。副止め具82は、片側当たり、サイドカバー6の後方寄りに1個が設けられており、本体821がステー4のうち上下ステー42の上端近くに、被係止部822がサイドカバー6に位置している。このパチン錠は、先端が上下方向に揺動可能な枠状部823を、レバー824を操作することにより、(車両1における)幅方向に付勢力が付与された状態で被係止部822に引掛けることで、本体821に対して被係止部822が幅方向に移動することを阻止する。本実施形態の枠状部823は、
図3(d)に示すように側面視で略逆V字状(あるいは「へ」の字状)に形成されており(なお、
図2は略示したものである)、レバー824の操作により幅方向に引っ張られて変形することで前記付勢力が付与される。ただし枠状部823は、幅方向に変形しない状態で被係止部822に引掛けられるよう構成されることもできる。
【0026】
以上のように、主止め具81と副止め具82とは係止方式が異なる。つまり、主止め具81であるリングラッチが、ばね付勢された爪部812が被係止部813に係止される方式(言わば「可動爪係止方式」)であるのに対し、副止め具82であるパチン錠は、付勢力が付与された枠状部823が被係止部822に係止される方式(言わば「引掛け係止方式」)であって、両方式は異なっている。このように複数の止め具8…8が、主止め具81と、該主止め具81とは係止方式が異なる副止め具82とから構成されたことにより、仮に主止め具81が不意に係止解除されても、係止方式が異なる副止め具82は係止状態を維持できることが多い。つまり、副止め具82は主止め具81の係止機能を補助すると共にバックアップしていると理解できる(逆に、主止め具81は副止め具82の係止機能を補助すると共にバックアップしているとも言える)。よって、車両走行中の振動等により主止め具81が係止解除されてしまっても、副止め具82によりサイドカバー6が開放されてしまうことを抑制でき、安全である。
【0027】
また、
図2に示すように、ステー4とサイドカバー6とを結ぶようにワイヤー9が取り付けられている。このワイヤー9は、止め具8の係止解除がされた際にステー4とサイドカバー6との間で張られることにより、サイドカバー6の開度を一定に保つ。
【0028】
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されない。例えば、前記実施形態の上下ステー42…42は前後方視では全て鉛直方向に延びているため、この上下ステー42…42に沿わせるように、閉じた状態のサイドカバー6を鉛直方向に配置できるものであったが、上下ステー42…42を前後方視で斜め方向に延びるようにしておくことで、閉じた状態のサイドカバー6を斜め方向に配置できるよう構成することもできる。
【0029】
また、上下ステー42…42の上端近くに、バー5と同様の、前後方向に延びる棒状の部材を設け、この部材に止め具8の一部が取り付けられるよう構成されることもできる。
【0030】
また、ヒンジ部7は前記実施形態の蝶番には限定されず、前後方向に延びる軸を中心として、サイドカバー6を回動可能に支持できる部材であれば、種々の部材を用いることができる。また、ヒンジ部7をステー4に直接取付けるようにしてもよい。また、止め具8としては、前記実施形態の他に、例えば、磁石、面ファスナー等の、ステー4とサイドカバー6とを係止及び係止解除できるよう構成された種々部材を用いることができる。
【0031】
また、荷台3の移動態様は、前記実施形態のように前後方向M1に移動可能であって、傾動もされる態様に限定されるものではない。例えば、ダンプトラックのように荷台3が傾動するもの、空港等で用いられるリフトトラックのように荷台3が昇降するもの、荷台3が水平方向のみに移動するものとできる。
【符号の説明】
【0032】
1…荷台可動車両、2…車体フレーム、3…荷台、4…ステー、5…バー、6…サイドカバー、7…ヒンジ部、8…止め具、41…側方ステー、42…上下ステー、81…主止め具、82…副止め具