(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
超音波を送受信する送受波面が形成されたフロント部、該フロント部における前記送受波面と反対側の端面であるフロント部後端面に配置される圧電素子、及び該圧電素子を前記フロント部後端面と挟んで保持するリア部、を有する超音波振動子と、
前記リア部及び前記圧電素子のうちの一方又は両方を支持するフレーム部と、
弾性を有する弾性部と、を備え、
前記フロント部は、前記送受波面から前記フロント部後端面に向かう方向に沿う方向である前後方向における前記フロント部後端面側の部分であって、前記前後方向における前記送受波面側の部分よりも、前記前後方向に垂直な断面の断面積が減少した断面積減少部を含み、
前記弾性部は、前記前後方向における前記断面積減少部の側面と前記フレーム部との間において一体に設けられ、前記フレーム部を基準として前記前後方向に一体に伸縮可能であることを特徴とする、超音波送受波器。
超音波を送受信する送受波面が形成されたフロント部、該フロント部における前記送受波面と反対側の端面であるフロント部後端面に配置される圧電素子、及び該圧電素子を前記フロント部と挟んで保持するリア部、を有する超音波振動子、を備えた超音波送受波器の製造方法であって、
前記フロント部は、前記送受波面から前記フロント部後端面に向かう方向に沿う方向である前後方向における前記フロント部後端面側の部分であって、前記前後方向における前記送受波面側の部分よりも、前記前後方向に垂直な断面の断面積が減少した断面積減少部を含み、
前記リア部及び前記圧電素子のうちの一方又は両方をフレーム部によって支持するステップと、
前記前後方向における前記断面積減少部の側面と前記フレーム部との間に、弾性を有して前記フレーム部を基準として前記前後方向に一体に伸縮可能な弾性部を一体に設けるステップと、
を含むことを特徴とする、超音波送受波器の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のように超音波振動子をフレーム部の穴に挿入した場合、フレーム部に対する超音波振動子の保持力が不十分となって、超音波振動子の耐圧性を確保できないおそれがある。
【0005】
また、超音波振動子を、Oリング等を介してフレーム部に固定することも考えられる。しかし、この構成であっても、耐圧性が不十分となってしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、フレーム部に保持された超音波振動子の耐圧性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本発明のある局面に係る超音波送受波器は、超音波を送受信する送受波面が形成されたフロント部、該フロント部における前記送受波面と反対側の端面であるフロント部後端面に配置される圧電素子、及び該圧電素子を前記フロント部後端面と挟んで保持するリア部、を有する超音波振動子と、前記リア部及び前記圧電素子のうちの一方又は両方を支持するフレーム部と、弾性を有する弾性部と、を備え、前記フロント部は、前記送受波面から前記フロント部後端面に向かう方向に沿う方向である前後方向における前記フロント部後端面側の部分であって、前記前後方向における前記送受波面側の部分よりも、前記前後方向に垂直な断面の断面積が減少した断面積減少部を含み、前記弾性部は、前記前後方向における前記断面積減少部の側面と前記フレーム部との間
において一体に設けられ、
前記フレーム部を基準として前記前後方向に
一体に伸縮可能である。
尚、好ましくは、前記フレーム部は、金属によって構成されている。
【0008】
(2)好ましくは、前記断面積減少部の側面は、前記フロント部後端面から前記送受波面側へ向かって斜め方向に広がるテーパ面である。
【0009】
(3)好ましくは、前記超音波送受波器は、前記断面積減少部の側面と前記弾性部との間に配置された遮音部を更に備えている。
【0010】
(4)好ましくは、前記超音波送受波器は、電気的な絶縁性を有する材料で構成されて前記送受波面を覆う絶縁部を更に備えている。
【0011】
(5)更に好ましくは、前記弾性部及び前記絶縁部は、絶縁性及び弾性を有する材料によって一体に形成されている。
【0012】
(6)好ましくは、前記超音波送受波器は、複数の前記超音波振動子を更に備えている。
【0013】
(7)更に好ましくは、各前記超音波振動子の前記送受波面は、長方形状に形成され、複数の前記超音波振動子は、各超音波振動子の前記送受波面の長手方向が直線状に沿って配列された超音波振動子列を複数、構成し、複数の前記超音波振動子列は、各超音波振動子の前記送受波面の短手方向が円周方向に沿って配列されている。
【0014】
(8)更に好ましくは、各前記超音波振動子列を構成する各前記超音波振動子は、前記円周方向に隣接する超音波振動子列を構成する各超音波振動子に対して、前記送受波面の長手方向にずれて配置されている。
【0015】
(9)好ましくは、前記超音波送受波器は、電気的な絶縁性を有する材料で構成されて、前記リア部及び前記圧電素子のうちの一方又は両方と前記フレーム部との間に配置される被覆部材を更に備えている。
【0016】
(10)好ましくは、前記弾性部は、樹脂材料又はゴム材料によって構成されている。
【0017】
(11)また、上記課題を解決するため、本発明のある局面に係る水中探知装置は、水中の物標を探知する水中探知装置であって、水中に対して超音波を送受信する上述したいずれかの超音波送受波器と、前記超音波送受波器から得られた受信信号を処理してエコー画像を生成する信号処理部と、前記信号処理部によって生成された前記エコー画像を表示する表示部と、を備えている。
【0018】
(12)また、上記課題を解決するため、本発明のある局面に係る超音波送受波器の製造方法は、超音波を送受信する送受波面が形成されたフロント部、該フロント部における前記送受波面と反対側の端面であるフロント部後端面に配置される圧電素子、及び該圧電素子を前記フロント部と挟んで保持するリア部、を有する超音波振動子、を備えた超音波送受波器の製造方法であって、前記フロント部は、前記送受波面から前記フロント部後端面に向かう方向に沿う方向である前後方向における前記フロント部後端面側の部分であって、前記前後方向における前記送受波面側の部分よりも、前記前後方向に垂直な断面の断面積が減少した断面積減少部を含み、前記リア部及び前記圧電素子のうちの一方又は両方をフレーム部によって支持するステップと、前記前後方向における前記断面積減少部の側面と前記フレーム部との間に、弾性を有して
前記フレーム部を基準として前記前後方向に
一体に伸縮可能な弾性部を
一体に設けるステップと、を含む。
【0019】
(13)好ましくは、前記弾性部を設けるステップでは、前記フレーム部に前記リア部及び前記圧電素子のうちの一方又は両方が支持された状態の前記超音波振動子における、前記断面積減少部の側面と前記フレーム部との間に、前記弾性部を形成するための材料が充填される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フレーム部に保持された超音波振動子の耐圧性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る送受波器を有する水中探知装置1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。水中探知装置1は、主に魚及び魚群等の物標を探知するためのものであって、漁船などの船舶の船底において、海中に露出するように固定されている。
【0023】
[水中探知装置の全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る水中探知装置1の構成を示すブロック図である。水中探知装置1は、
図1に示すように、送受波器2と、送受信装置3と、信号処理部4と、操作・表示装置5(表示部)とを備えている。
【0024】
送受波器2は、複数の超音波振動子10を有している。送受波器2では、各超音波振動子10が、電気信号から変換された超音波を所定のタイミング毎に水中へ送信するとともに、受信した超音波を電気信号に変換する。送受波器2の構成については、詳しくは後述する。
【0025】
送受信装置3は、送受切替部6と、送信部7と、受信部8とを備えている。送受切替部6は、送信時には、送信部7から送受波器2に送信信号が送られる接続に切り替える。また、送受切替部6は、受信時には、送受波器2によって超音波から変換された電気信号が送受波器2から受信部8に送られる接続に切り替える。
【0026】
送信部7は、操作・表示装置5において設定された条件に基づいて生成した送信信号を、送受切替部6を介して送受波器2に対して出力する。
【0027】
受信部8は、送受波器2が受信した信号を増幅し、増幅した受信信号をA/D変換する。その後、受信部8は、デジタル信号に変換された受信データを、信号処理部4に対して出力する。
【0028】
信号処理部4は、受信部8から出力される受信データを処理し、物標の映像信号を生成する処理を行う。
【0029】
操作・表示装置5は、信号処理部4から出力された映像信号に応じた映像を表示画面に表示する。ユーザは、当該表示画面を見て、自船周囲における海中の状態(単体魚、魚群の有無等)を推測することができる。また、操作・表示装置5は、種々の入力キー等の入力手段を備えており、音波の送受信、信号処理、又は映像表示に必要な種々の設定又は種々のパラメータ等を入力できるように構成されている。
【0030】
[送受波器の構成]
図2は、送受波器2の構成を模式的に示す斜視図である。また、
図3は、
図2に示す送受波器2のフレーム部20の外周面21が平坦状になるように展開した展開図の一部を示す図であって、フレーム部20の外周面21に形成された複数の振動子用穴22の配置を模式的に示す図である。また、
図4は、フレーム部20及びモールド部25に埋め込まれた状態の超音波振動子10を側方から視た部分断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、
図2以降の図面において、上と記載された矢印が指示する方向を上側又は上方、下と記載された矢印が指示する方向を下側又は下方、前と記載された矢印が指示する方向を前側又は前方、後と記載された矢印が指示する方向を後側又は後方、と称する場合もある。
【0031】
送受波器2は、
図2に示すように、略円柱状に形成されている。送受波器2の外径は、例えば一例として、530mm程度である。送受波器2は、その中心軸が鉛直方向に沿った状態で海中に露出するように、船底等に固定される。送受波器2は、
図2及び
図4に示すように、フレーム部20と、モールド部25と、複数の超音波振動子10と、を備えている。
【0032】
フレーム部20は、金属によって構成された略円筒状の部材である。フレーム部20の外周面21には、
図3及び
図4に示すように、超音波振動子10が挿入される複数の振動子用穴22が形成されている。各振動子用穴22は、フレーム部20の外周面21から該フレーム部20の径方向内側に向かって延びるように形成されている。また、振動子用穴22は、該振動子用穴22の延びる方向に垂直な断面形状が、円形状となっている。
【0033】
図3を参照して、フレーム部20の外周面21には、上下方向に互いに所定の間隔をあけて直線状に配列された振動子用穴列23が、円周方向に等間隔に形成されている。複数の振動子用穴22は、上述のように配列された複数の振動子用穴列23によって、構成されている。複数の振動子用穴22は、上下方向及び円周方向のそれぞれにおいて、径方向外方から視て直線状に並ぶように形成されている。すなわち、複数の振動子用穴22は、格子状(マトリックス状)に配列されている。円周方向に隣接する振動子用穴22の中心点同士の間隔は、後述するグレーティングローブが発生しない程度の間隔(本実施形態では、超音波の半波長以下(0.5λ以下))となっている。
【0034】
超音波振動子10は、
図4に示すように、振動子本体10aと、被覆部材19とを備えている。
【0035】
振動子本体10aは、フロントマス11(フロント部)、2つの圧電素子15a,15b、及びリアマス16(リア部)を有している。振動子本体10aは、フロントマス11、圧電素子15a,15b、及びリアマス16がボルト締めによって互いに固定された、いわゆるボルト締めランジュバン型振動子(BLT振動子)として設けられている。振動子本体10aでは、
図4に示すように、リアマス16がフレーム部20に対して固定された状態で、送受波器2における径方向内側から径方向外側(
図4における後方から前方)に向かって順に、リアマス16、圧電素子15b,15a、及びフロントマス11が配置された状態となる。
【0036】
フロントマス11は、例えばアルミニウム等の金属材料によって形成されたブロック状の部材であって、
図4に示すように、後方(送受波器2の径方向内側)から前方(送受波器2の径方向外側)に向かって広がるように設けられている。フロントマス11の前側の端面は、超音波の送受波が行われる送受波面12として設けられている。また、フロントマス11の後側の端面は、フロントマス後端面13として設けられている。
【0037】
送受波面12は、平坦状に形成され、前方に向かうように設けられている。また、送受波面12は、前方から視た形状が、上下方向に長い長方形状に形成されている(
図2参照)。送受波面12の上下方向の長さは、例えば一例として、47mm程度であり、幅方向の長さは、例えば一例として、26mm程度である。
【0038】
フロントマス11は、送受波面12からフロントマス後端面13に向かうにつれて断面積が減少する断面積減少部11aを含んでいる。断面積減少部11aの側面は、フロントマス後端面13から前方に向かって広がるように形成された曲面状のテーパ面14として設けられている。テーパ面14は、超音波振動子10がフレーム部20に固定された状態において、フレーム部20に向かうように設けられている。
【0039】
2つの圧電素子15a,15bは、外径及び厚みが同等の略円環状に形成され、外部から印加される電圧によって伸縮して軸方向に振動するように構成されている。2つの圧電素子15a,15bは、
図4に示すように、同軸状となるように互いに重ねられた状態で、一方側(前方側)の端面がフロントマス後端面13に密着する一方、他方側(後方側)の端面がリアマス16の前端面17に密着している。
【0040】
リアマス16は、圧電素子15a,15bよりも外径がやや大きく且つ長さが長い略円柱状に形成されている。リアマス16は、例えば一例として、ステンレス鋼(SUS)等の金属によって構成されている。リアマス16は、圧電素子15a,15bと同軸状となるように設けられ、前端面17が圧電素子15bの後端面に密着している。また、リアマス16の後端部には、フレーム部20に固定されたコネクタ18が接続されている。このコネクタ18は、圧電素子15a,15bに接続されたケーブル(図示省略)を介して圧電素子15a,15bに電圧を印加するためのものである。
【0041】
被覆部材19は、電気的な絶縁性及び遮音性を有する部材(例えば、スポンジ、コルク等)によって構成されている。被覆部材19は、
図4に示すように、振動子本体10aの表面における、送受波面12及びリアマス16の後端面を除く部分、を覆うように設けられている。被覆部材19は、帯状に形成された部材であって、振動子本体10aに巻き付けられた状態となっている。被覆部材19におけるテーパ面14を覆っている部分は、テーパ面14とモールド部25との間の遮音性を確保するための遮音部として設けられている。これにより、超音波振動子10で生成される超音波が、テーパ面14を介して外部へ送信されるのを防止でき、超音波を送受波面12から送信できる。
【0042】
上述のように構成された複数の超音波振動子10は、それぞれ、フレーム部20に形成された振動子用穴22に保持される。具体的には、各超音波振動子10は、送受波面12の長辺が上下方向に沿うように、リアマス16の部分が振動子用穴22に挿入される。リアマス16の外周面は、スポンジ状の被覆部材19によって覆われているため、フレーム部20は、被覆部材19を介してリアマス16を保持する。また、被覆部材19は、上述のように絶縁性を有する部材で構成されている。よって、リアマス16とフレーム部20との間に被覆部材19を設けることにより、リアマス16とフレーム部20との間を電気的に絶縁することができる。
【0043】
各超音波振動子10は、上述のように、複数の振動子用穴22のそれぞれに挿入されて固定されている。これにより、超音波振動子10は、送受波器2の径方向外側から視た配列が、複数の振動子用穴22の配列と同様になる。
【0044】
具体的には、複数の超音波振動子10は、
図2に示すように、上下方向に所定の間隔をあけて直線状に配列された超音波振動子列9が、円周方向に等間隔に配列されることにより、フレーム部20に対して配列される。そして、各超音波振動子列9を構成する各超音波振動子10は、上下方向及び円周方向のそれぞれにおいて直線状に並ぶ格子状(マトリックス状)に配列される。円周方向に隣接する超音波振動子10の中心点同士の間隔は、超音波の半波長以下(0.5λ以下)となっている。このように、超音波振動子10は、特に円周方向において、比較的間隔を詰めて配列されている。
【0045】
モールド部25は、
図2及び
図4に示すように、フレーム部20の外周面側に設けられた略円筒状の部分である。モールド部25は、弾性及び電気的な絶縁性を有する材料によって構成された弾性部として設けられている。また、モールド部25に用いられる材料としては、水(海水)の音響インピーダンスに近い材料が好ましい。これにより、超音波振動子10からの超音波を、効率的に水中に伝えることができる。モールド部25に用いられる材料としては、例えば、発泡ウレタン、ゴム材料、エポキシ樹脂等、伸縮可能な材料が挙げられる。
【0046】
モールド部25は、
図4に示すように、フレーム部20の外周面21から送受波面12の外側まで延びるように設けられている。これにより、モールド部25は、フレーム部20に対してテーパ面14を前後方向における後方側から保持するように、前後方向におけるテーパ面14及びフレーム部20の間に亘って設けられた状態になる。
【0047】
また、モールド部25は、複数の超音波振動子10の各送受波面12を覆っている。すなわち、モールド部25における送受波面12を覆う部分は、電気的な絶縁性を有する絶縁部として設けられている。これにより、送受波面12と外部(海水)との間の電気的な絶縁性を確保できる。
【0048】
[送受波器の製造方法]
図5は、送受波器2の製造工程を示すフローチャートである。
図5を参照して、送受波器2の製造方法について説明する。
【0049】
まず、ステップS1で、振動子本体10aを組み立てる。具体的には、
図4を参照して、互いに重ねられた圧電素子15a,15bを、フロントマス後端面13及びリアマス16の前端面17で挟んで保持した状態で、これらをボルト(図示省略)によって互いに締結する。その後、ステップS2で、被覆部材19を振動子本体10aに対して巻き付けることにより、超音波振動子10が完成する。
【0050】
次に、ステップS3で、超音波振動子10をフレーム部20に対して取り付ける。具体的には、各超音波振動子10のリアマス16を、フレーム部20の各振動子用穴22に圧入する。このとき、送受波面12の長辺が上下方向に沿うようにする。ステップS3では、複数の超音波振動子10の全てを、各振動子用穴22に対して固定する。
【0051】
次に、ステップS4で、全ての超音波振動子10が取り付けられたフレーム部20を、金型(図示省略)内にセットする。このとき、金型と、超音波振動子10が取り付けられたフレーム部20との間には、モールド部25に対応する形状の隙間が形成される。そして、当該隙間にウレタン液を充填して発泡させることにより(ステップS5)モールド部25が形成され、金型から取り出して(ステップS6)、送受波器2が完成する。
【0052】
ところで、水中に対して超音波を送受信する送受波器、特に船底に取り付けられる送受波器には、航行中に上下動する船によって海面に衝突する際の圧力(スラミング圧)、及び流木等の海中浮遊物に衝突する際の衝撃等が作用する。よって、送受波器には、これらの外力に対する耐性が求められる。この点について、従来のように、Oリング等を介してフレーム部に固定した場合、上述のような外力に対する耐性が不十分となってしまう。
【0053】
これに対して、本実施形態に係る送受波器2では、送受波面12からフロントマス後端面13に向かうにつれて断面積が減少する断面積減少部11aの側面(テーパ面14)とフレーム部20との間に弾性部(モールド部25)を設けている。こうすると、上述のような送受波器2に対する外力を、フレーム部20に支持されたモールド部25によって吸収することができる。これにより、送受波器2の耐圧性を向上できる。
【0054】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る水中探知装置1の送受波器2では、前後方向におけるフレーム部20とテーパ面14との間にモールド部25を設けている。これにより、送受波器2に対する外部からの圧力及び衝撃力を、フレーム部20に支持されたモールド部25によって吸収できる。
【0055】
従って、送受波器2では、フレーム部20に保持された超音波振動子10の耐圧性を向上できる。
【0056】
また、送受波器2では、テーパ面14全体をモールド部25によって保持しているため、超音波振動子10の耐圧性を更に向上できる。
【0057】
また、送受波器2では、超音波振動子10のリアマス16を保持した状態のフレーム部20を金型にセットし、ウレタン液を充填して発泡させることによりモールド部25を形成している。これにより、比較的容易にモールド部25を形成できる。しかも、モールド部25を、テーパ面14及びフレーム部20に対して十分に密着させることができるため、フレーム部20に対して超音波振動子10をガタつきなく保持することができる。そして、このように超音波振動子10をガタつきなく保持することで、送受波器2に作用する外力に起因する超音波振動子10のフレーム部20に対する位置ずれ、及び変形を防止できる。これにより、超音波振動子10から送信される超音波の特性が大きく変動してしまうリスクを低減できる。
【0058】
また、送受波器2では、弾性部として樹脂材料、具体的には発泡ウレタンを用いているため、モールド部25を成型によって容易に形成することができるとともに、超音波振動子10に作用する外力を効果的に吸収することができる。なお、弾性部として発泡ウレタン以外の樹脂材料、又はゴム材料を用いても、同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、送受波器2では、テーパ面14とモールド部25との間に遮音部が設けられているため、圧電素子15a,15bによって生成される超音波がテーパ面14から外部へ漏れるのを防止できる。従って、超音波を送受波面12から効率的に送信することができる。
【0060】
また、送受波器2では、絶縁性を有するモールド部25によって送受波面12が覆われているため、送受波面12と外部(海水)との間の絶縁性を確保できる。
【0061】
また、送受波器2では、フレーム部20とテーパ面14との間に亘って設けられる弾性部及び送受波面12を覆う絶縁部の双方を、モールド部25によって形成しているため、弾性部及び絶縁部を一度に形成することができる。
【0062】
また、従来の送受波器では、例えば一例として、複数の超音波振動子のそれぞれの外周側の部分を、Oリングを介してフレーム部に固定している。このようにして複数の超音波振動子をフレームに固定すると、超音波振動子の外側の部分とフレーム部との間にOリングを取り付けるスペースが必要となるため、隣接する超音波振動子間の距離が長くなってしまう。そして、隣接する超音波振動子間の距離が長くなり超音波の半波長以上になってしまうと、水中探知装置における虚像の原因となるグレーティングローブが発生してしまう。
【0063】
これに対して、送受波器2では、フレーム部20からテーパ面14に亘って前後方向に延びるようにモールド部25を設けている。こうすると、従来のようにOリングを取り付けるスペースが不要となるため、その分、隣接する超音波振動子10との間隔を狭くすることができる。これにより、隣接する超音波振動子10の間の距離を例えば半波長(0.5λ)以下にしやすくなるため、グレーティングローブの発生を抑制できる。
【0064】
また、送受波器2では、送受波面12の形状を長方形状にしている。そして、送受波器2では、送受波面12の短手方向が円周方向に沿うように、且つ円周方向に間隔を詰めて超音波振動子10を配列している。これにより、円周方向に配列される超音波振動子10間のピッチを短くできるため、円周方向におけるグレーティングローブの発生を抑制できる。
【0065】
また、送受波器2では、電気的な絶縁性を有する被覆部材19を、リアマス16とフレーム部20との間に設けているため、リアマス16とフレーム部20との間を電気的に容易に絶縁することができる。
【0066】
また、送受波器2では、断面積減少部11aの側面を、テーパ面14で構成している。これにより、フロントマス11の前後方向に垂直な断面積を、フロントマス後端面13から送受波面12に向かって徐々に大きくできるため、送受波面12から送信される超音波の帯域特性を確保できる。
【0067】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0068】
(1)
図6は、変形例に係る送受波器2aを径方向外方から視た図であって、超音波振動子の送受波面12aの形状を説明するための図である。上記実施形態の超音波振動子10は、送受波面12の形状が長方形状であったが、これに限らない。具体的には、
図6に示すように、送受波面12aの形状が円形状であってもよく、更にはその他の形状、例えば、正方形状、六角形状等の多角形状や、楕円状等であってもよい。
【0069】
(2)
図7は、変形例に係る送受波器2bを径方向外方から視た図であって、複数の超音波振動子10の配列について説明するための図である。上記実施形態では、
図2に示すように、複数の超音波振動子10が格子状に配列されているが、これに限らない。具体的には、
図7に示すように、上下方向に直線状に配列される超音波振動子列を構成する複数の超音波振動子10を、円周方向に隣接する超音波振動子列を構成する各超音波振動子10に対して、上下方向にずらして配置してもよい。これにより、
図7に示すように、上下方向において距離が最も近い超音波振動子10の送受波面の中心点同士の距離を、超音波の半波長以下(0.5λ以下)にしやすくなる。そうすると、上下方向におけるグレーティングローブの発生を抑制できる。
【0070】
(3)
図8は、変形例に係る送受波器2cの構成を説明するための図であって、
図4に対応させて示す図である。本変形例は、上記実施形態と比べて、モールド部25aの形状が異なっている。また、本変形例に係る送受波器2cは、超音波振動子10の送受波面12を外部から電気的に絶縁するための絶縁油26を有している。
【0071】
本変形例のモールド部25aは、上記実施形態の場合と同様、フレーム部20よりも外周側に設けられた弾性及び電気的な絶縁性を有する材料で構成された略円筒状の部分である。しかし、モールド部25aは、上記実施形態の場合と異なり、
図8に示すように、フレーム部20の外周面21から送受波面12まで延びるように設けられている。すなわち、本変形例では、送受波面12は、モールド部25aによって覆われていない。
【0072】
絶縁油26は、モールド部25a及び送受波面12と間隔をあけて配置されたケーシング27内に充填されている。これにより、送受波面12と外部(海水)との絶縁性を確保できる。
【0073】
[送受波器の製造方法]
本変形例に係るモールド部25aは、上記実施形態の場合と同様に形成することができる。具体的には、モールド部25aは、複数の超音波振動子10が取り付けられた状態におけるフレーム部20を金型にセットし、金型内にウレタン液を充填して発泡することにより、形成することができる。このようにモールド部25aが形成されたフレーム部20及び超音波振動子10をケーシング27内に収容し、該ケーシング27内に絶縁油26を充填することで、変形例に係る送受波器2cが完成する。
【0074】
なお、本変形例に係る送受波器2cを、別の方法によって製造することもできる。具体的には、予め形成されたモールド部25aをフレーム部20の外周面21に装着する。その後、モールド部25aに形成された貫通孔25b及びフレーム部20の振動子用穴22に各超音波振動子10を挿入して固定し、これをケーシング27に収容した後、絶縁油26を充填する。このようにしても、上述の場合と同様の構成の送受波器を製造することができる。
【0075】
(4)
図9は、変形例に係る送受波器2dの構成を説明するための図であって、
図4に対応させて示す図である。上記実施形態では、フレーム部20は、超音波振動子10におけるリアマス16の部分を支持しているが、これに限らず、
図9に示すように、フレーム部20aが、リアマス16及び圧電素子15a,15bの両方を支持していてもよい。更には、これに限らず、圧電素子15a,15bのみを支持していてもよい。これにより、本変形例では、モールド部25cが、前後方向におけるフロントマス後端面13付近から前方に向かって(送受波器2dにおける径方向外方に向かって)延びるように形成される。
【0076】
(5)
図10は、変形例に係る送受波器2eの構成を説明するための図であって、
図4に対応させて示す図である。上記実施形態では、モールド部25によって、弾性部、及び送受波面12を覆う絶縁部の両方を構成したが、これに限らない。具体的には、
図10に示すように、前後方向におけるテーパ面14とフレーム部20との間に弾性部28を設け、送受波面12を覆う領域に、前記弾性部28とは異なる材料で構成された絶縁部29を設けてもよい。
【0077】
(6)上記実施形態では、送受波器2を、水中の物標を探知する水中探知装置1に適用する例を挙げて説明したが、これに限らず、送受波器を有するその他の装置(超音波診断装置など)に適用することもできる。
【0078】
(7)上記実施形態では、複数の超音波振動子10を有する送受波器2を挙げて説明したが、これに限らず、本発明は、1つの超音波振動子を有する送受波器に適用することもできる。
【0079】
(8)上記実施形態では、長方形状に形成された送受波面12の長辺が上下方向に沿い且つ短辺が円周方向に沿うように、各超音波振動子10が配置されているが、これに限らない。具体的には、送受波面12の短辺が上下方向に沿い且つ長辺が円周方向に沿うように、各超音波振動子10が配置されていてもよい。この場合、各送受波面12の短手方向が上下方向に直線状に沿って配列された複数の超音波振動子列が、円周方向に沿って配列された構成となる。
【0080】
(9)上記実施形態では、超音波振動子10の断面積減少部11aの側面は、フロントマス後端面13から送受波面12側へ向かって斜め方向に広がるテーパ面14となっているが、この側面は、送受波面12からフロントマス後端面13に向かう方向である前後方向に略垂直な方向に沿った側面(すなわち、フレーム部20の外周面21に略平行に設けられた面)となっていてもよい。