特許第6353258号(P6353258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353258
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】軸受機構およびモータ装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 35/02 20060101AFI20180625BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20180625BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20180625BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   F16C35/02 B
   F16C17/02 Z
   H02K7/08 Z
   H02K7/116
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-73749(P2014-73749)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-197112(P2015-197112A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】春日 孝文
(72)【発明者】
【氏名】山岡 守
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−032226(JP,U)
【文献】 特開2012−117648(JP,A)
【文献】 特開2012−101649(JP,A)
【文献】 特開2008−241034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 35/02
F16C 17/02
H02K 7/08
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
該回転軸を回転可能に支持する筒部、および該筒部から径方向外側に拡径したフランジ部を備えたラジアル軸受と、
前記フランジ部を内側に収容して前記ラジアル軸受を保持するスリットを備えたフレームと、
を有し、
前記スリットの内壁と前記フランジ部との隙間は、径方向より軸線方向で狭く、
前記フレームは、前記筒部の外周面を180°以下の角度範囲で径方向から支持する支持面を有していることを特徴とする軸受機構。
【請求項2】
前記ラジアル軸受は、樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の軸受機構。
【請求項3】
前記フランジ部は、前記スリットにおいて軸線方向で対向する2つの壁面の間に圧入されていることを特徴とする請求項1または2に記載の軸受機構。
【請求項4】
軸線方向からみたとき、前記フランジ部は、多角形であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の軸受機構。
【請求項5】
軸線方向からみたとき、前記フランジ部は、四角形であることを特徴とする請求項に記載の軸受機構。
【請求項6】
前記フランジ部のうち、前記スリットから露出する部分には、前記フレームに重なるカバーが接していることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の軸受機構。
【請求項7】
前記フランジ部は、周方向の一部が前記スリットから突出しており、
前記カバーには、前記フランジ部のうち、前記スリットから突出している部分の少なくとも一部を収容する溝が形成されていることを特徴とする請求項に記載の軸受機構。
【請求項8】
前記溝の内壁は、前記フランジ部の軸線方向に位置する端面に接し、前記フランジ部の外周面との間に隙間があいていることを特徴とする請求項に記載の軸受機構。
【請求項9】
前記ラジアル軸受は、軸線方向で離間する2箇所に配置され、
当該2箇所に設けられた前記ラジアル軸受は各々、他方のラジアル軸受の側に前記筒部を向けて前記フレームに保持されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の軸受機構。
【請求項10】
前記ラジアル軸受は、前記フランジ部に対して軸線方向の両側に前記筒部を備えていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の軸受機構。
【請求項11】
前記回転軸は、ウォームであることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の軸受機構。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の軸受機構を備えたモータ装置であって、
前記回転軸を回転駆動するモータを有していることを特徴とするモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸を回転可能に支持する軸受機構、および該軸受機構を備えたモータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸を支持するラジアル軸受として、例えば、回転軸を回転可能に支持する筒部と、筒部から径方向外側に拡径したフランジ部とを備えたものが用いられている(特許文献1参照)。ここで、ラジアル軸受はプレート等のフレームに形成された穴内に筒部を圧入する等の方法で保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−112553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フレームの穴内に筒部を圧入した際、筒部が変形し、筒部内の真円度や回転軸とのクリアランスが変化し、軸受性能が低下するおそれがある。特に、ラジアル軸受を樹脂製とした場合、フレームの穴内に筒部を圧入した際、筒部が変形しやすく、軸受性能が低下しやすい。また、常温では筒部の変形に起因する軸受性能の低下が表面化しなくても、環境温度の変化があった際、筒部の変形に起因する軸受性能の低下が表面化することもある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、フレームにおけるラジアル軸受の保持構造を改善することにより、フレームにラジアル軸受を圧入した場合でも筒部の変形等が発生しにくい軸受機構、および該軸受機構を備えたモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る軸受機構は、回転軸と、該回転軸を回転可能に支持する筒部、および該筒部から径方向外側に拡径したフランジ部を備えたラジアル軸受と、前記フランジ部を内側に収容して前記ラジアル軸受を保持するスリットを備えたフレームと、を有し、前記スリットの内壁と前記フランジ部との隙間は、径方向より軸線方向で狭く、前記フレームは、前記筒部の外周面を180°以下の角度範囲で径方向から支持する支持面を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明において、ラジアル軸受は、回転軸を回転可能に支持する筒部と筒部から径方向外側に拡径したフランジ部を備えており、ラジアル軸受は、フレームのスリットにフランジ部が収容されることによりフレームに保持されている。このため、ラジアル軸受がフレームに保持される際、筒部に応力が加わりにくいので、筒部の変形が発生しにくい。従って、筒部内の真円度や回転軸とのクリアランスが変化しにくいので、軸受性能が低下しにくい。また、フレームは、筒部の外周面を180°以下の角度範囲で径方向から支持する支持面を有しているため、筒部を介して回転軸をラジアル方向で確実に支持することができる。
【0008】
本発明において、前記ラジアル軸受は樹脂製であることが好ましい。かかる構成によれば、ラジアル軸受を安価に製造することができるとともに、軽量化を図ることもできる。この場合でも、ラジアル軸受がフレームに保持される際、筒部に応力が加わりにくいので、ラジアル軸受が樹脂製であっても、筒部の変形が発生しにくい。
【0009】
本発明において、前記フランジ部は、前記スリットにおいて軸線方向で対向する2つの壁面の間に圧入されていることが好ましい。かかる構成によれば、筒部にラジアル方向の
力が加わりにくいので、筒部にラジアル方向の変形が発生しにくい。
【0011】
本発明において、軸線方向からみたとき、前記フランジ部は、多角形であることが好ましい。かかる構成によれば、フランジ部は、ラジアル軸受の周り止めの機能を発揮する。例えば、軸線方向からみたとき、前記フランジ部は、四角形であることが好ましい。フランジ部が四角形であれば、フランジ部が5角形以上の多角形である場合に比して、1辺の長さが長いので、周り止めの機能に優れている。また、フランジ部が3角形等である場合と違って、相対向する辺が平行であるため、周り止めの機能に優れている。
【0013】
本発明において、前記フランジ部のうち、前記スリットから露出する部分には、前記フレームに重なるカバーが接していることが好ましい。かかる構成によれば、フランジ部がスリットから抜けることを防止することができる。
【0014】
本発明において、前記フランジ部は、周方向の一部が前記スリットから突出しており、前記カバーには、前記フランジ部のうち、前記スリットから突出している部分の少なくとも一部を収容する溝が形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、フレームのスリットとカバーの溝とによって、フランジ部を適正な姿勢に保持することができる。
【0015】
この場合、前記溝の内壁は、前記フランジ部の軸線方向に位置する端面に接し、前記フランジ部の外周面との間に隙間があいていることが好ましい。かかる構成によれば、筒部にラジアル方向の力が加わりにくいので、筒部にラジアル方向の変形が発生しにくい。
【0016】
本発明において、前記ラジアル軸受は、軸線方向で離間する2箇所に配置され、当該2箇所に設けられた前記ラジアル軸受は各々、他方のラジアル軸受の側に前記筒部を向けて前記フレームに保持されていることが好ましい。かかる構成によれば、2つのラジアル軸受においてフランジ部が保持されている個所が遠いので、回転軸を安定した状態に保持することができる。
【0017】
本発明において、前記ラジアル軸受は、前記フランジ部に対して軸線方向の両側に前記筒部を備えている構成を採用してもよい。かかる構成によれば、回転軸に対する支持面(筒部の内周面)の軸線方向の寸法が長いので、回転軸を安定した状態に保持することができる。
【0018】
本発明において、前記回転軸は、例えば、ウォームである。
【0019】
本発明に係る軸受機構は、例えば、モータ装置に用いることができ、かかるモータ装置は、前記回転軸を回転駆動するモータを有している。
【発明の効果】
【0020】
本発明において、ラジアル軸受は、回転軸を回転可能に支持する筒部と筒部から径方向外側に拡径したフランジ部を備えており、ラジアル軸受は、フレームのスリットにフランジ部が収容されることによりフレームに保持されている。このため、ラジアル軸受がフレームに保持される際、筒部に応力が加わりにくいので、筒部の変形が発生しにくい。従っ
て、筒部内の真円度や回転軸とのクリアランスが変化しにくいので、軸受性能が低下しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明を適用したモータ装置の斜視図である。
図2】本発明を適用したモータ装置の平面図である。
図3】本発明を適用したモータ装置に用いたモータ等の構成を示す断面図である。
図4】本発明を適用したモータ装置におけるモータとウォームとの連結部分をモータの出力側からみた説明図である。
図5】本発明に係るモータ装置に用いた軸受機構の説明図である。
図6】本発明に係るモータ装置に用いた軸受機構をカバーの側からみた斜視図である。
図7】本発明に係るモータ装置に用いた軸受機構をフレーム側からみた斜視図である。
図8】本発明を適用した軸受機構のラジアル軸受の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して、本発明を適用した軸受機構およびモータ装置の一例を説明する。
【0023】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したモータ装置1の斜視図である。図2は、本発明を適用したモータ装置1の平面図である。
【0024】
図1および図2に示すモータ装置1は、駆動源としてのモータ10と、モータ10の回転を伝達する歯車機構14と、モータ10の回転が歯車機構14を介して伝達される従動部材(図示せず)と、モータ10、歯車機構14および従動部材等が搭載されたフレーム6とを有しており、従動部材に搭載あるいは接続された被可動部材等を変位させる。本形態において、フレーム6には、一点鎖線で示すカバー9が連結されており、かかるカバー9によって、歯車機構14に用いたウォーム2等が覆われている。
【0025】
歯車機構14は、モータ10の回転が伝達されるウォーム2(回転軸)と、ウォーム2に噛合するウォームホイール3とを有している。ウォーム2の外周面20には螺旋溝21が形成されており、ウォームホイール3の大径部31には、ウォーム2の螺旋溝21に噛合する歯部36が形成されている。ウォームホイール3は、大径部31と同心状の小径部32を有しており、小径部32の外周面には歯部37が形成されている。小径部32には、フレーム6から起立する支軸65が嵌る軸穴320が形成されており、ウォームホイール3は、支軸65を中心に回転可能である。ウォームホイール3としては、ヘリカルギヤを用いることが好ましい。なお、支軸65の先端部にはワッシャー69が止められており、ワッシャー69によって、ウォームホイール3の支軸65からの抜けが防止されている。かかるモータ装置1において、モータ10の回転がウォーム2を介してウォームホイール3に伝達されると、ウォームホイール3は、支軸65を中心に時計周りCW、あるいは反時計周りCCWに回転する。
【0026】
(モータ10の構成)
図3は、本発明を適用したモータ装置1に用いたモータ10等の構成を示す断面図である。なお、以下の説明において、モータ軸線方向L(ウォーム2の軸線方向)のうち、モータ軸150がモータ本体110から突出している側を出力側L1とし、モータ軸150がモータ本体110から突出している側とは反対側を反出力側L2として説明する。
【0027】
図3に示すように、モータ10は、ステッピングモータであり、円柱状のモータ本体1
10からモータ軸150が突出した形状を有している。モータ本体110は、円筒状のステータ140を有しており、ステータ140では、A相用のステータとB相用のステータとがモータ軸線方向Lに重ねて配置された構造を有している。このため、ステータ140では、コイル線120が巻回された環状の2つのコイルボビン102(第1コイルボビン102Aと第2コイルボビン102B)がモータ軸線方向Lに重ねて配置されており、かかるコイルボビン102には各々、内ステータコア103および外ステータコア104が重ねて配置されている。より具体的には、第1コイルボビン102Aにおいてモータ軸線方向Lの両側には、環状の内ステータコア103A、および断面U字形状の外ステータコア104Aが重ねて配置され、第2コイルボビン102Bにおいてモータ軸線方向Lの両側には、環状の内ステータコア103B、および断面U字形状の外ステータコア104Bが重ねて配置されている。第1コイルボビン102Aおよび第2コイルボビン102Bの内周面では、内ステータコア103A、103Bおよび外ステータコア104A、104Bの複数の極歯131、141が周方向に並んだ構成となっている。このようにして、ロータ配置穴130を備えた円筒状のステータ140が構成されており、ステータ140の径方向内側にはロータ105が同軸状に配置されている。なお、本形態では、外ステータコア104A、104Bが断面U字形状に形成されており、外ステータコア104A、104Bが各々、コイル線120の径方向外側まで延在してモータケースを構成している。また、コイルボビン102(第1コイルボビン102Aおよび第2コイルボビン102B)には、端子台(図示せず)が一体に形成されており、かかる端子台に保持された端子に基板118が接続されている。
【0028】
ロータ105ではモータ軸150がモータ軸線方向Lに延在している。モータ軸150の反出力側L2寄りの位置には、円筒状のブシュ156が固着され、ブシュ156の外周面に円筒状の永久磁石159が接着剤等によって固着されている。この状態で、永久磁石159の外周面は、ステータ140の極歯131、141と所定の間隔を介して対向している。
【0029】
ステータ140に対して出力側L1には、溶接等の方法により端板160が固定されており、端板160には、モータ軸150に対する出力側の軸受170(モータ側ラジアル軸受)が嵌る穴166と、フレーム6との取り付け用の穴167とが形成されている。本形態において、軸受170の外周面には段部171が形成されており、段部171が端板160の反出力側L2の面に当接することにより、軸受170の出力側L1への移動が規制されている。
【0030】
モータ軸150の周りには、軸受170とブシュ156との間に円環状のワッシャー176が装着されている。かかる構成のモータ10において、モータ軸150の出力側L1への可動範囲は、軸受170によって規定されている。なお、ワッシャー176は省略されることがある。
【0031】
ステータ140に対して反出力側L2には、溶接等の方法によりプレート180が固定されており、プレート180には、モータ軸150に対する反出力側L2の軸受190(モータ側ラジアル軸受)が嵌る穴186が形成されている。本形態において、軸受190の外周面には段部191が形成されており、段部191がプレート180の反出力側L2の面に当接することにより、軸受190の出力側L1への移動が規制されている。
【0032】
モータ軸150の周りには、軸受190とブシュ156との間に円環状のワッシャー196、197が装着されており、反出力側L2に位置するワッシャー197は、軸受190の出力側L1の端面に接している。かかる構成のモータ10において、モータ軸150の反出力側L2への可動範囲は、軸受190によって規定されている。なお、2枚のワッシャー196、197に代えて、1枚のワッシャーとしてもよい。
【0033】
(モータ軸150とウォーム2との連結構造)
図4は、本発明を適用したモータ装置1におけるモータ10とウォーム2との連結部分をモータ10の出力側L1からみた説明図であり、図4(a)、(b)は各々、モータ10とウォーム2との連結部分の斜視図、および分解斜視図である。
【0034】
図3および図4に示すように、モータ10のモータ軸150とウォーム2とは、カップリング13(伝達機構)を介して連結されており、カップリング13は、第1カップリング11と第2カップリング12との2段構造になっている。
【0035】
第1カップリング11において、モータ軸150のモータ本体110側とは反対側の端部151(先端部)にはモータ側カップリング部4(駆動側カップリング部)が連結され、ウォーム2のモータ本体110側の端部27には、モータ側カップリング部4と結合する伝達部材5(従動側カップリング部材)が連結されている。従って、モータ軸150とウォーム2とは、モータ側カップリング部4および伝達部材5を介して連結されている。
【0036】
モータ側カップリング部4は、円盤部41と、円盤部41のモータ本体110とは反対側の端面でモータ本体110とは反対側に向けて突出した第1凸部42とを備えている。モータ側カップリング部4の中心には軸穴43が形成されており、軸穴43にモータ軸150の端部151が嵌っている。モータ軸150の端部151には周方向の一部が平坦面152になっている一方、軸穴43の内周面は、周方向の一部が平坦面(図示せず)になっており、モータ軸150の平坦面152と軸穴43の平坦面同士が重なることにより、モータ側カップリング部4とモータ軸150との空周りが防止されている。なお、軸穴43は、円盤部41および第1凸部42を貫通しており、第1凸部42は、軸穴43によって長さ方向で2つの第1凸部42に分割されている。
【0037】
伝達部材5は、略円柱状であり、モータ本体110側の端面には、モータ側カップリング部4の第1凸部42が嵌る溝状の第1凹部51が径方向の全体にわたって形成されている。
【0038】
このように構成した第1カップリング11では、第1凹部51が径方向の全体にわたって延在し、2つの第1凸部42が第1凹部51の両端に嵌っている。このため、モータ側カップリング部4の回転が伝達部材5に伝達される際のロスが小さい。また、第1凹部51の延在方向および2つの第1凸部42が並んでいる方向がモータ軸線方向Lに対して直交する第1方向L51であり、モータ側カップリング部4と伝達部材5とは、第1方向L51において相対移動可能である。
【0039】
第2カップリング12を構成するにあたって、伝達部材5のモータ本体110側とは反対側の端面には、2つの第2凹部52が径方向で離間する位置に形成されており、ウォーム2の端部27には、第2凹部52に嵌るウォーム側カップリング部26が形成されている。かかる第2凹部52とウォーム側カップリング部26とによって、第2カップリング12が構成されている。ここで、ウォーム側カップリング部26は、ウォーム2のモータ本体110の端面292において、径方向で離間する位置から伝達部材5のウォーム2側の端面に向けて突出した2つの第2凸部28からなり、2つの第2凸部28が2つの第2凹部52の各々に嵌っている。
【0040】
本形態において、ウォーム2の内部には、ウォーム2と同軸状にバネ配置穴23が形成されており、かかるバネ配置穴23は、モータ本体110側の端面292で開口している。このため、ウォーム2の端面292には、バネ配置穴23の開口の周りにおいて、周方向で180°離間する2個所に2つの第2凸部28が形成されている。従って、バネ配置
穴23に圧縮コイルバネ8を配置した状態において、圧縮コイルバネ8は、2つの第2凸部28の間に位置する。
【0041】
このように構成した第2カップリング12では、2つの第2凹部52の各々に2つの第2凸部28が嵌っているため、伝達部材5の回転がウォーム2に伝達される際のロスが小さい。また、2つの第2凹部52が並んでいる方向(2つの第2凸部28が並んでいる方向)がモータ軸線方向Lに対して直交し、第1方向L51と交差する第2方向L52である。
【0042】
ここで、第1方向L51(第1凹部51の延在方向および2つの第1凸部42が並んでいる方向)と、第2方向L52(第2凹部52の延在方向および2つの第2凸部28が並んでいる方向)とは、軸線周りの角度方向が90°ずれている。このため、モータ側カップリング部4に対して伝達部材5が移動可能な方向(第1方向L51)と、ウォーム側カップリング部26に対して伝達部材5が移動可能な方向(第2方向L52)とは直交している。
【0043】
かかる構成のモータ装置1では、モータ10のモータ軸150が回転すると、第1カップリング11において、モータ側カップリング部4が回転し、モータ側カップリング部4の回転は、第1凸部42および第1凹部51を介して、伝達部材5に伝達される。また、伝達部材5の回転は、第2カップリング12において、第2凹部52および第2凸部28を介してウォーム2に伝達される。本形態では、モータ側カップリング部4が樹脂であり、伝達部材5はゴム等からなる弾性部材である。このため、モータ軸150が回転した際の振動を伝達部材5によって吸収することができる。
【0044】
(ウォーム2および圧縮コイルバネ8の構成)
図3および図4に示すように、本形態のモータ装置1においては、ウォーム2の外周面20は、螺旋溝21が形成されている領域のモータ軸線方向Lの両側に、螺旋溝21が形成されていない領域22、25を備えており、ウォーム2は、螺旋溝21が形成されていない領域22、25でラジアル軸受71、72(ウォーム側ラジアル軸受)によって回転可能に支持されている。かかるラジアル軸受71、72を用いた軸受機構7の詳細な構成は後述する。
【0045】
ウォーム2のモータ本体110とは反対側の端部291は半球面になっており、かかるウォーム2の端部291は、フレーム6の溝673に保持された板状のスラスト軸受73によって支持されている。
【0046】
本形態では、ウォーム2に形成されたバネ配置穴23を利用して、ウォーム2とモータ軸150との間には、ウォーム2をモータ本体110側とは反対側に付勢し、伝達部材5をモータ側カップリング部4に向けて付勢する圧縮コイルバネ8が配置されている。その結果、圧縮コイルバネ8は、伝達部材5およびモータ側カップリング部4を介してモータ軸150をモータ本体110側に付勢している。
【0047】
より具体的には、ウォーム2の内部において、バネ配置穴23は、ウォーム2のモータ本体110側の端面292から、外周面に螺旋溝21が形成されている位置まで届く深い穴になっており、かかるバネ配置穴23の内部に圧縮コイルバネ8が配置されている。この状態で、圧縮コイルバネ8の一方端(モータ本体110と反対側)は、バネ配置穴23の奥に形成された段部231に当接する一方、圧縮コイルバネ8の他方端(モータ本体110側)は、伝達部材5に当接している。このため、圧縮コイルバネ8は、伝達部材5とウォーム2の伝達部材5側とは反対側の端部との間に配置されている。
【0048】
従って、圧縮コイルバネ8は、ウォーム2をモータ本体110側とは反対側(出力側L1)に付勢し、カップリング12(伝達部材5およびモータ側カップリング部4)を介してモータ軸150をモータ本体110側(反出力側L2)に付勢している。
【0049】
本形態において、ウォーム2はPOM(ポリアセタール樹脂)等の樹脂製であり、ウォーム2の内部では、バネ配置穴23に対して端面292と反対側でバネ配置穴23に連通する連通穴24が軸線方向(モータ軸線方向L)に延在している。このため、ウォーム2には過大な肉厚部分が存在しない。連通穴24は、バネ配置穴23と同様、ウォーム2に対して同軸状に形成され、連通穴24の内径は、バネ配置穴23の内径より小である。このため、バネ配置穴23において連通穴24との接続部分に形成された段部231は、環状段部になっており、かかる段部231(環状段部)は、圧縮コイルバネ8のモータ本体110側とは反対側の端部を受けるバネ受け面230になっている。
【0050】
(軸受機構7の詳細構成)
図5は、本発明に係るモータ装置1に用いた軸受機構7の説明図であり、図5(a)、5b)、(c)は、ウォーム2をカバー9で覆った状態の斜視図、軸受機構7をウォーム2の軸線方向Lに沿って切断したときの断面図、および軸受機構7をウォーム2の軸線に直交する方向で切断したときの断面図である。図6は、本発明に係るモータ装置1に用いた軸受機構7をカバー9の側からみた斜視図であり、図6(a)、(b)、(c)は、フレーム6からカバー9を外した状態の斜視図、さらにフレーム6からウォーム2を外した状態の斜視図、およびウォーム2からラジアル軸受71、72を外した状態の斜視図である。図7は、本発明に係るモータ装置1に用いた軸受機構7をフレーム6側からみた斜視図であり、図7(a)、(b)は、ウォーム2をカバー9が覆っている状態の斜視図、およびカバー9を外した状態に斜視図である。
【0051】
図5および図6に示すように、本形態のモータ装置1では、フレーム6の底板部60とカバー9との間にウォーム2(回転軸)が配置され、かかるウォーム2を2つラジアル軸受71、72によって回転可能に支持する軸受機構7が構成されている。
【0052】
本形態において、ラジアル軸受71、72は、ウォーム2の軸線方向で離間する位置に配置されているが、その構成は同一である。具体的には、ラジアル軸受71、72は各々、円筒状の筒部711、721と、筒部711、721の端部で径方向外側に拡径したフランジ部712、722とを備えており、ラジアル軸受71、72は各々、フレーム6の支持板部61、62において保持されている。
【0053】
ラジアル軸受71、72を軸線方向からみたとき、フランジ部712、722は多角形を有している。本形態において、ラジアル軸受71、72を軸線方向からみたとき、フランジ部712、722は、角が湾曲しているが、概ね四角形を有している。本形態において、ラジアル軸受71、72は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂製であり、ラジアル軸受71、72の肉厚はいずれの個所でも略同等である。
【0054】
なお、ラジアル軸受71、72は構成が同一であり、ラジアル軸受71を保持する支持板部61の構成は、ラジアル軸受72を保持する支持板部62の構成と同一である。従って、以下の説明では、ラジアル軸受71および支持板部61の構成を中心に説明する。
【0055】
本形態において、支持板部61には、ウォーム2の端部を通す略半円形の穴614が形成されており、穴614は、カバー9が位置する側で開放状態にある。ここで、支持板部61には、穴614の内周面で開口するスリット610が形成されている。スリット610は、ラジアル軸受71のフランジ部712を収容可能な深さに形成されており、スリット610の底部は、ラジアル軸受71のフランジ部712に対応する角形に形成されてい
る。
【0056】
また、スリット610の内側において軸線方向で対向する2つの壁面611、612の間隔は、フランジ部712の厚さと等しいか、わずかに狭い。従って、ウォーム2にラジアル軸受71を嵌めた後、2つの壁面611、612の間にフランジ部712を圧入すると、フランジ部712がスリット610の内側に保持され、ラジアル軸受71は、フレーム6の支持板部61に固定される。この状態では、2つの壁面611、612は、軸線方向の両側からフランジ部712の両方の端面716、717に密着しているのに対して、スリット610の内壁とフランジ部712の外周面713との間にはわずかな隙間g2が存在する(図5(c)参照)。それ故、図5(b)に示すように、スリット610の内壁とフランジ部712との隙間は、径方向での隙間g2より軸線方向での隙間g1で狭いことになる。
【0057】
本形態において、ラジアル軸受71は、筒部711をラジアル軸受72に向けた状態で支持板部61に固定されており、フレーム6の支持板部61には、ラジアル軸受72の側で筒部711の外周面を径方向外側から支持する円弧状の支持面615が構成されている。ここで、支持面615は、180°以下の角度範囲、例えば、120°から180°の角度範囲に形成されている。このため、フランジ部712をスリット610に圧入する際、支持面615が邪魔にならない。
【0058】
また、支持板部62でも、支持板部61と同様、ウォーム2の端部を通す略半円形の穴624が形成されており、支持板部62には、穴624で開口するスリット620が形成されている。従って、ウォーム2にラジアル軸受72を嵌めた後、スリット620の2つの壁面621、622の間にフランジ部722を圧入すると、2つの壁面621、622は、フランジ部722の両方の端面726、727に密着し、ラジアル軸受72は、フレーム6の支持板部62に固定される。この状態で、ラジアル軸受72は、筒部721をラジアル軸受71に向けている。従って、支持板部62には、ラジアル軸受71の側で筒部721の外周面を径方向外側から支持する円弧状の支持面625が構成されている。ここで、支持面625は、180°以下の角度範囲、例えば、120°から180°の角度範囲に形成されている。このため、フランジ部722をスリット620に圧入する際、支持面625が邪魔にならない。
【0059】
(ラジアル軸受71、72に対する抜け止め)
本形態のモータ装置1において、フレーム6には、カバー9を固定するための円筒部68が形成されている。従って、フレーム6にカバー9を被せた状態でカバー9を通してネジ99を円筒部68に止めれば、カバー9をフレーム6に取り付けることができる。この状態で、ラジアル軸受71、72のフランジ部712、722のうち、スリット610、620から露出する部分にはカバー9が接し、フランジ部712、722がスリット610、620から抜けることを防止している。
【0060】
本形態において、カバー9は、矩形の平板部90と、平板部90からフレーム6の底板部60に向けて突出する複数のリブ状の突起91、92、93とを備えている、かかる突起91、92、93のうち、突起93は、図2等を参照して説明した板状のスラスト軸受73に当接し、スラスト軸受73がフレーム6の溝673から抜けるのを防止している。
【0061】
また、突起91は、ラジアル軸受71のフランジ部712と重なる領域に溝910を形成するように長円状に形成され、突起92は、ラジアル軸受72のフランジ部722と重なる領域に溝920を形成するように長円状に形成されている。
【0062】
従って、図6(b)に示すように、フレーム6にラジアル軸受71、72を固定した状
態で、ラジアル軸受71、72のフランジ部712、722の一部は、支持板部61、62からカバー9の側に突出しているので、ラジアル軸受71、72を覆うようにカバー9を取り付けると、フランジ部712、722のうち、支持板部61、62から突出している部分の一部は、カバー9の溝910、920に収容される。
【0063】
ここで、溝910、920の深さ(突起91、92の突出寸法)は、ラジアル軸受71、72のフランジ部712、722の支持板部61、62から突出している部分の高さより大である。このため、図5(b)に示すように、溝910の底部とラジアル軸受71のフランジ部712の外周面713との間には隙間g3があいているが、突起91は、ラジアル軸受71の筒部711に当接し、ラジアル軸受71がスリット610から抜けることを防止している。また、溝920の底部とラジアル軸受72のフランジ部722の外周面723との間には隙間g3があいているが、突起92は、ラジアル軸受72の筒部721に当接し、ラジアル軸受72がスリット620から抜けることを防止している。また、溝910、920の幅は、フランジ部712、722の厚さより大である。このため、溝910の内壁は、フランジ部712の端面716、717に接しておらず、溝920の内壁は、フランジ部712の端面726、727に接していない。
【0064】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の軸受機構7およびモータ装置1において、ラジアル軸受71、72は、ウォーム2(回転軸)を回転可能に支持する筒部711、722と、筒部711、721から径方向外側に拡径したフランジ部712、722を備えており、ラジアル軸受71、72は、フレーム6のスリット610、620にフランジ部712、722が収容されることによりフレーム6に保持されている。このため、ラジアル軸受71、72がフレーム6に保持される際、筒部711、721に応力が加わりにくいので、筒部711、721の変形が発生しにくい。従って、筒部711、721内の真円度や回転軸とのクリアランスが変化しにくいので、軸受性能が低下しにくい。
【0065】
また、ラジアル軸受71、72は樹脂製であるため、ラジアル軸受71、72を安価に製造することができるとともに、軽量化を図ることもできる。この場合でも、ラジアル軸受71、72がフレーム6に保持される際、筒部711、721に応力が加わりにくいので、ラジアル軸受71、72が樹脂製であっても、筒部711、721の変形が発生しにくい。
【0066】
また、フランジ部712は、スリット610の2つの壁面611、612の間に圧入され、フランジ部722は、スリット620の2つの壁面621、622の間に圧入されている。このため、筒部711、721にラジアル方向の力が加わりにくいので、筒部711、721にラジアル方向の変形が発生しにくい。また、軸線方向からみたとき、フランジ部712、722は、多角形であるため、フランジ部712、722は、ラジアル軸受71、72の周り止めの機能を発揮する。しかも、軸線方向からみたとき、フランジ部712、722は、四角形である。このため、フランジ部712、722は1辺の長さが長いので、周り止めの機能に優れている。また、フランジ部712、722が3角形等である場合と違って、相対向する辺が平行であるため、周り止めの機能に優れている。また、フレーム6は、筒部711、721の外周面を180°以下の角度範囲で径方向から支持する支持面615、625を有しているため、筒部711、721を介してウォーム2をラジアル方向で確実に支持することができる。
【0067】
さらに、フランジ部712、722のうち、スリット610、620から露出する部分には、フレーム6に重なるカバー9が接している。このため、フランジ部712、722がスリット610、620から抜けることを防止することができる。また、カバー9には、フランジ部712、722のうち、スリット610、620から突出している部分の少
なくとも一部を収容する溝910、920が形成されている。このため、フレーム6のスリット610、620とカバー9の溝910、920とによって、フランジ部712、722を適正な姿勢に保持することができる。また、溝910の内壁は、フランジ部712の端面716、717に接し、フランジ部712の外周面713との間に隙間があいている。同様に、溝920の内壁は、フランジ部722の端面726、727に接し、フランジ部722の外周面723との間に隙間があいている。従って、筒部711、721にラジアル方向の力が加わりにくいので、筒部711、721にラジアル方向の変形が発生しにくい。
【0068】
さらにまた、2つのラジアル軸受71、72は各々、他方のラジアル軸受の側に筒部711、721を向けてフレーム6に保持されている。このため、2つのラジアル軸受71、72においてフランジ部712、722が保持されている個所が遠いので、ウォーム2を安定した状態に保持することができる。
【0069】
(ラジアル軸受71の変形例)
図8は、本発明を適用した軸受機構7のラジアル軸受71の変形例を示す説明図である。上記実施の形態では、ラジアル軸受71がフランジ部712の一方側のみに筒部711を有していたが、図8に示すように、フランジ部712に対して軸線方向の両側に筒部711を備えている構成を採用してもよい。かかる構成によれば、ウォーム2(回転軸)に対する支持面(筒部711の内周面)の軸線方向の寸法が長いので、ウォーム2を安定した状態に保持することができる。なお、ラジアル軸受72の方も同様である。
【0070】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、回転軸がウォーム2であったが、平歯車等が取り付けられる回転軸に対する軸受機構7に本発明を適用してもよい。
【0071】
また、上記実施の形態では、モータ10としてステッピングモータを用いたが、他のブラシレスモータやブラシ付きモータ等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 モータ装置
2 ウォーム(回転軸)
3 ウォームホイール
6 フレーム
61、62 支持板部
610、620 スリット
611、612、621、622 スリットの壁面
615、625 支持面
7 軸受機構
71、72 ラジアル軸受
710、720 スリット
711、721 筒部
712、722 フランジ部
713、723 フランジ部の外周面
716、717、726、727 フランジ部の端面
8 圧縮コイルバネ
9 カバー
910、920 溝
10 モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8