特許第6353265号(P6353265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353265
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】消臭性能に優れる染色布帛
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/507 20060101AFI20180625BHJP
   D06M 13/207 20060101ALI20180625BHJP
   D06P 3/82 20060101ALI20180625BHJP
   D06P 1/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   D06M15/507
   D06M13/207
   D06P3/82 E
   D06P1/00 C
   D06P1/00 J
   D06P1/00 K
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-84884(P2014-84884)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-203176(P2015-203176A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】義田 潔
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−241290(JP,A)
【文献】 特開2013−133562(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/185346(WO,A1)
【文献】 特開2013−204204(JP,A)
【文献】 特許第4663812(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0033409(US,A1)
【文献】 特開2012−211413(JP,A)
【文献】 特開2013−067918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00−15/715
D03D1/00−27/18
D04B1/00−1/28
21/00−21/20
D06P1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ酸にてpHを4.5〜6.0に調整した染浴において、非イオン/陰イオン界面活性剤混合物とポリエステル樹脂と蛍光増白染料を用いて125〜135℃の温度でポリエステル繊維を染色する工程を含む、消臭性蛍光増白染色布帛の製造方法であって、該消臭性蛍光増白染色布帛は、非改質セルロース繊維とポリエステル繊維とポリウレタン繊維とを混用した消臭性蛍光増白染色布帛であり、洗濯50回後の、消臭加工繊維製品認定基準におけるアンモニア減少率が70%以上であり、酢酸減少率が80%以上であり、イソ吉草酸減少率が85%以上であり、かつ、ノネナール減少率が75%以上であり、かつ、分子量8000〜15000のポリエステル樹脂を0.1〜0.9重量%含有している、前記方法
【請求項2】
前記ポリエステル繊維の染色の後に、非改質セルロース繊維の漂白と蛍光染料による染色が同時に行なわれている請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭性能に優れるセルロース繊維とポリエステル繊維とポリウレタン繊維との混用染色布帛に関する。さらに詳しくは、本発明は、洗濯耐久性に優れた消臭性能を有するとともに、染色白度が高く、吸水速乾性能に優れる、セルロース繊維とポリエステル繊維とポリウレタン繊維との混用染色布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
綿等のセルロース繊維は、衣服に多く使用されているが、近年、衣服の着用時の快適性や日常生活における部屋干し環境を満足するための機能として消臭性能や吸水速乾性能が求められている。
消臭性能の中でも特に高齢化社会の進行により、中高年の人が発する独特の体臭である加齢臭に対する消臭機能が求められている。特に夏場のインナー商品においては、蛍光増白した白物商品にて、白色の白度が高く、耐久性のある消臭機能、吸水速乾機能が求められている。
一般に、加齢臭とは、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールの各臭気成分に起因すると考えられており、加齢臭の消臭には、これら4つの成分を全て除去する機能が必要とされている。
【0003】
下記特許文献1には、各種の消臭機能を得るための方法として、酸化チタン光触媒を付着させた原繊維を編成してなる布帛が開示されている。しかしながら、特定の臭気に対しては効果があるものの、上述の4つの臭気成分全てを除去することはできず、吸水速乾性能に劣る問題がある。
加齢臭の中の一つであるノネナールは、加齢による生体防御機構の衰えで分解されなかった過酸化脂質と、加齢と共に分泌量が多くなるパルミトレイン酸とによるものであり、過酸化脂質による酸化伝播でバルミトレイン酸がバルミトレイン酸ヒドロペルオキシドとなり、これが開裂分解して、ノネナールとなることから、抑制する方法として、過酸化脂質による酸化伝播を遮断するため、キュレン抽出物やオウゴン抽出物等の抗酸化剤を繊維表面に付与する方法があるが、これら抗酸化剤そのものは洗濯耐久性がないという問題がある。
【0004】
また、下記特許文献2と3には、加齢臭に対し驚くべき消臭性を発現する方法として、セルロース系繊維にメタクリル酸をグラフト共重合させた改質セルロース繊維と、ポリエステル繊維やポリウレタン繊維との複合布帛が開示されている。しかしながら、セルロース繊維をグラフト共重合により改質することで、強力低下や白度低下を起こし、インナー、スポーツ衣料品において白度の高い商品が得られないばかりか、布帛での破裂強度低下、耐摩耗性低下、吸水速乾性能低下という問題がある。
【0005】
また、下記特許文献4には、染色堅牢性に優れた消臭性布帛を得る方法として、特定の共重合ポリエステル繊維を親水処理する方法が開示されている。しかしながらこの方法では、アンモニア臭、硫化水素臭、酢酸臭に対して優れた消臭性能を示すものの、イソ吉草酸やノネナール臭に対する効果が弱いという問題がある。
また、下記特許文献5には、洗濯耐久性に優れた消臭性を備えたポリエステル系繊維構造物を得る方法として、ヒドロキシ酸誘導体からなる物質を固着させる方法が開示されている。しかしながらこの方法では、アンモニア臭に対して優れた消臭性能を示すものの、酢酸臭、イソ吉草酸臭、ノネナール臭に対して効果が弱いという問題がある。
このように、現状では、セルロース繊維を改質しないで使用した布帛において、加齢臭に対する消臭性能に優れ、吸水速乾性能に優れ、白色染色品における白度の高い染色製品は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−030552号公報
【特許文献2】特許第4235244号公報
【特許文献3】WO2009/101995号パンフレット
【特許文献4】特開2010−242240号公報
【特許文献5】WO2011/118749号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、非改質セルロース繊維とポリエステル繊維とポリウレタン繊維とを混用した染色布帛において、加齢臭に対する消臭性能の洗濯耐久性に優れ、吸水速乾性能に優れ、白色染色における白度の高い消臭性染色布帛、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討し、実験を重ねたところ、非改質セルロース繊維とポリエステル繊維とポリウレタン繊維との混用品において、ヒドロキシ酸を用いた酸性下で、非イオン/陰イオン界面活性剤混合物と特定分子量のポリエステル樹脂を用いてポリエステル繊維を蛍光増白染色した後、セルロース繊維の漂白と蛍光増白染色を同時に行うことで、加齢臭に対して優れた消臭性能の洗濯耐久性能と白色染色品における白度が高く、吸水速乾性能に優れた染色品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下のとおりのものである。
[1]ヒドロキシ酸にてpHを4.5〜6.0に調整した染浴において、非イオン/陰イオン界面活性剤混合物とポリエステル樹脂と蛍光増白染料を用いて125〜135℃の温度でポリエステル繊維を染色する工程を含む、消臭性蛍光増白染色布帛の製造方法であって、該消臭性蛍光増白染色布帛は、非改質セルロース繊維とポリエステル繊維とポリウレタン繊維とを混用した消臭性蛍光増白染色布帛であり、洗濯50回後の、消臭加工繊維製品認定基準におけるアンモニア減少率が70%以上であり、酢酸減少率が80%以上であり、イソ吉草酸減少率が85%以上であり、かつ、ノネナール減少率が75%以上であり、かつ、分子量8000〜15000のポリエステル樹脂を0.1〜0.9重量%含有している、前記方法
[2]前記ポリエステル繊維の染色の後に、非改質セルロース繊維の漂白と蛍光染料による染色が同時に行なわれている記[に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の染色布帛は、非改質セルロース繊維とポリエステル繊維とポリウレタン繊維から構成され、加齢臭に対する優れた消臭性能が発揮され、白色染色品における白度が高く、吸水速乾性能に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の染色布帛は、非改質セルロース繊維とポリエステル繊維とポリウレタン繊維から構成される布帛であり、蛍光増白染色品において白度が高く、加齢臭に対する消臭性能に優れ、吸水速乾性能に優れ、その洗濯耐久性が改良されたものである。
従来、消臭性能付与のために、セルロース系繊維にメタクリル酸をグラフト共重合反応させて得られる改質セルロース系繊維が考案されているが、本発明における非改質セルロース繊維とは、改質していないセルロース繊維であり、具体的には、後処理によるカルボキシル基が実質的に付与されていないセルロース繊維である。セルロース繊維とは、綿、麻等の天然セルロース系繊維やレーヨン、ポリノジック等の再生セルロース繊維をいい、再生セルロース繊維が好ましく使用でき、中でもキュプラ(旭化成せんい製ベンベルグ)を用いた場合、本発明の効果が最も顕著に現れる。
【0012】
本発明で用いるセルロース繊維は、特に限定されないが、総繊度が15〜90デシテックスであることが好ましい。さらに断面形状は、特に限定されないが、L型断面の場合、しなやかな風合が得やすいとともに比表面積が大きくなっていることから、吸水速乾性能が高まり、本発明の効果が十分に達成されるため、好ましい。
また、本発明で用いるセルロース繊維中に、再生セルロース繊維が50%以上含まれることが好ましく、再生セルロース繊維100%がより好ましい。
また繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。そして、繊維が加工される糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸およびエアジェット精紡糸等の紡績糸、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸、空気噴射加工糸、押し込み加工糸並びにニットデニット加工糸等がある。
【0013】
セルロース繊維とその他の繊維を混用する場合の糸条の形態の例としては、混紡(混綿、フリース混紡、スライバー混紡、コアヤーン、サイロスパン、サイロフィル、ホロースピンドル等)、交絡混繊、交撚、意匠撚糸、カバリング(シングル、ダブル)、複合仮撚(同時仮撚、先撚仮撚)、伸度差仮撚、位相差、仮撚加工後の後混繊および2フィード(同時フィードやフィード差)空気噴射加工等による混用形態が挙げられる。
【0014】
本発明においてポリエステル繊維とは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリピロピレンテレフタレート単位を主たる構成成分とした繊維である。必要に応じ第3成分を共重合および/またはブレンドすることよって変性されていてもよく、従来公知の方法にて製造すればよい。
本発明で用いるポリエステル繊維には、酸化チタン、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の界面活性剤、従来公知の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤および帯電防止剤、並びにアルカリ金属等が含有されていてもよい。
【0015】
本発明で用いるポリエステル繊維は、特に限定されないが、総繊度が15〜90デシテックスでの繊維であることが好ましい。さらに断面形状は、丸型以外に扁平、くびれ付扁平、三角形、四角形、3以上の多葉形、C型、H型、X型、W型、M型および中空断面のいずれであってもよいが、吸水速乾性能が高まることより扁平度が2.0〜4.0の異形断面で単糸デシテックスが1.1デシテックスの繊維が好ましい。
また繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。繊維が加工される糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸およびエアジェット精紡糸等の紡績糸、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、並びにニットデニット加工糸等がある。
【0016】
本発明で用いるポリウレタン繊維は、有機ポリイソシアネート、ポリアルキレンエーテルジオール及びイソシアネート基と反応する活性水素含有化合物を、それぞれ、下記(i)、(ii)、及び(iii)で表した場合、
(i)有機ポリイソシアネート:R4−(NCO)x (式中、R4は有機残基であり、そしてxは2以上の整数である)、
(ii)ポリアルキレンエーテルジオール:HO−R5−OH (式中、R5はポリアルキレンエーテルジオールの残基である)、
(iii)イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物:H−R6−H及び/又はR7−H (式中、R6とR7は活性水素含有化合物の残基である)、
基本的には、それらに由来する下記構造単位(A)及び下記構造単位(B)の繰り返しにより表される構造を有する。
【化1】
(式中、lは1以上の整数であり、そしてR4とR5は上記(i)及び(ii)に記載したものと同じである。)
【化2】
(式中、mは1以上の整数であり、そしてR4とR6は上記(i)及び(iii)に記載したものと同じである。)
【0017】
さらに、上記構造単位(A)及び(B)を形成する有機ポリイソシアネート化合物の官能基数に対応して、R4基に結合するウレタン結合部分又はウレア結合部分は増減することができ、また、上記ポリウレタン重合体の末端は−R6−H又は−R7であることができる。
本発明において、上記ポリアルキレンエーテルジオールは、主として下記構造単位(C)からなるものであればよく、
【化3】
例えば、テトラヒドロフランの開環重合によって得られるポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。これ以外に、前記した構造単位(C)及び下記構造単位(D)からなる共重合ポリアルキレンエーテルジオールであってもよい。
【化4】
(式中、R1は炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐アルキレン基であり、R2とR3は炭素原子数1〜3のアルキル基であるか、又はR2とR3は一緒になって、脂環式炭化水素残基を形成する。)
【0018】
共重合ポリアルキレンエーテルジオールは、下記式(1)で表される特定比率のアルキル基を有するものが好ましい。
0.05≦(MD)/(MC+MD)≦0.50 ・・・式(1)
(式中、MC及びMDは各々、当該ポリアルキレンエーテルジオール中に存在する構造単位(C)と(D)の総数であり、そして構造単位(C)と構造単位(D)は、当該ポリアルキレンエーテルジオール中にランダム状又はブロック状のどちらで存在してもよい。)
式(1)は、より好ましくは、0.10≦(MD)/(MC+MD)≦0.45である。
【0019】
このような特定のポリアルキレンエーテルジオールは、テトラヒドロフランと、低分子ジオール又はその脱水環状低分子化合物とを単独で又は組み合わせて、水和数を制御したヘテロポリ酸を触媒として反応させることにより製造することができる。製造方法としては、例えば特開昭61−123628号公報に記載の方法が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0020】
ポリアルキレンエーテルジオールの製造において、テトラヒドロフランと共に用いることができる低分子ジオール、環状低分子化合物としては、例えば、ネオペンチルグルコール、3,3−ジメチルオキセタン、1,1−ジヒドロオキシエチルシクロヘキサン、1,1−ジヒドロオキシエチルシクロペンタン等が挙げられ、なかでも、ネオペンチルグリコール、3,3−ジメチルオキセタンが好ましい。
【0021】
ポリアルキレンエーテルジオールの分子量、共重合成分構成、共重合比、末端基比率は、反応の方法及び条件を種々変化させることによって、特定の値に容易に設定することができる。
ポリアルキレンエーテルジオールの分岐鎖を有する特定の構造単位(B)と構造単位(A)であるテトラメチレン単位は、ランダム状又はブロック状のいずれで分布していてもよい。ヘテロポリ酸触媒を用いた反応ではブロック状又はランダム状いずれにも分布させることができ、ジオールの結晶性を種々効果的に変えることができ、ポリウレタンの特性に合わせて各々の結晶性を持つジオールを製造することができる。本発明においては、弾性特性の点から、ランダム状であることが好ましい。
【0022】
ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量は、300〜30,000であることが好ましく、より好ましくは500〜5,000で、さらに好ましくは1,000〜4,000である。
さらに、上記ポリアルキレンエーテルジオールを、他のジオール等と任意の割合に混合又は併用使用してもよい。
【0023】
他のジオールとしては、数平均分子量250〜20,000程度のジオール、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシペンタメチレングリコール、ポリオキシプロピレンテトラメチレングリコール等のポリエーテルジオール;アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、イタコン酸、アゼライン酸、マロン酸等の二塩基酸の1種又は2種以上とエチレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のグリコール類の1種又は2種以上とから得られたポリエステルジオール;ポリ−ε−カプロラクトン、ポリバレロラクトン等のポリラクトンジオール;ポリエステルアミドジオール、ポリエーテル−エステルジオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0024】
上記ポリアルキレンエーテルジオールは、前記式(1)を満足した上で、さらに下記式(2)で表される特定比率のアルキル基末端を有することが好ましい。
0.06≦(TD)/(TC+TD)≦0.70 ・・・式(2)
(式中、TC、及びTDは各々、当該ポリアルキレンエーテルジオールの末端に存在する構造単位(C)と(D)の総数である。)
構造単位(C)及び(D)の量が前記式(1)及び(2)の範囲内にあれば、乾熱セット性、耐湿熱性、及び弾性機能に優れるポリウレタン重合体が得られる。式(2)は、より好ましくは、0.12≦(TD)/(TC+TD)≦0.54である。
【0025】
本発明においては、ポリアルキレンエーテルジオールにおける構造単位(C)と構造単位(D)の末端基比率は、下記式(3)を満足することが好ましい。
1.20≦{(TD)/(TC+TD)}/{(MD)/(MC+MD)}≦6.0 ・・・ 式(3)
(式中、MC、MD、TC及びTDは、式(1)と式(2)中で定義したものと同じである。)
すなわち、ポリアルキレンエーテルジオールの末端における構造単位(D)の比率が、ポリアルキレンエーテルジオール全体における構造単位(D)の比率よりも大きいことが好ましい。末端基比率が前記式(3)を満足すると、乾熱セット性の良好なポリウレタンが得られ、また、製造工程において、有機ポリイソシアネート化合物の反応性が良好で、反応が比較的短時間、低温で進行するため、副反応が生じず、アルファネート架橋結合の生成によるゲル化も生じない。
【0026】
ポリアルキレンエーテルジオールの末端基比率を制御するためには、例えば、反応の終点において構造単位(D)に由来する化合物を多く加えることにより、末端基に構造単位(D)が多く存在することができる。
本発明においては、ポリアルキレンエーテルジオールと有機ポリイソシアネート化合物とを、イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物の存在下で反応させて、ポリウレタンを製造することができる。
【0027】
有機ポリイソシアネート化合物としては、分子内に少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する化合物、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビス(3−メチル−4−イソシアナートフェニル)メタン、ビス(4−イソシアナートシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物としては、例えば、(イ)水、(ロ)エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、N,N′−ビス(γ−アミノプロピル)−N,N−ジメチルエチレンジアミンなどの2官能性脂肪族ジアミン、(ハ)1官能性アミノ化合物、例えば、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、メチル−n−プロピルアミン、メチル−イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチル−n−ブチルアミン、メチル−イソブチルアミン、メチルイソアミルアミン等の1官能性第2級アミン、(二)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール類、(ホ)本発明に用いられる前記ポリアルキレンエーテルジオール、(へ)公知の数平均分子量250〜5000程度のジオール類、及び(ト)一価アルコール類等が挙げられる。
前記の有機ポリイソシアネート化合物や活性水素含有化合物は、各々単独で用いてもよいが、必要に応じて予め混合して用いてもよい。
【0029】
ポリウレタン化反応の操作に関しては、下記のような方法が好ましい。
(イ)公知のポリウレタン化反応の技術、例えば、ポリアルキレンエーテルジオールと有機ポリイソシアネート化合物とを、1:1〜1:3.0(当量比)、好ましくは1:1.3〜1:2.0の割合で有機ポリイソシアネート化合物過剰の条件下で反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した後、該プレポリマー中のイソシアネート基に対して、イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物を添加して反応させる。
【0030】
(ロ)有機ポリイソシアネート化合物、ポリアルキレンエーテルジオール、活性水素含有化合物を同時に1段で反応させるワンショット重合法で反応させる。
ウレタン化反応においては、必要に応じて、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン等の溶媒を用いてもよい。
また、本発明で用いるポリウレタン繊維における各種化合物の化学量論的割合は、前記(ii)で表されるポリアルキレンエーテルジオールの水酸基と、前記(iii)で表される活性水素含有化合物の活性水素の総和が、前記(i)で表される有機ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対して、0.9〜1.15当量であることが好ましく、1.0〜1.05当量であることがより好ましい。
本発明で用いる上記構造のポリウレタン繊維は、特許第4002440号に記載された方法で得られ、3級窒素化合物が含有されているものであっても構わない。
【0031】
本発明で用いるセルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維それぞれに、またはいずれかに亜鉛、銅、シリカ、マグネシウム、アルミニウム元素を含む複合金属酸化物がブレンドの方法にて含有されていてもよい。複合金属酸化物としては、BET値における比表面積200〜400m/gの微粒子を0.1〜6.0wt%含有させるとより一層消臭性能が高まるので好ましい。
【0032】
本発明の染色布帛は、非改質セルロース繊維とポリエステル繊維とポリウレタン繊維が含有され、それぞれの繊維の割合は、用途により適宜決めることができるが、概ねセルロース繊維は30%以上用い、ポリエステル繊維は30%以上用い、ポリウレタン繊維は20%以下混用させた場合に好ましい結果が得られる。布帛性能や消臭性の面から、セルロース繊維が30〜60%、ポリエステル繊維が30〜60%、ポリウレタン繊維が3〜15%であることがより好ましい。
【0033】
本発明の染色布帛の混用形態は、糸状混用形態と布帛混用形態に大別される。
セルロース繊維とポリエステル繊維とを混用する場合の糸条の混用形態の例としては、混紡(混綿、フリース混紡、スライバー混紡、コアヤーン、サイロスパン、サイロフィル、ホロースピンドル等)、交絡混繊、交撚、意匠撚糸、カバリング(シングル、ダブル)、複合仮撚(同時仮撚、先撚仮撚)、伸度差仮撚、位相差、仮撚加工後の後混繊、2フィード(同時フィードやフィード差)空気噴射加工等による混用形態が挙げられる。
ポリウレタン繊維の糸状の混用形態としては、ポリウレタン繊維の裸糸(10〜80dtex)にセルロース繊維やポリエステル繊維で被覆した糸状、例えば、いわゆるカバーリングヤーン(シングル及びダブルカバリング)、合撚糸、コアヤーン、交洛糸等、公知の被覆糸の形態が挙げられる。
【0034】
布帛混用形態としては、編物、織物、不織布、及びこれらの複合布帛(例えば、積層布等)における混用が挙げられる。具体例としては、いわゆる機上混用品があり、製編織時にポリウレタン繊維の裸糸(裸糸の場合は編成や製織時に、2〜4倍程度に伸長させながら)又は被覆糸を機上にてセルロース繊維やポリエステル繊維と引き揃えて又は合糸して混用した編織物が挙げられる。
本発明における混用の形態については何ら制限されるものではなく、セルロース繊維とポリエステル繊維とポリウレタン繊維が公知の混用手段によって混用されていればよい。
【0035】
本発明のセルロース繊維とポリエステル繊維とポリウレタン繊維との混用布帛の染色は、生機をプレセット後に実施するが、染色を実施する前の精練操作については、後述する非イオン/陰イオン界面活性剤混合物を1〜2g/L用い、通常実施されている方法で行うのが好ましい。
本発明の染色布帛の染色操作は、まずポリエステル繊維を染色した後に、セルロース繊維の漂白と染色を同時に行う。このような工程を経ることで本発明でいう消臭性能が高く、白色染色品における白度が高く、かつ吸水速乾性能の高い混用染色布帛が得られる。
【0036】
本発明において、消臭性能、染色布帛の白度、吸水速乾性能を高める上で、ポリエステル繊維を蛍光増白染料にて染色する際に、染浴のpHをヒドロキシ酸にて4.5〜6.0に調整することが好ましい。
本発明でいうヒドロキシ酸とは、有機化合物の1分子内にカルボキシル基と水酸基をもつ脂肪族オキシ酸、芳香族オキシ酸であり、たとえば乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、没食子酸などが挙げられ、取り扱いの容易性より脂肪族オキシ酸の乳酸、リンゴ酸、酒石酸などが好ましく使用することができ、使用量は概ね0.2g/L以下である。染浴pHが4.5未満の場合、蛍光増白染色後の白度が低くなる傾向にあり、pHが6.0を超えると、消臭性能、吸水速乾性能の洗濯耐久性が劣る傾向にある。
【0037】
また染浴中には、非イオン/陰イオン界面活性剤混合物とポリエステル樹脂を併用することが好ましいが、本発明でいう非イオン/陰イオン界面活性剤混合物とは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等からなる非イオン界面活性剤とアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物等からなる陰イオン界面活性剤との混合物である。陰イオン界面活性剤を混合併用することで本発明の消臭性能の効果が高まり、非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤との混合割合は、1:1〜9:1が好ましい範囲である。このような界面活性剤として市販品では、北広ケミカル(株)製のレベノールTD−838等が挙げられる。陰イオン界面活性剤の比率が高い程、消臭性能の耐久性能は高まるが、併用比率が50%を超えると液流染色機等の回転式染色機にて染色する場合、泡立ちが高くなり、染色操作が不安定となり好ましくない。非イオン/陰イオン界面活性剤混合物の使用量は1〜3g/Lが好ましく使用できる。使用量が1g/L未満の場合、消臭性能が不安定であり、3g/Lを超えると染料の吸着性が低下するので好ましくない。
【0038】
本発明において、吸水速乾性能を得るために、染浴中にポリエルテル樹脂を併用することが好ましい。ポリエステル樹脂を付与することで本発明の消臭性能が一段と高まる。
本発明に用いるポリエステル樹脂は、テレフタル酸および/またはイソフタル酸とアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールとからなるブロック共重合体であり、水に分散させたエマルジョンからなるものである。その分子量は8000〜15000である。このようなポリエステル樹脂として市販品では、高松油脂(株)製のSR−1801Mconc、DCOM 35−6等が一例として挙げられる。分子量がこの範囲にあると染浴中のヒドロキシ酸、非イオン/陰イオン界面活性剤混合物との相乗効果にてポリエステル樹脂とポリエステル繊維との結合力が高くなり、消臭性能、吸水速乾性能の耐久性が高くなる。分子量が8000未満では、吸水速乾性能の耐久性が低く、分子量が15000を超えると、しなやかな風合が十分に得られない。ポリエステル樹脂の付与量は、混用布帛重量に対して固形分で0.1〜0.9重量%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6重量%である。付与量が0.1重量%未満では、本発明の消臭性能、吸水速乾性能が不十分で好ましくなく、一方、0.9重量%を越えた場合には、コスト高となり好ましくない。
【0039】
本発明において、ポリエステル繊維の染色は蛍光増白染料を用い染色する。蛍光増白染料は、紫外部(330〜380nm)の光を吸収し、可視部の短波長側(400〜450nm)に蛍光を発するもので、クマリン系、オキサゾール系等の染料で通常ポリエステル繊維に使用されている染料であればいずれでもよく、染料濃度0.3〜3%omfで用いればよい。染色する際の温度は、染色布帛の白色度を高め、消臭性能、吸水速乾性能を高める上で、125〜135℃で実施し、染色時間は20〜45分である。染色温度が125℃未満の場合、染色布帛の白色度、消臭性能、吸水速乾性能が不十分である。一方、染色温度が135℃を超えた場合、高い白色度が得られない。
【0040】
ポリエステル繊維の染色後にセルロース繊維の漂白処理と蛍光増白染色を同時に実施することで混用染色布帛の白色度が一段と高いものが得られる。漂白剤としては、過酸化水素水を用いるのがセルロース繊維の強度を保つ上で好ましく、その使用量は5〜20ml/Lで用いればよい。蛍光増白染料としては、スチルベン系の染料等でセルロース繊維に使用されているものを使用し、その使用濃度は0.2〜0.8%omfであり、処理温度は90〜100℃にて、処理時間は20〜45分行えば良い。
染色後には、ヒドロキシ酸1〜2g/Lを用い、40〜60℃で20〜30分間処理すると消臭性能が安定化するので好ましい。
【0041】
染色操作は、ロータリドラム染色機、パドル型染色機、ウインスリール染色機、液流染色機、気流染色機等の回転式染色装置を使用するのが、均一に処理ができ、良好な消臭性能、吸水速乾性能が得られるので好ましい。
染色後の仕上加工法については、通常セルロース繊維とポリエステル繊維の混用布帛で実施されている条件であればいずれも適用することができ、混用布帛の特性に応じ適宜設定すればよい。また、染色仕上布帛の生地pHが3.8〜6.5の酸性であると消臭性能が一層安定して得られるので、仕上剤浴中にヒドロキシ酸を1〜2g/L添加し、調整することが好ましい。
【0042】
このようにして得られたセルロース繊維とポリエステル繊維とポリウレタン繊維とからなる混用染色布帛は、社団法人繊維評価技術協議会が定める消臭加工繊維製品認証基準(2010年4月1日版)に規定されている加齢臭に対する消臭性能に優れる。具体的には後述する、JTETC消臭性区分「加齢臭」消臭試験における、JTETCが定める消臭加工繊維製品認証基準によるアンモニアの減少率は70%以上、好ましくは75%以上、酢酸の減少率は80%以上、好ましくは85%以上、イソ吉草酸の減少率は85%以上、好ましくは90%以上、ノネナールの減少率は75%以上、好ましくは85%以上である。
【0043】
本発明の染色布帛は、繰り返し洗濯した後でも、上記試験における加齢臭消臭性能に優れることを特徴とする。具体的には、JIS−L−0217−103法による洗濯を50回繰り返した後の布帛でも、上記消臭性能を維持することができる。
本発明の染色布帛は上記消臭性能に加え、吸水速乾性能に優れ、白色度の高い商品価値の高い染色布帛品である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
以下、実施例等で用いた特性値の測定法を示す。
(1)JTETC消臭性区分「加齢臭」消臭試験
臭気成分としてアンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナール(2−ノネナール;CAS番号463−53−8)の4成分を用いて消臭試験を行い、下記の方法により消臭性能を評価した。
【0045】
<消臭性能評価>
1.機器分析試験:JTETCが定める消臭加工繊維製品認証基準に従い、上記4成分について機器分析を行った。即ち、容器に臭気成分とサンプルを入れ、2時間放置後の臭気成分の残留濃度(2時間後の試料試験濃度)を測定した。臭気成分のみを入れた容器の残留濃度を空試験濃度として、下記式により、臭気成分の減少率を計算した。
減少率(%)=[(2時間後の空試験濃度−2時間後の試料試験濃度)/(2時間
後の空試験濃度)]×100
アンモニアと酢酸は検知管法により、イソ吉草酸とノネナールはガスクロマトグラフィー法により測定した。
判定は、アンモニアの減少率70%以上、酢酸の減少率80%以上、イソ吉草酸の減少率85%以上、ノネナールの減少率75%以上の条件を全て満足する場合を合格「○」、それ以外を不合格「×」と判定した。
尚、洗濯はJIS−L−0217−103法に従い実施した。
【0046】
2.官能試験:フラスコに臭気成分とサンプルを入れ、2時間放置後のサンプル生地とフラスコ内の臭気について、判定臭気と比較し、判定者6名のうち5名以上が下記基準により臭気を弱と判断した場合を合格とした。
臭気「強」:判定臭ガスより強い場合
臭気「弱」:判定臭ガスと比較して同等又はより弱い場合
なお、判定臭気としては、臭気強度2.0のアンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールガスを用いた。
【0047】
(2)洗濯条件
JIS L−0217 103法に従って、50回行った。尚、洗剤は、花王製アタック 1g/Lを用いた。
(3)吸水性(水滴消失時間)
JIS L−1097 滴下法に従って水滴消失時間を評価した。サンプル毎に5回測定を行い、平均消失時間を求めた。尚、このときの水滴1滴の平均量は0.039mlであった。
(4)速乾性
染色布帛(10cm角)を水で十分に濡らし、脱水機にて2000rpmで1分間脱水した後、布帛の重量を測定し、水分量を算出し、温度20℃で相対湿度65%の環境下で、布帛の水分量が2%(乾いたと感じる水分量)となるまでの時間(分)を測定した。
【0048】
(5)染色布帛の白色度
染色布帛を分光光度計(グレタグマクベス社製、形式:CE−7000A、D65光源)を用いて、X、Y、Z、x、yを測定し、JIS Z8715−1991に従って、白色度を求めた。数値が大きい程、白度が高く、値が小さい程、白度が低いことを示す。
(6)染色仕上布帛のpH測定
染色仕上布帛50gを常温の蒸留水500mlに30分間浸漬し、その水溶液のpHをJIS−Z−8802に準じて測定した。
【0049】
[実施例1]
56dtex/30fのキュプラ(旭化成せんい製ベンベルグ)と22dtex/24fのポリエステル繊維とを常法にて交絡混繊し、複合混繊糸を作製した。
次に、数平均分子量1800のポリテトラオキシメチレングリコールに4,4’−ジフェニルメタンイソシアネートを当量比1:1.6の割合で加え、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温まで冷却した後、N,N’−ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液を得た。エチレンジアミン及びジエチルアミンをN,N’−ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を用意し、これを前記プレポリマー溶液に室温下添加して、固形分濃度30%のポリウレタン溶液を得た。この溶液を脱泡し、通常の乾式紡糸法により22dtexのポリウレタン繊維を得た。
次に、得られた複合混繊糸とポリウレタン繊維と84dtex/144fDTYのポリエステル繊維を用い、常法により32ゲージにて、ベアー天竺丸編地を作製した。この編地中のセルロース繊維の混用率は32%で、ポリエステル繊維の混用率は60%で、ポリウレタン繊維の混用率は8%であった。
次いで、拡布状で190℃でプレセットを行い、下記に示す条件を用い、液流染色機にて精練を行った。
【0050】
<精練条件>
非イオン/陰イオン界面活性剤混合物:レベノールTD−838 1g/L
(北広ケミカル株製、非イオン:陰イオン比率=9:1の界面活性剤)
浴比:1:30
処理温度:80℃
処理時間:20分
処理後は、湯洗および水洗を行った後、下記の条件にてポリエステル繊維の染色を液流染色機にて行った。
【0051】
<染色条件>
蛍光増白染料:ニッカブライト 8720 V−01S:1.5%omf
非イオン/陰イオン界面活性剤混合物:レベノールTD−838 1g/L
ポリエステル樹脂:SR−1801Mコンク 2%omf(高松油脂製、固形分15
%、分子量12000)
pH:4.5(酒石酸0.06g/Lにて調整)
浴比:1:25
染色温度:130℃
染色時間:45分
染色後は、80℃の湯洗および水洗を行った後、下記の条件にてセルロース繊維の漂白と染色を同時に行った。
【0052】
<漂白、染色条件>
漂白剤:過酸化水素水(30%)10ml/L
蛍光増白染料:ブランクフォアーBA 0.2%omf
炭酸ナトリウム:2g/L
浴比:1:30
処理温度:95℃
処理時間:45分
処理後は、80℃の湯洗および水洗を行った後、酒石酸2g/Lと浴中柔軟剤2g/Lを用い、60℃で15分間浸漬処理をした後、脱水を行った。
次に、パッド浴中に柔軟剤と酒石酸を1g/L添加し、パッド法にて仕上剤を付与し、
乾燥後、130℃の熱処理にて仕上げた。仕上布帛のpHは4.5であった。
仕上げた染色布帛の目付は130g/m2、コース密度は76/インチ、ウエル密度は48/インチであった。
【0053】
得られた染色布帛の消臭性能、吸水、速乾性能、白度の評価結果及び、洗濯50回後の消臭性能、速乾性能の評価結果を以下の表1に示す。
表1の結果から、実施例1で得られた布帛は、消臭性能に優れ、吸水速乾性能に優れ、白度が高く商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
【0054】
[実施例2]
実施例1で得られたベアー天竺編地をプレセット、精練後、実施例1におけるポリエステル繊維を染色する条件のうち、pHを5.5(乳酸0.7ml/Lにて調整)に、ポリエステル樹脂濃度を4%omfに変更する以外は全て実施例1と同様の方法にて染色を行い、同じ性量となるように仕上剤を付与し熱セットを行い仕上げた。
得られた染色布帛の消臭性能、吸水速乾性能、白色度の評価結果及び、洗濯50回後の消臭性能、吸水速乾性能の評価結果を以下の表1に示す。
表1の結果より、実施例2で得られた布帛は、消臭性能に優れ、吸水速乾性能に優れ、白色度が高く、商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
【0055】
[比較例1]
比較例1として、実施例1で得られたベアー天竺丸編地を用い、実施例1と同様の方法にて染色を行うが、ポリエステル繊維の染色時のpHを4.0(酒石酸0.7g/Lにて調整)に変更する以外は全て同じ条件にて行い、同じ性量となるように熱セットを行い仕上げた。
得られた染色布帛の消臭性能、吸水速乾性能、白色度の評価結果及び洗濯50回後の消臭性能、吸水速乾性能の評価結果を、以下の表1に示す。
表1の結果から、本発明の実施例1、2で得られた染色布帛は、比較例1で得られた布帛に比べ、消臭性能、白色度に優れる商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
【0056】
[比較例2]
比較例2として、実施例1で得られたベアー天竺丸編地を用い、実施例1と同様の方法にて染色を行うが、ポリエステル繊維の染色時に併用している非イオン/陰イオン界面活性剤混合物とポリエステル樹脂を使用しないで実施する以外は全て同じ条件にて行い、同じ性量となるように熱セットを行い仕上げた。
得られた染色布帛の消臭性能、吸水速乾性能、白色度の評価結果及び洗濯50回後の消臭性能、吸水速乾性能の評価結果を、以下の表1に示す。
表1の結果から、本発明の実施例1、2で得られた染色布帛は、比較例2で得られた布帛に比べ、消臭性能、吸水速乾性能、白色度に優れる商品価値の高い染色布帛であることが分かる。
【0057】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の染色布帛は、加齢臭に対する消臭性能に優れ、白色度に優れ、吸水速乾性能に優れる消臭性染色布帛であるため、インナー分野、スポーツ衣料分野で好適に利用可能である。