(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記シリンダの他端を閉塞するとともに上記リザーバ室内の上記液体を上記ピストン側室に流入させる吸込口を有するボトム部材と、上記リザーバ室内に隔壁部材をさらに備え、
上記隔壁部材は、上記液だめ部材より上記ボトム部材側であって、少なくとも一部が上記吸込口よりも上方に配置される
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の横置き型緩衝器。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明する。
【0017】
本実施の形態に係る緩衝器1は、液体が封入されるシリンダ2と、上記シリンダ2内に摺動自在に挿入され、上記シリンダ2内をロッド側室R1とピストン側室R2とに区画するピストン5と、上記シリンダ2内に挿入されて上記ピストン5に連結されるピストンロッド4と、上記シリンダ2の外周側に配置され、上記シリンダ2との間にリザーバ室7を形成する外筒3と、上記シリンダ2と上記外筒3との一端を閉塞し、上記ピストンロッド4が軸方向に移動するのを案内するロッドガイド24と、上記ロッドガイド24に設けられた上記シリンダ2内の上記液体を上記リザーバ室7へ排出するための吐出口13を有する排出通路28と、上記リザーバ室7内に配置され、少なくとも一部が上記吐出口13より上方に配置される液だめ部材12を備え、上記シリンダ2あるいは上記外筒3のいずれか一方と、上記ロッドガイド24および上記液だめ部材12とから液だめ部が形成され、上記吐出口13が上記液だめ部にのぞむようになってなる。
【0018】
図1は、この発明の一実施形態によるユニフロー型の緩衝器1を示し、この緩衝器1は、図示するところでは、シリンダ2と、ヘッド側からシリンダ2内に挿入されるピストンロッド4とを有し、シリンダ2に対してピストンロッド4が出入自在とされて伸縮作動する。
【0019】
また、本実施の形態に係る緩衝器1は、主に鉄道車両における横揺れ防止ダンパとして横置きにして利用され、伸縮時に減衰力を発揮し、車体の振動を抑制する。この緩衝器1は、上記した鉄道車両用に限らず、他の用途への使用も当然可能である。
【0020】
シリンダ2内には、液体として作動油が充満され、シリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン5がシリンダ2内にロッド側室R1とピストン側室R2とを形成する。
【0021】
なお、緩衝器で用いられる液体は、作動油のほか、水、水溶液、電気粘性流体、磁気粘性流体等、緩衝器に適用可能なものを採用することが可能である。
【0022】
そして、ピストン5は、ピストン側室R2とロッド側室R1とを連通させる通路31を有しており、このピストン5には、上記通路31を開閉して、ロッド側室R1からピストン側室R2への作動油の流入を阻止し、ピストン側室R2からロッド側室R1への作動油の流入を許容する第1チェック弁21が設けられている。これにより、作動油は一方向流れに設定される。
【0023】
また、ピストン5は、ピストンロッド4の先端部に嵌合されて、ピストンロッド4の先端ネジ部(符示せず)にピストンナット35を螺合することで、ピストンロッド4に連結されている。
【0024】
シリンダ2には、シリンダ2の
図1中で左端となる開口端に嵌合して、この開口端を閉塞するロッドガイド24が設けられる。ピストンロッド4の基端部は、ロッドガイド24の軸芯部を貫通してシリンダ2の外側に突出している。そして、このロッドガイド24によって、ピストンロッド4の軸方向の移動が案内される。
【0025】
一方、緩衝器1は、シリンダ2の外周側に当該シリンダ2を覆う円筒状の外筒3を有しており、外筒3とシリンダ2との間に環状のリザーバ室7が形成される。外筒3の
図1中で左端となる開口端もロッドガイド24が嵌合することにより閉塞されている。つまり、シリンダ2と外筒3の
図1中で左端となる開口端は、ロッドガイド24により閉塞されている。また、シリンダ2の
図1中で右端となる開口端は、ボトム部材29により閉塞されている。
【0026】
ボトム部材29は、シリンダ2内周に嵌合される嵌合部29aと嵌合部29aに連なり、シリンダ2の
図1中で右端に当接する台座部29bとからなる。嵌合部29aは、円柱状に形成されており、内側にピストン側室R2からリザーバ室7への作動油の流入を阻止し、リザーバ室7からピストン側室R2への作動油の流入を許容する第2チェック弁30を収容している。これにより、作動油は一方向流れに設定される。
【0027】
台座部29bは、嵌合部29aよりも外径が大きく、シリンダ2の径方向に突出している。台座部29bには、嵌合部29aの内側であって、軸方向に開口する通孔33と、この通孔33の
図1中右端に連なり径方向に延びる凹部34と、この凹部34をリザーバ室7に連通させる吸込通路42が3個形成されている(
図6参照)。これら、通孔33、凹部34および吸込通路42とで、流路32が構成される。なお、吸込通路42の個数は3個に限定されず、リザーバ室7内の作動油をピストン側室R2に導く際に、リザーバ室7内の作動油を十分に吸込める個数であればよい。
【0028】
さらに、上記流路32の吸込通路42のリザーバ室7側に面している端部である吸込口46に、吸込パイプ11が接続されており、吸込パイプ11と上記流路32によって、リザーバ室7とピストン側室R2が連通される。そして、緩衝器1が伸長する際のリザーバ室7内の作動油は、吸込パイプ11を通じて、吸込通路42から吸込まれ、凹部34、通孔33を通り、第2チェック弁30を開弁して、ピストン側室R2に流入する。
【0029】
図1に係る本実施形態において、吸込パイプ11は、先端をリザーバ室7の下方中央付近に配置するように設けられているので、油面Oが傾いても、吸込パイプ11の先端に常に作動油があることが期待され、空気のシリンダ2内への吸込みを防止できる。
【0030】
加えて、ロッドガイド24には、ロッド側室R1をリザーバ室7に連通させる排出通路28が設けられる。排出通路28の途中には弁孔22が形成されており、弁孔22には減衰バルブ6が収容される。
【0031】
減衰バルブ6は、排出通路28を開閉するように設けられ、ロッド側室R1からリザーバ室7への作動油の流出のみを許容する。また、通過する作動油の流れに抵抗を与えて、所定の減衰力を発揮するようになっている。それゆえ、減衰バルブ6については、チェック弁機能を果たし、所定の減衰作用を発揮できるものであればよい。
【0032】
さらに、本実施の形態においては、排出通路28の途中であって、減衰バルブ6より下流であるリザーバ室7側に整流作用を発揮する整流部36が設けられている。この整流部36は、排出通路28の途中にチャンバ36aを備えており、ロッド側室R1から排出通路28を通って、勢いよく流れる作動油を整流するとともに、流速を低下させる。
【0033】
上記のような構成を備えることで、伸長行程時にロッド側室R1からリザーバ室7に、収縮行程時にピストン側室R2、ロッド側室R1、リザーバ室7の順に作動油が一方向に流れるユニフロー型の構造になっている。
【0034】
また、ロッドガイド24は、上述したようにシリンダ2の開口端に嵌合されるとともに、緩衝器1を横置きに設置した際に、排出通路28のリザーバ室7側端である吐出口13がリザーバ室7の作動油中に位置するようにして、外筒3内に嵌合されて、固定される。
【0035】
そして、ロッドガイド24の
図1中で左端部となる外側端部は、縮径部(符示せず)とされ、この縮径部にリングナット25が係合する。リングナット25は、外周に雄ネジ部(符示せず)が形成され、外筒3の開口端部内周に形成される雌ネジ部(符示せず)に螺合する。このように、リングナット25を外筒3に螺合することで、シリンダ2およびボトム部材29が、ロッドガイド24を介して外筒3の底部側に押し付けられ、これらが外筒3内に固定される。また、ロッドガイド24は、リングナット25によりシリンダ2に向けて押し付けられることで安定する。
【0036】
なお、ロッドガイド24には、環状のシール部材26が取り付けられており、このシール部材26がピストンロッド4の外周に摺接することで、シリンダ2内の作動油の漏洩が防止される。
【0037】
また、緩衝器1の収縮行程により、ピストン5が
図1中で右方へ移動する場合は、ピストン5に設けた第1チェック弁21が開弁して、ピストン5により圧縮されるピストン側室R2からロッド側室R1へ作動油が移動する。シリンダ2内にはピストンロッド4が侵入するため、過剰となるピストンロッド4の侵入体積分の作動油により、減衰バルブ6が開弁してこの過剰分の作動油が排出通路28を通り、吐出口13からリザーバ室7へ流れる。減衰バルブ6により、作動油の流れに抵抗を与えることでロッド側室R1及びピストン側室R2が昇圧され、緩衝器1は収縮作動時の減衰力を発揮する。
【0038】
戻って、この緩衝器1のリザーバ室7内には、吸込パイプ11の他に少なくとも一部が排出通路28のリザーバ室7側端である吐出口13よりも上方に配置される、液だめ部材としての油だめ部形成部材12が設けられる。
【0039】
油だめ部形成部材12は、
図2及び
図3で示すように、上端と下端にそれぞれ切欠14、18を有する環状であって、シリンダ2の外周に装着されている。油だめ部形成部材12の上端には上端切欠18が設けられており、この上端切欠18を設けることで、油だめ部形成部材12と外筒3との間にピン23を避ける為の上端隙間16が形成される。なお、ピン23は、当該緩衝器1を組み立てる際の位置決めとして用いられる。また、油だめ部形成部材12の下端には、下端切欠14が設けられており、この下端切欠14を設けることで、後述する液だめ部としての油だめ部に吐出口13がのぞむようになっている。
【0040】
また、油だめ部形成部材12によって、
図4(A)に示すように、外筒3とロッドガイド24と油だめ部形成部材12との間には油だめ部が形成される。なお、
図4では、図が煩雑になることを避ける為、シリンダ2の記載は省略している。これは、後述する
図7、9、10についても同様である。
【0041】
油だめ部が形成されることよって、
図4(A)に示すように、緩衝器1が加振され、作動油がボトム側に傾いたとしても、油だめ部にのぞむ吐出口13には作動油が存在することになり、空気の巻き込みを防止できる。
【0042】
さらに、この油だめ部形成部材12は、
図3で示すように、ロッドガイド24とは反対側の側端部から外周に伸びる鍔15を設けている。この様にした場合、
図4(B)で示すように、油だめ部形成部材12の鍔15以外の部分である凸部17の外周であって、鍔15とロッドガイド24との間に空隙が形成される。この空隙に作動油が貯留されるため、万が一、油だめ部形成部材12と外筒3の間にある作動油が振動等の理由でボトム側に流れてしまった場合であっても、当該空隙に貯留されている作動油が、油だめ部形成部材12に沿うようにして流れ落ちることで、油だめ部に補填されるため、より確実に吐出口13が空気にさらされなくなる。
【0043】
なお、
図2の破線部は、油だめ部形成部材12に鍔15が設けられる際にできる凸部17の外周を示している。
【0044】
また、油だめ部形成部材12は、シリンダ2の
図1中左側端部の外周を小径にして小径部を形成しこの小径部に嵌合することでシリンダ2に装着される。そして、上記のようにシリンダ2にロッドガイド24を組み付けると油だめ部形成部材12がロッドガイド24とシリンダ2とで挟持されて固定される。なお、油だめ部形成部材12は、リザーバ室7内に固定できれば、シリンダ2外周あるいは外筒3内周にOリングやスナップリングで固定されてもよく、固定方法はこれらの方法に限られない。この実施の形態の場合、油だめ部形成部材12の内周に環状溝が設けられていて、この環状溝内にはゴムリング19が装着されている。ゴムリング19は、シリンダ2の外周を締め付けるように附勢する。これによって油だめ部形成部材12がシリンダ2にずれることなく装着されるようになっている。
【0045】
次に本実施形態における緩衝器1の動作について説明する。
【0046】
緩衝器1が伸長作動してピストン5が
図1中左方へ移動する場合、作動油はロッド側室R1が圧縮され、減衰バルブ6を開弁させ排出通路28を通り、吐出口13からリザーバ室7へ流れる。当該作動油の流れに減衰バルブ6で抵抗を与えることでロッド側室R1が昇圧され緩衝器1は伸長作動を抑制する減衰力を発揮する。そして、この伸長作動に際して、ピストン5が
図1中左方へ移動することでピストン側室R2の容積が増大するが、リザーバ室7から吸込パイプ11に吸込まれる作動油により、第2チェック弁30を開弁して、増大した容積分の作動油がピストン側室R2へ供給される。このときに、緩衝器1が加振されると、リザーバ室7内の油面Oが波打ち、油面Oが傾くが、油面Oが傾いても油面Oが油だめ部形成部材12に衝突することにより、外筒3とロッドガイド24と油だめ部形成部材12とによって油だめ部ができるため、油だめ部にのぞむ吐出口13に作動油が常に存在する。これにより、吐出口13から吐出される作動油が空気中に排出されず、油中に排出されるため、ピストンロッド4の伸長時に作動油が空気を巻き込んでシリンダ2内に空気を混入させることが防止される。
【0047】
次に本実施の形態に係る効果について説明する。
【0048】
上記構成を備える緩衝器1は、加振によりリザーバ室7内の油面Oが波打ったり、傾斜したりしても、外筒3とロッドガイド24と油だめ部形成部材12とにより吐出口13がのぞむ油だめ部を形成するので、吐出口13周辺に作動油がなくなってしまうことがなくなり、ピストンロッド4の伸長時に作動油が空気を巻き込んでシリンダ2内に空気を混入させることを防止できる。
【0049】
また、上記緩衝器1の上記油だめ部形成部材12を環状にし、シリンダ2あるいは外筒3に装着することで、油だめ部形成部材12をリザーバ室7内に容易に設けることができる。
【0050】
なお、油だめ部形成部材12はロッドガイド24に一体に形成しても良いし、シリンダ2あるいは外筒3に形成しても良い。
【0051】
また、上記緩衝器1の上記油だめ部形成部材12はロッドガイド24側とは反対側の端部から外周に伸びる鍔15が設けられるようにすることで、凸部17の外周であって鍔15とロッドガイド24との間に作動油を貯留することができる空隙が設けられる。これにより、油だめ部上方の空隙に作動油が貯留されるため、万が一、油だめ部にある作動油が振動等の理由でボトム側に流れてしまった場合であっても、当該空隙に貯留されている作動油が、油だめ部に補填されるため、より確実に吐出口13が空気にさらされなくなる。
【0052】
また、上記油だめ部形成部材12の上端に接触していた作動油が油だめ部形成部材12に沿うようにして流れ落ちることで、油だめ部に作動油がより溜まりやすくなる。
【0053】
したがって、ピストンロッド4の伸長時に作動油が空気を巻き込んでシリンダ2内に空気を混入させることを防止できる効果が向上する。
【0054】
また、上記油だめ部形成部材12の内周に、シリンダ2の外周を締め付けるように附勢するゴムリング19を装着し、上記油だめ部形成部材12が、上記ゴムリング19によって上記シリンダ2に固定することで、油だめ部形成部材12の回転等が防止され、油だめ部形成部材12がシリンダ2にずれることなく装着される。
【0055】
なお、上記したところでは、油だめ部形成部材12を整流部36を備えた緩衝器に適用している例を説明したが、本発明は、当該整流部36を備えた緩衝器以外の緩衝器にも適用可能である。
【0056】
加えて、下端切欠14には、油だめ部形成部材12に吐出口13に面するように孔を設ける構成も含まれる。吐出口13は油だめ部にのぞみ、空気にさらされないようになっていれば良いから、油だめ部形成部材12に孔状の切欠を設けて孔内を油だめ部としても良い。また、油だめ部形成部材12外周に鍔15を設ける代わりに環状溝を設けて、この環状溝に作動油を貯留して、油だめ部で油不足をまねかないように対処するようにしてもよい。
【0057】
さらに、油だめ部形成部材12は、ロッドガイド24に当接させて設けられているが、ロッドガイド24と離間させ両者の間に空隙を設けて、この空隙自体を油だめ部として利用することも可能である。
【0058】
次に、他の実施形態について以下説明する。なお、本実施形態は、上記一実施形態の吸込パイプ11をリザーバ室7内に隔壁部材としての隔壁板41を設ける構成に変更したものであり、同一の構成については、同一符号を付するのみとして、詳細な説明を省略する。
【0059】
図5は他の実施形態に係る緩衝器100の横断図面である。
【0060】
他の実施形態に係る緩衝器100では、ロッドガイド24側に油だめ部形成部材12を設けた上、
図5に示すように、緩衝器100のボトム側には、シリンダ2の軸方向に対して、垂直に隔壁部材として隔壁板41が設けられている。
【0061】
この隔壁板41について、
図6を用いて詳細に説明する。
【0062】
図6は、
図5における緩衝器100のシリンダ2の軸方向に対して垂直方向に切り取った断面図を示している。
図6に示すように、外筒3とシリンダ2の間のリザーバ室7内に隔壁板41が設けられている。隔壁板41は、その内周面がシリンダ2の外周に沿う形状とされ、外周面が外筒3の内周面に沿う形状とされており、シリンダ2の軸方向に対して垂直に設けられる。また、この隔壁板41は油だめ部形成部材12よりもボトム部材29側であって、少なくとも一部は、リザーバ室7内の吸込口46よりも上方に配置される。
【0063】
さらに、隔壁板41は
図6に示すようにその両端にボルト44が2箇所設けられ、ボルト44をボトム部材29に螺合することで、隔壁板41はリザーバ室7内に固定される。なお、ボルトの位置および個数は上記に限定されず、隔壁板41をリザーバ室7内に固定できればよい。また、固定方法もボルト固定に限られず、例えば、シリンダ2あるいは外筒3にスナップリングやOリングで固定されてもよい。なお、隔壁板41はシリンダ2の軸方向に対して傾斜して設けられてもよいが、垂直に設けられた方が、ボトム部材29に螺合するのに有利である。
【0064】
また、隔壁板41の下部分には、吸込口46が作動油の吸込み不足を起こさないように、吸込口46に対して吸込み隙間43が開口している。なお、吸込み隙間43は吸込口46が吸込み不足を起こさないように開口していればよく、その形状は例えば、切欠き、溝および孔であってもよい。
【0065】
隔壁板41とシリンダ2および外筒3との間には図示しない隙間が設けられており、この隙間によって、隔壁板41の右方向の空間と左方向の空間とが常に連通するため、バキューム現象が防止される。なお、
図6中上端には、組付け用切欠45が設けられているが、この組付け用切欠45は緩衝器100を組み立てる際の位置決めとしてのピン23を避けるために設けられている。このように組付け用切欠45を設けることによっても隔壁板41の右方向の空間と左方向の空間とを常に連通することができるので、この場合、隔壁板41とシリンダ2および外筒3との間の隙間は設けなくてもバキューム現象を防止できる。
【0066】
隔壁板41は、上述したように少なくとも一部がリザーバ室7内の吸込口46よりも上方に配置される。このように隔壁板41を配置することで、緩衝器100が加振された際の油面変動を抑制することができるとともに隔壁板41と吸込口46との間に形成される空間に作動油を存在させることができる。詳しくは
図7を用いて以下に説明する。
【0067】
図7は、緩衝器100のリザーバ室7内における隔壁板41を設けた際の作動油の油面変動を示している。なお、実線は隔壁板41を設けた場合の油面変動を示し、一点鎖線は隔壁板41を設けない場合の油面変動を示す。なお、油だめ部形成部材12は図示していない。
【0068】
まず、隔壁板41を設けない場合は、緩衝器1がボトム側から加振されると、油面がロッドガイド24側に傾き、一点鎖線で示す上方側に空気が存在する。このように一点鎖線の上方側に空気が存在すると吸込口46から空気が吸込まれ、ピストン側室R2には空気が導かれることになる。
【0069】
これに対し、隔壁板41を設けた場合は、隔壁板41と吸込口46との間に空間が形成される。この空間に存在する作動油は、緩衝器100が加振された際に、隔壁板41に接触して、その油面変動が抑制される。つまり、
図3中で右側の空間に存在する作動油は、ロッドガイド24側へ流れようとするが、その流れが隔壁板41より遮断される。これにより、緩衝器100が加振されても吸込口46には作動油が常に存在することになる。また、隔壁板41の少なくとも一部を吸込口46よりも上方に配置することにより、より多くの作動油を隔壁板41と吸込口46との間の空間に存在させることができる。
【0070】
上記より、緩衝器100の伸長行程時に、吸込口46から空気が吸込まれることが防止される。よって、従来のように空気の吸込み防止用に設けられていた吸込パイプを廃止することができる。これにより、油だめ部形成部材12と隔壁板41を組み合わせることで、リザーバ室7内から吐出パイプと吸込みパイプの両方のパイプを廃止することができ、緩衝器の外周を小さくすることができる。
【0071】
なお、隔壁板41は、シリンダ2の軸方向における、リザーバ室7内の半分より吸込口46側に配置した方が、隔壁板41と吸込口46との間に形成される部屋の作動油の油面が高くなるため好ましい。
【0072】
次に、他の実施形態の第一変形例を、
図8、
図9を用いて説明する。
図8は他の実施形態の第一の変形例における緩衝器200をシリンダ2の軸方向に対して垂直方向に切り取った断面図を示している。なお、以下に示す第一の変形例では、上述した実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
図8に示すように、隔壁板101は、シリンダ2および外筒3との間に形成されるリザーバ室7内に配置され、シリンダ2の軸方向に対して水平方向に設けられる。
【0074】
また、隔壁板101は、シリンダ2の外周面に沿う半円筒状に形成され、その両端がシリンダ2との外周面と外筒3とに亘るように屈曲している。この屈曲した部分により、緩衝器200が加振された際の油面変動を抑制することができる。詳しくは、
図9を用いて以下に説明する。
【0075】
図9は隔壁板101をシリンダ2の軸方向に対して水平方向に設けた際の作動油の油面変動を示している。なお、
図9においても油だめ部形成部材12は図示していない。緩衝器200が加振されると、作動油の油面Oはボトム側に傾こうとする。しかし、隔壁板101によって分けられた下側の空間の作動油は、その傾きが抑えられ、隔壁板101と吸込口46との間の空間に作動油を存在させる。これにより、緩衝器200が加振されても吸込口46には作動油が常に存在することになる。また、隔壁板101の少なくとも一部を吸込口46よりも上方に配置することにより、より多くの作動油を隔壁板101と吸込口46との間の空間に存在させることができる。
【0076】
上記より、緩衝器200の伸長行程時に、吸込口46から空気が吸込まれることが防止される。よって、従来のように空気の吸込み防止用に設けられていた吸込パイプを廃止することができる。これにより、油だめ部形成部材12と隔壁板41を組み合わせることで、リザーバ室7内から吐出パイプと吸込みパイプの両方のパイプを廃止することができ、緩衝器の外周を小さくすることができる。
【0077】
戻って、上述したように隔壁板101は、シリンダ2の外周面に沿う半円筒状に形成(
図8参照)されており、シリンダ2と隔壁板101が当接している箇所をボルト(図示せず)により固定している。これにより、隔壁板101は固定される。なお、固定方法はボルトに限られない。
【0078】
また、隔壁板101は、この他に外筒3に当接するように設けられてもよいし、シリンダ2の外周面と外筒3の内周面に溝を設けて、その溝に隔壁板101を挿入してもよい。また、隔壁板101をロッドガイド24とボトム部材29で挟み込むようにしてもよい。この場合、隔壁板101の上側と下側を連通させる必要がある。さらに、隔壁板101の屈曲させる部分は、緩衝器200が加振された際に隔壁板101と吸込口46との間の空間であって、吸込口46に対して作動油が常に存在する位置であればよい。
【0079】
さらに、他の実施形態の第二の変形例を、
図10を用いて説明する。
図10は第二の変形例における隔壁板201を設けた場合の油面変動を示す。なお、
図10においても
図7、
図9と同様に油だめ部形成部材12を図示していない。また、以下に示す第二の変形例では、他の実施形態と第一の変形例と異なる点を中心に説明し、同様の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0080】
図10に示すように、第二の変形例の隔壁板201は、シリンダ2の軸方向に対して垂直に2箇所設けられており、緩衝器(符示せず)が加振された際の油面変動を抑制することができる。
【0081】
この2つの隔壁板201により、リザーバ室7には、3つの空間が形成される事になり、隔壁板201を1つしか設けない場合に比べて吸込口46に対しての作動油の油面変動の高低差を小さくすることができ、さらに空気を吸込み難くすることができる。また、隔壁板201の少なくとも一部を吸込口46よりも上方に配置することにより、より多くの作動油を隔壁板201と吸込口46との間の空間に存在させることができる。
【0082】
上記より、緩衝器の伸長行程時に吸込口46から空気が吸込まれることが防止される。よって、従来のように空気の吸込み防止用に設けられていた吸込パイプを廃止することができる。
【0083】
なお、隔壁板201は、2箇所以上設けられてもよい。また、隔壁板201は、シリンダ2の軸方向に対して傾斜して設けられてもよい。
【0084】
他の実施形態によれば以下の効果を奏することができる。
【0085】
シリンダ2と外筒3との間のリザーバ室7内であって、少なくとも一部が、吸込口46よりも上方に配置される隔壁板41、101、201を設ける。これにより、緩衝器が加振され、作動油の油面が変動しても、吸込口46には作動油が常に存在するので空気の吸込みを防止できる。
【0086】
また、従来は吸込パイプを銀ロウ付けにより固定していたが、隔壁板41、101、201はボルトにより固定できる。よって、吸込パイプを廃止できるとともに、吸込パイプを固定する際に用いられていた銀ロウ付けよりも容易でコストが低い固定方法を選択することができる。このため、加工工数とコストを削減することができる。
【0087】
さらに、隔壁板41、101、201はリザーバ室7のような比較的狭いスペースに配置することが可能であるため、容易に固定することができる。これにより、従来の緩衝器において、他の部品を変えることなく置換が可能であり、従来品との互換性がある。
【0088】
隔壁板41、101、201をシリンダ2の軸方向に対して垂直方向に設けることにより、ボルト44をシリンダ2の軸方向にまっすぐ挿入してボトム部材29に固定することができるので、容易に固定することができる。
【0089】
また、第一の変形例では、隔壁板101がシリンダ2の軸方向に対して水平方向に設けられる。これにより、リザーバ室7内を上下に分けることができ、緩衝器200が加振されてリザーバ室7内の作動油が油面変動を起こしても、隔壁板101より下側では、油面変動が抑制され、吸込口46には、作動油が常に存在するので空気の吸込みを防止できる。
【0090】
さらに、第二の変形例では、隔壁板201が複数設けられる。これにより、リザーバ室7内に複数の部屋が形成されるので、隔壁板201を1つしか設けない場合に比べて作動油の油面変動の高低差を小さくすることができ、さらに空気を吸込み難くすることができる。
【0091】
油だめ部形成部材12と組み合わせることでリザーバ室7内から吐出パイプと吸込みパイプの両方のパイプを廃止することができ、緩衝器の外周を小さくすることができる。
【0092】
以上で本発明の実施形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【0093】
隔壁部材は、板状のものに限られず、ブロック状のものを用いてもよい。つまり、作動油の油面変動を抑制できるものであればよい。また、隔壁部材は、シリンダ2、外筒3あるいはボトム部材29に一体に設けられてもよい。
【0094】
さらに、本発明は鉄道車両の車体における振動を抑制する緩衝器として説明したが、これに限らず、横置きに配置され、振動を抑制する緩衝器に適用することが可能である。