(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リセット信号が読み出されるときと前記蓄積信号が読み出されるときとのそれぞれにおいて異なる一定の電流を信号線に供給して前記均衡電圧を前記領域内の値に調整する定電流回路をさらに具備し、
前記出力端子は前記信号線に接続される
請求項4記載の半導体光検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(増幅トランジスタのゲートおよびドレインを短絡する例)
2.第2の実施の形態(PDリセットトランジスタを設けて増幅トランジスタのゲートおよびドレインを短絡する例)
3.第3の実施の形態(2画素共有の画素ブロックにおいて増幅トランジスタのゲートおよびドレインを短絡する例)
4.第4の実施の形態(グローバルシャッター方式において増幅トランジスタのゲートおよびドレインを短絡する例)
【0026】
<1.第1の実施の形態>
[撮像素子の構成例]
図1は、第1の実施の形態における撮像素子100の一構成例を示すブロック図である。この撮像素子100は、複数の定電流回路110と、画素アレイ部120と、行駆動回路150と、複数の検出回路160と、複数のスイッチ170と、出力回路180とを備える。なお、撮像素子100は、特許請求の範囲に記載の半導体光検出装置の一例である。
【0027】
画素アレイ部120には、複数の画素回路130が二次元格子状に配列される。所定の方向に配列された複数の画素回路130を以下、「行」と称し、行に垂直な方向に配列された複数の画素回路130を以下、「列」と称する。前述の定電流回路110、検出回路160、および、スイッチ170は、列ごとに設けられる。
【0028】
画素回路130は、行駆動回路150の制御に従って、光をアナログの電気信号に変換するものである。この画素回路130は、垂直信号線129を介して対応する検出回路160に電気信号を供給する。
【0029】
行駆動回路150は、複数の制御線を介して画素回路130のそれぞれを制御するものである。この行駆動回路150は、行を順に選択し、選択した行を露光させ、露光が終了した行内の画素回路130から電気信号を出力させる。この電気信号は、検出回路160により読み出される。このように、行を順に露光させる制御は、ローリングシャッター方式と呼ばれる。露光および読出し時の制御の詳細については後述する。なお、行駆動回路150は、特許請求の範囲に記載の駆動回路の一例である。
【0030】
定電流回路110は、一定の電流を生成し、対応する垂直信号線129に供給するものである。
【0031】
検出回路160は、電気信号に基づいて光検出を行うものである。この検出回路160は、この検出回路160は、電気信号に対して、AD変換や、CDS(Correlated Double Sampling)処理を行って、光を検出する。検出回路160は、検出結果を示すデジタル信号をスイッチ170に供給する。
【0032】
スイッチ170は、対応する検出回路160と出力回路180との間の経路を開閉するものである。各列のスイッチ170は、列を順に選択する列駆動回路(不図示)の制御に従って、順にデジタル信号を出力回路180に供給する。
【0033】
出力回路180は、画像処理装置などにデジタル信号を出力するものである。全ての行のデジタル信号の出力が完了すると、1フレーム分の画像データの出力が完了することになる。
【0034】
[画素回路の構成例]
図2は、第1の実施の形態における画素回路130の回路図の一例である。この画素回路130は、選択トランジスタ131、リセットトランジスタ132、転送トランジスタ133、フォトダイオード134、浮遊拡散層135および増幅トランジスタ136を備える。例えば、n型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)が、選択トランジスタ131として用いられる。リセットトランジスタ132、転送トランジスタ133、および、増幅トランジスタ136についても同様にn型のMOSFETなどが用いられる。
【0035】
転送トランジスタ133のゲートは、行駆動回路150に接続され、ソースはフォトダイオード134に接続され、ドレインは浮遊拡散層135に接続される。リセットトランジスタ132のゲートは行駆動回路150に接続され、ソースは浮遊拡散層135を介して増幅トランジスタ136のゲートに接続される。また、リセットトランジスタ132のドレインは増幅トランジスタ136のドレインと選択トランジスタ131のソースとに接続される。
【0036】
増幅トランジスタ136のゲートは浮遊拡散層135を介してリセットトランジスタ132および転送トランジスタ133に接続され、ソースには接地電位が印加される。また、増幅トランジスタ136のドレインは選択トランジスタ131およびリセットトランジスタ132に接続される。選択トランジスタ131のゲートは行駆動回路150に接続され、ソースはリセットトランジスタ132および増幅トランジスタ136に接続され、ドレインは垂直信号線129に接続される。
【0037】
フォトダイオード134は、光を電荷に変換するものである。フォトダイオード134により生成された電荷は、フォトダイオード134と転送トランジスタ133との間のノード(不図示)に蓄積される。なお、フォトダイオード134は、特許請求の範囲に記載の光電変換素子の一例である。
【0038】
転送トランジスタ133は、行駆動回路150の制御に従って、フォトダイオード134からの電荷を浮遊拡散層135に転送するものである。
【0039】
浮遊拡散層135は、フォトダイオード134からの電荷を蓄積し、蓄積した電荷の量に応じて増幅トランジスタ136のゲート電圧を降圧するものである。なお、浮遊拡散層135は、特許請求の範囲に記載の電荷蓄積部の一例である。
【0040】
増幅トランジスタ136は、ゲート電圧が閾値電圧より高いときに、そのゲート電圧を増幅してドレインから出力するものである。
【0041】
ここで、垂直信号線に接続された定電流回路110は、例えば、P型のMOSトランジスタ111を備える。このMOSトランジスタのゲートには、固定電圧V
fixが印加され、ドレインには電源電圧(例えば、3ボルト)が印加され、ソースは垂直信号線129に接続される。ゲート電圧を固定したため、MOSトランジスタ111は、飽和状態で動作し、一定の電流を供給する。
【0042】
前述したように増幅トランジスタ136のソースは接地され、ドレインは垂直信号線を介して定電流回路110が接続されているため、増幅トランジスタ136は、定電流回路110とともにオープンループ型のアンプを構成している。このようなアンプは、適切な動作点を選ぶことにより、入力された浮遊拡散層135の電圧を、例えば、数十から数十倍のゲインで出力することができる。増幅された電圧は、垂直信号線129を介して検出回路160に供給される。
【0043】
リセットトランジスタ132は、行駆動回路150の制御に従って画素回路130を初期化するものである。このリセットトランジスタ132は、行駆動回路150により露光開始が指示されると、オン状態に移行して増幅トランジスタ136のゲートおよびドレインを短絡する。露光開始時には、選択トランジスタ131も同時にオン状態に移行する。この制御により、フォトダイオード134の電荷は、浮遊拡散層135、リセットトランジスタ132および選択トランジスタ131を介して垂直信号線129に引き抜かれる。フォトダイオード134は、例えば、N型のノード拡散層がP型のウエル拡散層で囲まれた埋め込み型であり、ウエル拡散層に対して1V程度、浮遊拡散層135をバイアスすることで完全空乏状態となり、蓄積されていた全ての電荷が引き抜かれる。この露光開始時の制御を、以下、「PD(Photo Diode)リセット」と称する。
【0044】
また、リセットトランジスタ132は、浮遊拡散層(FD:Floating Diffusion)135の電圧の初期化(以下、「FDリセット」と称する。)が指示されたときにもオン状態に移行する。このFDリセットにより、浮遊拡散層135の電圧、すなわち増幅トランジスタ136のゲート電圧が初期値に初期化される。前述したように、増幅トランジスタ136のゲートおよびドレインは初期化時に短絡されるため、ゲート電圧は、ゲートおよびドレインの電圧が均衡したときの均衡電圧に初期化される。この均衡電圧は、後述する正常動作領域内の電圧である。なお、リセットトランジスタ132は、特許請求の範囲に記載の電圧初期化部の一例である。
【0045】
選択トランジスタ131は、行駆動回路150の制御に従って、増幅トランジスタ136のドレインを垂直信号線129に接続するものである。この選択トランジスタ131は、電気信号の読出し時の他、PDリセット(言い換えれば、露光開始)のときにおいてもオン状態に移行する。
【0046】
図3は、第1の実施の形態における画素回路の露光および読出し動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0047】
露光開始のタイミングT0において、行駆動回路150は、PDリセットを行う。このPDリセットにおいて、行駆動回路150は、転送トランジスタ133、リセットトランジスタ132および選択トランジスタ131をともにオン状態に制御し、パルス期間経過後にオフ状態に制御する。この制御により、浮遊拡散層135は浮遊状態に移行して新たな電荷蓄積が開始される。なお、電荷蓄積(すなわち、露光期間)中に、リセットトランジスタはオフ状態に制御されるが、オン状態のままであってもよい。一方、選択トランジスタ131は、垂直信号線129に接続された他の画素回路130のアクセスを可能にするために、オフ状態に制御される。
【0048】
次に電気信号の読み出し動作について説明する。露光終了の直前のタイミングT1において、行駆動回路150は、選択トランジスタ131をオン状態に制御する。また、行駆動回路150は、タイミングT1においてリセットトランジスタ132をオン状態に制御する。リセットトランジスタ132がオンすることにより、増幅トランジスタ136の入力である浮遊拡散層135と垂直信号線129とが短絡される。これにより、選択された画素回路130に固有の基準電位が生成される。
【0049】
そして、タイミングT1からパルス期間が経過したときに行駆動回路150は、リセットトランジスタ132をオフ状態に制御する。このとき、浮遊拡散層135の電位は、増幅トランジスタ136のゲートとのカップリングの影響を受けて、基準電位から幾分低下して、浮遊状態となる。さらに、この浮遊拡散層135には、有意なkTCノイズが発生する。この手順は、前述のFDリセットに相当する。
【0050】
次いで、リセットトランジスタ132がオフ状態に制御されてから、タイミングT2までの間において、検出回路160により電気信号がリセット信号として読み出される。
【0051】
タイミングT2において、行駆動回路150は、転送トランジスタ133をオン状態に制御する。これにより、フォトダイオード134と転送トランジスタ133との間のノードに蓄積された電子が浮遊拡散層135に流れ込む。この際、浮遊拡散層135のポテンシャルが十分高ければ、フォトダイオード134と転送トランジスタ133との間のノードに蓄積されていた電子は全て浮遊拡散層135に流出し、ノードは完全空乏状態になる。
【0052】
そして、タイミングT2からパルス期間が経過したときに行駆動回路150は、転送トランジスタ133をオフ状態に制御する。これにより、浮遊拡散層135の電位は、転送トランジスタ133の駆動前に比べて蓄積電荷分だけ下降する。低下した分の電位が増幅トランジスタ136により増幅されて垂直信号線129に出力される。
【0053】
転送トランジスタ133がオフ状態に制御されてから、タイミングT3までの間において、電気信号が蓄積信号として検出回路160により読み出される。検出回路160は、リセット信号および蓄積信号を比較して、入射された光子の量を判定する。FDリセットの際に生じたkTCノイズ等による出力のノイズ成分は、蓄積信号とリセット信号の差分を正味の蓄積信号とすることにより相殺される。
【0054】
また、画素回路130の露光期間は、転送トランジスタ133がタイミングT0後にオフしてから、リセット信号の読出し後に再度オフするまでの期間である。この間にフォトダイオードに光子が入射し電荷が発生すると、それは2回目の蓄積信号の読み出しにおける信号の間の差分として検出回路160により導出される。
【0055】
図4は、第1の実施の形態における画素回路130の平面図の一構成例を示すブロック図である。同図において、斜め斜線はトランジスタのゲート電極を、破線はメタル配線を示している。アンプの入力ノードは、転送トランジスタ133とリセットトランジスタ132とに挟まれた浮遊拡散層135と、増幅トランジスタ136のゲートと、それらの間の配線部とから構成されるが、それらはいずれも最小面積となるよう配置されている。このようにして、浮遊拡散層135の寄生容量は極小となるように設計されており、半導体加工の微細化に伴って寄生容量低減がさらに進むことが期待される。
【0056】
例えば、1光子信号に対する画素出力のSN比は、浮遊拡散層135の1電子分の振幅(1電子電荷な寄生容量)と、増幅トランジスタ136のゲート換算でのランダムノイズによってほぼ決定される。後者は増幅トランジスタ136固有のデザインによって決まる一方、前者を決めるのは浮遊拡散層135の寄生容量である。従って浮遊拡散層135の寄生容量は出来る限り極小化するのが望ましい。この観点から、本発明ではアンプの出力をアンプの入力にフィードバックするクローズドループ型ではなく、帰還ループのないオープンループ型のアンプが採用されている。ここでアンプの入力換算のSN比が決定され、同じSN比を保ちつつ、信号とノイズが同様のゲインで増倍されて垂直信号線へ出力されることになる。
【0057】
ここで、画素回路130に高ゲインのアンプを採用するのは、検出回路160側の各種ノイズを相対的に抑制するためである。しかし、その一方で、このようなアンプは通常のソースフォロアに比べて、高感度に動作する入力のレンジが著しく限定される。従ってFDリセットを従来のように固定した電位で実施すると、ロットごと、チップごと、或いは画素ごとのトランジスタの特性ばらつきの影響を受けて、適切な動作点から外れてしまう問題がある。これに対して、第1の実施の形態では浮遊拡散層135と画素出力(垂直信号線129)を短絡させているため、画素ごとに適切な入力レベルが得られる。
【0058】
図5は、第1の実施の形態における画素回路130を簡略化した回路図の一例である。同図においては、画素回路130からアンプを構成する部分が抽出されている。同図に示すようにアンプは、増幅トランジスタ136と定電流回路110とにより構成される。アンプの入力端子(増幅トランジスタ136のゲート)は、浮遊拡散層135に接続され、その電圧をV
fdとする。アンプの出力端子は、垂直信号線129と増幅トランジスタ136との接続点であり、その電圧をV
outとする。
【0059】
図6は、第1の実施の形態における増幅トランジスタ136を含むアンプの特性を示すグラフの一例である。同図におけるaは、入力電圧V
fdと出力電圧V
outとの関係の一例を示す図である。同図のaにおいて、縦軸は、出力電圧V
outであり、横軸は、入力電圧V
fdである。これらの電圧の単位は、例えば、ボルト(V)である。また、同図のaにおける太線の曲線は、平均的なアンプAm1の特性を示す。また、一点鎖線の曲線は、アンプAm1と正常動作領域の異なるアンプAm2の特性を示す。
【0060】
ここで、アンプの正常動作領域は、入力電圧V
fdに対する出力電圧V
outのゲインが所定値よりも高くなる入力電圧の領域である。
【0061】
アンプAm1を、その正常動作領域の電圧によりFDリセットすれば、高いゲインにより、
図6に示すように、リニアな出力特性が得られる。しかし、製造工程やチップごとあるいは画素ごとにトランジスタの閾値電圧等がばらつくため、ある画素回路130のアンプAm2の入出力特性は一点鎖線のように高電圧側にシフトし、その正常動作領域は、アンプAm1の正常動作領域よりも高電位側になる。このアンプAm2を仮に、アンプAm1の正常動作領域内の電圧(すなわち、アンプAm2の正常動作領域外の電圧)でFDリセットすると、十分な高さのゲインが得られず、正常な動作が望めない。このため、微弱な光を低ノイズで検出することが困難となる。
【0062】
これに対して、ゲートおよびドレインの短絡によりFDリセットを実施した場合、そのリセット電位V
rst1、V
rst2は、入力電圧V
fdと入力電圧V
outとが均衡するときの直線と、各トランジスタの特性曲線との交点により与えられる。従って特性曲線が高電圧側にシフトすればリセット電位も高電圧側にシフトし、適切な動作点が維持される。
【0063】
詳細には、ゲートおよびドレインのそれぞれの電圧が均衡するときの電圧V
rst1、V
rst2は、アンプAm1、Am2の各正常動作領域内に含まれる。したがって、この均衡時の電圧V
rst1、V
rst2により初期化すれば、十分に高いゲインにより、リニアな出力特性が得られる。
【0064】
ここで、実際の画素動作においては、リセットトランジスタ132をオン状態からオフ状態に戻した際に、浮遊状態のV
fdはカップリングにより一定量変動する。あるいは、トランジスタの設計上、V
fd=V
outとなる点が最適な動作点からずれている場合もあり、さらなる微調整が求められる場合がある。これらの調整値は予め予測することができ、どの画素回路でもほぼ一定である。したがって、このようなケースではFDリセット時と読み出し時とで定電流回路110に異なる電流量を流して、調整を実施するとよい。電流を増加させれば特性曲線は高電圧側に、減少させれば低電圧側にシフトする。例えば、スイッチオフ時のカップリングでV
fdが低下する場合、読み出し時の電流をリセット時より減少させてその分、特性曲線を低電圧側にシフトさせる。この制御により、ソースおよびドレインが均衡するときの電圧を正常動作領域内の値に調整することができる。このような電流量の調整は定電流回路110内のMOSトランジスタ111のゲート電位を変えることで容易に実施することができる。
【0065】
[検出回路の構成例]
図7は、第1の実施の形態における検出回路160の機能構成例と検出回路160の動作例とを示す図である。同図におけるaは第1の実施の形態における検出回路160の機能構成例を示す回路図である。この検出回路160は、CDS回路161、ADC(Analog to Digital Converter)回路165、スイッチ166、レジスタ167、および、減算器168とを備える。
【0066】
CDS回路161は、相関二重サンプリングにより、電気信号からkTCノイズなどのオフセット成分を除去するものである。このCDS回路161は、スイッチ162、キャパシタ163、および、比較器164を備える。
【0067】
スイッチ162は、比較器164に基準電圧を入力する入力端子と、比較器164に比較対象の信号を入力する入力端子とのいずれかに垂直信号線129を接続するためのスイッチである。このスイッチ162は、画素回路130のリセット信号をサンプルホールドさせる場合には、基準電圧を入力する入力端子(キャパシタ163側の端子)に垂直信号線129を接続する。また、スイッチ162は、アナログCDSの結果を比較器164が出力する場合には、比較対象の信号を入力する入力端子(キャパシタ163が無い右側の端子)に垂直信号線129を接続する。
【0068】
キャパシタ163は、画素回路130のリセット信号をサンプルホールドするための保持容量である。
【0069】
比較器164は、サンプルホールドした信号と、比較対象の信号との差分を出力するものである。すなわち、比較器164は、サンプルホールドされたリセット信号と、垂直信号線129から供給された信号(蓄積信号またはリセット信号)との差分を出力する。言い換えれば、比較器164は、kTCノイズなどの画素回路130において生じたオフセット成分などを、蓄積信号またはリセット信号から除去する。
【0070】
なお、比較器164は、例えば、ゲイン1のオペアンプにより実現される。比較器164は、差分の信号を、ADC回路165に供給する。なお、ここでは、リセット信号とリセット信号との差分の信号を無信号と称し、リセット信号と蓄積信号との差分の信号を正味の蓄積信号と称する。
【0071】
ADC回路165は、比較器164から供給された信号をAD変換するものである
【0072】
スイッチ166は、ADC回路165が生成したAD変換後の信号の供給先を切り替えるスイッチである。このスイッチ166は、ADC回路165が無信号のAD変換の結果(デジタルの無信号)を出力した場合には、この信号をレジスタ167に供給し、レジスタ167にラッチ(保持)させる。これにより、比較器164やADC回路165のオフセットの値がレジスタ167に保持される。また、スイッチ166は、ADC回路165が正味の蓄積信号のAD変換の結果(デジタルの正味の蓄積信号)を出力した場合には、この信号を減算器168に供給する。
【0073】
レジスタ167は、無信号のAD変換の結果を保持するものである。レジスタ167は、保持する無信号のAD変換の結果(デジタルの無信号)を減算器168に供給する。
【0074】
減算器168は、デジタルの正味の蓄積信号の値からデジタルの無信号の値を減算するものである。この減算器168は、減算した結果(正味のデジタル値)を出力する。
【0075】
図7におけるbは、検出回路160の動作例を示す図である。まず、選択された画素回路130からのリセット信号が垂直信号線129に出力される(ステップS901)。
【0076】
そして、CDS回路161はリセット信号を読み出した際に、その相殺電荷を保持する(ステップS902)。このCDS回路161の出力はCDS回路の入力信号とリセット信号の差分を反映し、入力がリセット信号の場合、出力は無信号である。なお、このCDS回路161はADC回路165内の比較器(不図示)と一体化させ、そのオートゼロ操作でCDSを行っても良い。このCDS回路161により、選択された画素回路130のkTCノイズを含むオフセットが相殺除去される。
【0077】
そして、CDS回路161の入力が画素出力に接続され、無信号が出力される。ADC回路165は、1回目の信号(無信号)をAD変換する(ステップS903)。この信号には新たにCDS回路161及びADC回路165のオフセットが含まれており、さらに画素、CDS回路161、ADC回路165のランダムノイズが含まれている。それらをデジタル変換した値がレジスタ167にラッチされる。
【0078】
次に、画素回路130から蓄積信号が垂直信号線129に出力される(ステップS904)。CDS回路161を介して、その蓄積信号とリセット信号の差分が次段のADC回路165に出力される。
【0079】
ADC回路165は、2回目の信号(差分信号)をAD変換する(ステップS905)。この信号には正味の蓄積信号と、CDS回路161およびADC回路165のオフセットと、画素回路130、CDS回路161およびADC回路165のランダムノイズとが含まれている。この出力からレジスタ167の値が減算器168で減算されて、差分値が出力される(ステップS906)。2回のAD変換が画素信号検出の必要精度に対して十分な分解能で実施されていれば、CDS回路161およびADC回路165のオフセットはこれにより相殺され、正味の蓄積信号を得ることが可能である。なお、信号には画素回路130、CDS回路161、ADC回路165のランダムノイズが含まれている。
【0080】
本発明においては、オープンループ型のアンプにより、画素信号が1より遥かに大きなゲインGで増倍されている。したがって、ステップS906において残存したCDS回路161やADC回路165のノイズは相対的に1/Gとなる。その他の各種オフセットは全て相殺されるので、残存するのはほぼアンプのランダムノイズのみとなる。
【0081】
なお、S903およびS905のサンプリングを複数回実施して平均化を行ったり、経路に帯域制限を施したりしてもよい。これにより、ランダムノイズも低減され、画素ノイズは究極まで低減される。この結果、1光子検出に匹敵する高感度、低ノイズの光検出が可能となる。
【0082】
また、1光子の検出に対するSN比が十分に高くなった場合は、ステップS906の出力からさらに閾値によるバイナリ判定を行うバイナリ判定部をさらに設け、画素ごとに1光子の入射の有無を判定しても良い。このような判定を実施した場合、この撮像素子100はフォトンカウンティングモードで動作するものとなり、残存ノイズは全てフィルタリングされる。
【0083】
例えば20画素×20画素の画素アレイ部120で検出単位を構成し、シンチレーション光や蛍光等の一瞬の光入射における光量を判定するものとする。この場合、フォトンカウンティングモードでは、撮像素子100は、最大400個の光子を同時に検出することができる。例えば、ステップS906の出力結果を閾値判定して、光子入射ありと判定された画素数が全体の40%以下であればフォトンカウンティングモードで、それ以上であれば通常の階調モードで入射光量を導出する。このような光検出器は数光子レベルの超微小光から、数万光子の入射光まで、ほぼ正確に光量判定を実施することが可能である。
【0084】
図8は、第1の実施の形態における画素回路130のキャリブレーション動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0085】
撮像素子100を用いた光検出器では、前述したように、蓄積信号をオープンループ型のアンプで増倍するため、画素ごとのゲインばらつきが比較的大きくなる。このため、キャリブレーションを実施して画素ごとにゲインを導出しておくことが望ましい。この場合、例えば、一定かつ均一な微弱光を照射して、その出力からゲインを導出する。各画素のゲインは経時的に殆ど一定なので、このようなキャリブレーションは製品出荷時及び定期的な機器点検時に実施される。
【0086】
ただし、このようなキャリブレーションは煩雑であり、実施頻度が低いと検出の精度も悪化する。したがって、より手軽にキャリブレーションを実施するために、行駆動回路150に、
図6に示すようなキャリブレーション機能を設けるのが望ましい。同図では、画素回路130内のリセットトランジスタ132のゲート駆動からダミー信号を発生させて、画素アンプのゲインを導出している。
【0087】
ここでは、フォトダイオードの蓄積信号は使用しないため、転送トランジスタ133はキャリブレーション中は、オフ状態に制御される。まず、タイミングT5において選択トランジスタ131がオン状態に制御されて、選択画素が垂直信号線129に接続される。さらにリセットトランジスタ132がオンされて、増幅トランジスタ136の入力である浮遊拡散層135と、出力に接続された垂直信号線129とが短絡される。これによって、選択画素に固有の基準電位が生成される。
【0088】
タイミングT5からパルス期間経過時にリセットトランジスタ132がオフ状態に制御される。このとき、浮遊拡散層135の電位はリセットトランジスタ132のゲートとのカップリングを受けて基準電位から幾分低下して、浮遊状態となる。さらに、この際、浮遊拡散層135には、有意なkTCノイズが発生する。
【0089】
リセットトランジスタ132をオフ状態に制御された後、タイミングT6までの間において、1回目の読み出しが実施され、垂直信号線129に現れた電位が浮遊拡散層135のリセット信号として、検出回路160によって取得される。
【0090】
そして、タイミングT6において、行駆動回路150は、転送トランジスタ133をオン状態にせずに、リセットトランジスタ132のゲートを一定量駆動する。この駆動はリセットトランジスタ132のオフ状態を保ちながら実施され、例えば0Vから−1Vに駆動される。このとき、リセットトランジスタ132のゲートと浮遊拡散層135との間の寄生容量を介して、浮遊拡散層135のポテンシャルが一定量変動する。これがアンプで増倍されて、キャリブレーション用のダミー信号として垂直信号線129に出力される。
【0091】
タイミングT6から、タイミングT7までの間において、2回目の読み出し、即ちダミー信号読み出しが実施される。ダミー信号を取得した検出回路160は、先ほどリセット信号と今回のダミー信号を比較して、正味のダミー信号量を判定する。FDリセットの際に生じたkTCノイズ等による出力のノイズ成分は、蓄積信号とダミー信号の差分を正味のダミー信号とすることで相殺される。
【0092】
タイミングT6においてリセットトランジスタ132のゲートを一定量駆動することにより浮遊拡散層135に現れるダミー信号は、画素間でほぼ一定である。従って最終的に取得される正味のダミー信号は、画素回路130ごとのアンプのゲイン量にほぼ比例し、そのばらつきを反映している。
【0093】
したがって、そのダミー信号をキャリブレーション信号として利用することで、撮像素子100は、ロット、チップ、或いは画素ごとに発生する画素アンプのゲインばらつきを補正することができる。このようなキャリブレーションは、テスト用に均一光を入射する必要もなく容易に実施することができるため、光検出システムの電源投入時或いは測定前等に自動的に実施するように、システム中に組み込むことが可能である。
【0094】
例えば、正味のダミー信号から、それに比例した画素ごとの補正係数が導出され、検出回路160のメモリ(不図示)内に保存される。検出回路160が、光量測定時には各画素の蓄積信号量を、対応する補正係数で割り戻すことにより、ゲインばらつきの補正が実施される。
【0095】
このように、本技術の第1の実施の形態によれば、画素回路130は、増幅トランジスタのゲートおよびドレインの短絡により、正常動作領域内の電圧にゲート電圧を初期化するため、正常動作領域外の電圧での初期化を防止することができる。これにより、撮像素子100は、微弱な光を確実に検出することができる。
【0096】
[変形例]
第1の実施の形態では、光検出に撮像素子100を利用していたが、この撮像素子100を放射線計数に利用することもできる。第1の実施の形態における変形例は、撮像素子100を放射線計数に用いる点において第1の実施の形態と異なる。
【0097】
図9は、第1の実施の形態の変形例における放射線計数装置の一構成例を示す全体図である。この放射線計数装置は、複数のシンチレータ200と、半導体装置101を備える。半導体装置101には、第1の実施の形態の撮像素子100とデジタル処理部(不図示)とが設けられる。
【0098】
シンチレータ200は、柱状またはファイバー状に加工されたシンチレータであり、例えば、1ミリメートル(mm)のピッチで配置されている。各々のシンチレータ200はシンチレーション光が内部に閉じ込められるように、光を反射する隔壁により隔てられている。
【0099】
半導体装置101において、画素アレイ部120は、シンチレータ200に対応して1mm角の領域ごとに論理的に区分けされている。シンチレータ200と撮像素子100とを接続することで、シンチレータ200で発生したシンチレーション光は、画素アレイ部120内の対応する区画に選択的に照射され、その光量が測定される。
【0100】
半導体装置101内のデジタル処理部は、シンチレータの発光量によって入射した放射線のエネルギーを分別しつつ、発光回数でその入射頻度を計測する。
【0101】
例えば、半導体装置101の各画素サイズが4マイクロメートル角程度であったとして、画素アレイ部120の区画には、250×250=62,500の画素回路130が含まれる。光量判定は、区画ごとに、その中の画素出力を総計することによって導出される。各画素出力は10ビット等の階調判定値でも良いし、光子入射の有無にもとづいて閾値判定されたバイナリ判定値でも良い。
【0102】
シンチレータ200には、例えば、LYSO:Ce(Cerium doped Lutetium Yttrium Orthosilicate)が用いられる。この場合、662keVのガンマ線が入射した際の発光量は1万フォトン程度なので、各画素の受光量は多くが0光子か1光子である。バイナリ判定ではこれをそのまま総和すれば良いが、階調判定ではそこに各画素のランダムノイズが加わる。
【0103】
階調判定の場合、その最小分解能(LSB:least significant bit値)は1光子信号より十分小さいことが望ましく、これによってノイズ量の総計は安定的範囲に留められる。例えば各画素のランダムノイズが1電子信号(rms)程度の場合、各区画の画素ノイズの総計は250電子信号(rms)程度となる。
【0104】
このような放射線計数装置は、単体では線量計として放射能汚染や宇宙線の検出に使用できる。さらに半導体装置101の余白部分を積層構造を活用して最小化し、検出器のアレイ状の敷き詰めを可能にすれば、ガンマカメラ等の放射線の二次元撮像に使用することができる。
【0105】
このように、変形例によれば、放射線計数装置は、撮像素子100により微弱なシンチレーション光を検出するため、その検出結果から放射線を計数することができる。
【0106】
<2.第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、リセットトランジスタ132によりPDリセットおよびFDリセットの両方を行っていたが、PDリセットのみを行うトランジスタを追加してもよい。PDリセットのみを行うトランジスタの追加により、画素回路130は、選択トランジスタ131をオフ状態にしたままで、PDリセットを行うことができる。これにより、撮像素子100は、ある行を読出しの最中に、他の行をPDリセットし、その露出を開始することができる。第2の実施の形態の画素回路130は、PDリセットのみを行うトランジスタを追加した点において第1の実施の形態と異なる。
【0107】
図10は、第2の実施の形態における画素回路130の回路図の一例である。第2の実施の形態の画素回路130は、リセットトランジスタ132の代わりに、PDリセットトランジスタ138およびFDリセットトランジスタ139を備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0108】
FDリセットトランジスタ139は、リセットトランジスタ132と同様のトランジスタである。このFDリセットトランジスタ139は、第1の実施の形態と異なり、FDリセットのみに用いられるため、第1の実施の形態と異なる名称を付したものである。
【0109】
PDリセットトランジスタ139のゲートは行駆動回路150に接続され、ソースはフォトダイオード134に接続され、ドレインは、固定電位の電源に接続される。このPDリセットトランジスタ139は、行駆動回路150の制御に従って、PDリセットを行う。このようなPDリセットトランジスタ139は、オフ状態でも蓄積電荷が一定量以上になると固定電位に抜けるようにデザインされているのが望ましく、この際はブルーミング防止用のドレインとして機能する。なお、PDリセットトランジスタ139は、特許請求の範囲に記載の電荷量初期化部の一例である。
【0110】
図11は、第2の実施の形態における画素回路130の露光および読出し動作の一例を示すタイミングチャートである。露光開始のタイミングT0からパルス期間に亘って、行駆動回路150は、PDリセットトランジスタ138をオン状態に制御する。ただし、転送トランジスタ133、FDリセットトランジスタ139および選択トランジスタ131をオフ状態のままである。
【0111】
また、露光期間中と、蓄積信号の読出しとのそれぞれにおいて、PDリセットトランジスタ138は、オフ状態に維持される。一方、PDリセットトランジスタ139がオフ状態に制御された後は、転送トランジスタ133、FDリセットトランジスタ139および選択トランジスタ131は、第1の実施の形態と同様の手順で制御される。
【0112】
このように第2の実施の形態によれば、PDリセットトランジスタを設けたため、ある行の読出しの間に、別の行の露光を開始することができる。これにより、全ての行の露光および読出しが完了するまでの時間を短くすることができる。
【0113】
<3.第3の実施の形態>
第1の実施の形態では、フォトダイオード134ごとに、選択トランジスタ131、リセットトランジスタ132、浮遊拡散層135および増幅トランジスタ136が1つずつ設けられていた。しかし、選択トランジスタ131、リセットトランジスタ132、浮遊拡散層135および増幅トランジスタ136を1つずつ備える回路を複数のフォトダイオード134で共有してもよい。これにより、画素アレイ部120のトランジスタ数を削減することができる。第3の実施の形態の撮像素子100は、複数のフォトダイオードが浮遊拡散層135等を共有する点において第1の実施の形態と異なる。
【0114】
図12は、第3の実施の形態における画素ブロック140の回路図の一例である。この画素ブロック140は、撮像素子100の画素アレイ部120に複数設けられる。画素ブロック140は、選択トランジスタ131、リセットトランジスタ132、浮遊拡散層135および増幅トランジスタ136と、画素回路141および142とを備える。
【0115】
画素回路141は、フォトダイオード134および転送トランジスタ133を備える。
【0116】
選択トランジスタ131、リセットトランジスタ132、浮遊拡散層135および増幅トランジスタ136および画素回路141からなる回路は、第1の実施の形態の画素回路130と同様の構成である。ただし、浮遊拡散層135は、画素回路142にも接続される。
【0117】
画素回路142は、転送トランジスタ143およびフォトダイオード144を備える。転送トランジスタ143のゲートは行駆動回路150に接続され、ソースはフォトダイオード144に接続され、ドレインは浮遊拡散層135に接続される。転送トランジスタ143として、例えば、n型のMOSFETが用いられる。
【0118】
なお、フォトダイオード134および144は、特許請求の範囲に記載の光電変換素子の一例である。また、転送トランジスタ133および143からなる回路は、特許請求の範囲に記載の転送部の一例である。
【0119】
また、2つの画素回路141および142で1つの浮遊拡散層135等を共有しているが、3つ以上の画素回路で1つの浮遊拡散層135等を共有する構成であってもよい。
【0120】
図13は、第3の実施の形態における画素ブロック140の露光および読出し動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0121】
タイミングT0からタイミングT3までの転送トランジスタ133、リセットトランジスタ132および選択トランジスタ131の制御方法は、第1の実施の形態と同様である。
【0122】
また、転送トランジスタ143は、タイミングT0からパルス期間に亘ってオン状態に制御される。そして、タイミングT2の後のタイミングT3からパルス期間に亘って、リセットトランジスタ132が再度オン状態に制御される。一方、選択トランジスタ131は、オン状態のままに維持される。
【0123】
転送トランジスタ143がオフ状態に制御されたときから、タイミングT4までの間において、画素回路142のリセット信号が読み出される。
【0124】
そして、タイミングT4からパルス期間に亘って転送トランジスタ143がオン状態に制御される。転送トランジスタ143がオフ状態に制御されたときから、タイミングT5までの間において、画素回路142の蓄積信号が読み出される。そして、タイミングT5において、選択トランジスタ131がオフ状態に制御される。
【0125】
このように第3の実施の形態によれば、複数の画素回路で1つのリセットトランジスタ等を共有するため、トランジスタ数を少なくすることができる。
【0126】
<4.第4の実施の形態>
第1の実施の形態では、撮像素子100は、ローリングシャッター方式で露光を行っていたが、グローバルシャッター方式で露光を行ってもよい。第4の実施の形態の撮像素子100は、グローバルシャッター方式で露光を行う点において第1の実施の形態と異なる。
【0127】
図14は、第4の実施の形態における画素回路130の回路図の一例である。第4の実施の形態の画素回路130は、転送トランジスタ133の代わりに直列トランジスタ145、146および147とPDリセットトランジスタ138とFDリセットトランジスタ139とを備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0128】
PDリセットトランジスタ138とFDリセットトランジスタ139の構成は、第2の実施の形態と同様である。
【0129】
直列トランジスタ145、146および147は、一体化された3段のトランジスタである。
【0130】
直列トランジスタ145は、行駆動回路150の制御に従って、フォトダイオード134から直列トランジスタ146へ電荷を転送するものである。なお、直列トランジスタ145は、特許請求の範囲に記載の第1の転送トランジスタの一例である。
【0131】
直列トランジスタ146は、チャネルに電荷を保持するものであり、アナログメモリとして用いられる。
【0132】
直列トランジスタ147は、行駆動回路150の制御に従って、直列トランジスタ146から浮遊拡散層135へ電荷を転送するものである。なお、直列トランジスタ147は、特許請求の範囲に記載の第2の転送トランジスタの一例である。
【0133】
図15は、第4の実施の形態における画素回路130の露光および読出し動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0134】
まず、タイミングT0からパルス期間に亘ってPDリセットトランジスタ138のみがオン状態に制御される。
【0135】
次に、露光終了直前のタイミングT11において直列トランジスタ145および146はオン状態に制御される。そして、タイミングT11からパルス期間が経過すると、直列トランジスタ145はオフ状態に制御される。この制御により、フォトダイオード134に蓄積された電荷は、アナログメモリ(すなわち、直列トランジスタ146)のチャンネルに転送され、保持される。
【0136】
PDリセットとアナログメモリへの電荷転送とは、例えば、全ての画素で一斉に行われる。これにより、グローバルシャッター方式の露光が実現される。
【0137】
一方、検出回路160による電気信号の読み出しは、行ごとに順に行われる。タイミングT11の後のタイミングT12において、FDリセットトランジスタ139および選択トランジスタ131がオン状態に制御され、FDリセットが行われる。そして、リセット信号の読出し後のタイミングT13からパルス期間に亘って、直列トランジスタ147がオン状態に制御され、アナログメモリから浮遊拡散層135への電荷の転送が行われる。
【0138】
なお、第4の実施の形態におけるキャリブレーションは、第1の実施の形態と同様の手順で行われる。
【0139】
このように第4の実施の形態によれば、アナログメモリとアナログメモリへ電荷を転送するトランジスタとアナログメモリから電荷を転送するトランジスタとを画素回路に設けたため、全ての画素回路130を一斉に露光させることができる。
【0140】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0141】
また、上述の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disc)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標)Disc)等を用いることができる。
【0142】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【0143】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)入力端子の入力電圧と出力端子の出力電圧とが均衡する均衡電圧を含む所定の領域内において所定値より高いゲインで前記入力電圧を増幅する増幅部と、
光を電荷に変換する光電変換部と、
前記電荷を蓄積して当該蓄積した電荷の量に応じた電圧を前記入力端子に供給する電荷蓄積部と、
前記入力電圧の初期化が指示されると前記入力端子と前記出力端子との間の短絡により前記入力電圧を前記均衡電圧に初期化する電圧初期化部と
を具備する画素回路。
(2)前記光電変換部の初期化が指示されると前記光電変換部における前記電荷の量を初期化する電荷量初期化部をさらに具備する
前記(1)記載の画素回路。
(3)前記光電変換部は、
前記光を前記電荷に変換する複数の光電変換素子と、
前記複数の光電変換素子を順に選択して当該選択した光電変換素子により変換された前記電荷を前記電荷蓄積部に転送する転送部と
を備え、
前記電圧初期化部は、前記複数の光電変換素子のそれぞれが選択されるタイミングに同期して前記入力電圧を初期化する前記(1)または(2)記載の画素回路。
(4)前記増幅部は、ソースに固定電位が印加され、ゲートを前記入力端子とし、ドレインが前記出力端子に接続される電界効果トランジスタを含む
前記(1)から(3)のいずれかに記載の画素回路。
(5)前記増幅部は、前記画素回路が選択されて前記入力電圧の初期化が指示されると前記ドレインを前記出力端子に接続する選択トランジスタをさらに含む
前記(4)記載の画素回路。
(6)入力端子の入力電圧と出力端子の出力電圧とが均衡する均衡電圧を含む所定の領域内において所定値より高いゲインで前記入力電圧を増幅する増幅部と、光を電荷に変換する光電変換部と、前記電荷を蓄積して当該蓄積した電荷の量に応じた電圧を前記入力端子に供給する電荷蓄積部と、前記入力電圧の初期化が指示されると前記入力端子と前記出力端子との間の短絡により前記入力電圧を前記均衡電圧に初期化する電圧初期化部とを備える複数の画素回路と、
前記複数の画素回路のそれぞれにおいて増幅された前記出力電圧から前記光の光量を検出する検出回路と
を具備する半導体光検出装置。
(7)前記複数の画素回路の全ての露光の開始および終了を指示する駆動回路をさらに具備し、
前記光電変換部は、
前記光を前記電荷に変換する光電変換素子と、
前記電荷を保持するアナログメモリと、
前記露光の終了が指示されると前記電荷を前記光電変換素子から前記アナログメモリに転送する第1の転送トランジスタと、
前記入力電圧の初期化が指示された後に前記電荷を前記アナログメモリから前記電荷蓄積部へ転送する第2の転送トランジスタと
を備える前記(6)記載の半導体光検出装置。
(8)前記初期化部は、前記出力電圧を補正するための補正係数の取得が指示された場合には前記入力電圧を前記均衡電圧に初期化した後に前記入力電圧を前記均衡電圧と異なる所定のダミー電圧に制御し、前記補正係数の取得が指示されていない場合には前記入力電圧を前記均衡電圧に初期化し、
前記検出回路は、前記補正係数の取得が指示された場合には前記ダミー電圧の電気信号をダミー信号として読み出して当該ダミー信号に応じた補正係数を取得し、前記補正係数の取得が指示されていない場合には前記入力電圧の電気信号を蓄積信号として読み出して前記補正係数により前記蓄積信号を補正する
前記(6)または(7)に記載の半導体光検出装置。
(9)前記光電変換部は、
前記光を前記電荷に変換する光電変換素子と、
前記ゲート電圧が初期化された後に前記電荷を前記光電変換素子から前記電荷蓄積部に転送する転送トランジスタと
を具備し、
前記検出回路は、前記入力電圧が初期化されたタイミングに同期して前記出力電圧の電気信号をリセット信号として読み出し、前記電荷が転送されたタイミングに同期して前記出力電圧の電気信号を蓄積信号として読み出し、前記リセット信号および前記蓄積信号の差分を前記光量として検出する
前記(6)から(8)のいずれかに記載の半導体光検出装置。
(10)前記リセット信号が読み出されるときと前記蓄積信号が読み出されるときとのそれぞれにおいて異なる一定の電流を信号線に供給して前記均衡電圧を前記領域内の値に調整する定電流回路をさらに具備し、
前記出力端子は前記信号線に接続される
前記(9)記載の半導体光検出装置。
(11)放射線が入射されるとシンチレーション光を発光するシンチレータと、
入力端子の入力電圧と出力端子の出力電圧とが均衡する均衡電圧を含む所定の領域内において所定値より高いゲインで前記入力電圧を増幅する増幅部と、
前記シンチレーション光を電荷に変換する光電変換部と、
前記電荷を蓄積して当該蓄積した電荷の量に応じた電圧を前記入力端子に供給する電荷蓄積部と、
前記入力電圧の初期化が指示されると前記入力端子と前記出力端子との間の短絡により前記入力電圧を前記均衡電圧に初期化する電圧初期化部と
を具備する放射線計数装置。