(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353303
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3232 20160101AFI20180625BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
F16J15/3232 201
F16J3/04 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-144914(P2014-144914)
(22)【出願日】2014年7月15日
(65)【公開番号】特開2016-20721(P2016-20721A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】神前 剛
【審査官】
山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−105468(JP,A)
【文献】
実開昭49−070357(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3232
F16J 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、このハウジングの開口部を貫通した作動軸との間を密封する密封装置であって、前記開口部に固定される固定環と、前記作動軸の外周面に摺動可能に密接されるシールリップと、前記固定環と前記シールリップの間を弾性的に連結し径方向へ自在に変形可能なベロー部と、前記固定環側の内周に固定されたフランジと、前記ベロー部の内径部と連続して設けられて前記フランジに径方向摺動可能に密接され、前記ベロー部と前記フランジの間に密閉空間を画成する第二リップを備えることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記ベロー部の内径部と前記第二リップの内径部との間に介在するバンパー保持部と、
前記バンパー保持部に保持されてこのバンパー保持部と前記シールリップとの間に介在し、前記作動軸の外周に遊嵌される樹脂バンパーと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
フランジにおける第二リップと反対側の面に遮音材が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密封装置に関するものであって、特に、自動車のフロントダッシュパネルにおけるステアリングシャフトの貫通部を密封するステアリング用ダストシールや、あるいは他の機器における偏心が大きい軸のダストシールとして適用可能で、遮音性を高めたものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリング用ダストシールとして用いられる密封装置は、自動車におけるフロントダッシュパネルに開設されたコラムホールと、これに挿通されたステアリングシャフトとの間に介在されて、外部からの泥水やダストの浸入を防止するものであり、近年、このようなダストシールとしての機能に加えて、自動車の静粛性を高めるための高い遮音性が要求されている。
【0003】
図8に示す密封装置100は、遮音性を高めるために第一シール110及び第二シール120による二重シール構造としたものであって、このうち第一シール110は、フロントダッシュパネル300のコラムホールに固定される第一固定環111と、ステアリングシャフト400の外周面に密接される第一シールリップ112と、外径基部113aが前記第一固定環111に一体的に接合されると共に内径部113bが前記第一シールリップ112に連続した第一ベロー部113と、この第一ベロー部113の内径部113bに一体に接合された第一樹脂バンパー114を備える。
【0004】
また第二シール120は、第一シール110における第一ベロー部113の基部113aの内周に圧入嵌着された第二固定環121と、第一シールリップ112よりも車室A側でステアリングシャフト400の外周面に密接される第二シールリップ122と、外径部123aが前記第二固定環121に一体的に接合されると共に内径部123bが前記第二シールリップ122に連続した第二ベロー部123と、この第二ベロー部123の内径部123bに一体に接合された第二樹脂バンパー124を備える。
【0005】
第一シール110における第一シールリップ112及び第一ベロー部113と、第二シール120における第二シールリップ122及び第二ベロー部123は、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)によって成形されており、第一シール110における第一樹脂バンパー114及び第二シール120における第二樹脂バンパー124は、低摩擦で耐摩耗性に優れた合成樹脂材料で成形されており、すなわちこの密封装置100は、第一シール110及び第二シール120による二重シール構造とすることによって、両シール110,120間に密閉空間130を画成することで、エンジンルームB側からの機関駆動音や走行音に対する遮蔽性を高めたものである(例えば下記の特許文献1参照)。
【0006】
また、
図9に示す密封装置200は、遮音性を高めるために遮音材を設けたものであって、フロントダッシュパネル300のコラムホールに固定される固定環201と、ステアリングシャフト400の外周面に密接されるシールリップ202と、外径基部203aが前記固定環201に一体的に接合されると共に内径部203bが前記シールリップ202に連続したベロー部203と、このベロー部203の車室A側に配置されると共に前記外径基部203aと内径部203bの間に保持された多孔質のスポンジ状弾性体からなる遮音材204を備え、すなわちこの密封装置200は、遮音材204の有する吸音作用によって、エンジンルームB側からの機関駆動音や走行音等の騒音に対する遮蔽性を高めたものである(例えば下記の特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−091077号公報
【特許文献2】特開2006−177400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の密封装置のうち
図8に示すものは、第一シール110及び第二シール120を備えることで部品数が多く、
図9に示すものも、密封装置200が遮音材204を備えることで部品数が多く、高コストとなっていた。
【0009】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、二重シールによるものと同等の遮音性を有する密封装置を、低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る密封装置は、ハウジングと、このハウジングの開口部を貫通した作動軸との間を密封する密封装置であって、前記開口部に固定される固定環と、前記作動軸の外周面に摺動可能に密接されるシールリップと、前記固定環と前記シールリップの間を弾性的に連結し径方向へ自在に変形可能なベロー部と、前記固定環側の内周に固定されたフランジと、前記ベロー部の内径部と連続して設けられて前記フランジに径方向摺動可能に密接され、前記ベロー部と前記フランジの間に密閉空間を画成する第二リップを備えるものである。
【0011】
上記構成の密封装置は、ハウジングの開口部と、この開口部を貫通した作動軸との間を、シールリップ及びベロー部で二重に密封することによって、外部からの泥水やダストなどが流入するのを防止するものである。そしてこの密封装置を透過しようとする騒音は、ベロー部と、密閉空間と、フランジ及びこれに密接された第二リップを順次透過する過程で多段減衰されるので、これによって有効に遮音される。また、ハウジングの開口部に対して作動軸が大きく偏心した場合でも、ベロー部の径方向変形に伴って第二リップがフランジと摺動しつつその密接状態が維持されるので、密閉空間の密閉状態が損なわれず、遮音性が確保される。
【0012】
請求項2の発明に係る密封装置は、請求項1に記載の構成において、
前記ベロー部の内径部と
前記第二リップの内径部
との間に介在するバンパー保持部
と、前記バンパー保持部に保持されてこのバンパー保持部と前記シールリップとの間に介在し、前記作動軸の外周に遊嵌される樹脂バンパーとを備える。
【0013】
上記構成において、樹脂バンパーは偏心動作する作動軸の外周面に対するシールリップの密接状態を安定化させる作用を有する。そしてベロー部の内径部と第二リップの内径部の間が、前記樹脂バンパーを保持するバンパー保持部を介して軸方向に離れた位置にあるので、ベロー部の内径部及び第二リップの内径部における遮音性も向上する。
【0015】
上記構成によれば、バンパー保持部とシールリップの間
に樹脂バンパーが介在することで、ベロー部からバンパー保持部へかけての部分と、シールリップとを互いに異なる材質とすることができ、材質の選択の自由度が高くなる。
【0016】
請求項
3の発明に係る密封装置は、請求項1
又は2に記載の構成において、フランジにおける第二リップと反対側の面に遮音材が設けられたものである。
【0017】
上記構成によれば、フランジに設けた遮音材によって、遮音性を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る密封装置によれば、ベロー部と、フランジ及びこれに密接された第二リップと、その間に画成された密閉空間によって、二重シール構造が得られるので、二つのシールを用いた場合と同様の遮音効果が得られる。したがって部品数を削減し、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る密封装置の好ましい第一の実施の形態を示す半断面図である。
【
図2】第一の実施の形態における樹脂バンパーの形状変更例を示す半断面図である。
【
図3】第一の実施の形態における樹脂バンパーの他の形状変更例を示す半断面図である。
【
図4】本発明に係る密封装置の好ましい第二の実施の形態を示す半断面図である。
【
図5】第二の実施の形態における樹脂バンパーの形状変更例を示す半断面図である。
【
図6】第二の実施の形態における樹脂バンパーの他の形状変更例を示す半断面図である。
【
図7】本発明に係る密封装置の好ましい第三の実施の形態を示す半断面図である。
【
図8】従来の技術に係る密封装置の一例を示す半断面図である。
【
図9】従来の技術に係る密封装置の他の例を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る密封装置の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず
図1は、第一の実施の形態を示すものである。
【0021】
すなわち第一の実施の形態の密封装置10は、自動車における車室A側とエンジンルームB側の間のフロントダッシュパネル20に開設されたコラムホール20aと、このコラムホール20aを貫通したステアリングシャフト30の間に介在されるものである。なお、フロントダッシュパネル20は請求項1に記載されたハウジングに相当するものであり、コラムホール20aは請求項1に記載された開口部に相当するものであり、ステアリングシャフト30は請求項1に記載された作動軸に相当するものである。
【0022】
そしてこの密封装置10は、フロントダッシュパネル20のコラムホール20aに圧入されて密嵌固定される金属製の円筒状の固定環1と、ステアリングシャフト30の外周面に摺動可能に密接されるシールリップ2と、シールリップ2の根元に形成されたバンパー保持部3と、バンパー保持部3の内周に一体的に接合されステアリングシャフト30の外周面に遊嵌される樹脂バンパー4と、円筒状の外径基部51が固定環1に一体的に接着されると共に内径部52がバンパー保持部3を介してシールリップ2と連続したベロー部5と、固定環1の内周にベロー部5の外径基部51を介して固定されたフランジ6と、ベロー部5の内径部52から連続して延びてフランジ6に径方向摺動可能に密接された第二リップ7を備える。
【0023】
シールリップ2、バンパー保持部3、ベロー部5及び第二リップ7は、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるものであって、互いに連続しており、不図示の金型の分割型間に固定環1と樹脂バンパー4をセットして型締めすることによって画成されるキャビティ内に、成形用ゴム材料を充填して硬化させることによって成形されると共に、ベロー部5の外径基部51が固定環1と一体的に接合され、バンパー保持部3が樹脂バンパー4に一体的に接合されたものである。
【0024】
そしてシールリップ2は、装着状態においてエンジンルームB側を向き、先端近傍の内径縁部がステアリングシャフト30の外周面に摺動可能に密接されるものであり、バンパー保持部3は、シールリップ2と反対側(車室A側)へ向けて漸次大径になる略円錐筒状をなしており、ベロー部5は、ステアリングシャフト30の偏心運動に対する第二リップ7の追随が容易となるように、外径基部51と内径部52の間の膜状本体部53は、軸心を通る平面で切断した形状(図示の断面形状)が軸方向へ蛇行した形状となっている。
【0025】
バンパー保持部3に一体に保持された樹脂バンパー4は、低摩擦で耐摩耗性に優れた合成樹脂からなるものであって、シールリップ2と反対側(車室A側)へ向けて漸次大径になる略円錐筒状に成形されており、その内周面には、多数の潤滑溝4aが円周方向等間隔で形成されている。そしてこの樹脂バンパー4における小径端部側の内径は、ステアリングシャフト30の外径より僅かに大径となっている。
【0026】
フランジ6は金属又は合成樹脂からなるものであって、ベロー部5より車室A側となる位置に配置され、内径がステアリングシャフト30の外径より大径のフランジ本体部61と、その外径端から延びる外径筒部62を有し、この外径筒部62においてベロー部5の外径基部51に圧入嵌着されている。
【0027】
第二リップ7は、ベロー部5の内径部52から車室A側へ向けて大径となるように開いた形状をなして延び、先端及びその近傍がフランジ6のフランジ本体部61に径方向摺動可能に密接されることによって、ベロー部5とフランジ6の間に密閉空間10aを画成するものである。
【0028】
上記構成を備える密封装置10は、フロントダッシュパネル20のコラムホール20aと、これに挿通されたステアリングシャフト30との間を閉塞することによって、エンジンルームB側からの雨水やダスト、あるいはエンジンルームB内の熱気や外気が車室Aへ流入するのを防止し、かつエンジンルームB側からのエンジン音や走行音などの騒音を遮断するものである。
【0029】
そして、コラムホール20aに対してステアリングシャフト30が偏心しても、ステアリングシャフト30と接触される樹脂バンパー4がシールリップ2の根元2aを支承するので、ステアリングシャフト30の外周面に対するシールリップ2の安定した密接状態が維持される。また、ステアリングシャフト30が大きく偏心した場合は、円周方向の一部でステアリングシャフト30が樹脂バンパー4の内周面に圧接するが、樹脂バンパー4は低摩擦の合成樹脂からなることに加え、樹脂バンパー4の内周面に形成された潤滑溝4aには、グリースなどの潤滑剤を保持することができるので、ステアリングシャフト30の外周面との間で良好な潤滑性が確保される。
【0030】
また、この密封装置10をエンジンルームB側から車室A側へ透過しようとする機関駆動音や走行音などの騒音は、ベロー部5の膜状本体部53と、密閉空間10aと、フランジ6及びこのフランジ6のフランジ本体部61に密接された第二リップ7を順次透過する過程で多段減衰されるので、これによって有効に遮音される。しかも、コラムホール20aに対してステアリングシャフト30が大きく偏心した場合でも、ベロー部5の膜状本体部53の径方向変形に伴って第二リップ7がフランジ6のフランジ本体部61と径方向へ摺動しつつその密接状態が維持されるので、密閉空間10aの密閉状態が損なわれず、このため第二リップ7がフランジ6から離れることによる隙間からの音の漏れが防止され、良好な遮音性が維持される。
【0031】
そしてこの密封装置10によれば、ベロー部5と、フランジ6及びこのフランジ6のフランジ本体部61に密接された第二リップ7と、その間に画成された密閉空間10aを有する構成とすることで、単一の密封装置10によって、先に従来の技術として説明した
図8に示すような、軸方向2段に配置した第一シール110と第二シール120によってその間に密閉空間130を画成した二重シール構造と同様の遮音効果が得られる。したがって、第一シール110と第二シール120を用いる場合に比較してコストを大幅に低減することができる。
【0032】
また、フランジ6を合成樹脂からなるものとすることによってフランジ6と第二リップ7の摺動性を向上させれば、第二リップ7がフランジ本体部61と径方向へ摺動する際のスティック−スリップ現象による「鳴き」と呼ばれる異音の発生を、有効に防止することができる。
【0033】
図2及び
図3は第一の実施の形態における樹脂バンパーの形状変更例を示すもので、このうち
図2に示す例において、上述した
図1と異なる点は、樹脂バンパー4の内周面が円筒面状をなし、この樹脂バンパー4におけるシールリップ2と反対側の端部に、バンパー保持部3より車室A側まで延びると共に徐々に薄肉になる延長部4cが形成されたことにある。また、
図3に示す例は、
図2に示す形状に加え、内周面にグリースを保持するためのくぼみ4bが円周方向へ連続して形成されたものである。
【0034】
次に
図4は、本発明に係る密封装置の第二の実施の形態を示すものである。この第二の実施の形態において、上述した第一の実施の形態と異なるところは、ベロー部5の内径部52と第二リップ7の内径部がバンパー保持部3を介して連続しており、かつ樹脂バンパー4がバンパー保持部3とシールリップ2の間に介在している点にある。また樹脂バンパー4の軸方向長さは、シールリップ2の根元から第二リップ7の根元までの軸方向長さより長く、この樹脂バンパー4におけるシールリップ2と反対側の端部に、バンパー保持部3より車室A側まで延びると共に徐々に薄肉になる延長部4cが形成され、内周面にはグリースを保持するためのくぼみ4bが円周方向へ連続して形成されている。
【0035】
第二の実施の形態によれば、第一の実施の形態と同様、エンジンルームB側から車室A側へ透過しようとする騒音は、ベロー部5と、密閉空間10aと、フランジ6及びこのフランジ6のフランジ本体部61に密接された第二リップ7を順次透過する過程で多段減衰される。そしてベロー部5の内径部52と第二リップ7の内径部は、その間に介在するバンパー保持部3によって軸方向へ互いに離れた位置に形成されているので、ベロー部5の内径部52を透過した騒音は、バンパー保持部3又は密閉空間10aを経由してさらに第二リップ7及びフランジ6のフランジ本体部61を透過しなければならず、遮音性が一層向上する。
【0036】
また、樹脂バンパー4は軸方向長さが長いので姿勢が安定し、したがってステアリングシャフト30の外周面に対するシールリップ2の密接状態を一層安定させることができ、しかも内周面の潤滑溝4a及びくぼみ4bによってグリースの保持性が向上するため、ステアリングシャフト30を回転させたときの摺動トルクを一層低減することができる。
【0037】
さらに、樹脂バンパー4がバンパー保持部3とシールリップ2の間に介在しており、すなわちバンパー保持部3とシールリップ2が互いに離れた位置で樹脂バンパー4に焼き付けられているため、ベロー部5からバンパー保持部3及び第二リップ7にかけての部分には、例えば繰り返し変形に対する耐疲労性に優れたCR(クロロプレンゴム)又はEPDM(エチレンプロピレンゴム)などのゴム状弾性材料を用い、シールリップ2には耐ダスト性及び耐泥水性に優れ、ダスト及び泥水に対するシール性に優れたNBR(ニトリルゴム)又はH−NBR(水素化ニトリルゴム)などのゴム状弾性材料を用いるというように、材料の選択の自由度が広がり、各部位に最適な材料を選択することができる。
【0038】
図5及び
図6は第二の実施の形態における樹脂バンパーの形状変更例を示すもので、このうち
図5に示す例において、上述した
図4の例と異なる点は、延長部4cが存在せず、内周面が円筒面状をなすことにある。また、
図6に示す例において、
図4の例と異なる点は、グリースを保持するためのくぼみ4bが形成されていないことにある。
【0039】
次に
図7は、本発明に係る密封装置の第三の実施の形態を示すものである。この第三の実施の形態は、上述した第二の実施の形態の構成に加え、フランジ6のフランジ本体部61における第二リップ7と反対側(車室A側)に遮音材8を取り付けたものである。遮音材8としては、例えば多孔質のスポンジ状弾性体からなるものが好適に採用され、フランジ本体部61の車室A側の面を覆うように設けられる。
【0040】
第三の実施の形態によれば、エンジンルームB側からの騒音は、ベロー部5の膜状本体部53と、密閉空間10aと、フランジ6及びこのフランジ6のフランジ本体部61に密接された第二リップ7を順次透過する過程で多段減衰され、フランジ6に取り付けられた遮音材8によってさらに減衰されるので、遮音性が一層向上する。
【0041】
なお、上述した実施の形態はいずれも、本発明を自動車のフロントダッシュパネルにおけるステアリングシャフトの貫通部を密封するステアリング用ダストシールに適用したものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の汎用機器において偏心が大きい作動軸の密封装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 固定環
2 シールリップ
3 バンパー保持部
4 樹脂バンパー
5 ベロー部
6 フランジ
7 第二リップ
8 遮音材
10 密封装置
10a 密閉空間
20 フロントダッシュパネル(ハウジング)
20a コラムホール(開口部)
30 ステアリングシャフト(作動軸)
A 車室
B エンジンルーム