【実施例】
【0024】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0025】
(1)ベントフィルター一体シールの構成
図1に示すように当該実施例に係るベントフィルター一体シール11は、シール機能を発揮するシール部品21および通気機能を発揮するフィルター部品31の組み合わせにより構成されており、シール部品21の周上1箇所にフィルター部品31が組み付けられている。ベントフィルター一体シール11はその機能からして、圧抜きシールまたは気体透過シールとも称される。
【0026】
i)シール部品
シール部品21は、ゴム状弾性体よりなる平面長方形の無端状環状ガスケットとされている。但し、シール部品21の形状や材質はもっぱら装着箇所によって定められるので、これらの形状や材質は特に限定されず、例えば
図2に示すような平面円形の無端状環状ガスケットなどであっても良い。
【0027】
図1に示すように、シール部品21の周上一部に張り出し部22がシール部品21の外周側に張り出すように一体成形され、
図3(A)および
図4に拡大して示すように、張り出し部22におけるシール部品21の厚み方向一方の面(以下「上面」とも称する)に開口するように空洞部23が設けられ、シール部品21の内周側空間24と空洞部23とを連通するように通気路25が設けられ、空洞部23の開口(上面開口)を塞ぐようにシート状のフィルター部品31が張り出し部22の上面に取り付けられている。
【0028】
張り出し部22は、平面長方形を呈するプレート状に成形され、その上面に同じく平面長方形を呈する空洞部23が開口している。したがって張り出し部22は、底面の周り(四周)に側面を有する枡(ます)状とされている。また、張り出し部22はその厚み寸法をシール部品21の厚み寸法と比較して少々小さく設定され、シール部品21の厚み方向中ほどに一体成形されている。したがってこの張り出し部22に対しシール部品21はその厚み方向両端部21a,21bがそれぞれ厚み方向に突出した関係にあり、よってシール部品21の全周に亙るシール性が確保されている。張り出し部22はその機能からして、フィルター保持部とも称される。
【0029】
空洞部23は、空洞(中空)のままとされるが、
図3(B)に示すようにこの空洞部23に、不織布などの通気性を備える充填材26を充填するようにしても良く、このように充填材26を充填することによりシート状のフィルター部品31を空洞部23側(下側)から支持することができる。
【0030】
通気路25は、直線状の貫通穴として形成され、貫通穴はその一端でシール部品21の内周面に開口するとともに他端で張り出し部22における空洞部23の内側側面に開口している。また、この通気路25は貫通穴に中空部品27を貫挿することによって、その内面を補強されている。中空部品27は硬質樹脂などの、シール部品21の成形材料であるゴム状弾性体と比較して剛性の高い材料によって成形されている。また、中空部品27は円筒形のパイプ状部品とされているが、そのほか通気性を確保することができれば、不織布、ハニカム状部品または多孔質状部品などであっても良い。
【0031】
ii)フィルター部品
フィルター部品31は、ポリプロピレン(PP)もしくはポリエチレン(PE)等の撥水性を有する、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水・撥油性を有する多孔質シートよりなるフィルター本体32を備え、このフィルター本体32の外面側(上側)に、不織布等の多孔質素材よりなる保護シート33が重ねられ、両シート32,33が組み合わされている。
【0032】
外側に配置する保護シート33の機能は主に、塵埃の侵入を防ぐこと、および内側に配置したフィルター本体32を保護することであり、内側に配置したフィルター本体32の機能は主に、水や油の侵入を防ぐことである。またこのように2枚を組み合わせるのは、フィルター本体32は通気性を確保するために薄いので強度は高くなく、よって保護シート33で、大きな塵埃を除去すると同時に強度を補うためである。外側に配置する保護シート33は例えば不織布の場合、PET、PP、PE、PI等の疎水性を有するものとするのが好ましい。これは水蒸気が溜らないようにするためである。内側に配置するフィルター本体32の素材は、溶融延伸法、溶融抽出法、層分離法などにより得ることができる。溶融延伸法は例えばPEを一旦熱融解し、フィルム状に固化させたものに対し、物理的に引っ張り応力を加えることで分子間に亀裂を生じさせ微細孔とする方法であり、溶融抽出法は例えばPP素材に予め油分を含ませたフィルムを形成させ、その後に溶剤中に投入し、油文を除去した際に形成される油分の痕跡を微細孔とする方法であり、層分離法は例えばPSFをPSFの溶媒に溶かした溶液を非溶液中にフィルム状に吐出し、その際に溶媒と非溶媒が入れ替わる道筋を微細孔とする方法である。内側に配置するフィルター本体32は、撥水・撥油性で水、油などは通さず、蒸気は通す。代表的なものとしてはゴアテックス社製のePTFEや3M社製のマイクロポーラスなどを挙げることができる。
【0033】
フィルター本体32はその周縁部において張り出し部22に接合される。保護シート33はその周縁部においてフィルター本体32に接合される。接合には接着剤などを用いる。
【0034】
(2)筐体および通気経路の構成
図5および
図6に示すようにベントフィルター一体シール11は、機器本体42を内蔵した電子機器41の筐体43の合わせ面44に装着される。すなわち筐体43はケース45および蓋体46の組み合わせとされ、ケース45および蓋体46はそれぞれの側壁部45a,46a端面が合わせ面44とされ、両側壁部45a,46a端面にシール部品21を装着するためのシール装着溝47が設けられているので、ベントフィルター一体シール11はこのシール装着溝47に装着され、装着された状態でシール部品21はその厚み方向に圧縮される。
【0035】
また、合わせ面44すなわち両側壁部45a,46a端面にはその周上一部に位置して、張り出し部22を配置するための凹部空間48が設けられ、この凹部空間48は筐体外部Yに連通している。また、合わせ面44であって両側壁部45a,46a端面には同じく周上一部に位置して、連通路25を筐体内部Xと連通させるための凹部49が設けられ、この凹部49は筐体内部Xに連通している。図では、連通路25を形成する中空部品27の一端がシール部品21に内周面から突出しているので、この突出した中空部品27の一端が凹部49に収められている。
【0036】
したがって以上により、ベントフィルター一体シール11が筐体43の合わせ面44に装着されると、筐体外部Yから凹部空間48およびフィルター部品31を経由して空洞部23に至るとともに空洞部23から通気路25および凹分49を経由して筐体内部Xへ至る通気経路が形成される。
【0037】
尚、この通気経路の設定については、図示するようにフィルター部品31の上面(保護シート33の上面)と蓋体46の下面との間にシール厚み方向のスキマcを設定するのが好ましく、これによれば空洞部23と上下に重なる位置のフィルター部品31の全面を通気経路として利用することができる。スキマcの設定で通気量が不足の場合は、蓋体46の下面に溝(図示せず)を設けることも考えられ、この場合には筐体外部Yから溝およびフィルター部品31を経由して空洞部23に至る、または筐体外部Yから溝、凹部空間48およびフィルター部品31を経由して空洞部23に至る通気経路が形成される。
【0038】
(3)ベントフィルター一体シールの製法
上記構成のベントフィルター一体シール11を製造するに際しては、金型を用いてシール部品21を成形し、このとき同時に張り出し部22および空洞部23を成形する。また、このときインサート成形を実施することにより中空部品27をシール部品21に埋設する。次いで、金型から成形品を取り出し、フィルター部品31を張り出し部22の上面に接合する。
【0039】
上記構成を備えるベントフィルター一体シール11においては、筐体43の合わせ面44に装着されて筐体内部Xおよび筐体外部Y間をシールするシール部品21に張り出し部22が一体成形されたうえで、筐体内部Xおよび筐体外部Y間を連通させる通気路25および空洞部23が設けられ、この通気路25および空洞部23よりなる通気経路にフィルター部品31が組み付けられているため、シール部品21およびフィルター部品31をまとめて取り扱うことが可能とされ、また、フィルター部品31がシール部品21とともに筐体43の合わせ面44に装着されるため、フィルター部品31を取り付けるための開口部を筐体43の側面などに別途設ける必要がない。したがってフィルター部品31を取り付けるための開口部を筐体43に設ける必要がなく、もってフィルター部品31の取付構造を簡略化し、意匠性を向上させることもでき、またフィルター部品31をシール部品21と一体品として取り扱うことができ、もってベントフィルター21を単独で取り扱う必要がなく、フィルター部品31の取り扱い性を向上させることができる。
【0040】
また、シール部品21および張り出し部22に設ける通気路25を硬質のパイプ状部品等よりなる中空部品27により補強するようにしたため、シール部品21が圧縮され潰されても中空部品27は潰されず、よって中空部品27の内側に通気路25が確保される。したがって通気路25が塞がれてベント機能が喪失するのを抑制することができる。
【0041】
また、フィルター部品31が、撥水性または撥水・撥油性を有する多孔質シートよりなるフィルター本体32の外面側に多孔質素材よりなる保護シート33を重ね合わせたものとされているため、フィルター本体32に目詰まりや破れ破損などが生じにくい。したがってフィルター本体32に目詰まりや破れ破損などが生じてフィルター機能が喪失するのを抑制することができる。
【0042】
尚、上記実施例では、張り出し部22の上面にフィルター部品31を接着剤で接合することにより張り出し部22およびフィルター部品31間のシール性を確保する構成としたが、接着剤以外の手段でシール性を確保するようにしても良い。
【0043】
この点に関して
図7(A)(B)に示す例では、張り出し部22の上面であって空洞部23の周りにシールリップ28が上方へ向け一体成形され、このシールリップ28に対しフィルター部材31が上方から押し付けられることによりシール性が確保されている。但しこの場合、フィルター部材31は蓋体46により押圧されるので、フィルター部材31および蓋体46間には上記実施例のようなスキマcは形成されない。したがってこのスキマcに代わるものとして蓋体46に窓部50を設け、この窓部50によって十分な通気性を確保するのが好適である。