(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
床面に起立している状態において下方に配置される下面と、上方に配置される上面と、水平方向に対向して配置される第1の側面および第2の側面を有する物品を、前記第1の側面が下方に配置される横倒し状態から起立させる物品起立装置であって、
基台と、
前記物品に取り付けられ、床面に当接した状態で、前記物品と一体である第1の軸を中心に回転可能な回転部材と、
前記第1の軸を、床面に沿って、横倒し状態にある前記物品の前記下面から前記上面の方向に移動させる駆動力を発生する駆動力発生装置と、
前記物品と一体である第2の軸と前記基台と一体である第3の軸の間に配置され、前記第2の軸と前記第3の軸の間の距離が一定となるように、前記物品を前記基台に対して支持する支持部材を備え、
前記第1の軸は、前記物品の前記第1の側面側に配置され、前記第2の軸は、前記物品の前記第2の側面側に配置され、
前記物品が横に倒されている状態で、前記第1の軸が床面に沿って前記物品の前記下面から前記上面の方向に移動すると、前記第1の軸、前記第2の軸および前記第3の軸が支点となって、前記物品が前記第2の軸を中心に回転するように構成されていることを特徴とする物品起立装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されている配電盤起立装置は、運搬台に横倒し状態で配置されている配電盤を起立させる際には、垂直スクリューネジを回転させる操作と、水平スクリューを回転させる操作が必要である。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、横倒し状態にある物品を簡単に起立させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、起立状態において下方(床面と対向する側)に配置される下面と、上方(床面と反対側)に配置される上面と、水平方向に対向して配置される第1の側面および第2の側面を有し、横倒し状態において第1の側面が下方に配置される物品を起立対象物とする。起立状態において水平方向に対する2つの面が複数組存在する場合には、いずれかの組の一方の面が第1の側面に対応し、他方の面が第2の側面に対応する。
【0006】
本発明は、基台と、床面に当接した状態で、物品と一体である第1の軸を中心に回転可能な回転部材と、第1の軸を移動させる駆動力を発生する駆動力発生装置と、物品と一体である第2の軸と基台と一体である第3の軸の間に配置され、物品を基台に対して支持する支持部材により構成されている。基台は、好適には、床面に配置される。第1の軸は、物品の第1の側面側に設けられ、第2の軸は、物品の第2の側面側に設けられる。
「第1の軸と第2の軸が物品と一体である」という記載は、物品を起立させている間第1の軸および第2の軸と物品との配置関係が変化しないことを意味する。同様に、「第3の軸が基台と一体である」という記載は、物品を起立させている間第3の軸と基台との配置関係が変化しないことを意味する。
好適には、回転部材が回転可能に支持されている第1の軸を有する部材が物品に取り付けられるが、第1の軸および回転部材は、予め物品に設けられていてもよい。回転部材は、好適には、外周の断面形状が円形であり、第1の軸の延在方向に沿って延びる円柱状あるいは円筒状に形成される。また、1つの回転部材を用いてもよいし、複数の回転部材を用いてもよい。複数の回転部材を用いる場合には、回転部材の数に対応する数の第1の軸を設けるのが好ましい。
なお、回転部材は、物品の起立が完了するまで床面に当接している必要はない。好適には、物品の起立が完了する前(より好適には、直前)に、回転部材と床面との当接状態が解除されるように構成される。これにより、物品を安定して起立させることができる。
駆動力発生装置としては、種々の構成の駆動力発生装置を用いることができる。例えば、第1の軸に直接的あるいは間接的に連結されたワイヤーと、ワイヤーを巻き取るドラムと、ドラムを回転させる部材(例えば、ハンドル、駆動モータ)により構成される。
支持部材は、物品と一体である第2の軸と基台と一体である第3の軸の間の距離が一定となるように、物品を基台に対して支持する。典型的には、支持部材は、第2の軸および第3の軸に回転可能に配置される。
好適には、物品が横に倒されている状態において、第2の軸は、第1の軸より物品の上面側に配置され、第3の軸は、第2の軸より物品の上面側に配置されるとともに、第2の軸より物品の第1の側面側(床面側)および第1の軸より物品の第2の側面側(床面と反対側)に配置される。
好適には、支持部材は、第1の側面の延在方向と交差する方向に沿って、物品を挟んで両側に配置される。
本発明では、物品が横に倒されている状態で、駆動力発生装置から発生する駆動力によって第1の軸が物品の下面から上面の方向に移動すると、第1の軸、第2の軸および第3の軸が支点となって物品が第2の軸を中心に回転し、起立状態となる。
これにより、第1の軸を移動させるだけで、横倒し状態にある物品を容易に起立させることができる。
【0007】
本発明の異なる形態では、物品が第2の軸を中心に回転する際に、遅くとも物品が起立する直前に第1の軸の移動を抑制するダンパー装置を備えている。
物品が第2の軸を中心に回転する際に、物品の重心が、第1の軸の中心を通る鉛直線を横切ると、物品の重量が第1の軸の移動(物品の回転)を速めるように作用し、物品が起立した時に物品に衝撃が加わるおそれがある。
本形態では、物品が起立状態となる前にダンパー装置が作動して第1の軸の移動(物品の回転)が抑制されるため、物品が起立した時に物品に衝撃が加わるのを防止することができる。
本発明の他の異なる形態では、ダンパー装置は、第1の軸の移動方向に沿って移動可能な移動部材と、移動部材と基台との間に配置され、移動部材の移動に対する減衰力を発生するダンパー機構により構成されている。
本形態では、物品が起立状態となる前に、第1の軸あるいは回転部材が移動部材に当接する。移動部材の移動は、ダンパー機構によって抑制されるため、第1の軸の移動も抑制される。
本発明の他の異なる形態では、ダンパー機構は、複数のアーム部材を連結したリンク機構と、少なくとも一つのアーム部材の移動に対する減衰力を発生するダンパーにより構成されている。
本発明の他の異なる形態では、遅くとも物品が起立する直前に回転部材が移動部材に当接するように構成されている。
これらの形態では、第1の軸の移動を抑制するダンパー装置を簡単に構成することができる。
【0008】
本発明の他の異なる形態では、物品の第1の側面の下面側に取り付けられる回転部材用支持部材を備え、第1の軸が回転部材用支持部材に設けられている。
本形態では、第1の軸および回転部材を物品に容易に取り付けることができる。
本発明の他の異なる形態では、回転部材用支持部材は、物品の第1の側面に対向する位置に配置される第1部分と、物品の下面に対向する位置に配置される第2部分を有している。
本形態では、回転部材用支持部材を物品に容易に取り付けることができる。
本発明の他の異なる形態では、回転部材用支持部材の第2部分と物品の下面との間に、脚部を有する受け部が挟持される。脚部は、物品が起立した時に床面に当接する。脚部が床面に当接した状態において、回転部材と床面との当接状態が解除されるように構成するのが好ましい。
本形態では、物品が起立した時に、回転部材と床面との当接状態を容易に解除することができる。これにより、物品が起立した状態において、回転部材用支持部材を物品から容易に取り外すことができる。
【0009】
本発明の他の異なる形態では、物品の第2の側面に取り付けられる支持部材用取付部材を備え、第2の軸が支持部材用取付部材に設けられている。
本形態では、第2の軸を容易に物品に取り付けることができる。
【0010】
本発明の他の異なる形態では、支持部材は、物品を挟んで、第1の側面の延在方向と交差する方向の両側に設けられる。
本形態では、物品を基台に対して強固に支持することが
できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の
物品起立装置では、横倒し状態にある物品を容易に起立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
なお、以下では、
図1に示されている配電盤10を起立させる場合について説明する。なお、
図1は、配電盤10が床面に起立している状態が示されている。
図1に示されている配電盤10は、床面と交差する方向に延在する柱部材21、22、23、24と、床面と平行な方向に延在し、柱部材21、22、23、24を連結する連結部材31、32、33、34を有している。
また、配電盤10は、起立状態において下方(床面と対向する側)に配置される下面11、前方に配置され前面12、後方に配置される背面13、右側に配置される右側面14、左側に配置される左側面15、上方(床面と反対側)に配置される上面16を有している。
本実施の形態では、配電盤10を移動する場合には、左側面15が下方(床面に対向する側)に配置され、右側面14が上方(床面と反対側)に配置されるように倒される(横倒し)。
配電盤10が、本発明の「物品」に対応する。
また、右側面14および左側面15が、本発明の「起立状態において水平方向に対向して配置される第1の側面および第2の側面」に対応し、左側面15が、本発明の「横倒し状態において下方(床面に対向する側)に配置される第1の側面」に対応し、右側面14が、本発明の「横倒し状態において上方(床面と反対側)に配置される第2の側面」に対応する。
【0014】
本発明の物品起立装置の構成を説明する前に、本発明の物品起立装置の動作原理を、
図11〜
図14を参照して説明する。
図11は、配電盤の左側面が下方(床面と対向する側)に配置されている状態(横倒し状態)を示している。
配電盤の左側面の下面側に軸1が取り付けられている。軸1には、ローラーが、床面に当接した状態で回転可能に支持されている。
配電盤の右側面側には、軸1より上面側に軸2が取り付けられている。
また、床面に基台が配置されている。基台には、軸2より上面側で、軸2より左側面側(床面側)および軸1より右側面側(床面と反対側)に軸3が設けられている。
軸1には、ワイヤーが連結されている。
軸2と軸3の間には、支持部材が、軸2および軸3に対して回動可能に配置されている。支持部材は、軸2と軸3の間の距離が一定となるように、配電盤を基台に対して支持する。
【0015】
図11に示す横倒し状態において、軸1に連結されているワイヤーを巻き取ると、軸1に支持されているローラーが回転する。これにより、軸1が、床面に沿って、配電盤の下面から上面の方向(基台の方向)に移動する。この時、軸1、軸2および軸3が支点となり、
図12に示されているように、軸1の移動にしたがって配電盤が軸2を中心に回転する(矢印で示されている反時計方向)。
【0016】
配電盤が軸2を中心に回転し、配電盤の重心Qが、軸1の中心を通る鉛直線Pを横切ると(
図13参照)、配電盤の重量Gが、配電盤を軸2を中心に回転させるように作用する。すなわち、軸1の移動速度を速め、軸2を中心とする配電盤の回転を速めるように作用する。軸2を中心とする配電盤の回転速度が速くなると、配電盤の下面が床面に当接した時(配電盤が起立した時)に、配電盤に衝撃が加わるおそれがある。
本実施の形態では、
図13に示されているように、配電盤の下面が床面に当接する前(配電盤が起立する前)にダンパーが作動を開始し、ダンパーの減衰力によって、軸1の、配電盤の下面から上面の方向への移動(すなわち、軸2を中心とする配電盤の回転)が抑制される。
【0017】
ダンパーの減衰力によって軸1の移動(軸2を中心とする配電盤の回転)が抑制された状態で、軸1が徐々に移動(配電盤が軸2を中心に徐々に回転)し、
図14に示されているように、配電盤の下面が床面に当接する(配電盤が起立状態となる)。この時、軸1の移動(軸2を中心とする配電盤の回転)が抑制されているため、配電盤に大きな衝撃が加わることはない。
【0018】
次に、本発明の物品起立装置の実施の形態を、
図2および
図3を参照して説明する。なお、
図2は、本実施の形態の物品起立装置100を上方から見た平面図であり、
図3は、
図2を矢印II方向から見た側面図である。
本実施の形態の物品起立装置100は、受け部材110、取付補助部材120、ローラー部130、基台140、ワイヤー160、支持部材用取付部材170、支持機構180、190、ダンパー装置210、220等により構成されている。
【0019】
受け部材110は、配電盤10を起立させた時に、配電盤10を受ける(支持する)部材である。
図4に、受け部材110が示されている。受け部材110は、配電盤10の下面11が配置可能な大きさを有する本体部材111により構成されている。本体部材111には、複数の脚部112が設けられている。本実施の形態では、受け部材110の本体部材111と配電盤10の下面11との間に、弾性を有する緩衝部材が配置されている。
受け部材110は、配電盤10を起立させた時に、配電盤10に取り付けられているローラー部130のローラー136、137と床面1との当接状態が解除される(床面1から浮いている)ように構成される。これにより、配電盤10を起立させた後に、ローラー部130を配電盤10から容易に取り外すことができる。
【0020】
本実施の形態では、受け部材110を他の部材と配電盤10の下面11の間に挟持し、他の部材を、ボルト等によって配電盤10の右側面あるいは左側面に取り付けている。これにより、配電盤10の下面11側に、受け部材110を配電盤10に取り付けるためのボルト等が存在しないため、配電盤10を起立させた状態で受け部材110を配電盤10から容易に取り外すことができる。
図3に示されているように、配電盤10の下面11に配置される受け部材110の本体部材111は、配電盤10の右側面14側の箇所が、取付補助部材120と配電盤10の下面11の間に挟持されている。
図5に、取付補助部材120が示されている。取付補助部材120は、本体部材121により構成されている。本体部材12は、配電盤10の右側面14に対向する位置に配置される第1部分122と、受け部材110の本体部材111(配電盤10の下面11)に対向する位置に配置される第2部分123により形成され、断面がL字状を有している。
第1部分122には、配電盤10の柱21、23(
図1参照)に対向する位置に配置される取付部122A、122Bを有している。取付部122A、122Bには、取付部122A、122Bを配電盤10の柱21、23に取り付けるためのボルト等が挿入可能な孔122a、122bが形成されている。
第2部分123には、受け部材100の脚部112が嵌合可能な溝123a、123bが形成されている。
これにより、受け部材110は、脚部112が取付補助部材120の溝123a、123bに挿入された状態で、取付補助部材120と配電盤10の下面11によって挟持される。
【0021】
図3に示されているように、配電盤10の下面11に配置される受け部材110の本体部材111は、配電盤10の左側面15側の箇所が、ローラー部130と配電盤10の下面11の間に挟持されている。
ローラー部130は、
図6に示されている。ローラー部130は、本体部材131により構成されている。本体部材131は、配電盤10の左側面15に対向する位置に配置される第1部分132と、受け部材110の本体部材111(配電盤10の下面11)に対向する位置に配置される第2部分133により形成され、断面がL字状を有している。
第1部分132には、配電盤10の柱22、24(
図1参照)に対向する位置に配置される取付部132A、132Bを有している。取付部132A、132Bには、取付部132A、132Bを配電盤10の柱22、24に取り付けるためのボルト等が挿入可能な孔132a、132bが形成されている。
第2部分123には、受け部材110の脚部112が嵌合可能な溝133a、133bが形成されている。
これにより、受け部材110は、脚部112がローラー部130の溝133a、133bに挿入された状態で、ローラー部130と配電盤10の下面11によって挟持される。
また、ローラー部130には、軸136a、137aが設けられているとともに、軸136a、137aにローラー(「コロ」と呼ばれることもある)136、137が回転可能に支持されている。本実施の形態では、ローラー136、137は、軸方向と直交する断面で見て、外周が円形に形成されているとともに、軸方向に沿って延びている円柱状あるいは円筒状に形成されている。ローラー136、137を、円柱状あるいは円筒状に形成することにより、床面1に沿って移動する際に、床面1の凹凸や配電盤10の重心の位置等の影響を軽減することができる。
ローラー部130が配電盤10に取り付けられた状態において、軸136a、137aは、左側面15の延在方向と交差(直交)する方向に沿って延在し、また、ローラー136、137は、左側面15の延在方向と交差(直交)する方向に沿って離間して配置される。また、ローラー部130が、横に倒されている配電盤10に取り付けられた状態において、ローラー136、137が床面1に当接するように構成されている。また、配電盤10が起立した状態においては、ローラー136、137と床面1との当接状態が解除されるように構成されている。
軸136a、137aが、本発明の「第1の軸」に対応し、ローラー136、137が、本発明の「回転部材」に対応する。ローラー部130の本体部材131が、本発明の「回転部材用支持部材」に対応する。
また、本体部132には、金車(滑車)139が取り付けられている。
なお、本実施の形態では、ローラー部130の本体部131に設けた軸136a、137aをローラー136、137に形成した軸挿入孔に挿入することによってローラー136、137を回転可能に支持したが、ローター136、137に設けた軸をローラー部130の本体部131に形成した軸挿入孔に挿入することによってローラー136、137を回転可能支持してもよい。この場合には、ローラー部130の本体部131に形成した軸挿入孔が、本発明の「第1の軸」に対応する。以下で説明する第2の軸174、175、第3の軸182、192についても同様である。
【0022】
基台140には、ウィンチ架台150が取り付けられている。
ウィンチ架台150には、ワイヤー160を巻き取るドラム151、ガイドローラー153が回転可能に設けられている。ドラム151は、ハンドル152によって回転可能である。ハンドル152とドラム151は、ギヤ機構やラチェット機構等を含む連結機構により連結される。
また、基台140には、金車(滑車)141が取り付けられている。
ワイヤー160の一端は、基台150に固定され、ワイヤー160の他端は、ローラー部130の金車139、基台150に設けられている金車141、ガイドローラー153を介してドラム151に固定される。
ハンドル152によりドラム151を回転させてワイヤー160を巻き取ると、ローラー部130に、ローラー部130を配電盤10の下面11から上面16の方向に移動させる駆動力が加わり、ローラー136、137が床面1に当接した状態で軸136a,137aを中心に回転する。これにより、軸136a、137aが、床面1に沿って、配電盤10の下面11から上面16の方向に移動する。
ワイヤー160、金車139、141、ドラム151、ハンドル152、ガイドローラー153等によって、本発明の「第1の軸を移動させる駆動力を発生する駆動力発生装置」が構成される。
【0023】
配電盤10と基台140の間には、配電盤10を基台140に対して支持する支持装置が設けられる。支持装置は、支持部材用取付部材170、支持機構180、190により構成される。
支持部材用取付部材170は、配電盤10の右側面14に取り付けられる。
支持部材用取付部材170は、
図7に示されている。支持部材用取付部材170は、本体部材171により構成されている。本体部材171は、配電盤10の柱21、23(
図1参照)に対向する位置に配置される取付部171A、171Bを有している。取付部171A、171Bには、取付部171A、171Bを配電盤10の柱21、23に取り付けるためのボルト等が挿入可能な孔171a、171bが形成されている。
また、本体部材171の両端には、軸174、175が設けられている。軸174、175は、ローラー部130の軸136a、137aより上面16側に配置される。
【0024】
支持部材用取付部材170の本体部材171の両端には、扇型のガイド部材184、194が取り付けられている。ガイド部材184、194には、円弧状のガイド溝184a、194aが形成されている(
図3、
図7参照)。
基台150には、左側面15の延在方向と交差する方向に沿って離間した位置に、扇型のガイド部材181、191が設けられている。ガイド部材181、191には、軸182、192が設けられているとともに、円弧状のガイド溝181a、191aが形成されている。
支持部材用取付部材170の本体部材171の両端に設けられている軸174、175と、ガイド部材181、191に設けられている軸182、192の間には、支持部材183、193が配置される。
支持部材183は、アーム部材183a、183b、183cにより構成されている。アーム部材183aと183c、アーム部材183bと183cは、ボルト等によって連結・切り離しが可能である。アーム部材183aは、軸174に回転可能に取り付けられ、アーム部材183bは、軸182に回転可能に取り付けられる。
同様に、支持部材193は、アーム部材193a、193b、193cにより構成されている。アーム部材193aと193c、アーム部材193bと193cは、ボルト等によって
連結・切り離しが可能である。アーム部材193aは、軸175に回転可能に取り付けられ、アーム部材193bは、軸192に回転可能に取り付けられる。
支持部材183、193を連結・切り離しが可能な複数のアーム部材183a〜183c、193a〜193cによって構成することにより、支持部材用取付部材170を配電盤10に取り付ける際あるいは配電盤10から取り外す際に、アーム部材183c、193cのみを連結あるいは切り離すことで対応することができる。これにより、アーム部材183a、183b、193a、193bと軸174、182、175、192との連結あるいは切り離しが不要となり、アーム部材と軸との連結部にガタ等が発生するのを防止することができる。
支持部材183(193)は、配電盤10の右側面14に取り付けられている支持部材用取付部材170の軸174(175)と基台140に設けられている軸182(192)の間の距離が一定となるように、配電盤10を基台140に対して支持する。
支持部材用取付部材170に設けられている軸174、175が、本発明の「第2の軸」に対応し、基台140に設けられている軸182、192が、本発明の「第3の軸」に対応する。
【0025】
本実施の形態では、アーム部材183a、183b、193a、193bを、軸174、182、175、192に回転可能に取り付けるとともに、アーム部材183a、183b、193a、193bに設けたガイドピン185、186、195、196を、扇型のガイド部材184
、181、194、
191に形成した円弧状のガイド溝184a、
181a、194a、
191aに挿通している。
このように、アーム183(193)を軸174、182(175、192)に回動可能に取り付けるとともに、アーム183(193)に設けたガイドピン185、186(195、196)をガイド部材184、181(194、
191)に形成したガイド溝184a、181a(194a、
191a)に沿って移動可能に構成することにより、アーム183(193)と支持部材用取付部材170と基台140との連結状態を安定化することができ、配電盤10を起立させる際の安定性を向上させることができる。
【0026】
前述したように、配電盤10が、配電盤10の右側面14に取り付けられた支持部材用取付部材170の軸174、175を中心に回転する際に、配電盤10の重心Qがローラー部130の軸136a、137aを通る鉛直線Pを横切ると、配電盤10の重量Gが配電盤10の軸174、175を中心とする回転速度を速めるように作用する。この場合、配電盤10の下面11が床面1に当接した時(配電盤10が起立した時)に、配電盤10に衝撃が加わるおそれがある。
本実施の形態では、配電盤10が起立する前に作動し、配電盤10の回転を抑制する減衰力を発生するダンパー装置を設けている。本実施の形態では、ローラー部130に2つの軸136a、137aと2つのローラー136、137を設けているため、2つのダンパー装置210、220を設けている。
ダンパー装置210(220)は、基台240に設けられ、軸136a(137a)の移動方向に沿って移動可能な移動部材(スライド部材)211(221)と、移動部材211(221)と基台140との間に設けられるダンパー機構により構成されている。
スライド部材211(221)の先端部には、ローラー部130が当接可能な当接部211a(221a)が形成されている。本実施の形態では、スライド部材211(221)の先端部211a(221a)は、ローラー136(137)が当接可能な形状に形成されている。
ダンパー装置210(220)のダンパー機構は、複数のアーム部材212、213、214(222、223、224)により構成されるリンク機構と、ダンパー215(225)により構成されている。
本実施の形態では、複数のアーム部材212〜214(222〜224)を連結部210c、210d、201e(220c、220d、220)で連結することによって三角形のリンク機構が形成されている。
そして、リンク機構を形成する少なくとも1つのアーム部材に、当該アーム部材の移動を規制するダンパーが設けられている。本実施の形態では、アーム部材214(224)と連結部210e(220e)の間にダンパー215(225)が設けられている。
リンク機構の一方側の端部は、移動部材211(221)に連結され、他方側の端部は、基台140に連結されている。本実施の形態では、アーム部材212(222)と移動部材211(221)が連結部210a(220a)により回転可能に
連結され、アーム部材213(223)と基台140が連結部210b(220b)により回転可能に連結されている。
【0027】
移動部材211(221)は、遅くとも配電盤10が起立する直前にローラー136(137)が移動部材211(221)の先端部211a(221a)に当接するように構成される。
これにより、配電盤10が軸174、175を中心に回転する際、配電盤10が起立状態となる前にローラー136、137がダンパー装置210、220の移動部材211、221の先端部211a、
221aに当接し、それ以降のローラー136、137の移動は、ダンパー
215、225から発生する減衰力によって抑制される。
したがって、配電盤10が起立した時に配電盤10に加わる衝撃が軽減される。
【0028】
次に、本実施の形態の物品起立装置100の動作を、
図8〜
図10を参照して説明する。
図3に示されているように、配電盤10が、左側面15が下方(床面1側)に配置されるように横に倒されている状態で、配電盤10の下面11に
受け部材110を配置する。そして、
受け部材110の左側面15側の箇所がローラー部130と下面11により挟持されるように、ローラー部130を左側面15の下面11側に取り付ける。この時、ローラー部130のローラー136、137が床面1に当接した状態で軸136a、137aに回転可能となるように、ローラー部130を配電盤10に取り付ける。また、
受け部材110の右側面14側の箇所が
取付補助部材120と下面11により挟持されるように、
取付補助部材120を右側面14の下面11側に取り付ける。
【0029】
また、支持部材用取付部材170を配電盤10の右側面14に取り付ける。
そして、支持部材用取付部材170の軸174、175と、基台140に取り付けられているガイド部材181、191の軸182、192の間に支持機構180、190を配置する。ここで、ガイド部材184、194、支持部材183のアーム部材183a、支持部材193のアーム部材193aが支持部材用取付部材170の軸
174、
175に予め取り付けられた状態を維持しておくのが好ましい。また、支持部材183のアーム部材183b、支持部材193のアーム部材193bがガイド部材181、191の軸182、192に予め取り付けられた状態を維持しておくのが好ましい。したがって、この場合には、支持部材183のアーム部材183cをアーム部材183aと183bに連結し、支持部材193のアーム部材193cをアーム部材193aと193bに連結する。
【0030】
また、基台140に設けられている移動部材211、221と基台140の間にダンパー装置210、220を取り付ける。この時、移動部材211、221は、ダンパー215、225から発生する力(減衰力)によって配電盤10の下面11の方向に付勢され、ストッパー(図示省略)に当接した位置に保持される。
また、ドラム151に巻き付けられているワイヤー160の一端を引き出し、ガイドローラー153、基台140に設けられた金車141、ローラー部130に設けられた金車139を介して基台140に固定する。
なお、各作業の順番は適宜変更することができる。
【0031】
次に、
図3に示されている状態(配電盤10が横に倒されている状態)において、ハンドル152を回転させてワイヤー160を巻き取る。ワイヤー160の巻き取りによって、ローラー部130に、金車139を介して、配電盤10の下面11から上面16の方向に移動する駆動力が作用する。これにより、ローラー部130のローラー16、17が、床面1に当接した状態で回転し、ローラー部130の軸136a、137aが配電盤10の上面16の方向に移動する。
この時、配電盤10の左側面15に取り付けられているローラー部130の軸136a(137a)、配電盤10の右側面14に取り付けられている支持部材用取付部170の軸174(175)、基台140に取り付けられているガイド部材181(191)の軸
182(192)を支点とし、配電盤10が軸174(175)を中心に回転する。(
図8参照)
【0032】
ハンドル152を回転させてワイヤー160を更に巻き取ると、配電盤10は軸174(175)を中心に起立方向に回転し、配電盤10の重心Qがローラー部130の軸136a(137a)を通る鉛直線Pを横切る。これ以降は、配電盤10の重量Gが、軸174(175)を中心とする配電盤10の回転速度、すなわち、ローラー部130の軸136a(137a)の移動速度を速めるように作用する。
そして、配電盤10が、配電盤10が起立する前の予め定められた角度まで回転すると、ローラー部130のローラー136(137)がダンパー装置210(220)の移動部材211(221)の先端部211a(221a)に当接する。これにより、ダンパー215(225)から発生する減衰力によって、ローラー部130の移動が抑制される。(
図9参照)
【0033】
ワイヤー160を更に巻き取ると、配電盤10の下面11に配置した
受け部材110の脚部112が床面1に当接し、配電盤10は起立状態となる。(
図10参照)
この時、ローラー部130のローラー136(137)と床面1との当接状態が解除される。
配電盤10が起立状態となった後、
取付補助部材120、ローラー部130を配電盤10から取り外す。
ここで、
取付補助部材120は配電盤10の右側面14にボルト等を用いて取り付けられ、ローラー部130は、配電盤10の左側面15にボルト等を用いて取り付けられている。また、配電盤10が起立している状態において、ローラー部130のローラー136(137)と床面1との当接状態は解除されている。このため、配電盤10が起立している状態で、
取付補助部材120およびローラー部130を配電盤10から容易に取り外すことができる。
また、
受け部材110は、
取付補助部材120と配電盤10の下面11により挟持されているとともに、ローラー部130と配電盤10の下面11により挟持されているだけである。このため、
取付補助部材120とローラー部130が配電盤10から取り外された状態において、
受け部材110と配電盤10を容易に分離することができる。
なお、配電盤10が起立した状態では、ダンパー装置210(220)の移動部材211(221)が移動しているため、ローラー部130を配電盤10から取り外す際に、ダンパー215(225)の減衰力によって移動部材211(221)やリンク機構を構成しているアーム部材212〜214(222〜224)が急激に移動するおそれがある。このため、増加したダンパー215(225)の減衰力を低下させる機構を設けるのが好ましい。例えば、アーム部材212〜214(22〜224)をラックアンドピニオンに組み込み、これにラチェットを組み込む機構を用いることができる。
また、支持装置を取り外す。この場合、
支持部材183のアーム部材183aと183cとの連結、アーム部材183bと183cとの連結、
支持部材193のアーム部材193aと193cとの連結、アーム部材193bと193cとの連結を解除する。そして、
支持部材用取付部材170を配電盤10から取り外す。
【0034】
以上は、横倒し状態の物品を起立させる物品起立装置について説明したが、本発明は、以下のように、横倒し状態の物品を起立させる物品起立方法として構成することもできる。
「床面に起立している状態において下方に配置される下面と、上方に配置される上面と、水平方向に対向して配置される第1の側面および第2の側面を有する物品を、前記第1の側面が下方に配置される横倒し状態から起立させる物品起立方法であって、
床面に当接した状態で、前記物品と一体である第1の軸を中心に回転可能な回転部材を前記物品に取り付け、
前記物品と一体である第2の軸と、床面に配置される基台と一体である第3の軸の間に、前記第2の軸と前記第3の軸の間の距離が一定となるように前記物品を前記基台に対して支持する支持部材を取り付け、
前記第1の軸を、床面に沿って、横倒し状態にある前記物品の下面から上面の方向に移動させ、前記第1の軸、前記第2の軸および前記第3の軸を支点として前記物品を前記第2の軸を中心に回転させることを特徴とする物品起立方法。」として構成することができる。
【0035】
以上のように、本発明の物品起立装置および物品起立方法を用いることにより、配電盤等の物品に取り付けた第1の軸を、横倒し状態にある物品の下面から上面の方向に移動させるだけで、横倒し状態にある物品を容易に起立させることができる。
また、物品が起立状態となる前に作動し、物品の回転(第1の軸の移動)を抑制するダンパー装置を設けているため、物品が起立する時に物品が衝撃を受けるのを防止することができる。
また、物品を起立させるための部材を、容易に物品に取り付けあるいは取り外すことができる。
【0036】
本発明は、実施の形態で説明した構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更、追加、削除が可能である。
実施の形態では、
図1に示されている形状の配電盤を起立させる場合について説明したが、本発明は、下面、上面、第1の側面および第2の側面を有する、配電盤を含む種々の物品を起立させる際に用いることができる。
物品(配電盤)の下面に受け部を配置したが、受け部は省略することもできる。この場合には、物品が安定して起立状態を維持することができるように構成するのが好ましい。例えば、物品が起立した状態では、物品の下面が床面に当接するように構成する。物品が起立した状態では、ローラー部のローラーと床面との当接が解除されるように構成するのが好ましい。
ローラー部(ローラー、ローラーを回転可能に支持する軸)を移動させる駆動力を発生する駆動力発生装置としては、公知の種々の構成の駆動力発生装置を用いることができる。
第1の軸にローラーを回転可能に支持したが、物品の所定箇所を移動させることができれば、第1の軸およびローラーを省略することもできる。この場合は、物品の所定箇所
、第2の軸および第3の軸が支点となる。
各部材の連結構造としては、配電盤の外部から締め付け等を行うことができる連結構造を用いるのが好ましい。例えば、ダルマ座金やダルマナットを用いる。
物品を基台に対して支持する支持装置としては、実施の形態で説明した支持装置に限定されず、種々の構成の支持装置を用いることができる。
基台の配置位置は、床面に限定されない。
物品が起立する際に物品に衝撃が加わるのを防止するためのダンパー装置としては、公知の種々の構成のダンパー装置を用いることができる。あるいは、ダンパー装置を省略することもできる。この場合には、物品が起立する直前に物品の回転速度が速くならないように、第1の軸、第2の軸および第3の軸の配置位置等を考慮するのが好ましい。