特許第6353319号(P6353319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353319
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】玩具ピアノの発音装置
(51)【国際特許分類】
   A63H 5/00 20060101AFI20180625BHJP
   G10C 1/02 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A63H5/00 R
   G10C1/02
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-168558(P2014-168558)
(22)【出願日】2014年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-42967(P2016-42967A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187805
【弁理士】
【氏名又は名称】毛利 弘人
(74)【代理人】
【識別番号】100105119
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 孝治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 文隆
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭31−004733(JP,Y1)
【文献】 特公昭51−025726(JP,B1)
【文献】 米国特許第02806398(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00−37/00
G10C 1/00− 9/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤が操作されることによって音を発する玩具ピアノの発音装置であって、
前記鍵盤が載置された筬と、
前記鍵盤を構成し、各々が前後方向に延びるとともに、前記筬に揺動自在に支持され、左右方向に並設された複数の鍵と、
前記複数の鍵の各々の後端部に回動自在に設けられ、押鍵に伴って後方に回動する複数のハンマーと、
前記複数の鍵の後方において、各々が対応する前記鍵の音階に応じて上下方向に所定長さ延びるとともに当該複数の鍵に対応するように左右方向に並設され、押鍵時に回動する前記ハンマーで前方から打たれることによって音を発する複数の発音体と、
を備え
前記複数のハンマーの各々は、前記鍵の後端部に、左右方向に延びる支軸を中心として回動自在に支持されかつ垂下した状態に設けられていることを特徴とする玩具ピアノの発音装置。
【請求項2】
前記支軸の前方に不動に設けられた前ストッパを、さらに備えており、
前記ハンマーは、
前記支軸から下方に延びるアームと、
このアームの下端部に設けられ、前記発音体を打つためのハンマー本体部と、
を有し、
前記アームは、前記支軸の前方に設けられ、押鍵に伴い前記支軸が上方に移動したときに、前記前ストッパに下方から当接することによって係止されることにより、前記ハンマー本体部が後方に移動するよう、前記ハンマーを回動させるための係止部を有していることを特徴とする請求項に記載の玩具ピアノの発音装置。
【請求項3】
前記前ストッパは、前記筬に一体に設けられていることを特徴とする請求項に記載の玩具ピアノの発音装置。
【請求項4】
前記支軸の後方に設けられ、弾性を有する後ろストッパを、さらに備えており、
前記アームは、前記支軸の後方に設けられ、押鍵時に前記ハンマーが後方に回動し、前記ハンマー本体部が前記発音体を打つ直前に、前記後ろストッパに当接する当接部を有していることを特徴とする請求項2又は3に記載の玩具ピアノの発音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤が操作されることによって音を発する玩具ピアノにおいて、特にアップライト型に適した玩具ピアノの発音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の玩具ピアノとして、例えば本出願人がすでに出願した特許文献1に開示されたものが知られている。この玩具ピアノは、グランド型のものであり、奥行き寸法が低音側で長く、高音側で短い所定形状を有するケースと、前後方向に延びるとともに互いに左右方向に並設された複数の鍵を有する鍵盤と、ケース内に鍵ごとに設けられ、押鍵に伴って押し上げられる複数のハンマーと、各鍵に対応するように設けられ、押し上げられたハンマーで下方から打たれることによって音を発する複数の音片(以下「発音体」という)などを備えている。
【0003】
鍵盤の各鍵は、前半部がケースから外部に露出するとともに、後半部がケース内に収容された状態で、長さ方向の中央付近を支点として、揺動自在に支持されている。各ハンマーは、櫛歯状に形成された支持部材の各歯の先端部に取り付けられており、各鍵の後端部とその上方の発音体との間に配置されている。各発音体は、前後方向に水平に延び、音階に応じた所定長さを有しており、具体的には、低音側で長く、高音側で短い長さ寸法を有している。そして、これらの発音体は、ケース内において、鍵に対応して互いに左右方向に並設されている。
【0004】
この玩具ピアノでは、鍵が押し下げられると、その鍵は前下がりに揺動し、後端部でハンマーを押し上げる。そのハンマーは、上方の発音体に対し、その長さ方向の中央付近に下方から衝突することによって発音体を振動させ、それにより、押鍵された鍵の音階に対応する音が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平5−38789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のグランド型の玩具ピアノでは、音を発するための発音体がケース内において前後方向に延びるように設置されるので、全体として奥行き寸法が大きくなってしまう。また一般に、アップライト型のピアノでは、グランド型のピアノに比べて、奥行き寸法を小さくする必要があることから、前後方向に延びる鍵の長さも、グランド型に比べて短くすることが求められる。しかし、鍵の長さが短くなると、鍵を揺動するように支持する鍵の支点からハンマーを押し上げるための後端部の作用点までの距離も短くなり、それにより、ハンマーを適切に押し上げることができなくなり、そのハンマーが衝突することによる発音体からの適切な音階の音や十分な音量が得られないことがある。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、奥行き寸法が短く、全体としてコンパクトに構成することができ、アップライト型に適した玩具ピアノの発音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、鍵盤が操作されることによって音を発する玩具ピアノの発音装置であって、鍵盤が載置された筬と、鍵盤を構成し、各々が前後方向に延びるとともに、筬に揺動自在に支持され、左右方向に並設された複数の鍵と、複数の鍵の各々の後端部に回動自在に設けられ、押鍵に伴って後方に回動する複数のハンマーと、複数の鍵の後方において、各々が対応する鍵の音階に応じて上下方向に所定長さ延びるとともに複数の鍵に対応するように左右方向に並設され、押鍵時に回動するハンマーで前方から打たれることによって音を発する複数の発音体と、を備え、複数のハンマーの各々は、鍵の後端部に、左右方向に延びる支軸を中心として回動自在に支持されかつ垂下した状態に設けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、各々が前後方向に延びるとともに、載置された筬に揺動自在に支持され、左右方向に並設された複数の鍵によって、鍵盤が構成されている。また、各鍵の後端部には、押鍵に伴って後方に回動するハンマーが回動自在に設けられている。さらに、複数の鍵の後方には、各々が対応する鍵の音階に応じて上下方向に所定長さ延びる複数の発音体が、複数の鍵に対応するように左右方向に並設されている。押鍵時に鍵が押し下げられ、前下がりに揺動すると、鍵の後端部が上方に移動し、その鍵の後端部に回動自在に設けられたハンマーが、後方に回動することによって発音体に衝突し、これを前方から打つ。これにより、その発音体が振動し、押鍵された鍵の音階に対応する音が発生する。
【0010】
上記の各発音体は、上下方向に延びるように設けられているので、前述した従来のグランド型の玩具ピアノにおける発音体と異なり、玩具ピアノの奥行き寸法を大きくすることがない。また、各ハンマーは、鍵の後端部に回動自在に設けられ、押鍵時に後方に回動することによって、対応する発音体を前方から打つので、鍵に対応する音階の音を適切に発生させることができるとともに、十分な音量を得ることができる。以上のように、本発明によれば、奥行き寸法が短く、全体としてコンパクトに構成することができるアップライト型に適した玩具ピアノの発音装置を得ることができる。
【0012】
また、上記の構成によれば、鍵の後端部に回動自在に設けられたハンマーは、左右方向に延びる支軸を中心として回動自在であることに加えて、鍵の後端部に垂下した状態に設けられている。これにより、鍵を押し下げたときには、ハンマーを円滑に回動させることができ、加えて、鍵の後端部には、ハンマーの重さによる荷重が常に作用するので、鍵の押し下げが解除されたときには、その鍵を、押鍵前の元の状態(離鍵状態)に迅速に戻すことができる。
【0013】
請求項に係る発明は、請求項に記載の玩具ピアノの発音装置において、支軸の前方に不動に設けられた前ストッパを、さらに備えており、ハンマーは、支軸から下方に延びるアームと、このアームの下端部に設けられ、発音体を打つためのハンマー本体部と、を有し、アームは、支軸の前方に設けられ、押鍵に伴い支軸が上方に移動したときに、前ストッパに下方から当接することによって係止されることにより、ハンマー本体部が後方に移動するよう、ハンマーを回動させるための係止部を有していることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、ハンマーの支軸の前方に、前ストッパが不動に設けられる一方、上記アーム及びハンマー本体部を有するハンマーには、アームの支軸の前方に係止部が設けられている。押鍵時に鍵が押し下げられると、鍵の後端部が上方に移動するのに伴い、ハンマー及びその支軸が引き上げられる。この場合、ハンマーの係止部は、前ストッパに下方から当接することによって係止され、それ以上の上方への移動が阻止される。そして、鍵がさらに押し下げられると、ハンマーの支軸がさらに引き上げられ、この場合、その支軸を力点、前記係止部を支点、ハンマー本体部を作用点とするてこの原理により、ハンマーが支軸を中心として後方に回動し、ハンマー本体部で発音体を前方から打つことができる。このように、押鍵に伴って後方に回動し、発音体をしっかりと打つことができるハンマーを、容易に実現することができる。
【0015】
請求項に係る発明は、請求項に記載の玩具ピアノにおいて、前ストッパは、筬に一体に設けられていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、前ストッパが、鍵盤を載置して支持する筬に一体に設けられているので、前ストッパを別個に設けることがなく、また、ハンマーを回動させるための前ストッパとして強固なものを容易に実現することができる。
【0017】
請求項に係る発明は、請求項2又は3に記載の玩具ピアノにおいて、支軸の後方に設けられ、弾性を有する後ろストッパを、さらに備えており、アームは、支軸の後方に設けられ、押鍵時にハンマーが後方に回動し、ハンマー本体部が発音体を打つ直前に、後ろストッパに当接する当接部を有していることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、押鍵時にハンマーが後方に回動すると、ハンマー本体部が発音体を打つ直前に、アームの支軸の後方に設けられた当接部が、弾性を有する後ろストッパに当接し、それを弾性変形させながら、ハンマー本体部が発音体に衝突することによって、音が発生する。この場合、後ろストッパの位置や弾性などは、ハンマーにおけるアームの当接部が後ろストッパに最初に当接したときにのみ、ハンマー本体部が発音体に衝突し、これを打つように設定されていることが好ましい。これにより、押鍵時に、後方に回動することで発音体を1度打ったハンマーが、その反動で前方に回動し、さらにその反動で再度、後方へ回動しても、アームの当接部が後ろストッパに当接することで、ハンマー本体部が発音体を再度打つことはない。したがって、上記の構成によれば、ハンマーが発音体を1度打った後にさらに打つようないわゆる2度打ちを、確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による発音装置を適用したアップライト型の玩具ピアノの外観を示す斜視図である。
図2】(a)は、図1の玩具ピアノの内部構造を示す右側面図であり、(b)は、(a)のb−b線に沿って切断したときの玩具ピアノの内部構造の右側部分(中音部〜高音部)を示す正面図である。
図3】(a)は、鍵盤及びその周囲を拡大して示す図であり、(b)は、筬、鍵及びハンマーを分解して示す図である。
図4】押鍵時の動作を説明するため説明図であり、(a)は鍵が押し下げられる前の状態、(b)は鍵が押し下げられ、ハンマーの係止部が筬側のストッパに当接した状態を示す。
図5図4に続く説明図であり、(a)は鍵がさらに押し下げられ、ハンマーの当接部が発音体側のストッパに当接した状態、(b)は鍵がさらに押し下げられ、ハンマー本体部が発音体を打った状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による玩具ピアノの発音装置を適用したアップライト型の玩具ピアノの外観を示しており、図2は、その玩具ピアノの内部構造を示している。両図に示すように、この玩具ピアノ1は、横長ボックス状に形成された木製のケース2と、このケース2の上下方向の中央よりも若干高い位置に設けられた鍵盤3と、この鍵盤3が操作されることによって音を発する発音装置4とを備えている。
【0021】
ケース2の左右両端部の所定高さには、前方に突出する左右の腕木5、5が設けられている。これらの腕木5、5の間には、平面形状が矩形状に形成された木製の棚板6が設けられ、また両腕木5、5の下側にはいずれも、それらを下方から支持するスタンド7、7が設けられている。棚板6の上面には、鍵盤3を支持するための筬8が載置された状態で固定されている。なお、棚板6の後端には、左右方向の全体にわたり、フェルトなどから成る緩衝材6aが取り付けられている。
【0022】
筬8は、例えば合成樹脂から成り、平面形状が井桁状に形成されている。この筬8の前後方向(図2(a)の左右方向)の中央付近には、上方に所定長さ突出しかつ左右方向(図2(a)の表裏方向、同図(b)の左右方向)の全体にわたって延びる鍵支持レール8aが設けられている。また、筬8には、鍵支持レール8aの前方及び後方の所定位置にそれぞれ、上方に所定長さ突出し、鍵盤3の後述する鍵9と同じ数分、左右方向に並設された前側鍵ガイド8b及び後ろ側鍵ガイド8cが設けられている。
【0023】
さらに、筬8の後端部には、後方に所定長さ突出しかつ筬8の左右方向の全体にわたって延びるストッパ8d(前ストッパ)が設けられている。このストッパ8dは、押鍵時に、後述するハンマー11の係止部15が下方から当接したときに、その係止部15の上方への移動を阻止するためのものである。加えて、ストッパ8dは、鍵盤3の後述する各鍵9の後端部が上方から当接することにより、鍵9の後方への揺動を阻止するとともに、全ての鍵9を適正な位置に保持する機能を有している。
【0024】
また、ストッパ8dの上面及び下面には、左右方向の全体にわたり、フェルトなどから成る緩衝材が取り付けられている。したがって、ストッパ8dにハンマー11の係止部15や鍵9の後端部が当接しても、その際に生じやすい雑音の発生を低減することができる。以上のように構成された筬8上に、鍵盤3が載置され、下方から支持されている。
【0025】
鍵盤3は、白鍵9a及び黒鍵9bから成る複数(本実施形態では32本)の合成樹脂製の鍵9で構成されている。図3(b)に示すように、鍵9は、前後方向(同図の左右方向)に所定長さ延びており、後端部(同図の右端部)には、下方に所定長さ突出し、後述するハンマー11が連結されるハンマー連結部10が設けられている。このハンマー連結部10の所定位置には、左右方向に貫通し、ハンマー11の後述する支軸14が係合する軸孔10aが形成されている。また、鍵9の前後方向の中央よりも若干後ろ側の所定位置には、下方に開放する凹状の支点受け部9cが設けられており、前述した筬8の鍵支持レール8aに係合している。したがって、鍵9は、鍵支持レール8aの上端を支点として、前後に揺動自在に支持されている。
【0026】
なお、図示は省略するが、鍵9は、大部分が下方に開放する断面コ字状に形成されるとともに、後部が左右に分岐する二股状に形成されている。そして、前述した筬8の前側鍵ガイド8b及び後ろ側鍵ガイド8cがそれぞれ、鍵8の前部及び後部に下方から挿入した状態で係合している。これにより、鍵9は、押鍵時に、左右の横振れが防止されながら、円滑に揺動する。
【0027】
発音装置4は、上記鍵盤3と、各鍵9の後端部のハンマー連結部10に回動自在に連結された複数のハンマー11と、鍵9の後方において、各々が上下方向に延び、ハンマー11で前方から打たれることによって音を発する複数の発音体21とを備えている。
【0028】
図3(b)に示すように、ハンマー11は、全体が所定種類の合成樹脂(例えばポリプロピレン)から成り、側面形状がほぼT字状に形成されたアーム12と、このアーム12の下端部に設けられ、後方に凸状に形成されたハンマー本体部13とを有している。アーム12の上端部には、左右両側(図3(b)の表裏両側)に突出する支軸14が設けられている。また、アーム12の上端部には、支軸14の前方に、押鍵時に前述した筬8のストッパ8dに当接して係止される係止部15が設けられている。加えて、アーム12の上端部には、支軸14の後方に、押鍵時に発音体21側の後述するストッパ27に当接する当接部16が設けられている。
【0029】
ハンマー本体部13は、左右方向に所定の厚みを有するとともに、比較的大きな側面形状を有しており、発音体21側の後端部が半円状に形成されている。また、ハンマー本体部13の後端部の所定位置には、左右方向に貫通する円弧状の空洞部17が形成されている。この空洞部17が形成されることにより、ハンマー本体部13には、それ自体の後端面と空洞部17の間に、薄肉に形成されかつハンマー本体部13自体の硬さよりも見掛け上軟らかい軟質部13aが設けられている。
【0030】
以上のように構成されたハンマー11は、左右の支軸14、14が、鍵9の二股状のハンマー連結部10の軸孔10aに内側から挿入された状態で、ハンマー連結部10に支軸14を中心として回動自在に支持されかつ垂下した状態に設けられている。
【0031】
発音体21は、アルミなどの金属製のパイプから成り、鍵9の音階に応じて上下方向に所定長さ延びるとともに、鍵9に対応するように左右方向に並設されている。より具体的には、図2(b)に示すように、発音体21は、低音側(左側)で長く、高音側(右側)で短い長さ寸法を有しており、鍵9と同じ数分(本実施形態では32本、図2(b)では4本のみ図示)、左右方向に並設されている。また、これらの発音体21は、後述する枠体22を介して、ケース2内の後半部の所定位置に保持されている。
【0032】
図2に示すように、枠体22は、左右方向に並設された全ての発音体21を間にした状態で、互いに前後対称に構成された前枠23及び後枠24と、これらの前枠23及び後枠24の左右両端部をそれぞれ連結する連結枠25(図2(b)では右側のもののみ図示)とを有している。図2(b)に示すように、前枠23は、左右方向に延びる帯状の板材から成り、互いに上下方向に所定間隔を隔てて配置された上板23a及び下板23bを有している。一方、後枠24は、前枠23の上述した上板23a及び下板23bと同様の上板24a及び下板24bを有している。また、前枠23及び後枠24の上板23a、24a及び下板23b、24bの発音体21側の面にはいずれも、全ての発音体21を前後から挟持し、上下方向に不動な状態で支持するための発音体挟持部材26が取り付けられている。
【0033】
各発音体挟持部材26は、所定の軟質材(例えば発泡ウレタン、発泡ポリエチレン)から成る細長い棒状に形成され、傾斜しながら左右方向に延びている。そして、4つの発音体挟持部材26により、各発音体21は、長さ方向の所定の2箇所で前後から挟持されている。具体的には、発音体21の全体の長さをLとすると、両端から0.224Lの位置が挟持されている。これにより、各発音体21は、ハンマー11で打たれたときに、前後の発音体挟持部材26、26で挟持された上下2箇所を節として、最適に振動し、良好な音を発することができる。
【0034】
また、前枠23の上板23aの前面側には、押鍵時にハンマー11の回動を抑制するためのストッパ27(後ろストッパ)が設けられている。具体的には、ストッパ27は、上板23aの前面上部に固定された左右方向に延びる取付部材28の下面に、左右方向に延びかつ全てのハンマー11に対応するように取り付けられている。このストッパ27は、弾性を有する材料(例えば発泡ウレタン)から成る細長い棒状に形成されている。加えて、ストッパ27の位置や弾性などは、押鍵時にハンマー11の当接部16がストッパ27に最初に当接したときにのみ、ハンマー本体部13が発音体21に衝突するように設定されている。
【0035】
次に、図4及び図5を参照して、玩具ピアノ1における発音動作、具体的には、押鍵時における鍵9及びハンマー11の動作について説明する。図4(a)は、鍵9が押し下げられる前の状態、すなわち離鍵状態を示している。この離鍵状態では、ハンマー11の係止部15が、上方の筬8のストッパ8dとの間に隙間を隔てて対向している。
【0036】
上記の離鍵状態から、図4(b)の白抜き矢印で示すように、鍵9の前端部を押し下げると、鍵9が前下がりに揺動し、鍵9の後端部、すなわちハンマー連結部10が上方に移動する。これに伴い、ハンマー11も上方に移動し、係止部15が筬8のストッパ8dに下方から当接する。
【0037】
この状態から、鍵9をさらに押し下げると、ハンマー11は、係止部15が筬8のストッパ8dによって上方への移動が阻止されるとともに、ハンマー11の支軸14が鍵9のハンマー連結部10によって引き上げられる。これにより、ハンマー11は、図5(a)に示すように、支軸14を中心として反時計方向に回動する。またこの場合、同図に示すように、ハンマー11(ハンマー本体部13)が発音体21を打つ直前に、ハンマー11のアーム12の当接部16が発音体21側のストッパ27に下方から当接する。
【0038】
そして、図5(b)に示すように、鍵9を最下位まで押し下げ、鍵9の前端下面が筬8の前端上面に当接したときには、ハンマー11は、アーム12の当接部16でストッパ27を押圧しながらさらに回動し、ハンマー本体部13を介して発音体21を前方から打つ。より具体的には、ハンマー本体部13は、軟質部13aを介して、発音体21に衝突する。この場合、ハンマー本体部13が発音体21に接触する時間を比較的長く確保でき、それにより、その発音体21から良好な音色の音を発生させることができる。
【0039】
なお、ハンマー11が上記のように反時計方向に回動して発音体21を打った後、その反動で一旦、時計方向に回動し、再度、反時計方向に回動することがある。この場合、前述したように、発音体21側のストッパ27は、ハンマー11の当接部16がストッパ27に最初に当接したときにのみ、ハンマー本体部13が発音体21に衝突するのを許容するので、それ以降、ハンマー11の当接部16がストッパ27に当接することで、ハンマー本体部13が発音体21を再度打つことはない。すなわち、ハンマー11が発音体21を1度打った後にさらに打つようないわゆる2度打ちが防止される。
【0040】
その後、鍵9の押し下げを解除すると、鍵9の後端部にハンマー11の重さによる荷重が作用する。これにより、その鍵9は、図4(a)に示す元の離鍵状態に、迅速に戻る。
【0041】
以上詳述したように、本実施形態によれば、押鍵時にハンマー11で打たれる発音体21が、上下方向に延びるように設けられているので、従来のグランド型の玩具ピアノにおいて前後方向に水平に延びる発音体と異なり、玩具ピアノ1の奥行き寸法を大きくすることがない。また、各ハンマー11は、対応する鍵9の後端部のハンマー連結部10に回動自在にかつ垂下した状態に設けられ、押鍵時に後方に回動することによって、対応する発音体21を前方から打つので、鍵9に対応する音階の音を適切に発生させることができるとともに、十分な音量を得ることができる。このように、本実施形態によれば、奥行き寸法が短く、全体としてコンパクトに構成することができるアップライト型に適した玩具ピアノ1の発音装置4を得ることができる。
【0042】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。実施形態では、ハンマー11を鍵9の後端部に回動自在にかつ垂下した状態に設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばハンマー11を鍵9の後端部の上側に配置し、押鍵時に後方に回動するように構成することも可能である。また、ハンマー11の構成材料についてはポリプロピレンを、発音体21の構成材料についてはアルミを例示したが、これらの構成材料については、それぞれ種々の合成樹脂及び金属を用いることが可能であり、また他の材料を採用することも可能である。
【0043】
また、実施形態で示した玩具ピアノ1における筬8、鍵9、ハンマー11及び発音体21の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 玩具ピアノ
3 鍵盤
4 発音装置
8 筬
8a 鍵支持レール
8d ストッパ(前ストッパ)
9 鍵
10 ハンマー連結部
11 ハンマー
12 アーム
13 ハンマー本体部
14 支軸
15 係止部
16 当接部
21 発音体
27 ストッパ(後ろストッパ)
図1
図2
図3
図4
図5