(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中間孔部の連通孔には前記小孔径部の複数の連通孔が繋がり、前記大孔径部の連通孔には前記中間孔部の複数の連通孔が繋がっていることを特徴とする請求項1記載の微粒子捕捉用ろ過膜。
走査型電子顕微鏡観察による断面のSEM画像において、前記小孔径部中の連通孔の存在割合が10〜60%であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の微粒子捕捉用ろ過膜。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜
図5を参照して、本発明の微粒子捕捉用ろ過膜及びその製造方法について説明する。
図1は、
図2中の符号40で示す点線で囲んだ部分の拡大図であり、ろ過膜の一方の表面近傍の拡大図である。
図2は、本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の形態例の模式図であり、ろ過膜の表面に対して垂直に切ったときの端面図である。
図3は、
図2中の符号39で示す点線で囲んだ部分の拡大図であり、ろ過膜の他方の表面近傍の拡大図である。
図4は、陽極酸化工程を示す概念図である。
図5は、アルミニウム材が陽極酸化される様子を示す模式図であり、ろ過膜の表面に対して垂直に切ったときの端面図である。
【0015】
図1〜
図3に示すように、微粒子捕捉用ろ過膜1は、平均孔径が4〜20nmの連通孔が形成されている小孔径部2と、径が小孔径部の連通孔の径より大きい連通孔が形成されている中間孔部3と、径が中間孔部3の連通孔より大きい連通孔が形成されている大孔径部4と、を有する。小径孔部2、中間孔部3及び大孔径部4の合計の厚み、すなわち、微粒子捕捉用ろ過膜1の総膜厚は、50μm以下である。なお、微粒子捕捉用ろ過膜1の小孔径部2、中間孔部3及び大孔径部4には、
図1及び
図3に示すように連通孔が形成されているが、
図2では、作図の都合上、連通孔を記載せずに、小孔径部2、中間孔部3及び大孔径部の存在位置のみを斜線で示した。また、
図2に斜線で示されている部分は、微粒子捕捉用ろ過膜1の小孔径部2、中間孔部3及び大孔径部4の一部であり、実際には、
図2の斜線部分の左右いずれの方向にも、小孔径部2、中間孔部3及び大孔径部4が連続している。
【0016】
小孔径部2は、微粒子捕捉用ろ過膜1の一方の表面5側に形成されており、ろ過膜の一方の表面5に、小孔径部2の連通孔8の開口7が開口している。大孔径部4は、微粒子捕捉用ろ過膜1の他方の表面6側に形成されており、ろ過膜の一方の表面6に、大孔径部4の連通孔10の開口11が開口している。中間孔部3は、小孔径部2と大孔径部4との間に形成されており、中間孔部3の連通孔9に、小孔径部2の連通孔8が繋がり、且つ、中間孔部3の連通孔9は、大孔径部4の連通孔10に繋がっている。そのため、小孔径部2の連通孔8、中間孔部3の連通孔9及び大孔径部4の連通孔10は、微粒子捕捉用ろ過膜1の一方の表面5から他方の表面6までの連続した連通孔を形成している。
【0017】
中間孔部3の連通孔9には小孔径部2の複数の連通孔8が繋がっており、また、大孔径部4の連通孔10には中間孔部3の複数の連通孔9が繋がっている。
【0018】
微粒子捕捉用ろ過膜1の骨格部は、アルミニウム材を陽極酸化し、次いで、アルミニウム材から陽極酸化部分を剥離し、次いで、表面をエッチング処理し、次いで、焼成することにより得られるものなので、酸化アルミニウムで構成されている。すなわち、小孔径部2の連通孔8、中間孔部3の連通孔9及び大孔径部4の連通孔10は、酸化アルミニウムの壁12a、12b、12cにより形成されている。
【0019】
そして、超純水等の被処理水21が、微粒子捕捉用ろ過膜1の一方の表面5側からろ過膜内に供給され、ろ過膜内の連通孔を通過して、微粒子捕捉用ろ過膜1の他方の表面6側から、処理水22として、ろ過膜外へ排出される。このとき、超純水等の被処理水21内の微粒子が、微粒子捕捉用ろ過膜1の一方の表面5上に捕捉される。
【0020】
このような微粒子捕捉用ろ過膜1の連通孔は、
図4に示すような、陽極酸化により形成される。陽極酸化は、電解液25に、アルミニウム材23と、アルミニウム、銅、ニッケル、白金等の材質からなる対極材24とを浸漬し、アルミニウム材23から対電極材24に直流電流が流れるように、直流電源26を印加することにより行われる。
【0021】
この微粒子捕捉用ろ過膜1の製造における陽極酸化は、アルミニウム材23に対して、大孔径部用の連通孔101を形成するための陽極酸化(
図5(A))と、中間孔部用の連通孔91を形成するための陽極酸化(
図5(B))と、小孔径部用の連通孔81を形成するための陽極酸化(
図5(C))の3段階に分けて行われる。なお、大孔径部用の連通孔101、中間孔部用の連通孔91及び小孔径部用の連通孔81は、焼成までを経て、それぞれ、微粒子捕捉用ろ過膜1の大孔径部4の連通孔10、中間孔部3の連通孔9及び小孔径部2の連通孔8となる連通孔である。
【0022】
先ず、
図5(A)に示す大孔径部用の連通孔101を形成するための陽極酸化では、陽極酸化により、アルミニウム材23の表面から、大孔径部用の連通孔101を形成させて、陽極酸化アルミニウム材(1)31を得る。次いで、
図5(B)に示す中間孔部用の連通孔91を形成するための陽極酸化では、陽極酸化により、陽極酸化アルミニウム材(1)31に形成された連通孔101の端部から中間孔部用の連通孔91を形成させて、陽極酸化アルミニウム材(2)32を得る。次いで、
図5(C)に示す小孔径部用の連通孔81を形成するための陽極酸化では、陽極酸化により、陽極酸化アルミニウム材(2)32に形成された連通孔91の端部から小孔径部用の連通孔81を形成させて、陽極酸化アルミニウム材(3)33を得る。なお、連通孔101と、連通孔91と、連通孔81の作り分けは、後述するように、印加する電圧、通電する電流、印加時間、電解液の種類等の陽極酸化の条件を適宜選択することにより行われる。そして、
図5中、符号401で示す部分、符号301で示す部分及び符号201で示す部分は、焼成までを経て、それぞれ、微粒子捕捉用ろ過膜1の大孔径部4、中間孔部3及び小孔径部2となる部分であり、それぞれ、微粒子捕捉用ろ過膜1の大孔径部4に対応する部分、中間孔部3に対応する部分及び小孔径部2に対応する部分である。
【0023】
上記のような3段階の陽極酸化を行った後、得られる陽極酸化アルミニウム材(3)33のアルミニウム材部分35から陽極酸化部分34を剥離させ、次いで、得られる陽極酸化部分34の表面をエッチング処理して、
図5(D)に示す陽極酸化部分34を得る。
【0024】
次いで、エッチング処理を行い得られた陽極酸化部分34を、800〜1200℃で焼成することにより、微粒子捕捉用ろ過膜1を得る。
【0025】
このように、微粒子捕捉用ろ過膜1は、アルミニウム材の陽極酸化により連通孔を形成させて得られる微粒子捕捉用ろ過膜である。
【0026】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜は、アルミニウム材の陽極酸化により連通孔を形成させて得られる微粒子捕捉用ろ過膜であって、
ろ過膜の一方の面に開口する連通孔が形成されている小孔径部と、
該小孔径部の連通孔が繋がり且つ径が該小孔径部の連通孔の径より大きい連通孔が形成されている中間孔部と、
該中間孔部の連通孔が繋がり、径が該中間孔部の連通孔の径より大きく、且つ、ろ過膜の他方の面に開口する連通孔が形成されている大孔径部と、
を有し、
該小孔径部には、ろ過膜の一方の表面から少なくとも400nmの位置まで、孔径の平均が4〜20nmの連通孔が形成されており、
ろ過膜の総膜厚が50μm以下であること、
を特徴とする微粒子捕捉用ろ過膜である。
【0027】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜に係るアルミニウム材は、本発明の微粒子捕捉用ろ過膜を製造するための原材料であり、陽極酸化される材料である。本発明の微粒子捕捉用ろ過膜に係るアルミニウム材は、アルミニウムを主とする材料であり、特に制限されないが、アルミニウム中に含まれる不純物が多いと、製造時に欠陥が生じ易くなるため、アルミニウム材の純度は、98.5質量%以上が好ましく、99.0質量%以上が特に好ましい。
【0028】
そして、本発明の微粒子捕捉用ろ過膜は、アルミニウム材の陽極酸化により連通孔を形成させて得られる微粒子捕捉用ろ過膜であり、更に詳細には、アルミニウム材を陽極酸化して連通孔を形成させ、次いで、アルミニウム材から陽極酸化部分を剥離し、次いで、陽極酸化部分を表面エッチング処理し、次いで、陽極酸化部分を焼成して得られる微粒子捕捉用ろ過膜である。本発明の微粒子捕捉用ろ過膜では、小孔径部の連通孔、中間孔部の連通孔及び大孔径部の連通孔は、先ず、印加する電圧、通電する電流、印加時間、電解液の種類等の陽極酸化の条件を選択した陽極酸化によりアルミニウム材に、順に、大孔径部用の連通孔と、中間孔部用の連通孔と、小孔径部用の連通孔とを形成させ、次いで、陽極酸化部分の剥離、陽極酸化部分のエッチング処理及び焼成を行うことにより得られる。
【0029】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜は、孔径の平均が4〜20nmである連通孔が形成されている小孔径部と、小孔径部の連通孔が繋がり且つ径が小孔径部の連通孔の径より大きい連通孔が形成されている中間孔部と、中間孔部の連通孔が繋がり且つ径が中間孔部の連通孔の径より大きい連通孔が形成されている大孔径部と、を有する。小孔径部の連通孔、中間孔部の連通孔及び大孔径部の連通孔は、微粒子捕捉用ろ過膜の一方及び他方の表面に対して略垂直方向に、つまり、ろ過膜の厚み方向に延びている。
【0030】
小孔径部は本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の一方の表面側に形成され、小孔径部の連通孔は本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の一方の表面に開口する。また、大孔径部は本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の他方の表面側に形成され、大孔径部の連通孔は本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の他方の表面に開口する。また、中間孔部は小孔径部と大孔径部との間に形成され、中間孔部の連通孔には小孔径部の連通孔が繋がり且つ中間孔部の連通孔は大孔径部の連通孔に繋がっている。そのため、本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の一方の表面から他方の表面まで、小孔径部の連通孔、中間孔部の連通孔、大孔径部の連通孔の順に、被処理水が通過することができる連続孔が形成されている。
【0031】
中間孔部の連通孔には、小孔径部の1つの連通孔のみが繋がっていても、小孔径部の複数の連通孔が繋がっていてもよい。また、大孔径部の連通孔には、中間孔部の1つの連通孔のみが繋がっていても、中間孔部の複数の連通孔が繋がっていてもよい。そして、本発明の微粒子捕捉用ろ過膜では、中間孔部の連通孔に小孔径部の複数の連通孔が繋がり、且つ、大孔径部の連通孔に中間孔部の複数の連通孔が繋がっていること、言い換えると、大孔径部の1つの連通孔の端部から、中間孔部の連通孔の複数が伸び、且つ、中間孔部の1つの連通孔の端部から、小孔径部の連通孔の複数が伸びる構造であることが、微粒子捕捉用ろ過膜の一方の表面に小孔径部の連通孔を密に設けることができ、被処理水が通水し易くなる。
【0032】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜に係る小孔径部には、孔径の平均が4〜20nm、好ましくは8〜20nm、特に好ましくは9〜15nm、より好ましくは9〜12nmの連通孔が、ろ過膜の一方の表面から少なくとも400nmの位置まで形成されている。つまり、小孔径部では、孔径の平均が4〜20nm、好ましくは8〜20nm、特に好ましくは9〜15nm、より好ましくは9〜12nmの孔が、少なくともろ過膜の一方の表面から少なくとも400nmの位置まで連続している。言い換えると、孔径の平均が4〜20nm、好ましくは8〜20nm、特に好ましくは9〜15nm、より好ましくは9〜12nmの孔が連続している小孔径部の厚みは、400nm以上である。小孔径部の連通孔の孔径の平均が上記範囲にあることにより、直接検鏡法に用いられる微粒子捕捉用ろ過膜として、優れた性能を発揮する。また、小孔径部の厚みが400nm以上であることにより、陽極酸化、剥離及びエッチングにより得られる陽極酸化部分の小孔径部の連通孔の破損が少なくなる。また、小孔径部には、孔径の平均が4〜20nm、好ましくは8〜20nm、特に好ましくは9〜15nm、より好ましくは9〜12nmの連通孔が、ろ過膜の一方の表面から1000nmの位置を超えて形成されていないことが、つまり、小孔径部の厚みが1000nm以下であることが、被処理水の通液時に、圧力損失による透過流量が低くなり過ぎない点で好ましい。小孔径部の厚みは、好ましくは400〜1000nm、特に好ましくは400〜700nmである。
【0033】
小孔径部全体の連通孔の平均孔径は、4〜20nm、好ましくは8〜20nm、特に好ましくは9〜15nm、より好ましくは9〜12nmである。小孔径部全体の連通孔の平均孔径が上記範囲にあることにより、直接検鏡法に用いられる微粒子捕捉用ろ過膜として、優れた性能を発揮する。
【0034】
本発明において、例えば、ろ過膜の一方の表面から少なくとも400nmの位置まで、孔径の平均が4〜20nmの連通孔が形成されていることの確認は、微粒子捕捉用ろ過膜を厚み方向に切った断面を走査型電子顕微鏡で観察し、得られるSEM画像に基づいて行われる。具体的な確認方法について、
図6を参照して説明する。また、本発明において、小孔径部全体の連通孔の平均孔径は、以下のようにして求められる。
図6は、微粒子捕捉用ろ過膜の表面近傍の断面の模式的なSEM画像40である。先ず、SEM画像40に、小孔径部2の部分のろ過膜の表面の位置に、ろ過膜の一方の表面に平行に直線41aを引き、次いで、直線41aのうち、各連通孔8と重なっている部分それぞれについて、それぞれ長さを測定し、それらの長さを平均し、平均値を算出して、小孔径部2のろ過膜の表面の位置の連通孔の孔径の平均を求める。次いで、小孔径部2の部分の中間孔部3の連通孔9に繋がっている位置近傍に、ろ過膜の一方の表面に平行に直線41bを引き、次いで、直線41bのうち、各連通孔8と重なっている部分それぞれについて、それぞれ長さを測定し、それらの長さを平均し、平均値を算出して、中間孔部3の連通孔9に繋がっている位置近傍の連通孔の孔径の平均を求める。次いで、ろ過膜の表面と中間孔部3の連通孔9に繋がっている位置近傍との中間の位置近傍に、ろ過膜の一方の表面に平行に直線41cを引き、次いで、直線41cのうち、各連通孔8と重なっている部分それぞれについて、それぞれ長さを測定し、それらの長さを平均し、平均値を算出して、小孔径部2のろ過膜の表面と中間孔部3の連通孔に繋がっている位置近傍との中間位置近傍の連通孔の孔径の平均を求める。そして、小孔径部2のろ過膜の表面の位置の連通孔の孔径の平均と、小孔径部2の中間孔部3の連通孔9に繋がっている位置近傍の連通孔の孔径の平均と、小孔径部2のろ過膜の表面と中間孔部3の連通孔9に繋がっている位置近傍との中間位置近傍の連通孔の孔径の平均のいずれもが、4〜20nmの範囲にあれば、ろ過膜の一方の表面から中間孔部3の連通孔9に繋がっている位置近傍の位置まで、孔径の平均が4〜20nmの連通孔が形成されていると判断される。そして、直線41aから直線41bまでの距離が400nm以上あれば、ろ過膜の一方の表面から少なくとも400nmの位置まで、孔径の平均が4〜20nmの連通孔が形成されていると判断される。また、直線41aと直線41bとで区切られている部分に存在している連通孔8の面積の合計(合計面積A)、直線41aと直線41bとで区切られている部分に存在している連通孔8の数(連通孔数B)、及び直線41aと直線41bの距離(距離C)を測定する。そして、「小孔径部全体の連通孔の平均孔径=(A/(B×C))」の式にて計算される値が、小孔径部全体の連通孔の平均孔径である。
【0035】
小孔径部の連通孔の孔径分布における相対標準偏差は、好ましくは40%以下、特に好ましくは35%以下である。小孔径部の連通孔の孔径分布における相対標準偏差が上記範囲にあることにより、目的とする粒子径の微粒子を的確に捕捉し易くなる点で好ましい。
【0036】
なお、本発明において、小孔径部の連通孔の孔径分布における相対標準偏差は、以下のように、微粒子捕捉用ろ過膜を厚み方向に切った断面を走査型電子顕微鏡で観察し、得られるSEM画像に基づいて求められる。具体的な方法について、
図6を参照して説明する。先ず、
図6に示すSEM画像40に、ろ過膜の一方の表面に平行に、小孔径部2の部分のろ過膜の表面の位置に直線41aを、中間孔部3の連通孔9に繋がっている位置近傍に直線41bを、ろ過膜の表面と中間孔部3の連通孔9に繋がっている位置近傍との中間位置近傍に直線41cを引き、次いで、直線41a、41b及び41cのうち、各連通孔8と重なっている部分それぞれについて、それぞれ長さを測定する。次いで、それらの測定値の平均値と標準偏差から、相対標準偏差を算出する。
【0037】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の一方の表面における小孔径部の連通孔の開口率は、好ましくは10〜50%、特に好ましくは15〜50%である。微粒子捕捉用ろ過膜の一方の表面における小孔径部の連通孔の開口率が上記範囲にあることにより、より多くの透過水量が得られ、また、耐圧性が維持されることから破損が少なくなる点で好ましい。
【0038】
本発明において、微粒子捕捉用ろ過膜の一方の表面における小孔径部の連通孔の開口率は、以下のように、微粒子捕捉用ろ過膜の小孔径部の連通孔が開口している側の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、得られるSEM画像に基づいて求められる。先ず、
図7に示すSEM画像中の小孔径部の連通孔の開口7の総面積を測定する。次いで、測定視野の面積に対する開口7の総面積の割合を計算し、その値を微粒子捕捉用ろ過膜の一方の表面における小孔径部の連通孔の開口率とする。なお、
図7は、微粒子捕捉用ろ過膜の一方の表面のSEM画像の模式図である。
【0039】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜では、走査型電子顕微鏡観察による断面のSEM画像における小孔径部中の連通孔の存在割合(面積割合=((連通孔の面積/小孔径部の面積)×100)は、好ましくは10〜60%、特に好ましくは20〜50%である。微粒子捕捉用ろ過膜の断面のSEM画像における小孔径部中の連通孔の存在割合が上記範囲にあることにより、透過水量が多くなる点で好ましい。
【0040】
本発明において、微粒子捕捉用ろ過膜の断面のSEM画像における小孔径部中の連通孔の存在割合(面積割合)は、以下のようにして求められる。先ず、
図8に示すSEM画像40に、ろ過膜の一方の表面の位置に、ろ過膜の一方の表面と平行に直線41dを、中間孔部3の連通孔に繋がっている位置近傍に直線41eを引き、直線41dと直線41eに挟まれている部分の小孔径部2の面積、すなわち、長方形42a、42b、42c、42dの面積を測定する。次いで、長方形42a、42b、42c、42d内に存在している小孔径部2の連通孔8の総面積を求める。次いで、長方形42a、42b、42c、42dの面積に対する長方形42a、42b、42c、42d内に存在している小孔径部2の連通孔8の総面積の割合を計算し、その値を微粒子捕捉用ろ過膜の断面のSEM画像における小孔径部中の連通孔の存在割合(面積割合)とする。なお、
図8は、
図6と同じ微粒子捕捉用ろ過膜の表面近傍の断面の模式的なSEM画像40である。
【0041】
中間孔部には、小孔径部の連通孔が繋がっている位置近傍から大孔径部の連通孔に繋がる位置近傍まで、同程度の孔径の連通孔が形成されていても、あるいは、小孔径部の連通孔が繋がっている位置近傍から大孔径部の連通孔に繋がる位置近傍になるに従って、孔径が大きくなる連通孔が形成されていてもよい。そして、中間孔部の連通孔の孔径は、好ましくは10〜1000nm、特に好ましくは20〜100nmである。また、中間孔部の厚みは、好ましくは50〜1000nm、特に好ましくは50〜800nmである。
【0042】
本発明において、例えば、中間孔部の孔径が10〜1000nmであることの確認は、以下に示すように、微粒子捕捉用ろ過膜を厚み方向に切った断面を走査型電子顕微鏡で観察し、得られるSEM画像に基づいて行われる。具体的な確認方法について、
図9を参照して説明する。先ず、
図9中のSEM画像40に、ろ過膜の一方の表面に平行に、中間孔部3の部分の小孔径部2の連通孔8が繋がっている位置近傍に直線43aを、中間後部3の部分の大孔径部4の連通孔10に繋がっている位置近傍に直線43bを、小孔径部2の連通孔8が繋がっている位置近傍と大孔径部4の連通孔10に繋がっている位置近傍との中間位置近傍に直線43cを引き、次いで、直線43a、43b及び43cのうち、各連通孔9と重なっている部分それぞれについて、それぞれ長さを測定する。そして、それらの長さのいずれもが、10〜1000nmの範囲にあれば、中間孔部の孔径が10〜1000nmであると判断される。なお、
図9は、
図6と同じ微粒子捕捉用ろ過膜の表面近傍の断面の模式的なSEM画像40である。
【0043】
大孔径部には、中間孔部の連通孔が繋がっている位置近傍からろ過膜の他方の表面まで、同程度の孔径の連通孔が形成されていても、あるいは、中間孔部の連通孔が繋がっている位置近傍からろ過膜の他方の表面になるに従って、孔径が大きくなる連通孔が形成されていてもよい。そして、大孔径部の連通孔の孔径は、好ましくは20〜2000nm、特に好ましくは30〜2000nmである。
【0044】
本発明において、例えば、大孔径部の連通孔の孔径が20〜2000nmであることの確認は、以下に示すように、微粒子捕捉用ろ過膜を厚み方向に切った断面を走査型電子顕微鏡で観察し、得られるSEM画像に基づいて行われる。先ず、大孔径部の中間孔部の連通孔に繋がっている位置からろ過膜の他方の表面の位置までが測定視野の収まっているSEM画像を得る。次いで、そのSEM画像中に、ろ過膜の他方の表面に平行に、ろ過膜の他方の表面の位置に直線Xを、大孔径部4の部分の中間孔部の連通孔が繋がっている位置近傍に直線Yを、ろ過膜の他方の表面と大孔径部4の部分の中間孔部の連通孔が繋がっている位置近傍との中間位置近傍に直線Zを引き、次いで、直線X、Y及びZのうち、大孔径部の各連通孔と重なっている部分それぞれについて、それぞれ長さを測定する。そして、それらの長さのいずれもが、20〜2000nmの範囲にあれば、大孔径部の孔径が20〜2000nmであると判断される。
【0045】
大孔径部全体の連通孔の平均孔径は、好ましくは30〜1000nm、特に好ましくは50〜1000nmである。
【0046】
本発明において、大孔径部全体の連通孔の平均孔径は、以下に示すように、微粒子捕捉用ろ過膜を厚み方向に切った断面を走査型電子顕微鏡で観察し、得られるSEM画像に基づいて行われる。なお、以下に示す大孔径部全体の連通孔の平均孔径の求め方は、測定対象が異なるが、上述した小孔径部全体の連通孔の平均孔径の求め方と同様である。先ず、大孔径部の中間孔部の連通孔に繋がっている位置からろ過膜の他方の表面の位置までが測定視野の収まっているSEM画像を得る。次いで、そのSEM画像に、ろ過膜の他方の表面に平行に、大孔径部の部分のろ過膜の表面の位置に直線Xを、大孔径部の部分の中間孔部の連通孔が繋がっている位置近傍に直線Yを引く。次いで、直線Xと直線Yとで区切られている部分に存在している連通孔の面積の合計(合計面積A)、直線Xと直線Yとで区切られている部分に存在している連通孔の数(連通孔数B)、及び直線Xと直線Yの距離(距離C)を測定する。そして、「大孔径部全体の連通孔の平均孔径=(A/(B×C))」の式にて計算される値が、大孔径部全体の連通孔の平均孔径である。
【0047】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜において、小孔径部全体の連通孔の平均孔径に対する大孔径部全体の連通孔の平均孔径の比(大孔径部全体の連通孔の平均孔径/小孔径部全体の連通孔の平均孔径)は、好ましくは3〜100、特に好ましくは4〜50、さらに好ましくは4〜20である。小孔径部全体の連通孔の平均孔径に対する大孔径部全体の連通孔の平均孔径の比が上記範囲にあることにより、応力に強く破損し難くなる点で好ましい。
【0048】
大孔径部の厚みは、好ましくは10〜50μm、特に好ましくは20〜40μmである。
【0049】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の総膜厚は、50μm以下、好ましくは20〜50μm、特に好ましくは20〜35μmである。微粒子捕捉用ろ過膜の総膜厚が上記範囲にあることにより、陽極酸化、剥離及びエッチング処理により得られる陽極酸化部分を焼成するときに、陽極酸化部分の破損が少なくなる。
【0050】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜は、アルミニウム材の陽極酸化により連通孔を形成させて得られる微粒子捕捉用ろ過膜であり、更に詳細には、アルミニウム材を陽極酸化して連通孔を形成させ、次いで、アルミニウム材から陽極酸化部分を剥離し、次いで、陽極酸化部分を表面エッチング処理し、次いで、陽極酸化部分を焼成して得られる微粒子捕捉用ろ過膜であるので、本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の骨格部、言い換えると、小孔径部の連通孔、中間孔部の連通孔及び大孔径部の連通孔の壁は、酸化アルミニウムで形成されている。
【0051】
また、本発明の微粒子捕捉用ろ過膜中の中間孔部の連通孔及び大孔径部の連通孔を、ランダムに抽出して、それらの孔径を比べると、中間孔部の連通孔には、大孔径部の連通孔よりも孔径が大きい部分があるものが存在する。一方、本発明の微粒子捕捉用ろ過膜中の一方の表面側から他方の表面側までの連続流路を形成している一連の大孔径部の連通孔と中間孔部の連通孔と小孔径部の連通孔で、それらの孔径を比べると、本発明の微粒子捕捉用ろ過膜は、アルミニウム材の陽極酸化により連通孔を形成させて得られる微粒子捕捉用ろ過膜であるので、1つの大孔径部の連通孔には、それより孔径が小さい中間孔部の連通孔が繋がっており、その中間孔部の連通孔には、それよりも孔径が小さい小孔径部の連通孔が繋がっている。
【0052】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜は、半導体製造に用いられる超純水、溶剤、薬液等の直接検鏡法による微粒子評価のための微粒子捕捉膜として、好適に用いられる。また、本発明の微粒子捕捉用ろ過膜は、気体やエアロゾル、その他の流体中の微粒子の捕捉や、タンパク質、DNAの分離や捕捉にも用いられる。
【0053】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜は、以下の本発明の微粒子測定用ろ過膜の製造方法により、好適に製造される。
【0054】
本発明の微粒子測定用ろ過膜の製造方法は、アルミニウム材を陽極酸化することにより、該アルミニウム材に大孔径部用の連通孔を形成させて、陽極酸化アルミニウム材(1)を得る第一陽極酸化工程と、
該陽極酸化アルミニウム材(1)を陽極酸化することにより、該陽極酸化アルミニウム材(1)に、該大孔径部用の連通孔に繋がり且つ径が該大孔径部用の連通孔より小さい中間孔部用の連通孔を形成させて、陽極酸化アルミニウム材(2)を得る第二陽極酸化工程と、
該陽極酸化アルミニウム材(2)を陽極酸化することにより、該陽極酸化アルミニウム材(2)に、該中間孔部用の連通孔に繋がり且つ径が該中間孔部用の連通孔より小さい小孔径部用の連通孔を形成させて、陽極酸化アルミニウム材(3)を得る第三陽極酸化工程と、
該陽極酸化アルミニウム材(3)から陽極酸化された部分を剥離し、次いで、剥離した部分をエッチング処理して、陽極酸化部分を得る剥離及びエッチング工程工程と、
該陽極酸化部分を800〜1200℃で焼成することにより、微粒子捕捉用ろ過膜を得る焼成工程と、
を有し、
該第三陽極酸化工程で、孔径の平均が4〜20nmの連通孔を、厚さ方向に400nm以上形成させること、
及び該第一陽極酸化工程から該第三陽極酸化工程までで、陽極酸化により連通孔を形成させる部分の全厚みが50μm以下であること、
を特徴とする微粒子捕捉用ろ過膜の製造方法である。
【0055】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の製造方法に係る第一陽極酸化工程は、アルミニウム材を陽極酸化することにより、アルミニウム材に大孔径部用の連通孔を形成させて、陽極酸化アルミニウム材(1)を得る工程である。なお、大孔径部用の連通孔とは、焼成工程までを経て得られる微粒子捕捉用ろ過膜中の大孔径部の連通孔になる連通孔のことである。
【0056】
第一陽極酸化工程に係るアルミニウム材は、第一陽極酸化工程で陽極酸化の対象となる材料であり、アルミニウムを主とする材料であり、特に制限されないが、アルミニウム中に含まれる不純物が多いと、製造時に欠陥が生じ易くなるため、アルミニウム材の純度は、98.5質量%以上が好ましく、99.0質量%以上が特に好ましい。
【0057】
また、第一陽極酸化工程において、陽極酸化されるアルミニウム材は、表面が予め脱脂処理及び平滑化処理がされていることが好ましい。脱脂処理を行う方法は、アルミニウム材の表面に存在する有機物や油脂を除去することができる方法であれば、特に制限されず、例えば、アルミニウム材を、アセトン、エタノール、メタノール、IPA(イソプロピルアルコール)等の有機溶剤に浸漬し、超音波を照射する方法、加熱(アニール処理)する方法等が挙げられる。平滑化処理を行う方法としては、アルミニウム材の表面を平滑にすることができる方法であれば、特に制限されず、例えば、電解研磨、化学研磨、機械研磨等が挙げられる。電解研磨の電解液としては、例えば、リン酸や過塩素酸含有エタノールなどが挙げられる。また、化学研磨としては、リン酸と硝酸の混酸を用いる方法やリン酸と硫酸の混酸を用いる方法などが挙げられる。
【0058】
第一陽極酸化工程において、アルミニウム材を陽極酸化するときの陽極酸化条件は、得ようとする微粒子捕捉用ろ過膜中の大孔径部の連通孔に応じて、適宜選択され、目的とする大孔径部の連通孔が形成されるように、印加する電圧、通電する電流、印加時間、電解液の種類等が適宜選択される。第一陽極酸化工程における陽極酸化条件としては、例えば、0.5〜30質量%濃度のシュウ酸水溶液、リン酸水溶液、クロム酸水溶液、又はそれらの混酸水溶液等の電解液中、50〜200Vの条件が挙げられる。このとき、一定電圧で行う方式であっても、一定電流で行う方式であっても、電圧及び電流の両方を変化させる方式であってもよい。
【0059】
第一陽極酸化工程において、陽極酸化によりアルミニウム材に形成させる大孔径部用の連通孔としては、大孔径部用の連通孔の孔径が、好ましくは20〜2000nm、特に好ましくは30〜2000nmであり、大孔径部に対応する部分全体の連通孔の平均孔径が、好ましくは30〜1000nm、特に好ましくは50〜1000nmであり、大孔径部に対応する部分の厚みが、好ましくは10〜50μm、特に好ましくは20〜40μmである。
【0060】
そして、第一陽極酸化工程を行うことにより、アルミニウム材の表面から厚み方向に連通孔が形成されて、アルミニウム材に、アルミニウム材の表面から厚み方向に延びる大孔径部用の連通孔が形成され、陽極酸化アルミニウム材(1)が得られる。
【0061】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の製造方法に係る第二陽極酸化工程は、陽極酸化アルミニウム材(1)を陽極酸化することにより、陽極酸化アルミニウム材(1)に中間孔部用の連通孔を形成させて、陽極酸化アルミニウム材(2)を得る工程である。なお、中間孔部用の連通孔とは、焼成工程までを経て得られる微粒子捕捉用ろ過膜中の中間孔部の連通孔になる連通孔のことである。
【0062】
第二陽極酸化工程において、陽極酸化アルミニウム材(1)を陽極酸化するときの陽極酸化条件は、得ようとする微粒子捕捉用ろ過膜中の中間孔部の連通孔に応じて、適宜選択され、目的とする中間孔部の連通孔が形成されるように、印加する電圧、通電する電流、印加時間、電解液の種類等が適宜選択される。第二陽極酸化工程における陽極酸化条件としては、大孔径部用の連通孔より径が小さい連通孔が形成される条件であればよく、例えば、0.5〜30質量%濃度のシュウ酸水溶液、リン酸水溶液、クロム酸水溶液、又はそれらの混酸水溶液等の電解液中、50〜200V、好ましくは第一陽極酸化条件の電圧よりも低い電圧との条件が挙げられる。このとき、一定電圧で行う方式であっても、一定電流で行う方式であっても、電圧及び電流の両方を変化させる方式であってもよい。
【0063】
第二陽極酸化工程において、陽極酸化により陽極酸化アルミニウム材(1)に形成させる中間孔部用の連通孔としては、中間孔部用の連通孔の孔径が、好ましくは10〜1000nm、特に好ましくは20〜100nmであり、中間孔部に対応する部分の厚みが、好ましくは50〜1000nm、特に好ましくは50〜800nmである。
【0064】
そして、第二陽極酸化工程を行うことにより、陽極酸化アルミニウム材(1)内の大孔径部用の連通孔の端部から厚み方向に、大孔径部用の連通孔より孔径が小さい連通孔が形成されて、陽極酸化アルミニウム材(1)に、陽極酸化アルミニウム材(1)の大孔径部用の連通孔の端部から厚み方向に延びる中間孔部用の連通孔が形成され、陽極酸化アルミニウム材(2)が得られる。
【0065】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の製造方法に係る第三陽極酸化工程は、陽極酸化アルミニウム材(2)を陽極酸化することにより、陽極酸化アルミニウム材(2)に小孔径部用の連通孔を形成させて、陽極酸化アルミニウム材(3)を得る工程である。なお、小孔径部用の連通孔とは、焼成工程までを経て得られる微粒子捕捉用ろ過膜中の小孔径部の連通孔になる連通孔のことである。
【0066】
第三陽極酸化工程において、陽極酸化アルミニウム材(2)を陽極酸化するときの陽極酸化条件は、得ようとする微粒子捕捉用ろ過膜中の小孔径部の連通孔に応じて、適宜選択され、目的とする小孔径部の連通孔が形成されるように、印加する電圧、通電する電流、印加時間、電解液の種類等が適宜選択される。第三陽極酸化工程における陽極酸化条件としては、孔径の平均が4〜20nm、好ましくは8〜20nm、特に好ましくは9〜15nm、より好ましくは9〜12nmであり、厚さ方向に400nm以上、好ましくは400〜1000nm、特に好ましくは400〜700nm連通する連通孔が形成される条件であればよく、例えば、硫酸水溶液電解液中、5〜30Vの条件が挙げられる。このとき、一定電圧で行う方式であっても、一定電流で行う方式であっても、電圧及び電流の両方を変化させる方式であってもよい。
【0067】
第三陽極酸化工程では、陽極酸化により陽極酸化アルミニウム材(2)に、孔径の平均が4〜20nm、好ましくは8〜20nm、特に好ましくは9〜15nm、より好ましくは9〜12nmの小孔径部用の連通孔を、厚さ方向に400nm以上、好ましくは400〜1000nm、特に好ましくは400〜700nm形成させる。小孔径部用の連通孔の孔径の平均が上記範囲にあることにより、直接検鏡法に用いられる微粒子捕捉用ろ過膜として、優れた性能を発揮する微粒子捕捉用ろ過膜が得られる。また、小孔径部に対応する部分の厚みが400nm以上であることにより、剥離工程を行い得られる陽極酸化部分の小孔径部に対応する部分の連通孔の破損が少なくなる。また、小孔径部に対応する部分の厚みが1000nm以下であることが、被処理水の通液時に、圧力損失による透過流量が低くなり過ぎない微粒子捕捉用ろ過膜が得られる点で好ましい。
【0068】
第三陽極酸化工程において、陽極酸化により陽極酸化アルミニウム材(2)に形成させる小孔径部用の連通孔としては、小孔径部に対応する部分全体の連通孔の平均孔径が、4〜20nm、好ましくは8〜20nm、特に好ましくは9〜15nm、より好ましくは9〜12nmであり、小孔径部用の連通孔の孔径分布における相対標準偏差は、好ましくは40%以下、特に好ましくは35%以下であり、断面のSEM画像における小孔径部に対応する部分中の連通孔の存在割合(面積割合)は、好ましくは10〜60%、特に好ましくは20〜50%である。
【0069】
そして、第三陽極酸化工程を行うことにより、陽極酸化アルミニウム材(2)内の中間孔部用の連通孔の端部から厚み方向に、中間孔部用の連通孔より孔径が小さい連通孔が形成されて、陽極酸化アルミニウム材(2)に、陽極酸化アルミニウム材(2)の中間孔部用の連通孔の端部から厚み方向に延びる小孔径部用の連通孔が形成され、陽極酸化アルミニウム材(3)が得られる。
【0070】
第一陽極酸化工程、第二陽極酸化工程及び第三陽極酸化工程では、得ようとする微粒子捕捉用ろ過膜中の小孔径部、中間孔部及び大孔径部の各連通孔の形状に応じて、目的とする形状の小孔径部、中間孔部及び大孔径部の各連通孔が形成されるように、第一陽極酸化工程、第二陽極酸化工程及び第三陽極酸化工程での各陽極酸化条件、つまり、印加する電圧、通電する電流、印加時間、電解液の種類等をそれぞれ調節する。
【0071】
また、第一陽極酸化工程、第二陽極酸化工程又は第一陽極酸化工程と第二陽極酸化工程の両方では、陽極酸化を行った後の陽極酸化アルミニウム材を、リン酸水溶液、クロム酸水溶液、シュウ酸水溶液、硫酸水溶液、又はそれらの混酸水溶液、水酸化ナトリウム水溶液などの溶液中に浸漬させ、大孔径部又は中孔径部に相当する部分の連通孔の孔径を拡大する処理を行うこともできる。
【0072】
また、第一陽極酸化工程から第三陽極酸化工程までで、連通孔が形成されている部分の全厚みが、50μm以下、好ましくは20〜50μm、特に好ましくは20〜35μmとなるように、第一陽極酸化工程、第二陽極酸化工程及び第三陽極酸化工程での各陽極酸化条件を調節する。第一陽極酸化工程から第三陽極酸化工程までで、連通孔が形成されている部分の全厚みが上記範囲にあることにより、焼成工程で陽極酸化部分を焼成するときに、陽極酸化部分の破損が少なくなる。
【0073】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の製造方法に係る剥離及びエッチング工程は、陽極酸化アルミニウム材(3)から陽極酸化された部分を剥離し、次いで、剥離された部分の表面をエッチング処理して、陽極酸化部分を得る工程である。
【0074】
剥離及びエッチング工程において、陽極酸化アルミニウム材(3)から陽極酸化された部分を剥離する方法としては、特に制限されないが、例えば、溶液浸漬、逆電流法、電解研磨等が挙げられる。溶液浸漬は、陽極酸化アルミニウム材(3)を硫酸銅水溶液や塩酸等に浸漬することにより行われ、剥離に長時間を要するものの、物理的なダメージが少ない方法である。逆電流法は、陽極酸化時の電流を逆に流すことにより行われ、速やかに陽極酸化アルミニウム材(3)から陽極酸化部分を剥離することができる方法である。電解研磨は、陽極酸化アルミニウム材(3)を、過塩素酸含有エタノール溶液、過塩素酸含有ジアセトン溶液中で、電圧印加することにより行われ、速やかに陽極酸化アルミニウム材(3)から陽極酸化部分を剥離することができる方法である。
【0075】
剥離及びエッチング工程において、剥離された陽極酸化部分の表面をエッチング処理する方法としては、特に制限されないが、例えば、シュウ酸、リン酸、クロム酸、硫酸、アルカリ水溶液などの溶液中に浸漬する方法、等が挙げられる。
【0076】
そして、エッチング処理を行うことにより、アルミニウム材から剥離された部分の表面がエッチングされて、大孔径部用の連通孔、中間孔部用の連通孔及び小孔径部用の連通孔が形成され、それらにより貫通している貫通膜である陽極酸化部分が得られる。
【0077】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の製造方法に係る焼成工程は、陽極酸化部分を焼成することにより、微粒子捕捉用ろ過膜を得る工程である。
【0078】
焼成工程において、陽極酸化部分を焼成するときの焼成温度は、800〜1200℃、好ましくは800〜1000℃である。また、焼成工程において、陽極酸化部分を焼成するときの焼成時間は、好ましくは10時間以下、特に好ましくは1〜5時間である。また、焼成工程において、陽極酸化部分を焼成するときの焼成雰囲気は、空気、酸素ガス等の酸化性雰囲気である。
【0079】
本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の連通孔は、大孔径部から小孔径部まで、陽極酸化により形成されたものなので、つまり、陽極酸化で、先ず、アルミニウム材に大孔径部用の連通孔を形成させ、次いで、その大孔径部用の連通孔の端部から中間孔部用の連通孔を形成させ、次いで、その中間孔部用の連通孔の端部から小孔径部用の連通孔を形成させるという順で、形成されたものなので、ろ過膜の一方の表面側から他方の表面側までの連通孔の全てが繋がっている。
【0080】
本発明の多孔質膜は、アルミニウム材の陽極酸化により連通孔を形成させて得られる多孔質膜であって、
多孔質膜の一方の面に開口する連通孔が形成されている小孔径部と、
該小孔径部の連通孔が繋がり且つ径が該小孔径部の連通孔の径より大きい連通孔が形成されている中間孔部と、
該中間孔部の連通孔が繋がり、径が該中間孔部の連通孔の径より大きく、且つ、多孔質膜の他方の面に開口する連通孔が形成されている大孔径部と、
を有し、
該小孔径部には、多孔質膜の一方の表面から少なくとも400nmの位置まで、孔径の平均が4〜20nmの連通孔が形成されており、
多孔質膜の総膜厚が50μm以下であること、
を特徴とする多孔質膜である。
【0081】
本発明の多孔質膜に係るアルミニウム材、陽極酸化、連通孔、小孔径部、中間孔部及び大孔径部は、前記本発明の微粒子捕捉用ろ過膜に係るアルミニウム材、陽極酸化、連通孔、小孔径部、中間孔部及び大孔径部と同様である。
【0082】
本発明の多孔質膜の用途としては、前記微粒子捕捉用ろ過膜以外に、酵素電極等で酵素を固定するための酵素担体や、炭素材料、半導体配線の鋳型や、溶媒又は溶剤を極微量ずつ添加するための添加フィルターなどが挙げられる。
【0083】
本発明の多孔質膜の製造方法は、アルミニウム材を陽極酸化することにより、該アルミニウム材に大孔径部用の連通孔を形成させて、陽極酸化アルミニウム材(1)を得る第一陽極酸化工程と、
該陽極酸化アルミニウム材(1)を陽極酸化することにより、該陽極酸化アルミニウム材(1)に、該大孔径部用の連通孔に繋がり且つ径が該大孔径部用の連通孔より小さい中間孔部用の連通孔を形成させて、陽極酸化アルミニウム材(2)を得る第二陽極酸化工程と、
該陽極酸化アルミニウム材(2)を陽極酸化することにより、該陽極酸化アルミニウム材(2)に、該中間孔部用の連通孔に繋がり且つ径が該中間孔部用の連通孔より小さい小孔径部用の連通孔を形成させて、陽極酸化アルミニウム材(3)を得る第三陽極酸化工程と、
該陽極酸化アルミニウム材(3)から陽極酸化された部分を剥離し、次いで、剥離した部分をエッチング処理して、陽極酸化部分を得る剥離及びエッチング工程と、
該陽極酸化部分を800〜1200℃で焼成することにより、多孔質膜を得る焼成工程と、
を有し、
該第三陽極酸化工程で、孔径の平均が4〜20nmの連通孔を、厚さ方向に400nm以上形成させること、
及び該第一陽極酸化工程から第三陽極酸化工程までで、陽極酸化により連通孔を形成させる部分の全厚みが50μm以下であること、
を特徴とする多孔質膜の製造方法である。
【0084】
本発明の多孔質膜の製造方法に係るアルミニウム材、陽極酸化、大孔径部用の連通孔、陽極酸化アルミニウム材(1)、第一陽極酸化工程、中間孔部用の連通孔、陽極酸化アルミニウム材(2)、第二陽極酸化工程、小孔径部用の連通孔、陽極酸化アルミニウム材(3)、第三陽極酸化工程、剥離及びエッチング工程、及び焼成工程は、前記本発明の微粒子捕捉用ろ過膜の製造方法に係るアルミニウム材、陽極酸化、大孔径部用の連通孔、陽極酸化アルミニウム材(1)、第一陽極酸化工程、中間孔部用の連通孔、陽極酸化アルミニウム材(2)、第二陽極酸化工程、小孔径部用の連通孔、陽極酸化アルミニウム材(3)、第三陽極酸化工程、剥離及びエッチング工程、及び焼成工程と同様である。
【0085】
本発明の多孔質膜の製造方法は、前記微粒子捕捉用ろ過膜の製造の他に、酵素電極等で酵素を固定するための酵素担体、炭素材料、半導体配線の鋳型、溶媒又は溶剤を極微量ずつ添加するための添加フィルターなどに用いられる多孔質膜の製造や、塗装を剥がれ難くするため表面加工して、下地材の表面に多孔質膜を形成するために用いられる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0087】
(実施例1)
・微粒子捕捉用ろ過膜の製造
<陽極酸化用のアルミニウム板材の準備>
純度98.5質量%のアルミニウム板材を5枚用意した。次いで、アルミニウム板材を、アセトン中で、30分間超音波照射し、10質量%過塩素酸含有エタノール溶液中、20V、15分間の条件で電解研磨し、陽極酸化用のアルミニウム板材を準備した。
なお、準備した陽極酸化用のアルミニウム板材のうち、1枚については剥離工程まで行い小孔径部の破損状況の観察に用い、残りの4枚については焼成工程まで行った。
<第一陽極酸化工程>
上記で得た陽極酸化用のアルミニウム板材を、1.8質量%シュウ酸水溶液を電解液とし、浴温5℃で100Vの一定電圧下で、陽極酸化を行った。
<第二陽極酸化工程>
次いで、1.8質量%シュウ酸水溶液を電解液とし、浴温5℃で電圧を徐々に低下させて、5分間陽極酸化を行った。
<第三陽極酸化工程>
次いで、20質量%硫酸水溶液中、浴温5℃で電圧9.5Vで、3分間陽極酸化を行った。
<剥離及びエッチング工程>
次いで、電解研磨にて、陽極酸化部分を剥離させた。次いで、得られた陽極酸化部分を超純水で洗浄後、20質量%硫酸水溶液に浸漬して、表面をエッチングし、貫通膜にした。次いで、超純水で洗浄した。
<焼成工程>
次いで、1000℃、大気雰囲気下で焼成を行い、微粒子捕捉用ろ過膜を得た。
【0088】
・微粒子捕捉用ろ過膜の構造の分析
得られた微粒子捕捉用ろ過膜の断面及び小孔径部側の表面を走査型電子顕微鏡にて観察し、得られるSEM画像より、構造を求めた。また、得られた断面のSEM画像を
図10に、表面のSEM画像を
図11に示す。
<小孔径部>
小孔径部の厚みは400nmであった。また、小孔径部の表面、200nm、400nm位置の孔径の平均は、それぞれ、10nm、10nm、10nmであった。また、小孔径部全体の連通孔の平均孔径は10nmであった。また、連通孔の孔径分布における相対標準偏差は30%であった。また、小孔径部の連通孔の開口の開口率は17%であった。また、小孔径部中の連通孔の存在割合は37%であった。
<中間孔部>
中間孔部の連通孔の孔径は23〜40nmであった。なお、中間孔部の連通孔の孔径は、中間孔部の厚み方向の中間位置近傍の孔径である。中間孔部の連通孔の孔径については、以下、同様である。
<大孔径部>
大孔径部の連通孔の孔径は27〜102nmであった。また、大孔径部全体の連通孔の平均孔径は58nmであった。
<ろ過膜の総膜厚>
ろ過膜の総膜厚は22μmであった。
【0089】
・剥離及びエッチング工程後の小孔径部の破損状況の観察
剥離及びエッチング工程を行った後の陽極酸化部分の小孔径部側の表面を、走査型電子顕微鏡にて観察した。次いで、得られたSEM画像から、観察視野の面積に対する破損部分の面積の割合を求めた。その結果、観察視野の面積に対する破損部分の面積の割合は、1.5%であった。
【0090】
・焼成工程での焼成成功率
焼成を行った4枚の陽極酸化部分について、それぞれ、焼成により破損しなければ焼成成功とし、焼成成功率を求めた。なお、破損とは、膜に亀裂が生じた場合、又は膜が割れた場合を指す。その結果、焼成成功率は100%であった。
【0091】
(実施例2)
第三陽極酸化工程の陽極酸化時間を5分間とすること以外は、実施例1と同様に行い微粒子捕捉用ろ過膜を得た。
【0092】
・微粒子捕捉用ろ過膜の構造の分析
<小孔径部>
小孔径部の厚みは600nmであった。また、小孔径部の表面、300nm、600nm位置の孔径の平均は、それぞれ、10nm、10nm、10nmであった。また、小孔径部全体の連通孔の平均孔径は10nmであった。また、連通孔の孔径分布における相対標準偏差は39%であった。また、小孔径部の連通孔の開口の開口率は19%であった。また、小孔径部中の連通孔の存在割合は23%であった。
<中間孔部>
中間孔部の連通孔の孔径は25〜50nmであった。
<大孔径部>
大孔径部の連通孔の孔径は40〜144nmであった。また、大孔径部全体の連通孔の平均孔径は77nmであった。
<ろ過膜の総膜厚>
ろ過膜の総膜厚は23μmであった。
【0093】
・剥離及びエッチング工程後の小孔径部の破損状況の観察
剥離及びエッチング工程を行った後の陽極酸化部分の小孔径部側の表面における、観察視野の面積に対する破損部分の面積の割合は、1%未満であった。
【0094】
(実施例3)
第三陽極酸化工程の陽極酸化時間を10分間とすること以外は、実施例1と同様に行い微粒子捕捉用ろ過膜を得た。
【0095】
・微粒子捕捉用ろ過膜の構造の分析
<小孔径部>
小孔径部の厚みは1000nmであった。また、小孔径部の表面、500nm、1000nm位置の孔径の平均は、それぞれ、14nm、14nm、14nmであった。また、小孔径部全体の連通孔の平均孔径は14nmであった。また、連通孔の孔径分布における相対標準偏差は29%であった。また、小孔径部の連通孔の開口の開口率は30%であった。また、小孔径部中の連通孔の存在割合は37%であった。
<中間孔部>
中間孔部の連通孔の孔径は28〜52nmであった。
<大孔径部>
大孔径部の連通孔の孔径は48〜135nmであった。また、大孔径部全体の連通孔の平均孔径は75nmであった。
<ろ過膜の総膜厚>
ろ過膜の総膜厚は25μmであった。
【0096】
・剥離及びエッチング工程後の小孔径部の破損状況の観察
剥離及びエッチング工程を行った後の陽極酸化部分の小孔径部側の表面における、観察視野の面積に対する破損部分の面積の割合は、1%未満であった。
【0097】
(比較例1)
第三陽極酸化工程の陽極酸化時間を2分間とすること以外は、実施例1と同様に行い微粒子捕捉用ろ過膜を得た。
【0098】
・微粒子捕捉用ろ過膜の構造の分析
<小孔径部>
小孔径部の厚みは200nmであった。また、小孔径部の表面、100nm、200nm位置の孔径の平均は、それぞれ、10nm、10nm、10nmであった。また、小孔径部全体の連通孔の平均孔径は10nmであった。また、連通孔の孔径分布における相対標準偏差は27%であった。また、小孔径部の連通孔の開口の開口率は17%であった。また、小孔径部中の連通孔の存在割合は30%であった。
<中間孔部>
中間孔部の連通孔の孔径は7〜31nmであった。
<大孔径部>
大孔径部の連通孔の孔径は21〜78nmであった。また、大孔径部全体の連通孔の平均孔径は50nmであった。
<ろ過膜の総膜厚>
ろ過膜の総膜厚は25μmであった。
【0099】
・剥離及びエッチング工程後の小孔径部の破損状況の観察
剥離及びエッチング工程を行った後の陽極酸化部分の小孔径部側の表面における、観察視野の面積に対する破損部分の面積の割合は、30%であった。
【0100】
(実施例4)
第一陽極酸化工程の陽極酸化時間を実施例1よりも長くするとすること以外は、実施例1と同様に行い微粒子捕捉用ろ過膜を得た。
【0101】
・焼成工程での焼成成功率
焼成工程での焼成成功率を求めたところ、焼成成功率は100%であった。
【0102】
・剥離工程後の陽極酸化部分の総膜厚の分析
剥離工程後の陽極酸化部分の総膜厚は40μmであった。
・微粒子捕捉用ろ過膜の構造の分析
<小孔径部>
小孔径部の厚みは400nmであった。また、小孔径部の表面、200nm、400nm位置の孔径の平均は、それぞれ、10nm、10nm、10nmであった。また、小孔径部全体の連通孔の平均孔径は10nmであった。また、連通孔の孔径分布における相対標準偏差は30%であった。また、小孔径部の連通孔の開口の開口率は20%であった。また、小孔径部中の連通孔の存在割合は36%であった。
<中間孔部>
中間孔部の連通孔の孔径は15〜55nmであった。
<大孔径部>
大孔径部の連通孔の孔径は20〜81nmであった。また、大孔径部全体の連通孔の平均孔径は50nmであった。
<ろ過膜の総膜厚>
ろ過膜の総膜厚は40μmであった。
【0103】
(実施例5)
第一陽極酸化工程の陽極酸化時間を実施例4よりも長くするとすること以外は、実施例1と同様に行い微粒子捕捉用ろ過膜を得た。
【0104】
・焼成工程での焼成成功率
焼成工程での焼成成功率を求めたところ、焼成成功率は75%であった。
【0105】
・剥離工程後の陽極酸化部分の総膜厚の分析
剥離工程後の陽極酸化部分の総膜厚は50μmであった。
・微粒子捕捉用ろ過膜の構造の分析
<小孔径部>
小孔径部の厚みは400nmであった。また、小孔径部の表面、200nm、400nm位置の孔径の平均は、それぞれ、10nm、10nm、10nmであった。また、小孔径部全体の連通孔の平均孔径は10nmであった。また、連通孔の孔径分布における相対標準偏差は37%であった。また、小孔径部の連通孔の開口の開口率は20%であった。また、小孔径部中の連通孔の存在割合は36%であった。
<中間孔部>
中間孔部の連通孔の孔径は22〜48nmであった。
<大孔径部>
大孔径部の連通孔の孔径は27〜66nmであった。また、大孔径部全体の連通孔の平均孔径は50nmであった。
<ろ過膜の総膜厚>
ろ過膜の総膜厚は50μmであった。
【0106】
(比較例2)
第一陽極酸化工程の陽極酸化時間を実施例5よりも長くすること以外は、実施例1と同様に行い微粒子捕捉用ろ過膜を得た。
【0107】
・焼成工程での焼成成功率
焼成工程での焼成成功率を求めたところ、焼成成功率は0%であった。
【0108】
・剥離及びエッチング工程後の陽極酸化部分の総膜厚の分析
剥離及びエッチング工程後の陽極酸化部分の総膜厚は60μmであった。
・微粒子捕捉用ろ過膜の構造の分析
焼成工程で全て破損したため、正常な微粒子捕捉用ろ過膜は得られなかったので、分析しなかった。
【0109】
(実施例6)
第二陽極酸化工程にて、電圧を2分間徐々に低下させて陽極酸化を行った後、次いで、1.8重量%シュウ酸溶液中に4時間浸漬させて、得られた陽極酸化アルミニウム材を用いて、第三陽極酸化工程を行ったこと以外は、実施例1と同様に行い微粒子捕捉用ろ過膜を得た。
【0110】
・微粒子捕捉用ろ過膜の構造の分析
<小孔径部>
小孔径部の厚みは400nmであった。また、小孔径部の表面、200nm、400nm位置の孔径の平均は、それぞれ、10nm、10nm、10nmであった。また、小孔径部全体の連通孔の平均孔径は10nmであった。また、連通孔の孔径分布における相対標準偏差は36%であった。また、小孔径部の連通孔の開口の開口率は25%であった。また、小孔径部中の連通孔の存在割合は38%であった。
<中間孔部>
中間孔部の連通孔の孔径は16〜72nmであった。
<大孔径部>
大孔径部の連通孔の孔径は31〜120nmであった。また、大孔径部全体の連通孔の平均孔径は80nmであった。
<ろ過膜の総膜厚>
ろ過膜の総膜厚は24μmであった。
【0111】
・剥離及びエッチング工程後の小孔径部の破損状況の観察
剥離及びエッチング工程を行った後の陽極酸化部分の小孔径部側の表面を、走査型電子顕微鏡にて観察した。次いで、得られたSEM画像から、観察視野の面積に対する破損部分の面積の割合を求めた。その結果、観察視野の面積に対する破損部分の面積の割合は、0.1%であった。
【0112】
・焼成工程での焼成成功率
焼成工程での焼成成功率を求めたところ、焼成成功率は100%であった。
【0113】
(実施例7)
・微粒子捕捉用ろ過膜の製造
第三陽極酸化工程において、電圧を9.5Vとすることに代えて、電圧を20Vとすること以外は、実施例6と同様に行い微粒子捕捉用ろ過膜を得た。
【0114】
・微粒子捕捉用ろ過膜の構造の分析
<小孔径部>
小孔径部の厚みは1000nmであった。また、小孔径部の表面、500nm、1000nm位置の孔径の平均は、それぞれ、20nm、20nm、20nmであった。また、小孔径部全体の連通孔の平均孔径は20nmであった。また、連通孔の孔径分布における相対標準偏差は21%であった。また、小孔径部の連通孔の開口の開口率は26%であった。また、小孔径部中の連通孔の存在割合は36%であった。
<中間孔部>
中間孔部の連通孔の孔径は40〜80nmであった。
<大孔径部>
大孔径部の連通孔の孔径は51〜139nmであった。また、大孔径部全体の連通孔の平均孔径は91nmであった。
<ろ過膜の総膜厚>
ろ過膜の総膜厚は24μmであった。
(実施例8)
第一陽極酸化工程において、陽極酸化を行った後、次いで、1.8重量%シュウ酸溶液中に4時間浸漬させて、得られた陽極酸化アルミニウム材を用いて、第三陽極酸化工程を行ったこと以外は、実施例7と同様に行い微粒子捕捉用ろ過膜を得た。
【0115】
・微粒子捕捉用ろ過膜の構造の分析
<小孔径部>
小孔径部の厚みは1000nmであった。小孔径部の表面、500nm、1000nm位置の孔径の平均は、それぞれ、20nm、20nm、20nmであった。また、小孔径部全体の連通孔の平均孔径は20nmであった。また、連通孔の孔径分布における相対標準偏差は28%であった。また、小孔径部の連通孔の開口の開口率は20%であった。また、小孔径部中の連通孔の存在割合は56%であった。
<中間孔部>
中間孔部の連通孔の孔径は40〜80nmであった。
<大孔径部>
大孔径部の連通孔の孔径は62〜136nmであった。また、大孔径部全体の連通孔の平均孔径は90nmであった。
<ろ過膜の総膜厚>
ろ過膜の総膜厚は25μmであった。
【0116】
・剥離及びエッチング工程後の小孔径部の破損状況の観察
剥離及びエッチング工程を行った後の陽極酸化部分の小孔径部側の表面を、走査型電子顕微鏡にて観察した。次いで、得られたSEM画像から、観察視野の面積に対する破損部分の面積の割合を求めた。その結果、観察視野の面積に対する破損部分の面積の割合は、0.1%であった。
【0117】
・焼成工程での焼成成功率
焼成工程での焼成成功率を求めたところ、焼成成功率は100%であった。