(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パッキンに形成された前記本固定小径内周面が前記カバー部材側面に面接触する部分における高さ方向長さが、前記カバー部材に形成された前記傾斜面の高さ方向長さよりも長く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の時計。
前記仮固定のときに、前記パッキンに形成した前記傾斜面の下端部に前記カバー部材に形成した前記傾斜面が線接触することで、前記カバー部材が位置決めされることを特徴とする請求項1又は2に記載の時計。
前記ケースの開口部周面に、前記パッキンの外側周面が密着するように設置され、前記ケースの開口部周面には、前記本固定時に前記パッキンに形成した前記本固定小径内周面の圧縮変形にともなう前記パッキンの外側周面側へのはみ出しの一部を逃がすための凹部が周方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の時計。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のパッキンは、風防ガラスの外周部を接触させて仮固定するときの、仮固定大径内周面(案内部)と傾斜面(面取り)の風防ガラス(側面及び面取り)との接触面の断面長さが、本固定時に圧接される本固定小径内周面(圧縮部)の風防ガラスの側面との接触面の断面長さよりも長くなっている(特許文献1の
図3(B)参照)。
【0007】
このため、仮固定時での、パッキンの仮固定大径内周面(案内部)と傾斜面(面取り)の風防ガラスとの接触面での摩擦力が大きくなる。従って、特許文献1のような樽型形状の風防ガラスとは異なる円形形状の風防ガラスを固定する場合には、仮固定時に風防ガラスに回転方向の位置ずれが生じていても、風防ガラスの回転に大きな摩擦力が働いて、容易に位置ずれを調整(修正)することが難しかった。
【0008】
また、本固定時に、パッキンが、風防ガラスの側面を垂直方向に押圧して風防ガラスを固定する固定力にも、改善の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は、仮固定時に風防ガラスに回転方向の位置ずれが生じていても容易に位置ずれを調整することができ、本固定時に風防ガラスを強い固定力で固定可能な時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために本発明の請求項1に係る時計は、時計ムーブメントと、前記時計ムーブメントを収納するケースと、前記ケースの開口部周面に固定される透明性を有するカバー部材と、前記ケースと前記カバー部材との間に介在する環状のパッキンと、を有し、前記カバー部材は、平面形状が円形形状であり、前記カバー部材の外周部は、前記パッキンの内側周面と接するカバー部材側面と、前記カバー部材側面の下端から底面側に傾斜する傾斜面とが形成され、前記パッキンの内側周面側には、前記カバー部材側面と接して前記カバー部材を回転可能に仮固定するための仮固定大径内周面と、前記仮固定大径内周面よりも下方側に位置して、前記仮固定大径内周面よりも小さな内径を有し、前記仮固定から前記カバー部材を圧入させることで圧縮変形して前記カバー部材側面を本固定する本固定小径内周面とが形成された時計であって
、前記パッキンの、前記仮固定大径内周面の下端と前記本固定小径内周面の上端との間に、前記仮固定大径内周面から前記本固定小径内周面側へ傾斜した傾斜面が形成されており、前記カバー部材に形成した前記傾斜面の傾斜方向長さが、前記パッキンに形成した前記傾斜面の傾斜方向長さよりも長く設定され、かつ前記カバー部材に形成した前記傾斜面の傾斜角度が、前記パッキンに形成した前記傾斜面の傾斜角度より大きく設定されていることを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項2に係る時計は、前記パッキンに形成された前記本固定小径内周面が前記カバー部材側面に面接触する部分における高さ方向長さが、前記カバー部材に形成された前記傾斜面の高さ方向長さよりも長く設定されていることを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項
3に係る時計は、前記仮固定のときに、前記パッキンに形成した前記傾斜面の下端部に前記カバー部材に形成した前記傾斜面が線接触することで、前記カバー部材が位置決めされることを特徴としている。
【0014】
本発明の請求項
4に係る時計は、前記ケースの開口部周面に、前記パッキンの外側周面が密着するように設置され、前記ケースの開口部周面には、前記本固定時に前記パッキンに形成した前記本固定小径内周面の圧縮変形にともなう前記パッキンの外側周面側へのはみ出しの一部を逃がすための凹部が周方向に沿って形成されていることを特徴としている。
【0015】
本発明の請求項
5に係る時計は、前記凹部は前記パッキンに形成した前記本固定小径内周面における前記カバー部材側面と対向する部分の高さ方向の範囲内に位置していることを特徴としている。
【0016】
本発明の請求項
6に係る時計は、前記カバー部材の少なくとも一方側の面には、前記カバー部材における回転位置の基準となる位置合せ部が設けられていることを特徴としている。
【0017】
本発明の請求項
7に係る時計は、前記カバー部材の内側に、目盛りを設けた部材が設置されており、前記仮固定時に、前記目盛りとの回転位置が一致したときに、前記カバー部材が所定の回転位置になるように、前記カバー部材に前記位置合わせ部を設けたことを特徴としている。
本発明の請求項8に係る時計は、前記仮固定のときに前記仮固定大径内周面を含む前記パッキンの内側周面が前記カバー部材に面接触する部分における高さ方向の表面に沿った長さが、前記本固定のときに前記本固定小径内周面が前記カバー部材側面に面接触する部分における高さ方向長さよりも短く設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の時計によれば、仮固定のときに仮固定大径内周面を含むパッキンの内側周面がカバー部材に面接触する部分における高さ方向の表面に沿った長さが、本固定のときに本固定小径内周面がカバー部材側面に面接触する部分における高さ方向長さよりも短く設定されている。よって、仮固定時での、パッキンの仮固定大径内周面とカバー部材との接触面での摩擦力を小さくすることができるので、仮固定時にカバー部材に回転方向の位置ずれが生じていても容易に位置ずれを調整することができる。また、本固定時での、パッキンがカバー部材を固定する押圧力を大きくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る時計の表面側(文字板側)を示す平面図、
図2は、
図1のA−A線断面図である。なお、本実施形態における時計は、指針(時針、分針、秒針)で時刻を表示する腕時計タイプの例である。
【0021】
図1、
図2に示すように、本実施形態に係る時計1は、ケース2の表面側に設けた円形状の風防ガラス3の内側に円板状の文字板4が設置されており、文字板4上の中心には指針(時針5、分針6、秒針7)が同軸上に設置されている。ケース2は、例えばステンレスなどの金属によって形成されている。風防ガラス3は、例えば透明なサファイアガラスによって形成されている。
【0022】
風防ガラス3の外周部は、ケース2の開口部周面2aに後述する円環状のパッキン8を介して圧入されている。パッキン8は、風防ガラス3の外周部とケース2の開口部周面2aとの間の防水性や防塵性を確保する機能を有している。ケース2の開口部周面2aの下部には、平面状の段部2bが周方向に沿って形成されている。
【0023】
ケース2内の文字板4の背面側と裏蓋9との間には、時計ムーブメント10、不図示の駆動源(二次電池や太陽電池)等が組み込まれている。文字板4の「3時」(
図1の右側)に位置するケース2の外側面には竜頭(リューズ)11が設置されており、この竜頭11に連結された巻真(不図示)は、時計ムーブメント10の内部まで延びている。
【0024】
図3に示すように、透明な風防ガラス3の内面には、外周側に周方向に沿って所定の間隔で表記部12が印刷されている。表記部12には、本実施形態では複数の都市名(LON(ロンドン)、PAR(パリ)、ATH(アテネ)などの3文字の英文字)と、時差(LON(ロンドン)を時差0としたときの各都市での時差)が表記されている。例えば、PAR(パリ)では、時差が+1(基準となるLON(ロンドン)に対して1時間進んでいる)と表記されている。
【0025】
尚、
図3は、表記部(都市名、時差)12を風防ガラス3の外面側(表面側)から見た状態であり、この表記部12は、風防ガラス3の内面に左右反転印刷されている。この表記部12は、風防ガラス3の外周部のほぼ全周に設けられ、
図3では、「12時」位置の周囲付近だけを図示し、残りは省略している。
【0026】
風防ガラス3の外周部端面は、
図4に示すように、両縁部が内側に傾斜した上部傾斜面3a及び下部傾斜面3bと、上部傾斜面3aと下部傾斜面3bとの間に垂直面状の風防側面3cが形成されている。なお、
図4は、
図3のB−B線断面である。
【0027】
風防ガラス3がケース2に正しく位置決めされて固定されている状態では、
図1、
図5に示すように、風防ガラス3に印刷されている表記部12の都市名と時差を示す「LON」、「0」の位置が、文字板4上の「12時」を示す時刻目盛13と合致している。
【0028】
次に、パッキン8の詳細について説明する。
図6は、パッキン8を示す平面図、
図7は、
図6のC−C線断面図である。
【0029】
図6に示すように、パッキン8は、ケース2の開口部周面2aに沿って配置されるように円環状に形成されている。パッキン8の材質としては、力が加わることで圧縮変形可能な合成樹脂材(例えば、耐候性に優れたフッ素樹脂など)が用いられている。なお、パッキン8は、時計1の外観的には目立たない方が好ましいので透明樹脂によって形成されている。
【0030】
また、
図7に示すように、パッキン8の外側周面8aは、ケース2の開口部周面2aに密着されるように垂直面状に形成されている。
【0031】
一方、風防ガラス3の外周部端面が圧入されるパッキン8の内側周面8bには、上部側に形成された仮固定大径内周面8cと、その下方側に形成された本固定小径内周面8dと、仮固定大径内周面8cと本固定小径内周面8dとの間を繋ぐように形成された傾斜面(以下、「パッキン傾斜面」という)8eとが周方向に沿って形成されている。仮固定大径内周面8cの直径は、風防ガラス3の外径と略同じ寸法に設定されている。
【0032】
仮固定大径内周面8cの上端面8fは、斜め外側へ向けてカットされ、面取り加工されている。また、本固定小径内周面8dの下端には、内側方向に突出した突出面8gが周方向に沿って形成されている。
【0033】
仮固定大径内周面8cの部分の径方向の厚みは、本固定小径内周面8dの部分の径方向の厚みよりも小さく、仮固定大径内周面8cの径が本固定小径内周面8dの径よりも大きくなるように設定されている。仮固定大径内周面8cの高さ(断面高さ)h1は、本固定小径内周面8dの高さ(断面高さ)h2の半分程度以下となるように短く設定されている。また、本固定小径内周面8dの高さh2は、風防ガラス3の下部傾斜面3b(
図4参照)の高さh3(風防側面3cに沿った高さ)よりも長く設定されている。
【0034】
パッキン傾斜面8eは、仮固定大径内周面8cの下端から本固定小径内周面8dの上端側に向けて直線的に内側方向へ傾斜している。パッキン傾斜面8eの傾斜長さは、風防ガラス3の下部傾斜面3bの傾斜長さよりも短く設定されている(
図9参照)。また、パッキン傾斜面8eの傾斜角度θ1は、風防ガラス3の下部傾斜面3bの傾斜角度θ2よりも少し小さく設定されている(
図9参照)。例えば、パッキン傾斜面8eの傾斜角度θ1が45°で、下部傾斜面3bの傾斜角度θ2が55°である。
【0035】
次に、上記した時計1において、風防ガラス3をケース2の開口部周面2aに設置したパッキン8の内側周面に圧入して組み込むときの手順を、
図8(a)〜(d)を参照して説明する。
【0036】
図8(a)に示すように、パッキン8は、その外側周面8aがケース2の開口部周面2aに密着するように当接され、下面の突出面8gが下部の段部2b上に当接されている。なお、ケース2の開口部周面2aには、パッキン8の本固定小径内周面8dの上部付近の位置に対応して、断面が三角形状の凹部2cが周方向に沿って形成されている。
【0037】
そして、
図8(a)、(b)に示すように、風防ガラス3を、ケース2の開口部周面2a上に冶具(不図示)によって載置した後に、下方に少し押し込むことで、風防ガラス3の風防側面3cの下部から中央部付近が仮固定大径内周面8cに面接触するとともに、風防ガラス3の下部傾斜面3bがパッキン傾斜面8eに後述するように線接触して、位置決めされた状態で仮固定される。
【0038】
この際、パッキン8の上端面8fが面取り加工されているので、風防ガラス3の下部傾斜面3bとガラス端面3cを仮固定大径内周面8c側に容易に挿入させることができる。
【0039】
また、仮固定大径内周面8cの高さ(断面高さ)h1は、本固定小径内周面8dの高さ(断面高さ)h2の半分程度以下となるように短く設定され、更に、風防ガラス3の風防側面3cの外径は、パッキン8の仮固定大径内周面8cの直径と略同じ寸法なので、略隙間なく面接触しているが、接触面での摩擦力が小さい。
【0040】
更に、
図9に示すように、パッキン8のパッキン傾斜面8eの傾斜角度θ1よりも風防ガラス3の下部傾斜面3bの傾斜角度θ2の方が大きく、かつパッキン傾斜面8eの傾斜長よりも下部傾斜面3bの傾斜長の方が長く形成されて突出しているので、風防ガラス3の下部傾斜面3bは、パッキン傾斜面8eの端部8e’付近と略線接触で接した状態となる。
【0041】
このように、
図8(b)、
図9に示した風防ガラス3の仮固定時には、風防ガラス3の風防側面3cの下部から中央部付近が仮固定大径内周面8cに面接触するとともに、風防ガラス3の下部傾斜面3bがパッキン傾斜面8eの端部8e’付近と略線接触している状態なので、風防ガラス3の風防側面3cと仮固定大径内周面8cとの接触面での摩擦力を小さくすることができる。
【0042】
よって、この風防ガラス3の仮固定時において、風防ガラス3を回転させて回転位置の調整を容易に行うことができる。例えば、
図10に示すように、風防ガラス3の表記部12の「LON」の位置が、文字板4の「12時」の時刻目盛13に対して少し右側にずれて仮固定された場合に、風防ガラス3を、表記部12の「LON」が文字板4上の「12時」を示す時刻目盛13と合致する位置まで反時計回りに少し回転させることで、
図1、
図5に示した正規の位置に容易に調整(修正)することができる。このように、本実施形態では、表記部12を風防ガラス3の回転位置の基準となる位置あわせ部として利用している。
【0043】
そして、風防ガラス3が正規の位置に仮固定されると、
図8(c)、(d)に示すように、プレス装置(不図示)を用いて風防ガラス3の上面から押圧すると、風防ガラス3の下部傾斜面3bがパッキン傾斜面8eを乗り越えて、パッキン8のパッキン傾斜面8e、本固定小径内周面8dが圧縮変形しながら風防ガラス3が圧入され、風防ガラス3の底部が突出面8gに接するまで圧入されて、本固定される。
【0044】
図8(c)は、本固定小径内周面8dにおける上端から凹部2c付近までの部分が、風防ガラス3によってケース2側に圧縮変形した状態を示している。
【0045】
尚、この本固定時に、パッキン8の本固定小径内周面8dの圧縮変形にともなうパッキン8の外側周面8a側へのはみ出しの一部は、風防ガラス3の下部傾斜面3bとパッキン8によって囲まれる空間と、ケース2の開口部周面2aに形成した凹部2cに逃がすことができる。このように、ケース2に凹部2cを設けることにより、パッキン8の上下方向の動きを規制し、パッキン8の抜けを防止することができる。
【0046】
ケース2に設けた凹部2cは、パッキン8の本固定小径内周面8dの高さ範囲であって、風防ガラス3の風防側面3cと対向する部分は、風防ガラス3を本固定する際に、パッキン8が、ケース2に最も強く押圧される部分である。従って、この位置に凹部2cを形成することにより、風防ガラス3を本固定のために押圧する途中で、パッキン8の一部を確実に凹部2c内に逃がして、パッキン8の上下方向の位置ずれを防止すことができる。
【0047】
このように、本固定時には、パッキン8の本固定小径内周面8dの圧縮変形によって、風防ガラス3の外周部端面(下部傾斜面3b、風防側面3c)がパッキン8の本固定小径内周面8dに良好に固定されるので、風防ガラス3とケース2の開口部周面2aとの間の防水性や防塵性を確保することができる。
【0048】
また、
図8(d)に示した本固定状態において、本固定小径内周面8dにおける風防ガラス3の風防側面3cと対向して面接触する部分(以下、「風防側面押圧部」という)8d’は、パッキン8が風防側面3c面をほぼ垂直方向に押圧するため、風防ガラス3に対し、パッキン8が風防ガラス3を固定する押圧力が最も強く働く。従って、風防側面3cと風防側面押圧部8d’とが面接触する高さ方向長さが長い方が、風防ガラス3cを強固に固定することができる。
【0049】
尚、本実施形態では、仮固定時に、風防ガラス8にパッキン8が面接触する部分である仮固定大径内周面8cの高さ方向の表面に沿った長さh1よりも、風防側面押圧部8d’の高さ方向長さを長く設定している。これにより、仮固定時での、パッキン8と風防ガラス3との摩擦力を小さくすることができるとともに、本固定時での、パッキン8が風防ガラス3を固定する押圧力を大きくすることができる。
【0050】
更に、本実施形態では、下部傾斜面3bの高さh3(
図4参照)をできるだけ短くし、風防側面3cの高さ方向長さをできるだけ長くして、風防側面押圧部8d’の高さ方向長さを、下部傾斜面3bの高さh3よりも長く設定することにより、風防ガラス3を強い固定力で固定している。
【0051】
これに対し、前述の特許文献1の場合は、パッキンの本固定小径内周面(圧縮部)が風防ガラスの風防側面と面接触する風防側面押圧部における高さ方向長さが、風防ガラスが面接触する、仮固定大径内周面(案内部)及び傾斜面(面取り)における高さ方向の表面に沿った長さよりも短い。このため、仮固定時での、パッキンの仮固定大径内周面(案内部)と風防ガラスの側面との接触面での摩擦力が大きく、しかも、本実施形態と比較して、本固定時での、パッキンが風防ガラスを固定する押圧力が小さい。
【0052】
更に、特許文献1の場合は、パッキンの本固定小径内周面(圧縮部)における風防ガラスの風防側面と対向する風防側面押圧部の高さ方向長さが、風防ガラスの下部傾斜面(面取り)よりも短いか、又は、風防ガラスの下部傾斜面(面取り)とほぼ同じ長さであるため、本実施形態と比較して、強い固定力で風防ガラスを固定することができない。
【0053】
また、例えば、仮固定時に、仮固定大径内周面8cだけではなく、パッキン傾斜面8eも風防ガラス3に面接触する構造である場合は、仮固定大径内周面8c及び下部傾斜面3bにおける高さ方向の表面に沿った長さ(仮固定大径内周面8cの高さh1と下部傾斜面3bの傾斜長さの合計)を、風防側面押圧部8d’における高さ方向長さよりも短く設定すると、仮固定時に風防ガラス3の摩擦力を小さくして、本固定時に風防ガラス3を固定する押圧力を大きくすることができる。
【0054】
また、本実施形態では、風防ガラス3の下部傾斜面3bの傾斜方向長さを、パッキン傾斜面8eの傾斜方向長さよりも長く設定して、風防ガラス3の下部傾斜面3bをパッキン傾斜面8eからパッキン8の内側に突出させ、かつ、風防ガラス3の下部傾斜面3bの傾斜角度θ2を、パッキン傾斜面8eの傾斜角度θ1よりも大きく設定している。このため、
図8(b)に示した仮固定の状態では、プレス装置を用いて風防ガラス3の上面から押圧した際に、急斜面である風防ガラス3の下部傾斜面3bが、パッキン傾斜面8eを容易に乗り越えることができる。
【0055】
仮に、風防ガラス3の下部傾斜面3bの傾斜角度θ2が、パッキン傾斜面8eの傾斜角度θ1と同じ角度である場合には、
図8(b)に示した仮固定の状態で風防ガラス3の下部傾斜面3bがパッキン傾斜面8eと面接触した状態となるため、風防ガラス3の上面を押圧したときに、下部傾斜面3bからパッキン傾斜面8e全体に一様に下に押圧する力が働き、パッキン傾斜面8e全体が変形して、風防ガラス3の下部傾斜面3bが、パッキン傾斜面8eを容易に乗り越えることができなくなる。
【0056】
更に、風防ガラス3の下部傾斜面3bの傾斜角度θ2を、パッキン傾斜面8eの傾斜角度θ1よりも小さく設定した場合には、
図8(b)に示した仮固定の状態から風防ガラス3の上面を押圧したときに、風防ガラス3の下部傾斜面3bにおける風防側面3cに近い端部が、パッキン傾斜面8eにおける仮固定大径内周面8cに近い端部に当接する。このため、パッキン傾斜面8eが、風防ガラス3の下部傾斜面3bと同じ角度に変形して、互いに面接触した状態で風防ガラス3の下部傾斜面3bがパッキン傾斜面8eを押圧することとなり、風防ガラス3の下部傾斜面3bが、パッキン傾斜面8eを容易に乗り越えることができなくなってしまう。
【0057】
また、風防ガラス3の下部傾斜面3bの傾斜角度θ2が、パッキン傾斜面8eの傾斜角度θ1より大きい場合であっても、風防ガラス3の下部傾斜面3bが、パッキン傾斜面8eからパッキン8の内側に突出しない場合には、
図8(b)に示した仮固定の状態から風防ガラス3の上面を押圧したときに、風防ガラス3の背面側に位置する下部傾斜面3bの内側の下端部がパッキン傾斜面8eに接する状態となる。このため、風防ガラス3の上面から押圧しても、下部傾斜面3bの内側の端部がパッキン傾斜面8eにめり込むなどにより、容易に乗り越えることができなくなってしまう。
【0058】
前記実施形態では、パッキン8に突出面8gを設けているが、ケース2や他の部品の構造又は配置によっては、設けなくてもよい。また、前記実施形態では、風防ガラス3の内面に印刷した表記部12には、都市名を示す3文字の英文字)と、時差を示す数字が表記された例であったが、これに限らず、例えば所定のマークや指標、記号などを表記してもよいし、特定の意味を持たない模様などでもよい。
【0059】
なお、前記実施形態では、カバー部材が、時計の表面側に取り付けられる風防ガラスの例であったが、これ以外にも、例えば裏面側に透明なカバー部材が取り付けられた構造の時計においても同様に本発明を適用することができる。