(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
もっとも、都心部等において螺旋案内路付き縦管を立坑内に設置する場合には、例えば電力ケーブル管や通信ケーブル管といった複数の配管が、流入桝の上方で輻輳していることが多い。このような場合、これらの配管を仮吊り等することによって、これらの配管の下方に流入桝を構築すること自体は可能であるが、これらの配管を迂回させない限り、縦管部材を上方から流入桝に搬入することは困難である。
【0006】
そのため、複数の配管が流入桝の上方で輻輳している場合には、配管が埋設されていない場所を含むように工事占有面積(路面の掘削範囲)を大きくし、配管が埋設されていない場所に縦管部材を一旦預けるという手法が採られている。この手法によれば、一旦預けた縦管部材を横移動させて流入桝内に搬入し、流入桝内に設けられたホイストクレーン等の昇降機を用いて、縦管部材を立坑内に投入することが可能となる。
【0007】
しかしながら、このような手法では、増大した掘削範囲に支保工や覆工板等を設置したり、交通の妨げとならないように夜間工事が発生したりするため、工期が長くなるとともに工事費用が嵩むという問題がある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、都心部等の縦管部材を上方から搬入するのが困難な場所において、螺旋案内路付き縦管を短工期且つ低コストで立坑内に設置する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る螺旋案内路付き縦管の施工方法では、立坑の真下に位置する幹線シールド(下水管)を用いて縦管部材を搬入し、縦管部材を立坑の下側から組み上げるようにしている。
【0010】
具体的には、本発明は、複数の縦管部材を上下に接続した螺旋案内路付き縦管を、下水管の真上に設けられた立坑内に設置する螺旋案内路付き縦管の施工方法を対象としている。
【0011】
そして、上記施工方法は、1以上の縦管部材を上記立坑内で上昇させる上昇工程と、他の縦管部材を上記下水管内で運搬して、上記1以上の縦管部材の真下に配置する配置工程と、上記1以上の縦管部材を下降させて、当該1以上の縦管部材のうち最下端の縦管部材の下端と、上記他の縦管部材の上端とを接続する接続工程と、を含
み、上記各縦管部材は、管軸方向長さが上記下水管の内径よりも小さく設定されており、上記配置工程では、各縦管部材を、管軸方向が鉛直方向を向くように起立させた姿勢で、上記下水管内で運搬することを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、螺旋案内路付き縦管を構成する各縦管部材を下水管内で運搬することから、工事占有面積を大きくすることなく、縦管部材を施工箇所に搬入することができる。また、立坑内で上昇させた1以上の縦管部材の真下に他の縦管部材を配置し、下降させた1以上の縦管部材のうち最下端の縦管部材の下端と、他の縦管部材の上端とを接続するという作業を繰り返すことで、複数の縦管部材を上下に接続した螺旋案内路付き縦管を立坑内に容易に構築することができる。以上により、都心部等の縦管部材を上方から搬入するのが困難な場所においても、工事占有面積を大きくすることなく、螺旋案内路付き縦管を構築できるので、螺旋案内路付き縦管を短工期且つ低コストで立坑内に設置することが可能となる。
【0013】
また、
本発明は、複数の縦管部材を上下に接続した螺旋案内路付き縦管を、下水管の真上に設けられた立坑内に設置する螺旋案内路付き縦管の施工方法であって、2以上の縦管部材を上記立坑内で上昇させる上昇工程と、他の縦管部材を上記下水管内で運搬して、上記2以上の縦管部材の真下に配置する配置工程と、上記2以上の縦管部材を下降させて、当該2以上の縦管部材のうち最下端の縦管部材の下端と、上記他の縦管部材の上端とを接続する接続工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0015】
もっとも、螺旋案内路付き縦管の構築が進むにつれて、上昇工程で上昇させる縦管部材の本数が増えるところ、昇降機を用いて縦管部材を吊り上げる方法では、縦管部材の累積重量によっては、複数の縦管部材を吊り上げるための反力を得ることが困難になる場合が想定される。
【0016】
そこで、
本発明は、複数の縦管部材を上下に接続した螺旋案内路付き縦管を、下水管の真上に設けられた立坑内に設置する螺旋案内路付き縦管の施工方法であって、1以上の縦管部材を上記立坑内で上昇させる上昇工程と、他の縦管部材を上記下水管内で運搬して、上記1以上の縦管部材の真下に配置する配置工程と、上記1以上の縦管部材を下降させて、当該1以上の縦管部材のうち最下端の縦管部材の下端と、上記他の縦管部材の上端とを接続する接続工程と、を含み、上記上昇工程では、上記1以上の縦管部材を、その他端部に形成された受け口が下側になった状態で、ジャッキを用いて上記立坑の下方から押し上げ、上記配置工程では、その一端部に形成された挿し口が上側になった状態で上記他の縦管部材を配置し、上記接続工程では、上記最下端の縦管部材の受け口を、上記他の縦管部材の挿し口に被せること
を特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、下水管内に設置したジャッキを用いて、例えば最下端の縦管部材における下側を向いた受け口の下端を押し上げることで、1以上の縦管部材を立坑の下方から容易に押し上げることができる。そうして、当該1以上の縦管部材の真下に他の縦管部材を挿し口が上側になった状態で配置した後、1以上の縦管部材を下降させて、最下端の縦管部材の受け口を他の縦管部材の挿し口に被せることで、螺旋案内路付き縦管を立坑内に容易に構築することができる。これにより、縦管部材の累積重量が増えた場合でも、複数の縦管部材を上昇させるための反力を容易に得ることができる。
【0018】
なお、挿し口および受け口の上下を、縦管部材を立坑の上方から吊り上げる場合と逆転させるのは、挿し口の下端をジャッキで支持すると、挿し口を受け口に挿入することが困難となるからである。
【0019】
また、
本発明は、複数の縦管部材を上下に接続した螺旋案内路付き縦管を、下水管の真上に設けられた立坑内に設置する螺旋案内路付き縦管の施工方法であって、1以上の縦管部材を上記立坑内で上昇させる上昇工程と、他の縦管部材を上記下水管内で運搬して、上記1以上の縦管部材の真下に配置する配置工程と、上記1以上の縦管部材を下降させて、当該1以上の縦管部材のうち最下端の縦管部材の下端と、上記他の縦管部材の上端とを接続する接続工程と、を含み、上記立坑には、当該立坑と上記各縦管部材とが芯合わせされた状態で、当該各縦管部材を昇降させるための上下方向に延びるガイドレールが設けられており、上記ガイドレールの下端は、上記立坑の下端よりも上記下水管側に突出しており、上記配置工程では、上記下水管側に突出した上記ガイドレールと係合することによって、上記立坑と上記各縦管部材との芯合わせを行う芯合わせ機構を備えた台車を用いて、上記各縦管部材を下水管内で運搬すること
を特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、縦管部材を接続する際に一々芯合わせをすることなく、台車を用いて縦管部材を立坑の下方まで運搬し、芯合わせ機構とガイドレールとを係合させることで、縦管部材の配置と芯合わせとを同時に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上、説明したように本発明に係る螺旋案内路付き縦管の施工方法によれば、都心部等の縦管部材を上方から搬入するのが困難な場所において、螺旋案内路付き縦管を短工期且つ低コストで立坑内に設置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、
図1、
図3、
図6、
図8、
図9および
図11〜
図13では、幹線シールド2、立坑3、下水管4、流入桝5、縦管部材本体10c等を断面図で示しているが、図を見易くするためにハッチングを省略している。
【0024】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る螺旋案内路付き縦管1を模式的に示す図である。この螺旋案内路付き縦管1(以下、単に縦管1ともいう)は、地中の比較的深い位置(例えば地表6から30m以上の深さ)に設けられた幹線シールド(下水管)2の真上に設けられた立坑3内に設置されるものである。下水は、地中の比較的浅い位置に設けられた下水管4(以下、流入管4ともいう)から、立坑3の上部に形成された流入桝5に流入し、流入桝5の底部に形成された開口部5aを通って縦管1内に流入した後、縦管1内を流下して、幹線シールド2と立坑3との接続部に形成された開口部2aを通って幹線シールド2に排出されるようになっている。
【0025】
−縦管の全体構成−
本発明に係る螺旋案内路付き縦管1の施工方法の説明に先立ち、縦管1の概略構成について説明する。
【0026】
この縦管1は、9つの縦管部材10を上下に接続したものであり、上段に形成された上部螺旋案内路7と、中段に形成された中間案内路8と、下段に形成された下部螺旋案内路9と、を備えている。各縦管部材10に用いられる材料は、特に限定されないが、強度や耐久性等の観点から、例えば、硬質塩化ビニル樹脂、FRP(繊維強化プラスチック)、ポリカーボネート等の合成樹脂系材料が好ましい。この縦管1は、立坑3の下端部に設けられたリング状の支持台20に載置されるとともに、当該縦管1の外周面と立坑3の内周面との間に例えばエアモルタル22を充填することによって、立坑3内に固定されている。
【0027】
上部螺旋案内路7は、第1、第2および第3縦管部材11,12,13を、この順で上から下に接続したものである。この上部螺旋案内路7には、螺旋案内板25が3ピッチ分設けられているとともに、その中心部に、螺旋案内板25と一体形成された中心筒23と別体の中心筒24とが設けられている。この上部螺旋案内路7は、渦流を発生させて管壁面に沿った流れを形成する役割を担っている。
【0028】
中間案内路8は、第4、第5および第6縦管部材14,15,16を、この順で上から下に接続したものである。この中間案内路8には、螺旋案内板25が配設されておらず、上部螺旋案内路7から流れてきた下水を自然流下させるように構成されている。この中間案内路8は、上部螺旋案内路7によって形成された管壁面に沿った流れを下方に導く役割を担っている。
【0029】
下部螺旋案内路9は、第7、第8および第9縦管部材17,18,19を、この順で上から下に接続したものである。この下部螺旋案内路9には、螺旋案内板25が6ピッチ分設けられている。この下部螺旋案内路9は、中間案内路8を自然流下した下水を螺旋案内板25に沿って螺旋状に流下させて、下水の落下エネルギーを吸収および減勢する役割を担っている。
【0030】
このように構成された縦管1では、流入管4から流入桝5を経て当該縦管1内に流入した下水が、上部螺旋案内路7の螺旋案内板25に沿って流下することで、管壁面に沿った流れが形成される。そうして、下水は遠心力により管壁面に沿った流れを形成した状態のまま中間案内路8を流下する。その際、空気が中心方向に集められ、中心筒23,24を通って上方へ抜ける。そうして、下部螺旋案内路9に流入した下水は、螺旋案内板25に沿って螺旋状に流下し、流下エネルギーが減衰した状態で幹線シールド2に合流する。
【0031】
−縦管部材の構成−
図2は、縦管部材10を模式的に示す縦断面図である。この
図2は、最上段の第1縦管部材11以外の縦管部材10一般の構造を模式的に示すものである。なお、
図2では、中間案内路8を構成する縦管部材14,15,16のみならず、上部螺旋案内路7および下部螺旋案内路9を構成する縦管部材12,13,17,18,19においても、図を見易くするために、螺旋案内板25を図示省略している。
【0032】
第1縦管部材11以外の各縦管部材10は、
図2で示すように、上端部(一端部)に受け口10aを有する一方、下端部(他端部)に挿し口10bを有している。受け口10aは、縦管部材本体10cの上端部に、縦管部材本体10cの外径とほぼ等しい内径を有する円筒部材10dを接着接合することで構成されていて、段差構造を有している。この円筒部材10dの内周面には、止水用のゴムパッキン26が取り付けられている。
【0033】
互いに接続される上下の縦管部材10は、上側の縦管部材本体10cの下端が下側の縦管部材本体10cの上端に当接するように、上側の縦管部材10の挿し口10bを下側の縦管部材10の受け口10aに嵌め込むことで接続される。上下の縦管部材10が接続されると、下側の縦管部材10のゴムパッキン26が上側の縦管部材10の外周面に密着することによって、縦管部材10同士の接続部における止水性が確保される。なお、図示省略するが、第1縦管部材11は、受け口10aを有しないことを除けば、第2〜第9縦管部材12,…,19とほぼ同様の構造を有している。
【0034】
各縦管部材10の外周面には、円周方向に間欠的に配置された複数の突起部10eが、上下方向に複数段形成されている。これらの突起部10eは、後述する各種の締付バンド37,38,39が作業中にずれるのを防止するために設けられているものである。
【0035】
−縦管の施工方法−
次に、縦管1の施工方法について説明する。本実施形態では、内径6000mmで管底が地表6から約42mの深さになるように設置された幹線シールド2と、内径1650mmで管底が地表6から約11mの深さになるように設置された流入管4とを繋ぐ、内径2500mmの立坑3に、内径2200mmの螺旋案内路付き縦管1を設置する場合について説明する。
【0036】
縦管1の設置は、幹線シールド2および流入管4の新設の際に行われる。より詳しくは、幹線シールド2、流入管4、幹線シールド2の真上に設けられる立坑3、および、立坑3の上方に設けられて流入管4と接続される流入桝5が構築された後に行われる。
【0037】
先ず、縦管1の設置に先立ち、例えばH型鋼等を用いて、
図3に示すように、ホイストクレーン(昇降機)27を支持するための支持架台28を流入桝5の内部に設置する。なお、ホイストクレーン27や支持架台28の材料等は、流入管4から搬入することが可能である。
【0038】
さらに、立坑3の内壁に、上下方向に延びるガイドレール29を設置する。ガイドレール29としては、例えば、断面L字状の山型鋼を用いることができる。具体的には、
図5に示すように、後施工アンカー等の締結部材29cを用いて、山型鋼の一方のフランジ29aを立坑3の内壁に固定し、他方のフランジ29bを立坑3の内側に突出させる。ガイドレール29の下端は、
図3に示すように、立坑3の下端よりも幹線シールド2側に突出している。
【0039】
また、縦管部材10を幹線シールド2内部で運搬するための手段として、
図4に示すような運搬台車30を用意する。この運搬台車30は、車輪33を有する走行部32と、走行部32の上に設置された円板状の架台34と、を備えている。走行部32は、油圧モータや電動モータや人力によって駆動するように構成されている。走行部32の前端には、前側に突出し且つ運搬台車30の進行方向と上下方向とに直交する方向に対向する2枚の鋼板からなる係合部36が設けられている。この係合部36は、立坑3の下端よりも幹線シールド2側に突出しているガイドレール29のフランジ29bを2枚の鋼板で挟むことで、ガイドレール29と係合するようになっている。架台34は、走行部32に対し回転および移動可能に構成されており、縦管部材10を架台34に載置した後、架台34を回転および移動させることで、縦管部材10を走行部32に対して正規の位置に位置決めすることが可能になっている。
【0040】
一方、縦管部材10には、
図5に示すように、位置決め用締付バンド37を取り付けておく。この位置決め用締付バンド37は、縦管部材10と立坑3との径方向の相対位置を規定する治具である。位置決め用締付バンド37は、炭素鋼鋼材等の金属製板材により形成された一対の半バンドからなり、これらの半バンドを縦管部材10の外周面にそれぞれ巻き付けて締結部材37aにより締結することで円環状に形成される。この位置決め用締付バンド37には、4つのスペーサ部40と、1つのガイド部41と、が取り付けられている。
【0041】
各スペーサ部40は、例えば、位置決め用締付バンド37の外周面に溶接されたH型鋼からなる台座部40aと、台座部40aの先端部に添設された円盤状のプレート材からなる当接板40bと、を有している。かかるスペーサ部40の突出量は、立坑3の内径と縦管部材10の外径との寸法差を考慮して決定される。
【0042】
一方、ガイド部41は、位置決め用締付バンド37の外周面に立設された、周方向に対向する2枚のガイド板41aと、各ガイド板41aの背面と位置決め用締付バンド37の外周面とを繋ぐ補強プレート41bと、を有している。2枚のガイド板41aの間隔は、例えば、ガイドレール29のフランジ29bが、これら2枚のガイド板41aの間に挟まった状態で、フランジ29bとガイド板41aとの間に若干の余裕寸法をもって摺動しうるような値に設定されている。これにより、縦管部材10を、立坑3内においてガイドレール29に沿わせながら容易かつ正確に昇降させることが可能となる。
【0043】
そうして、位置決め用締付バンド37を取り付けた縦管部材10を架台34に載置した後、架台34を回転および移動させることで、縦管部材10を走行部32に対して正規の位置に位置決めする。その後、縦管部材10を載せた運搬台車30を幹線シールド2内で走行させて、縦管部材10を立坑3の直下に移動させる。このとき、
図4に示すように、走行部32の前端に設けられた係合部36とガイドレール29とを係合させると、ガイドレール29のフランジ29bが、位置決め用締付バンド37の2枚のガイド板41aの間に挟まり、立坑3と縦管部材10との芯合わせが行われる。これにより、縦管部材10同士を接続する際に一々芯合わせする手間を省くことができる。このように、本実施形態では、走行部32の前端に設けられた係合部36および架台34が、本発明で言うところの「下水管側に突出したガイドレールと係合することによって、立坑と各縦管部材との芯合わせを行う芯合わせ機構」に相当する。
【0044】
以上のような準備が完了すると、縦管1の設置を行う。なお、以下の図面6〜14では、図を見易くするために、ガイドレール29および位置決め用締付バンド37を図示省略する。
【0045】
先ず、
図6に示すように、運搬台車30を用いて第1縦管部材11を幹線シールド2内で搬送し、立坑3の真下に配置する。このとき、係合部36とガイドレール29とを係合させることで、立坑3と第1縦管部材11との芯合わせは完了している。
【0046】
第1縦管部材11には、
図7に示すように、吊り用締付バンド38が予め取り付けられている。この吊り用締付バンド38は、位置決め用締付バンド37と同様に、金属製板材により形成された一対の半バンドからなり、これらの半バンドを第1縦管部材11の外周面にそれぞれ巻き付けて締結部材(図示せず)により締結することで円環状に形成されている。この吊り用締付バンド38には、径方向外側に突出するように複数の金属板42が取り付けられており、各金属板42には上下方向に延びるねじ孔(図示せず)が貫通形成されている。
【0047】
第1縦管部材11は、金属製の環状吊り具43を介して、流入桝5の内部に設置されたホイストクレーン27によって吊り上げられる。より詳しくは、環状吊り具43には、フックボルト44が取り付けられており、このフックボルト44をねじ孔に螺合するとともに、ねじ孔から下方に飛び出したボルト部分44aをナット44cで締め付けることで、環状吊り具43と吊り用締付バンド38とが接続される。そうして、フックボルト44のフック部44bに引っ掛けたワイヤーロープ45の吊り金具45aをホイストクレーン27のフック27aに引っ掛け、フック27aを巻き上げることで、第1縦管部材11(1以上の縦管部材)を挿し口10bが下側になった状態でガイドレール29に沿わせながら上昇させる(上昇工程)。このとき、吊り用締付バンド38の上端が、第1縦管部材11の外周面に形成された複数の突起部10eに当接することで、吊り用締付バンド38の作業中のずれが防止される。
【0048】
次いで、
図8に示すように、第1縦管部材11を吊ったままの状態で、運搬台車30を用いて第2縦管部材12(他の縦管部材)を幹線シールド2内で搬送し、立坑3の真下、すなわち、第1縦管部材11の真下に、受け口10aが上側になった状態で配置する(配置工程)。このとき、係合部36とガイドレール29とを係合させることで、立坑3と第2縦管部材12との芯合わせは完了している。
【0049】
次いで、
図9に示すように、ホイストクレーン27を用いて第1縦管部材11を下降させ、当該第1縦管部材11の挿し口10bを第2縦管部材12の受け口10aに挿し込んで、第1縦管部材11の下端と第2縦管部材12の上端とを接続する(接続工程)。もっとも、第2縦管部材12の受け口10aに取り付けられたゴムパッキン26は、第1縦管部材11の挿し口10bを第2縦管部材12の受け口10aに挿し込む際の挿入抵抗となることから、第2縦管部材12の上に第1縦管部材11を吊り降ろした段階では、両者は完全に接続されたものではなく、仮設置されているに過ぎない。このため、第1縦管部材11と第2縦管部材12とを接続するには、第1縦管部材11と第2縦管部材12とに上下方向の荷重をかける必要がある。
【0050】
そこで、本実施形態では、接続工程において、複数のチェーンブロック46を用いて上下の縦管部材10に上下方向の荷重を均等にかけるようにしている。具体的には、
図10に示すように、上側の縦管部材10(ここでは第1縦管部材11)の下端部と、下側の縦管部材10(ここでは第2縦管部材12)の上端部とに、接続用締付バンド39をそれぞれ取り付ける。各接続用締付バンド39は、位置決め用締付バンド37と同様に、金属製板材により形成された一対の半バンドからなり、これらの半バンドを各縦管部材10の外周面にそれぞれ巻き付けて締結部材(図示せず)により締結することで円環状に形成される。各接続用締付バンド39の外周面には、複数の金属製のリング47が溶接されている。そうして、各リング47にチェーン48を引っ掛け、これらのチェーン48を複数のチェーンブロック46によって上下方向に締付けることで、上下の縦管部材10に均等に荷重をかけて、両者を接続する。このとき、上側の接続用締付バンド39の下端が、第1縦管部材11の外周面に形成された複数の突起部10eに当接するとともに、下側の接続用締付バンド39の上端が、第2縦管部材12の外周面に形成された複数の突起部10eに当接することで、接続用締付バンド39の作業中のずれが防止される。なお、下側の縦管部材10については、突起部10eを設けずに、円筒部材10dの下端に接続用締付バンド39の上端を当接させるようにしてもよい。
【0051】
このように、第1縦管部材11と第2縦管部材12との接続が完了すると、ホイストクレーン27のフック27aを巻き上げることで、第1および第2縦管部材11,12(1以上の縦管部材)を第2縦管部材12(1以上の縦管部材のうち最下端の縦管部材)の挿し口10bが下側になった状態でガイドレール29に沿わせながら上昇させる(上昇工程)。そうして、第1および第2縦管部材11,12を吊ったままの状態で、運搬台車30を用いて第3縦管部材13(他の縦管部材)を幹線シールド2内で搬送し、第1および第2縦管部材11,12の真下に、受け口10aが上側になった状態で配置する(配置工程)。
【0052】
このような作業を繰り返すことで、上部螺旋案内路7の形成が終わると、引き続き同じ作業を繰り返して、
図12に示すように、中間案内路8を形成する。
図11は、第1〜第4縦管部材11,12,13,14を吊ったままの状態で、第4縦管部材14の真下に、受け口10aが上側になった状態で第5縦管部材15を配置した場合を示している。そうして、中間案内路8の形成が終わると、引き続き同じ作業を繰り返して、下部螺旋案内路9を形成する。
【0053】
第1〜第9縦管部材11,…,19の接続が完了すると、
図12に示すように、縦管1を吊り上げた状態で、円環状の支持台20を立坑3の下端部に構築する。支持台20は、立坑3の下端部に複数のアンカー(図示せず)を打ち込み、これら複数のアンカーを巻き込むようにコンクリートを打設することによって構築してもよいし、金属製の円環部材を立坑3の下端部にアンカーボルト(図示せず)で固定することによって構築してもよい。
【0054】
支持台20の構築が完了すると、縦管1を下降させて支持台20の上に載置するとともに、縦管1の外周面と立坑3の内周面との間にエアモルタル22等を充填する。次いで、
図13に示すように、中心筒24の先端部を流入管4から搬入し(
図13の二点鎖線参照)、中心筒24を傾けながら流入管4から引き出し(
図13の一点鎖線参照)、ホイストクレーン27で吊り上げて(
図13の実線参照)、縦管1における中心筒23の上端部に設置する。これにより、
図1に示すように、螺旋案内路付き縦管1の立坑3内への設置が完了する。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、縦管1を構成する各縦管部材10を幹線シールド2内で運搬することから、工事占有面積を大きくすることなく、縦管部材10を立坑3の近傍に搬入することができる。また、立坑3内で上昇させた1以上の縦管部材10の真下に他の縦管部材10を配置し、下降させた1以上の縦管部材10のうち最下端の縦管部材10の下端と、他の縦管部材10の上端とを接続するという作業を繰り返すことで、螺旋案内路付き縦管1を立坑3内に容易に構築することができる。
【0056】
(実施形態2)
本実施形態は、縦管部材10をホイストクレーン27で上方から吊り上げるのではなく、ジャッキ50によって下方から押し上げる点が、上記実施形態1とは大きく異なるものである。以下、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
【0057】
本実施形態では、各縦管部材10は受け口10aが下側になった状態で立坑3の真下に配置されることから、
図14(a)に示すように、各縦管部材10は受け口10aが下側になった状態で運搬台車31に載置される。なお、挿し口10bおよび受け口10aの上下を、上記実施形態1と逆転させるのは、挿し口10bの下端をジャッキ50で支持すると、挿し口10bを受け口10aに挿入することが困難となるからである。
【0058】
運搬台車31は、
図14(b)に示すように、架台35の形状が略十字状である点が、上記実施形態1の運搬台車30と異なる。このような略十字状の架台35を用いることで、縦管部材10の下端(厳密には円筒部材10dの下端)を間欠的(部分的)に支持することができるので、後述するジャッキ50の支持部53との干渉を避けることが可能となっている。
【0059】
このような運搬台車31を用いて第1縦管部材11を幹線シールド2内で搬送し、
図15(a)に示すように、立坑3の真下に設置されたジャッキ基台51の上に配置する。このとき、係合部36とガイドレール29とを係合させることで、立坑3と第1縦管部材11との芯合わせは完了している。なお、本実施形態では、第1縦管部材11にも受け口10aが形成されている。また、ジャッキ基台51と幹線シールド2の底部とは、緩やかなスロープ(図示せず)で繋がっており、かかるスロープを上ることで、運搬台車31をジャッキ基台51の上に配置することが可能となっている。
【0060】
ジャッキ50は、ジャッキ基台51と、当該ジャッキ基台51に据え付けられた4つのジャッキ本体52とを有している。なお、ジャッキ50を設置する箇所には、砂やモルタル等の基材49を敷き詰めるとともに、敷鉄板55を敷いて水平な状態とすることが好ましい(
図16(a)参照)。
【0061】
4つのジャッキ本体52の上端部には、支持部53が着脱可能となっている。支持部53は、
図16(b)に示すように、2分割構造の円環状に形成されていて、内周縁部に90°間隔で矩形状の切欠きが形成されているとともに、外周縁部に径方向外側にそれぞれ延びる4つ取付部53aが形成されている。この支持部53は、
図15(b)の矢印で示すように、当該支持部53を2分割した部材の内周縁部で、第1縦管部材11を支持している架台35を側方から挟み込み、取付部53aをジャッキ本体52の上端部に固定することで、ジャッキ本体52に取り付けられる。これにより、支持部53は、第1縦管部材11の円筒部材10dの下端における、略十字状の架台35によって支持されている部位以外の部位を支持するようになっている。
【0062】
そうして、ジャッキ本体52を伸ばして、第1縦管部材11を受け口10aが下側になった状態で立坑3の下方から押し上げる(上昇工程)。次いで、
図16(a)に示すように、第1縦管部材11を押し上げたままの状態で、運搬台車31を用いて第2縦管部材12(他の縦管部材)を幹線シールド2内で搬送し、第1縦管部材11の真下に、挿し口10bが上側になった状態で配置する(配置工程)。
【0063】
次いで、ジャッキ本体52を縮めて、第1縦管部材11を下降させ、当該第1縦管部材11の受け口10aを第2縦管部材12の挿し口10bに被せて、第1縦管部材11の下端と第2縦管部材12の上端とを接続する(接続工程)。このとき、
図10と同様の手法で、複数のチェーンブロック46によって第1および第2縦管部材11,12に均等に荷重をかけて、両者を接続する。
【0064】
第1縦管部材11と第2縦管部材12とが接続されると、支持部53には荷重が掛からなくなるので、支持部53をジャッキ本体52の上端部から取り外した後、ジャッキ本体52を縮める。そうして、支持部53を2分割した部材の内周縁部で、第2縦管部材12を支持している架台35を側方から挟み込み、取付部53aをジャッキ本体52の上端部に再び固定する。
【0065】
このような作業を繰り返すことで、第1〜第9縦管部材11,…,19の接続が完了すると、縦管1を押し上げて、立坑3の下端部に支持台21を構築する。支持台21を構築する場合には、第9縦管部材19の下端を、立坑3内における支持台21の構築部分よりも高く押し上げる必要がある。もっとも、取付部53aがあると、支持部53が立坑3内に入っていかない。このため、支持台21を構築する場合には、例えば、取付部53aが省略された支持部53と、立坑3内に挿入されるような位置に配置されたジャッキ本体52と、を有するジャッキで受け替えておくことが望ましい。
【0066】
支持台21は、
図17に示すように、運搬台車31の略十字状の架台35と同様に間欠的に(4か所で)縦管1を支持するとともに、支持部53に対応する部分に環状溝21aを設ければ、支持部53と干渉することなく構築することができる。支持台21の構築が完了すると、縦管1を下降させて支持台21の上に載置するとともに、縦管1の外周面と立坑3の内周面との間にエアモルタル22等を充填する。
【0067】
以上のように、本実施形態によれば、支持架台28等を設置することなく、複数の縦管部材10を上昇させるための反力を容易に得ることができる。また、コンクリート構造物は引張に弱く圧縮に強いところ、上方から吊り上げる場合には、支持架台28を介して流入桝5の壁部に主として引張応力や曲げ応力が作用するおそれがあるのに対し、下方から押し上げる場合には、幹線シールド2に主として圧縮応力が作用することから、縦管1の施工に伴ってコンクリート構造物が損傷するのを抑えることができる。
【0068】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神または主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0069】
上記各実施形態では、上部螺旋案内路7と中間案内路8と下部螺旋案内路9とを備える縦管1に本発明を適用したが、これに限らず、例えば、立坑3の高さが低いような場合には、中間案内路8を省略した上部螺旋案内路7と下部螺旋案内路9とからなる縦管1に本発明を適用してもよい。
【0070】
また、上記実施形態1では、昇降機としてホイストクレーン27を用いたが、これに限らず、例えば電気チェーンブロック等を用いてもよい。
【0071】
さらに、上記各実施形態では、各種の締付バンド37,38,39が作業中にずれるのを防止するために、各縦管部材10の外周面に複数の突起部10eを設けたが、これらの突起部10eは必ずしも必要ではなく、例えばゴムパッキン26による挿入抵抗の大きさや縦管部材10の重量等に応じて、その一部または全部を省略してもよい。
【0072】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。