(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記U字状部分が前記貫通孔に嵌り込んだ状態では、前記突出部分において前記貫通孔を取り囲む淵面のうち、前記幅方向の両端部に位置する部分に前記U字状部分が当接していることを特徴とする請求項3又は5に記載の車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の付勢部材を利用するにあたり、当該付勢部材を車両用シートの所定箇所に配置することになる。この際、車両用シートのコンパクト化を図る観点から特許文献1のように車両用シートの幅方向においてリンク同士の間に付勢部材を配置するのが好適である。一方、付勢部材をリンク同士の間に配置するために当該付勢部材を車両用シートの所定部位に取り付ける際には、より容易に取り付けを行えることが求められている。しかしながら、特許文献1のように付勢部材の端部がリンクの外側に回り込んでシート本体に取り付けられる場合、取り付け作業がより難しくなる。また、付勢部材の端部がリンクの外側にはみ出るため、その分、車両用シートのサイズアップに繋がる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高さ調整機構を備える車両用シートとして、シート本体の上方への移動をアシストするような付勢力を付与する部材をより容易に、且つ、よりコンパクトに配置した車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の車両用シートによれば、シート本体と、該シート本体よりも下方に配置されて前記シート本体の高さを調整する高さ調整機構と、を有する車両用シートであって、前記高さ調整機構は、前記車両用シートの幅方向において互いに離れた位置に設けられ、前記シート本体を上下動させるために前記シート本体と共に揺動する第一リンク及び第二リンクと、前記シート本体を上方に移動させる向きに前記第一リンク及び前記第二リンクが揺動する際、前記シート本体の上方への移動をアシストする向きに前記第一リンク、前記第二リンク及び前記シート本体のうちのいずれかを付勢する付勢部材と、
前記シート本体に対して回転自在に取り付けられたピニオンギアと、前記第二リンクの延出方向一端部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合うセクタギアと、を備え、
前記付勢部材の一端部が前記第一リンクに取り付けられてお
り、前記付勢部材の他端部が前記第二リンクよりも前記幅方向において内側
かつ前記シート本体において前記セクタギアよりも内側に位置したカバー部材に取り付けられていることにより解決される。
【0008】
上記の構成では、付勢部材の一端部が第一リンクに取り付けられており、付勢部材の他端部が第二リンクよりも内側に位置する部材に取り付けられている。このような構成であれば、車両用シートにおいて第一リンク及び第二リンクの間のスペースを有効利用して付勢部材を配置することが可能となる。また、リンク間のスペース内で付勢部材の取り付けを行うので、付勢部材が上記スペースを超えることがなく、その分、取り付け作業が容易となる。したがって、本発明の車両用シートでは付勢部材をより容易に、且つ、よりコンパクトにシート内に配置することが可能となる。
【0009】
また
、上記の構成では、シート本体中、セクタギアよりも内側に位置したカバー部材に付勢部材の端部が取り付けられている。このように付勢部材が取り付けられる部材がシート幅方向においてより内側に位置するため、付勢部材の取り付けがより一層容易になる。
【0010】
また、上記の車両用シートにおいて、前記高さ調整機構は、前記第一リンク及び前記第二リンクの双方を連結するために当該双方の間において前記幅方向に沿って延びている連結部材を更に有し、前記付勢部材は、前記一端部と前記他端部との間に位置する部分が前記連結部材の外表面に沿うように配置されていると更によい。
上記の構成では、付勢部材のうち、一端部と他端部との間に位置する部分が連結部材の外表面に沿っているため、より一層コンパクトに付勢部材をシート内に配置することが可能となる。
【0011】
また、上記の車両用シートにおいて、前記第一リンクは、揺動軸を介して前記シート本体に支持された本体部分と、該本体部分から前記幅方向の内側に向かって突出した突出部分と、を備え、前記付勢部材の前記一端部は、前記突出部分に取り付けられていると尚よい。
上記の構成では、第一リンク中、シート幅方向に突出した突出部に付勢部材の端部が取り付けられている。このようにリンク(第一リンク)のうち、付勢部材が取り付けられる部分がシート幅方向においてより内側に位置するため、付勢部材の取り付けが益々容易になる。
【0012】
また、上記の車両用シートにおいて、前記突出部分には貫通孔が形成されており、前記付勢部材の前記一端部は、折り曲げられてU字状をなしているU字状部分を備え、該U字状部分が前記貫通孔に嵌り込むことで前記突出部分に固定されていると一段とよい。
上記の構成では、突出部に形成された貫通孔に付勢部材の一端部に形成されたU字状部分を嵌め込むことで、付勢部材の一端部を上記の突出部に取り付ける。これにより、付勢部材の一端部を第一リンクに対して強固に固定することが可能となる。
【0013】
また、上記の車両用シートにおいて、前記U字状部分が前記貫通孔に嵌り込んだ状態では、前記突出部分において前記貫通孔を取り囲む淵面のうち、前記幅方向の両端部に位置する部分に前記U字状部分が当接していると尚一層よい。
上記の構成では、貫通孔に嵌まり込んだU字状部分が、貫通孔を取り囲む淵面のうち、シート幅方向の両端に位置する部分と当接している。これにより、付勢部材の動き(特にシート幅方向の動き)が規制され、付勢部材の一端部を第一リンクに対してより強固に固定することが可能となる。
【0014】
また、上記の車両用シートにおいて、前記高さ調整機構は、前記第一リンク及び前記第二リンクの双方を連結するために当該双方の間において前記幅方向に沿って延びている連結部材を更に有し、前記U字状部分が前記貫通孔に嵌まり込んだ状態では、前記付勢部材の前記一端部のうち、前記U字状部分よりも前記連結部材に近い部分が前記連結部材と前記突出部分とよって挟まれていると尚更よい。
上記の構成では、付勢部材の一端部のうち、U字状部分よりも連結部材に近い部分が連結部材及びリンクの突出部分によって挟み込まれている。これにより、付勢部材の動き(特に上下方向の動き)が規制され、付勢部材の一端部を第一リンクに対して更に強固に固定することが可能となる。
【0015】
また、上記の車両用シートにおいて、前記高さ調整機構は、前記第一リンク及び前記第二リンクの双方を連結するために当該双方の間において前記幅方向に沿って延びている連結部材を更に有し、前記付勢部材中、前記一端部と前記他端部との間に位置する部分は、前記連結部材の外表面に沿っており、環状の保持具によって前記連結部材とともに該保持具の内側に保持されていると殊更よい。
上記の構成では、付勢部材が環状の保持具によって連結部材とともに保持具の内側に保持されている。これにより、付勢部材は、連結部材と近接した位置にて安定的に保持されるようになり、また、連結部材と近接していることで一段とコンパクトにシート内に配置されるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、付勢部材をより容易に、且つ、よりコンパクトにシート内に配置することが可能となる。
また、本発明によれば、シート本体中、セクタギアよりも内側に位置したカバー部材に付勢部材の端部を取り付けることで、付勢部材の取り付けがより一層容易になる。
また、本発明によれば、付勢部材中、一端部と他端部との間に位置する部分が連結部材の外表面に沿っていることで、より一層コンパクトに付勢部材をシート内に配置することが可能となる。
また、本発明によれば、第一リンク中、シート幅方向に突出した突出部に付勢部材の端部を取り付けることで、付勢部材の取り付けが益々容易になる。
また、本発明によれば、出部に形成された貫通孔に付勢部材の一端部に形成されたU字状部分を嵌め込むことで、付勢部材の一端部を第一リンクに対して強固に固定することが可能となる。
また、本発明によれば、貫通孔に嵌まり込んだU字状部分が、貫通孔を取り囲む淵面のうち、シート幅方向の両端に位置する部分と当接しているので、付勢部材の一端部を第一リンクに対してより強固に固定することが可能となる。
また、本発明によれば、付勢部材の一端部のうち、U字状部分よりも連結部材に近い部分が連結部材とリンクの突出部分とによって挟み込まれているので、付勢部材の一端部を第一リンクに対して更に強固に固定することが可能となる。
また、本発明によれば、環状の保持具によって付勢部材が連結部材とともに保持具の内側に保持されているので、付勢部材が、連結部材と近接した位置にて安定的に保持されると共に、より一層コンパクトにシート内に配置されるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<<本発明の一実施形態に係る車両用シートの構成>>
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)に係る車両用シートの構成について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0019】
なお、以下の説明中、前後方向とは、車両用シートに着座した着座者から見たときの前後方向を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。車両用シートの幅方向とは、車両用シートの左右方向(横幅方向)を意味し、以下では単に幅方向という。高さ方向とは、上下方向とは、車両用シートを正面から見たときの上下方向を意味し、車両用シートの高さ方向に相当する。
【0020】
先ず、本実施形態に係る車両用シート(以下、本シートS)の基本構成について
図1を参照しながら説明する。本シートSは、乗員が着座するシート本体Shを主要構成要素として有する。シート本体Shは、
図1に示すように、シートバックS1、シートクッションS2及びヘッドレストS3により構成される。また、シート本体Shの骨格をなすシートフレームFは、
図2に示すように、シートバックフレームF1及びシートクッションフレームF2により構成される。
【0021】
また、
図2に示すように、シート本体Shの下部にはスライドレール機構Rが設けられている。スライドレール機構Rは、シート本体Shを前後方向にスライド移動させるための機構である。スライドレール機構Rは、車体フロアに固定されたロアレールR1、及び、ロアレールR1に沿ってスライドするアッパレールR2を主要構成要素として有する。ロアレールR1及びアッパレールR2は、それぞれ、幅方向において互いに間隔を空けた状態で一対ずつ設けられている。また、各ロアレールR1及び各アッパレールR2は、いずれも本シートSの幅方向における両端よりも内側に配置されている。
【0022】
なお、以下の説明では、本シートSを正面から見て左側に位置するロアレールR1及びアッパレールR2を左側のロアレールR1及びアッパレールR2と言い、右に位置するロアレールR1及びアッパレールR2を右側のロアレールR1及びアッパレールR2と言う。
【0023】
また、
図2に示すように、本シートSは、シート本体Shの高さを調整する高さ調整機構1を備えている。この高さ調整機構1は、上下方向においてシートクッションフレームF2とアッパレールR2との間に配置されている。具体的に説明すると、シートクッションS2の脇位置に設けられた
図1に図示の操作レバー2が操作されると、これに連動してリンク11、12、13、14が前後方向及び上下方向に揺動する。一方、
図3に示すように、各リンク11、12、13、14は、その延出方向一端部にてシートクッションフレームF2に取り付けられている。したがって、各リンク11、12、13、14が揺動する際にはシート本体Shと共に揺動することになり、これにより、シート本体Shの高さが調整される。
【0024】
次に、高さ調整機構1の構成について、
図3乃至6を参照しながら説明する。高さ調整機構1は、一対の後方リンク11、12及び一対の前方リンク13、14を有する。後方リンク11、12及び前方リンク13、14は、シート本体Shを上下動させるためにシート本体Shと共に前後方向及び上下方向に揺動する。
【0025】
また、後方リンク11、12及び前方リンク13、14は、それぞれ、幅方向において互いに離れた位置に一対ずつ設けられている。具体的に説明すると、本シートSを正面から見て左側に位置する後方リンク11及び前方リンク13は、延出方向一端部(前端部)が左側のアッパレールR2に支持され、かつ、延出方向他端部(後端部)がシートクッションフレームF2の左端部(具体的には、左側のサイドフレームFs)に支持された状態で配置されている。他方、本シートSを正面から見て右側に位置する後方リンク12及び前方リンク13は、延出方向一端部(前端部)が右側のアッパレールR2に支持され、かつ、延出方向他端部(後端部)がシートクッションフレームF2の右端部(具体的には、右側のサイドフレームFs)に支持された状態で配置されている。
【0026】
より詳しく説明すると、前方リンク13、14は、所定方向に延出したアーム状の部材からなる。また、
図3に示すように、前方リンク13、14の延出方向一端部(前端部)は、アッパレールR2の上端面から上方に舌状に突出した前側リンク支持部Rs1にピボットピン21を介して揺動自在に支持されている。また、前方リンク13、14の延出方向他端部(後端部)は、シートクッションフレームF2のサイドフレームFs中の前方部分にピボットピン22を介して揺動自在に支持されている。なお、ピボットピン21、22は、揺動軸に相当し、その中心軸は幅方向に沿っている。
【0027】
後方リンク11、12は、前方リンク13、14よりも幾分長いアーム状の部材からなる。また、
図3に示すように、後方リンク11、12の延出方向一端部(前端部)は、アッパレールR2の上端面から上方に舌状に突出した後側リンク支持部Rs2にピボットピン23を介して揺動自在に支持されている。また、後方リンク11、12の延出方向他端部(後端部)は、シートクッションフレームF2のサイドフレームFs中の後方部分にピボットピン24を介して揺動自在に支持されている。なお、ピボットピン23、24は、揺動軸に相当し、その中心軸は幅方向に沿っている。
【0028】
また、
図4に示すように、左側の後方リンク11(第一リンクに相当)と右側の後方リンク12(第二リンクに相当)とは、連結部材17によって連結している。この連結部材17は、中空状のパイプからなり、
図5に示すように幅方向に沿って延出している。また、連結部材17の一端部は、左側の後方リンク11の内側面(幅方向において内側を向いた面)に接合されており、連結部材17の他端部は、右側の後方リンク12の内側面に接合されている。このように左右の後方リンク11、12が連結部材17によって連結しているので、左右両方の後方リンク11、12は、一体的に揺動するようになる。
【0029】
なお、本実施形態では、中空状のパイプからなる連結部材17について説明したが、これに限定されるものではない。連結部材17が中実状のパイプによって構成されていてもよく、あるいは、パイプ形状以外の形状を有する部材によって構成されていてもよい。
【0030】
また、本実施形態において、後方リンク11、12において連結部材17が接合している部分は、後方リンク11、12の揺動中心、すなわち、後方リンク11、12の延出方向端部(厳密には後端部)においてピボットピン24にて支持された部分となっている。すなわち、連結部材17は、後方リンク11、12のうち、ピボットピン24にて支持された部分と隣り合うように設けられている。
【0031】
また、右側の後方リンク12の後端部は、
図3及び4に示すように略扇形形状となっている。また、略扇形形状となった右側の後方リンク12の後端部のうち、前方部分にはギア歯が形成されている。つまり、右側の後方リンク12の後端部、すなわち延出方向一端部は、セクタギア15を構成している。このセクタギア15は、
図3及び
図5に示すようにピニオンギア16と噛み合っている。ピニオンギア16は、シートクッションフレームF2中のサイドフレームFsに対して回転自在に取り付けられている。より具体的に説明すると、ピニオンギア16と、不図示の連結軸を介して操作レバー2と連結している。
【0032】
そして、操作レバー2の先端部を持ち上げられる操作(あるいは、押し下げる操作)が行われると、操作レバー2と一体的にピニオンギア16が回転(厳密には、回動)するようになる。ピニオンギア16が回転すると、ピニオンギア16とセクタギア15との噛み合い位置が変化する。これに伴って、右側の後方リンク12が左側の後方リンク11と共に揺動する。さらに、左右の前方リンク13、14が後方リンク11、12の揺動に連動する形で揺動するようになる。そして、以上に説明した各リンク11、12、13、14の揺動動作によってシート本体Shの高さが調整される。
【0033】
なお、本実施形態では、
図5に示すように、シートクッションフレームF2が、セクタギア15よりも幅方向内側に位置する箇所にカバーブラケット3を備えている。このカバーブラケット3は、カバー部材の一例であり、金属製の板金からなる。また、本実施形態において、カバーブラケット3は、
図5に示すようにシートクッションフレームF2中、右側のサイドフレームFsの内壁面に取り付けられている。そして、カバーブラケット3は、セクタギア15を構成する右側の後方リンク12をカバーする。すなわち、右側の後方リンク12は、幅方向において右側のサイドフレームFsとカバーブラケット3との間に形成された隙間内に配置されている。
【0034】
ちなみに、カバーブラケット3の後端部には、
図5に示すように前述した連結部材17を挿通させるための挿通孔3aが形成されている。また、カバーブラケット3の前端部には、シートクッションフレームF2のうち、着座者の臀部を支持するSバネFbの端部を引っ掛けるための切り起こし部3bが形成されている。
【0035】
ところで、本実施形態に係る高さ調整機構1は、上記の各リンク11、12、13、14の他に、
図6に図示のトーションバー30を備えている。このトーションバー30は、付勢部材の一例であり、シート本体Shを上方に移動させる向きに上記の各リンク11、12、13、14が揺動する際、シート本体Shの上方への移動をアシストする向きの付勢力を付与するものである。なお、本実施形態に係るトーションバー30は、シート本体Shの上方への移動をアシストするにあたり、シート本体Shを付勢するものである。ただし、これに限定されるものではなく、付勢部材については、シート本体Sh以外を付勢するもの、具体的には、上記の各リンク11、12、13、14のうちの少なくとも一つを付勢するものであってもよい。
【0036】
トーションバー30の構成について説明すると、比較的径が太い金属製の棒バネからなり、シート内に組み付ける前の状態(未使用状態)では
図6に示す外形形状をなしている。同図を参照しながら未使用状態のトーションバー30の形状について説明すると、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸及びZ軸とすると、X軸方向に長く延びた長尺部31と、長尺部31の一端に隣接しY軸方向に延出した一端部32と、長尺部31の他端に隣接しZ軸方向に延出した他端部33と、が備えられている。換言すると、長尺部31は、トーションバー30のうち、一端部32と他端部33との間に位置する部分に相当する。
【0037】
また、一端部32の延出方向中央部分には、折り曲げられてU字状をなしているU字状部分34が備えられている。このU字状部分34は、Z軸方向において他端部33が延出する方向とは反対側に隆起するように折り曲げられることで構成されている。また、他端部33の延出方向先端部は、X軸方向に沿ってL字状に折り曲げられている。
【0038】
以上のような形状を有するトーションバー30は、長尺部31の他端側を捻じって他端部33の延出方向がY軸方向に沿った状態でシート内に組み付けられる。シート内に組み付けられたトーションバー30は、他端部33が元の位置に復帰する力を付勢力とし、当該他端部33が取り付けられている部分を付勢するようになる。
【0039】
次に、本実施形態におけるトーションバー30の配置及び取り付け方式について、既出の
図5と共に、
図7乃至10を参照しながら説明する。なお、
図7では、説明を分かり易くするために一部の部材(例えば、右側の後方リンク12やSバネFb)の図示を省略している。
【0040】
トーションバー30は、幅方向において左右の後方リンク11、12の内側に配置されており、
図5に示すように長尺部31が幅方向に沿うように配置されている。さらに、トーションバー30の存在を目立ち難くする目的から、長尺部31が連結部材17の外表面の下端部分に沿うようにトーションバー30が配置されている。このような配置位置によれば、長尺部31が連結部材17から離れている構成に比較して、よりコンパクトにトーションバー30をシート内に配置することが可能となる。
【0041】
なお、本実施形態では、トーションバー30の長尺部31が連結部材17から下方へ離れてしまうのを抑制する目的から、
図5や
図7に図示の環状の保持具4を用いて長尺部31の配置位置を維持している。具体的に説明すると、環状の保持具4の内部には、長尺部31及び連結部材17の双方が挿通されている。すなわち、環状の保持具4は、その内側に長尺部31及び連結部材17の双方を保持して束ね、長尺部31との間に若干の隙間を設けた状態で上記双方を保持する。これにより、トーションバー30は、長尺部31が連結部材17に近接した位置にて安定的に保持され、一段とコンパクトにシート内に配置されるようになる。
【0042】
また、トーションバー30の他端部33は、シート本体Shにおいて右側の後方リンク12よりも幅方向内側に位置する部材に取り付けられている。具体的には、トーションバー30の他端部33は、前述したカバーブラケット3の前後方向中央部分に取り付けられている。より具体的に説明すると、
図7に示すように、カバーブラケット3の前後方向中央部分には、その周囲よりも一段隆起した隆起部3cが設けられている。また、隆起部3cの略中央位置には係合穴3dが形成されている。
【0043】
そして、トーションバー30の他端部33は、
図7に示すように、L字状に曲がった延出方向先端部を係合穴3d内に挿入して当該係合穴3dの淵部に引っ掛けることで、カバーブラケット3に取り付けられている。なお、カバーブラケット3において、係合穴3dは、連結部材17の挿通孔3aの形成箇所に比較的に近い箇所に形成されている。一方、連結部材17は、前述したように、右側の後方リンク12の揺動中心(具体的には、ピボットピン24にて支持された部分)と隣り合うように設けられている。このような位置関係によれば、トーションバー30の他端部33が係合穴3dに係合されることで、シート本体Sh中、右側の後方リンク12の揺動中心に比較的近接した部分がトーションバー30によって付勢されることになる。
【0044】
また、トーションバー30の一端部32は、左側の後方リンク11に取り付けられている。ここで、左側の後方リンク11の形状について
図8を参照しながら説明すると、左側の後方リンク11は、長尺アーム状の本体部分11aと、本体部分11aから幅方向内側に向かって突出した突出部分11bと、を有する。本体部分11aは、ピボットピン24を介してシートクッションフレームF2のサイドフレームFsに支持された部分である。なお、本体部分11aの延出方向端部(厳密には、後端部)の内壁面には前述の連結部材17の端面が接合している。
【0045】
突出部分11bは、平面視で矩形状となった部分であり、本体部分11aの内側面から幅方向内側に向かって突出している。また、突出部分11bは、本体部分11aの長手方向に沿って延出している。なお、
図8に示すように、突出部分11bの延出方向一端は、本体部分11aの長手方向において略中央位置に達しており、突出部分11bの延出方向他端は、本体部分11aの長手方向の端位置(後端位置)よりも若干手前に位置している。
【0046】
そして、トーションバー30の一端部32は、突出部分11bの上面に載せられた状態で左側の後方リンク11に取り付けられている。より詳しく説明する、
図8、9及び10に示すように、突出部分11bのうち、延出方向中央部分には矩形状の貫通孔11cが形成されている。この貫通孔11cには、
図10に示すように、トーションバー30の一端部32中、U字状部分34が嵌り込まれている。このようにU字状部分34が貫通孔11cに嵌まり込むことで、トーションバー30の一端部32が左側の後方リンク11の突出部分11bに取り付けられている(厳密には、固定されている)。
【0047】
なお、貫通孔11cの横幅(幅方向の長さ)は、トーションバー30の外径と略一致している。このため、U字状部分34が貫通孔11cに嵌り込んだ状態では、
図9に示すように、突出部分11bにおいて貫通孔11cを取り囲む淵面のうち、幅方向の両端部に位置する部分にU字状部分34の側面が当接している。このような構成であれば、トーションバー30の一端部32の動き(特に、幅方向の動き)を効果的に規制し、当該一端部32を左側の後方リンク11に対してより強固に固定することが可能となる。
【0048】
また、U字状部分34が貫通孔11cに嵌り込んだ状態では、
図10に示すように、トーションバー30の一端部32のうち、U字状部分34よりも連結部材17に近い部分(具体的には、長尺部31と隣接する後端部分32a)が連結部材17と突出部分11bとよって挟まれている。このようにトーションバー30の一端部32の後端部分32aが連結部材17と突出部分11bとよって挟まれていることで、トーションバー30の一端部32の動き(特に、上下方向の動き)が効果的に規制されるようになる。かかる構成によれば、前述した環状の保持具4と相俟って、トーションバー30の長尺部31を連結部材17と近接した位置に安定的に保持することが可能となる。さらに、トーションバー30の一端部32を左側の後方リンク11に対してより一層強固に固定することが可能となる。
【0049】
以上までに説明してきたように、本シートSでは、付勢部材としてのトーションバー30を左右の後方リンク11、12の間、すなわち、後方リンク11、12よりも幅方向値側の位置に配置した。これにより、後方リンク11、12間のスペースを有効利用してトーションバー30をコンパクトに配置することが可能となる。また、トーションバー30の一端部32については左側の後方リンク11に固定されており、トーションバー30の他端部33については右側の後方リンク12よりも幅方向内側に位置する部材、具体的にはカバーブラケット3に取り付けられている。かかる構成によれば、リンク間のスペース内でトーションバー30の取り付けが行われているので、トーションバー30が上記スペースを超えることがなく、その分、取り付け作業が容易となる。したがって、本シートSでは、トーションバー30の取り付けをより容易に行い、且つ、当該トーションバー30がよりコンパクトにシート内に配置されていることになる。
【0050】
以上までに本発明の車両用シートの実施形態について具体例を挙げて説明したが、上記の実施形態はあくまでも一例に過ぎず、他の実施形態も考えられる。例えば、上記の実施形態では、トーションバー30の両端部のうちの一方を後方リンク(具体的には左側の後方リンク11)に固定することとした。すなわち、上記の実施形態では、後方に位置するリンクに対してトーションバー30を設けることとした。ただし、これに限定されるものではなく、前方に位置するリンクに対してトーションバー30を設けることとしてもよい。あるいは、後方に位置するリンク及び前方に位置するリンクの両方に対して、それぞれ個別にトーションバー30を設けることとしてもよい。
【0051】
また、上記の実施形態では、付勢部材の一例としてトーションバー30を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。一端部をリンクに取り付け、かつ、他端部をリンク以外の部材に取り付けた状態で付勢力を付与してシート本体Shの上昇をアシストするものである限り、他の付勢部材を用いてもよい。
【0052】
また、上記の実施形態では、トーションバー30の他端部33をシート本体Shのうち、カバーブラケット3に取り付けることとした。ただし、他端部33を取り付ける箇所については、右側の後方リンク12よりも幅方向内側に位置しているものであればよい。ここで、右側の後方リンク12よりも幅方向内側に位置している部材とは、その全部が右側の後方リンク12よりも幅方向内側に位置している部材を含む他、一部分が右側の後方リンク12よりも幅方向内側に位置している部材をも含む。したたって、例えば、右側のアッパレールR2のうち、右側の後方リンク12よりも幅方向内側に位置する部分にトーションバー30の他端部33を取り付けることとしてもよい。
【0053】
また、上記の実施形態では、左側の後方リンク11に突出部分11bを設け、当該突出部分11bにトーションバー30の一端部32を固定することとした。ただし、左側の後方リンク11の構成については、突出部分11bを備えるものに限定されず、突出部分11bを備えない構成(例えば、一端部32を引っ掛けるための切り欠きや切り起こしが形成された構成)であってもよい。