特許第6353344号(P6353344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6353344シール構造及びコントロールケーブルユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353344
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】シール構造及びコントロールケーブルユニット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20180625BHJP
   F16C 1/10 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   F16J15/10 L
   F16C1/10 B
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-220280(P2014-220280)
(22)【出願日】2014年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-89843(P2016-89843A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】今川 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】西村 淳史
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/118774(WO,A1)
【文献】 特開2009−68518(JP,A)
【文献】 特開2006−266284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F16C 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部材と、
前記長尺部材が挿通される挿通部を有するシール部材と、
を有するシール構造であって、
前記挿通部は、
前記長尺部材が挿入される第1開口部と、
前記第1開口部から挿入された前記長尺部材が挿出される第2開口部と、
前記第1開口部と前記第2開口部とを繋いで前記長尺部材が挿通される挿通路と、
前記長尺部材の挿通方向に面する端面を有し、前記第1開口部および前記第2開口部のうちいずれか一方である、流水の流入の可能性のある流入開口部が設けられる端壁部と、
前記端壁部の前記端面と交わる側面を有する側壁部と、
前記挿通路の中間部に形成され、挿通された前記長尺部材の外周と当接するシール部と、
を有し、
前記端壁部は、前記長尺部材の挿通方向に沿って流れる流水が前記側壁部の前記側面に直接当たるのを遮るように設けられ、
前記側壁部には、前記側壁部の前記側面から、前記挿通路における前記シール部よりも前記流入開口部側の部位へ接続する排出路が設けられ、
前記排出路は、前記長尺部材の外周と前記挿通路の内面との間に形成された間隙であって、前記長尺部材の挿通方向に沿って流水が流入可能な前記間隙と連通する、
ことを特徴とするシール構造。
【請求項2】
前記排出路は、前記長尺部材の挿通方向に直交する方向に延びるように設けられた、
請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記排出路は、前記挿通路側から前記側面側へ向いた前記排出路の方向と、前記流入開口部側から他端の開口部側へ向いた前記挿通路の方向との成す角度が、鋭角になるように設けられた、
請求項1に記載のシール構造。
【請求項4】
前記排出路は、前記挿通路側から前記側面側へ向いた前記排出路の方向と、前記流入開口部側から他端の開口部側へ向いた前記挿通路の方向との成す角度が、鈍角になるように設けられた、
請求項1に記載のシール構造。
【請求項5】
前記シール部はリング状であり、且つ、複数の前記シール部が前記挿通路に沿って並列して設けられ、
前記排出路と前記挿通路とは、少なくとも1つの前記シール部より前記流入開口部側で接続した、
請求項1に記載のシール構造。
【請求項6】
前記シール部は、複数の主シール部と、前記主シール部より低い複数の副シール部とを有し、
前記排出路と前記挿通路とは、少なくとも1つの前記主シール部より前記流入開口部側で接続した、
請求項5に記載のシール構造。
【請求項7】
前記主シール部の頂部における内径は、前記長尺部材の外径の65%から99%の間にあり、
前記副シール部の頂部における内径は、前記長尺部材の外径の92%から100%の間にある、
請求項6に記載のシール構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のシール構造を有するコントロールケーブルユニットであって、
インナーケーブルと、前記インナーケーブルを収容するアウターケーシングとを有する、前記長尺部材としてのコントロールケーブルと、
前記シール部材としてのグロメットと、
を備えるコントロールケーブルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール構造及びコントロールケーブルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両では、車内の運転者が操作レバーを引き操作して、車外の装置へ引き操作を伝達するため、車内と車外とにわたってコントロールケーブルが配索されている。このため、車内と車外とを区切る隔壁にコントロールケーブルを通す孔が貫通している必要があり、また、この貫通部分から粉塵及び水等が侵入しない構造が必要である(例えば、特許文献1参照)。このような構造には、主に、グロメットが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−68518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両搭載時にコントロールケーブルを配索する際、グロメットの軸とコントロールケーブルの軸がずれると、グロメットとコントロールケーブルとの間に隙間が生じ、生じた隙間から車内へ水が浸入する。しかし、軸ずれを防止してもコントロールケーブルとグロメットとの接触が弱い場合には、外部に露出したコントロールケーブルに沿って流れてきた圧力の高い水が、グロメットを変形させるなどして、グロメットとコントロールケーブルとの隙間から浸入する。
【0005】
一方、コントロールケーブルが挿通されるグロメットの挿通路を、コントロールケーブルをきつく締めるように構成すれば、水の浸入は防止できる。しかし、この構成では、コントロールケーブルを挿通するのが困難となる。
【0006】
本発明の目的は、コントロールケーブルなどの長尺部材を挿通してシールするシール構造において、長尺部材の挿通路をきつく構成することなく、水の浸入を防ぐシール構造及びコントロールケーブルユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るシール構造は、長尺部材と、前記長尺部材が挿通される挿通部を有するシール部材と、を有するシール構造であって、前記挿通部は、前記長尺部材が挿入される第1開口部と、前記第1開口部から挿入された前記長尺部材が挿出される第2開口部と、前記第1開口部と前記第2開口部とを繋いで前記長尺部材が挿通される挿通路と、前記長尺部材の挿通方向に面する端面を有し、前記第1開口部および前記第2開口部のうちいずれか一方である、流水の流入の可能性のある流入開口部が設けられる端壁部と、前記端壁部の前記端面と交わる側面を有する側壁部と、前記挿通路の中間部に形成され、挿通された前記長尺部材の外周と当接するシール部と、を有し、前記端壁部は、前記長尺部材の挿通方向に沿って流れる流水が前記側壁部の前記側面に直接当たるのを遮るように設けられ、前記側壁部には、前記側壁部の前記側面から、前記挿通路における前記シール部よりも前記流入開口部側の部位へ接続する排出路が設けられ、前記排出路は、前記長尺部材の外周と前記挿通路の内面との間に形成された間隙であって、前記長尺部材の挿通方向に沿って流水が流入可能な前記間隙と連通する構成を採る。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コントロールケーブルに沿って、長尺部材と挿通路との間に浸入した水が、シールの内側まで浸入することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係るグロメットを示す上面図
図2図1のA−A線断面図
図3図2の断面におけるグロメットの挿通部の部分拡大断面図
図4図3のシール部に設けられた凹凸を示す説明図
図5】コントロールケーブルの挿通前における挿通部を示す部分拡大図
図6】排出路の向きを変更した場合における図1のA−A線断面図
図7】排出路の向きを変更した場合における図1のA−A線断面図
図8】排出路の位置を変更した場合における図1のA−A線断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るグロメットを示す上面図である。図2は、図1のA−A線断面図である。なお、図中の二点鎖線は、コントロールケーブル1を表す。
【0012】
長尺部材は、コントロールケーブル1、特にアウターケーシング1oを指す。コントロールケーブル1は、インナーケーブル1iと、該インナーケーブル1iを覆うアウターケーシング1oと、で構成されている。但し、これは、長尺部材について限定するものではなく、例えば、インナーケーブル1i、送電線や通信回線などであっても良い。長尺部材については、所定の長さを有し、車両内外などの内側と外側とを貫通して配置される部材を用いることができ、外周面が平滑面であることが好ましい。
【0013】
グロメット2(シール部材に相当)は、自動車の内側と外側を区切る隔壁などに取り付けられた状態で、コントロールケーブル1を保持する。グロメット2は、本体部21と、該本体部21に設けられた挿通部22とを備えている。なお、グロメット2は、弾性を有する材質(エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)など)で形成されている。但し、材質について限定するものではなく、例えば、ニトリルゴム(NBR)やクロロプレンゴム(CR)などであっても良い。また、弾性を有しない材質の一部に弾性を有する材質を合体させたものであっても良い。例えば、金属で形成された本体部21にゴムで形成された挿通部22が焼き付けられたものであっても良い。弾性部材としては、弾性機能を有してアウターケーシング1oと密着することができるものであれよい。本実施の形態では、コントロールケーブル1(長尺部材)と、コントロールケーブル1が挿通される挿通部を有するグロメット2(シール部材)とを有する構造をシール構造という。
【0014】
グロメット2における広く平らに形成された部分は本体部21である。本体部21は、多角形状に形成され、自動車の内側と外側を区切る隔壁に設けられたケーブル穴を塞ぐ。また、本体部21は、二つのボルト孔21hが設けられており、該ボルト孔21hに通されるボルトによって隔壁に固定される。
【0015】
挿通部22は、コントロールケーブル1が挿通される部分であり、本実施形態においてはグロメット2における筒状部23が形成された部分を含む。筒状部23は、その軸方向に延びる挿通路23hが形成されており、ケーブル穴まで配索され、挿通路23hに挿入されたコントロールケーブル1を保持する。また、挿通路23hは、その内壁にシール部24が設けられており、該シール部24によってコントロールケーブル1をシールしている。具体的に説明すると、挿通路23hは、その内壁にシール部24が設けられており、該シール部24の凸部によってアウターケーシング1oの外周をシールしている。
【0016】
また、挿通部22は、開口部23oを備え、開口部23oは第1開口部23o1と第2開口部23o2とを有している。また、挿通部22は、端壁部23tと側壁部23sとを有している。端壁部23tは、コントロールケーブル1の挿通方向に面する端面23t1を有し、両開口部23oのうち車両外側に位置する開口部の側である第1開口部23o1側に設けられる。本実施形態においては、車両外側に位置する開口部である第1開口部23o1は、流水Wtの流入の可能性のある流入開口部である。よって、コントロールケーブル1に沿って流水Wtが流入開口部である第1開口部23o1に向かって流れてきた場合には、流水Wtは端面23t1に当たる。また、側壁部23sの側面23s1は、端壁部23tの端面23t1と交わるように設けられ、端壁部23tは、コントロールケーブル1の挿通方向に沿って流れる流水が側壁部23sの側面23s1に直接当たるのを遮る。ただし、端壁部23tの端面23t1と側壁部23sの側面23s1とは直交していてもよいし、これらの面がなす角が鋭角であってもよい。このような構成により、流水Wtが主に端壁部23tの端面23t1に当たり、筒状の側面の少なくとも一部を構成する側壁部23sの車両外側に面する側面23s1に直接当たらないようにできる。また、側壁部23sには、挿通路23hに侵入した水を排出する排出路23dが設けられる。
【0017】
排出路23dは、挿通路23hにおけるシール部24よりも流入開口部側の部位と、側壁部23sの側面23s1の外側とを連通する。詳細には、排出路23dは、コントロールケーブル1の外周と挿通路23hの内面との間に形成された間隙と側面23s1の外面に形成された開口とを連通する。この間隙には、コントロールケーブル1の挿通方向に沿って流水Wtが流入開口部である第1開口部23o1から流入可能である。排出路23dは、この間隙に流入した流水Wtを排出する。排出路23dは、コントロールケーブル1の挿通方向に直交する方向に延びるように設けられる。このように、排出路23dを設けたことにより、挿通路23hに侵入した水を排出路23dから排出し、挿通路23h内の圧力を低下させることができる。これにより、シール部24に水圧がかからず、シール性を維持することができる。
【0018】
次に、挿通部22について、図3及び図4を用いて詳細に説明する。図3は、グロメット2の挿通部22を示している。図4は、シール部24に設けられた凹凸を示している。
【0019】
上述したように、挿通部22は、グロメット2における筒状部23が形成された部分を含む。筒状部23は、その両端に開口部23oを備えている(図2参照)。開口部23oは、コントロールケーブル1が挿入可能な大きさに形成され、形状が特に限定されるものではないが、本実施形態では円形となっている。そして、第1開口部23o1と第2開口部o2とを連通するように挿通路23hが形成されている。つまり、筒状部23は、一方の開口部23oから他方の開口部23oまで挿通路23hが貫いた形状となっている。このような筒状部23では、一方の開口部23oからコントロールケーブル1が挿入され、挿入されたコントロールケーブル1が挿通路23hを挿通し、他方の開口部23oから挿出される。挿通路23hは、その内壁の中間部にシール部24が設けられており、該シール部24の凸部24pがアウターケーシング1oの外周と当接することによってシールしている。シール部24は、凸部24pが軸方向に離間して設けられており、アウターケーシング1oの外周をシールすることによって、アウターケーシング1oの外周を伝わって水分が内側へと移動することを防止して、防水性を発揮することができる。なお、挿通路23hは、コントロールケーブル1が自動車の内外に亘って配索可能に設けられていればよく、本実施形態においては円筒状とされている。
【0020】
本グロメット2において、シール部24は凹凸を有し、凸部24p間に設けられた凹部24cは、挿通路23hの中心軸Lを中心としてリング状に形成されている。そして、これら凹部24cは、全ての深さが同一となっている。一方、凹凸の凸部24pは、挿通路23hの中心軸Lを中心としてリング状に形成されている。また、凸部24pは、挿通路23hに沿って並列して設けられている。しかし、これら凸部24pは、全ての高さが同一となっていなくてもよい。即ち、本グロメット2における凸部24pは、高さが高い凸部24pと高さが低い凸部24pの二種類が存在してもよい。本実施形態では、高さが高い凸部24pを「第一凸部25(主シール部に相当)」と定義し、高さが低い凸部24pを「第二凸部26(副シール部に相当)」と定義する。
【0021】
第一凸部25は、コントロールケーブル1に密着し、該コントロールケーブル1をシールする。つまり、第一凸部25は、コントロールケーブル1のアウターケーシング1oに密着することにより、該アウターケーシング1oを伝う雨水などの水分をシールする。ここで、第一凸部25は、アウターケーシング1oの挿入性を阻害しない挿入抵抗を有してもよく、アウターケーシング1oの外形に対して密着可能な形状とすることもできる。なお、「密着」とは、弾性変形した第一凸部25がアウターケーシング1oの外周を強く押すことにより、接触部分の圧力が高まった状態をいい、機能的には、雨水などの水分を確実にシールできる状態をいう。また、注意的であるが、第一凸部25は、雨水などの水分をシールする役割を有しているので、必ず周周り方向にリング状であって螺旋を含まない。
【0022】
第一凸部25は、その基部25bの断面形状が略矩形状になっている。そして、頂部25aの断面形状が中心線Lに近づくにつれて徐々に細くなる略楔形状になっている。即ち、第一凸部25の断面形状は、凹部24cの底面から中心軸Lへ向けて垂直に延び、所定の高さから徐々に細くなっているのである。このような形状としたのは、根元における剛性を適度に抑えるとともに、コントロールケーブル1との接触面積を小さくするためである。これにより、第一凸部25の柔軟性を高め、同時にシール機能の向上を実現している。また、第一凸部25の柔軟性を高めるのは、凹部24cを深くすることによっても実現できる。なお、第一凸部25の頂部25aにおける内径φxは、コントロールケーブル1の外径φcに対して99パーセントから65パーセントの間にある(図5参照)。かかる数値は、下記の数式によって算出される。
数式:φx/φc×100=99〜65(%)
【0023】
外径φcに対する内径φxの割合は、65%以上99%以下の範囲で実用することができるが、シール性を確保しつつ作業性をより向上するために、87%以上95%以下とすることが好ましい。
【0024】
なお、「頂部」とは、第一凸部25の、挿通路23hの軸方向へ張り出した部分のうちの最も軸側の頂点付近の部分を意味するものであり、この部分がコントロールケーブル1の挿通時にアウターケーシング1oの外周と接触して第一凸部25の弾性変形を生じさせる部分でもある。本実施形態においては、上述のように、凸状とされ、第一凸部25においても、後述の第二凸部26においても、内径の基準は凸状部分の先端を基準としている。
【0025】
第二凸部26は、コントロールケーブル1に当接し、該コントロールケーブル1をシールする。つまり、第二凸部26は、コントロールケーブル1のアウターケーシング1oに当接することにより、該アウターケーシング1oを伝う雨水などの水分をシールする。なお、「当接」とは、弾性変形した第二凸部26がアウターケーシング1oの外周を弱く押すことにより、接触部分の圧力がやや高まった状態をいい、機能的には、コントロールケーブル1の挿通を容易としつつ、雨水などの水分を補助的にシールできる状態をいう。また、注意的であるが、第二凸部26は、雨水などの水分をシールする役割を有しているので、挿通路23hの中心軸Lに対する周周り方向にリング状であることが好ましい。但し、第一凸部25がシール機能を担保できるのであれば、必ずしもリング状である必要はない。
【0026】
第二凸部26は、その基部26bの断面形状が略矩形状になっている。そして、頂部26aの断面形状が中心線Lに近づくにつれて徐々に細くなる略楔形状になっている。即ち、第二凸部26の断面形状は、凹部24cの底面から中心軸Lへ向けて垂直に延び、所定の高さから徐々に細くなっているのである。このような形状としたのは、根元における剛性を適度に抑えるとともに、コントロールケーブル1との接触面積を小さくするためである。これにより、第二凸部26の柔軟性を高め、同時にシール機能の向上を実現している。また、第二凸部26の柔軟性を高めるのは、凹部24cを深くすることによっても実現される。第二凸部26の凹部24cの底面からの高さについては、直接のシール対象であるアウターケーシング1oの外周に当接することが可能な高さを有し、第一凸部25における内径φxよりも第二凸部26における内径φyを大きくすることで、コントロールケーブル1を挿入した際に、挿入に対する抵抗を生じないように設けられ、弾性変形を生じないようにされている。なお、第二凸部26の頂部26aにおける内径φyは、コントロールケーブル1の外径φcに対して100パーセントから92パーセントの間にある(図5参照)。かかる数値は、下記の数式によって算出される。
数式:φy/φc×100=100〜92(%)
【0027】
ここで、本実施形態においては、アウターケーシング1oの外径φcが7.1mmであるのに対して、第一凸部25の内径φxが6.4mmとされ、第二凸部26の内径φyが6.8mmとされている。
【0028】
このように、本実施の形態のシール構造では、挿通路23hを構成する側壁部23sの側面23s1と、挿通路23hにおけるシール部24より流入開口部側の部位とを接続する排出路23dを設けた。これにより、挿通路23hに侵入した水を排出路23dから排出し、挿通路23h内の圧力を低下させることにより、シール部24に水圧がかからず、シール性を維持することができる。このため、挿通路23hをきつく構成しなくても、コントロールケーブル1と挿通路23hとの間に浸入した水が、シール部24の内側まで浸入することを防ぐことができる。
【0029】
<変形例>
上記実施の形態では、排出路がコントロールケーブル1の挿通方向に直交する方向に延びるように設けられた場合について説明した。しかし、本発明はこれに限るものではない。例えば、図6に示すように、排出路23dは、挿通路23h側から側面23s1側へ向いた排出路の方向f1と、流入開口部23o側から他端の開口部23o側へ向いた挿通路23hの方向f2との成す角度θ1が、鋭角になるように設けられてもよい。
【0030】
また、例えば、図7に示すように、排出路23dは、挿通路23h側から側面23s1側へ向いた排出路の方向f1と、流入開口部23o側から他端の開口部23o側へ向いた挿通路23hの方向f2との成す角度θ2が、鈍角になるように設けられてもよい。
【0031】
また、上記実施の形態では、排出路23dは、最も流入開口部側のシール部24より流入開口部側で挿通路23hと接続すると説明した。しかし、本発明はこれに限るものではない。すなわち、図8に示すように、排出路23d(23d1、23d2)は、シール部24を構成する複数の凸部24pのうち少なくとも1つの凸部24pより流入開口部側の部位で挿通路23hと接続すればよい。
【0032】
また、上記実施の形態では、排出路23dは、最も流入開口部側のシール部24より流入開口部側で挿通路23hと接続すると説明した。しかし、本発明はこれに限るものではない。すなわち、排出路23dは、複数の主シール部のうち少なくとも1つの主シール部より流入開口部側で挿通路23hと接続すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、シール構造及びコントロールケーブルユニットに適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 コントロールケーブル(長尺部材)
1i インナーケーブル
1o アウターケーシング
2 グロメット(弾性部材)
21 本体部
22 挿通部
23 筒状部
23t 端壁部
23s 側壁部
23d 排出路
23h 挿通路
24 シール部
24c 凹部
24p 凸部
25 第一凸部
26 第二凸部
Wt 流水
φx 第一凸部の頂部における内径
φy 第二凸部の頂部における内径
φc コントロールケーブルの外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8