特許第6353348号(P6353348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353348
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/00 20060101AFI20180625BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B65D85/00 A
   B65D47/34 110
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-241254(P2014-241254)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-101947(P2016-101947A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】浅村 健二
【審査官】 谷川 啓亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−166249(JP,A)
【文献】 特開平11−156251(JP,A)
【文献】 意匠登録第1487202(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/00 − 85/28
B65D 35/44 − 55/16
B65D 83/00 − 83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体が、カートリッジを保持する保持部と、該保持部の前方側に設けられ当該保持部に操作可能に支持された操作部とからなり、該操作部を操作して前記保持部に保持された前記カートリッジのヘッドを押下する供給装置であって、
前記保持部が後方側を構成する後面及び該後面の両側部より前方へ向けて延出した保持部側面により前方開口状に形成されるとともに、前記操作部が前方側を構成する前面及び該前面の両側部より後方へ向けて延出した操作部側面により後方開口状に形成された供給装置において、
前記操作部で前記ヘッドを押下する際に、前記操作部側面の縁部が前記保持部側面の縁部に当接した後、該保持部側面に乗り上げて後方開口状の前記操作部が口開きする方向に弾性変形するとともに、弾性変形した状態が前記ヘッドを押下している間維持されるように構成したことを特徴とする供給装置。
【請求項2】
前記操作部の前記操作部側面が前記保持部の前記保持部側面の外側面に沿って移動するように構成するとともに、前記操作部の前記両操作部側面の離間距離が前記保持部へ向かうに従って大きくなるように構成したことを特徴とする請求項1記載の供給装置。
【請求項3】
装置本体が、カートリッジを保持する保持部と、該保持部の前方側に設けられ当該保持部に操作可能に支持された操作部とからなり、該操作部を操作して前記保持部に保持された前記カートリッジのヘッドを押下する供給装置であって、
前記保持部が後方側を構成する後面及び該後面の両側部より前方へ向けて延出した保持部側面により前方開口状に形成されるとともに、前記操作部が前方側を構成する前面及び該前面の両側部より後方へ向けて延出した操作部側面により後方開口状に形成され、当該操作部を操作する際に前記操作部側面が前記保持部の前記保持部側面に沿って移動する供給装置において、
前記操作部側面又は前記保持部側面の少なくともいずれか一方に突出部を設け、
前記操作部で前記ヘッドを押下する際に、前記操作部側面又は前記保持部側面の他方の縁部が前記突出部に当接した後、該突出部に乗り上げて後方開口状の前記操作部が口開きする方向に弾性変形するとともに、弾性変形した状態が前記ヘッドを押下している間維持される位置に前記突出部を配置したことを特徴とする供給装置。
【請求項4】
前記突出部を、前記操作部の移動方向に延在する突条で構成したことを特徴とする請求項3記載の供給装置。
【請求項5】
前記操作部の前記操作部側面が前記保持部の前記保持部側面の外側面に沿って移動するように構成するとともに、前記保持部側面の外側面に前記突出部を設けたことを特徴とする請求項3又は4記載の供給装置。
【請求項6】
前記操作部の前記両操作部側面の離間距離が前記保持部へ向かうに従って大きくなるように構成したことを特徴とする請求項5記載の供給装置。
【請求項7】
前記カートリッジからの薬剤の吐出口が視覚的に遮蔽され外部から視認できないように構成されていることを特徴とした請求項1から6にいずれか記載の供給装置。
【請求項8】
前記ヘッド操作時に前記吐出口から吐出した薬剤を含浸して揮散する含浸体を備えたことを特徴とする請求項7記載の供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薬剤を供給する供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内や車内を芳香する際には、薬剤としての芳香剤を供給する供給装置が用いられている。
この供給装置としては、レバーやボタン等の操作部を操作して薬剤を送出するプッシュ式のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このプッシュ式の供給装置は、カートリッジが装着された本体と、該本体に操作可能に支持された操作部とを備え、該操作部を押圧操作することによって、前記本体に設けられた前記カートリッジのヘッドを押下できるように構成されている。前記カートリッジは、前記ヘッドが押下された際に、前記カートリッジ内の薬剤を前記ヘッドの側面から吐出するように構成されており、この側面から吐出した薬剤を、当該ヘッドを包囲する含浸体に含浸させて揮散できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2013−113803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなプッシュ式の供給装置にあっては、薬剤が目に見える形で噴霧されることがない。
このため、使用者は、薬剤が吐出されたことに気づかず、吐出されないと誤認して何度も吐出操作を行ってしまうことがある。また、スプレー式の場合であっても、比較的暗く走行音が発生する例えば車内で使用する際には、薬剤の噴霧に気づかず、何度もスプレー操作する恐れがある。
【0005】
これらの場合、一回の操作により適量の薬剤を供給できるように設計されているにも拘わらず、多量の薬剤が消費され使用回数が予定より少なくなる、含浸体に含浸しきれなかった過剰な薬剤が外部に漏れ出るという問題が発生し得る。
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、不要な操作の繰り返しを未然に防止することができる供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の供給装置にあっては、装置本体が、カートリッジを保持する保持部と、該保持部の前方側に設けられ当該保持部に操作可能に支持された操作部とからなり、該操作部を操作して前記保持部に保持された前記カートリッジのヘッドを押下する供給装置であって、前記保持部が後方側を構成する後面及び該後面の両側部より前方へ向けて延出した保持部側面により前方開口状に形成されるとともに、前記操作部が前方側を構成する前面及び該前面の両側部より後方へ向けて延出した操作部側面により後方開口状に形成された供給装置において、前記操作部で前記ヘッドを押下する際に、前記操作部側面の縁部が前記保持部側面の縁部に当接した後、該保持部側面に乗り上げて後方開口状の前記操作部が口開きする方向に弾性変形するとともに、弾性変形した状態が前記ヘッドを押下している間維持されるように構成した。
【0007】
すなわち、保持部に設けられた操作部を操作してカートリッジのヘッドを押下する際には、第一段階において、前記操作部の操作部側面の縁部が前記保持部の前記保持部側面の縁部に当接する。すると、前記操作部には大きな負荷がかかり、一時的にその操作が重くなる。
そして、前記操作部の操作を続けると、前記操作部側面の内面側の縁部が保持部側面の外側の縁部を乗り越え、第二段階として、前記操作部の前記操作部側面は、前記保持部側面に乗り上げて当該保持部側面に沿って移動を開始する。すると、前述した当接による負荷が解放され、前記操作部の操作が相対的に軽くなる。
【0008】
このように、前記操作部を操作する際には、当該操作部の操作が重くなった後、前記操作部側面の内面側の縁部が保持部側面の外側の縁部を乗り越え、軽くなることで、操作時のクリック感が得られる。
また、請求項2の供給装置においては、前記操作部の前記操作部側面が前記保持部の前記保持部側面の外側面に沿って移動するように構成するとともに、前記操作部の前記両操作部側面の離間距離が前記保持部へ向かうに従って大きくなるように構成した。
【0009】
この場合、前記操作部側面の縁部の端面を、前記保持部側面の縁部の端面に対して斜めに当接することができる。これにより、前記操作部端面の角部が、前記保持部側面の端面に当接される。
そして、請求項3の供給装置では、装置本体が、カートリッジを保持する保持部と、該保持部の前方側に設けられ当該保持部に操作可能に支持された操作部とからなり、該操作部を操作して前記保持部に保持された前記カートリッジのヘッドを押下する供給装置であって、前記保持部が後方側を構成する後面及び該後面の両側部より前方へ向けて延出した保持部側面により前方開口状に形成されるとともに、前記操作部が前方側を構成する前面及び該前面の両側部より後方へ向けて延出した操作部側面により後方開口状に形成され、当該操作部を操作する際に前記操作部側面が前記保持部の前記保持部側面に沿って移動する供給装置において、前記操作部側面又は前記保持部側面の少なくともいずれか一方に突出部を設け、前記操作部で前記ヘッドを押下する際に、前記操作部側面又は前記保持部側面の他方の縁部が前記突出部に当接した後、該突出部に乗り上げて後方開口状の前記操作部が口開きする方向に弾性変形するとともに、弾性変形した状態が前記ヘッドを押下している間維持される位置に前記突出部を配置した。
【0010】
すなわち、保持部に設けられた操作部を操作してカートリッジのヘッドを押下する際には、前記操作部の操作部側面が前記保持部の保持部側面に沿って移動する。
このとき、前記操作部側面又は前記保持部側面の少なくともいずれか一方に突出部が設けられており、第一段階において、前記操作部側面又は前記保持部側面の他方の縁部が前記突出部に当接する。すると、前記操作部には大きな負荷がかかり、一時的にその操作が重くなる。
【0011】
そして、前記操作部の操作を続けると、前記操作部側面の内面側の縁部が保持部側面の外側の縁部を乗り越え、第二段階として、前記操作部側面又は前記保持部側面の他方が前記突出部に乗り上げて移動を開始する。すると、前述した当接による負荷が解放され、前記操作部の操作が相対的に軽くなる。
このように、前記操作部を操作する際には、当該操作部の操作が重くなった後、前記操作部側面の内面側の縁部が保持部側面の外側の縁部を乗り越え、軽くなることで、操作時のクリック感が得られる。
【0012】
また、請求項4の供給装置においては、前記突出部を、前記操作部の移動方向に延在する突条で構成した。
すなわち、操作部の操作部側面又は保持部の保持部側面の他方の縁部が当接する突出部は、前記操作部の移動方向に延在する突条で構成されている。
このため、前記突出部の端部が構成する当接部位が摩耗した場合であっても、前記操作部側面又は前記保持部側面の他方の縁部が乗り上げる高さが維持される。
【0013】
さらに、請求項5の供給装置では、前記操作部の前記操作部側面が前記保持部の前記保持部側面の外側面に沿って移動するように構成するとともに、前記保持部側面の外側面に前記突出部を設けた。
すなわち、操作部の操作部側面は、保持部の保持部側面の外側面に沿って移動するように構成されており、後方開口状に形成された前記操作部は、前記保持部に外嵌する。
【0014】
そして、前記保持部側面の外側面には、前記突出部が設けられており、前記操作部の前記操作部側面が前記突出部に乗り上げた状態では、後方開口状の前記操作部が口開きする方向に弾性変形する。
このとき、前記操作部には、弾性変形による反力が前記両操作部側面間の開口幅を狭める方向に作用する。
【0015】
加えて、請求項6の供給装置にあっては、前記操作部の前記両操作部側面の離間距離が前記保持部へ向かうに従って大きくなるように構成した。
この場合、前記操作部側面の縁部の端面を、前記保持部側面の縁部の端面に対して斜めに当接することができる。これにより、前記操作部端面の角部が、前記保持部側面の端面に当接される。
【0016】
また、請求項7の供給装置においては、前記カートリッジからの薬剤の吐出口が視覚的に遮蔽され外部から視認できないように構成されている。
すなわち、薬剤の吐出口は視覚的に遮蔽されており、外部から視認することができない。
このため、薬剤の吐出状態を視覚的に確認できない場合であっても、操作部を操作する際に得られるクリック感により、操作の確認が行われる。
【0017】
さらに、請求項8の供給装置では、前記ヘッド操作時に前記吐出口から吐出した薬剤を含浸して揮散する含浸体を備えている。
すなわち、ヘッド操作時に吐出口から吐出した薬剤は、含浸体に含浸された後、揮散される。
このため、スプレー式のように、スプレー音を聴覚で確認したり、薬剤等の噴霧状態を視覚で確認できない場合であっても、操作部を操作する際に得られるクリック感により、操作の確認が行われる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明の請求項1の供給装置にあっては、保持部に設けられた操作部を操作してカートリッジのヘッドを押下する際には、前記操作部の操作部側面の縁部が前記保持部の保持部側面の縁部に当接することで大きな負荷を受けた後、前記操作部側面の内面側の縁部が保持部側面の外側の縁部を乗り越え、前記操作部の前記操作部側面が前記保持部側面に乗り上げて移動することにより当接による負荷が解放される。
【0019】
これにより、前記操作部の操作が重くなった後、前記操作部側面の内面側の縁部が保持部側面の外側の縁部を乗り越え、軽くなるので、操作時のクリック感を得ることができる。
このため、前記カートリッジから薬剤等が目に見える形で噴霧されない場合であっても、前記カートリッジから薬剤等が送出されたことを認識することができる。したがって、不必要な操作の繰り返しを未然に防止することができる。
【0020】
また、これにより薬剤等が送出されたことに気づかず、何度も操作を繰り返してしまうことを防止できるので、吐出されないと誤認して何度も操作部の操作を繰り返してしまい、多量の薬剤等を送出してしまう恐れがある場合と比較して、使用回数が予定より少なくなる、含浸体に含浸しきれなかった過剰な薬剤が外部に漏れ出るという問題を解決することができる。
【0021】
また、請求項2の供給装置においては、前記操作部の前記両操作部側面の離間距離が前記保持部へ向かうに従って大きくなるように構成したので、前記操作部側面の縁部の端面を、前記保持部側面の縁部の端面に対して斜めに当接することができる。
これにより、前記操作部側面の端面の角部を、前記保持部側面の端面に当接することができるため、前記操作部側面の前記保持部側面への乗り上げを容易とすることができる。
【0022】
そして、請求項3の供給装置では、装置本体が、カートリッジを保持する保持部と、該保持部の前方側に設けられ当該保持部に操作可能に支持された操作部とからなり、該操作部を操作して前記保持部に保持された前記カートリッジのヘッドを押下する供給装置であって、前記保持部が後方側を構成する後面及び該後面の両側部より前方へ向けて延出した保持部側面により前方開口状に形成されるとともに、前記操作部が前方側を構成する前面及び該前面の両側部より後方へ向けて延出した操作部側面により後方開口状に形成され、当該操作部を操作する際に前記操作部側面が前記保持部の前記保持部側面に沿って移動する供給装置において、前記操作部側面又は前記保持部側面の少なくともいずれか一方に突出部を設け、前記操作部で前記ヘッドを押下する際に、前記操作部側面又は前記保持部側面の他方の縁部が前記突出部に当接した後、前記操作部側面の内面側の縁部が保持部側面の外側の縁部を乗り越え、該突出部に乗り上げて移動する位置に前記突出部を配置した。
【0023】
すなわち、保持部に設けられた操作部を操作してカートリッジのヘッドを押下する際には、前記操作部の操作部側面又は前記保持部の保持部側面の他方の縁部が突出部に当接することで大きな負荷を受けた後、前記操作部側面又は前記保持部側面の他方が前記突出部に乗り上げて移動を開始することにより当接による負荷が解放される。
これにより、前記操作部の操作が重くなった後、前記操作部側面の内面側の縁部が保持部側面の外側の縁部を乗り越え、軽くなるので、操作時のクリック感を得ることができる。
【0024】
このため、前記カートリッジから薬剤等が目に見える形で噴霧されない場合であっても、前記カートリッジから薬剤等が送出されたことを認識することができる。したがって、不必要な操作の繰り返しを未然に防止することができる。
また、これにより薬剤等が送出されたことに気づかず、何度も操作を繰り返してしまうことを防止できるので、吐出されないと誤認して何度も操作部の操作を繰り返してしまい、多量の薬剤等を送出してしまう恐れがある場合と比較して、使用回数が予定より少なくなる、含浸体に含浸しきれなかった過剰な薬剤が外部に漏れ出るという問題を解決することができる。
【0025】
また、請求項4の供給装置においては、操作部の操作部側面又は保持部の保持部側面の他方の縁部が当接する突出部は、前記操作部の移動方向に延在する突条で構成されている。
このため、前記突出部の端部が構成する当接部位が摩耗した場合であっても、前記操作部側面又は前記保持部側面の他方の縁部が乗り上げる際の高低差を維持することができる。
【0026】
これにより、操作時のクリック感を維持することでき、経時的劣化を未然に防止することができる。
さらに、請求項5の供給装置では、操作部の操作部側面が保持部の保持部側面の外側面に沿って移動するように構成されており、後方開口状に形成された前記操作部を、前記保持部に外嵌することができる。
【0027】
そして、前記保持部側面の外側面には、前記突出部が設けられており、前記操作部の前記操作部側面が前記突出部に乗り上げた状態では、後方開口状の前記操作部が口開きする方向に弾性変形する。
このとき、この弾性変形による反力は、両操作部側面間の開口幅を狭める方向に作用するため、前記操作部には、通常位置への戻し方向に力を加えることができる。
【0028】
これにより、非操作状態での操作部の戻り方向への力を補助することができる。
加えて、請求項6の供給装置にあっては、前記操作部の前記両操作部側面の離間距離が前記保持部へ向かうに従って大きくなるように構成したので、前記操作部側面の縁部の端面を、前記保持部側面の縁部の端面に対して斜めに当接することができる。
【0029】
これにより、前記操作部端面の角部を、前記保持部側面の端面に当接することができるため、前記操作部側面の前記保持部側面への乗り上げを容易とすることができる。
また、請求項7の供給装置においては、薬剤の吐出口は視覚的に遮蔽されており、外部から視認することができない。
このため、薬剤の吐出状態を視覚的に確認できない場合であっても、操作部を操作する際に得られるクリック感により、操作の確認をおこなうことができる。
【0030】
これにより、前述した効果が顕著となる。
さらに、請求項8の供給装置では、ヘッド操作時に吐出口から吐出した薬剤を含浸して揮散する含浸体を備えており、吐出した薬剤を、含浸体に含浸させた後、時間をかけてゆっくりと長期に渡って揮散させることができる。
【0031】
また、吐出した薬剤を、含浸体に含浸させた後、揮散されるため、スプレー式のように、スプレー音を聴覚で確認したり、薬剤等の噴霧状態を視覚で確認できない場合であっても、操作部を操作する際に得られるクリック感により、操作の確認を行うことができる。
したがって、前述した効果が顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施の形態を示す側面図である。
図2】同実施の形態の操作部の押圧操作を開始した状態を示す説明図である。
図3】同実施の形態の操作部をさらに押圧操作した状態を示す説明図である。
図4】同実施の形態の操作部を操作する際の要部の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。
図1は、本実施の形態にかかる供給装置1を示す図であり、該供給装置1は自動車のエアコンの吹き出し口に取り付けられ車室内に芳香剤を揮散して供給するものである。なお、本実施の形態では、芳香剤を供給する場合を例に挙げて説明するが、消臭剤や殺虫剤、忌避剤、除菌剤等を供給するものであっても良い。
【0034】
この供給装置1を構成する装置本体11は、当該装置本体11の後方側を構成する保持部12と、当該装置本体11の前方側を構成する操作部13とによって構成されている。該操作部13は、前記保持部12に操作可能に支持されており、当該操作部13を操作することで、前記保持部12に保持されたカートリッジ14のヘッド15を押下できるように構成されている。
【0035】
前記カートリッジ14は、液状の芳香剤21が収容された容器体22と、該容器体22の口部に取り付けられた前記ヘッド15とを備えてなり、該ヘッド15からは、前記容器体22内へ向けて吸い上げ部23が延出している。前記ヘッド15は、下方へ向けて押下できるように構成されており、当該ヘッド15を押下した際に前記容器体22内の芳香剤21を前記吸い上げ部23より吸い上げて、当該ヘッド15の側面に設けられた吐出口24,24から吐出できるように構成されている。また、押下された前記ヘッド15は、その操作力が解除された際に、内蔵するスプリングのバネ力によって元の位置へ復帰するように構成されている。
【0036】
前記ヘッド15には、円筒状の含浸体31が設けられており、前記ヘッド15は、その周面が前記含浸体31によって包囲されている。これにより、前記吐出口24,24が視覚的に遮蔽され外部から視認できないように構成されている。
ここで、本実施の形態では、前記吐出口24,24が前記含浸体31で包囲されることによって視覚的に遮蔽され外部から視認できないように構成された場合を例に挙げて説明するが、この構成に限定されるものでは無く、例えば前記吐出口24,24がカバーで覆われるなどして視覚的に遮蔽され外部から視認できないように構成された場合であっても良い。
【0037】
この含浸体31は、前記吐出口24,24から吐出された芳香剤21を含浸できるように構成されており、その含浸量は、前記ヘッド15を複数回押下した際に前記吐出口24,24から吐出される芳香剤21を十分に保持できるように設計されている。
これにより、前記ヘッド15を押下した際には、吐出された芳香剤21を前記含浸体31に含浸させた後、自然揮散させるとともに、エアコン作動中には、エアコンからの風によって含浸した芳香剤21をゆっくりと所定時間にわたって揮散できるように構成されている。
【0038】
前記保持部12は、前記装置本体11の後方側を構成する後面41と該後面41の両側縁より前方へ向けて延出した保持部側面42(一方のみ図示)とによって、その水平断面が前方へ向けて開口したコ字状に形成されており、前記後面41に設けられた取付穴43には、クリップ44の係合軸45が挿入された状態で回動可能に固定されている。該クリップ44は、その先端部が二股に分かれており、自動車のエアコンの吹き出し口に設けられたルーバーを挟持した状態で当該装置本体11を吹き出し口に取り付けられるように構成されている。
【0039】
この保持部12の前記後面41の下縁と前記両保持部側面42の下縁とは、底面51で連設されており、該底面51には、円形の装着穴52が形成されている。該装着穴52は、その一部が前記底面51の前方へ向けて開口しており、この開口部分から前記カートリッジ14の口部を挿入することで、当該カートリッジ14を交換可能に取り付けられるように構成されている。
【0040】
前記後面41には、後方へ向けて突出した一対の縦リブ61が上下に延設されており(一方のみ図示)、両縦リブ61は、離間して設けられるとともに、前記後面41の幅方向中央部に配置されている。両縦リブ61の上端部は、前記後面41より上方へ突出しており、前記両縦リブ61の上縁は、連設部62で連設され補強されている。前記後面41より上方へ突出した両縦リブ61の上端部には、円形の軸支穴63が設けられており、各軸支穴63は、その一部が後方へ向けて開口し、軸の装着が可能とされている。
【0041】
前記各保持部側面42の外側面には、突出部71が設けられている(一方のみ図示)。該突出部71は、長方形状に形成されており、前記保持部側面42の前縁から後方へ向けて延出する突条で構成されている。
前記操作部13は、前記装置本体11の前方側を構成する前面101と、該前面101の両側縁より後方へ向けて延出した操作部側面102(一方のみ図示)とを備えており、前記前面101は、幅方向中央部が前方へ向けて膨出した湾曲状に形成されている。これにより、当該操作部13は、その水平断面が後方へ向けて開口したU字状に形成されており、前記前面101の上縁と前記操作部側面102の上縁とは、天面103により連設されている。
【0042】
前記各操作部側面102は、その縁部111が前記前面101下縁から前記天面103後縁に向かって斜めに延在するように構成されており、当該縁部111は、その中央部が外側に突出した緩やかな円弧状に形成されている。
前記天面103の後縁部には、斜め上方へ向けて延出する一対の支持片121が幅方向中央部に設けられており、両支持片121の先端部には、円柱状の回転軸122が架橋されている。この回転軸122は、前記保持部12に設けられた前記軸支穴63に回動自在に係止できるように構成されている。
【0043】
これにより、前記回転軸122を前記軸支穴63に係合することで、前記操作部13は、前記保持部12に支持されるように構成されており、前記回転軸122を中心として回動できるように構成されている。
前記操作部13の前記天面103には、下方に延出する押下板131が設けられており、該押下板131は、当該天面103の幅方向中央部に配置されている。前記押下板131は、長方形の板状に形成されており、後部側の角部の縁部が円弧状に形成されている。
【0044】
これにより、前記操作部13の前記前面101を指で押圧操作した際には、当該操作部13が前記回転軸122を中心に回動することで、図1から図3に示すように、前記押圧板131が下動し、前記保持部12にセットされた前記カートリッジ14の前記ヘッド15を押下して前記芳香剤21を前記吐出口24,24から吐出できるように構成されている。
【0045】
前記操作部13の一方の操作部側面102の内側面から他方の操作部側面102の内側面までの離間距離は、前記保持部12の一方の保持部側面42の外側面から他方の保持部側面42の外側面までの幅寸法と略同一あるいはやや大きめに設定されており、前記操作部13を操作して前記ヘッド15を押下する際に、前記操作部側面102が前記保持部12の前記保持部側面42の外側面に沿って移動するように構成されている。
【0046】
このとき、前記操作部側面102の縁部111は、図2に示したように、前記保持部側面42の縁部141、具体的には前記保持部側面42に突設された前記突出部71先端に当接するように構成されており、その後、前記操作部側面102は、図3に示したように、前記突出部71に乗り上げて該突出部71に摺接しながら移動するように当該突出部71が配置されている。これにより、この突出部71は、前記操作部13の移動方向に延在するように構成されている。
【0047】
以上の構成にかかる本実施において、保持部12に設けられた操作部13の前面101を押圧操作してカートリッジ14のヘッド15を押下する際には、前記操作部13の操作部側面102が前記保持部12の保持部側面42に沿って移動する。
このとき、前記保持部側面42には突出部71が設けられており、図4に示したように、非操作状態の初期段階201で離れていた前記操作部側面102の縁部111が前記突出部71に近づき、第一段階202において、前記操作部側面102の縁部111の端面102aが前記突出部71の端面71aに当接する(図2参照)。すると、前記操作部13には大きな負荷がかかり、一時的にその操作が重くなる。
【0048】
そして、前記操作部13の操作を続けると、前記操作部側面102の内面側の縁部が、保持部側面の外側の縁部141を乗り越え、第二段階203として、前記操作部側面102が前記突出部71に乗り上げて移動を開始する(図3参照)。すると、前述した当接による負荷が解放され、前記操作部13の操作が相対的に軽くなる。
このように、前記操作部13を操作する際には、当該操作部13の操作が重くなった後、前記操作部側面102の内面側の縁部が、保持部側面の外側の縁部141を乗り越え、軽くなることで、操作時のクリック感を得ることができる。
【0049】
このため、前記カートリッジ14から芳香剤21が目に見える形で噴霧されない場合であっても、前記カートリッジ14から芳香剤21が吐出されたことを認識することができる。したがって、不必要な操作の繰り返しを未然に防止することができる。
また、これにより芳香剤21が吐出されたことに気づかず、何度も操作を繰り返してしまうことを防止できるので、何度も操作部13の操作を繰り返してしまい、多量の芳香剤21を吐出してしまう恐れがある場合と比較して、使用回数が予定より少なくなる、含浸体に含浸しきれなかった過剰な薬剤が外部に漏れ出るという問題を解決することができる。
【0050】
このとき、前記突出部71は、前記操作部13の移動方向に延在する突条により構成されている。
このため、前記突出部71の端部が構成する当接部位が摩耗した場合であっても、前記操作部側面102の縁部111が乗り上げる際の高低差を維持することができる。これにより、操作時のクリック感を維持することでき、経時的劣化を未然に防止することができる。
【0051】
さらに、前記操作部13の操作部側面102は、前記保持部12の保持部側面42の外側面に沿って移動するように構成されており、後方開口状に形成された前記操作部13を、前記保持部12に外嵌することができる。
これにより、前記保持部13に前記操作部側面102が進入する溝構造等を設ける必要が無く、構造の簡素化を図ることができる。また、前記カートリッジ14の挿脱を可能とするために設けられた前方開口部を前記保持部13で覆うことができ、保持されたカートリッジ14の露出を防止することができる。
【0052】
そして、前記保持部側面42の外側面には、前記突出部71が設けられており、前記操作部13の前記操作部側面102が前記突出部71に乗り上げた状態では、後方開口状の前記操作部13が口開きする方向に弾性変形する(図4の第二段階203参照)。
このとき、前記操作部13には、ヘッド15に対する操作力が解除された際に、内蔵するスプリングのばね力によって前記ヘッド15が元の位置へ復帰するときの反力に加え、弾性変形による反力が前記両操作部側面102間の開口幅を狭める方向に作用するので、前記操作部13には、非操作状態で位置する通常位置への戻し方向に力を加えることができる。
【0053】
これにより、非操作状態での前記操作部13の戻り方向への力を補助することができる。
そして、前記ヘッド15は含浸体31で包囲されており、前記ヘッド15に開設された吐出口24,24は、視覚的に遮蔽され外部から視認することができない。
このため、前記芳香剤21の吐出状態を視覚的に確認できない場合であっても、前記操作部13を操作する際に得られるクリック感により、操作の確認をおこなうことができる。
【0054】
これにより、前述した効果が顕著となる。
また、前記ヘッド15を包囲する前記含浸体31は、前記カートリッジ14から吐出した芳香剤21を含浸して揮散する。このため、該ヘッド15から吐出した芳香剤21を、前記含浸体31に含浸させた後、揮散することができる。
【0055】
このため、前記ヘッド15から吐出した芳香剤21を、前記含浸体31に保持しつつ、時間をかけてゆっくりと長期に渡って揮散させることができるので、暖気や冷気が吹き付けられるエアコンの吹き出し口での使用に適している。
また、前記芳香剤21を前記含浸体31に含浸させた後、揮散されるため、スプレー式のように、スプレー音を聴覚で確認したり、芳香剤21の噴霧状態を視覚で確認できない場合であっても、前記操作部13を操作する際に得られるクリック感により、操作の確認を行うことができる。
【0056】
したがって、本実施の形態にあっては、前述した効果が顕著となる。
なお、本実施の形態にあっては、芳香剤21を含浸体31に含浸させた後に揮散する場合を例に挙げたが、この構造に限定されるもので無く、例えば薬剤が噴霧されるスプレー式の場合であっても、騒音によりスプレー音が聞こえなかったり、暗いため噴霧状態を目視できない場合であっても、操作時のクリック感により、操作の確認を行えるので、前述した効果を得ることができる。
【0057】
また、本実施の形態では、前記保持部側面42に前記突出部71を設け、前記操作部13操作時に前記操作部側面102の縁部111が前記突出部71に当接した後、該突出部71に乗り上げて移動するように構成した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるもので無く、例えば、前記操作部側面102に前記突出部を設け、前記操作部13操作時に前記保持部側面42の縁部が前記突出部に当接した後、該突出部に乗り上げて移動するように構成しても良い。
【0058】
さらに、本実施の形態にあっては、前記操作部13の前記操作部側面102が前記保持部12の前記保持部側面42の外側面に沿って移動するように構成するとともに、前記保持部側面42の外側面に前記突出部71を設けた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるもので無く、例えば、前記操作部13の前記操作部側面102が前記保持部12の前記保持部側面42の内側面に沿って移動するように構成した場合、前記保持部側面42の内側面に前記突出部71を設けても良い。
【0059】
また、本実施の形態にあっては、前記操作部側面102の縁部111が前記保持部側面42に突設された前記突出部71先端に当接するように構成した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものでは無く、例えば前記保持部側面42に前記突出部71を形成しない場合には、前記操作部側面102の縁部111の端面102aが前記保持部側面42の縁部141の端面42aに当接するように構成し、前記操作部13で前記ヘッド15を押下する際に、前記操作部側面102の縁部111が前記保持部側面42の縁部42aに当接した後、該保持部側面42に乗り上げて当該保持部側面42に沿って移動するように構成しても良い。
【0060】
この場合、前記操作部側面102の前記縁部102aが前記保持部側面42の縁部42aに当接することで大きな負荷を受けた後、前記操作部側面102が前記保持部側面42に乗り上げて移動することにより当接による負荷が解放される。これにより、前記操作部13の操作が重くなった後、軽くなるので、操作時のクリック感を得ることができる。
【0061】
よって、前述と同様の効果を得ることができる。
このとき、前記保持部側面42の前記端面42aへの前記操作部側面102の前記端面102aの当接位置をずらすことによって、前記操作部側面102の前記端面102aの一部が前記保持部側面42の前記端面42aに当接するように構成することで、前述した乗り上げを容易とすることができる。
【0062】
また、前記操作部13の前記両操作部側面102の離間距離が前記保持部12へ向かうに従って大きくなるように構成することで、前記操作部側面102の縁部111の端面102aを、前記保持部側面42の縁部141の端面42aに対して斜めに当接することができる。
これにより、前記操作部側面102の端面102aの角部を、前記保持部側面42の端面42aに当接することができるため、前記操作部側面102の前記保持部側面42への乗り上げを容易とすることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 供給装置
11 装置本体
12 保持部
13 操作部
14 カートリッジ
15 ヘッド
24 吐出口
31 含浸体
41 後面
42 保持部側面
71 突出部
101 前面
102 操作部側面
111 縁部
141 縁部
図1
図2
図3
図4