(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自由水を含む含水率50%以上で、繊維直角方向を厚さとする扁平又は細長の木材チップを対象とし、相対する一対の一定面積を備えたプレス面が互いに等間隔をもって対面するプレス機によって、該木材チップの繊維長軸方向をプレス面に対し平行方向に配列して堆積したチップマットの厚さ方向からプレスで加圧脱水する工程を備え、該加圧工程が、a)プレス面を降下させて、チップマット内に存する空気を抜く第1工程と、b)チップの厚さ方向に最大15〜25MPaの圧縮圧力を加えて、細胞内腔に溜まった自由水を細胞外に排出させる第2工程と、c)第2工程での最大圧縮圧力を少なくとも30秒以上保持して残存する自由水を排出し、木材チップの含水率を30〜40%とする第3工程とから成る燃料用木材チップの製造方法に用いる燃料用木材チップの製造装置であって、
可動性を有して内部に木材チップが充填される型枠と、該型枠に充填された木材チップを降下して加圧するピストンと、型枠の下部に設置され木材チップから脱水された水が透過するサクションプレートと、サクションプレートに接続され木材チップから脱水され透過した水を吸引する吸引機構とを備え、
型枠を駆動する型枠駆動機構は、チップマット内に存する空気を抜いた上記第1工程終了後に型枠を木材チップの外側から退避させるものであることを特徴とする燃料用木材チップの製造装置。
請求項1の燃料用木材チップの製造装置において、型枠とピストンとの間には退避された型枠をピストンの加圧面と面一となる加圧面を構成するように位置決めする位置決め機構が設けられていることを特徴とする燃料用木材チップの製造装置。
請求項1〜2の燃料用木材チップの製造装置において、サクションプレートの吸引孔が下方向に向けて拡開されたテーパ形又は下方向に向けて段階的に大きくなる階段形に形成されていることを特徴とする燃料用木材チップの製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記製造方法は、木材中の水分のうち含水率が約23%以上の水分は細胞内腔等の粗大な間隙に存在する液状の自由水であり、この自由水は木材を圧縮することによって容易に脱水できることに着目したもので、その特徴は極端な高圧力を要することなく、比較的簡単な設備で且つ効率的に、燃料として利用可能な低含水率の木材チップを得ることのできる点にある。
そこで今回本発明者は、上記製造方法に対し、これを効率的に実施すべき装置の開発を模索したところ、該製造方法に使用する燃料用木材チップを型枠に充填した後に圧縮力を作用させると、型枠を外した状態としても型枠内にあった形状をほぼ維持したブロックを形成し、チップがばらけることがなく、該ブロックをそのまま圧縮してもほとんど崩れないで、脱水も効率的に行えることを見い出し、斯かる特性を活用して、簡潔で効率的な製造装置を具現したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するため、本発明に係る燃料用木材チップの製造方法は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0007】
本発明燃料用木材チップの製造装置は、自由水を含む含水率50%以上で、繊維直角方向を厚さとする扁平又は細長の木材チップを対象とし、相対する一対の一定面積を備えたプレス面が互いに等間隔をもって対面するプレス機によって、該木材チップの繊維長軸方向をプレス面に対し平行方向に配列して堆積したチップマットの厚さ方向からプレスで加圧脱水する工程を備え、該加圧工程が、a)プレス面を降下させて、チップマット内に存する空気を抜く第1工程と、b)チップの厚さ方向に最大15〜25MPaの圧縮圧力を加えて、細胞内腔に溜まった自由水を細胞外に排出させる第2工程と、c)第2工程での最大圧縮圧力を少なくとも30秒以上保持して残存する自由水を排出し、木材チップの含水率を30〜40%とする第3工程とから成る燃料用木材チップの製造にあって、可動性を有して内部に木材チップが充填される型枠と、該型枠に充填された木材チップを降下して加圧するピストンと、型枠の下部に設置され木材チップから脱水された水が透過するサクションプレートと、サクションプレートに接続され木材チップから脱水され透過した水を吸引する吸引機構とを備え、型枠を駆動する型枠駆動機構は、チップマット内に存する空気を抜いた上記第1工程終了後に型枠を木材チップの外側から退避させるものであることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の燃料用木材チップの製造装置は、型枠とピストンとの間には退避された型枠をピストンの加圧面と面一となる加圧面を構成するように位置決めする位置決め機構が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の燃料用木材チップの製造装置は、サクションプレートの吸引孔が下方向に向けて拡開されたテーパ形又は下方向に向けて段階的に大きくなる階段形に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
先に提案の燃料用木材チップの製造方法は、木材チップの繊維長軸方向をプレス面に対し平行方向に配列して堆積したチップマットを、その直角方向から相対する一対の一定面積を備えたプレス面が互いに等間隔をもって対面するプレス機で圧縮加圧すると、この圧縮力はチップの厚さ方向、すなわち中空紡錘形の木材繊維の直径方向に加わるため、比較的小さい力で細胞を押しつぶすことができ、細胞内腔等に存在する自由水を効果的に圧搾・脱水できる特徴を持つ。又、一回の加圧操作でチップマット全体を脱水処理することが可能となる。その加圧工程にあって、第1工程でチップマット内に存する空気を抜いた後、第2加圧工程では、チップの厚さ方向に最大15〜25MPaに達するまでの圧縮力を加えて細胞を直径(繊維直角)方向に押しつぶし、細胞内腔中の自由水の膨圧によって、末端壁に多く分布する壁孔に作用して細胞を破裂して自由水を細胞外に排出する。更に、第3加圧工程では、最大圧力を保持して細胞内腔をほぼ圧密した状態を30秒以上持続させて、残留する自由水の排出を促す。このような一連の圧縮脱水処理で、最終の第3工程を経た後には、当初50%以上あった木材チップの含水率を燃料として充分使用可能な30%〜40%の範囲にまで低減させることができることを特徴とする。
そして本発明燃料用木材チップの製造装置は、可動性を有して内部に木材チップが充填される型枠と、該型枠に充填された木材チップを降下して加圧するピストンと、型枠の下部に設置され木材チップから脱水された水が透過するサクションプレートと、サクションプレートに接続され木材チップから脱水され透過した水を吸引する吸引機構とから成る簡潔な機構で、上記燃料用木材チップの製造方法が具現され、特別な高圧を要することなく、極めて効率の良い木材チップの脱水を可能とすることができる。
【0011】
又、型枠内に木材チップを充填し、ピストンを降下させてチップ間の空気を抜き、更にピストンを加圧して壁孔に作用して細胞破裂による自由水を排出し、最大圧力を維持して残留水を排出する一連の工程を、一回の動作で完了させることができる。
【0012】
又、チップ間の空気を抜いて互いが隣接し合う関係になりチップ表面の組織が触れ合い摩擦力と食い込み絡まり等による拘束力が生じる段階に至ると、型枠を退避させても保形性を維持したブロックを形性し、該ブロックを加圧すると排出された搾出水が直接に吸引機構から系外へと排出され、チップマット内での残留水が少なく、高い排水効率が得られる。且つ、簡潔な装置で実現される。
【0013】
又、型枠の退避に伴って、チップ間に圧縮方向に直交する方向への若干の膨らみが生じても、型枠と退避されたピストンとの間に面一となる加圧面が構成されるので、脱水に向けた加圧が有効に作用する。
【0014】
更に、吸水過程でサクションプレートの吸引孔に木材チップが詰まった場合にも、下方向に向けて拡開されたテーパ形又は下方向に向けて段階的に大きくなる階段形に形成することで、抜けやすくすることができ、詰まりを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明燃料用木材チップの製造装置の前提となる先提案の製造方法の概略を説明する。
上述の如く、木材加工工場からは大量の木材屑が排出され、又、森林からも林地残材などが多量に排出され、これらの有効な用途が求められている。これら低質材を燃料用として用いることができれば、有用な用途の一つとなり得るが、これら木材は生木が多く、そのままでは含水率が高いため燃料として不適とされてしまうことが少なくない。
【0017】
そこで、先提案の製造方法は、これら生木に近い状態の木材を対象とするが、具体的には、含水率50%以上、望ましくは55%以上の含水率を有するものを対象とする。
この含水率は、針葉樹においては心材よりも辺材の方が高いとされるが、スギやトドマツなどでは心材も辺材と同等に高いものもあり、本発明で対象とする木材は針葉樹および広葉樹のこれら心・辺材を含むものである。
これら含水率の高いものに、後述する本発明の加圧脱水工程は有効に働くからである。
【0018】
先提案の製造方法にあっては、上記木材チップの形状はその製造方法にかかわらず、繊維直角方向を厚さとする扁平又は細長のチップとし、例えば
図1に示す如くの切削チップ又は破砕チップを用いる。繊維とは、針葉樹及び広葉樹にみられる主として仮道管、木繊維を指し、上記形状のものであればそのいずれを問わない。 後述するプレスとの関係にあって、扁平又は細長となった木材チップの厚さ方向に押圧することで有効な脱水作用が得られるからである。
上記木材チップの形状は、具体的には、例えば、寸法がふるいの目開き32mmを通過し、8mmに溜まるチップの重量割合が全チップ重量の80%以上で、8mmを通過するものおよび63mmを通過し32mmに溜まるものがそれぞれ10%未満で、かつ長さが4〜120mmのものを指す。
【0019】
先提案の製造方法で用い得るプレス機とは、相対する一対の一定面積を備えたプレス面が互いに等間隔をもって対面するプレス機をいう。例えば、上下又は左右に2つ(一対)のプレス面を有し、その相対するプレス面がローラーの如く線状に向き合うのではなく、一定面積を備えた面として相対するものを指す。そのプレス面は、平坦面を主とするが、それに限らず、彎曲面、球面の一部、折面等であっても良く、但し、相対する面が互いに等間隔をもって相対することを要件とする。後述する如く、一対のプレス面の間に木材チップを挟んだとき、チップ全体をできるだけ均等な圧力で、且つ、繊維長軸方向に対し直角方向に加圧する為である。
【0020】
そして、該木材チップの繊維長軸方向をプレス面に対し平行方向に配列して堆積したチップマットを形成する。ここでプレス面に対して平行方向とは、扁平又は細長の木材チップにあって、チップの傾きや繊維の絡み合い等によって、直線的平行が若干不揃いとなる場合も想定されるが、これらを含める意である。要するに、圧縮力をチップの長軸に対し、できるだけ繊維直角方向に作用させる関係を意味するものである(
図2参照)。
そして、このチップマットの形成にあたっては、木材チップが繊維直角方向を厚さとする扁平又は細長とした場合は、後述する如く、自然落下させた場合にも多くが平行方向に配列して堆積した状態で形成されるものとなる。
【0021】
次に、該チップマットに対し、その厚さ方向からプレスで圧縮加圧して脱水する加圧脱水工程を加えるが、その工程は、以下の第1工程〜第3工程から成る加圧脱水工程を構成するが、この工程の実施にあたって本発明は、木材の結合水と自由水を備えた細胞の構造に着目したものである。
即ち、木材中の水分は、細胞壁に含まれ木材実質と水素結合などの物理・化学的結合力で保持される結合水と、細胞内腔等の粗大な空隙に毛管力により保持される液状の自由水とが存在する。このうち加圧で容易に脱水できるのは自由水に限られるため、本発明では加圧脱水する対象を自由水とした。そして、この自由水は、壁孔(ピット)と呼ばれる小さな孔を通して隣接する細胞内腔間を移動できる。とくに繊維長軸方向に隣接する末端壁には多くの壁孔が分布し、繊維長軸方向への流動を容易にしている。他方、壁孔は強度的に弱点で、加圧による自由水の急激な膨圧発生に対して細胞破裂の起点ともなる。つまり、本発明は木材チップ内での細胞の配列と自由水の搾出に関係する細胞構造に着目したものである(
図2参照)。
【0022】
先ず、該加圧脱水工程にあっては、
図3に示す如く加圧初期においてはマットに圧縮変形を与えても応力が発生しない領域がある。これが第1工程でチップマットの押圧によってチップ間隙に存在する空気が抜け、結果としてチップマットの密度を高めている。この第1工程は、加圧開始からチップマットの厚さが初期厚さの約6割に縮まるまで続く(
図3と
図6(A)参照)。この場合の圧縮変形速度は比較的速くすることが可能で、例えば5mm/s〜200mm/sに設定することができる。
この第1工程が終了する段階で、後述するごとく、隣接するチップ間に摩擦や絡まりが生まれ、移動を抑制する拘束力が徐々に発生する。
【0023】
第2工程は圧縮応力の発生で始まる。チップ自体に直接圧縮力が作用し細胞は直径方向に圧縮変形を始める(
図3と
図6(B)参照)。マットの厚さが初期厚さの3割強にまで縮んだ時点=圧縮応力が木材の横圧縮破壊強度に相当する1MPa程度に達した時点で細胞は押しつぶされ、内腔に存在した自由水も圧迫されてその圧力で細胞を破裂し、自由水の搾出が始まる。さらに圧縮変形を加えるとチップおよび細胞の圧密化が一層促進され応力も急増し、それに伴って自由水の噴出も急激となる。第2工程では15〜25MPaの圧縮最大応力に達した時点で押圧を停止する。その時のマットの厚さが初期厚さの約10%程度と極端に薄くなっている(
図3及
図6(C)参照)。
このチップマット内に存する空気を抜いて第1工程が終了し圧縮応力の発生する第2工程のいずれかの時点で、例えばチップマット厚みが初期厚さの約5割(圧縮応力0.03MPa)に達した時点で、木材チップを囲う型枠を退避させても、後述する如くブロックの形態のままの保形性が維持される。
【0024】
第3工程は、第2工程でマットの押圧を停止した時点から始まり、一定時間最大応力を保持し解圧するまでの期間である。この状態ではチップ細胞はほぼ圧密化されており、マット内に残留した自由水の外部への排出を促す効果を期待する。最大応力の保持時間は原則的には搾出水の排出が終了するまでである。ただし水分の排出が完全に止むには相当の時間を要するため、応力保持時間は押圧停止から排水速度が少なくなった時点までとする。
この第3工程にあっても、上記ブロックのままの保形性が維持される。
以上の工程を通じて、用いた木材チップの形状は、例えば寸法がふるいの目開き32mmを通過し、8mmに溜まるチップの重量割合が全チップ重量の80%以上で、8mmを通過するものおよび63mmを通過し32mmに溜まるものがそれぞれ10%未満で、かつ長さが4〜120mmのものである。
【0025】
即ち、
図3および
図6に示す如く、チップマットの厚さ方向に圧縮圧力を加えると、チップマットの厚さは低くなりやがて応力が発生する。さらに加圧を続けるとある時点で脱水が開始され、上記の如く、チップマットの周囲にザーと多量の水の流出が観察される。設定した最大応力に達したところで加圧を停止し、一定時間最大応力を保持した後に解圧し一連の圧縮脱水処理を終了する。
また最大設定応力と含水率の関係は、圧縮脱水処理前のチップ含水率はいずれも60〜70%の高率を示すが、処理後の含水率は最大設定応力が増すに従って約40%から約35%に減少し、とくに最大応力15MPa以上では60%を超える高含水率チップであっても目標の40%以下とすることが可能となる。
一方、25MPaを超える最高圧力の採用は、含水率のより低いチップ製造に有効であるが、設定圧力を高くするとプレス装置の大型化が不可避で、それに伴うチップ品質のメリットと装置導入の初期投資やランニングコストの高騰によるリスクとの兼ね合いで決定すべきと判断される。
【0026】
この優れた脱水作用が惹起されるのは以下の如くに推察される。
先ず、上述の如く、木材中の水分には結合水と自由水とが存在し、自由水は壁孔(ピット)を通過して隣接細胞内腔間を移動できる。
図2に示す如くとくに繊維長軸方向に隣接する末端壁には多くの壁孔が分布し、繊維長軸方向への流動を容易にしている。他方、壁孔は強度的に弱点で、加圧による自由水の急激な膨圧発生に対して細胞破裂の起点ともなる。そこで、木材チップの繊維長軸方向をプレス面に対し平行方向に配列して直角方向に加圧すると、細胞は直径方向に押しつぶされ、自由水も押されてその圧力によってついには強度的弱点である壁孔の破壊ひいては細胞破裂が引き起こされる。このような細胞破壊は1MPa程度の小さい圧力で発生し、圧力の増加により順次強度レベルの高い組織破壊に進展すると考えられる。因みに燃料用チップの品質は材料用木材と異なり組織破壊とは無関係であることを付言する。
【0027】
とくに第2工程は、搾出された自由水が堆積チップ内から外部へと流出できることが肝心で、そのため流路確保を目的に、マット圧締速度を比較的ゆっくりすることが好ましい。少なくとも第1加圧工程より遅い速度で降下させるものとし、例えば、1〜10mm/s程度の降下速度とするのが望ましい。
【0028】
そして第3加圧工程では最大圧力状態を保持する(
図3および
図6(C)参照)。これは、上記第2加圧工程の終期では、細胞内腔に存在した自由水の大部分が排出されるだろうが、なお一定の割合で自由水が残存する可能性があり、それの排出を促すために行うものである。
このときの保持時間については15MPa〜25MPaの圧力の場合20秒では不足で、少なくとも30秒以上が必要であり、ただし30秒以上にしても脱水後の含水率はほとんど低下しないことから、30秒が適切と判断した。
斯くして、木材チップの含水率は40%以下とすることができ、燃料として使用するに適した含水率とすることが可能となる。
一方、脱水による到達含水率の最小値は30%とした。チップ燃料の含水率としては30〜40%にあれば品質的にも実用的にも十分であることによる。
【0029】
上記第1加圧工程〜第3加圧工程の前後にあっては、プレス面が堆積物まで降下する前工程と、解圧後にプレス面を上昇する後工程が付加され、これら工程を加えて再度の加圧脱水工程を実施し、これらを繰り返すことで所定量の木材チップの圧縮脱水処理が完了する(
図3、5、6及び7参照)。
【0030】
上記燃料用木材チップの製造法に対し、これを実施すべき製造装置の詳細を図面に基づいて説明する。
本発明製造装置は、
図4に示すように、型枠1,型枠駆動機構2,ピストン3,ピストン駆動機構4,位置決め機構5,サクションプレート6,吸引機構7,8の各部で構成されている。
【0031】
型枠1は、シリンダ状の上下端面が開口された円筒形に形成され、下端面は加圧面にもなる。
【0032】
型枠駆動機構2は、型枠1に連結された電動モータ,油圧モータ等からなるもので、型枠1を上下方向に昇降駆動する。この型枠駆動機構2については、他の駆動部から分岐連結せずに独立して設けることで、装置構成の複雑化を避けるのに寄与する。
【0033】
ピストン3は、型枠1に挿通される円筒形,円柱形に形成され、下端面が加圧面となっている。
【0034】
ピストン駆動機構4は、ピストン3に連結された電動モータ,油圧モータ等からなるもので、ピストンを上下方向に昇降駆動する。
【0035】
位置決め機構5は、型枠1の上端部に形成されたフランジ形の型枠側段部51と、ピストン3の上端部に形成されたフランジ形のピストン側段部52とからなる。型枠側段部51とピストン側段部52とは、互いに係合することによって、型枠1の下端面の加圧面とピストン3の下端面の加圧面とが面一になるように位置決めする。この位置決め機構5については、機械的係合構造を採用することで、装置構成の複雑化を避けるのに寄与する。
【0036】
サクションプレート6は、木材チップTから脱水された水が透過する多数の吸引孔が設けられた盤状物からなるもので、型枠1が載せられる設置台としても機能する。吸引孔については、下方向に向けて拡開されたテーパ形や下方向に向けて段階的に大きくなる階段形に形成される。
【0037】
吸引機構7,8は、サクションプレート6の下側に接続されて木材チップTから脱水されサクションプレート6を透過した水を吸引するもので、水を貯留する貯留タンク71,81と貯留タンク71,81を真空にする真空ポンプ72,82とからなる。これ等の吸引機構7,8は、加圧される木材チップTの底面の中心部と外側部とに分けて吸引経路を構成して、大量の水が脱水される加圧された木材チップTの底面の中心部で強い吸引で確実に水を吸引し、少量の水が脱水される加圧された木材チップTの底面の中心部よりも外側部で弱い吸引で排水量に合わせて吸引に強弱が設定されている。
【0038】
次に、本発明に係る燃料用木材チップの製造装置の実施の形態の制御,動作の説明に基づいて、本発明装置の作用及び効果を説明する。
この形態を運転する際には、
図5に示すように、サクションプレート6に載せられた型枠1の内部に木材チップTを充填する。このとき、傾斜樋形のシュートSを使用すると、木材チップTの充填が容易となるとともに迅速に行うことができる。
【0039】
この木材チップの充填にあたっては、シュートSを介して型枠1内にチップを投下すると、該チップはチップ全体の重心が安定する姿勢となるよう落下し、チップが繊維直角方向を厚さとする扁平又は細長であるとき、多くがその扁平又は細長の胴体部が(起立することなく)横に伏せた姿勢となる傾向が強い。いわば、木材チップの繊維長軸方向をプレス面に対し平行方向に配列して堆積したチップのブロックが形成される傾向となる。この作用は、後に型枠内に堆積した木材チップ間に存在する空気を抜いてチップマットの密度を高めていく第1工程において、徐々にチップ間のスペースがなくなっていく過程にあっても、押圧に従って扁平又は細長の胴体部が徐々に伏せた姿勢となる動きが更に促され、最終的にチップ同士が隣接し合うときには、多くが平行方向に配列して堆積したチップのブロックとして形成されるものとなる。
【0040】
この後、
図6(A)に示すように、ピストン駆動機構4によってピストン3を型枠1に向けて降下させ、型枠1の内部に充填されている木材チップTを加圧すべき上記第1工程が実行され、チップマット内の木材チップが圧密状態となる。
【0041】
次いで、この空気を抜くべき第1工程が終了し圧縮応力の発生する第2工程に至ると、隣接したチップ間の隙間が少なくなり、互いの組織内に食い込むことによって摩擦や絡まりが発生し、各小片が互いの移動を抑制する拘束力を発生する関係が生まれる。
即ち、チップマット内の空気が抜けて、チップ間の距離が徐々に縮まり、やがて互いが隣接し合う関係に至ると、チップ表面の組織が触れ合い、互いの食い込みや絡まりが生まれ、互いを拘束し合う関係となる。そこで、本来木材チップを囲んでその姿勢を維持すべき型枠1を上昇(退避)させ、該チップマットから外した状態としても、上記拘束力によってブロックが形成され、チップ個々が分散してしまうことなく略もとの姿勢のままの形態が維持される、保形性が得られるものとなる。
この型枠1の上昇(退避)のタイミングは、チップ表面の組織の状態や形状等によって異なるが、例えば上記製造方法で説明した形状のチップを用い、そのチップマットの厚みが初期厚さの約6割に至った段階で第1工程を終了させ、次なる第2工程で約0.03MPa程度の荷重を加え、その厚みが約5割に達した時点で型枠を退避させた場合、そのままブロックの形態が維持されることが確認された。
尚、このブロック形態の保形性とは、100%完全な形のままを維持するという意ではなく、後述するピストン退避後の加圧に伴う直交方向への木材チップの若干の膨らみ等を含むものである。
【0042】
具体的には、
図6(B)に示すよう、型枠駆動機構2によって型枠1をピストン3に沿って上昇(木材チップTの外側から退避)させて位置決め機構5の型枠側段部51,ピストン側段部52を係合させる。この結果、型枠1の下端面である加圧面とピストン3の下端面である加圧面とが面一になる。
【0043】
この拘束力を維持したブロックに加圧力が作用すると、チップマットの厚さ方向に圧縮力が働き、チップマットの厚さは薄くなりやがて応力が発生し、さらに加圧を続けるとある時点で脱水が開始され、チップの周囲に多量の水が流出する第2工程が実行される。細胞が押しつぶされ、内腔に存在した自由水が圧迫された状態となり、自由水の搾出が始まる。
具体的には、
図6(C)に示すよう、型枠駆動機構2とピストン駆動機構4とによって型枠1とピストン3とを降下させ型枠1による外側の拘束が解除された木材チップTを加圧し、この加圧による最大応力は、15MPa〜25MPaとする。
【0044】
尚このとき、上記の如くブロックの保形性は完全なものではなく、型枠1の退避とピストン3の押圧に従って若干の横方向(直交方向)への膨らみが生じるが、型枠1とピストンとが面一となって加圧面が拡張されているため、横方向に膨らんだ木材チップも加圧される。
【0045】
この加圧の際には、吸引機構7,8が駆動されて木材チップTから脱水された水は、吸引機構7,8の貯留タンク71,81に吸引排出される。
このとき、吸引機構7,8に木材チップTの底面の中心部と外側部とに分けて吸引経路を構成すると、大量の水が脱水される底面の中心部で強い吸引で確実に水を吸引し、少量の水が脱水される中心部よりも外側部で弱い吸引で、排水量に合わせて効率的に吸引される。
【0046】
更に、ピストン3の圧力を上記第2工程での最大圧縮圧力として約30秒以上保持して残存する自由水を排出すべき第3工程が実行される。例えば、加圧力を20MPaとし、加圧時間を30秒とすることで、残存する自由水が可及的に排出され、含水率が40%以下となることが確認された。
【0047】
サクションプレート6は、木材チップTから脱水された水が透過する多数の吸引孔が設けられた盤状物からなるもので、型枠1が載せられる設置台としても機能する。吸引孔については、下方向に向けて拡開されたテーパ形や下方向に向けて段階的に大きくなる階段形に形成される(
図8(A)、(
図8(B)参照)。
吸水過程でサクションプレートの吸引孔に木材チップが挟まった場合には、下方向に向けて拡開されたテーパ形や下方向に向けて段階的に大きくなる階段形に形成することで、吸引孔とチップとの間に摩擦(引っ掛かり)の少ない状態とし、自然な落下を促すことで、詰まりを防止することができる。
【0048】
脱水が完了した木材チップTについては、
図7に示すように、型枠駆動機構2とピストン駆動機構4とによって型枠1とピストン3とを上昇させることで、サクションプレート6の上から回収することができる。
【0049】
上記方法を具現する本発明装置によって、以下の如き効果が得られる。
可動性を有して内部に木材チップが充填される型枠と、該型枠に充填された木材チップを降下して加圧するピストンと、型枠の下部に設置され木材チップから脱水された水が透過するサクションプレートと、サクションプレートに接続され木材チップから脱水され透過した水を吸引する吸引機構とから成る簡潔な機構で、上記燃料用木材チップの製造方法が具現され、特別な高圧を要することなく、極めて効率の良い木材チップの脱水を可能とすることができる。
【0050】
型枠内に木材チップを充填し、ピストンを降下させてチップ間の空気を抜く第1工程と、ピストンを加圧して壁孔に作用して細胞破裂による自由水を排出する第2工程と、最大圧力を維持して残留水を排出する第3工程の一連の工程を、一回の動作で完了させることができる。
この結果、上記簡潔で経済的な機構でありながら、効率的な工程の操作が促される。
【0051】
チップ間の空気を抜いて互いが隣接し合う関係になりチップ表面の組織が触れ合い食い込み絡まり等による拘束力が生じる段階に至ると、型枠を退避させても保形性を維持するものとなり、斯かる状態で木材チップを加圧すると、排出された自由水が型枠内に貯留することがなく、直接に吸引機構から系外へと排出され、チップ組織内に水が残ることがなく、高い排水効率が得られる。装置としても複雑さを避け、燃料用木材チップの製造方法が、極めて簡潔で経済的な機構で実現される。