特許第6353406号(P6353406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353406
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】水素ステーション
(51)【国際特許分類】
   F17C 7/00 20060101AFI20180625BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20180625BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20180625BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20180625BHJP
【FI】
   F17C7/00 A
   H01M8/00 Z
   H01M8/0606
   H01M8/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-112480(P2015-112480)
(22)【出願日】2015年6月2日
(65)【公開番号】特開2016-223589(P2016-223589A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年2月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】福永 明彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 征児
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−127209(JP,A)
【文献】 特開2005−155824(JP,A)
【文献】 特開2003−056800(JP,A)
【文献】 特開2016−223531(JP,A)
【文献】 特開2016−196929(JP,A)
【文献】 特開2016−138594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
H01M 8/04− 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された燃料タンクに水素を充填する水素ステーションであって、
前記燃料タンクへの充填以外の目的で放出される水素ガスを燃料に用いて発電する燃料電池を有し、前記燃料電池で発電した電力が前記水素ステーションにおける電気負荷又は蓄電装置に供給されるように構成され
前記水素ステーションは、前記燃料タンクに着脱可能に装着される充填ノズルと、前記充填ノズルに高圧水素ガスを供給するための水素ガス配管と、前記水素ガス配管内の水素ガスを外部に放出するための水素ガス放出管と、を含み、
前記燃料電池は、前記燃料タンクへの水素ガスの充填後に前記充填ノズルの水素ガス供給方向における上流側を減圧するために実施される脱圧処理時に前記水素ガス放出管から放出される水素ガスを燃料に用いる、
水素ステーション。
【請求項2】
車両に搭載された燃料タンクに水素を充填する水素ステーションであって、
前記燃料タンクへの充填以外の目的で放出される水素ガスを燃料に用いて発電する燃料電池を有し、前記燃料電池で発電した電力が前記水素ステーションにおける電気負荷又は蓄電装置に供給されるように構成され、
前記水素ステーションは、液体水素を貯蔵する液体水素貯蔵タンクを含み、
前記燃料電池は、前記液体水素貯蔵タンク内で気化して前記液体水素貯蔵タンクから放出される水素ガスを燃料に用いる
素ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両(例えば燃料電池車)に搭載された燃料タンクに水素を充填するための水素ステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリン車に代わる環境負荷の小さい自動車として、水素を燃料とする燃料電池車が注目されている。前記燃料電池車の燃料タンクへの水素の供給は、通常、水素ステーションにおいて行われる。前記水素ステーションには、他の場所で製造された水素が輸送されるオフサイト型水素ステーションと、その場で水素を製造するオンサイト型ステーションがある。また、オフサイト型とオンサイト型の両方の機能を備えた水素ステーションも知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−202619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記水素ステーションの多くは、高圧水素ガスを貯蔵する蓄圧器を有し、前記燃料タンクに装着される充填ノズルを用いて前記蓄圧器に貯蔵された水素ガスを前記燃料タンクに充填するように構成されている。そして、このような水素ステーションにおいては、前記燃料タンクへの水素ガスの充填後、前記充填ノズルを前記燃料タンクから取り外す前に、いわゆる脱圧が行われて所定量の水素ガスが大気中に放出される。
【0005】
前記脱圧は前記燃料タンクに水素ガスを充填する毎に行われるため、大気中に放出される水素ガスの量は少なくない。このため、前記脱圧時に放出される水素ガスを有効に利用することが求められている。また、水素ガスは可燃性ガスであるため、放出される水素ガスの量(濃度)はできるだけ少ない(低い)ほうが好ましい。なお、これらのことは、前記脱圧時に放出される水素ガスに限るものではなく、前記水素ステーションにおいて大気中に放出される水素ガス(水素を主成分とする、いわゆる水素リッチガスを含む)について共通するものである。
【0006】
そこで、本発明は、このような課題に対処し得る水素ステーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、車両に搭載された燃料タンクに水素を充填する水素ステーションは、前記燃料タンクへの充填以外の目的で放出される水素ガスを燃料に用いて発電する燃料電池を有し、前記燃料電池で発電した電力が前記水素ステーションにおける電気負荷又は蓄電装置に供給されるように構成されている。ここで、前記水素ステーションは、前記燃料タンクに着脱可能に装着される充填ノズルと、前記充填ノズルに高圧水素ガスを供給するための水素ガス配管と、前記水素ガス配管内の水素ガスを外部に放出するための水素ガス放出管と、を含み、前記燃料電池は、前記燃料タンクへの水素ガスの充填後に前記充填ノズルの水素ガス供給方向における上流側を減圧するために実施される脱圧処理時に前記水素ガス放出管から放出される水素ガスを燃料に用いる。あるいは、前記水素ステーションは、液体水素を貯蔵する液体水素貯蔵タンクを含み、前記燃料電池は、前記液体水素貯蔵タンク内で気化して前記液体水素貯蔵タンクから放出される水素ガスを燃料に用いる。
【発明の効果】
【0008】
前記水素ステーションによれば、前記燃料タンクへの充填以外の目的で放出される水素ガスの有効利用が図れると共に、前記水素ステーションの安全性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態による水素ステーションの概略構成を示す図である。
図2】第1変形例による水素ステーションの概略構成を示す図である。
図3】第2変形例による水素ステーションの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による水素ステーション1Aの概略構成を示している。本実施形態による水素ステーション1Aは、主に燃料電池車20などの水素を燃料とする車両に搭載された燃料タンク20aに水素ガスを充填するための設備である。水素ステーション1Aは、いわゆるオンサイト型水素ステーション及びオフサイト型ステーションのいずれでもあり得る。
【0011】
図1に示すように、水素ステーション1Aは、圧縮機2と、蓄圧器3と、圧縮機2と蓄圧器3とを接続する接続管4と、充填ノズル5と、一端が蓄圧器3に接続されると共に他端が充填ホース6を介して充填ノズル5に接続された水素ガス供給管7と、水素ガス供給管7の途中から分岐した水素ガス放出管8と、制御装置9と、を有する。
【0012】
圧縮機2は、図示省略した水素供給源から供給される水素ガスを所定圧力に昇圧する。圧縮機2は、その稼働時に、接続管4に配設された第1開閉弁31及び第2開閉弁32が開かれることによって高圧水素ガスを蓄圧器3に供給する。前記水素供給源は、圧縮機2に水素ガスを供給できるものであればよく、特に制限されないが、例えば、水素ガスを貯蔵した水素ガス貯蔵容器、水素ガスを製造する水素製造装置、液体水素を気化させて供給する水素供給装置である。前記水素ガス貯蔵容器は、水素カードルや水素トレーラーなどであり得る。前記水素製造装置は、脱硫ガソリンやエタノールなどの燃料を改質して水素を製造する改質装置やメチルシクロヘキサンなどの有機ハイドライドから水素を取り出す脱水素装置などの水素製造装置などであり得る。前記水素供給装置は、例えば液体水素を貯蔵する液体水素貯蔵容器(タンク)と気化器とを有して構成される。
【0013】
蓄圧器3は、圧縮機2で昇圧されて接続管4を介して供給される水素ガス(高圧水素ガス)を貯蔵する。なお、図1には、蓄圧器3が一つしか示されていないが、水素ステーション1Aが複数の蓄圧器3を有してもよいことはもちろんである。
【0014】
充填ノズル5は、燃料タンク20aに着脱可能に構成されている。充填ノズル5は、燃料タンク20aに水素ガスを充填する際に燃料タンク20aに装着されて、蓄圧器3から水素ガス供給管7及び充填ホース6を介して供給される水素ガスを燃料タンク20aに充填する。
【0015】
水素ガス供給管7は、主に蓄圧器3内の高圧水素ガスを充填ノズル4に供給するための配管である。水素ガス供給管7には、蓄圧器3に接続される前記一端から前記他端(充填ホース6との接続端)に向かって、換言すれば、水素ガス供給方向における上流側から順に、第3開閉弁33、流量調整弁34、ガス流量計35、第4開閉弁36、プレクーラー37及び第5開閉弁38が配設されている。プレクーラー37は、水素ガス供給管7を流通する水素ガスを冷却する装置であり、例えば、水素ガス供給管7を流通する水素ガスと冷媒との熱交換を行う熱交換器37aと、前記冷媒を冷却して循環させる冷凍機37bとを含む。したがって、燃料タンク20aに充填される水素ガスは、プレクーラー37によってあらかじめ冷却される。
【0016】
水素ガス放出管8は、水素ガス供給管7内の水素ガスを外部に放出するための配管である。本実施形態において、水素ガス放出管8は、水素ガス供給管7の第5開閉弁38と前記他端(充填ホース6との接続端)との間の部位から分岐している。また、水素ガス放出管8には水素ガスを放出する際に開弁される放出弁39が配設されている。
【0017】
制御装置9は、水素ステーション1Aの主な構成要素、例えば、圧縮機2、第1〜5開閉弁31〜33,36,38、流量制御弁34、プレクーラー37(冷凍機37b)、放出弁39を制御する。
【0018】
水素ステーション1Aにおいて燃料電池車20の燃料タンク20aに水素ガスを充填する場合には、まずオペレータ等が充填ノズル5を燃料タンク20aに装着し、その後、充填ノズル5の近傍に配置された図示省略の入力部、例えば、充填ノズル5を含むディスペンサーの入力部に充填開始指令を入力する。すると、制御装置9は、前記充填開始指令に基づいて第3〜第5開閉弁33,36,38を開く。これにより、蓄圧器3内の(高圧の)水素ガスが蓄圧器3と燃料タンク20aとの差圧によって水素ガス供給管7、充填ホース6及び充填ノズル5を介して燃料タンク20aに充填される。その際、制御装置9は、流量制御弁34を制御して水素ガス供給管7を流通する水素ガスの流量を調整することができる。その後、制御装置9は、例えばガス流量計35の出力が所定値以下となると、燃料タンク20aへの水素ガスの充填が終了したと判断する。
【0019】
制御装置9は、燃料タンク20aへの水素ガスの充填が終了したと判断すると、主に充填ノズル5を燃料タンク20aから安全に取り外すため、充填ノズル5の前記水素ガス供給方向における上流側を減圧する脱圧処理を実施する。具体的には、制御装置9は、第3〜第5開閉弁33,36,38を閉じると共に放出弁39を開く。これにより、第5開閉弁38から充填ノズル4までの間に滞留している水素ガス、すなわち、水素ガス供給管7及び充填ホース6に残留した水素ガスが、水素ガス放出管8から外部に放出され、充填ノズル5の前記水素ガス供給方向における上流側が減圧される。そして、制御装置9は、例えば放出弁39を開いてから(前記脱圧処理の開始から)所定時間が経過すると、放出弁39を閉じる。これにより、前記脱圧処理が終了する。
【0020】
前記脱圧処理が終了すると、制御装置9は、その旨をオペレータ等に知らせるため、充填ノズル5の近傍に配置された図示省略の表示部、例えば前記ディスペンサーの表示部に燃料タンク20aへの水素ガスの充填が完了したことを表示する。そして、オペレータ等は、前記表示部によって燃料タンク20aへの水素ガスの充填が完了したことを確認して充填ノズル5を燃料タンク20aから取り外す。
【0021】
また、制御装置9は、例えば蓄圧器3内の水素ガスの圧力を検出する圧力センサ(図示省略)の出力に基づき蓄圧器3に対する水素ガスの充填を行う。例えば、制御装置9は、前記圧力センサの出力が第1所定値以下となると、前記水素供給源から圧縮機2への水素ガスの供給を開始し、圧縮機2を駆動し、第1開閉弁31及び第2開閉弁32を開く。これにより、圧縮機2で昇圧された(高圧の)水素ガスが蓄圧器3に充填される。そして、制御装置9は、例えば前記圧力センサの出力が第2所定値(>前記第1所定値)を超えると、前記水素供給源から圧縮機2への水素ガスの供給を終了し、圧縮機2を停止させ、第1開閉弁31及び第2開閉弁32を閉じる。これにより、蓄圧器3に対する水素ガスの充填が終了する。
【0022】
ところで、水素ステーション1Aにおいては、上述のように、燃料タンク20aに水素ガスを充填する毎に実施される前記脱圧処理によって、所定量の水素ガスが水素ガス放出管8から放出される。そこで、本実施形態において、水素ステーション1Aは、前記脱圧処理時に放出される水素ガスを有効に利用すると共に、水素ステーション1における安全性をより高めるため、さらに燃料電池ユニット10を有している。
【0023】
本実施形態において、燃料電池ユニット10は、燃料電池スタック11と、燃料ガス供給管12と、空気供給装置13と、蓄電装置14と、DC−DCコンバータ15と、インバータ16と、ユニットコントローラ17と、を含む。なお、ここで説明される燃料電池ユニット10の構成は一例にすぎず、燃料電池ユニット10の構成は適宜変更し得る。
【0024】
燃料電池スタック11は、水素ガスを燃料に用いて発電する発電装置である。本実施形態においては、水素ガス放出管8から放出される水素ガス(燃料ガス)が燃料ガス供給管12を介して燃料電池スタック11に供給されると共に、空気供給装置13によって空気(酸化剤ガス)が燃料電池スタック11に供給されるように構成されている。すなわち、燃料電池スタック11は、水素ガス放出管8から放出される水素ガスを燃料に用いて発電するように構成されている。なお、ここでは水素ガス放出管8が燃料ガス供給管12に接続されているが、水素ガス放出管8が燃料ガス供給管12を構成してもよい。
【0025】
空気供給装置13は、空気供給管131、空気圧縮機132及び加湿器133を含み、外部の空気を空気圧縮機131で圧縮(昇圧)し、加湿器132で加湿して燃料電池スタック11に送り込むように構成されている。
【0026】
蓄電装置14は、燃料電池スタック11で発電した電力を蓄えるための装置である。蓄電装置14は、特に制限されるものではないが、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などであり得る。
【0027】
DC−DCコンバータ15は、昇圧機能及び降圧機能を有した双方向性の電力変換装置である。DC−DCコンバータ15は、例えば、燃料電池スタック11の発電電力を蓄電装置14の充電に適した電圧に調整したり、蓄圧装置13の出力電圧を水素ステーション1Aにおける電気負荷ELの駆動に適した電圧に調整したりすることが可能である。ここで、電気負荷ELは、電力で作動する装置等であればよく、特に制限されないが、水素ステーション1Aの主な構成要素、例えば、圧縮機2、制御装置9、プレクーラー37、前記水素製造装置及び前記水素供給装置の少なくとも一つや、水素ステーション1Aに設置された各種の電気機器であり得る。
【0028】
インバータ16は、燃料電池スタック11の発電した電力又は蓄電装置13から出力された直流電力を交流電流に変換して電気負荷ELに供給する。
【0029】
ユニットコントローラ17は、通信線(図示省略)を介して制御装置9に接続されている。ユニットコントローラ17は、主に空気供給装置13(空気圧縮機131,加湿器132)、蓄電装置14、DC−DCコンバータ15及びインバータ16を制御する。
【0030】
例えば、ユニットコントローラ17は、制御装置9から放出弁39が開かれたこと(すなわち、前記脱圧処理が開始されたこと)を示す信号を受信すると、空気圧縮機131及び加湿器132を駆動して燃料電池スタック11に空気を供給する。そして、ユニットコントローラ17は、制御装置9から放出弁39が閉じられたこと(すなわち、前記脱圧処理が終了したこと)を示す信号を受信すると、空気圧縮機132及び加湿器132を停止して燃料電池スタック11への空気の供給を停止する。また、ここでの詳細な説明は省略するが、ユニットコントローラ17は、制御装置9から例えば電気負荷ELの動作状態を示す信号や水素ステーション1Aにおける電力需要を示す信号などを受信して、蓄電装置14、DC−DCコンバータ15及び/又はインバータ16を制御するように構成されてもよい。この場合、水素ステーション1Aの稼働状況等に応じて、蓄電装置14の電力が電気負荷ELに供給され及び/又は燃料電池スタック11の発電電力が調整され得る。
【0031】
本実施形態による水素ステーション1Aは、前記脱圧処理時に水素ガス放出管8から放出される水素ガスを燃料に用いて発電する燃料電池スタック11を有する。そして、水素ステーション1Aは、燃料電池スタック11で発電された電力が水素ステーション1Aにおける電気負荷EL又は蓄電装置14に供給されるように構成されている。このため、前記脱圧処理時に放出される水素ガスの有効利用を図ることができ、また、大気中に放出される水素ガスの量(濃度)が低減されて水素ステーション1Aの安全性をより高めることができる。ここで、さらに安全性を高めるため、図1中に一点鎖線で示すように、燃料電池スタック11から排出される燃料オフガスに窒素ガスを混入させるようにしてもよい。
【0032】
なお、上述の実施形態において、燃料電池スタック11は前記脱圧処理時に水素ガス放出管8から放出される水素ガスを燃料に用いて発電するように構成されている。しかし、これに限るものではない。燃料電池スタック11は、水素ステーションにおいて前記燃料タンクへの充填以外の目的、例えば安全性の確保や機能低下の抑制のために放出される水素ガスを燃料に用いて発電するように構成されていればよい。以下に上述の実施形態の変形例としていくつか説明する。なお、以下においては上述の実施形態と同じ構成要素については同じ符号を用いてその説明は省略する。
【0033】
(変形例1)
図2は、第1変形例による水素ステーション1Bの概略構成を示している。上述の実施形態による水素ステーション1Aとの主な相違は、第1変形例による水素ステーション1Bにおいては、前記水素供給源として水素製造装置51が用いられ、水素製造装置51から放出される水素ガスが燃料ガス供給管52を介して燃料電池スタック11に供給されることである。すなわち、第1変形例による水素ステーション1Bにおいて、圧縮機2には水素製造装置51で製造された水素ガスが供給されると共に、燃料電池スタック11は、調整運転中や運転中の水素製造装置51から放出される水素ガスを燃料に用いて発電するように構成されている。
【0034】
第1変形例による水素ステーション1Bにおいては、水素製造装置51と燃料電池スタック11とを接続する燃料ガス供給管52の途中に放出弁53が配置され、この放出弁53は例えば水素製造装置51の制御装置54によって制御される。制御装置54は通信線(図示省略)を介してユニットコントローラ17に接続されている。そして、ユニットコントローラ17は、例えば制御装置54から放出弁53が開かれたことを示す信号を受信すると、空気圧縮機131及び加湿器132を駆動して燃料電池スタック11に空気を供給する。その後、ユニットコントローラ17は、例えば制御装置54から放出弁53が閉じられたことを示す信号を受信すると、空気圧縮機132及び加湿器132を停止して燃料電池スタック11への空気の供給を停止する。
【0035】
なお、図示省略するが、水素ステーション1Bにおいて、水素ガス放出管8から放出される水素ガスと水素製造装置51から放出される水素ガスとが選択的に燃料電池スタック11に供給されてもよい。例えば、水素ステーション1Bにおいて、水素ガス放出管8が燃料ガス供給管52に接続されると共にその接続部に管路切替弁が配設され、前記管路切替弁がユニットコントローラ17によって制御されるように構成する。この場合、燃料電池スタック11は、前記脱圧処理時においては水素ガス放出管8から放出される水素ガスを燃料に用いて、水素製造装置51の調整運転中や運転中においては水素製造装置51から放出される水素ガスを燃料に用いて発電することができる。
【0036】
(第2変形例)
図3は、第2変形例による水素ステーション1Cの概略構成を示している。上述の実施形態による水素ステーション1Aとの主な相違は、第2変形例による水素ステーション1Cにおいては、前記水素供給源として液体水素貯蔵タンク61と気化器62とを有した水素供給装置63が用いられ、液体水素貯蔵タンク61から放出される水素ガスが燃料ガス供給管64を介して燃料電池スタック11に供給されることである。すなわち、第2変形例による水素ステーション1Cにおいて、圧縮機2には気化器62で気化された水素ガスが供給されると共に、燃料電池スタック11は、液体水素貯蔵タンク61内において気化して液体水素貯蔵タンク61から放出される水素ガスを燃料に用いて発電するように構成されている。
【0037】
第2変形例による水素ステーション1Cにおいては、液体水素貯蔵タンク61と燃料電池スタック11とを接続する燃料ガス供給管64の途中に放出弁65が配置され、この放出弁65は例えば水素供給装置63の制御装置66によって制御される。制御装置66は通信線(図示省略)を介してユニットコントローラ17に接続されている。そして、ユニットコントローラ17は、例えば制御装置66から放出弁65が開かれたことを示す信号を受信すると、空気圧縮機131及び加湿器132を駆動して燃料電池スタック11に空気を供給する。その後、ユニットコントローラ17は、例えば制御装置66から放出弁65が閉じられたことを示す信号を受信すると、空気圧縮機132及び加湿器132を停止して燃料電池スタック11への空気の供給を停止する。
【0038】
なお、図示省略するが、水素ステーション1Cにおいて、水素ガス放出管8から放出される水素ガスと液体水素貯蔵タンク61から放出される水素とが選択的に燃料電池スタック11に供給されてもよい。例えば、水素ステーション1Cにおいて、水素ガス放出管8が燃料ガス供給管64に接続されると共にその接続部に管路切替弁が配設され、前記管路切替弁がユニットコントローラ17によって制御されるように構成する。この場合、燃料電池スタック11は、前記脱圧処理時においては水素ガス放出管8から放出される水素ガスを燃料に用いて、液体水素貯蔵タンク61からの水素ガス放出時においては液体水素貯蔵タンク61から放出される水素ガスを燃料に用いて発電することができる。
【0039】
また、水素ステーション1A〜1Cでは、燃料タンク20aに水素ガスを充填するようにしているが、本発明は、液体水素燃料電池車に液体水素を直接供給する水素ステーションにも適用可能である。このような水素ステーションは、通常、液体水素貯蔵タンクを有しているので、第2変形例による水素ステーション1Cと同様に、燃料電池スタック11が前記液体水素貯蔵タンク内において気化して前記液体水素貯蔵タンクから放出される水素ガスを燃料に用いて発電するように構成すればよい。
【0040】
なお、上述の実施形態及びその変形例において、水素ステーション1A〜1Cは燃料電池車20に搭載された燃料タンク20aに水素を充填している。しかし、これに限るものではなく、水素ステーション1A〜1Cは、燃料電池車20だけではなく、水素を燃料とする水素燃料車(レシプロエンジン車やロータリエンジン車などを含む)に搭載された燃料タンクに水素を充填可能であることはもちろんである。
【0041】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態やその変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の改良や変更が可能であることは当然である。
【符号の説明】
【0042】
1A,1B,1C…水素ステーション、2…圧縮機、3…蓄圧器、5…充填ノズル、7…水素ガス供給管、8…水素ガス放出管、9…制御装置、10…燃料電池ユニット、11…燃料電池スタック、12…燃料ガス供給管、13…空気供給装置、14…蓄電装置、51…水素製造装置、39…放出弁、52…燃料ガス供給管、53…放出弁、61…水素供給装置、62…液体水素貯蔵タンク、63…気化器、64…燃料ガス供給管、65…放出弁、EL…電気負荷
図1
図2
図3