(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を、その実施のための最良の形態に基づいて説明する。
本発明の水溶性組成物は有機酸又はそのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、ミョウバンを有効成分として含む水溶液中にアルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸塩を添加し、弱アルカリ領域で炭酸ガスを生成させることを特徴とする炭酸ガス発泡アルカリ性組成物にある。したがって、本発明組成物はそのまま又は希釈して、対象食品に混合してもよいが、添加通常、炭酸ガス発泡組成物を処理対象物重量の乾燥重量で0.5〜2.0%を10倍から30倍の希釈水で水溶液にして用いる。したがって、対象食品の含水量を考慮して組成物の0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%、より好ましくは0.75〜3%(w/v)の水溶液となるように調製し、pH7.5から8.0の炭酸ガス発泡性アルカリ水溶液として使用するのがよい。
【0016】
本発明で用いる有機酸としては、食品添加に用いられる酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸等が挙げられ、そのまま使用してもよいが、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩として配合使用されるのが好ましく、水溶液として調製される。
【0017】
有機酸と反応して炭酸ガスを発生する炭酸塩として反応後の水溶液を中性以上とするアルカリ金属またはアルカリ土類との炭酸塩が好ましく、炭酸ナトリウム塩、炭酸水素ナトリウム塩、炭酸カリウム塩、炭酸水素カリウム塩、炭酸カルシウム塩、炭酸水素カルシウム塩が挙げられるが、水に対する溶解度が大きいのが好ましい。炭酸ナトリウム(重曹)が好ましいが、酒石酸、クエン酸、リン酸カルシウムなどの助剤を加えて、少量の重曹で効率よく炭酸ガスが発生するように工夫するのがよい。その使用量は有機酸との接触によるガス発生量により決定される。
【0018】
ミョウバンは褐変の色素であるポリフェノール又はミオグロンビンを捕捉してキレート効果を発揮するもので、三価の金属と一価の金属の硫酸塩の複塩の総称で、三価の金属としてAl, Fe, Crが挙げられ、一価の金属としてK, NH4、Naのものを使用することがで
き、市販されている。ミョウバンは食品の色素量により決定される。、
【0019】
有機酸又はその塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、ミョウバンの重量混合比は、有機酸塩100重量部に対しアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩30〜100重量部、ミョウバン5〜20重量部が適当である。有機酸塩の代わりに有機酸を使用する場合は有機酸水溶液がアルカリ領域になるまでアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩を添加する必要がある。これらの水溶性組成物を水に対し0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%、より好ましくは0.75〜3%(w/v)の濃度として用いるのが好ましい。
【0020】
したがって、本発明の組成物は、通常、少なくとも酢酸ソーダ又はクエン酸ソーダ30〜70重量部、重曹20〜50重量部、アスコルビン酸ナトリウム5〜15重量部、ミョウバン5〜20重量部、グルコマンナン0.5〜3重量部からなる組成物を用いる。酢酸ソーダは畜肉、魚肉及びその加工品、野菜に適し、クエン酸ソーダは果物及びその加工品に適する。
【0021】
ここで、アボカド果肉加工品とは、アボカドの皮及び種を除いた果肉部分のみからなるものと、その果肉に他の成分を添加してなるものの両者を包含する。
【0022】
アボカドの果肉は、皮に近い表面側は濃い緑色、種に近い内側はクリーム乃至ベージュ色であり、これらを均一になるまですりつぶして混合すると、黄緑色となる。本発明の水溶性組成物を用いると、アボカド果肉加工品は、アボカドの果肉を単に均一になるまですりつぶして混合したものとは、若干異なる色調を有するもので若草色の色調のものとなる。
【0023】
本発明ではアボカド果肉加工品は、アボカドの果肉を炭酸ガスを生成するアルカリ性水溶液と接触させ、上記のような色調とし、これを保持させる。本発明ではアボガドの果肉に何らかの添加物が加えられて使用されてもよく、特に限定されないがその例を挙げると、塩、酵母エキス、アミノ酸類等の調味料;各種香辛料;ビタミン類;ショ糖、トレハロース等の二糖類;アルギン酸、アルギン酸塩、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、プルラン、カードラン、グルコマンナン、ペクチン等の多糖類;レシチン、ショ糖脂肪酸エステル類、脂肪酸モノグリセリド類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の乳化剤等がある。
【0024】
本発明では酸味料は、炭酸塩により中性以上弱アルカリ性として用いるのが特徴であり、各種添加物の添加量の例を挙げると、アボカドの果肉の重量を基準として、酸味料のほかはビタミンEの添加量は0.01乃至3.0重量%、多糖類の添加量は0.02乃至5.0重量%、、乳化剤の添加量は0.01乃至2.0重量%が適当である。
【0025】
本発明のアボカド果肉加工品は、実質的に酸味料及び/又は亜硫酸系の変色防止剤を含有しなくても、保存時の変色が抑制される。
【0026】
次に、本発明に係るアボカド果肉加工品の製造及び保存方法について説明する。
【0027】
アボカドの果肉中に含まれている酵素、例えばポリフェノール酸化酵素を失活させるのが重要である。アボカドの果肉中に含まれているポリフェノールは、酸素の存在下でポリフェノール酸化酵素によってメラニンとなるからである。このため、アボカド果肉を、実質的にアルカリ性環境下に炭酸ガス発泡水溶液と接触させる。
【0028】
以下に、実施例により、本発明を具体的に説明する。
【0029】
〔実施例〕
実施例1: 添加物を含むアボカドパルプ(I)の製造とその利用
メキシコ産HASS種の完熟したアボカドを、皮剥きし且つ種取をして、果肉を得た。この果肉20kgを、チョッパー、パルパー及びフィニッシャーに通し、アボカドパルプを得た。このアボカドパルプを、容量40リットルの二重釜に移し、添加物(ビタミンC120g、レシチン40g、キサンタンガム20g、寒天100g)を加え、全体が均一となるまで混合した。得られた混合物に果肉の0.5重量%となる1%炭酸ガス発泡水溶液を添加して混合し、炭酸ガスを混合物と十分に接触させた。
【0030】
重曹−クエン酸ソーダベースの炭酸ガス発泡アルカリ水溶液の調整
水1000mlに、クエン酸ソーダ30〜70重量部、重曹20〜50重量部、アスコルビン酸ナトリウム5〜15重量部、ミョウバン5〜20重量部、グルコマンナン0.5〜3重量部の炭酸ガス発泡組成物を全体として1.0〜1.5%(W/V)となるように添加し、pH7.5から8.0に調整する。
【0031】
このようにして、添加物を含むアボカドパルプ(I)18.4kgを得た。アボカドパルプ(I)の色調は、若草色であった。
【0032】
(発明例1) アボカドパルプ(I)の密封、冷凍保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(I)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを−25℃にて急速冷凍し、その後、−20℃に保存した。
【0033】
(発明例2) アボカドピューレ(I)の製造及び密封、冷凍保存
上記の如く製造したアボカドパルプを、容量10リットルの真空濃縮機に移し、60℃にて濃縮を行ない、アボカドピューレを得た。得られたアボカドピューレ(I)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを−25℃にて急速冷凍し、その後、−20℃に保存した。
【0034】
(発明例3) アボカドピューレ(I)のレトルトパウチ包装品の常温保存
発明例2で製造したアボカドピューレ(I)250gを、レトルト食品包装用アルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを110℃にて20分間加熱し、その後常温に保存した。
【0035】
(発明例4) マヨネーズ様食品(I)の製造及び冷蔵保存
発明例2で製造したアボカドピューレ(I)350gを、容量2リットルの減圧式ミキサーに移し、次いで、このミキサーに、卵黄250g、砂糖75g、食塩1g、グルタミン酸ナトリウム2g、食酢420g、白胡椒2gを加えた。常温、13.3Pa(0.1Torr)の減圧下、1,000rpmで5分間撹拌を行ない、全体を均一化させた。アボカドの果肉は15乃至20%の油脂を含有しているので、食用油脂は添加せず、マヨネーズ様食品(I)を得、この250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0036】
(発明例5) アボカドドレッシング(I)の製造及び冷蔵保存
発明例2で製造したアボカドピューレ(I)350gを、容量2リットルの減圧式ミキサーに移し、次いで、このミキサーに、卵黄100g、砂糖100g、食塩1g、グルタミン酸ナトリウム2g、食酢420g、白胡椒2gを加えた。常温、13.3Pa(0.1Torr)の減圧下、1,000rpmで1分間撹拌を行ない、全体を均一化させた。その後、撹拌を続けながら、食用油脂545gを少量ずつ約5分間かけて添加し、全体が均一なアボカドドレッシング(I)を得た。得られたアボカドドレッシング(I)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0037】
(発明例6) アボカドケチャップ(I)の製造及び冷蔵保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(I)1kgを、容量3リットルのスチームジャケット付き二重釜に移し、撹拌しながら加熱した。アボカドパルプ(I)が沸騰し始めたら砂糖150gを加え、その後濃縮を行なった。加熱終了間際にオニオンパウダー4gを加え、混合し、加熱を終了させた。このようにして、アボカドケチャップ(I)約800gを得た。得られたアボカドケチャップ(I)200gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0038】
(発明例7) アボカドジャム(I)の製造及び冷蔵保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(I)1kgを、容量2リットルの連続式低温濃縮器に移し、砂糖540gを加え、約60℃に保持しつつ撹拌した。このようにして、糖度65%のアボカドジャム(I)1kgを得た。得られたアボカドジャム(I)200gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0039】
実施例2: 添加物を含まないアボカドパルプ(II)の製造とその利用
メキシコ産HASS種の完熟したアボカドを、皮剥きし且つ種取をして、果肉を得た。この果肉20kgを、チョッパー、パルパー及びフィニッシャーに通し、アボカドパルプ(II)を得た。アボカドパルプ(II)の色調は、ひわ萌葱色と柳葉色との中間の色調であった。
【0040】
比較例1 アボカドパルプ(II)の密封、冷凍保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを−25℃にて急速冷凍し、その後、−20℃に保存した。
【0041】
比較例2 熱処理したアボカドパルプ(II)の冷凍保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを、袋ごと沸騰水中に入れ、95乃至98℃にて30分間加熱した。袋を沸騰水から取り出し、放冷し、−25℃にて急速冷凍し、その後、−20℃に保存した。
【0042】
比較例3 アボカドパルプ(II)のレトルトパウチ包装品の常温保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)250gを、レトルト食品包装用アルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを110℃にて20分間加熱し、その後常温に保存した。
【0043】
比較例4 マヨネーズ様食品(II)の製造及び冷蔵保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)350gを、容量2リットルの減圧式ミキサーに移し、次いで、このミキサーに、卵黄250g、砂糖75g、食塩1g、グルタミン酸ナトリウム2g、食酢420g、白胡椒2gを加えた。常温、13.3Pa(0.1Torr)の減圧下、1,000rpmで5分間撹拌を行ない、全体を均一化させた。通常のマヨネーズは食用油脂を65%以上含有しているが、アボカドの果肉は15乃至20%の油脂を含有しているので、食用油脂は添加しなかった。
【0044】
得られたマヨネーズ様食品(II)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0045】
比較例5 アボカドドレッシング(II)の製造及び冷蔵保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)350gを、容量2リットルの減圧式ミキサーに移し、次いで、このミキサーに、卵黄100g、砂糖100g、食塩1g、グルタミン酸ナトリウム2g、食酢420g、白胡椒2gを加えた。常温、13.3Pa(0.1Torr)の減圧下、1,000rpmで1分間撹拌を行ない、全体を均一化させた。その後、撹拌を続けながら、食用油脂545gを少量ずつ約5分間かけて添加し、全体が均一なアボカドドレッシング(II)を得た。
【0046】
得られたアボカドドレッシング(II)250gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0047】
比較例6 アボカドケチャップ(II)の製造及び冷蔵保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)1kgを、容量3リットルのスチームジャケット付き二重釜に移し、撹拌しながら加熱した。アボカドパルプ(I)が沸騰し始めたら砂糖150gを加え、その後濃縮を行なった。加熱終了間際にオニオンパウダー4gを加え、混合し、加熱を終了させた。このようにして、アボカドケチャップ(I)約800gを得た。得られたアボカドケチャップ(I)200gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0048】
比較例7 アボカドジャム(II)の製造及び冷蔵保存
上記の如く製造したアボカドパルプ(II)1kgを、容量2リットルの連続式低温濃縮器に移し、砂糖540gを加え、約60℃に保持しつつ撹拌した。このようにして、糖度65%のアボカドジャム(II)1kgを得た。得られたアボカドジャム(II)200gをアルミパックに充填し、袋内の空気を吸引除去して密封した。これを冷蔵(5乃至10℃)保存した。
【0049】
実施例3: 保存後のアボカド果肉加工品の評価
実施例1及び2で製造し、保存したアボカド果肉加工品を、保存開始から1週間後に、その性状を評価した。冷凍したものは、流水で解凍し、その後常温に放置した。また、冷蔵したものは、常温に放置した。常温となったら、袋からアボカド果肉加工品を取り出し、色調と分離の有無を観察した。発明例は、何れも当初とほぼ同様の色調であったが、比較例は退色又は変色(褐変等)が生じていた。
【0050】
実施例4: アボカドパルプの製造
メキシコ産HASS種の完熟した完熟したアボカドを、皮剥きし且つ種取をして、果肉を得た。この果肉4kgを、チョッパー、パルパー及びフィニッシャーに通し、アボカドパルプを得た。上記のアボカドパルプ1kgに、0.5〜3%(w/v)の重曹−クエン酸ソーダベースの炭酸ガス発泡水溶液を調製し、10mlを添加して混合し、冷蔵保存した。他方、同様の処理を行なわず、得られたアボカドパルプを、ポリ塩化ビニリデンフィルムで隙間なく覆い、冷蔵保存した。
重曹−クエン酸ソーダベースの炭酸ガス発泡水溶液の調整
水1000mlに、クエン酸ソーダ30〜70重量部、重曹20〜50重量部、アスコルビン酸ナトリウム5〜15重量部、ミョウバン5〜20重量部、グルコマンナン0.5〜3重量部の炭酸ガス発泡組成物を全体として1.5%(W/V)となるように添加し、pH7.5から8.0に調整する。
【0051】
実施例5: 保存後のアボカド果肉加工品の評価
実施例4で製造したアボカドパルプを、冷蔵室から取り出し、各々約100gをバットに厚さが約1乃至2cmとなるように塗り広げた。その直後の色調を評価した。その後、室温で空気に接触する状態における色調の変化を、8時間にわたって観察した。発明例は、緑色の退色はあったが褐変の程度は小さかった。これに対し、比較例は、著しく褐変した。
【0052】
本発明の第2の品質保持対象となる野菜・果物は、皮むき及び/又はカットされて各種食品等に使用される野菜・果物である。これらに限定されるものではないが、カットレタス(玉レタス、リーフレタス、コスレタス等をカットしたもの)、カットキャベツ、カット白菜、カット春菊、カットキノコ類、皮むき及び/又はカットアボカド、皮むき及び/又はカットバナナ、皮むき及び/又はカットジャガイモ、皮むき及び/又はカットサツマイモ、皮むき及び/又はカットゴボウ、皮むき及び/又はカットナス、皮むき及び/又はカットリンゴ、皮むき及び/又はカット長芋、皮むき及び/又はカットフキ、皮むき及び/又はカットレンコン、皮むき及び/又はカットトマト、皮むき及び/又はカット大根、皮むき及び/又はカット里芋、皮むき及び/又はカットナシ、皮むき及び/又はカットモモ、皮むき及び/又はカットスモモ、皮むき及び/又はカットパパイヤなどが例示される。本発明は生鮮品あるいは生鮮品を冷凍したものに対し処理するのが好適であるが、これらの加工処理品(煮蒸、焼成、味付などを行ったもの)を対象から完全に除外するものではない。
【0053】
(カットレタスの品質確認試験)
本発明のカットレタス品質保持効果を確認するため、以下の試験を実施した。
まず、レタスの葉を一枚づつはがし、水切りした後本発明の1%処理液1に10分間浸漬した。処理液は、重曹−酢酸ソーダベースの炭酸ガス発泡水溶液を使用した。この浸漬後に水切りして20℃で48時間保管し、保管開始時(スタート)、24時間後、48時間後のカットレタスの状態を確認し、評価した。「本発明品」では、保管開始から48時間後においても全く褐変が認められず、官能評価においてもその食感、風香味に変化はなかった。
以上より、本発明に係る品質保持剤でカットレタスを処理することにより、従来品よりも極めて高い褐変抑制効果、品質保持効果が発揮され、20℃という温度帯でも充分な効果を発揮することが明らかとなった。
【0054】
(各種カット野菜・果物の品質確認試験I)
本発明の皮むきカットゴボウ、皮むきカット長芋、皮むきカットリンゴ、カットナス、皮むきカットバナナ及び皮むきカットジャガイモに対する品質保持効果を確認するため、以下の試験を実施した。
まず、各野菜又は果物を皮むき及び/又はカットし、必要に応じて殺菌、洗浄処理を行った後、これらを本発明の1%重曹−酢酸ソーダベース処理液に10分間浸漬した。処理液は、重曹ークエン酸ソーダベースの炭酸ガス発泡水溶液を使用した。これらの浸漬後に水切りして20℃で最長5日間保管し、保管開始時(スタート)、1日後、3日後、5日後の各種野菜・果物の状態を確認し、評価した。ゴボウ、及びバナナでは、保管開始から1日後でも「本発明品」では褐変が認められない。ゴボウとバナナでは3日後でも褐変が認められ始めた。長芋では、保管開始から3日後に、リンゴでは、保管開始から5日後に褐変が認められ始めた。ジャガイモでは、保管開始から1日後には褐変は認められなかった。ナスでは、保管開始から3日後まで、5日後も褐変は認められず、同様であった。なお、保管温度を10℃として同様の試験を実施した場合では、褐変の進み方は20℃保管より緩やかではあったが、ほぼ同様の結果であった。
【0055】
(各種カット野菜・果物の品質確認試験II)
本発明の皮むきカットアボカド、皮むきカットナシ、皮むきカットリンゴ、皮むきカットバナナ、カットキャベツ、カットレタス、カット春菊、皮むきカット里芋、カットマッシュルーム、カットナス、皮むきカットごぼう、カット白菜、皮むきカット大根、皮むきカットジャガイモ、皮むきカット長芋及び皮むきカットレンコンに対する品質保持効果を確認するため、以下の試験を実施した。
まず、各野菜又は果物を皮むき及び/又はカットし、必要に応じて殺菌、洗浄処理を行った後、これらを本発明の処理液2に10分間浸漬した。処理液は、重曹−クエン酸ソーダベースの炭酸ガス発泡処理液を使用した。これらの浸漬後に水切りして20℃で24〜72時間保管し、各種野菜・果物の状態を確認、評価した。
いずれの野菜・果物においても、保管開始から24時間で「無処理」と「本発明処理」の品質の差が認められた。以上より、本発明に係る品質保持剤で処理することにより、上記の各種皮むき及び/又はカット野菜・果物について、極めて高い褐変抑制効果、品質保持効果が発揮され、20℃という温度帯でも充分な効果を発揮することが明らかとなった。
【0056】
本発明の方法によれば、硝酸・亜硝酸系発色剤を用いることなく、食肉加工原料の変色を防止することができる。よって、硝酸及び亜硝酸、並びにそれらの塩を含有せず、且つ、赤色の発色に優れた、商品価値の高い食肉加工食品を製造することが可能となる。
【0057】
実施例6
骨や毛等の不純物を除去した規格豚うで肉の赤味9.67kgを食肉加工原料として用いた。これを3mm目プレートのチョッパーに通してミンチ状とした後、別途用意した本発明の処理組成物(重曹−酢酸ソーダベースの炭酸ガス発泡組成物)を混和した。得られた混合物を常温(20℃前後)で24時間保持し、乾塩法による漬け込みを行なった。漬け込み後、この混合物を5mm目プレートのチョッパーでチョッピングし、豚脂肪1.6kg、粉末卵白300g、香辛料30g、砂糖20g、粉末燻製剤10gを加え、真空ブレンダーを用い、カッターでカッティングして混和して均一な混合物とした。得られた混合物を、充填機を用いて羊腸ケーシング(ホットドッグ用、長さ15cm、径18〜20mm)に詰め、200本の未加熱ウインナーソーセージを作製した。これらを70℃で30分間乾燥し、70℃で40分間スモークし、更に75℃で40分間加熱した。これらを各々真空パックし、85℃で1分間加熱殺菌した後、冷水シャワーで10分間冷却することにより、ウインナーソーセージ(実施例1のウインナーソーセージ)を製造した。
【0058】
比較例8
実施例6の操作において、豚赤身肉の乾塩法による漬け込み時に、本発明組成物を使用せず、食塩150gを使用した。また、乾塩法による漬け込み後、得られた処理物に対して、更に亜硝酸ナトリウム100gを加えた。その他は実施例6と同様の操作を行なうことにより、ウインナーソーセージ(比較例8のウインナーソーセージ)を製造した。
【0059】
比較例9
実施例6の操作において、豚赤身肉の乾塩法による漬け込み時に、本発明組成物を使用せず、食塩150gを豚赤身肉に加えた。その他は実施例6と同様の操作を行なうことにより、ウインナーソーセージ(比較例9のウインナーソーセージ)を製造した。
【0060】
〔評価1〕
実施例6及び比較例8、9のウインナーソーセージを、8〜10℃の冷蔵庫で30日間保存し、保存前後の色調の変化を目視で観察した。
保存前の観察によれば、何れのウインナーソーセージも、赤色系の色調を呈していた。 一方、保存後の観察によれば、実施例6及び比較例8のウインナーソーセージは赤色系の色調を維持していたのに対し、比較例9のウインナーソーセージは茶褐色系の色調へと変化していた。
また、実施例6のウインナーソーセージの色と比較例8のウインナーソーセージの色をより具体的に比較したところ、前者は薄いピンク色であり、後者はやや赤色に近いピンク色であったが、顕著な色調の違いは見られなかった。
【0061】
実施例7
本発明の塩漬調味液(電解液)を調製した。食肉加工原料として豚もも肉96kg(40本)を用い、これらに前記の塩漬調味液をインジェクターを用いて注入した後、ロータリーマッサージ機を使用して6rpmで72時間回転させ、塩漬調味液を豚もも肉内に浸透させた。次に、これらの豚もも肉をケーシング内に整形充填し、75℃で30分間乾燥し、60℃で40分間スモークし、更に85℃で1分間加熱し、中心温度が68〜70℃に達したことを確認した後、冷蔵庫内で一晩保管し、ボンレスハム(実施例7のボンレスハム)を製造した。
【0062】
比較例10
実施例7の操作において、本発明の塩漬調味液の組成を、水25kg、食塩150g、粉末卵白3.2kg、砂糖2.1kg、グルタミン酸ナトリウム900g、及び亜硝酸ナトリウム150gに変更した。その他は実施例7と同様の操作を行なうことにより、ボンレスハム(比較例10のボンレスハム)を製造した。
【0063】
比較例11
実施例7の操作において、本発明の塩漬調味液の組成を、水25kg、食塩150g、粉末卵白3.2kg、砂糖2.1kg、及びグルタミン酸ナトリウム900gに変更した。その他は実施例7と同様の操作を行なうことにより、ボンレスハム(比較例11のボンレスハム)を製造した。
【0064】
[評価2]
実施例7及び比較例10,11のボンレスハムを、8〜10℃の冷蔵庫で30日間保存し、保存前後の色調の変化を目視で観察した。
保存前の観察によれば、何れのボンレスハムも、赤色系の色調を呈していた。
保存後の観察によれば、実施例7及び比較例10のボンレスハムは赤色系の色調を維持していたのに対し、比較例11のボンレスハムは茶褐色系の色調へと変化していた。
また、実施例7のボンレスハムの色と比較例10のボンレスハムの色をより具体的に比較したところ、前者は薄いピンク色であり、後者はやや赤色に近いピンク色であったが、顕著な色調の違いは見られなかった。
以上の結果から、本発明の方法により製造された実施例6のウインナーソーセージ及び実施例7のボンレスハムは、従来の硝酸・亜硝酸系発色剤を全く使用していないにも関わらず、これらの発色剤を使用した比較例8のウインナーソーセージ及び比較例10のボンレスハムとほぼ同様の色調を有することが明らかとなった。
【0065】
次に、本発明を魚肉について、適用した場合を以下の実施例により詳細に説明する。
【0066】
実施例8
超低温(−40℃)で凍結され、保存された本マグロフィーレ2kgを、−10乃至−15℃の冷凍庫に放置して通常の冷凍状態とした。通常の冷凍状態となった本マグロフィーレを、食塩濃度10質量%の食塩水に入れ、約5分間浸漬した。この浸漬の間、食塩水は撹拌され、且つ、約25℃となるように加温された。
【0067】
次に、本マグロフィーレを取り出し、水切り後、約2℃の冷蔵庫にて2時間、静置熟成させた。その後、この本マグロフィーレを柵状に切り、さらに、一片が10±2gとなるようにスライスした。
【0068】
常温の水道水1Lに、酢酸ソーダ50g、重曹(炭酸水素ナトリウム)30g、アスコルビン酸ナトリウム10g、ミョウバン10g、グルコマンナン2.0gを溶解、分散させ、希釈して均一な1%溶液とした。この溶液に、上記のスライスした本マグロフィーレを投入し、浸漬させた。この工程は、5乃至10℃にて行った。15分後、スライスした本マグロフィーレを引き上げ、液切りを行い、真空包装した。この真空包装品を、超低温(−40℃)の冷凍庫にて再凍結した。
【0069】
比較例12
超低温(−40℃)で凍結され、保存された本マグロフィーレ2kgを、−10乃至−15℃の冷凍庫に放置して通常の冷凍状態とした。通常の冷凍状態となった本マグロフィーレを、柵状に切り、さらに、一片が10±2gとなるようにスライスした。
【0070】
常温の水道水3Lに食塩110gを溶解させ、均一な溶液とした。この食塩水に、上記のスライスした本マグロフィーレを投入し、浸漬させた。この工程は、5乃至10℃にて行った。15分後、スライスした本マグロフィーレを引き上げ、液切りを行い、真空包装した。この真空包装品を、超低温(−40℃)の冷凍庫にて再凍結した。
【0071】
〔評価1〕
実施例8及び比較例12の本マグロのスライス冷凍品の色調を目視で観察し、その後冷凍庫で3日間保存し、保存後の色調も目視で観察した。
【0072】
保存前の観察において、実施例8のマグロは、赤色系の美しい色調を呈していた。比較例12のマグロは、赤色にやや退色が見られた。これは、原料から冷凍品を製造するまでの時間経過において、比較例12ではミオグロビンの酸化が生じたためと考えられる。一方、保存後の観察によれば、実施例8は赤色系の美しい色調を維持していたが、比較例12は茶褐色系であり、食材としての価値は大きく低下していた。
【0073】
実施例9
本マグロフィーレの代わりに養殖ブリのフィーレ2kgを使用した以外は、実施例8と同様の操作を行い、真空包装された凍結ブリスライスを得た。
【0074】
比較例13
本マグロフィーレの代わりに養殖ブリのフィーレ2kgを使用した以外は、比較例12と同様の操作を行い、真空包装された凍結ブリスライスを得た。
【0075】
〔評価2〕
実施例9及び比較例13のブリフィーレのスライス冷凍品の色調を目視で観察し、その後冷凍庫で3日間保存し、保存後の色調も目視で観察した。保存前及び保存後のいずれも、本マグロフィーレのスライス冷凍品についての観察結果と同様の結果であった。
【0076】
実施例10
超低温(−40℃)で凍結され、保存されたカツオフィーレ3kg(1kg×3枚)を、−10乃至−15℃の冷凍庫に放置して通常の冷凍状態とした。通常の冷凍状態となったカツオフィーレを、食塩濃度10質量%の食塩水に入れ、約5分間浸漬した。この浸漬の間、食塩水は撹拌され、且つ、約25℃となるように加温された。次に、カツオフィーレを取り出し、水切り後、約2℃の冷蔵庫にて2時間、静置熟成させた。
【0077】
常温の水道水3Lに、本発明の重曹−酢酸ソーダベースの組成物を分散、溶解させ均一な1.5%水溶液とした。この溶液に、上記のカツオフィーレを投入し、浸漬させた。この工程は、5乃至10℃にて行った。30分後、カツオフィーレを引き上げ、液切りを行い、真空包装した。この真空包装品を、超低温(−40℃)の冷凍庫にて再凍結した。
【0078】
比較例14
超低温(−40℃)で凍結され、保存されたカツオフィーレ3kg(1kg×3枚)を、−10乃至−15℃の冷凍庫に放置して通常の冷凍状態とした。常温の水道水3Lに食塩110gを溶解させ、均一な溶液とした。この食塩水に、通常の冷凍状態となったカツオフィーレを投入し、浸漬させた。この工程は、5乃至10℃にて行った。30分後、カツオフィーレを引き上げ、液切りを行い、真空包装した。この真空包装品を、超低温(−40℃)の冷凍庫にて再凍結した。
【0079】
〔評価3〕
実施例10及び比較例14のカツオフィーレ冷凍品の色調を目視で観察し、その後冷凍庫で3日間保存し、保存後の色調も目視で観察した。
【0080】
保存前及び保存後のいずれも、カツオフィーレ冷凍品の色調は、本マグロフィーレのスライス冷凍品及び養殖ブリフィーレのスライス冷凍品についての観察結果と同様の結果であった。
【0081】
以上述べたとおり、本発明の方法により製造された実施例8のマグロ、実施例9のブリ、及び実施例10のカツオは、いずれも、硝酸・亜硝酸系発色剤を使用していないにも係わらず、冷凍保存3日後においても美しい赤色系の色調を維持していた。
以上、本発明の調理方法をまとめると次の通りである。
シャケ、まぐろ、魚卵等の保水及び赤色の工程(1)、(2)
ここで、本発明品は重曹‐酢酸ソーダベースの組成物をいい、本発明品の配合量は原材料100重量部としたときの1〜1.5%の粉を加水し、原材料を浸漬する場合をいう。シャケの加水量は刺身物に比して多くなる。
練り製品(ソーセージ)の工程(3)
ここで、本発明品は重曹‐酢酸ソーダベースの組成物をいい、本発明品の配合量は原材料100重量部としたときの1〜1.5%の粉を調味料とともに、原材料に練りこむ場合をいう。
練り製品(ハム・ベーコン・ローストビーフの処理工程)(4)
ここで、本発明品は重曹‐酢酸ソーダベースの組成物をいい、本発明品の配合量は原材料100重量部としたときの1〜1.5%の粉を調味料に配合し、原材料の10〜40%を注入する場合をいう。