(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。尚、添付図面において、本明細書全体を通して類似の構成要素には、同様の参照符号を付して表すこととする。
【0011】
図1は、本発明によるシート搬送装置を備えた画像形成システムの全体構成を概略的に示している。同図に示すように、画像形成システム100は、画像形成装置Aと、これに併設されるシート後処理装置Bとから構成される。画像形成装置Aは、画像形成ユニットA1とスキャナーユニットA2とフィーダーユニットA3とで構成される。画像形成ユニットA1は、装置ハウジング1の内部に給紙部2と画像形成部3と排紙部4とデータ処理部5とを備えている。
【0012】
給紙部2は、それぞれ異なるサイズの画像形成用シートを収納する複数のカセット機構2a,2b,2cで構成され、図示しない本体制御部から指定されたサイズのシートを給紙経路6に繰り出す。各カセット機構2a,2b,2cは給紙部2から着脱可能に設置され、それぞれ内部のシートを1枚ずつ分離する分離機構と、シートを繰り出す給紙機構とが内蔵されている。給紙経路6には、各カセット機構2a,2b,2cから供給されるシートを下流側に給送する搬送ローラーと、経路端部には各シートを先端揃えするレジストローラー対とが設けられている。
【0013】
給紙経路6には、大容量カセット2dと、手差しトレイ2eとが接続されている。大容量カセット2dは、大量に消費するサイズのシートを収納するオプションユニットで構成される。手差しトレイ2eは、分離給送が困難な厚紙シート、コーティングシート、フィルムシートなどの特殊シートを供給可能なように構成される。
【0014】
画像形成部3は、例えば静電印刷機構で構成されており、回転する感光ドラム9と、その周囲に配置された、光学ビームを発光する発光器10、現像器11、クリーナー(図示せず)とを備えている。図示のものはモノクロ印刷機構であり、感光ドラム9に発光器10で光学的に潜像を形成し、この潜像に現像器11でトナーインクを付着させる。
【0015】
この感光ドラム9に画像形成するタイミングに合わせて、給紙経路6からシートを画像形成部3に送り、転写チャージャー12で該シート上に画像を転写し、排紙経路14に配置されている定着ローラー13で定着させる。排紙経路14には、排紙ローラー15と排紙口16とが配置され、後述するシート後処理装置Bに画像形成したシートを搬送する。
【0016】
スキャナーユニットA2は、画像原稿を載置するプラテン17と、プラテン17に沿って往復動するキャリッジ18と、光電変換手段19と、キャリッジ18によるプラテン17上の原稿からの反射光を光電変換手段19に案内する縮小光学系20とを備える。光電変換手段19は、縮小光学系20からの光学出力を画像データに光電変換して、電気信号として画像形成部3へ出力する。
【0017】
また、スキャナーユニットA2は、フィーダーユニットA3から送られてくるシートを読み取るために、走行プラテン21を備えている。フィーダーユニットA3は、給紙トレイ22と、給紙トレイ22から送り出したシートを走行プラテン21に案内する給紙経路23と、走行プラテン21を通過した原稿を収納する排紙トレイ24で構成される。給紙トレイ22からの前記原稿は、走行プラテン21を通過する際に、キャリッジ18と縮小光学系20とで読み取られる。
【0018】
図2は、画像形成装置Aから送られてくる画像を形成されたシートを後処理するシート後処理装置Bの構成を示している。シート後処理装置Bは、画像形成装置Aからのシートを導入するための搬入口26を設けた装置ハウジング27を備える。装置ハウジング27は、搬入口26を像形成装置Aの排紙口16に連通させるように、画像形成装置Aのハウジング1に位置を合わせて配置される。
【0019】
シート後処理装置Bは、搬入口26から導入されるシートを搬送するシート搬入経路28と、シート搬入経路28から分岐される第1排紙パス30、第2排紙パス31及び第3排紙パス32と、第1経路切換手段33と、第2経路切換手段34とを備える。第1及び第2経路切換手段33、34は、それぞれシート搬入経路28を搬送されるシートの搬送方向を変更するフラッパーガイドで構成されている。
【0020】
第1経路切換手段33は、図示しない駆動手段によって、搬入口26からのシートを第3排紙パス32に案内するモードと、第1排紙パス30及び第2排紙パス31の方向に案内するモードとに切り換えられる。第1排紙パス30と第2排紙パス31とは、一旦第1排紙パス30に導入されたシートを、搬送方向を反転させて第2排紙パス31にスイッチバック搬送することが可能なように連通して配置されている。
【0021】
第2経路切換手段34は、第1経路切換手段33の下流側に配置されている。第2経路切換手段34は、同じく図示しない駆動手段によって、第1経路切換手段33を通過したシートを第1排紙パス30に導入するモードと、一旦第1排紙パス30に導入されたシートを第2排紙パス32にスイッチバック搬送するモードとに切り換えられる。
【0022】
シート後処理装置Bは、それぞれ異なる後処理を行う第1〜第3処理部B1〜B3を備える。更にシート搬入経路28には、搬入されたシートにパンチ穴を穿孔するパンチユニット50が配置されている。
【0023】
第1処理部B1は、第1排紙パス30下流端の排紙口35から搬出された複数のシートを集積し、部揃えして綴じ処理し、装置ハウジング27の外側に設けられた積載トレイ36に排出する綴じ処理部である。後述するように、第1処理部B1は、シート又はシート束を搬送するための本発明によるシート搬送装置37と、シート束を綴じ処理する綴じ処理ユニット38とを備える。第1排紙パス30の下流端には、排紙口35からシートを排出するための排出ローラー対39が設けられている。
【0024】
第2処理部B2は、第2排紙パス31からスイッチバック搬送されてくる複数のシートをシート束にし、該シート束の中央部で綴じ処理した後、折り処理を行う。折り処理は、互いに圧接した折りロール対41のニップ部に折り位置を合わせてシート束を配置し、反対側から折りブレード42を差し込んで折りロール対41を回転させ、シート束を折り合わせる。折り処理されたシート束は、排出ローラー43によって、装置ハウジング27の外側に設けられた積載トレイ44に排出される。
【0025】
第3処理部B3は、第3排紙パス32から送られてくるシートを、搬送方向に直交する方向に所定量オフセットさせて集積するグループと、オフセットさせることなく集積するグループとに区分けするジョグ仕分けを行う。ジョグ仕分けしたシートは、装置ハウジング27の外側に設けられた積載トレイ46に排出され、オフセットされたシート束とオフセットされないシート束とが積み上げられる。
【0026】
図3は、第1処理部B1の第1実施形態の全体構成を概略的に示している。上述したように、第1処理部B1は、排紙口35からのシートを集積し、部揃えし、綴じ処理後に積載トレイ36に排出するためのシート搬送装置37と、該シート搬送装置により集積かつ部揃えされたシート束を綴じ処理する綴じ処理ユニット38とを備える。図示される綴じ処理ユニット38は、ステープル針を打ち込んでシート束を綴じ処理するステープラー装置である。綴じ処理ユニット38は、ステープラー装置ではなく、針無しでシート束を綴じ処理する針無し綴じ装置を用いることもできる。
【0027】
シート搬送装置37は、排紙口35の下流側にかつ該排紙口から下方に所定の距離をもって配置された処理トレイ51を備える。シート搬送装置37は、排紙口35から処理トレイ51に排出された綴じ処理前のシートを該処理トレイの奥側に即ち積載トレイ36への搬出方向とは反対側に搬送するための搬送するためのシート搬入機構52と、処理トレイ51上で複数のシートを束状に集積して位置合わせするためのシート整合機構53と、綴じ処理されたシートを積載トレイ36に搬出するためのシート搬出機構54とを備える。
【0028】
図4に示すように、処理トレイ51は、その上面にシートを搬出方向に沿って少なくとも部分的に支持する概ね平坦なシート支持面55を有する。シート支持面55は、搬出方向の下流側から上流側に向けて概ね40°前後の比較的急な角度をもって下向きに傾斜している。
【0029】
処理トレイ51は、シート支持面55の下流端55aから下流側に積載トレイ36の上方に向けて進退可能な左右1対の補助支持部材56を有する。補助支持部材56は、細長い平板状の部材からなり、搬出方向に沿って上向き凸に緩やかに湾曲した上面を有する。各補助支持部材56は、処理トレイ51の直ぐ下側に固定されたガイド57によって、搬出方向及び搬出方向と逆方向に移動可能に装着されている。
【0030】
図5に示すように、補助支持部材56の下面には、搬出方向に沿ってラック58が形成されている。各補助支持部材56のラック58にはそれぞれ、処理トレイ51の直ぐ下側を搬出方向と直交する向き即ち幅方向に延長する水平な支持ロッド61に回動自在に装着された駆動ピニオン59が噛合している。支持ロッド61には、各駆動ピニオン59にそれぞれ隣接させて従動プーリー60が回動自在に装着されている。各駆動ピニオン59と隣接する従動プーリー60とは、一体に回動するように結合している。
【0031】
従動プーリー60は、支持ロッド61と平行な下側の回転ロッド64に一体に回動するように軸支された駆動プーリー62と、伝動ベルト63を介して動力伝達可能に連結されている。回転ロッド64には、一方の駆動プーリー62に隣接して、従動歯車65が該回転ロッドと一体に回動するように軸支されている。従動歯車65は、駆動モーター66の回転軸67と、その先端に装着された駆動歯車68を含む歯車列69を介して動力伝達可能に連結されている。
【0032】
これにより、両補助支持部材56は、駆動モーター66を正逆回転させることによって搬出方向に沿って往復移動させることができる。補助支持部材56は通常、
図4に実線で示すように、その先端をシート支持面55の下流端55aから少し引っ込ませて、シート支持面55の平面内の待避位置に配置される。駆動モーター66を回転させることによって、補助支持部材56は、
図4に想像線で示すように、その先端を、下流端55aよりも搬送方向に関して下流に位置した、積載トレイ36の上方位置まで延出させることができる。駆動モーター66の駆動は、後述するようにシート後処理装置Bに設けられた後処理装置制御部によって制御される。
【0033】
補助支持部材56は、処理トレイ51から延出させたとき、その上面が実質的にシート支持面55から連続して、積載トレイ36の上方に向けて補助的なシート支持面を形成する。排紙口35から処理トレイ51に排出されたシートは、搬出方向に沿って上流側部分がシート支持面55で支持され、下流側部分が補助支持部材56の補助的シート支持面で支持される。
【0034】
前記補助的シート支持面は、積載トレイ36の上方位置まで延出した状態において、補助支持部材56上面の上向き凸に湾曲しているので、シート支持面55下流端から補助支持部材56の下流端にかけて傾斜を徐々に緩やかにする。処理トレイ51から延出する補助支持部材56上面の搬出方向長さ及びその湾曲形状によって、前記補助的シート支持面は、先端側を略水平に、更に下流側に向けて下向きに傾斜させることができる。
【0035】
シートは、下流側部分が前記補助的シート支持面に支持されることによって、比較的急な傾斜のシート支持面55を有する処理トレイ51の上流側に滑り落ちることを防止できる。補助支持部材56によりシートを支持するために十分な搬出方向長さを確保することによって、処理トレイ51の搬出方向寸法を小さくすることができる。従って、シート搬送装置37及びシート後処理装置Bが搬出方向に小型化される。
【0036】
シート搬入機構52は、後述するようにシート束搬出機構54としても機能する搬送ローラー装置71と、掻き込み回転体72とを備える。搬送ローラー装置71は、処理トレイ51を挟んで上側の搬送ローラー73と下側の搬送ローラー74とからなるローラー対を幅方向に左右各1対有する。上側搬送ローラー73は、処理トレイ51の上方に揺動可能に支持された昇降ブラケット75の先端に回動可能に支持され、下側搬送ローラー74は、前記処理トレイ下側の支持ロッド61に回動自在に設けられている。
【0037】
シートが排紙口35から処理トレイ51に排出されると、昇降ブラケット75が下向きに回転して上側搬送ローラー73を該処理トレイ上のシート上面に当接させる。次に、上側搬送ローラー73を駆動して図中反時計方向に、下側搬送ローラー74を時計方向に回転させる。これにより、シートは処理トレイ51上を搬入方向即ち搬出方向とは逆方向に搬送される。
【0038】
掻き込み回転体72は、処理トレイ51の上方かつ搬出方向上流側に、回転可能に配置されたリング形状又は短円筒状のベルト部材で構成される。前記ベルト部材は、処理トレイ51上を搬送されてくるシートの上面に接触し、押圧しながら図中反時計方向に回転する。これにより、搬送中のシートに生じ得るカールやスキューに対応しながら、シートをその先端が処理トレイ51の搬出方向上流端に設けられた係止部材76に当接するまで送り込むことができる。係止部材76は、例えば
図4に示す断面コ字形のチャネル状部材で構成される。
【0039】
シート整合機構53は、シート端制限部とサイド整合機構とから構成される。前記シート端制限部は、上述した係止部材76を左右1対有する。係止部材76は、排紙口35から処理トレイ51上に搬入されたシートの位置を搬入(又は搬出)方向に、該シートの搬入方向先端(又は搬出方向後端)で制限する。
【0040】
前記サイド整合機構は、処理トレイ51上のシート及びシート束を幅方向に移動させ、その側端縁で幅方向の位置を規制かつ/又は整合させる。前記サイド整合機構は、
図4に示すように、処理トレイ51の幅方向中心を挟んで左右に配置された一対のサイド整合部材77を有する。サイド整合部材77は、互いに内面を対向させて、処理トレイ51のシート支持面55から垂直上方に延出する平板状の部材で構成されている。各サイド整合部材77の前記内面は、それぞれ処理トレイ51上のシートの幅方向の近接する側端縁と係合して、該シートの幅方向位置を規制する。
【0041】
各サイド整合部材77は、それぞれ処理トレイ51の背面側に設けた可動支持部(図示せず)と、該処理トレイに貫設された幅方向の直線状スリット78を介して一体に結合されている。各前記可動支持部はそれぞれ、例えばラックピニオン機構を介して個別の駆動モーターにより駆動されて幅方向に往復移動し、それによって各サイド整合部材77は、それぞれ独立して互いに接近又は離反する向きに移動させ、所望の幅方向位置に停止させることができる。
【0042】
シート搬出機構54は、
図6に示すように、コンベア装置81と上述した搬送ローラー装置71とから構成される。コンベア装置81は、駆動モーター82より駆動される駆動プーリー83と従動プーリー84との間に掛け回され、シートの搬出方向に沿って両方向に周回移動するコンベアベルト85を有する。コンベアベルト85には、処理トレイ51のシート支持面55に沿って移動するシート押出部材86が固定されている。
【0043】
シート押出部材86は、処理トレイ51の搬出方向上流端付近の初期位置と、駆動プーリー83と従動プーリー84との略中間に設定される最大押出位置との間で、両方向に移動可能に設けられている。シート押出部材86は、例えば
図4に示す断面コ字形のチャネル状部材で構成され、シート支持面55上のシートの後端即ち搬出方向上流端を押し出すようにして、該シートを搬出方向に送り出す。また、シート押出部材86は、前記シート端制限部の一部として、少なくとも前記初期位置から搬出方向に移動した位置で、シートの後端位置を規制する。
【0044】
搬送ローラー装置71は、各対の上側搬送ローラー73と下側搬送ローラー74とが、処理トレイ51の搬出方向下流端付近でシートを搬送可能に上下から挟み込むように配置されている。左右の前記ローラー対は、
図4に示すように、処理トレイ51の幅方向中心を挟んで左右対称に配置される。
【0045】
各下側搬送ローラー74は、隣接する補助支持部材56が幅方向に前記下側搬送ローラーを挟んで外側に位置するように配置される。更に、補助支持部材56は、その前記待避位置から前記延出位置までの移動範囲が、
図3に示すように幅方向から見たとき、部分的に下側搬送ローラー74の外周と重なるように設定される。即ち、補助支持部材56の先端即ち搬出方向下流端が前記待避位置から下流側に延出する範囲又は経路において、該補助支持部材の上面が部分的に下側搬送ローラー74の外周面と重なるように設けられる。これにより、補助支持部材56の先端は、上側搬送ローラー73と下側搬送ローラー74との間から積載トレイ36上方に位置するシートの下面に向けて延出する。
【0046】
以下に、本実施形態のシート後処理装置Bの第1処理部B1において、複数のシートを処理トレイに搬入し、集積して綴じ処理を行った後、積載トレイ36に搬出するまでの一連の動作を説明する。この一連の動作は、後述するようにシート後処理装置Bに設けられた前記後処理装置制御部によって制御することができる。
【0047】
添付図面において、
図7(a)〜(d)は複数のシートを処理トレイ51に搬入して集積する過程、
図8(a)〜(d)は後続のシートをバッファリングする過程、
図9(a)〜(e)は処理トレイ51上の先行のシートに後続のシートを重ねて同時搬送する過程、
図10(a)、(b)及び
図11(a)、(b)は先行のシートを後続のシートから分離する第1及び第2の態様をそれぞれ示している。
【0048】
図12は、上述した第1実施形態のシート搬送装置を備えた画像形成システムの制御構成を示しており、画像形成装置Aの本体制御部87と、それに接続されたシート後処理装置Bの後処理装置制御部88とを備えている。本体制御部87は、画像形成装置Aからシート後処理装置Bへのシート送り出しに関する情報を後処理装置制御部88に提供する。後処理装置制御部88は、制御CPUとそれに接続されたROM及びRAMとで構成され、前記ROMに記憶された制御プログラムと前記RAMに記憶された制御データによって、第1処理部B1における後処理を実行する。このため、後処理装置制御部88の前記CPUには、上述した全ての駆動モーター及びセンサーが接続され、各駆動モーターの駆動を制御する。
【0049】
先ず、
図7(a)に示すように、補助支持部材56を前記待避位置から積載トレイ36の上方位置まで延出させ、排紙口35から処理トレイ51上にシートShを排出させる。第1排紙パス30及び排紙口35付近にそれぞれ設けた排紙センサーがシートShの後端を検出することによって、シートShの処理トレイ51への排出が検知され、シート搬入機構52が作動する。
図7(b)に示すように、昇降ブラケット75を下向きに回転させて上側搬送ローラー73を処理トレイ51上のシート上面に当接させ、図中反時計方向に回転させると共に、掻き込み回転体72を同じく図中反時計方向に回転させて、搬入方向にシート先端が係止部材76に当接するまで搬送する。
【0050】
同様にして、
図7(c)に示すように、次のシートSh2を処理トレイ51上に排出し、シート搬入機構52により搬送して先のシートSh1の上に積層する。次のシートSh2は、シート整合機構53によって先のシートSh1と搬入方向及び幅方向に位置を整合させる。このようにして、
図7(d)に示すように、所定枚数のシートを処理トレイ51上にシート束として集積させる。このシート束Sbは、綴じ処理ユニット38によって処理トレイ51上で綴じ処理される。
【0051】
シート束Sbが綴じ処理される間、画像形成装置Aから送り込まれる後続のシートSh3は、第1及び第2経路切換手段33,34を開いた状態でシート搬入経路28から第1排紙パス30に搬送されるが、排紙口35から排出されずにバッファパス90内にバッファリング即ち一時的に滞留される。本実施形態のバッファパス90は、第1排紙パス30の上流側に連通する第2排紙パス31の上流側部分によって構成される。
【0052】
図8(a)に示すように、後続のシートSh3は、その後端即ち上流端が第2経路切換手段34を通過して所定のスイッチバック位置Pbに至るまで、排出ローラー対39によって第1排紙パス30を下流側に搬送される。このとき、シートSh3は、下流側先端部分が排紙口35から処理トレイ51の上方に延出するが、完全に排出されることはない。
【0053】
後続のシートSh3の後端がスイッチバック位置Pbに達すると、
図8(b)に示すように、第2経路切換手段34を閉じ、かつ排出ローラー対39を逆転させ、後続のシートSh3をスイッチバック搬送してバッファパス90(第2排紙パス31)内に送り込む。シートSh3は、その下流端を第1排紙パス30の入口付近に位置させて、搬送ローラー対91により挟持された状態で、バッファパス90内の所定のバッファ位置に保持される。
【0054】
次の後続のシートSh4がシート搬入経路28を搬送されて、その下流側先端が第1排紙パス30に入り、
図8(c)に示すように、前記バッファ位置にある先の後続のシートSh3の下流端と一致する位置に至ると、搬送ローラー対91を回転させて該先の後続のシートSh3をバッファパス90から第1排紙パス30に搬送する。搬送ローラー対91の搬送速度は、シート搬入経路28の搬送ローラー対92の搬送速度と同じである。従って、先の後続のシートSh3と次の後続のシートSh4とは、第1排紙パス30内で重なった状態で排出ローラー対39に向けて搬送される。
【0055】
排出ローラー対39は、後続のシートSh3,Sh4を搬出方向に搬送して排紙口35から部分的に排出させる。後続のシートSh3,Sh4は、
図8(d)に示すように、その後端位置が第1排紙パス30内のスイッチバック位置Pbに達すると、第2経路切換手段34を閉じ、かつ排出ローラー対39を逆転させてスイッチバック搬送し、バッファパス90内に送り込む。バッファパス90に搬送された後続のシートSh3,Sh4は、搬送ローラー対91により挟持されて前記所定のバッファ位置まで搬送され、保持される。
【0056】
これら一連の過程を繰り返すことによって、
図8(e)に示すように、所定枚数の後続のシートSh3,Sh4をバッファパス90内に滞留させることができる。滞留させるシート枚数は、第1処理部B1におけるシート束Sbの綴じ処理に要する時間と、画像形成装置Aから送り込まれるシートの搬送速度とによって設定できるが、一度に綴じ処理されるシート束のシート枚数を超えることはない。
【0057】
バッファパス90内の後続のシートSh3,Sh4は、第1処理部B1におけるシート束Sbの綴じ処理が終了するタイミングに合わせて、再び搬送ローラー対91により第1排紙パス30に搬送される。バッファリングしたシート枚数が一度に綴じ処理されるシート束のシート枚数と同じである場合は、更に後続のシートが画像形成装置Aから第1排紙パス30に送り込まれる前に、バッファパス90から処理トレイ51に搬出することが好ましい。
【0058】
次に、第1処理部B1において綴じ処理を終了したシート束Sbを積載トレイ36に搬出する過程を説明する。この搬出過程は、上述した各過程と同様に、シート後処理装置Bの後処理装置制御部88によって制御される。
図13は、後処理装置制御部88によるシート搬出過程の制御フローを示している。
図14は、シート押出部材86、上側搬送ローラー73、排出ローラー対39の動作タイミングを示す説明図であり、横軸は時間、縦軸はシート搬送速度である。
【0059】
先ず、
図9(a)に示すように、上側搬送ローラー73を下方に移動させてシート束Sbの上面に当接させ、シート束Sbを下側搬送ローラー74との間に挟み込む。次に、上側搬送ローラー73を駆動して図中時計方向に、下側搬送ローラー74を反時計方向に回転させると同時に、シート押出部材86を駆動して、シート束Sbを搬出方向に搬送する。
図9(b)に示すようにシート押出部材86が前記最大押出位置で停止した後も、上側搬送ローラー73を回転させて、シート束Sbを同じ一定の速度で継続して搬送する。このとき、補助支持部材56は積載トレイ36の上方位置まで延出させたままである。
【0060】
このシート束Sbの搬送に合わせて、後続のシートSh3(
図8に関連して上述した後続のシートSh4を含む)をバッファパス90から第1排紙パス30に搬送する。排出ローラー対39は、搬送ローラー対73,74及びシート押出部材86と同時に回転を開始し、後続のシートSh3を排紙口35から処理トレイ51上に排出する。この後、シート押出部材86は、処理トレイ51上流端の前記初期位置まで戻される。
【0061】
これら動作の過程で、シート束Sbの後端位置及び後続のシートSh3の後端位置を検出する(ステップSt1)。シート束Sbの後端位置は、シート束Sbがシート押出部材86により搬送されている間、その位置によって検出可能である。後続のシートSh3の後端位置は、第1排紙パス30に設けた前記排紙センサーによって検出することができ、それによってシートSh3の排紙口35からの排出を確認できる。
【0062】
排出された後続のシートSh3は、その先端から処理トレイ51上を搬送中のシート束Sbの上面に重ねられ、
図9(c)に示すように、シート束Sb上面と上側搬送ローラー73との間に挟み込まれる。このように先のシート束Sb上に重ねられた状態で、後続のシートSh3はシート束Sbと共に搬出方向に搬送される。
【0063】
後続のシートSh3が完全に排出されると、
図9(d)に示すように、補助支持部材56を積載トレイ36上方の延出位置から前記待避位置に移動させる(ステップSt3)。このとき、後続のシートSh3は、シート束Sbに対して搬出方向上流側に長さLのずれが生じる。このずれ量Lは、略所定の値又は所定の範囲内となるように設定する。ずれ量Lは、例えば排紙口35から後続のシートSh3を排出させるタイミングによって調整することができる。
【0064】
補助支持部材56が前記待避位置に戻ったことをセンサー(図示せず)で確認する(ステップSt4)と、上側搬送ローラー73を図中時計方向に、下側搬送ローラー74を反時計方向に回転させて、
図9(e)に示すように、シート束Sb及びシートSh3を下流側に所定の最大下流位置まで搬送する(ステップSt5)。この最大下流位置は、先のシート束Sbの後端が、上側搬送ローラー73と下側搬送ローラー74間でシートを挟み込むニップ位置を少なくとも通過し、かつ後続のシートSh3(及びSh4)が前記ローラー間に挟持されている位置である。
【0065】
先のシート束Sbの後端が前記ニップ位置を通過したことを、下側搬送ローラー74付近に設けたセンサー(図示せず)、又は搬送されるシートを挟持する上側搬送ローラー73及び下側搬送ローラー74のローラー面の外周長とローラー回転数とにより、確認する(ステップSt6)。シート束Sbは、その後端が前記ニップ位置を通過したときに、後続のシートSh3の下面に吸着されておらず、該下面から自由に分離可能な状態の場合、そのまま自重によって下方の積載トレイ36に自然落下して載置される。
【0066】
そうでない場合、シート束Sbは、後続のシートSh3の下面から分離されず、積載トレイ36の上方にそのまま保持される。このような現象は、後続のシートSh3の前記ニップ位置よりも搬出方向下流が、先のシート束Sbと共に下方向に垂れ下がってしますことにより生じる。このような先のシート束Sbは、次のシート分離動作によって、後続のシートSh3の下面から強制的に分離され、自重で下方の積載トレイ36に落下して載置される。
【0067】
前記シート分離動作の第1の態様では、
図10(a)に示すように、前記最大下流位置が下側搬送ローラー74から比較的近い下流側位置に設定される。この状態で、補助支持部材56を、前記待避位置から処理トレイ51下流端よりも幾分下流側の規制位置まで延出させる(ステップSt7)。この規制位置は、補助支持部材56の先端がシート束Sbの後端より少し手前即ち上流側で停止し、かつ前記ニップ位置よりも下流側に延出するように設定される。
【0068】
次に、上側搬送ローラー73を図中反時計方向に、下側搬送ローラー74を時計方向に回転させて、上側の後続のシートSh3(及びSh4)を上流側に移動させる(ステップSt8)。これにより、下側の先のシート束Sbは、後続のシートSh3と共に上流側に移動しようとするが、
図10(b)に示すように、その後端が補助支持部材56の先端部に突き当たって、移動が制限される。更に、この補助支持部材56の動作により、後続のシートSh3の前記ニップ位置よりも搬出方向下流は、補助支持部材56による支持により支持しないときよりも垂れ下がり難くなり、後続のシートSh3と先のシート束Sbとが分離しやすくなる。そして、後続のシートSh3をそのまま上流側に搬送することによって、先のシート束Sbは後続のシートSh3から強制的に分離され、下方の積載トレイ36に落下して載置される。
【0069】
前記シート分離動作の第2の態様では、
図11(a)に示すように、前記最大下流位置が、
図10(a)の場合よりも下流側に、下側搬送ローラー74から少し下流側に離れた位置に設定される。この状態で、補助支持部材56を、同様に前記待避位置から処理トレイ51下流端よりも下流側の規制位置まで延出させる(ステップSt7)。この第2の実施形態でも、規制位置は、補助支持部材56の先端がシート束Sbの後端より少し手前即ち上流側で停止するように設定することが好ましい。
【0070】
同様に、上側搬送ローラー73を図中反時計方向に、下側搬送ローラー74を時計方向に回転させて、上側の後続のシートSh3を上流側に移動させる(ステップSt8)。これにより、下側の先のシート束Sbは、後続のシートSh3と共に上流側に移動しようとする。そのとき、
図11(b)に示すように、補助支持部材56の先端部が、シート束Sbの後端に当接しかつ後続のシートSh3の下面との間に入り込む。補助支持部材56の先端をシートSh3の下面に平行に又は鋭角に接するように構成すると、後続のシートSh3とシート束Sbとの間に入り込み易くできる。この状態で、後続のシートSh3を上流側に搬送することによって、同様に先のシート束Sbは後続のシートSh3から強制的に分離され、自重で積載トレイ36に落下して載置される。
【0071】
前記第1の態様では、積載トレイ36に落下する先のシート束Sbの後端位置が、補助支持部材56の先端位置又は下側搬送ローラー74の先端位置によって規制される。前記第2の態様では、先のシート束Sbの後端位置が、下側搬送ローラー74の先端位置によって規制される。いずれの場合にも、先のシート束Sbは積載トレイ36上の所定位置に載置することができる。
【0072】
バッファパス90から搬送される後続のシートSh3の枚数が、次に綴じ処理するシート束の枚数より少ない場合がある。この場合、前記シート分離動作を終えて、後続のシートSh3を処理トレイ51の上流端まで搬入した後、画像形成装置Bから送り込まれる追加の後続のシートを足りない枚数分だけ、バッファリングすることなく、そのまま処理トレイ51上に排出する。追加の後続のシートは、
図7に関連して上述したように、先の後続のシートSh3に位置を整合させる。
【0073】
本発明によれば、先行するシート(又はシート束)を後続のシート(又はシート束)から確実に分離して積載トレイに搬出するための機構は、上述した第1実施形態のシート搬送装置37に限定されるものではなく、第1実施形態のシート搬送装置37に、以下に説明する第2実施形態のシート搬送装置を置き換えてもよい。以下に、第2実施形態のシート搬送装置について説明する。
【0074】
図15及び
図16は、第2実施形態のシート搬送装置110の構成を概略的に示している。シート搬送装置110は、排紙口35から排出されるシート及び/又は処理トレイ51上のシート(又はシート束)を搬出方向に沿って両方向に搬送する手段として、第1実施形態の搬送ローラー装置71に代えて、グリッパーユニット111を備える。更に、シート搬送装置110は、処理トレイ51が第1実施形態の補助支持部材56を備えていないこと、及び処理トレイ51の下流側でシートを上方から吸着して支持するための吸着ユニット112を備えている点において、第1実施形態のシート搬送装置37と異なる。
【0075】
グリッパーユニット111は、処理トレイ51の上方かつ幅方向両側端付近に、互いに対向させて配置された左右1対のグリッパー113を有する。グリッパー113は、処理トレイ51の上方を幅方向両側端に沿って略真直ぐに延在するガイドロッド114に、搬出方向に沿って両方向に移動可能に装着されている。グリッパー113の移動は、後述するようにシート後処理装置Bに設けられた後処理装置制御部により駆動モーター115を駆動することによって行われる。
【0076】
グリッパー113は、それぞれガイドロッド114から半径方向に延在する板状部材からなる上側グリッパー部材116と下側グリッパー部材117とからなる。上側グリッパー部材116は、ガイドロッド114に対して周方向に固定されて該ガイドロッドから幅方向内向きに延長し、下向きの平坦な上側挟持面116aを有する。下側グリッパー部材117は、ガイドロッド114に周方向に揺動可能に支持され、上側グリッパー部材116に向けて幅方向内向きかつ上向きに揺動させたときに、上側挟持面116aに対向する平坦な下側挟持面117aを有する。
【0077】
下側グリッパー部材117は、ガイドロッド114から垂直下向きに、上側グリッパー部材116に対して略直交する開き位置と、下側挟持面117aが上側挟持面116aに面接触可能に対向する閉じ位置との間で揺動させることができる。グリッパー113は、下側グリッパー部材117を前記閉じ位置に回転させることによって、上側挟持面116aと下側挟持面117aとの間でシート(又はシート束)の側縁を上下から、該シートを搬送可能に把持することができる。この下側グリッパー部材117の動作は、後述する前記後処理装置制御部により別の駆動モーター118を駆動することによって行われる。
【0078】
本実施形態において、グリッパー113は、
図15に実線で示す排紙口35の出口付近の最上流位置と、同図に想像線で示す処理トレイ51から直ぐ下流側の最下流位置との間で移動させることができる。これにより、排紙口35から排出されるシートを前記最上流位置で把持し、前記最下流位置又はそれより手前の適当な位置まで搬出方向に搬送し、又はそれと反対方向にシートを搬送することができる。また、搬送後に下側グリッパー部材117を前記開き位置に回転させることによって、シートを搬送位置でグリッパー113から解放することができる。
【0079】
別の実施例では、グリッパーユニット111のガイドロッド114の一部、特に上流側部分を処理トレイ51のシート支持面55と平行に配置することができる。これにより、処理トレイ51上のシートの両側縁をグリッパー113で把持して、シート支持面55に沿って搬送することができる。
【0080】
吸着ユニット112は、空気の吸引による負圧でシートを吸着させて搬送するものであって、
図16に示すように、比較的薄い矩形箱状のユニット本体部120と、該ユニット本体部の幅方向両側部に巻装された左右1対の無端ベルト121とをそなえる。ユニット本体部120は、内部に吸引ファン(図示せず)を有し、上流側端面が下流側に向けて下向きに傾斜している。更に吸着ユニット112は、前記無端ベルトを周回移動させるためのベルト駆動手段122と、前記吸引ファンの駆動手段123とを備える。
【0081】
無端ベルト121は、ユニット本体部120下流端及び上流端にそれぞれ装着された駆動プーリー124と従動プーリー(図示せず)との間に掛け回されている。ベルト駆動手段122は、駆動プーリー124を一体回動可能に軸支する幅方向の駆動ロッド125と、駆動モーター126と、それらを連結するベルト伝達機構127とを有する。無端ベルト121は、駆動モーター126の正逆回転によって搬出方向に沿って両方向に周回移動する。
【0082】
無端ベルト121の表面には、略全周に亘って多数の小さい吸引孔128が開設され、ユニット本体部120内部の吸引部(図示せず)に連通している。駆動手段123は、駆動モーター129と、該駆動モーターと前記吸引ファンとを連結するベルト伝達機構130とを有する。駆動モーター129により前記吸引ファンを回転させて吸引孔128から内部に空気を吸引し、その負圧による吸着力によって、無端ベルト121の下面にシートを吸着させることができる。
【0083】
この吸着力を作用させた状態で無端ベルト121を周回移動することによって、該無端ベルトの下面に吸着させたシートを搬出方向に沿って搬送することができる。また、本実施形態の吸着ユニット112は、搬出方向に沿って少なくとも所定の範囲で移動可能に設けられている。従って、無端ベルト121下面にシートを吸着させた状態で、吸着ユニット112自体を移動させることによって、無端ベルト121を周回移動させることなく、シートを搬送することができる。更に、無端ベルト121を周回移動させながら、吸着ユニット112を移動させることによって、シートの搬送速度を速くすることができる。
【0084】
以下に、第2実施形態のシート搬送装置110において、複数のシートを後処理した後に積載トレイ36に搬出するまでの一連の動作を説明する。第2実施形態の第1の態様では、複数の先行するシートを、第1実施形態と同様に処理トレイ51上に集積して綴じ処理又は別の後処理をした後、積載トレイ36に搬出する。第2の態様では、複数の先行するシートを整合処理した後、前記積載トレイに搬出する。これら一連の動作は、次に説明するシート後処理装置Bの前記後処理装置制御部によって制御することができる。
【0085】
図17は、第2実施形態のシート搬送装置を備えた画像形成システムの制御構成を示しており、画像形成装置Aの本体制御部87と、それに接続されたシート後処理装置Bの後処理装置制御部88´とを備えている。本体制御部87は、画像形成装置Aからシート後処理装置Bへのシート送り出しに関する情報を後処理装置制御部88´に提供する。後処理装置制御部88´は、制御CPUとそれに接続されたROM及びRAMとで構成され、前記ROMに記憶された制御プログラムと前記RAMに記憶された制御データによって、第1処理部B1における後処理を実行する。このため、後処理装置制御部88´の前記CPUには、第2実施形態のシート搬送装置110に関連して上述した全ての駆動モーター及びセンサーが接続され、各駆動モーターの駆動を制御する。
【0086】
図18(a)〜(d)及び
図19(a)〜(d)は、第2実施形態の第1の態様において、処理トレイ51上の先行のシートに後続のシートを重ねて同時搬送し、先行のシートを後続のシートから分離して積載トレイ36に載置する過程を概略的に示している。
図18(a)〜(d)は、各過程を搬出方向に沿って側方から見た図であり、
図19(a)〜(d)は、各過程を処理トレイ51の搬出方向下流側から見た図である。
【0087】
図18(a)及び
図19(a)において、複数の先行するシートからなるシート束Sbが既に後処理され、処理トレイ51から積載トレイ36に搬出しようとする状態を示している。グリッパーユニット111のグリッパー113は、下側グリッパー部材117が前記開き位置にあり、シート束Sbの下流側先端部分が上側グリッパー部材116の下側に入っている。このとき、後続のシートSh3は、既に排出ローラー対39によって排紙口35から処理トレイ51の上方に排出されつつある。
【0088】
図18(b)及び
図19(b)に示すように、コンベア装置81のシート押出部材86を駆動して、その前記最大押出位置まで先行のシート束Sbを搬出方向に搬送する。このシート束Sbの搬送中も、後続のシートSh3は一定の速度で搬送されており、その下流側先端部分は、シート束Sbの上に重ねられる。本実施形態では、この時点で先行のシート束Sbの下流側先端部分が、既に積載トレイ36の載置面に到達して支持されている。
【0089】
このように後続のシートSh3が先行のシート束Sbの上に重なり、かつ上側グリッパー部材116の下側を越える位置まで進んだ状態で、下側グリッパー部材117を内向きかつ上向きに回転させ、上側グリッパー部材116との間でシート束Sb及びシートSh3の両側縁部を把持する。グリッパー113は、シート束Sb及びシートSh3を把持すると同時に、排出ローラー対39のシート搬送速度と同じ速度で下流側に移動させる。このようにグリッパー113を移動させることによって、グリッパー113と排出ローラー対39との間で、シート束Sb及びシートSh3の弛みやしわ、過度の引張状態を回避することができる。
【0090】
このとき、先行のシート束Sbと後続のシートSh3との間には、搬出方向に位置のずれが生じている。このずれ量Lが、所定の値と略一致又は所定の値の範囲内にあるように、グリッパー113でシート束SbとシートSh3とを把持するタイミングを決定する。例えば、シート押出部材86によりシート束Sbを前記最大押出位置まで搬送したとき、シートSh3の下流側先端部分が上側グリッパー部材116の下側を越えていれば、それと同時にグリッパー113を作動させてシート束Sb及びシートSh3を把持し、その移動を開始することができる。また、シート束Sbを前記最大押出位置まで搬送した後、シートSh3が或る距離だけ下流側に進むまで待って、シート束Sb及びシートSh3を把持することもできる。
【0091】
先行のシート束Sbの後端即ち上流端が処理トレイ51の下流端を少し越えた位置に至ると、
図18(c)及び
図19(c)に示すように、グリッパー113の移動を停止させる。この位置は、シート束Sbがグリッパー113により把持されていなければ、又は上側のシートSh3に十分強く吸着されていなければ、下方の積載トレイ36に落下して載置され得る位置である。
【0092】
シート束Sb及びシートSh3がグリッパー113により把持されて
図18(c)及び
図19(c)に示す積載トレイへの落下可能位置まで搬送されるまでの間に、吸着ユニット112を作動させて最上位置のシートSh3の上面を吸着させる。シートSh3の吸着は、少なくともシートSh3の下流側先端がユニット本体部120の下面に入ったときに、該下面がシート束SbとシートSh3とに跨がった位置で開始することができる。当然ながら、シートSh3の下流側先端がユニット本体部120の下面を越えた位置で、シートSh3の吸着を開始しても良い。
【0093】
シート束Sb及びシートSh3の搬送中、吸着ユニット112は、図示するように、処理トレイ51から少し下流側の所定位置に維持されている。従って、排出ローラー対39及びグリッパー113の搬送速度と同じ速度で、無端ベルト121を周回移動させる。これによって、シートSh3の吸着ユニット112により吸着される部分とその周辺部分との間に弛みやしわ、折れ又は過度の引張状態を生じさせることなく、一様に滑らかな状態でスムーズに搬送することができる。
【0094】
このとき、吸着ユニット112の吸引力は、シートSh3にシート束Sbが例えば静電吸着により一体となっている場合でも、シートSh3及びシート束Sbが少なくとも落下させない十分な大きさに設定される。吸着ユニット112の吸引力は、後処理装置制御部88´によってユニット本体部120内部の前記吸引ファンを駆動しかつその回転数を制御することによって、調整可能である。また、後処理装置制御部88´は、前記吸引ファンの作動中にその回転数を変化させることによって、シートSh3に作用させる吸引力を増減することができる。
【0095】
次に、
図18(d)及び
図19(d)に示すように、下側グリッパー部材117を下向きに完全に開くようにグリッパー113を作動させる。これにより、先行のシート束Sbは、下方への落下を規制するグリッパー113から完全に解放される。上側のシートSh3は、引き続き吸着ユニット112により吸着保持されている。
【0096】
下側のシート束Sbは、シートSh3の下面に吸着していない場合又は吸着が比較的弱い場合、その自重で直ぐに上側のシートSh3から分離して、積載トレイ36上に落下、載置される。シート束SbがシートSh3の下面に或る程度の強さで吸着している場合でも、図示するように或る程度傾斜している積載トレイ36の前記載置面上を、該載置面に支持されているシート束Sbの下流側先端部分が自重で下側へ滑り落ちようとする作用によって、シート束SbがシートSh3の下面から引き剥がされる。これによって、シート束Sbは上側のシートSh3から分離して、積載トレイ36に落下、載置される。
【0097】
シート束SbがシートSh3から容易に分離しない場合は、吸着ユニット112のユニット本体部120を搬出方向の前後に傾けることによって、シート束SbのシートSh3よりも下流側部分の自重により、シートSh3下面から剥がれ易くすることができる。別の実施形態では、
図18(d)及び
図19(d)において下側グリッパー部材117を下向きに完全に開くと同時に、ユニット本体部120を傾けるように予め設定することによって、常にシート束Sbが確実にシートSh3から分離して積載トレイ36に落下、載置されるようにすることができる。
【0098】
後続のシートSh3は、先行のシート束Sbが分離した後、吸着ユニット112によって処理トレイ51に搬入される。処理トレイ51への搬入は、シートSh3を吸着した状態のまま、無端ベルト121を逆転させて、シートSh3を搬出方向とは反対方向に搬送することによって行う。また、下側グリッパー部材117を閉じてシートSh3の両側縁を把持し、グリッパー113を元の処理トレイ51下流端付近の位置に戻して開くことによって、シートSh3を処理トレイ51に搬入することもできる。
【0099】
第2実施形態の第2の態様では、複数の先行するシートを整合処理した後、後続のシートを重ねて同時搬送し、先行するシートを分離させて積載トレイ36に載置する。
図20(a)〜(d)は、複数の先行するシートを整合処理して後続のシートを重ねるまでの過程、
図21(a)〜(d)及び
図22(a)〜(d)は、同時搬送した後続のシートから先行のシートを分離して積載トレイ36に載置する過程を示している。
図20(a)〜(d)及び
図21(a)〜(d)は、各過程を搬出方向に沿って側方から見た図であり、
図22(a)〜(d)は、各過程を処理トレイ51の搬出方向下流側から見た図である。
【0100】
先ず、最初のシートSh1を、第1実施形態において
図8で後続のシートSh3をバッファリングしたと同様にスイッチバック搬送して、バッファパス90内に滞留させる。シートSh1は、その下流端を第1排紙パス30の入口付近に位置させて、搬送ローラー対91により挟持されてバッファパス90内の所定のバッファ位置に保持される。
【0101】
次のシートSh2がシート搬入経路28を搬送されて、その下流側先端が第1排紙パス30に入り、
図20(a)に示すように、前記バッファ位置にある最初のシートSh1の下流端と一致する位置に至ると、搬送ローラー対91を回転させてシートSh1をバッファパス90から第1排紙パス30に搬送する。搬送ローラー対91の搬送速度は、シートSh2を搬送するシート搬入経路28の搬送ローラー対92の搬送速度と同じである。シートSh1とシートSh2とは、第1排紙パス30内で重なった状態で、停止している排出ローラー対39に向けて搬送される。
【0102】
排出ローラー対39は、該排出ローラー対によりシートSh1及びシートSh2の先端位置を整合させた後、回転させてこれら両シートを挟持し、搬出方向に搬送して排紙口35から部分的に排出させる。シートSh1及びシートSh2は、
図20(b)に示すように、その後端位置が第1排紙パス30内のスイッチバック位置Pbに達すると、第2経路切換手段34を閉じ、かつ排出ローラー対39を逆転させてスイッチバック搬送し、バッファパス90内に送り込む。バッファパス90に搬送されたシートSh1及びシートSh2は、搬送ローラー対91により挟持されて前記所定のバッファ位置まで搬送され、保持される。
【0103】
これら一連の過程を繰り返すことによって、
図20(c)に示すように、所定枚数の先行するシートSh1,Sh2を、搬出方向に位置を整合させてバッファパス90内に滞留させる。次に、第2経路切換手段34を開いた状態で、後続のシートSh3がシート搬入経路28を搬送されてくると、搬送ローラー対91を回転させて、該後続のシートSh3より先に先行のシートSh1,Sh2を第1排紙パス30に搬送する。
【0104】
後続のシートSh3は、第1排紙パス30内で先行のシートSh1,Sh2の上に重ねられ、
図20(d)に示すように、排出ローラー対39により該先行のシートと共に搬出方向に同時搬送される。このとき、先行のシートSh1,Sh2と後続のシートSh3との間には、搬出方向に位置のずれが生じる。このずれ量Lが、所定の値と略一致又は所定の値の範囲内にあるように、先行のシートSh1,Sh2を前記バッファ位置から第1排紙パス30に搬送するタイミングを決定する。
【0105】
このように先行のシートSh1,Sh2及び後続のシートSh3を同時に排出する排紙口35の出口付近には、グリッパーユニット111のグリッパー113が、排紙口35の高さに合わせて開いた状態で待機している。後続のシートSh3が上側グリッパー部材116の下側を越えて下流側に或る位置まで進むと、
図21(a)及び
図22(a)に示すように、下側グリッパー部材117を内向きかつ上向きに回転させて、上側グリッパー部材116との間でシートSh1,Sh2及びシートSh3の両側縁部を把持する。
【0106】
グリッパー113は、シートSh1,Sh2及びシートSh3を把持すると同時に、排出ローラー対39のシート搬送速度と同じ速度で下流側に移動させる。これによって、先行のシートSh1,Sh2及び後続のシートSh3に、グリッパー113と排出ローラー対39との間で弛み、しわの発生や過度の引張状態を回避することができる。
【0107】
先行のシートSh1,Sh2の後端即ち上流端が処理トレイ51の下流端を少し越えた位置に至ると、
図21(b)及び
図22(b)に示すように、グリッパー113の移動を停止させる。この位置は、シートSh1,Sh2がグリッパー113により把持されていなければ、又は上側のシートSh3に十分強く吸着されていなければ、下方の積載トレイ36に落下して載置され得る位置である。
【0108】
シートSh1,Sh2及びシートSh3がグリッパー113により把持されて
図21(b)及び
図22(b)に示す積載トレイへの落下可能位置まで搬送されるまでの間に、吸着ユニット112を作動させて最上位置のシートSh3の上面を吸着させる。シートSh3の吸着は、少なくともシートSh3の下流側先端がユニット本体部120の下面に入ったときに、該下面がシートSh2とシートSh3とに跨がった位置で開始することができる。また、シートSh3の下流側先端がユニット本体部120の下面を越えた位置で、シートSh3の吸着を開始することも可能である。
【0109】
吸着ユニット112は、第2実施形態の第1の態様と同様に、処理トレイ51から少し下流側の所定位置に維持されているので、グリッパー113によるシートSh1,Sh2及びシートSh3の搬送中、その搬送速度と同じ速度で無端ベルト121を周回移動させる。これにより、シートSh3の吸着ユニット112により吸着される部分とその周辺部分との間に弛みやしわ、折れ又は過度の引張状態を生じさせることなく、一様に滑らかな状態でスムーズに搬送することができる。
【0110】
第2の態様においても、吸着ユニット112の吸引力は、後処理装置制御部88´によって、シートSh3及びそれに静電吸着しているシートSh1,Sh2を少なくとも落下させない十分な大きさに調整される。また、吸着ユニット112の吸引力は、後処理装置制御部88´によって、その作動中に増減させることができる。
【0111】
次に、
図21(c)及び
図22(c)に示すように、グリッパー113を作動させて下側グリッパー部材117を下向きに完全に開く。これにより、先行のシートSh1,Sh2は、下方への落下を規制するグリッパー113から完全に解放される。上側のシートSh3は、引き続き吸着ユニット112により吸着保持されている。
【0112】
下側のシートSh1,Sh2は、シートSh3の下面に吸着していない場合又は吸着が比較的弱い場合、その自重で直ぐに上側のシートSh3から分離して、積載トレイ36上に落下、載置される。シートSh1,Sh2がシートSh3の下面に或る程度の強さで吸着している場合でも、或る程度傾斜している積載トレイ36の前記載置面上を、該載置面に支持されているシートSh1,Sh2の下流側先端部分が自重で下側へ滑り落ちようとする作用によって、シートSh1,Sh2がシートSh3の下面から引き剥がされる。これによって、シートSh1,Sh2は上側のシートSh3から分離して、積載トレイ36に落下、載置される。
【0113】
先行のシートSh1,Sh2が後続のシートSh3から容易に分離しない場合、吸着ユニット112のユニット本体部120を搬出方向の前後に傾けることによって、シートSh3下面から剥がれ易くすることができる。また、
図21(c)及び
図22(c)において下側グリッパー部材117を下向きに完全に開くと同時に、ユニット本体部120を傾けるように予め設定し、常に
図21(c)及び
図22(c)が確実にシートSh3から分離して積載トレイ36に落下、載置されるように設定しても良い。
【0114】
後続のシートSh3は、先行のシートSh1,Sh2が分離した後、処理トレイ51に搬入される。処理トレイ51への搬入は、シートSh3を吸着した状態のまま、吸着ユニット112を処理トレイ51側に移動させることによって、又は無端ベルト121を逆転させてシートSh3を搬出方向とは反対方向に搬送することによって行う。また、下側グリッパー部材117を閉じてシートSh3の両側縁を把持し、グリッパー113を元の排紙口35付近の位置に戻す過程で開くことによって、シートSh3を処理トレイ51に搬入することもできる。
【0115】
以上、本発明を好適な実施形態に関連して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その技術的範囲において、様々な変更又は変形を加えて実施し得ることは言うまでもない。例えば、第2実施形態における吸着ユニットには、静電吸着を利用した装置を用いることができる。