【文献】
Journal of Oil Palm Research, 2010, Vol.22, No.3, Pages 864-855
【文献】
Journal of Pharmaceutical Science, 1999, Vol.88, No.10, pages 1011-1015
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
約10μg/mL〜約100mg/mLの濃度で存在するグリセロールモノラウレート(GML)、約0.1重量%〜約10重量%の植物油、ゲルおよび薬学的に許容可能な局所用担体を含む組成物であって、該ゲルがプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびヒドロキシプロピルセルロースもしくはヒドロキシエチルセルロースからなる、組成物。
約10μg/mL〜約100mg/mLの濃度で存在するGML、約65重量%〜約80重量%の濃度のプロピレングリコール、約20重量%の濃度のポリエチレングリコール、および約0.1重量%〜約5.0重量%の濃度のヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースを含む組成物。
前記植物油が、パーム油、オリーブ油、コーン油、キャノーラ油、ココナッツ油、大豆油、小麦胚芽油、ホホバ油、ヒマシ油、それらの組み合わせ、オリーブ油と大豆油の組み合わせ、ココナッツ油と小麦胚芽油の組み合わせ、またはホホバ油、パーム油およびヒマシ油の組み合わせである、請求項1または3に記載の組成物。
それを必要とする被験者における微生物感染症またはウイルス感染症の治療のための組成物であって、前記組成物は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有効量の組成物を含み、前記組成物は前記被験者へ局所的に投与されることを特徴とする、組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の詳細な説明
本発明は、局所用GML組成物および、例えば局所的塗布によって、該組成物を用いた治療方法を提供する。本明細書に記載された組成物および方法は、一実施形態において、例えば、ヒトなどの被験者の皮膚または粘膜表面への、有効量のGMLまたはその誘導体の送達を促進することにより、局所的に感染症を治療するために使用される。理論に束縛されることを望まないが、抗微生物化合物および抗ウイルス化合物の従来用いられていた局所的製剤に対して、組成物の刺激がより少ないという性質のため、本発明の組成物は、局所的な自己投与のために、より多くの患者の服薬遵守につながると考えられている。
【0025】
本明細書で使用される用語「抗微生物性」は、微生物の成長または病原作用を、予防、阻害または阻止するのに有効であることを意味する。本明細書では「微生物」は、任意の細菌、ウイルスまたは真菌を意味するために用いられる。一実施形態において、本発明の製剤は、一つまたは複数の以下の微生物の成長を予防、阻害または阻止するために用いられる:Staphylococcus aureus、Streptococcus(例えば、S.pyogenes、S.agalacticaeまたはSまたはS.pneumoniae)、Haemophilus influenzae、Pseudomonas aeruginosa、Gardnerella vaginalis、Enterobacteriacae(例えば、Escherichia coli)、Clostridium perfringens、Chlamydia trachomatis、Candida albicans、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または単純ヘルペスウイルス(HSV)。
【0026】
「抗細菌性」または「抗真菌性」は、本明細書において、細菌もしくは真菌の死、または、それぞれの細菌もしくは真菌の病理作用の減少もしくは阻害を誘導する、細菌もしくは真菌の増殖の阻害もしくは阻止、細菌性もしくは真菌性疾患の重症度または細菌性もしくは真菌性疾患を発症する可能性の低減を意味する。「殺菌性」は、「抗細菌性」と同義的に使用される。
【0027】
本明細書で使用される「抗ウイルス性」は、ウイルス感染またはウイルス複製の阻害、ウイルスへ暴露された被験者のウイルス性疾患にかかる可能性の低減、またはウイルス性疾患の重症度の低減を示す。
【0028】
本明細書で使用される用語「有効量」は、微生物を殺す、または、微生物の感染、増殖もしくは毒性を阻害することを含むがそれらに限定されない、有効なまたは所望の抗菌活性をもたらすのに十分な量を意味する。GMLの有効量は、約10μg/mL、約100μg/mL、約1mg/mL、約10mg/mL、約50mg/mL、または約100mg/mLである。
【0029】
用語「治療する」、「治療」および「治療している」は、例えば、臨床結果などの、有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを意味する。本発明の目的について、有益なまたは所望の結果は、微生物の増殖の阻害もしくは抑制または微生物の死滅、微生物が細胞または被験者へ感染する一つまたは複数のプロセスの阻害、微生物感染によって引き起こされる疾患または症状の阻害または改善、またはそれらの組み合わせを含みうる。また、用語「治療する」、「治療」または「治療している」は、感染症の予防も意味する。いくつかの実施形態において、本発明の製剤は、尿路感染症、膣微生物感染症、歯周病の原因となるものなどの口腔感染症、呼吸器感染症を含む術後感染症、傷もしくは外科切開部位感染症、または毒素性ショック症候群を含む毒素の産生を特徴とする感染症の治療のために用いられる。
【0030】
本明細書で使用される「予防」は、感染症もしくは疾患の完全な防止、または、感染症もしくは疾患の症状の発症の防止、感染症もしくは疾患もしくはその症状の発症の遅延、または、その後に発症した感染症もしくは疾患もしくはその症状の重症度の減少を意味することができる。
【0031】
本明細書で使用される用語「被験者」は、ヒトおよび他の動物を含む。被験者は、一実施形態において、ヒトである。
【0032】
本明細書で使用される用語「局所的」は、任意の皮膚または粘膜表面への組成物の塗布を意味する。「皮膚表面」は、脊椎動物の身体の保護外皮を意味し、一般に、表皮細胞の層および真皮細胞の層を含む。本明細書で使用される「粘膜表面」は、粘液を分泌する器官または体腔の組織の内側を意味し、口腔、膣、直腸、胃腸および鼻腔表面を含むがそれらに限定されない。一実施形態において、本発明の製剤は、歯および歯茎、皮膚、鼻腔または膣領域に局所的に投与される。
【0033】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容可能な局所用担体」は、過度の毒性、刺激またはアレルギー反応なしで、皮膚または粘膜表面へ塗布することができる、材料、希釈剤、ビヒクルを意味する。
【0034】
「薬学的に許容可能な賦形剤」は、一般的に安全で、非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましくなくない医薬組成物を調製するのに有用である賦形剤を意味し、獣医学的使用およびヒトの医薬用途にも許容可能である賦形剤を含む。本出願で使用される「薬学的に許容可能な賦形剤」は、一つおよび複数のそのような賦形剤の両方を含む。
【0035】
本明細書で使用する用語「植物油」は、室温において液体形態で存在する、植物または種子から抽出された物質を意味する。好適な植物油は、パーム油、オリーブ油、コーン油、キャノーラ油、ココナッツ油、大豆油、小麦胚芽油、ホホバ油、ヒマワリ油、ゴマ油、落花生油、綿実油、ベニバナ油、大豆油、菜種油、アーモンド油、ブナ実油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカダミア油、モンゴンゴ実油、ピーカン油、松の実油、ピスタチオ油、クルミ油、グレープフルーツシード油、レモン油、オレンジ油、ゴーヤ油、ユウガオ油、水牛ヒョウタン油、バターナッツスクワッシュシード油、エグシシード油、カボチャシード油、スイカシード油、アサイ油、ブラックシード油、ブラックカラントシード油、ボラジシード油、月見草油、亜麻仁油、ユーカリ油、アマランサス油、アプリコット油、アップルシード油、アルガン油、アボガド油、ババス油、コリアンダーシード油、グレープシード油、マスタード油、ケシ油、米ぬか油、ヒマシ油、またはそれらの混合物を含むがそれらに限定されない。混合物は、例えば、これらに限定されないが、オリーブ油と大豆油の組み合わせ、ココナッツ油と小麦胚芽油の組み合わせ、またはホホバ油、パーム油およびヒマシ油の組み合わせとすることができる。植物油の組み合わせは、二成分、三成分、四成分またはそれ以上の混合物とすることができる。
【0036】
本明細書で使用される用語「促進剤」は、組成物へ添加される場合、組成物の抗菌特性を増強するまたは寄与するという効果を有する、化合物、物質、液体、粉末または混合物を意味する。促進剤は、それらには限定されないが、乳酸、アスコルビン酸、クエン酸、ギ酸、安息香酸、およびシュウ酸を含む有機酸でありうる。促進剤は、別の実施形態において、キレート剤であり、一実施形態において、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジメルカプロール、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸(DMPS)、αリポ酸(ALA)またはそれらの組み合わせから選択される。別の実施形態において、促進剤は、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤またはそれらの組み合わせから選択される。本発明で使用するための抗生物質としては、例えば、アミノグリコシド、カルバセフェム、セファロスポリン、グリコペプチド、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミドおよびテトラシクリンが挙げられる。抗真菌剤は、それらに限定されないが、アゾールクラス、ポリエンクラスまたはエキノキャンディンクラスのもの、ヌクレオシド類似体、アリルアミン、グリセオフルビン、トルナフテート、またはセレン化合物が挙げられる。抗ウイルス剤としては、例えば、それらに限定されないが、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、アバカビル、エノホビル(enofovir)、ラミブジン、エムトリシタビン、ジドブジン、テノホビル、エファビレンツ、ラルテグラビル、エンフビルチド、マラビロク、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、インターフェロン、オセルタミビル、ザナミビルが挙げられる。
【0037】
本明細書で使用される用語「セルロース誘導体」は、任意のセルロース系化合物を意味し、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは酢酸セルロースを含みうる。
【0038】
本明細書で使用される「生物膜」は、通常は細菌性であり、互いに接着し、表面上で増殖する微生物の集合体を意味する。生物膜中の微生物細胞は、典型的には、細胞外高分子物質として知られている細胞外マトリクスを産生する。多くの場合、その集合体自体のマトリクスおよび密度は、大幅に、生物膜中の細菌の抗生物質耐性を増加させる。生物膜は、尿路感染症、耳の感染症および歯茎炎などの歯の疾患に関与する可能性があり、また、人工器官、カテーテルまたは心臓弁などの移植されるデバイスの表面上に形成する可能性がある。
【0039】
一態様において、本発明は、グリセロールモノラウレート(GML)またはその誘導体を含む局所用組成物を提供する。さらなる実施形態において、組成物は、植物油もしくは非水性ゲルまたはそれらの組み合わせを含む。非水性ゲルは、一実施形態において、セルロース誘導体を含む。本明細書に記載の局所用組成物は、一実施形態において、薬学的に許容可能な局所用担体を含む。
【0040】
一実施形態において、本明細書に記載の組成物は、モノグリセリドGMLを含む。GMLは、グリセロールの脂肪酸エステル、ラウリン酸の誘導体であり、化学式C
15H
30O
4を有する。GMLはまた、グリセリルラウレートまたはモノラウリンとしても当該技術分野で知られている。GMLは、天然に、母乳および一部の植物中で発見され、食品および化粧品添加剤として使用されている。GMLおよび他のグリセリドは、米国食品医薬品局の一般に安全と認められる物質のデータベースに記載されている。GMLおよび関連化合物は、以前に、米国特許出願第10/579,108号(2004年11月10日に出願)および米国特許出願第11/195,239号(2005年8月2日に出願)中に開示されており、それらのそれぞれの開示は、本明細書中に、全ての目的のために参照により組み込まれる。
【0041】
GMLは、RおよびS光学異性体の両方など複数の形態および1/3位および2位にラウリン酸を有する形態で合成することができる。本明細書で提供される組成物は、一実施形態において、GMLのR異性体を含む。別の実施形態において、本明細書に提供される組成物は、GMLのS異性体を含む。さらに別の実施形態において、異性体のラセミ混合物が、組成物中に提供される。
【0042】
同様に、局所用組成物は、1/3位にラウリン酸を有するGML、2位にラウリン酸を有するGML、またはそれらの組み合わせを含みうる。それぞれの形態のRおよびS異性体およびそれらのラセミ混合物は、本発明の使用に適している。
【0043】
1/3位にラウリン酸を有するGMLの化学構造は、以下に示す。
【化1】
【0044】
2位にラウリン酸を有するGMLの化学構造は、以下に示す。
【化2】
【0045】
別の実施形態において、局所用組成物は、例えば、式I−VIの一つから選択された化合物などの、GML誘導体を含む。そのような化合物の例としては、例示の目的でありそれらに限定されるものではないが、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノミリスタート、グリセロールモノパルミテート、およびドデシルグリセロールが挙げられる。
【0046】
【化3】
式中、Xのそれぞれは、独立して、−O−または−S−であり、
nは、5〜20の整数(両端を含む)である。
【0047】
別の実施形態において、局所用組成物は、少なくとも一つのGMLの誘導体を含み、少なくとも一つのその誘導体は、式Vまたは式VIのいずれかの化合物である。そのような化合物の例は、それらに限定されるものではないが、グリセロールジラウレート、グリセロールジカプリレート、グリセロールジミリスタート、グリセロールトリラウレート、およびグリセロールトリパルミテートを含む。
【0048】
【化4】
式中、Xのそれぞれは、独立して、−O−または−S−であり、
nのそれぞれは、独立して、5〜20の整数(両端を含む)である。
【0049】
一実施形態において、式I、II、IIIまたはIVの化合物は、本発明の局所用組成物中に存在し、少なくとも一つの−X−は−S−である。一実施形態において、−X−のの一つは、−S−であり、−X−の残りは、−O−である。
【0050】
一実施形態において、式VまたはVIの化合物は、本発明の局所用組成物中に存在し、nのそれぞれは10であり、少なくとも一つの−X−は−O−である。
【0051】
本明細書に提供される局所用組成物は、一実施形態において、GMLおよびGML誘導体を含む。例えば、一実施形態において、本明細書に提供される局所用組成物は、GMLおよび式VIの化合物を含む。さらなる実施形態において、nのそれぞれは10であり、少なくとも一つの−X−は−O−である。
【0052】
一実施形態において、局所用組成物は、GMLまたはその誘導体を、組成物の約0.001重量/体積%〜約10重量/体積%含む。さらなる実施形態において、GMLまたはその誘導体は、組成物の約0.005重量/体積%〜約5重量/体積%である。さらに別の実施形態において、GMLまたはその誘導体は、組成物の約0.01重量/体積%〜約1.0重量/体積%である。さらに別の実施形態において、GMLまたはその誘導体は、組成物の約0.05重量/体積%〜約0.5重量/体積%である。
【0053】
別の実施形態において、局所用組成物は、約10μg/mL〜約100mg/mLの濃度でGMLまたはその誘導体を含む。さらなる実施形態において、局所用組成物は、約50μg/mL〜約50mg/mLの濃度でGMLまたはその誘導体を含む。さらなる実施形態において、局所用組成物は、約100μg/mL〜約10mg/mLの濃度でGMLまたはその誘導体を含む。さらに別の実施形態において、局所用組成物は、約500μg/mL〜約5mg/mLの濃度でGMLまたはその誘導体を含む。
【0054】
一実施形態において、局所用組成物は、約10μg/mL、約50μg/mL、約100μg/mL、約500μg/mL、約1mg/mL、約5mg/mL、約10mg/mL、約50mg/mLまたは約100mg/mLの濃度で、GMLまたはその誘導体を含む。
【0055】
組成物中のGMLまたはその誘導体の量は、治療される適応症/疾患および治療される被験者の特性に応じて調整することができる。組成物中のGMLの量は、例えば、感染症または病気の性質、投与部位、被験者の病歴、被験者の体重、年齢、性別および治療される表面積、ならびに、被験者が他の薬を投与されているかどうかなどに依存して変化しうる。
【0056】
上述したように、一態様において、本発明は、GMLまたはその誘導体を含む局所用組成物に関する。一実施形態において、局所用組成物は、少なくとも一つのグリコールを含む。例えば、一実施形態において、局所用組成物は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはそれらの組み合わせを含む。一実施形態において、ポリエチレングリコールは、約300〜約10,000の分子量(MW)範囲を有する。さらなる実施形態において、ポリエチレングリコールは、約300〜約1,000の分子量を有する。さらに別の実施形態において、ポリエチレングリコールは、約400の分子量を有する。
【0057】
一実施形態において、ポリエチレングリコールは、局所用組成物中に存在する。さらなる実施形態において、ポリエチレングリコールは、約400、約500または約1,000の分子量を有する。一実施形態において、ポリエチレングリコールは、約15重量%〜約50重量%、約20重量%〜約40重量%、または約25重量%〜約35重量%、例えば、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、または約50重量%の濃度で局所用組成物中に存在する。さらなる実施形態において、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールの両方が、局所用組成物中に存在する。さらなる実施形態において、プロピレングリコールは、約70%〜約80%の濃度で存在し、ポリエチレングリコールは、約20%〜約30%の濃度で存在する。さらに別の実施形態において、ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール400である。
【0058】
別の実施形態において、GMLまたはその誘導体を含む局所用組成物を提供する。さらなる実施形態において、プロピレングリコールが組成物中に存在する。さらに別の実施形態において、プロピレングリコールが、約60%〜約80%、例えば、約60%、約65%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%または約80%の濃度で、組成物中に存在する。
【0059】
別の実施形態において、GMLまたはその誘導体を含む局所用組成物を提供する。一実施形態において、局所用組成物は、少なくとも一つのセルロース誘導体を含む。さらなる実施形態において、組成物は、一つのセルロース誘導体または二つのセルロース誘導体を含む。一実施形態において、セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロースである。別の実施形態において、セルロース誘導体は、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシメチルセルロースである。さらに別の実施形態において、組成物は、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースの組み合わせを含む。一実施形態において、セルロース誘導体は、約0.1重量%〜約5.0重量%の濃度で存在する。さらなる実施形態において、組成物中、複数のセルロース誘導体が同じ濃度で存在する。さらなる実施形態において、二つのセルロース誘導体が存在し、それぞれが、約1.25重量%の濃度で存在する。セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、または酢酸セルロースが挙げられる。
【0060】
一実施形態において、本明細書に記載の局所用組成物は、GMLまたはその誘導体、少なくとも一つのセルロース誘導体、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールを含む。
【0061】
別の実施形態において、GMLまたはその誘導体を含む局所用組成物を提供する。さらなる実施形態において、組成物は、少なくとも一つの植物油、例えば、少なくとも一つの上記の植物油(例えば、パーム油、オリーブ油、コーン油など)を含む。一実施形態において、植物油は、約0.1重量%〜約10重量%の濃度で、組成物中に存在する。さらなる実施形態において、植物油は、約1重量%〜約8重量%の濃度で、組成物中に存在する。さらなる実施形態において、植物油は、約1重量%〜約6重量%の濃度で、組成物中に存在する。さらなる実施形態において、植物油は、約1重量%〜約4重量%の濃度で、組成物中に存在する。一実施形態において、植物油は、約0.1重量%、約0.5重量%、約1.0重量%、約1.25重量%、約1.5重量%、約1.75重量%または約2.0重量%の濃度で組成物中に存在する。
【0062】
一実施形態において、本明細書に記載の局所用組成物は、植物油および少なくとも一つのセルロース誘導体を含む。例えば、一実施形態において、局所用組成物は、ヒドロキシプロピルセルロースおよび植物油、またはヒドロキシエチルセルロースおよび植物油、またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび植物油の組み合わせを含む。一実施形態において、セルロース誘導体および植物油(例えば、パーム油またはコーン油)は、それぞれ同じ濃度(重量パーセント)で存在する。さらなる実施形態において、セルロース誘導体および植物油は、それぞれ約1重量%〜約5重量%で、組成物中に存在する。さらに別の実施形態において、セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの組み合わせであり、それぞれは、約1.25重量%で組成物中に存在している。一実施形態において、組成物は、植物油および二つのセルロース誘導体を含む。さらなる実施形態において、二つのセルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースであり、組成物中のセルロース誘導体の総濃度は、約1.25重量%である。セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは酢酸セルロースが挙げられる。
【0063】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される局所用組成物は、一つまたは複数の促進剤を含む。さらなる実施形態において、促進剤は、有機酸、キレート剤、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤またはそれらの組み合わせである。さらなる実施形態において、促進剤はキレート剤である。さらに別の実施形態において、促進剤はEDTAである。
【0064】
促進剤は、一実施形態において、EDTAである。さらなる実施形態において、本明細書において提供されるGML組成物は、約0.00005M、約0.0005M、約0.005または約0.05Mの濃度でEDTAを含む。別の実施形態において、キレート剤は、約0.00005M〜約0.05M、約0.0005M〜約0.005M、または約0.005M〜約0.05Mの濃度で、組成物中に存在する。
【0065】
一実施形態において、局所用組成物は、植物油および促進剤の両方、例えばパーム油およびEDTAを含む。別の実施形態において、促進剤は有機酸であり、植物油を含む製剤中に存在する。一実施形態において、本明細書において提供される局所用組成物は、促進剤および非水性ゲル、例えば、セルロース誘導体を含むゲルを含む。別の実施形態において、局所用組成物は、GMLまたはその誘導体、植物油、非水性ゲル(例えば、一つまたは複数のセルロース誘導体を含むゲルなど)および促進剤を含む。
【0066】
一実施形態において、組成物は、少なくとも一つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む。薬学的に許容可能な賦形剤は、当業者によく知られており、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液およびクエン酸緩衝液)、アミノ酸、アルコールのほか、血清アルブミンなどのタンパク質、パラベン(例えば、メチルパラベン)またはマンニトールを含みうる。
【0067】
一実施形態において、組成物のpHは約3.5〜約7.0である。さらなる実施形態において、組成物のpHは約4.0〜約6.0である。さらに別の実施形態において、組成物のpHは、約4.0〜約4.5である。
【0068】
一実施形態において、本明細書に提供される組成物は、GMLまたはその誘導体および薬学的に許容可能な局所用担体を含む。一実施形態において、薬学的に許容可能な局所用担体は、例えば、パラフィンワックスまたはワセリンなどの炭化水素の混合である。ワセリンは、炭化水素の水不溶性、疎水性、半固体混合物のいずれかである。薬学的に許容可能な局所用担体を、本明細書に記載の任意の製剤へ加えることができる。
【0069】
別の実施形態において、組成物は水性溶媒を含む。水性溶媒を含む組成物は、薬学的に許容可能な局所用担体を含んでもよいし、または含まなくてもよい。一実施形態において、水性溶媒が存在し、水、生理食塩水、培養培地(例えば、微生物培養培地もしくは細胞培養培地)またはそれらの組み合わせである。さらなる実施形態において、水性溶媒および薬学的に許容可能な局所用担体の両方が、局所用組成物中に存在する。さらに別の実施形態において、局所用組成物は、少なくとも一つのセルロース誘導体を含む。
【0070】
一実施形態において、組成物は、水性溶媒としてトッドヒューイット培地などの細菌培養培地を含む。一実施形態において、水性溶媒は、約1重量%〜約25重量%の濃度で存在する。さらなる実施形態において、水性溶媒は、組成物の約2重量%〜5重量%である。
【0071】
一実施形態において、組成物は液体溶液である。別の実施形態において、組成物はゲルである。別の実施形態において、組成物は、固体、半固体、発泡体、ワックス、クリームまたはローションである。
【0072】
一実施形態において、組成物は、表1に記載の製剤のうちの一つを含む。植物油は、一実施形態において、パーム油、オリーブ油またはコーン植物油である。表1は、本発明で使用することができる、組成物の成分および濃度の単なる例示である。
【表1-1】
【表1-2】
【0073】
一態様において、本発明は、それを必要とする被験者における微生物感染症の治療方法を提供する。微生物感染症は、一実施形態において、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症またはそれらの組み合わせである。
【0074】
理論に束縛されることを望まないが、本明細書に記載のGML局所用組成物は、現在承認されている抗微生物組成物よりも刺激が少なく、したがって、現在当該技術分野で使用されている他の抗微生物組成物と比較して、より良好な患者の服薬遵守率をもたらす。
【0075】
一実施形態において、方法は、本明細書に記載のGMLまたはその誘導体を含む局所用組成物を被験者へ投与することを含む。一実施形態において、方法は、GMLまたはその誘導体(例えば、式I〜VIの一つの化合物)、植物油、および薬学的に許容可能な局所用担体を含む、有効量の組成物を被験者へ局所的に投与することを含む。別の実施形態において、方法は、GML、非水性ゲル、および薬学的に許容可能な局所用担体を含む有効量の組成物を局所的に投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、被験者へ、表1に記載の組成物の一つを投与することを含む。
【0076】
一実施形態において、微生物感染症を治療する方法は、有効量の本明細書に記載のGML組成物の一つまたは複数を、被験者の少なくとも一つの皮膚または粘膜表面へ塗布することを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、組成物を、ワイプ、スポンジ、スワブまたは他の材料へ塗布または含浸させ、次に、それぞれの材料を用いて被験者の皮膚または粘膜表面へ塗布する。本明細書で使用される用語「スワブ」は、液体、ゲル、ワックス、クリームもしくはローションを皮膚もしくは粘膜表面へ塗布する、または皮膚もしくは粘膜表面に液体、ゲル、ワックス、クリームもしくはローションを塗布する行為、または皮膚もしくは粘膜の表面から液体、ゲル、ワックス、クリーム、ローションまたは流動体を収集する行為に適した材料を意味する。いくつかの実施形態において、材料は、例えば、スティック、ワイヤ、ロッド、またはアプリケータなどのホルダーへ取り付けられている。さらなる実施形態において、ホルダーへ取り付けられている材料は、その一つの端または両端において取り付けられている。いくつかの実施形態において、ワイプ、スポンジ、スワブまたは他の材料は、事前に組成物を装填されているまたは組成物と一緒に包装されている。
【0078】
特定の細菌は、GMLの抗菌作用に対して耐性であることが示されている。そのような細菌は、例えば、大腸菌および緑膿菌などの腸内細菌科の種などの、密なLPS層を有するものを含む。さらに、リパーゼまたは、S.aureusによって産生される、エステラーゼGEHなどの他の加水分解酵素の産生により、GMLの抗菌活性は阻害される可能性がある。
【0079】
理論に束縛されることは望まないが、それらには限定されないが、直接の微生物毒性、脊椎動物細胞への感染性微生物の侵入の阻害、微生物の増殖の阻害、毒素などの病原性因子の産生もしくは活性の阻害、脊椎動物細胞の安定化、またはそうでなければ、感染プロセスを向上させる炎症または免疫刺激性媒介物質の誘導の阻害を含む、いくつかのメカニズムのうちの一つまたは複数により、GMLは微生物感染を阻害すると考えられている。
【0080】
環境変化に対応および適応し、病原性因子を産生するために、細菌は、二成分シグナル伝達系を使用する。理論に束縛されることは望まないが、GMLは、細菌の原形質膜との相互作用により、直接的または間接的に、GMLは、細菌のシグナル伝達を妨害すると考えられている。一実施形態において、GMLの殺菌作用は、細菌の原形質膜での相互作用により少なくとも部分的に媒介される。さらなる実施形態において、GMLは、細菌の原形質膜と関連して感知することができるが、細胞膜に関連して感知することができない。
【0081】
一実施形態において、細菌膜の直接的にGML媒介する妨害は、膜内のシグナル伝達タンパク質の局在との干渉、またはシグナル伝達タンパク質に結合するリガンドとの干渉を含む。一実施形態において、GMLは、二成分シグナル伝達系に間接的な影響を有し、該影響は、シグナル伝達機能を実行する膜貫通タンパク質の能力との干渉する膜構造への修飾、細菌の原形質膜電位の損失、膜を横断するpH勾配の変化から選択される。
【0082】
一実施形態において、上述した間接的な効果は、例えば、P.aeruginosaおよび特定の乳酸菌株によって産生されるものなどの、一つまたは複数のテトラミン酸により媒介される。これらの生物によって作られるテトラミン酸は、2,4−ピロリジンジオン環および12個の炭素側鎖を含む。それらの特性は、広いスペクトルの抗菌効果および抗炎症活性を含む。理論に束縛されることを望まないが、テトラミン酸およびGML間の機械的類似性が、なぜP.aeruginosaおよび乳酸桿菌がGML抗菌活性に対して非常に耐性があるのかを説明しうる。P.aeruginosaについて、テトラミン酸は、ホモセリンラクトンクオラムセンシング系のために重要である。例えば、pH7.0で、高濃度のGML存在下(>2000μg/mL)で増殖させたP.aeruginosaは、顔料を含む多数の病原性因子の上方調節された産生を有すると考えられ、クオラムセンシング系の活性化に関連した効果と一致する。
【0083】
S.aureus中で見つけられる例示的な二成分系としては、agr制御系およびWalk/Rが挙げられる。GMLは、agr制御系に影響し、S.aureus中のいくつかの病原性因子を制御することが示されている。Walk/Rは、微生物の生存に必須である。理論に束縛されることは望まないが、Walk/Rなどの微生物の生存能力にとって重要である一つまたは複数の二成分系は、例えば、直接的に、高用量でGMLにより阻害される可能性があり、その結果、微生物の迅速な死がもたらされる。
【0084】
細菌の細胞膜へのGMLの推定上の影響と同様に、GMLは、ウイルス脂質エンベロープを破壊することによって、特性のウイルスを不活性化することが示されている[Thormar et al.(1994)Ann NY Acad Sci 724;465]。
【0085】
一実施形態において、本明細書に記載の方法は、膣微生物感染症の患者を治療するために使用される。さらなる実施形態において、膣微生物感染症は、外陰膣カンジダ症(VVC)または細菌性膣炎(BV)である。BVの成人女性は、骨盤内炎症性疾患、子宮内膜炎、膣カフ蜂巣炎の危険にさらされており、BVの妊婦は、低出生体重、早期陣痛、早産、および絨毛羊膜炎のさらなる危険にさらされている。VVCまたはBVの患者において、通常は、Lactobacillus種によって支配されている膣内細菌嚢は、他の細菌および/または真菌種が支配するように変更される。Gardnerella vaginalisおよび他の嫌気性細菌は、一般にBVに関連があり、Candida種、通常、C.albicansは、VVCに関連がある。したがって、一実施形態において、本明細書に記載の方法は、嫌気性細菌感染症を有する患者を治療するために使用される。さらなる実施形態において、感染症は、Gardnerella vaginalisまたはCandida感染症(例えば、C.albicans)である。
【0086】
本明細書で提供されるGML組成物は、一実施形態において、毒素の産生を阻害する方法において使用される。例えば、一実施形態において、細菌毒素を阻害し、かつ/または細菌毒素に関連した病気を減らすために、方法が提供される。さらなる実施形態において、この方法は、本明細書に記載の一つまたは複数の局所用組成物をタンポンまたは創傷被覆材へ塗布することを含み、これはその後被験者により使用される、または被験者へ塗布される。さらなる実施形態において、本明細書に記載の方法により治療される細菌性疾患は、毒素性ショック症候群(TSS)であり、これは、TSS毒素−1(TSST−1)または、よりまれに、S.aureusによるエンテロトキシンA、BおよびCなどの他の毒素の産生により引き起こされる。TSSの症状および後遺症は、急性発熱、発疹、低血圧、倦怠感、多臓器不全、昏睡、皮膚剥離または死亡を含みうる。TSSは、S.aureus感染症の任意の個体、特に皮膚創傷の個体において発生する可能性があるが、TSSのほとんどの症例は、月経中のタンポンの使用に関連している。
【0087】
尿路感染症(UTI)は、成人女性および高齢者において特に一般的である。尿路感染症は、一般的に下部尿路(即ち、尿道および膀胱)で始まり、一般的に、症状の発症後、抗生物質で治療される。治療せずに放置した場合、UTIは腎臓へ波及し、恒久的な腎障害をもたらす可能性がある。UTIは、典型的には、Escherichia coliにより引き起こされるが、また、他のEnterobacteriaceae、Staphylococcus aureus、他のグラム陽性細菌、または、まれにウイルスもしくは真菌種によっても引き起こされる可能性がある。一実施形態において、本明細書に記載の方法は、尿路感染症を有する被験者を治療するために用いられる。この方法は、一実施形態において、本明細書に記載の一つまたは複数の組成物を、患者の皮膚または粘膜表面へ局所的に塗布することを含む。さらなる実施形態において、患者は、組成物の局所塗布する前に、長期間の抗生物質治療を受けている。
【0088】
宿主被検体における感染を確立するために、HIVおよびSIVなどのウイルスは、その後ウイルスによって感染する、CD4+T細胞の感染部位への漸増をもたらす初期の炎症反応を必要とすると考えられている。一実施形態において、本明細書に記載の方法は、HIVおよび/またはSIV感染症の治療のために用いられる。該方法は、一実施形態において、患者の皮膚または粘膜表面へ、本明細書に記載の一つまたは複数の組成物を局所的に塗布することを含む。さらなる実施形態において、組成物は膣内投与される。
【0089】
毎年米国では、手術後のS.aureus感染症の50万以上の事例があると推定されており、そのような感染症の80%は、患者の前鼻孔で発見されているのと同じ細菌に起因することが示されている。さらに、Streptococcus pyogenesによる上部気道感染症に関連した、連鎖球菌咽頭炎および連鎖球菌毒素性ショック症候群の大流行、例えば、M3菌株の激増があった。上部気道の他の部分の可能な除菌および手術部位での病原体を殺す外科用スクラブの使用を組み合わせる場合、これらの事実は、鼻の除菌が、術後の感染症および他の呼吸器感染の防止および治療に有効でありうることを示唆している。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるGML組成物は、連鎖球菌性咽頭炎、連鎖球菌毒素性ショック症候群、または外科手術後のS.aureus感染症を低減するために、気道、他の粘膜表面または外科切開部位をコロニー分離(decolonize)させるための方法において用いられる。いくつかの実施形態において、方法は、被験者の前鼻孔に本明細書で提供される一つまたは複数の組成物を塗布することを含む。例えば、一実施形態において、10%非水性ゲル中の1mg/mLGMLを、スワブへ塗布し、該スワブを各鼻孔の周りで鼻骨まで3回回転させる。
【0090】
口腔連鎖球菌は、歯周病および虫歯に、ならびに、感受性個体における感染性心内膜炎に関与していることが報告されている。虫歯、歯周病および感染性心内膜炎につながる連鎖球菌感染症を予防または治療するために、本明細書で提供されるGML組成物は、いくつかの実施形態で使用されている。一実施形態において、該方法は、本明細書で提供される一つまたは複数の組成物を、被験者の歯および歯肉線へ塗布することを含む。例えば、一実施形態において、5%非水性ゲル中のGML1mg/mLを、スワブを用いて、被験者の歯および歯肉線へ塗布する。
【0091】
いくつかの実施形態において、被験者は細菌感染症を有する。本明細書で提供される局所用組成物を用いて治療可能な細菌感染症は、それらに限定されないが、以下の細菌により引き起こされる感染症を含む:Staphylococci(例えば、S.aureus、S.intermedius、S.epidermidis)、群A Streptococcus(例えば、S.pyogenes)、群B Streptococcus(例えば、S.agalacticae)、群C、FおよびG Streptococcus、Streptococcus pneumoniae、Bacillus anthracis、Peptostreptococcus種、Clostridium perfringes、Neisseriae gonorrheae、Chlamydia trachomatis、Haemophilus influenzae、Pseudomonas aeruginosa、Helicobacter pylori、Gardnerella vaginalis、Bacteriodes fragilis、Burkholderia cepacia、Bordatella bronchiseptica、Campylobacter jejuni、Enterobacteriacae(例えば、Escherichia coli)P.asteurella multocidaおよびMycobacterium(例えば、M.tuberculosisおよびM.phlei)。
【0092】
さらに、本明細書に記載の局所用組成物は、一実施形態において、表2にリストされた一つまたは複数の細菌により引き起こされる一つまたは複数の細菌感染を治療するために使用される。表2は、最適な増殖条件下で増殖された様々な細菌に対するGMLの抗菌活性を試験する実験の結果を示す。Pseudomonas cepaciaと以前は名付けられており、Pseudomonas aeruginosaに関連しているBurkholderia cenocepaciaは、500μg/mLの濃度で、GMLによって殺傷された。マイコバクテリア種は、典型的には、大量の複合体脂肪酸を産生する。しかしながら、これらの生物は、50μg/mL以上の濃度でGMLにより殺傷された。グラム陽性菌の増殖を阻害することに加えて、試験したそのような生物(Staphylococcus aureus、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、群C、FおよびG streptococciおよびClostridium perfringens)の全てについて、増殖の阻害から独立して、GMLは外毒素の産生を阻害した。GMLによる殺傷を最も受けやすい生物は、Peptostreptococcus種、Clostridium perfringens、Bordetella bronchisepticaおよびCampylobacter jejuniであり、それらの全ては、GML(1μg/mL)により殺傷された。
【表2-1】
【表2-2】
【0093】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の局所用組成物の一つまたは複数を用いて治療される被験者は、ウイルス感染症を有する。さらなる実施形態において、ウイルス感染症は、以下のウイルスまたはウイルス分類の一つまたは複数により引き起こされる:インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス2)、レンチウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス)。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の局所用組成物の一つまたは複数を用いて治療される被験者は、真菌感染症を有する。さらなる実施形態において、真菌感染症は、以下の生物種の一つまたは複数により引き起こされる:Candida種(例えば、C.albicans)、Microsporum種、Trichophyton種、Epidermophyton floccosum、Penicillium種、Aspergillus種、Trichomonas vaginalis。
【0095】
細菌、ウイルスまたは真菌感染症を識別し、診断する方法は、一般的に当業者に周知である。本明細書に開示の製剤の、感染症の治療における有用性を評価するために、当業者に公知の方法を用いることができる。例えば、BV感染は、治療前、および治療後に、膣細胞の顕微鏡検査により評価することができる。
【0096】
一実施形態において、方法を、一つまたは複数の微生物を含む生物膜を除去または死滅させるために用いる。生物膜は、尿路感染症、耳の感染症、および歯茎炎などの歯の疾患に関与する可能性があり、また、人工器官、カテーテルまたは心臓弁など、移植デバイスの表面上に形成する可能性がある。一実施形態において、方法は、直接的に生物膜へ塗布することにより、局所用組成物を投与することを含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、GMLまたはGML誘導体とともに、第二の活性剤を投与することを含む。追加の活性剤は、本明細書に記載の組成物中に存在しうる、または別々に投与されうる。一実施形態において、一つまたは複数の追加の活性剤を、局所用GML組成物の前、または後に投与する。例えば、二つの活性剤を、局所的に連続的に投与、または連続的に異なる投与経路により投与することができる。
【0098】
一実施形態において、追加の活性剤(複数可)を、本発明の組成物の投与の前、間、後に投与する。別の実施形態において、追加の活性剤(複数可)を、組成物と同じ経路または異なる経路により投与する。例えば、追加の活性剤(複数可)を、一実施形態において、以下の投与経路の一つにより投与する:局所、鼻腔内、皮内、静脈内、筋肉内、経口、膣、直腸、耳、眼、皮下。追加の活性剤の用量は、例えば、感染症または疾患の性質、投与部位、被験者の体重、年齢、性別および表面積、併用薬、および医学的判断に依存する。
【0099】
追加の活性剤は、例えば、抗生物質、抗ウイルス剤および抗真菌剤を含む。抗生物質は、それらに限定されないが、アミノグリコシド、カルバセフェム、セファロスポリン、グリコペプチド、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミドおよびテトラシクリンを含む。抗真菌剤は、それらに限定されないが、アゾールクラス、ポリエンクラスまたはエキノカニンクラスのもの、ヌクレオシド類似体、アリルアミン、グリセオフルビン、トルナフテートまたはセレン化合物を含む。抗ウイルス剤は、それらに限定されないが、例えば、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、アバカビル、エノホビル、ラミブジン、エムトリシタビン、ジドブジン、テノホビル、エファビレンツ、ラルテグラビル、エンフビリジド(enfuvirdide)、マラビロク、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、インターフェロン、オセルタミビル、ザナミビルを含む。
【実施例】
【0100】
本発明を、以下の実施例を参照することによりさらに説明する。しかしながら、これらの実施例は、上述した実施形態と同様に、例示であって、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことに注意されたい。
【0101】
実施例1:植物油中のGMLの抗微生物効果
いくつかの細菌または真菌性微生物の増殖を阻害するオリーブ油、パーム油、またはコーン油中の様々な濃度のGMLの能力を評価するために、in vitro試験を行った。
【0102】
オリーブ油中(
図1)、パーム油中(
図2)またはコーン油中(
図3)のGMLを、GMLを溶融するために37℃に予熱し、次に、10μg/mL〜5000μg/mLの範囲の濃度で、丸底管中の1mLトッドヒューイット(Difco、デトロイトMI)ブロスへ加えた。以下の微生物を、指示濃度で管へ加えた:Staphylococcus aureus MNPE(メチシリン感受性、1×10
7/mL)、Staphylococcus aureusMW2(メチシリン耐性、1×10
7/mL)、Streptococcus agalactiae(1×10
7/mL)、Gardnerella vaginalis(1×10
7/mL)またはCandida albicans(1×10
6/mL)
【0103】
管を、標準的な大気中で、18時間、毎分200回転(RPM)で、37℃で振とうした。菌数測定は、コロニー形成単位/mL(CFU/mL)を決定するために行った。
【0104】
10μg/mL程度のわずかなGMLの存在下では、G.vaginalisCFU/mLは、試験した三つの全ての植物油において減少し、試験した全ての三つの植物油において、濃度20μg/mL以上のGMLでは、G.vaginalisおよびS.agalactiaeの両方の増殖が完全にまたはほぼ完全に阻害された。さらに、C.albicansおよびS.aureusの両方の株の増殖は、100μg/mLGMLで阻害され、試験した全ての三つの植物油において、500μg/mLおよび5000μg/mLGMLで、GMLにより完全に阻害された。このようにして、GMLは、オリーブ油、パーム油またはコーン油と混合した場合に、効果的な抗微生物性であった。
【0105】
実施例2:生物膜として増殖する微生物へのGMLの影響
生物膜へのGMLの影響を評価するために、S.aureus生物膜を増殖した。S.aureus128(毒素性ショック症候群毒素−1(TSST−1)を発現する生物)をその一端で縛られた予め湿らせた透析管の内側に10
7/0.1mLでインキュベートした。タンポンをその後透析管へ挿入し、その管を0.8%寒天含有トッドヒューイットブロス(Difco Laboratories、デトロイト、ミシガン州)に含浸した。増殖微生物の唯一の栄養源が、透析管を通って吸収された培地であるように、透析管の開口端を、寒天表面上に残した。
図4は、6000倍(A)および9000倍(B)の倍率での、18時間インキュベーション後の、タンポン繊維およびセルロースアセテート透析管上で増殖した生物膜を示す。
【0106】
タンポン嚢を固化した寒天中でインキュベートした。4、8、12および16時間の時点で、流体増加分を決定するために、タンポン嚢を寒天から除去し、切り開き、秤量した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を添加することにより、TSST−1を溶出した。最初に4倍量の無水エタノールを添加することにより溶出された流体を濃縮し、その後蒸留水へ再可溶化し、ウェスタンイムノブロットにより分析することにより、TSS−1の蓄積量を定量した。
図5は、時間の経過に伴う、タンポン中のTSST−1の存在量の増加を示している。TSST−1は、5%GMLの存在下では検出されなかった(データは示さず)。
【0107】
生物膜の形成へのGMLの効果を直接的に評価するために、96ウェルプラスチックマイクロタイタープレートに、約10
6/mLのS.aureusの三つの株(MN8、メチシリン感受性株、MNWH、メチシリン耐性株、またはMW2、メチシリン耐性株)のうちの一つまたは、非型付けHaemophilus influenzaeで接種した。ウェルは、24時間および48時間、37℃で固定的に培養した(
図6〜8)。対照として、各微生物に対して三つのウェルを1セットとして、ウェルをピペット操作により上下させて3回攪拌した。GMLの殺菌活性は、上清中のCFU/mLを測定することにより決定した。上清を除去した後、未結合細胞を除去するためにウェルをPBSで3回洗浄し、次に、30分間クリスタルバイオレットで処理した。未結合のクリスタルバイオレットを除去するために、ウェルを再びPBSで3回洗浄した。最終的に、生物膜関連のクリスタルバイオレットを可溶化するために、ウェルをエタノールで処理した。生物膜形成を測定するために、595nmにおける吸光度を、ELISAリーダーにより測定した。
【0108】
図6、7および8は、研究結果を提供する。三つ全てのS.aureus株の増殖は、CFU/mLごとに測定されるように、24時間および48時間の両方の時点で、500μg/mLでのGMLにより完全に阻害された(
図6、破線は出発接種物量を示す、*出発接種物と比較して、平均CFU/mLは大幅に低減した、p<0.001)。対照的に、細菌の増殖を阻害するのに必要なものよりも、10倍低いGML濃度で、マイクロタイタープレートのウェル中の保持された生物膜材料の低減されたクリスタルバイオレット染色により測定されるように、生物膜形成は有意に阻害された(
図7、#GMLを含まないウェルと比較して、595nmにおける平均吸光度の有意な減少、p<0.01)。
【0109】
同様に、50μg/mLの濃度で生物膜との関連で、GMLは非型付けH.influenzaeに対して殺菌性であった(
図8、上部、破線は出発接種物量を示す。*出発接種物と比較した平均CFU/mLの有意な減少、p<0.001)。さらに、1.0μg/mLの低い濃度で、24および48時間で測定されるように、GMLはH.influenzae生物膜形成を阻害した(
図8、底部、#GMLを含まない対照と比較して、595nmで、平均吸光度の有意な減少、p<0.01)。
【0110】
事前に形成された生物膜へのGMLの影響を評価するために、インキュベーションを通じてGMLで処理せず、生物膜がウェル内に形成されたことを示す、48時間で595nmでの高い吸光度を有するサイドバイサイドウェルを、37℃で60分間500μg/mLのGMLで処理した。上清を除去し、殺菌活性は、CFU/mLで測定することにより決定した(
図9、左、#GMLを含まない対照と比較して、595nmでの平均吸光度の有意な減少、p<0.01)。上述したように、ウェルを次に洗浄し、クリスタルバイオレットで染色した。
【0111】
図9は、試験結果を提供する。48時間後、500μg/mLのGMLは、S.aureusおよびH.influenzaeの両方を死滅させた(
図9、左)。同様に、500μg/mLのGMLは、GML処理したウェル中のクリスタルバイオレット染色の損失により示されるように、ウェルへ付着した生物膜材料をほとんど完全に除去した(
図9、右)。
【0112】
実施例3:E.coliの増殖へのGMLおよびEDTAの相乗効果
以前の試験では、E.coliなどの腸内細菌種だけではなく、Pseudomonas aeruginosaは、GMLの抗菌効果に耐性であることを示し、LPS高密度層がこれらの生物においてGMLから保護的であることを示唆していた。GML組成物へのEDTAの追加が、GML組成物の抗微生物特性を促進するかどうかを判断するために、追加の試験を行った。
【0113】
E.coli(ワトソン株)を、トッドヒューイット培地中で、1.2×10
7/mLに調整した。100μg/mLのGMLの存在下または非存在下で、0.5M〜0.00005Mの範囲の様々な濃度のEDTAをウェルに加えた。培養物を、24時間、振とうしながら(200RPM)インキュベートし、その時、サンプルを菌数測定のために取り出した。
【0114】
試験結果を
図10に示す。EDTA単独では、用量依存的に、E.coliの増殖をやや阻害した。100μg/mLGMLとEDTAとの組み合わせは、増加した抗細菌活性を示した(*p<0.001;破線は、出発接種物量を示す)。
【0115】
GMLおよびEDTAの組み合わせた効果をさらに評価するために、実験を上述したように行い、EDTA単独またはGMLおよびEDTAの組み合わせのE.coliの増殖への比較効果を、GML単独との直接的比較により評価した。結果を
図11に示す。上述の実験におけるように、EDTA単独は、高濃度である程度のE.coliの増殖を阻害した一方、100μg/mLのGMLと、EDTAとの組み合わせは、用量依存的に増加した抗細菌活性を示した。GML単独では、E.coliに対するいかなる細菌活性も示さなかった。したがって、GMLおよびEDTAは、相乗的な抗細菌効果を発揮した。
【0116】
実施例4:病原微生物に対するGML活性へのpHの影響
EDTAの存在は、E.coliがGMLの影響を受けやすくするため、E.coliまたはP.aeruginosaの表面のプロトン化は、二価カチオンの反発によりGML活性を増加させ、それによってLPSの完全性を崩壊させうることが仮定された。
【0117】
様々なpHレベルの存在下で、E.coliの増殖へのGMLの効果を決定するために実験を行った。E.coli(ワトソン株)を、トッドヒューイット培地中で増殖し、10
7CFU/mLに調整した。酢酸緩衝液を用いて、培養物のpHを、5.0、6.0または7.0へ調節した。GMLを、5000、50または0.1μg/mLの濃度で培養物へ加え、培養物を振とうしながら(200RPM)37℃でインキュベートした。サンプルを、24時間後CFU/mLを数えるために取り出した。
【0118】
試験結果を
図12に示す。5000μg/mLもの多くのGMLを培養物へ加えた場合でさえ、pH7.0でE.coliは、GMLに対して感受性ではなかった。しかしながら、これらの培養物中において、50μg/mLGMLが殺菌性である、pH6.0では、E.coliはGMLに対して非常に感受性が高く、0.1μg/mLGMLのみが殺菌性である、pH5.0では、GMLに対してさらにより影響を受けやすかった。各単位のpHの低下により、E.coliはGMLに対して500倍感受性が高くなると考えられる(*p<0.001;破線は、出発接種物量を示す)。
【0119】
同様の実験を、様々なpHで、Haemophilus influenzaeの増殖へのGMLの影響を評価するために行った。pH7.0では、1μg/mLのGMLは、Haemophilus influenzaeの増殖への影響はなかった(
図13)。しかしながら、pH6.0では、1μg/mLのGMLは、4、8、24時間後に、H.influenzaeの増殖を完全に抑止した(
図13)。
【0120】
濃度の範囲およびpHレベルの範囲の存在下での、Pseudomonas aeruginosaの増殖へのGMLの影響もまた、測定した。P.aeruginosa(PA01株)を、5.7×10
6/mLで、トッドヒューイットブロス中に接種した。GMLを、10μg/mL〜5000μg/mLの濃度範囲で、培養物へ加え、pHを5.0、6.0または7.0へ調整した。24時間のインキュベーション後に、CFU/mLを測定した。試験の結果を
図14に示す。pH6.0または7.0において、GMLの濃度は、P.aeruginosaの増殖を阻害しなかった。pH5.0、GML非存在下で、P.aeruginosa増殖を幾分か阻害した。しかしながら、pH5.0における培養物へのGMLの添加は、用量依存的に、P.aeruginosaの増殖をさらに阻害した(*p<0.001;破線は、出発接種物量を指す)。
【0121】
試験の結果は、GMLおよび低下させたpHは、相乗的に病原性微生物の増殖を阻害したことを示した。
【0122】
実施例5:GMLの抗微生物活性への非水性ゲルの影響
プロピレングリコール(73.55重量%)、ポリエチレングリコール400(25重量%)およびヒドロキシプロピルセルロース(Gallipot、セントポール、ミネソタ州;1.25重量%)からなる非水性ゲルを、GMLの存在下または非存在下で、65℃へ加熱した。成分を可溶化した後、ゲルを、10%または25%まで、トッドヒューイットブロスで希釈した。GML単独も、追加の対照として機能するように、トッドヒューイットブロスで同等に希釈した。様々な濃度の非水性ゲル中で1μg/mL〜5000μg/mLの範囲の濃度でのGMLの存在下、または同じ濃度でGML単独の存在下で、振とうしながら(200RPM)、37℃で、S.aureus(株MN8、毒素ショック症候群株)をインキュベートした。24時間後、菌数(CFU/mL)を測定した。
【0123】
図15は、試験の結果を示す。100μg/mL以上の濃度で、GMLはS.aureusの増殖を阻害した。10%および20%の非水性(NA)ゲル濃度およびGML濃度範囲は、S.aureusの増殖への用量依存的影響を示した。25%非水性ゲル中のGMLは、GML単独よりも、約500倍高い活性を有し、10%非水性送達ビヒクル中のGMLは、GML単独よりも、約10倍高い活性を有していた(
図15;*p<0.001;破線は、出発接種物量を示す)。したがって、非水性ゲルおよびGMLの組み合わせは、強力な抗微生物効果を有していた。
【0124】
実施例6:GMLゲル中のテノホビルの溶解度
プロピレングリコール(73.55重量%)、ポリエチレングリコール400(25重量%)、およびヒドロキシプロピルセルロース(1.25重量%)からなる非水性ゲルを、4.0〜4.5のpHの範囲で調製した。抗HIV薬であるテノホビルを、該薬が組成物中において可溶性であるかどうかを判断するために、10mg/mLの濃度でゲルへ加えた。
【0125】
試験の結果を
図16に示す。テノホビル(10mg/mL)は、pH4.0〜4.3では非水性ゲル中で可溶性ではなかったが、pH4.4または4.5では、非水性ゲル中で可溶性であった。
【0126】
実施例7:様々な形態のGMLの有効性
RまたはS光学異性体、およびグリセロールの1/3位または2位において結合されたラウリン酸エステルを含むGMLを含む、複数の形態のGMLが存在する。光学異性体間の電位差を試験するために、市販のGMLのR形態を、RおよびS形態のGMLラセミ混合物と比較した。異なるグリセロール位置へ結合したラウリン酸を含むGML間の電位差について試験するために、市販の精製した2位のラウリン酸GMLを、2位および1/3位ラウリン酸GMLの混合物と比較した。GMLのこれらの形態の抗菌効果を、S.pyogenes(株594)において評価した。
【0127】
試験結果を
図17に示す。R形態GMLならびに、RよびS形態GMLの混合物は、同じ抗菌活性を有していた(左パネル;破線は出発接種物量を示す)。しかしながら、2位にラウリン酸を含むGML形態は、GML形態の混合物よりも2倍活性が高かった(右パネル;*p<0.001;破線は、出発接種物量を示す)。したがって、結果は、GML活性は、キラル性には依存しないが、ラウリン酸の位置にはある程度依存することを示した。
【0128】
実施例8:ラウリン酸に対するGMLの抗菌活性
ラウリン酸(GMLの主要な切断産物)と比較した、GMLの殺菌活性および外毒素の産生を阻害する能力を測定した。グリセロールエステルヒドロラーゼ(GEH)を生成する生物であるS.aureus、およびGEHを生成しないS.pyogenesを試験した。
【0129】
GMLおよびラウリン酸の殺菌活性についての試験結果を、
図18および19に示す。GMLおよびラウリン酸を、37℃で24時間、約5×10
6CFU/mLS.aureus MN8(
図18)またはS.pyogenes(
図19)を用いて、指示濃度で三通りのインキュベートを行った。S.aureusについて、プレートを振とうしながら(200RPM)インキュベートした。S.pyogenesについて、プレートを、7%CO
2の存在下で、静止的にインキュベートした。菌数測定を、CFU/mLを測定するために使用した。殺菌活性は、少なくとも3ログCFUを減少させるために必要な、GMLまたはラウリン酸の最小濃度として定義された。GMLはラウリン酸よりも200倍低い濃度で、S.aureusについて殺菌性であった(
図18;*p<0.001;破線は出発接種物量を示す)。GMLは、ラウリン酸よりも500倍低い濃度で、S.pyogenesについて殺菌性であった(
図19;*p<0.001、破線は出発接種物量を示す)。さらに、二つの生物に対するGMLの殺菌活性を比較すると、S.aureusについてよりも、S.pyogenesについて、GMLは5倍殺菌活性が高かった。
【0130】
超抗原の産生を阻害するための、GMLおよびラウリン酸の相対的な能力を測定するために、S.aureusMN8およびS.pyogenesを、GMLまたはラウリン酸の存在下で、8時間培養した。S.aureusMN8によるTSST−1産生および、S.pyogenesによる連鎖球菌発熱性外毒素A(SPEA)産生を、ウェスタン免疫ブロット分析により定量した。
【0131】
超抗原産生についての試験結果を、
図20に示す。GMLおよびラウリン酸の両方は、増殖阻害のなかった濃度で、S.aureusMN8およびS.pyogenesによる外毒素産生を有意に阻害した。しかしながら、外毒素産生の阻害のために必要とされるGML濃度は、外毒素産生の阻害のために必要とされるラウリン酸の濃度と比較して、両方の生物について低かった。GMLは、0.2μg/mLの濃度でS.aureusTSST−1の産生を阻害し、0.025μg/mLの濃度で、S.pyogene SPEAの産生を阻害した一方、ラウリン酸は、2.5μg/mLの濃度で、TSST−1およびSPE−Aの両方の産生を阻害した。(*p<0.01)。
【0132】
GML活性について、S.aureusおよびS.pyogenesの間の違いをさらに評価するために、S.aureusMN8またはS.pyogenesからの0.1mLの静止相の滅菌培養流動体を用いて、トッドヒューイットブロス1000μg/0.4mLの濃度で一晩インキュベートすることにより、GMLを前処理した。
【0133】
試験の結果を
図21に示す。上述したアッセイで24時間測定すると、S.aureusを用いたプレインキュベーションにより、S.aureus MN8に対するGML抗菌活性を排除した。しかしながら、S.pyogenesを用いたプレインキュベーションは、GMLの抗菌活性へ影響しなかった(*p<0.001;破線は、出発接種物量を示す)。これらの結果は、GEHなどのS.aureusにより産生されたエステラーゼが、GML活性を阻害することを示唆した。
【0134】
実施例9:S.AureusにおけるGMLに対する耐性の発現
S.aureusがGMLに対して耐性を発現したかどうかを判断するために、一年間、S.aureus培養物を準最適濃度のGML(50μg/mL)を用いて処理した。毎週、S.aureus株MN8を、50μg/mLのGMLを含むトッドヒューイット寒天プレートへ移し、48時間培養した。この準最適GML濃度は、S.aureusが48時間増殖することを可能にする。増殖した生物は、50μg/mLのGMLを含む新しいプレートへ毎週移し、またはS.aureusが通常増殖することができない濃度である、100μg/mLのGMLを含むプレートへ移し、24時間増殖した。さらに、50μg/mLのGMLプレートを、GMLを結晶化させるために、毎週4℃に置いた。個別のS.aureusコロニーの周りの非結晶化領域についてプレートを分析し、これは、GMLのGEH切断の指標である。
【0135】
S.aureusは、多くの抗生物質への耐性の急速な発現を示すという事実にもかかわらず、100μg/mLGMLプレート上で増殖することができたS.aureusはなかった。したがって、S.aureusは、一年間の期間にわたって、GMLに対する耐性を発現しなかった。さらに、一年の経過の間に、上方制御されたGHE産生を有する変異体は同定されなかった(データ示さず)。
【0136】
実施例10:脱コロニー化試験
非水性ゲル中で形成された、GML(5%重量/体積)の、ヒトの気道のコロニーを分離させるため、および実験したウサギ中の汚染された外科切開部位のコロニーを分離させるための能力を評価するために、試験を行った。
【0137】
GMLが気道のコロニーを分離させることができるかどうかを評価するために、三人のヒト被験者は、前鼻孔にスワブを受けた。スワブを、事前に0.1mLのPBSの取り込みをもたらすことが示されているリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に浸漬し、次に、各被験者の前鼻孔を拭き取るために使用した。三回、鼻骨まで、スワブを各鼻孔の周りを回転させた。スワブからの微生物のコロニー形成単位は、血液寒天培地およびマンニトール塩寒天上における菌数により測定した。前鼻孔は、次に、GMLゲルに一回浸漬したスワブを用いて、同じ方法で処理した。最大24時間までの指定された期間で、各被験者の前鼻孔を拭き取り、スワブをS.aureusおよびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌について培養した。
【0138】
この試験から得られたデータを、
図22に示す。三名の被験者中に存在するCFUの高い変動性のために、統計を行う前に、データをログへ変換した。三人の被験者の左右の前鼻孔は、それぞれ、GML処理の前に、平均1.6または1.5のログCFU/mLのS.aureusを含んでいた。GML処理は、24時間後を含む処理後の全ての試験された時点において、両方の鼻孔中のS.aureusカウントを0CFU/mLまで有意に低減した(スチューデントt検定分析により、p<0.05)。三名の被験者の左右の前鼻孔は、それぞれ、GML処理の前に、平均3.9および3.8のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌のログCFU/mLを含んでいた。GML処理は、24時間後を含む処理後の4時間後以降の試験した時点で、両方の鼻孔中のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌数を有意に低減した(p<0.05)。
【0139】
一人の被験者について、S.aureusおよびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の低減されたCFUの持続性を、3日間試験した。S.aureusカウントは、試験した期間の三日間全体の間、0のままであった。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌のCFUも、期間全体で低いままであった(最初は、右および左の鼻孔中に、それぞれ560および880CFU/mL存在した;3日後、右および左の鼻孔中で、それぞれ8および0CFU/mLのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が検出された;データは示さず)。
【0140】
次に、5%GMLゲルは、口腔好気性細菌の歯をコロニー分離することができるかどうかを評価するために、試験を行った。ヒト被験者を、口の左側の歯および歯茎線全体をPBS−飽和させたスワブで消毒し、血液寒天プレート上でその後増殖させた総細菌のCFU/mLについて試験した。次に、口の右側の歯および歯茎線全体をゲルで拭き取ることにより、GMLゲルで同じ個人を消毒した。歯および歯茎線の全表面を被覆するために、十分なゲルを使用した。処理から30分後、被験者は、右側をPBS飽和させたスワブで拭き取り、総CFU/mLを測定した。
【0141】
単純に最初のスワブによる細菌の除去により、得られたデータは差が認められなかったことを確認するために、処理前後のスワブについて、歯および歯茎線の異なる側を使用した。歯および歯茎線の両側の細菌数は、ほぼ等しくなることが推定され、試験前のスワブは、このような場合であることを確認した。
【0142】
試験結果を
図23に示す。被験者間のCFU/mLにおける高い変動性を考慮するために、データをログ変換した。処理前のスワブおよび処理後のスワブの間のCFUにおいて、5ログ超の減少が存在し、GMLが歯に付着している主に口腔内連鎖球菌である細菌を殺したことを示している。GMLは菌数を減らすのに有効であったので、データはまた、GMLゲルが、歯の上に存在することが予想される生物膜中の細菌を除去および/または殺すのに有効であることも示唆していた。データは、スチューデントt検定分析では、非常に有意に(p<0.001)異なっていた。
【0143】
最後の試験において、S.aureus株MN8(1×10
10CFU)を、群当たり三羽のウサギの外科的切開部位を被覆するために使用した。外科的切開部位は、4つの絹縫合糸(Ethicon、コーネリア、ジョージア州)を用いて閉じられた4cmの皮下切開であった。閉じた後、GML5%重量/体積非水性ゲルを、三匹の動物の切開部位上につけ、PBSを対照動物の切開部位へつけた。表面の均一な被覆を提供するために、十分なGMLゲルをつけた。24時間後、感染(切開部位における赤みによって決定)、およびPBS飽和させたスワブで切開部位を拭くことにより得られた総CFU/mLについてウサギを試験した。
【0144】
試験の結果を
図24および25に示す。PBSを用いて拭いたウサギは、24時間経過後、平均8.8ログCFU/mLのS.aureusを有しており(
図24)、手術部位で明らかな炎症を有していた(
図25)。対照的に、GMLで処理したウサギは、24時間経過後に全くCFUは検出されず(
図24;ログ変換データのスチューデントt検定分析によりp<<0.001)、手術部位での感染はほとんどなかった(
図25)。
【0145】
まとめると、本試験で示されたデータは、5%のGML非水性ゲルは、潜在的病原体によるヒトの鼻孔および口腔ならびにウサギの外科的切開部位のコロニー形成を減少させるために、効果的に使用できることを示した。
【0146】
実施例11:膣感染におけるGMLの臨床効果
以下の予言的実施例は、BVまたはVVCの治療のための、GML、植物油、および薬学的に許容される局所用担体を含む組成物の相対的有効性が決定される提案された臨床試験を提供する。この予言的実施例は、本発明の原理を例示することを意図する。
【0147】
試験設計は、60名の被験者、治療群当たり20名の被験者の単一施設二重盲検試験、である。被験者は膣感染症の種類(BV、VVCまたは両方)および年齢に基づいて、層別化する。
【0148】
試験被験者は、インフォームドコンセントに署名した、BVまたはVVCの(スクリーニング来院時に行った婦人科の試験により決定される)18〜50歳の女性である。妊娠中の女性、月経中の女性、およびそれまでの4週間以内に、全身感染症を有していた、または、膣抗微生物薬、抗炎症薬または免疫抑制薬を使用していた女性は除外される。
【0149】
試験のエンドポイントおよび治療の評価:膣スワブを、ベースライン来院時に収集する。被験者は、2日間、12時間ごとに以下の:オリーブ油中、0%(ビヒクル対照)、0.5%、または5%GMLのいずれか一つを全部で四回投与で膣に自己投与する。膣スワブを試験薬またはビヒクル対照を最終投与してから12および48時間後に収集する。コロニー形成単位(CFU)は、Lactobacillus、G.vaginalisおよびCandidaについて、ベースラインおよび治療後のフォローアップの膣スワブ上で測定する。被験者はその後3ヶ月間、臨床所見と日和見感染を含む、全ての有害事象について記録される。
【0150】
提案した試験の結果は、BVまたはVVCの治療のための臨床プロトコルの開発に使用されるものとする。
【0151】
実施例12:尿路感染症におけるGMLの臨床使用
以下の予言的実施例は、本明細書に開示の製剤が示されている状況を説明することを意図している。
【0152】
尿路感染症の危険性のある被験者(例えば、女性や高齢者)は、スポンジへ50μg/mLGMLを含む組成物を塗布し、次に、尿路口または穴の領域へ該スポンジを適用することができる。組成物は、尿路感染症を予防するために、一日一回適用してもよい。組成物は、EDTAおよび/または非水性ゲルなどの促進剤を追加的に含むことができる。
【0153】
実施例13:蜂巣炎におけるGMLの臨床使用
以下の予言的実施例は、本明細書に開示の製剤が示されている状況を説明することを意図している。
【0154】
蜂巣炎と診断された被験者は、感染症が解決されるまで、薬学的に許容される局所用担体中5μg/mLGMLおよび25%非水性ゲルを含む組成物を、一日に二回、皮膚の感染部位へ、局所的に自己投与することができる。医学的に示されている場合、患者はまた、抗菌剤を投与されうる。
【0155】
本出願を通じて引用されている、全ての文書、特許、特許出願、出版物、製品説明およびプロトコルは、全ての目的について、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0156】
本明細書に示され、説明されている実施形態は、本発明を製造および使用させるために発明者へ知られている最良の方法を当業者へ教示することのみを意図している。上記の教示に照らして当業者に理解されるように、本発明から逸脱することなく、本発明の上記の実施形態の修正および変形が可能である。したがって、特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明を具体的に説明した以外の方法で実施することができる。