特許第6353451号(P6353451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353451
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】マイクロ化学チップ及び反応装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20180625BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20180625BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20180625BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20180625BHJP
   B81C 3/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   G01N35/08 A
   G01N37/00 101
   B01J19/00 321
   B81B1/00
   B81C3/00
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-532671(P2015-532671)
(86)(22)【出願日】2013年8月23日
(86)【国際出願番号】JP2013072590
(87)【国際公開番号】WO2015025424
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】595015890
【氏名又は名称】株式会社朝日FR研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】特許業務法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 和久
(72)【発明者】
【氏名】高野 努
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−014407(JP,A)
【文献】 特開2008−019348(JP,A)
【文献】 特開2012−194015(JP,A)
【文献】 特開2009−115692(JP,A)
【文献】 特開2005−111567(JP,A)
【文献】 特開2005−186033(JP,A)
【文献】 特開2011−133402(JP,A)
【文献】 特開2005−199394(JP,A)
【文献】 特開2006−187730(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0199260(US,A1)
【文献】 特開2010−082540(JP,A)
【文献】 特開2006−178730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
B01J 19/00
B81B 1/00
B81C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体及び試薬から選ばれる流動試料を加圧して流し込み化学反応させる流路がゴムシートを貫通しており、金属、セラミックス、ガラス、及び樹脂から選ばれる基材シートの間に該ゴムシートが挟まれつつ表裏面でN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及び3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも一種のアミノ基及びアルコキシ基を有するシランカップリング剤の複数の官能基と該基材シートの活性基及び該ゴムシートの活性基との、該シランカップリング剤の分子を介した共有結合により該基材シートと接合しており、該共有結合が、該活性基と、第1の該シランカップリング剤の分子とが反応したもの、及び更に別な該活性基への反応が増えた第2の該シランカップリング剤の分子とが反応したものであり、流路に該流動試料を注入する穴と流し込まれた該流動試料を排出する穴とが該基材シートに開いていて、該活性基が水酸基、カルボニル基、及びカルボキシル基から選ばれることを特徴とするマイクロ化学チップ。
【請求項2】
該ゴムシート及び/又は該基材シートの接合面、活性化処理面であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ化学チップ。
【請求項3】
該基材シートに挟まれた該ゴムシートが、複数積層していることを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載のマイクロ化学チップ。
【請求項4】
最外の該基材シートが板状のホルダーで挟まれ該流動試料を遺漏不能にして該ゴムシートごと固定していることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載のマイクロ化学チップ。
【請求項5】
該ゴムシートが、シリコーンゴムで形成されていることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載のマイクロ化学チップ。
【請求項6】
該基材シートが、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種類の該樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のマイクロ化学チップ。
【請求項7】
該ゴムシートが、少なくとも該流路の壁面でコーティングされていることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載のマイクロ化学チップ。
【請求項8】
検体及び試薬から選ばれる流動試料を加圧して流し込み化学反応させる流路を、ゴムシートに貫通させて形成する流路形成工程、
金属、セラミックス、ガラス、及び樹脂から選ばれる基材シートに、該流路に該流動試料を導入する穴と、流し込まれた該流動試料を排出する穴とを形成する開口工程、
該ゴムシートを、該基材シートの間に挟みつつ、該基材シートをN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及び3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも一種のアミノ基及びアルコキシ基を有するシランカップリング剤で処理し乾燥した後に該シランカップリング剤で再度処理し乾燥することによるそれらの表裏面での該シランカップリング剤の分子の介在の共有結合により、該基材シートに接合させる接合工程を、
有することにより、マイクロ化学チップを製造する方法。
【請求項9】
ゴムシートを、該基材シートの間減圧下で挟みつつ、該共有結合により、該基材シートに接合させることを特徴とする請求項に記載のマイクロ化学チップを製造する方法。
【請求項10】
該ゴムシートを、該基材シートの間に減圧下及び/又は加圧下で挟み、該共有結合により、該基材シートに接合させることを特徴とする請求項8に記載のマイクロ化学チップを製造する方法。
【請求項11】
該ゴムシートを、該基材シートの間に、減圧下で挟みそれに引き続く加圧下及び/又は加熱下で挟み、該共有結合により、該基材シートに接合させることを特徴とする請求項8に記載のマイクロ化学チップを製造する方法。
【請求項12】
シリコーンゴム又は非シリコーンゴムで形成された該ゴムシートと、該基材シートとが、それらの接合面の少なくとも何れかで、コロナ放電処理、プラズマ処理及び/又は紫外線照射処理によって活性化されており、該シランカップリング剤を介した該共有結合により、接合していることを特徴とする請求項8に記載のマイクロ化学チップを製造する方法。
【請求項13】
検体及び試薬から選ばれる流動試料を加圧して流し込み化学反応させる流路がゴムシートを貫通しており、金属、セラミックス、ガラス、及び樹脂から選ばれる基材シートの間に該ゴムシートが挟まれつつ表裏面でN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及び3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも一種のアミノ基及びアルコキシ基を有するシランカップリング剤の複数の官能基と該基材シートの活性基及び該ゴムシートの活性基との、該シランカップリング剤の分子を介した共有結合により該基材シートと接合しており、該共有結合が、該活性基と、第1の該シランカップリング剤の分子とが反応したもの、及び更に別な該活性基への反応が増えた第2の該シランカップリング剤の分子とが反応したものであり、該流路に該流動試料を注入する穴と流し込まれた該流動試料を排出する穴とが該基材シートに開いていて、該活性基が水酸基、カルボニル基、及びカルボキシル基から選ばれるマイクロ化学チップと、
該流動試料を注入する穴に接続されて該流動試料を注入してから加圧して該流路に流し込む加圧器と、
該マイクロ化学チップを装着する装置本体とを、
備えていることを特徴とする反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体由来検体を被験物としそのバイオ成分を微量分析するための分析装置や、薬理作用を示すバイオ成分等の有用物質を化学的に微量合成するためのマイクロリアクターのような反応装置に装着して用いられるマイクロ化学チップに関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿などの生体由来検体である被験物をμlオーダーの微量だけ用いて、酵素の特異的基質選択性を利用し、検体中の基質と作用する酵素反応量やその基質量を酵素又は基質で発色する試薬による着色程度で定量するのに、マイクロバイオチップが用いられている。また、酵素含有膜を用い酵素反応量を電極で電気信号に変換して基質量を定量したりする分析や、DNA抽出・そのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅や、イオン濃度測定や、核酸、糖、タンパク質又はペプチドの微量合成などをμMオーダーで行う際に、マイクロリアクターチップが用いられている。
【0003】
このマイクロバイオチップやマイクロリアクターチップなどのマイクロ化学チップは、検体や試薬を加圧して送り込み流動させて混合、反応、分離、検出するための反応チャンネルとして、溝状の微細流路を有している。従来のマイクロ化学チップは、ステンレス基材、シリコン基材、石英基材、ガラス基材である無機基材、又は樹脂基材、ゴム基材である有機基材に、数10〜数100μmの微細流路を切削やエッチングで形成したものである。
【0004】
ステンレス基材、シリコン基材又は石英基材で形成されたマイクロ化学チップは、その素材が硬いために、基材同士を接合しても変形し難い反面、微細流路を切削加工し難いために、大量生産できず高価で、汎用性に欠ける。ガラス基材で形成されたマイクロ化学チップは、ガラス基材原材表面に、クロムのような金属とフォトレジストとを順次コーティングし、フォトレジストを露光してマイクロチャネルのパターンに焼き付けた後に、フォトレジストの現像、フッ酸によるケミカルエッチング、フォトレジストの除去という面倒な工程を経なければならず、微細流路を精密に形成し難く、煩雑で大量生産に向かない。
【0005】
一方、有機基材で形成されたマイクロ化学チップは、特許文献1のように、透明性の高いプラスチック樹脂で形成されたものである。樹脂基材やゴム基材は成形や切削加工が容易いので、それらを接着剤で貼付し又は熱融着して形成したマイクロ化学チップは、大量生産に適している。特に透明樹脂基材で形成されていると、光学系分析に便利である。
【0006】
有機基材で形成されたマイクロ化学チップは、水溶性の検体や、金属を溶解するフッ酸などの強酸又は水溶性薬剤のような試薬を用いる際にその有機基材が劣化し難いので、化学的に安定である。しかし、流路を形成した樹脂シート又はゴムシートを接着剤で貼付又は加熱融着するために接合強度が低く、検体や試薬を高圧で流路に流動させる際に、接着されている基材と基材とが圧力に耐えられなくなり剥離して破損し易く、物理的に弱い。微細で分岐した複雑なパターン形状の流路に、マイクロチップが破損しない程度の低圧で、検体や試薬を送り込んでも、流路終端まで確実に到達させ難い。流路が付された透明な樹脂シートを、接着剤で貼付し又は熱融着して作製したマイクロ化学チップは、接着剤介在や過熱のせいで、接着剤が流路にはみ出したり屈折率の変動や熱変形・歪みを惹き起したりして、精密な光学系分析に重要となる均質な透明性を流路上に確保し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−218611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、微量の生体由来検体のような貴重な検体や稀薄で微量の試薬を流動させる微細な流路が確実に形成され、それら流動試料を加圧して低温乃至高温で流動させても破損せず、精度良くかつ確実に所望通りに流路へ送り込むことができ、その検体中のバイオ成分等の有用物質を正確かつ簡便に短期間で分析したり反応させたりでき、歩留まり良く大量かつ均質に製造できる簡易で小型のマイクロ化学チップ、及びそれを用いた反応装置を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載のマイクロ化学チップは、検体及び試薬から選ばれる流動試料を加圧して流し込み化学反応させる流路がゴムシートを貫通しており、金属、セラミックス、ガラス、及び樹脂から選ばれる基材シートの間に該ゴムシートが挟まれつつ表裏面でN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及び3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも一種のアミノ基及びアルコキシ基を有するシランカップリング剤の複数の官能基と該基材シートの活性基及び該ゴムシートの活性基との、該シランカップリング剤の分子を介した共有結合により該基材シートと接合しており、該共有結合が、該活性基と、第1の該シランカップリング剤の分子とが反応したもの、及び更に別な該活性基への反応が増えた第2の該シランカップリング剤の分子とが反応したものであり、流路に該流動試料を注入する穴と流し込まれた該流動試料を排出する穴とが該基材シートに開いていて、該活性基が水酸基、カルボニル基、及びカルボキシル基から選ばれることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のマイクロ化学チップは、請求項1に記載されたもので、該ゴムシート及び/又は該基材シートの接合面、活性化処理面であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載のマイクロ化学チップは、請求項1〜2の何れかに記載されたもので、該基材シートに挟まれた該ゴムシートが、複数積層していることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載のマイクロ化学チップは、請求項1〜3の何れかに記載されたもので、最外の該基材シートが板状のホルダーで挟まれ該流動試料を遺漏不能にして該ゴムシートごと固定していることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載のマイクロ化学チップは、請求項1〜4の何れかに記載されたもので、該ゴムシートが、シリコーンゴムで形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載のマイクロ化学チップは、請求項1〜5の何れかに記載されたもので、該基材シートが、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種類の該樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載のマイクロ化学チップは、請求項1〜6の何れかに記載されたもので、該ゴムシートが、少なくとも該流路の壁面でコーティングされていることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載のマイクロ化学チップを製造する方法は、検体及び試薬から選ばれる流動試料を加圧して流し込み化学反応させる流路を、ゴムシートに貫通させて形成する流路形成工程、金属、セラミックス、ガラス、及び樹脂から選ばれる基材シートに、該流路に該流動試料を導入する穴と、流し込まれた該流動試料を排出する穴とを形成する開口工程、該ゴムシートを、該基材シートの間に挟みつつ、該基材シートをN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及び3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも一種のアミノ基及びアルコキシ基を有するシランカップリング剤で処理し乾燥した後に該シランカップリング剤で再度処理し乾燥することによるそれらの表裏面での該シランカップリング剤の分子の介在の共有結合により、該基材シートに接合させる接合工程を、有することにより、マイクロ化学チップを製造する。
【0017】
請求項9に記載のマイクロ化学チップを製造する方法は、請求項に記載されたもので、該ゴムシート、該基材シートの間に減圧下で挟みつつ、共有結合により、該基材シートに接合させることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載のマイクロ化学チップを製造する方法は、請求項に記載されたもので、該ゴムシートを、該基材シートの間に減圧下及び/又は加圧下で挟み、該共有結合により、該基材シートに接合させることを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載のマイクロ化学チップを製造する方法は、請求項に記載されたもので、該ゴムシートを、該基材シートの間に、減圧下で挟みそれに引き続く加圧下及び/又は加熱下で挟み、該共有結合により、該基材シートに接合させることを特徴とする。
【0020】
請求項12に記載のマイクロ化学チップを製造する方法は、請求項8に記載されたもので、シリコーンゴム又は非シリコーンゴムで形成された該ゴムシートと、該基材シートとが、それらの接合面の少なくとも何れかで、コロナ放電処理、プラズマ処理及び/又は紫外線照射処理によって活性化されており、該シランカップリング剤を介した該共有結合により、接合していることを特徴とする。
【0021】
イクロ化学チップは、シリコーンゴムで形成された該ゴムシートと、該基材シートとが、それらの接合面の少なくとも何れかで、コロナ放電処理、プラズマ処理及び/又は紫外線照射処理によって活性化されており、化学結合により、直接、接合していてもよい
【0022】
請求項13に記載の反応装置は、検体及び試薬から選ばれる流動試料を加圧して流し込み化学反応させる流路がゴムシートを貫通しており、金属、セラミックス、ガラス、及び樹脂から選ばれる基材シートの間に該ゴムシートが挟まれつつ表裏面でN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及び3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも一種のアミノ基及びアルコキシ基を有するシランカップリング剤の複数の官能基と該基材シートの活性基及び該ゴムシートの活性基との、該シランカップリング剤の分子を介した共有結合により該基材シートと接合しており、該共有結合が、該活性基と、第1の該シランカップリング剤の分子とが反応したもの、及び更に別な該活性基への反応が増えた第2の該シランカップリング剤の分子とが反応したものであり、該流路に該流動試料を注入する穴と流し込まれた該流動試料を排出する穴とが該基材シートに開いていて、該活性基が水酸基、カルボニル基、及びカルボキシル基から選ばれるマイクロ化学チップと、該流動試料を注入する穴に接続されて該流動試料を注入してから加圧して該流路に流し込む加圧器と、該マイクロ化学チップを装着する装置本体とを、備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のマイクロ化学チップは、直接的又はシランカップリング剤の1分子を介した間接的な化学的分子間結合による強固な接着で、ゴムシートと基材シートとがゴムシートの流路領域外の接合面で確りと接合している。そのため、微量の生体由来検体のような貴重な検体や稀薄で微量の試薬を漏らさずに加圧して流動させる微細な流路が、確実に形成されている。
【0024】
このマイクロ化学チップは、ゴムシートに直線や曲線を組み合わせた線状やその末端乃至途中で拡大したり集束又は分岐したりした複雑なパターン形状で0.5μm〜5mm幅の微細な流路が、精密に形成されている。そのような微細な流路を有していても、検体や試薬である流動体が加圧されて送り込まれその流路で流動する際に、ゴムシートと基材シートとが剥がれないので、このマイクロ化学チップが破損しない。
【0025】
このマイクロ化学チップは、微細な流路に常圧〜5気圧程度の圧力で、液状又はガス状の検体や試薬である流動体を送り込んでも、氷冷下〜80℃程度、汎用的には20〜80℃程度の低温乃至高温の温度範囲で加熱冷却を繰り返しながら検体や試薬を送り込んでも、ゴムシートの弾性により流路が破損しない。
【0026】
このマイクロ化学チップによれば、検体や試薬を確実かつ精度良く所望の流路へ送り込むことができる。その結果、その検体中のバイオ成分等の有用物質を正確かつ簡便に短期間で分析したり反応させたりできる。
【0027】
このマイクロ化学チップは、ゴムシートの流路を微細にして、検体や試薬とゴムシートとの接触を可能な限り抑え、検体や試薬の汚染や吸着を防止することができる。
【0028】
このようなマイクロ化学チップは、ディスポーザブルで用いられる場合、別な検体や試薬の混入による汚染の恐れが無く、信頼性のある結果を得ることができるものである。
【0029】
このマイクロ化学チップは、外形が数mm〜十数cm四方で極めて小型であり簡易な構造である。このマイクロ化学チップは、小型でも多数の直列、並列又は分岐した流路を備え、注入口や排出口を多数設けて、複数の反応過程を直列又は並列に経る多機能にすることができる。そのため大掛かりな分析装置などを用いなくてもポータブルの分析装置を用いて、屋内のみならず屋外でも迅速に複数種の定性・定量分析を行うことができる。さらに、マイクロ化学チップに用いられる分析試薬や反応試薬は極微量で済むうえ、フラスコや試験管での分析や反応に比べて廃液量が格段に少なくなるので、環境保全に資する。
【0030】
本発明のマイクロ化学チップを製造する方法によれば、フォトレジストを用いて現像したりエッチングしたりしなくとも、微細な流路をゴムシートにレーザー加工等の簡便な手法で形成できる。ゴムシートと基材シートとが、その流路領域外で、接触によってエーテル結合である化学的分子間結合を直接形成したり、シランカップリング剤の塗布・噴霧・浸漬によってその1分子を介した間接的な共有結合、水素結合及び/又は静電引力による相互作用である化学的分子間結合を形成したりして、簡便に、接着剤よりも遥かに強力に接合する。このような分子接着は、熱可塑性樹脂を熱融着させる程の高温の加熱を必要とせず、熱融着温度未満で短時間加熱すれば、充分に惹き起される。そのため、光学的分析の精度を妨げる屈折率の変動や熱変形・歪みを生じない。
【0031】
この製造方法は、極めて簡便であり、短工程で、高品質で均質なマイクロ化学チップを歩留まり良く安価で大量に製造できる。
【0032】
本発明の反応装置は、装置本体に装着されるマイクロ化学チップにより、微量の生体由来検体のような貴重な検体や稀薄で微量の試薬に含まれるバイオ成分等の有用物質を、正確かつ簡便に短期間で微量分析したり、微量合成したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明を適用するマイクロ化学チップの製造途中を示す模式的な斜視図である。
図2】本発明を適用する別なマイクロ化学チップの製造途中を示す模式的な斜視図である。
図3】本発明を適用するマイクロ化学チップの使用状態を示す斜視図である。
図4】本発明の適用する実施例3のマイクロ化学チップの製造途中を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための好ましい形態の例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0035】
本発明を適用するマイクロ化学チップ1の一例は、それの製造途中を示す図1の通り、カバー用の金属基材シート10と、底面支持用の金属基材シート30との間に、ゴムシート20が、重ね合わされた可撓性のものである。
【0036】
ゴムシート20に、液状又はガス状の検体や試薬である流動試料を加圧して流し込み化学反応させる溝状の流路26が、表裏を貫通して形成されている。流路26は、始点末端である流動試料注入部位21a・21bからそれぞれ延びて下流で合流し、そこから流動試料排出部位22aへ延びる支流と、流動試料排出部位22b及び22cへ延びる本流とに分岐して、本流がその下流で終点末端である流動試料排出部位22b及び22cへ延びて分岐したものである。ゴムシート20の上面24と下面25とは、流路26領域外で、その表面が活性化されている。
【0037】
ゴムシート20に重なる同じ大きさのカバー用の基材シート10に、流動試料注入部位21a・21bと流動試料排出部位22a・22b・22cとに対応する位置で、それぞれ流動試料注入穴11a・11bと流動試料排出穴12a・12b・12cとが、開いている。ゴムシート20へ向いたカバー用の基材シート10の下面15は、流動試料注入穴11a・11bと流動試料排出穴12a・12b・12cとの領域外で、その表面が活性化されている。
【0038】
ゴムシート20へ向いた底面支持用の基材シート30の上面34は、その表面の全面が活性化されている。
【0039】
基材シート10・30とゴムシート20との表面で、活性化されて生成し又は元来有する水酸基のような活性基同士が、脱水して強固な共有結合であるエーテル結合を生じ、又はシランカップリング剤の分子中の複数の官能基を介して新たな共有結合を生じ、両シート同士を化学的に直接、接合している。
【0040】
ゴムシート20は、シリコーンゴムの他、非シリコーンゴムの何れで形成されていてもよい。ゴムシート20は、具体的には、主としてパーオキサイド架橋型シリコーンゴム、付加架橋型シリコーンゴム、縮合架橋型シリコーンゴムで例示されるシリコーンゴム、これらのシリコーンゴムとオレフィン系ゴムとの共ブレンド物で例示される三次元化シリコーンゴム、又は非シリコーンゴムを、成形金型等に入れ又は延伸して、必要に応じ架橋させることにより、製造されたシリコーンゴム弾性シートである。これらゴム素材は、平均数分子量で1万〜100万のものである。
【0041】
ゴムシート20の素材のパーオキサイド架橋型シリコーンゴムは、パーオキサイド系架橋剤で架橋できるシリコーン原料化合物を用いて合成されたものであれば特に限定されないが、具体的には、ポリジメチルシロキサン、ビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端トリフロロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフロロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサン、メタアクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、アクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、(メタアクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0042】
共存させるパーオキサイド系架橋剤として、例えばケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類が挙げられ、より具体的には、ケトンパーオキサイド、ペルオキシケタール、ヒドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ペルオキシカルボナート、ペルオキシエステル、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジt−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ(ジシクロベンゾイル)パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン、ベンゾフェノン、ミヒラアーケトン、ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ベンゾインエチルエーテルが挙げられる。
【0043】
パーオキサイド系架橋剤の使用量は、得られるシリコーンゴムの種類や、そのシリコーンゴムで成形されたゴムシート20の性質や、必要に応じて使用されるシランカップリング剤の性質に応じて適宜選択されるが、シリコーンゴム100質量部に対し、0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜2質量部用いられることが好ましい。この範囲よりも少ないと、架橋度が低すぎてシリコーンゴムとして使用できない。一方、この範囲よりも多いと、架橋度が高すぎてシリコーンゴムの弾性が低減してしまう。
【0044】
ゴムシート20の素材の付加型シリコーンゴムは、Pt触媒存在下で合成したビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端トリフロロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフロロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサンなどのビニル基含有ポリシロキサンと、H末端ポリシロキサン、メチルHシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルHシロキサン、ポリエチルHシロキサン、H末端ポリフェニル(ジメチルHシロキシ)シロキサン、メチルHシロキサン/フェニルメチルシロキサンコポリマー、メチルHシロキサン/オクチルメチルシロキサンコポリマーで例示されるH基含有ポリシロキサンの組成物、
アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、アミノプロピルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノイソブチルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノプロピルメトキシシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルアミノ末端ポリジメチルシロキサンで例示されるアミノ基含有ポリシロキサンと、エポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーで例示されるエポキシ基含有ポリシロキサン、琥珀酸無水物末端ポリジメチルシロキサンで例示される酸無水物基含有ポリシロキサン及びトルイルジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートなどのイソシアナート基含有化合物との組成物から得られるものである。
【0045】
これらの組成物からゴムシート20を作製する加工条件は、付加反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0〜200℃で、1分間〜24時間加熱するというものである。これによりゴムシート20として付加型シリコーンゴムが得られる。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して、行われる。
【0046】
ゴムシート20の素材の縮合型シリコーンゴムは、スズ系触媒の存在下で合成されたシラノール末端ポリジメチルシロキサン、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール末端ポリトリフロロメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーで例示されるシラノール基末端ポリシロキサンからなる単独縮合成分の組成物、
これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、テトラアセトキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、ジt−ブトキシジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエノキシメチルシラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、テトラ−n−プロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、ビニルトリイソプロペノイキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリ(エチルメチル)オキシムメチルシラン、ビス(N−メチルベンゾアミド)エトキシメチルシラン、トリス(シクロヘキシルアミノ)メチルシラン、トリアセトアミドメチルシラン、トリジメチルアミノメチルシランで例示される架橋剤との組成物、
これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、クロル末端ポリジメチルシロキサン、ジアセトキシメチル末端ポリジメチルシロキサン、末端ポリシロキサンで例示される末端ブロックポリシロキサンの組成物から得られるものである。
【0047】
これらの組成物から縮合型シリコーンゴムを調製する加工条件は、縮合反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0〜100℃で、10分間〜24時間加熱するというものである。これによりゴムシート20として縮合型シリコーンゴムが得られる。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して、行われる。
【0048】
ゴムシート20の素材のシリコーンゴムとオレフィン系ゴムとの共ブレンド物に用いられるオレフィン系ゴムは、1,4‐シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム、塩素化エチレンプロピレンゴム、塩素化ブチルゴムが挙げられる。
【0049】
ゴムシート20の素材の非シリコーンゴムとして、天然ゴム、1,4−シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリクロロプレン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、水素添加スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、水素添加アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム、エチレンオキサイド−エピクロロヒドリン共重合体ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、クロロプレンゴム、塩素化アクリルゴム、臭素化アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンとその共重合ゴム、塩素化エチレンプロピレンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムテトラフロロエチレン、ヘキサフロロプピレン、フッ化ビニリデン及びテトラフルオロロエチレンなどの単独重合体ゴム及びこれらの二元及び三元共重合体ゴム、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴム、プロピレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴム、エチレンアクリルゴム、エポキシゴム、ウレタンゴム、両末端不飽和基エラストマー等の線状重合体で例示される原料ゴム状物質の配合物を架橋させたものが挙げられる。これらは単独で用いられても複数混合して用いられてもよい。
【0050】
ゴムシート20の素材は、中でもシリコーンゴムであることが好ましい。
【0051】
ゴムシート20の流路26は、幅が0.5μm〜5mm、好ましくは10〜1000μmであり、その形状が特に限定されず、連続線状及び/又は分岐線状で直線・曲線の何れでもよく、単数又は複数並列して設けられていてもよい。ゴムシート20の厚さは、5〜100μmであることが好ましい。流路26は、幅が狭く、ゴムシート20の厚さが薄いので、検体や試薬とゴムシートとの接触面積を最小限に抑えることができ、ゴムシートからのゴム成分の遺漏による検体や試薬の汚染、ゴム成分への吸着を防止することができる。ゴムシート20は、少なくとも流路26の壁面27が、検体や試薬を汚染したり吸着したりしないように、非反応性樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂のようなフッ素樹脂、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマーのようなリン酸系樹脂、パリレンのようなパラキシリレン樹脂でコーティング又は蒸着され、又は非反応性無機物、例えば二酸化チタンや二酸化ケイ素のような無機物で蒸着されていると、ゴムシートと検体や試薬との接触が完全に避けられるので、検体や試薬の汚染や吸着がより一層防止できる。
【0052】
基材シート10・30は、金属の他、セラミックス、ガラス、樹脂で形成されたもので、単一の板状、薄層状に形成されていてもよく、これらがラミネート加工されていてもよい。基材シート10・30は、検体や試薬に対し比較的安定であるが、検体や試薬に接する部位が、樹脂で形成され、コーティングされ、又はラミネート加工されていることが好ましい。
【0053】
基材シート10・30を成す金属は、金、銀、銅、鉄、コバルト、シリコーン、鉛、マンガン、タングステン、タンタル、白金、カドミウム、スズ、パラジウム、ニッケル、クロム、チタン、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムで例示される金属、これら金属の二元、三元及び多元合金が挙げられる。
【0054】
基材シート10・30を成すセラミックスは、銀、銅、鉄、コバルト、シリコーン、鉛、マンガン、タングステン、タンタル、白金、カドミウム、スズ、パラジウム、ニッケル、クロム、インジウム、チタン、亜鉛、カルシウム、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどの金属の酸化物、窒化物、及び炭化物、それらの単体又は複合体が挙げられる。
【0055】
基材シート10・30を成すガラスは、石英、硼珪酸ガラス、無アルカリガラスが挙げられる。
【0056】
基材シート10・30を成す樹脂は、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブテレンテレフタレート樹脂、セルロース及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、二酢酸セルロース、表面ケン化酢酸ビニル樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、i−ポリプロピレン、石油樹脂、ポリスチレン、s‐ポリスチレン、クロマン・インデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、ABS樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリシアノアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・エチレン共重合体、フッ化ビニリデン・プロピレン共重合体、1,4‐トランスポリブタジエン、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・フォルマリン樹脂、レゾルシン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グリプタル樹脂、変性グリプタル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリルエステル樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ケイ素樹脂、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリジメチルフェニレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイドまたはポリジメチルフェニレンオキサイドとトリアリルイソシアヌルブレンド物、(ポリフェニレンオキサイドまたはポリジメチルフェニレンオキサイド、トリアリルイソシアヌル、パーオキサイド)ブレンド物、ポリキシレン、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PPI、カプトン)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液晶樹脂、ケブラー繊維、炭素繊維とこれら複数材料のブレンド物で例示される高分子材料、その架橋物が挙げられる。
【0057】
基材シート10・30とゴムシート20との接合面を人為的に活性化する場合、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理の活性化処理が施されることによって活性化する。
【0058】
金属、セラミックス又はガラス製基材シート10・30と、シリコーンゴム製ゴムシート20とは、それぞれ活性化処置されて生じた活性基例えば水酸基同士が、脱水して生成したエーテル結合によって、強固に接合している。両者の積層だけでエーテル結合し得るほど水酸基等の活性基が予め十分に露出できている場合これら活性化処理が施されていなくてもよい。
【0059】
基材シート10・30とゴムシート20とが、エーテル結合を介して直接的に接合している例を示したが、シランカップリング剤を介した共有結合や水素結合のような化学結合によって間接的に接合していてもよい。この場合、シランカップリング剤の1分子が基材シート10・30とゴムシート20とに介在して化学結合を形成することができる。例えば、シリコーンゴム又は非シリコーンゴム製ゴムシート20と、金属、セラミックス、ガラス又は樹脂製の基材シート10・30とが、それらの接合面の少なくとも何れかで、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理によって活性化されており、アミノ基、及び/又は炭素数1〜4のアルコキシ基若しくはそれと同様に水酸基と反応してエーテル基を生成し得る加水分解性でアルコキシ基等価基を、有するシランカップリング剤を介した該化学結合により、接合している。
【0060】
このアルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤として、市販のシランカップリング剤、具体的にはビニルトリメトキシシラン(KBM−1003)、ビニルトリエトキシシラン(KBE−1003)で例示されるビニル基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM−303)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−402)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403)、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE−402)、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBE−403)で例示されるエポキシ基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;p−スチリルトリメトキシシラン(KBM−1403)で例示されるスチリル基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−502)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE−502)、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE−503)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103)で例示される(メタ)アクリル基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(KBE−585)で例示されるウレイド基及びアルコキシ含有シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−802)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803)で例示されるメルカプト基及びアルコキシ含有シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(KBE−846)で例示されるスルフィド基及びアルコキシ含有シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE−9007)で例示されるイソシアネート基及びアルコキシ含有シランカップリング剤(以上、何れも信越シリコーン株式会社製;商品名)が挙げられ、またビニルトリアセトキシシラン(Z−6075)で例示されるビニル基及びアセトキシ含有シランカップリング剤;アリルトリメトキシシラン(Z−6825)で例示されるアリル基及びアルコキシ含有シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン(Z−6366)、ジメチルジメトキシシラン(Z−6329)、トリメチルメトキシシラン(Z−6013)、メチルトリエトキシシラン(Z−6383)、メチルトリフェノキシシラン(Z−6721)、エチルトリメトキシシラン(Z−6321)、n−プロピルトリメトキシシラン(Z−6265)、ジイソプロピルジメトキシシラン(Z−6258)、イソブチルトリメトキシシラン(Z−2306)、ジイソブチルジメトキシシラン(Z−6275)、イソブチルトリエトキシシラン(Z−6403)、n−ヘキシトリメトキシシラン(Z−6583)、n−ヘキシトリエトキシシラン(Z−6586)、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(Z−6187)、n−オクチルトリエトキシシラン(Z−6341)、n−デシルトリメトキシシラン(Z−6210)で例示されるアルキル基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン(Z−6124)で例示されるアリール基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;n−オクチルジメチルクロロシラン(ACS−8)で例示されるアルキル基及びクロロシラン基含有シランカップリング剤;テトラエトキシシラン(Z−6697)で例示されるアルコキシシランであるシランカップリング剤(以上、何れも東レ・ダウコーニング株式会社製;商品名)が挙げられる。
【0061】
アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤は、ヒドロシリル基(SiH基)含有アルコキシシリル化合物、例えば、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(i-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)H
(n-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
(n-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(t-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
CH3O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(n-C3H7)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(i-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(n-C4H9)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(t-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(CH3O)2CH3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
CH3O(CH3)2SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C6H4OC6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C2H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p1Si(CH3)2H、
C2H5O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p2Si(C2H5)2H、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p3Si(CH3)2H、
(CH3)3SiOSiH(CH3)O[SiH(CH3)O]p4Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p5Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSiOCH3CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p6Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p7Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OC2H5)2CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p8Si(CH3)3
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(CH3)O]p9[Si(CH3)2O]q1Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5Osi(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]p10[Si(CH3)2O]q2Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]p11[Si(CH3)2O]q3Si(CH3)3
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(C2H5)O]p12Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OC2H5)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]p13Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]p14Si(CH3)3
C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]p15Si(CH3)2H、
Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]p16Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p17Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p18Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p19Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p20Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p21Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p22Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p23Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p24Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p25Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p26Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p27Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p28Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p29Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p30Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p31Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p32Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p33Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p34Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p35Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(CH3O)Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]p36[HSi(CH3)2OSiC6H5O]q4Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]p37[HSi(CH3)2OSiC6H5O]q5Si(CH3)2H、
C2H5O(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p38[SiCH3(C6H5)O]q6Si(CH3)2H、
Si(OC2H5)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p39[SiCH3(C6H5)O]q7Si(CH3)2H、
C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p40[SiCH3(C6H5)O]q8Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO(C2H5O)Si(CH3)O[SiH(CH3)O]p41[SiCH3(C6H5)O]q9Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[Si(OC2H5)3CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]p42[SiCH3(C6H5)O]q10Si(CH3)2H
であってもよい。これらの基中、p1〜p42及びq1〜q10は1〜100までの数である。一つの分子に、ヒドロシリル基を、1〜99個有していることが好ましい。
【0062】
アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤は、ヒドロシリル基を含有するアルコキシシリル化合物、例えば、
(C2H5O)3SiCH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2(CH2)7CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)OSi(OC2H5)CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2C6H4CH=CH2
(CH3O)2Si(CH=CH2)O[SiOCH3(CH=CH2)O]t1Si(OCH3)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiOC2H5(CH=CH2)O]t2Si(OC2H5)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t3CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t4CH=CH2
CH3O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t5CH=CH2
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t6CH=CH、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t7CH=CH、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]u1Si(CH3)3CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]u2[Si(CH3)2O]t8Si(CH3)3CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiCH3(OC2H5)O]u3Si(OC2H5)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u4Si(OC2H5)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u5Si(OC2H5)2CH=CH2
が挙げられる。これらの基中、t1〜t8及びu1〜u5は1〜30までの数である。一つの分子に、ビニル基を、1〜30個有していることが好ましい。
【0063】
これらのビニル基とSiH基とを金属触媒、例えば白金含有化合物で反応促進し、基材シートとゴムシートとを接合してもよい。
【0064】
アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤として、アルコキシシリル基を両末端に含有するアルコキシシリル化合物、例えば、
(C2H5O)3SiCH2CH2Si(OC2H5)3
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2Si(OC2H5)3
(C2H5O)3SiCH=CHSi(OC2H5)3
(CH3O)3SiCH2CH2Si(OCH3)3(CH3O)3SiCH2CH2C6H4CH2CH2Si(OCH3)3
(CH3O)3Si[CH2CH2]3Si(OCH3)3
(CH3O)2Si[CH2CH2]4Si(OCH3)3
(C2H5O)2Si(OC2H5)2
(CH3O)2CH3SiCH2CH2Si(OCH3)2CH3
(C2H5O)2CH3SiOSi(OC2H5)2CH3
(CH3O)3SiO[Si(OCH3)2O]v1Si(OCH3)3
(C2H5O)3SiO[Si(OC2H5)2O]v2Si(OC2H5)3
(C3H7O)3SiO[Si(OC3H7)2O]v3Si(OC3H7)3
であってもよい。これらの基中、v1〜v3は0〜30までの数である。
【0065】
アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤として、加水分解性基含有シリル基を含有するアルコキシシリル化合物、例えば、
CH3Si(OCOCH3)3、(CH3)2Si(OCOCH3)2、n-C3H7Si(OCOCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCOCH3)3、C6H5Si(OCOCH3)3、CF3CF2CH2CH2Si(OCOCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCOCH3)3、CH3OSi(OCOCH3)3、C2H5OSi(OCOCH3)3、CH3Si(OCOC3H7)3、CH3Si[OC(CH3)=CH2]3、(CH3)2Si[OC(CH3)=CH2]3、n-C3H7Si[OC(CH3)=CH2]3、CH2=CHCH2Si[OC(CH3)=CH2]3、C6H5Si[OC(CH3)=CH2]3、CF3CF2CH2CH2Si[OC(CH3)=CH2]3、CH2=CHCH2Si[OC(CH3)=CH2]3、CH3OSi[OC(CH3)=CH2]3、C2H5OSi[OC(CH3)=CH2]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]3、(CH32Si[ON=C(CH3)C2H5]2、n-C3H7Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH2=CHCH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、C6H5Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CF3CF2CH2CH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH2=CHCH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH3OSi[ON=C(CH3)C2H5]3、C2H5OSi[ON=C(CH3)C2H5]]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH3Si[N(CH3)]3、(CH3)2Si[N(CH3)]2、n-C3H7Si[N(CH3)]3、CH2=CHCH2Si[N(CH3)]3、C6H5Si[N(CH3)]3、CF3CF2CH2CH2Si[N(CH3)]3、CH2=CHCH2Si[N(CH3)]3、CH3OSi[N(CH3)]3、C2H5OSi[N(CH3)]3、CH3Si[N(CH3)]3などの昜加水分解性オルガノシランであってもよい。
【0066】
このアルコキシ基を有するアミノ基含有のシランカップリング剤として、市販のシランカップリング剤、具体的にはN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−602)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−603)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−603)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903)、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン(KBE−9103)、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−573)、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(KBM−575)で例示されるアミノ基含有アルコキシシリル化合物(以上、信越シリコーン株式会社製;商品名)が挙げられ、また3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Z−6610)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Z−6611)、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(Z−6094)、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(Z−6883)、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N’−[(エテニルフェニル)メチル−1,2−エタンジアミン・塩酸塩(Z−6032)で例示されるアミノ基含有アルコキシシリル化合物(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製;商品名)が挙げられる。
【0067】
基材シート10・30が金属、セラミックス又はガラスで形成されており、ゴムシート20がシリコーンゴムで形成されている場合、両者は直接エーテル結合で接合されていることが好ましい。この場合、基材シート10・30とゴムシート20とがコロナ放電処理されてその表面で水酸基のような活性基を生じており、加圧又は減圧による圧着によって、基材シート10・30とゴムシート20とが、脱水してエーテル結合を形成している。
【0068】
基材シート10・30が金属、セラミックス又はガラスで形成されており、ゴムシート20が非シリコーンゴムで形成されている場合、両者はアルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤を介した酸素−炭素結合、炭素−炭素結合、酸素−珪素結合の共有結合で、接合されていることが好ましい。この場合、基材シート10・30とゴムシート20とがコロナ放電処理されてその表面で水酸基のような活性基を生じており、アルコキシ基又はアルコキシ基等価基と、必要に応じ不飽和基、エポキシ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基とを含有しアミノ基非含有のシランカップリング剤が付されていることによって、常圧・加圧又は減圧下で、常温又は加熱による圧着の際に、これら共有結合を形成している。
【0069】
基材シート10・30が樹脂で形成されており、ゴムシート20がシリコーンゴム又は非シリコーンゴムで形成されている場合、両者はアルコキシ基を有するアミノ基含有のシランカップリング剤を介した酸素−珪素結合の共有結合と、水酸基−アミノ基の水素結合との化学結合、新たに形成したカルボキシル基やカルボニル基とのアミド結合やイミノ結合のような共有結合で、接合されていることが好ましい。この場合、基材シート10・30とゴムシート20とがコロナ放電処理されてその表面で水酸基のような活性基を生じており、アルコキシ基又はアルコキシ基等価基とアミノ基とを含有するシランカップリング剤が付されていることによって、常圧・加圧又は減圧下で、常温又は加熱による圧着の際に、これら化学結合を形成している。この場合、シランカップリング剤のアミノ基が樹脂に吸着し易くなり、樹脂がポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、又はエポキシ樹脂のとき、特にその反応が進行するため、迅速かつ強固に接合し易い。中でもポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂であると、とりわけ耐水性に優れる。
【0070】
基材シート10・30の水酸基とゴムシート20の水酸基とのような活性基、又はそれらに反応するシランカップリング剤の反応性官能基との接近は、減圧乃至真空条件下、例えば50torr以下、より具体的には50〜10torrの減圧条件、又は10torr未満、より具体的には、10torr未満〜1×10−3torr、好ましくは10torr未満〜1×10−2torrの真空条件下で、その接触界面の気体媒体を除去することによって、又はその接触界面に応力(荷重)、例えば10〜200kgfを加えることによって、さらに接触界面を加熱することによって、促進される。減圧又は加圧条件で、基材シート10・30の水酸基とゴムシート20との接合面全面に、均一に圧力が掛ることが好ましい。上記範囲を外れると、均一に圧力が掛らない恐れがある。
【0071】
このようなマイクロ化学チップ1は、その一例である図1を参照すると、以下のようにして作製される。
【0072】
シリコーンゴムシート20を長方体に切り出す。このゴムシート20をレーザー加工でくり抜いて貫通させて、ゴムシート20に微細流路26を付す。その流路26は、レーザー加工で、始点末端の流動試料注入部位21a・21bから延びて下流で合流しそこから流動試料排出部位22aへ延びる支流と、流動試料排出部位22b及び22cへ延びる本流とを有しその本流がその下流で終点末端の流動試料排出部位22b及び22cへ延びて分岐している形状に、形成される。次にゴムシート20と同じ大きさのカバー用の金属基材シート10を切り出す。その金属基材シート10に、流動試料注入部位21a・21bと流動試料排出部位22a・22b・22cとに対応する位置で、それぞれ流動試料注入穴11a・11bと流動試料排出穴12a・12b・12cとを、ドリルで穿孔し又は打ち抜いて、開口する。次いで底面支持用の金属基材シート30を、ゴムシート20と同じ大きさに切り出す。
基材シート10・30とゴムシート20とを、アルコール、水で洗浄する。基材シート10の下面15と、基材シート30の上面34と、ゴムシート20の上下両面24・25とを、コロナ放電処理すると、それら表面に、新たに水酸基が生じる。基材シート10・30の間に、ゴムシート20を挟み込み、例えば10torr以下減圧する。次いで例えば10〜200kgfでプレスしながら例えば80〜120℃で加熱して熱圧着させると、基材シート10・30の水酸基とゴムシート20の水酸基とが脱水してエーテル結合を生じる結果、接合し、マイクロ化学チップ1が得られる。
【0073】
なお、基材シート10・30やゴムシート20にコロナ放電を施した例を示したが、大気圧プラズマ処理又は紫外線照射を施してもよい。これらの処理によって有機又は無機の基材シート10・30やゴムシート20の表面に、水酸基である活性基が生成したり、有機の基材シート10・30やゴムシート20の表面に、さらにカルボキシル基、カルボニル基で例示される活性基が生成したりする。
【0074】
基材シート10・30やゴムシート20は、元々水酸基を有するものと有しないものとがあるが、これら表面に水酸基を有しなくともコロナ放電、大気圧プラズマ処理又は紫外線照射の処理を施すことにより、そこに水酸基が効率よく生成される。
【0075】
それらの最適処理条件は、基材シート10・30やゴムシート20の基材表面の材質の種類や履歴によって異なるが、その表面に55kJ/m以上の表面張力が得られるまで処理し続けることが重要である。これにより、十分な接着強度が得られる。
【0076】
具体的には、基材シート10・30やゴムシート20のコロナ放電処理は、コロナ表面改質装置(例えば、信光電気計装株式会社製コロナマスター)を用いて、例えば、電源:AC100V、出力電圧:0〜20kV、発振周波数:0〜40kHzで0.1秒〜60秒、温度0〜60℃の条件で行われる。
【0077】
基材シート10・30やゴムシート20の大気圧プラズマ処理は、大気圧プラズマ発生装置(例えば、松下電工株式会社製:商品名Aiplasuma)を用いて、例えば、プラズマ処理速度10〜100mm/s,電源:200又は220V AC(30A)、圧縮エアー:0.5MPa(1NL/min)、10kHz/300W〜5GHz、電力:100W〜400W、照射時間:0.1秒〜60秒の条件で行われる。
【0078】
基材シート10・30やゴムシート20の紫外線照射は、紫外線−発光ダイオード(UV−LED)照射装置(例えば、オムロン株式会社製のUV−LED照射装置:商品名ZUV−C30H)を用いて、例えば、波長:200〜400nm、電源:100V AC、光源ピーク照度:400〜3000mW/cm、照射時間:1〜60秒の条件で行われる。
【0079】
コロナ放電などの活性化処理後、基材シート10・30の接合すべき表面15・34を、分子接着剤であるシランカップリング剤溶液で浸漬又は噴霧してから、基材シート10・30とゴムシート20とを接触させてもよい。浸漬及び噴霧の時間に制限はなく、基材シート10・30の基材表面が一様に湿潤していることが重要である。
【0080】
シランカップリング剤を付した基材シート10・30を、オーブンに入れたり、ドライヤーで温風を送風したり、高周波を照射したりすることにより、加熱しながら乾燥する。加熱・乾燥は、50〜250℃の温度範囲で、1〜60分間行われる。50℃未満では、基材シート10・30表面に生成した水酸基とシランカップリング剤との反応時間が長くかかりすぎて、生産性が低下し、コストの高騰を招く。一方、250℃を超えると、加熱乾燥時間が短くても基材シート10・30表面が変形したり、分解したりしてしまう。1分間未満の加熱乾燥では熱の伝達が不十分であるため、基材シート10・30表面の水酸基とシランカップリング剤との結合が不十分となる。一方、60分間を超えると生産性が低下する。
【0081】
基材シート10・30表面の水酸基とシランカップリング剤との反応が不十分な場合には、前記浸漬と乾燥とを1〜5回程度繰り返してもよい。それにより1回当たりの浸漬及び乾燥時間を短縮し、反応回数を増やす方が反応を十分に進行させることができる。
【0082】
マイクロ化学チップ1は、例えば微量合成の例について図1を参照して説明すると、以下のようにして使用される。マイクロ化学チップ1を反応装置であるマイクロリアクター(不図示)の装置本体に装着する。流動試料を注入する穴に接続されて流動試料を注入してから加圧して流路に流し込む加圧器を用いて、カバー用の基材シート10の流動試料注入穴11a・11bにそれぞれシリンジ(不図示)を気密に刺し、各シリンジから別々にそれぞれ液状検体と液状試薬とである流動試料を、100kPaを超え3MPa以下に加圧しながら流動試料注入部位21a・21bを経て、流路26に送り込む。両流動試料は、流路26を流れて合流して混合され、互いに反応する。必要に応じ支流である流動試料排出部位22aを経て流動試料排出穴12aから、廃液を排出する。本流で分岐し、流動試料排出部位22b・22cを経て流動試料排出穴12b・12cから、微量合成された生成物を含む流動試料をそれぞれ排出し、目的物を得る。
【0083】
本発明の反応装置は、少なくともマイクロ化学チップ1と、それを装着する装置本体と、そのマイクロ化学チップ1に流動試料を注入してから加圧する加圧器とで、構成されている。加圧器は、流動試料を注入する穴に接続されるシリンジのような注入器と、流動試料を送液させるポンプのような流体機械とを備えるものである。この加圧器により、流動試料を注入し流路26に流し込むことができる。流速としては、0.1〜500μl/minであることが好ましい。反応装置は、マイクロ化学チップ1の上下で接触又は非接触に、加熱ヒータのような加熱機構や冷却機構を有していてもよい。
【0084】
マイクロ化学チップ1の別な態様を、図2に示す。このマイクロ化学チップ1はカバー用の金属基材シート10、第一のゴムシート20、中敷用の金属基材シート30、第二のゴムシート40、底面支持用金属基材シート50の順で重ね合わされたものである。
【0085】
ゴムシート20・40に、流路26・46が表裏を貫通して形成されている。流路26はゴムシート20で始点末端である流動試料注入部位21a・21bからそれぞれ延びて下流で合流し、そこから流動試料排出部位22aへ延びる支流と、流動試料移送部位23へ延びる本流とに分岐している。中敷用の金属基材シート30は、その流動試料移送部位23に対応する位置で、流動試料移送穴33が開けられている。流動試料移送穴33に逆止弁が設けられていてもよい。第二のゴムシート40は、その流動試料移送穴33に対応する位置で、流動試料移入部位43が設けられ、そこへ別な始点末端である流動試料注入部位41aから延びて合流し、その下流で終点末端である流動試料排出部位42a及び42bへ延びて分岐した流路46が、表裏を貫通して形成されている。底面支持用の金属基材シート50に、流動試料注入部位41aと流動試料排出部位42a及び42bとに対応した位置で、流動試料注入穴51aと流動試料排出穴52a・52bが開けられている。基材シート10・20・30とゴムシート20・40とは、図1と同様に、エーテル結合を介して、直接接合されている。基材シート10・20・30とゴムシート20・40とは、前記の素材、形状でもよく、シランカップリング剤を介して接合されていてもよい。このマイクロ化学チップ1は、図1のものと同様に加圧して流動体試料を送り込んで使用される。マイクロ化学チップ1は、複数のゴムシート20・40の各流路26・46で、分子量や組成成分や組成物性が異なる流動試料をそれぞれ注入する際に、不意な混入を防ぐことができる。また、流動試料が流路26・46で反応して、流動試料内の目的物質の分子量が変化したり流動試料の比重が変化したりしたときに、適宜分離するものであってもよい。
【0086】
マイクロ化学チップ1の別な態様を、図3に示す。このマイクロ化学チップ1は、図1の基材シート10・30とゴムシート20とからなり、ゴムシート20ごと最外の基材シート10と30とが、2枚の樹脂板又は金属板で撓まない剛直なホルダー60a・60bで挟まれている。これらは、螺子止めされ、固定されている。ホルダー60a・60bに、基材シート10・30の流動試料注入穴11a・11bや流動試料排出穴12a・12b・12cと対応した位置で、注入誘導穴61a・61bと排出誘導穴62a・62b・62cとが、開口している。このマイクロ化学チップ1は、図1のものと同様に加圧して流動体試料を流路26に送り込んで使用される。ホルダー60a・60bは、可撓性の基材シート10・30とゴムシート20とを、撓まないように矯正しつつ、流路26に流動体試料が流れる程度に締め付けている。このマイクロ化学チップ1は、図2に示す基材シート10・30・50とゴムシート20・40を有するものであってもよい。図1〜2のマイクロ化学チップ1は、基材シート10・30とゴムシート20との間に加熱ヒータが挿入されて接合されていてもよく、図3のホルダー上に加熱ヒータが配置されていてもよい(不図示)。マイクロ化学チップ1は、流動試料注入部位21a・21b、流動試料排出部位22a・22b・22c、流動試料注入部位、流動試料排出部位41a、42a・42bの何れかに、検体・試薬・反応生成物を検知する電極等のセンサーが配線されていてもよい。
【実施例】
【0087】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
図1に示すマイクロ化学チップ1を、シクロオレフィン樹脂基材シート10・30とシリコーンゴムシート20とで、作製した。シクロオレフィン樹脂基材シート10・30は、シクロオレフィン樹脂であるゼオノア(日本ゼオン株式会社製、登録商標)で形成され厚さ2mmで30×40mmの大きさのものである。シリコーンゴムシート20は、シクロオレフィン樹脂基材シート10・30と同形であってポリジメチルシロキサンであるSH−851−U(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名)で形成され厚さ50μmである。シリコーンゴムシート20に、図1の通りに直径1mmの流動試料注入部位21a・21b及び流動試料排出部位22a・22b・22cを有する幅500μmの溝状で分岐している流路26を、レーザー加工機(機種LaserPro SPIRIT(コムネット株式会社製)、加工条件:speed10, power30, PPI400)で形成した。カバー用の基材シート10に、流動試料注入穴11a・11bと流動試料排出穴12a・12cとを、ドリルで穿孔した。カバー用の基材シート10と底面支持用の基材シート30とをエタノールと水とで洗浄した後、ギャップ長1mm、電圧13.5kv、70mm/秒で3回コロナ放電処理し、表面を活性化処理した。基材シート10・30を、シランカップリング剤である0.1重量%の3‐(2‐アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランのエタノール溶液に浸漬した後、イオン交換水で洗浄し、エアーガンで風乾し80℃で10分間加熱して、再度エタノール洗浄、3‐(2‐アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン処理及び乾燥を行ってから、同条件でコロナ放電処理した。流動試料注入部位21a・21b及び流動試料排出部位22a・22b・22cと流動試料注入穴11a・11bと流動試料排出穴12a・12b・12cとを位置合わせしつつ、基材シート10・30の間に、ゴムシート20を挟み込んだ。それを15秒間、10torrの減圧条件に曝した後、80℃で15分間、70kgfでプレスし、熱圧着して、マイクロ化学チップ1を、得た。
流動試料注入穴11bと流動試料排出穴12a・12b・12cを塞ぎ、流動試料注入穴11aを経て流動試料注入部位21aから、加圧エアーを導入した際、1.5MPaまで耐圧性を示した。
【0089】
(実施例2)
図1に示すマイクロ化学チップ1を、縦横30mmで厚さ2mmのステンレス基材シート10・30、及びそれと同形で厚さ50μmのシリコーンゴムシート20とで作製した。シリコーンゴムシート20に、図1の通りに流動試料注入部位21a・21b・21b及び流動試料排出部位22a・22b・22cを有する流路26を、レーザー加工機で形成した。基材シート10に、流動試料注入穴11a・11bと流動試料排出穴12a・12b・12cとを、ドリルで穿孔した。基材シート10・30をエタノールと水とで洗浄した。基材シート10・30とゴムシート20とをエタノールと水とで洗浄した後、実施例1と同条件でコロナ放電処理し、表面を活性化処理した。流動試料注入部位21a・21b及び流動試料排出部位22a・22b・22cと流動試料注入穴11a・11bと流動試料排出穴12a・12b・12cとを位置合わせしつつ、基材シート10・30の間に、ゴムシート20を挟み込んだ。それを15秒間、10torrの減圧条件に曝した後、80℃で15分間、70kgfでプレスし、熱圧着して、マイクロ化学チップ1を、得た。
実施例1のマイクロ化学チップと同等な耐圧性を示した。
【0090】
(実施例3)
(1)マイクロ化学チップの作製
図4に示すマイクロ化学チップ1を、シクロオレフィン樹脂基材シート10・30とシリコーンゴムシート20とで、作製した。シクロオレフィン樹脂基材シート10・30は、シクロオレフィン樹脂であるゼオノア(日本ゼオン株式会社、登録商標)で形成され、シクロオレフィン樹脂基材シート10の厚さ2mm、シクロオレフィン樹脂基材シート30の厚さ188μmとし、30×40mmの大きさのものである。シリコーンゴムシート20は、シクロオレフィン樹脂基材シート10・30と同形であってポリジメチルシロキサンであるSH−851−U(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名)で形成され厚さ500μmである。シリコーンゴムシート20に、図4の通りに直径1mmの流動試料注入部位21a・21b・21c及び流動試料排出部位22aを有する幅500μmの溝状で分岐している流路26を、レーザー加工機(機種Laserpro SPIRIT(コムネット株式会社製)、加工条件speed10,power30,PPI400)で形成した。カバー用の基材シート10に、流動試料注入穴11a・11b・11cと流動試料排出穴12aとを、ドリルで穿孔した。カバー用の基材シート10と底面支持用の基材シート30とをエタノールと水とで洗浄した後、ギャップ長1mm、電圧13.5kv、70mm/秒で3回コロナ放電処理し、表面を活性化処理した。基材シート10・30を、シランカップリング剤である0.1重量%の3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(AEAPS)のエタノール溶液に浸漬した後、エアーガンで風乾し80℃で10分間加熱して、再度エタノール洗浄、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン処理及び乾燥を行ってから、同条件でコロナ放電処理した。流動試料注入部位21a・21b・21c及び流動試料排出部位22aと流動試料注入穴11a・11b・11cと流動試料排出穴12aとを位置合わせしつつ、基材シート10・30の間に、ゴムシート20を挟み込んだ。それを15秒間、10torrの減圧条件に曝した後、80℃で15分間、70kgfでプレスし、熱圧着して、マイクロ化学チップ1を得た。
(2)各試料の調製
A液:硫酸銅(II)五水和物(和光純薬工業株式会社製)7gをイオン交換水100mLに溶解した。
B液:酒石酸カリウムナトリウム(和光純薬工業株式会社製)35gと、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)10gとをイオン交換水100mLに溶解した。
C液:ホルムアルデヒド液(和光純薬工業株式会社製)35.0〜38.0%
(3)マイクロ化学チップでの反応
作製したマイクロ化学チップを90℃に熱した金属プレート上で5分間プレヒートした後、加圧器によって流動試料注入穴11a・11b・11cから調製したA液、B液、C液をそれぞれ3μl/min、3μl/min、1μl/minの流速で導入した。一定時間放置し、流動試料排出穴12aから排出された排出液を目視確認したところ、赤茶色への変色が確認でき、マイクロ化学チップ内での液の混合と反応が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のマイクロ化学チップは、迅速に分析結果を知る必要がある救急医療現場での患者の生体成分の分析、犯罪現場で微量な血痕・体液・毛髪・生体組織細胞等の遺留品からDNAを抽出し、そのDNAを増やすPCR増幅し、電気泳動でDNAを特定するDNA解析、新規医薬品探索のための各種医薬候補品の物性・薬効評価、オーダーメイド医療のための診断、ペプチドやDNAや機能性低分子の微量合成などに、用いられる。
【0092】
マイクロ化学チップは、簡便に自在な形状の流路を形成できるものなので、オーダーメイドの診療や、種々の動植物のDNA分析などの同定に、用いることができる。
【0093】
本発明のマイクロ化学チップを製造する方法で得られたこのマイクロ化学チップは、それらの分析装置やマイクロリアクターに装着して、遺伝子診察・治療を行う医療分野や、生体試料を用いた犯罪捜査分野における各種分析、海洋や湖沼等の遠隔地での水中ロボットを用いた微生物探索、医薬品開発における各種合成に用いることができる。
【0094】
本発明の反応装置は、微量な検体及び/又は試薬の分析反応や合成反応をするための装置であり、具体的に分析装置やマイクロリアクターとして用いることができる。
【符号の説明】
【0095】
1はマイクロ化学チップ、10は基材シート、11a・11bは流動試料注入穴、12a・12b・12cは流動試料排出穴、15は下面、20はゴムシート、21a・21bは流動試料注入部位、22a・22b・22cは流動試料排出部位、23は流動試料移送部位、24は上面、25は下面、26は流路、27は壁面、30は基材シート、33は流動試料移送穴、34は上面、40はゴムシート、41aは流動試料注入部位、42a・42bは流動試料排出部位、43は流動試料移入部位、50は基材シート、51aは流動試料注入穴、52a・52bは流動試料排出穴、60a・60bはホルダー、61a・61bは注入誘導穴、62a・62b・62cは排出誘導穴である。
図1
図2
図3
図4