(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
座とその後ろに配置した背もたれとを有しており、前記背もたれは、前記座の下方から後ろに延びる背フレームに、人がもたれていない状態での側面視姿勢である初期姿勢を変更可能な状態で取り付けられている椅子であって、
前記背フレームの後端には上向きの背支柱を設けており、前記背もたれが、前記背支柱の上端部に連結されている一方、
前記背もたれの下端部は前記座の後ろに位置しており、前記背フレームのうち前記座よりも後ろに位置した部位には上向きの軸受けリブを設けて、前記背もたれの下端にはロア連結部を下向き突設しており、前記ロア連結部を軸受けリブに対して前後移動させ得るように、それらロア連結部と軸受けリブとを、着座した人が手を後ろに伸ばして操作できる回転式のハンドルによって連結している、
椅子。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、
参考例及び本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用するが、この前後左右の文言は着座した人を基準にしている。正面視方向は着座した人と対峙した方向であり、従って、正面視での左右と着座した人から見た左右とは逆になる。
【0027】
(1).
参考例に係る椅子の概略
まず、
参考例に係る椅子の概要を、主として
図1〜
図3に基づいて説明する(椅子の基本構成は各実施形態とも共通している。)。本
参考例(及び後述の実施形態)は、事務用等に多用されている回転椅子に適用しており、椅子は、脚支柱1(
図1(C)参照)のみを表示している脚装置と、脚支柱1の上端に固定したベース2と、ベース2の上に配置した座3と、着座した人がもたれ掛かり得る背もたれ4とを有している。ベース2は、上向きに開口した箱状に形成されている。
【0028】
例えば
図2に示すように、ベース2の上に金属板製の中間金具(座受け金具)5が配置されており、この中間金具5に樹脂製の座アウターシェル6が取り付けられている。座3は、樹脂製の座インナーシェル(座板)とその上面に重ね配置した座クッション材とを有しているが、本願との直接の関係はないので説明は省略する。
【0029】
例えば
図2に示すように、ベース2に第1背フレーム7が後傾動自在に連結されていると共に、第1背フレーム7にはその後ろに位置した第2背フレーム8が固定されており、第2背フレーム8に背もたれ4が取り付けられている。第1背フレーム7はベース2の外側位置で前向きに延びるアーム部7aを有しており、左右アーム部7aの前端部が左右横長の第1軸9でベース2に連結されている。従って、背もたれ4は第1軸9の軸心回りに前後傾動する。なお、第1背フレーム7はアルミダイキャスト品、第2背フレーム8は樹脂の成形品であるが、それぞれアルミ等の金属ダイキャスト品又は樹脂の成形品のいずれかを採用することも可能である。第1及び第2の背フレーム7,8に
よって背フレームが構成されている。
【0030】
本
参考例の椅子は、背もたれ4の後傾に連動して座3が後退しつつ後傾するシンクロタイプの椅子であり、そこで、
図2から理解できるように、中間金具5の前部をベース2に設けた左右の受け部材10に前後動自在に装着する一方、中間金具5の後部は、第1背フレーム7に上向き突設したブラケット部11に左右横長の第2軸12で連結されている。ベース2の内部には、背もたれ4及び座3の後傾動を弾性的に支持する反力ユニットや、背もたれ4の傾動を制御するロック用ガスシリンダ等が配置されているが、本願発明との直接の関係はないので説明は省略する。
【0031】
第2背フレーム8は、第1背フレーム7に固定された基部13と、その左右両端部から上向きに突出した角
(つの)状の背支柱14とを有しており、背支柱14の上端部に背もたれ4を前後傾動可能に連結すると共に、基部13には
、初期姿勢調節装置15の一部を設けている。
初期姿勢調節装置15によって背もたれ4の支持位置を前後方向に変えることで、非ロッキング状態での背もたれ4の初期姿勢(初期角度)が調節される。
【0032】
(2).背もたれとその取り付け構造
次に、各部位の詳細を
、図4以下の図面も参照して説明する。まず、背もたれ4の詳細とその取り付け構造を説明する。
図1(A)に簡単に表示するように、背もたれ4は、ポリプロピレン等の樹脂の成形品である背インナーシェル18と、その前面に張ったクッション19と、クロス等の表皮材20とを有している。従って、背もたれ4の外形は背インナーシェル18の外形と同じになる。
【0033】
表皮材20は袋状に構成されており、背インナーシェル18の全体を上からすっぽり覆っている。本
参考例のように表皮材20を袋状に構成した場合、薄いクッションシートを背インナーシェル18の背面に配置して、表皮材20に張りを付与することも可能である。
図5(A)に示すように、背インナーシェル18の背面には、縦横に延びる格子状の多数の補強リブ21が形成されている。
【0034】
例えば
図3や
図9(A)に示すように、背もたれ4は、着座した人の腰部が当たるランバーサポート部22を有しており、このため、側面視及び縦断側面視で前向き突形の形状になっている。正確に述べると、背インナーシェル18は、縦断側面視でランバーサポート部22が最も前に位置するように湾曲している。また、背インナーシェル18は平面視では前向き凹状に緩く湾曲しているが、湾曲の程度はランバーサポート部22で最も大きくて、上に行くに従って湾曲の程度は小さくなっており、上端では平坦に近い形態になっている。
【0035】
例えば
図3に示すように、背もたれ4は、ランバーサポート部22の箇所で最も左右横幅が大きくて、ランバーサポート部22から上と下に離れるに従って横幅が小さくなるように設定している。従って、背もたれ4(背インナーシェル18)は
、正面視で略六角形に近い形状になっている。ランバーサポート部22は背インナーシェル18の下部に寄っているので、背もたれ4は、正確には下膨れの六角形状の形態になっており、ランバーサポート部22の左右端部は、正面視で左右横向き突出した山形の形態を成している。
【0036】
そして、背インナーシェル18におけるランバーサポート部22の左右端部に、背支柱14に連結するためのサイド連結部23を設けている。サイド連結部23はその周辺から前向きに突出している。背インナーシェル18の前面側部には、サイド連結部23から上向きに延びる縦リブ24を設けている。
【0037】
図4に示すように、第1背フレーム7のうちアーム部7aを除いた基部は
、基本的に板状又はブロック状の形態を成している一方、第2背フレーム8の基部13も板状又はブロック状に近い形態であり、第1背フレーム7の後部に
、第2背フレーム8における基部13の前部を重ねて、両者をビス25で締結している。この場合、第1背フレーム7に形成した後ろ向き開口の空所26に、第2背フレーム8における基部13の前端に設けた突部13aを嵌め込むと共に、第1背フレーム7に設けた横長の嵌合突起27と、第2背フレーム8の基部13の下面に設けた横長の嵌合溝28とを嵌合させている。このため、両背フレーム7,8は1本のビス25で強固に締結される。
【0038】
例えば
図5に示すように、第2背フレーム8における背支柱14の上端には、前向きに開口した拳状の頭部14aが形成されており、この頭部14aに、前向きに開口した軸受け部29を一体に形成している。他方、背インナーシェル18のサイド連結部23には、軸受け部29に嵌まるボス部30を一体に形成しており、両者の嵌まり合いにより、背インナーシェル18のサイド連結部23が
、背支柱14の頭部14aに
、前向き抜け不能に連結されている。ボス部30は、その外側に設けたリブ31aとその内側に設けた規制板31bとに一体に繋がっている。
【0039】
図10(B)に明示するように、軸受け部29はくびれ部を有する一方、ボス部30は断面小判形になっているが、背もたれ4を所定の姿勢にセットした状態ではボス部30が略水平姿勢になるように設定する一方、軸受け部29の開口方向を水平に対して斜め上向きに開口するように設定している。このため、背もたれ4を所定の姿勢に対して後傾させた姿勢にすることで
、ボス部30を軸受け部29に嵌め込みできると共に、背インナーシェル18の下端を第2背フレーム8に連結すると、背もたれ4に前向きの外力が作用してもボス部30は軸受け部29から抜け不能に保持される。従って、背もたれ4の取り付けを簡単に行える。
【0040】
図5及び
図8に示すように、背支柱14の頭部14aのうち軸受け部29の内側の部位に、ボス部30の半径より遙かに大
きく湾曲した円弧面を有する荷重受け部32が形成されている一方、背インナーシェル18のサイド連結部23には、荷重受け部32に嵌まる円弧状の荷重当て部33を一体に設けている。この荷重当て部33が荷重受け部32に広い面積で当たっている(面接触している)ことにより、背インナーシェル18は、前後回動を阻害されることなく左右の背支柱14によって安定的に支持されている。
【0041】
また、背支柱14の頭部14aのうち軸受け部29と荷重受け部32との間には溝32aが空いており、この溝32aに
、背インナーシェル18の規制板31bが左右ずれ不能にきっちり嵌まっている。このように、溝32aと規制板31bの嵌まり合いによって背インナーシェル18は左右ずれ不能に保持されているため、ランバーサポート部22に後ろ向きの荷重が作用してサイド連結部23が内向きに引っ張られても、サイド連結部23が内側にずれ動くことはない。このため取り付け強度が高い。溝32aの底面と規制板31bの外周は
、側面視でボス部30の軸心
を曲率の中心とする円弧状に形成されており、従って、背インナーシェル18がボス部30の軸心回りに回動することが許容されている。
【0042】
上述のように、背支柱14の上端と背インナーシェル18の組付構造において、前後方向の抜け止め、
背もたれ4にかかる荷重の支持、左右のずれ防止をそれぞれ別の特定部位で行っている。具体的には、前後方向の抜け止めはボス部30と軸受け部29で行っており、両者に他の機能(背にかかる荷重の支持、左右のずれ防止)を持たせないよう、ボス部30は、その外周面と軸受け部29の内周面との間に若干のクリアランスを持たせた状態で軸受け部29に遊嵌されていると共に、軸受け部29の左右幅寸法よりもボス部30の左右幅寸法を若干幅広に設定することで、リブ板31aが軸受け部29の側面に当らないようにしている。また、規制板31の後端面は
、背支柱14における溝32aの底面に当たらないように設定されている。
【0043】
(3).
初期姿勢調節装置
背インナーシェル18の下端部は、その左右中間部が
初期姿勢調節装置15を介して第2背フレーム8に連結されている。この点を次に説明する。
【0044】
例えば
図7(A)(C)に示すように、背インナーシェル18の下端部の左右中間部に
、前向きに突出したロア連結部35を設けており、このロア連結部35には下向きに開口したセンター溝36が形成されていると共に、センター溝36を横切る状態でピン穴37が空いている。更に、背インナーシェル18の下端部の
うち、ロア連結部35の右側の部位には、ロア連結部35に接続された上下のリブ38,39を設け、上下リブ38,39の間
にスライド式
のレバー4
0を左右スライド自在に装着している。ロア連結部35と
レバー40とは
、初期姿勢調節装置15の構成要素である。
レバー40には、人が掴むことのできる指掛け部40aを設けている。
【0045】
レバー40には、ロア連結部35のピン穴37に嵌まるピン状のロックピン41が一体に形成されている。従って、
レバー40を左右スライドさせると、ロックピン41をロア連結部35のセンター溝36に出没させることができる。ロックピン41
は、ストッパーの一例である。上リブ38には、
レバー40を背インナーシェル18から外れないように保持する爪42
が設け
られている。
【0046】
また、
レバー40には、背インナーシェル18に向いて開口したばね配置用空所43aと、ストローク規制用空所43bとを設けている。ばね配置用空所43aがロックピン41の側に位置し、ストローク規制用空所43bが指掛け部40aの側に位置している。他方、背インナーシェル18には、ばね配置用空所43aに入り込むばね受け突起44aと、ストローク規制用空所43bに入り込むストローク規制突起44bとを設けており、ばね受け突起44aとばね配置用空所43aの内側面43eとの間に圧縮コイルばね43cを配置している。このため、
レバー40は
、ロックピン41がロア連結部35に嵌まり勝手となるように(ロック位置が保持されるように)付勢されている。ばね43cは、
レバー40の前面に設けた窓穴43eから押し込むことにより、ばね配置用空所43aに配置される。
【0047】
レバー40を手で外側に引いたときの後退位置の規制は、ストローク規制用空所43bの内側面をストローク規制突起44bに当てることで行われる。なお、
レバー40がばねで押されたときの前進位置の規制は、ばね配置用空所43aの内側面をストローク規制突起44bに当てることで行ってもよいし、
レバー50の端部をロア連結部35の側面に当てることで行ってもよい。
【0048】
図7(B)に示すように、第2背フレーム8における基部13の後端には、座インナーシェル18におけるロア連結部35のセンター溝36に下方から嵌まるブロック状のロック体45を設けており、このロック体45に、
レバー40のロックピンが嵌まる3つのロック穴46を空けている。従って、ロック体45も
初期姿勢調節装置15の構成要素である。3つのロック穴46は、背インナーシェル18の回動支点を中心にした円弧上の存在しており、ロックピンがいずれかのロック穴46に選択的に嵌まることにより、背もたれ4の初期姿勢を3段階に変更できる。敢えて述べるまでもないが、ロック穴46の数は3個には限らず、2個又は4固以上であってもよい。ロック穴46は
、ロック部の一例である。
【0049】
ロック体45は樹脂製で第2背フレーム8とは別体に構成されており、第2背フレーム8の基部13に下方から嵌め込み装着されている。このため、例えば
図6に示すように、第2背フレーム8の基部13には、ロック体45が下方から嵌まる穴47を空けていると共に、ロック体45を後ろから支えるセンターガード部48を設け、センターガード部48に、ロック体45が嵌まる前向き開口の溝49を設けている。ロック体45には、背インナーシェル18の下端が前向きに大きく前進することを規制する前壁45aを設けている。
【0050】
図9に示すように、第2背フレーム8の下面にはロック体45が入り込む凹所50を形成し、ロック体45に設けた下フランジ45bを凹所50の底面に重ねている。そして、凹所50の内側面に支持爪51を設け、下フランジ45bが支持爪51を下方から乗り越えることにより、ロック体45は落下不能に保持されている。下フランジ45bと支持爪51とには、誘い込みのための傾斜面を形成している。また、下フランジ45bには、変形を容易ならしめるための穴45cを設けている。ロック体45は第2背フレーム8に一体に設けることも可能であるが、本
参考例のように第2背フレーム8とは別体に構成すると、加工が容易になる利点がある。
【0051】
(4).姿勢固定手段
さて、ユーザーによっては、背もたれ4の初期姿勢調節機能を必要としない場合もあり得る。そこで、本
参考例では、初期姿勢調節装置15を使用せずに、背もたれ4の姿勢を一定に保持することも可能である。すなわち、本
参考例では、初期姿勢調節装置15を使用せずに姿勢固定手段を使用することにより、背もたれ4の初期姿勢を一定に保持することが可能である。この点を次に説明する。
【0052】
例えば
図6(A)に示すように、第2背フレーム8の基部13のうちセンターガード部48の左右両側に、左右一対ずつの規制リブを有する上下開口のサイドガード部53を形成し、このサイドガード部53に、下方からブロック状のサイド規制体54を嵌め込み装着している。サイド規制体54はサイドガード部53で左右動不能に保持されており、後ろからはサポートリブ55で支えられている。また、
図11に示すように、サイド規制体54の下端にはフランジ54aを設けており、フランジ54aは、第2背フレーム8の基部13に設けた凹所13cの底面に重なっている。また、サイド規制体54も、ロック体45と同様に
、係合爪13dによって落下不能に保持されている。
【0053】
そして、サイド規制体54には
、側面視で上向きに開口した係合溝56が形成されており、
図11に示すように、背インナーシェル18の下端に設けた規制軸57を係合溝56に嵌め込むことにより、背もたれ4を初期姿勢変更不能に保持している。規制軸57は、左右一対の後ろ向きリブ48を介して背インナーシェル18に一体成形されている。
図6や
図7では便宜的に
レバー40とサイド規制体54とを一緒に表示しているが、
初期姿勢調節装置15によって背もたれ4の初期姿勢を変更させる場合は、規制体54は第2背フレーム8に装着されていないし、初期姿勢調節機能15を必要としない場合は、
レバー40やロック体45は装着されない。
【0054】
(5).まとめ
以上の構成において、
レバー40を外側に引いて(後退させて)
、ロックピン41をロック体45のロック穴46から抜いて他のロック穴46に嵌め直すことにより、背もたれ4の初期姿勢を3段階に調節できる。
【0055】
この場合、背もたれ4
は、ランバーサポート部22の高さ位置を中心にして回動するため、背もたれ4の初期姿勢を変化させてもランバーサポート部22の前後位置には変化はなく、このため、背もたれ4の初期姿勢を変更したことによってランバーサポート部22の身体への当たり具合が変わることはない。また、背もたれ4の初期姿勢を変えてもランバーサポート機能は常に発揮される。
【0056】
例えば
図1(C)から明らかなように、背もたれ4の下端は座面よりも下方に位置しており、従って、初期
姿勢調節装置15も座面の下方に配置されている。このため
、初期姿勢調節装置15が身体に触れることはない。また、着座した人は後ろに手を伸ばして
レバー40を操作できるため、
初期姿勢の調節もごく簡単に行える。なお、背もたれ4の
初期姿勢を調節するにおいては、
レバー40を引いてロックを解除してから背もたれ4の姿勢を変えるが、背もたれ4の姿勢を変える方法としては、左手で背もたれ4の下部を掴んで前後動させても良いし、背もたれ4の上部又は下端部を身体で押すことで背もたれ4を回動させてもよい。
【0057】
例えば
図7(B)に示すように、第2背フレーム8の基部13の後端には
、上向きに突出したリア壁13bが一体に形成されており、センターガード48やサイドガード53はリア壁13bにも繋がっている。また、背支柱14の付け根はリア壁13bに繋がっている。リア壁13bがリブ効果を発揮するため、第2背フレーム8は高い強度を有する。なお、背もたれ4が最も起きた初期姿勢において、背もたれ4(背座インナーシェル18)の下端と第2背フレーム8のリア壁13bとの間には
、人の指が余裕を持って入る程度の隙間が空いている。従って、人が指を挟むようなことはない。
【0058】
(6).
第1実施形態
次に、
図12,13に示す
第1実施形態を説明する。
参考例と共通した要素は同じ符号を使用し、説明は省略する(他の実施形態も同様である。)。この実施形態では、背フレーム60は単一構造になっており、背フレーム60の後端に背支柱14を一体に設けている。背インナーシェル18のランバーサポート部22が背支柱14の上端に連結されている点は
参考例と同じである。
【0059】
この第1実施形態では、
操作具として回転式のハンドル40が使用されており、背フレーム60の左右中間部に設けた左右一対の軸受けリブ61により、回転自在に保持されている。
ハンドル40のうち左右軸受けリブ61の間に位置した先端部は角柱部40bになっており、この角柱部40bに、周面カム62が相対回転不能に(すなわち、
ハンドル40と一緒に回転するように)嵌まっている。周面カム62は、1つのセンターカム部63と、その左右両側に位置した左右一対のサイドカム部64を有している。他方、背インナーシェル18の下端には、周面カム62が下方から嵌まるように下向きに開口したロア連結部65を一体に設けている(ロア連結部65は別体に製造し、背インナーシェル18に固定してもよい。)。
【0060】
センターカム部63とサイドカム部64とはその外周面をカム面としており、ロア連結部65の前内面をセンターカム部63が当接する前規制面65aと成し、ロア連結部65の後ろ内面をサイドカム部64が当接する後ろ規制面65bと成している。センターカム部63の外周には、軸心からの高さが異なる第1〜第3のカム面63a〜63cが形成され、サイドカム部64の外周にも
、軸心からの高さが異なる第1〜第3のカム面64a〜64cが形成されている。ロア連結部65は既述のように下向きに開口しているが、前規制面65aと後ろ規制面65bとの前後間隔L0は
、下に行くに従って大きくなるように設定
されている。
【0061】
さて、人が背もたれ4にもたれ掛かることにより、
図13(C)に白抜き矢印Xで示すように、背インナーシェル18にはボス部30の軸心回りに回動しようとする外力が作用し、その外力は、ロア連結部65の後ろ規制面65bからサイドカム63を介して
ハンドル40の角柱部40bに伝えられる。すなわち、背もたれ4のロッキングによって生じる背もたれ荷重は、サイドカム部64を介して
ハンドル40で支持される。
【0062】
そして、ロア連結部65の後ろ規制面65bは、側面視で
ハンドル40の軸心を通る背もたれ4の初期姿勢調節時における回動軌跡Oの接線と直交させている。このため、ロッキングに伴う背もたれ荷重によってサイドカム部64が回転しようとすることはなく、背もたれ荷重が安定的に支持される。つまり、背もたれ荷重によってサイドカム部64が意図することなく回転してしまう不具合はない。ロア連結部65の前規制面65aは後ろ規制面65bに対して傾斜しているが、これにより、ロア連結部65の内部は、その前後幅が下向きに広がるテーパ形状になっているため、背フレーム60に背もたれ4を組み付ける際に、両カム部63,64にロア連結部65を嵌め込み易くなると共に、金型を使用して成形するに際しての型抜きが容易になる。
【0063】
両カム部63,64は、センターカム部63の第1カム面63aが前規制面65aに当接しているときは、サイドカム部64の第1カム面64aが後ろ規制面65bに当接し、センターカム部63の第2カム面63bが前規制面65aに当接しているときは、サイドカム部64の第2カム面64bが後ろ規制面65bに当接し、センターカム部63の第3カム面63cが前規制面65aに当接しているときは、サイドカム部64の第3カム面64cが後ろ規制面65bに当接している。背フレーム60の後端には、後ろ壁60aを設けている。
【0064】
本実施形態では、
ハンドル40を回転操作することで背もたれ3の初期姿勢を3段階に調節することができ、かつ、背もたれ4は前後ガタ付き不能に保持される。なお、周面カム62の回転に対して抵抗が生じるが、ロア連結部65を弾性変形させることで、周面カム62を回転させることができる。ロア連結部65の左右側板には、当該ロア連結部65が回動することを許容するため、
ハンドル40が遊嵌する長穴71を設けている。
【0065】
この実施形態では、先にサイド連結部23を脚支柱14に連結し、次いで、周面カム62をロア連結部64に下方から嵌め込んでいる。そこで、
図13(A)に示すように、背フレーム60には、周面カム62を挿通する
ための逃がし穴60bが空いている。
【0066】
さて、前後の規制面65a,65bの前後間隔は下に行くに従って広がっているため、第1カム面63a,64aが当たる高さ位置と、第2カム面63b,64bが当たる高さ位置と、第3カム面63c,64cが当たる高さ位置が異なる。
【0067】
そこで、第1カム面63a,64aが当たっている高さ位置での前後規制面65a,66bの間隔寸法をL1、第2カム面63b,64bが当たっている高さ位置での前後規制面65a,65bの間隔寸法をL2、第3カム面63c,64cが当たっている高さ位置での前後規制面65a,65bの間隔寸法をL3とすると、第1カム面63a,64aの高さの和(69a+70a)をL1と略同じ寸法に設定し、第2カム面62b,63bの高さの和(69b+70b)をL2と略同じ寸法に設定し、第3カム面63c,64cの高さの和(69c+70c)をL3と略同じ寸法に設定している。これにより、前記規制面65a,66bを下広がりに傾斜させたものでありながら、背もたれ4をガタつきのない安定した状態に保持できる。
【0068】
(7).
第2実施形態
次に、
図14〜16に示す
第2実施形態を説明する。この実施形態では、図示しない背フレームの左右中間部に側面視で前傾姿勢の背支柱72を設け、背支柱72の上端部に、側面視く字形の回動部材73を左右横長のピン74で連結し、回動部材73ので上半部に背インナーシェル18を固定している。背支柱72は背フレーム(図示ぜず)に固定されるようになっているが、背フレームと一体構造にするのが好ましい。
【0069】
回動部材73は
、屈曲した頂点部の近傍がピン74で連結されており、また、背インナーシェル18のランバーサポート部22の頂点と回動部材73の頂点とは略一致している。このため、背インナーシェル18は
、ランバーサポート部22の高さ位置を中心にして回動する。背支柱72は左右の側板72aを有しており、回動部材73は左右側板72aの間に配置されている。本実施形態では
、背支柱72と回動部材73とは板金加工で製造しているが、ダイキャスト品や樹脂成形品も採用できる。
【0070】
回動部材73の角度を初期姿勢調節装置15で規制することにより、背インナーシェル18の初期姿勢が調節される。初期姿勢調節装置15は、基本的には第1実施形態と同じであり、周面カム62は
ハンドル40で回転操作される。
ハンドル40は背支柱72に回転自在に保持されており(従って、軸受けリブを背支柱72で兼用している)、図示していないが、右端部にはグリッ
プを設けている。この実施形態では、回動部材73の下部に、樹脂製のロア連結部65を下向きに突出した状態にビス等で固定している。
【0071】
(8).
第3実施形態
次に、
図17〜
図22に示す
第3実施形態を説明する。この
第3実施形態は
第1実施形態とほぼ共通しており、そこで、
第1実施形態と共通する部分については同じ符号を付して説明はなるべく省略し、主に相違点を説明する。また、背フレームは基本に
参考例と同じ構造になっており、第2背フレーム8に軸受けリブ61を設けている。
【0072】
例えば
図19に示すように、この実施形態では、周面カム62の左右両端に軸受け筒部75を一体に形成している一方、軸受けリブ61の内側面には、筒部75が嵌まる上下長手の長溝76を形成している。
ハンドル40の角形部40aが周面カム62の筒部75に貫通しているが、
図21(B)に明瞭に示すように、
ハンドル40における角形部40aの付け根部に一対の突起77を設ける一方、周面カム62における一方の筒部75には、突起77が嵌まる一対の切欠き部78を形成している。このため、周面カム62と
ハンドル40との一体性が高まっている。
【0073】
ハンドル40の先端には小径部79を形成しており、小径部79が、他方の軸受けリブ61に設けた軸受け穴80に回転自在に嵌まっている。そして、
ハンドル40の小径部79の先端に、軸心と直交した方向に突出した一対のストッパー片81を設けている一方、他方の軸受けリブ61の外面には、ストッパー片81が抜け不能に嵌まる段部81を形成している。他方の軸受けリブ61の軸受け穴80は前後に長い長穴になっており、従って、ストッパー片81は横向きにすることで軸受け穴80に嵌まり、ストッパー片81を軸受け穴80に嵌め込んでから
ハンドル40を90°回転させると、
ハンドル40は抜け不能に保持される。
【0074】
ハンドル40の差し込みは、周面カム62を左右軸受けリブ61の間にセットしてから行われる。
図21(B)に示すように、突起77の突出方向83とストッパー片81の突出方向84とを直交させている。
図19に示すように、
ハンドル40のうちグリップの基端には、背もたれ5がどのような姿勢であるかを表示するためのリブ40bを設けている。
【0075】
図21及び
図22に示すように、周面カム62の嵌め込みは、回転軸心を水平に対して傾斜した姿勢で左右軸受けリブ61の間に嵌め込んでから水平姿勢に戻す
、という手順で行われる。長溝76は上下に長いため、周面カム62を正面視で傾けることで
、左右の筒部75を左右の長溝76に嵌め込むことができ、回転軸心が水平になるように姿勢を戻すと
、周面カム62は前後動不能に保持される。
【0076】
そして、周面カム62及び
ハンドル40を軸受けリブ61に取り付けてから、背もたれ4のロア連結部65が周面カム62の筒部75に嵌め込まれる。この場合、
図19に示すように、ロア連結部65の長穴71は、上部が後ろに位置して下端が手前に位置するように側面視で傾斜していると共に、下向きに開口しているため、予めセットされている周面カム62の筒部75に嵌め込むことができる。
図20(B)に明瞭に示すよう、ロア連結部65における長穴71の開口部には、当該開口部の溝幅を狭くする弾性片65aを内向き(上向き)に突設している。このため、ロア連結部65を周面カム62の筒部75に嵌め込みは、弾性片65aを弾性変形させることで行われ、ロア連結部65が周面カム62の筒部75に嵌まり込むと、ロア連結部65は周面カム62の筒部75から抜けない状態に保持される。このため、組み立てに際して背もたれ4の姿勢を保持できる。
【0077】
また、参考例において説明したように、サイド連結部23のボス部30を背支柱18の軸受け部29に嵌め込むにおいては、背もたれ4を後傾状態にするが、ロア連結部65のうち
ハンドル40が嵌まる穴は長穴71になっているため、軸受け部29へのボス部30の嵌め込みと、
ハンドル40に対するロア連結部65の嵌め込みとを同時に行える。両者を嵌め込んでから背もたれ4を後ろに倒すと、背もたれ4は、サイド連結部23とロア連結部65との両方の箇所において上下方向と前後方向とに抜け不能に保持される。
【0078】
このように、周面カム62は手前側から軸受けリブ61にセットできるため、第2背フレーム8に逃がし穴を設ける必要はない。また、周面カム62に前後方向の荷重が掛かっても、筒部75が長溝76の内面に当たるため、
ハンドル40に荷重がかかることはない。
【0079】
例えば
図22に示すように(
図19も参照)、軸受けリブ61の前面部には、下端を自由端とした弾性片86が切り開き状に一体に形成されており、この弾性片86に係合穴87を設けている一方、周面カム62におけるセンターカム部63の各カム面63a,63b,63cには、係合穴87に嵌まる突起88をそれぞれ設けている。このため、いずれかの突起88が係合穴87に嵌まることで、使用者は周面カム62を所定の状態に回転させたことを感覚で把握できる。すなわち、
ハンドル40は、クリック感を持って正確に回転させることができる。
【0080】
なお、
図22(A)に示すように、左右軸受けリブ61の長溝71は、第2背フレーム8の下面に開口している。また、例えば
図20から理解できるように、
ハンドル40が嵌まる軸受け穴81,88は、手前に開口した長溝になっている。つまり、上下方向の長溝71と前後方向の長溝とで、軸受け穴81,88が形成されている。このため、型抜きを比較的簡単に行いつつ、軸受け穴81,88を形成できる(前後方向の長溝の成形は主たる金型の移動によって行われ、上下方向の長溝71の成形はスライド型によって行われる。)。
【0081】
(9).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、本願発明は背もたれがロッキングしない椅子にも適用できる。また、背もたれの形態・構造も様々に具体化できる。例えば
、前後開口のフレームにメッシュを張った構造を採用したり、クッションを備えずに軟質の背板を露出させた構成なども採用できる。
【0082】
初期姿勢調節装置も様々に具体化できる
。初期姿勢調節装置にカムを使用する場合、端面カム等の各種のカムを採用できる。初期姿勢調節装置にねじ式のハンドルを設けて、背もたれの初期姿勢を無段階に調節することも可能である。ピンやカム以外のロック機構を採用することも可能である。