特許第6353485号(P6353485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353485
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/40 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   A47C7/40
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-91175(P2016-91175)
(22)【出願日】2016年4月28日
(62)【分割の表示】特願2011-253294(P2011-253294)の分割
【原出願日】2011年11月18日
(65)【公開番号】特開2016-135412(P2016-135412A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2016年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】光瀬 智一
【審査官】 井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−101762(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3153974(JP,U)
【文献】 特開2006−320582(JP,A)
【文献】 特開2003−265264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00 − A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座と背もたれ、及び前記背もたれの後ろに配置された背アウターシェルとを備えており、前記背もたれは前記背アウターシェルに取付けられている一方、
前記座の下方には脚で支持されたベースが配置されていて、前記ベースに、後端に背支柱を設けた背フレームが後傾動可能に連結されており、前記背支柱は前記背もたれと背アウターシェルとの間に配置されており、このため、前記背もたれと背アウターシェルとの間には空間が空いている構成であって、
前記背アウターシェルの左右両側部及び上部に、前記空間に位置して前向きに突出した上下長手のサイドリブ及び左右横長のアッパリブが、壁状を成して一体に連続するように形成されており、前記背アウターシェルのうち前記サイドリブ及びアッパリブで囲われた内側の部位に、前記背支柱の上端部が下方から嵌まって左右動及び前後動不能に保持されている一方、
前記サイドリブとアッパリブとは、前記背アウターシェルの外周から内側に入り込んだ状態で形成されていて、前記背アウターシェルには、前記サイドリブの左右外側にはみ出た板状の外側部と、前記アッパリブの上にはみ出た板状の上部とが、互いに連続した状態に形成されており、
かつ、前記背アウターシェルのうち前記アッパリブから上にはみ出した上部に、側面視で斜め上向きに傾斜した後ろ向き突出部が形成されており、前記後ろ向き突出部に、左右長手で上下に貫通した開口が形成されている、
椅子。
【請求項2】
前記背もたれは、前記背アウターシェルに高さ位置変更可能に取付けられている、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記後ろ向き突出部の上端は前記背もたれの上端よりも下に位置している、 請求項1又は2に記載した椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれを備えた椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子において、背もたれの高さを変更可能とすることが行われている。その例が特許文献1,2に開示されている。このうち特許文献1のものは、左右の背支柱の間に背もたれを配置してこれをビス(ボルト)で支柱に固定する方式において、支柱のビス挿通穴を上下複数組設けて、ビスの挿通高さ位置を変えることで背もたれの高さを変えるものであり、いわゆる学習机用の木製椅子にはこの方式が多用されている。
【0003】
他方、特許文献2には、背もたれがばね手段に抗して後傾動するロッキング椅子において、ベースに後傾動自在に連結されたフレームに背もたれを上下スライド自在に装着することが開示されている。この特許文献2では、背もたれは所定のストロークの範囲内では任意の高さに設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−75533号公報
【特許文献2】特表2003−534876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、事務用に多用されている椅子では、背もたれを樹脂製の背インナーシェルの前面にクッションを張った構造にして、この背もたれをその後ろに配置したシェル状等のバックサポートに取り付けた構成が多い。そして、特許文献2のようなビス止めの位置を変える方式は、ビスの頭が露出するため美観を損なうと共に組み立て作業が面倒であり、事務用に多用されている椅子には適用し難い。
【0006】
他方、特許文献2の椅子は事務用に多用されているタイプであるが、特別の背もたれ支持構造を採用せねばならないため、一般性に欠けるという問題がある。また、着座した人の体圧によって背もたれがずり下がるおそれも懸念される。
【0007】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、
座と背もたれ、及び前記背もたれの後ろに配置された背アウターシェルとを備えており、前記背もたれは前記背アウターシェルに取付けられている一方、
前記座の下方には脚で支持されたベースが配置されていて、前記ベースに、後端に背支柱を設けた背フレームが後傾動可能に連結されており、前記背支柱は前記背もたれと背アウターシェルとの間に配置されており、このため、前記背もたれと背アウターシェルとの間には空間が空いている
という基本構成である。
【0009】
そして、上記基本構成において、
「前記背アウターシェルの左右両側部及び上部に、前記空間に位置して前向きに突出した上下長手のサイドリブ及び左右横長のアッパリブが、壁状を成して一体に連続するように形成されており、前記背アウターシェルのうち前記サイドリブ及びアッパリブで囲われた内側の部位に、前記背支柱の上端部が下方から嵌まって左右動及び前後動不能に保持されている一方、
前記サイドリブとアッパリブとは、前記背アウターシェルの外周から内側に入り込んだ状態で形成されていて、前記背アウターシェルには、前記サイドリブの左右外側にはみ出た板状の外側部と、前記アッパリブの上にはみ出た板状の上部とが、互いに連続した状態に形成されており、
かつ、前記背アウターシェルのうち前記アッパリブから上にはみ出した上部に、側面視で斜め上向きに傾斜した後ろ向き突出部が形成されており、前記後ろ向き突出部に、左右長手で上下に貫通した開口が形成されている」
という構成が付加されている。
【0010】
本願発明は請求項2,3の構成も含んでおり、このうち請求項2の発明は、請求項1において、前記背もたれは、前記背アウターシェルに高さ位置変更可能に取付けられている。また、請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記後ろ向き突出部の上端は前記背もたれの上端よりも下に位置している。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【発明の効果】
【0015】
本願発明では、背もたれは、その後ろに配置された背アウターシェルに取り付けるものであるため、背もたれを取り付けるための係合部が外部に露出することはなくて美観に優れていると共に、従来から広く行われているタイプの椅子に簡単に適用できるため、一般性・汎用性が高い。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る椅子の外観図で、(A)手前から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図、(C)は側面図である。
図2】(A)は椅子の主要構成要素の分離斜視図、(B)は背フレーム及び背アウターシェルの部分斜視図である。
図3】背フレームと背アウターシェルとの分離斜視図である。
図4】(A)は背フレームと背アウターシェルとの分離斜視図、(B)は背フレームと背アウターシェルとの連結部の部分的な縦断側面図、(C)は背フレームの後ろコーナー部の部分斜視図、(D)は背アウターシェルの部分的な斜視図である。
図5】(A)(B)とも肘掛け装置の取り付け構造を示す斜視図である。
図6】背アウターシェルと背フレームと背インナーシェルとを並べて配置した図である(背インナーシェルは裏返して表示している。)。
図7】背インナーシェルとバックサポートとの分離斜視図である。
図8】背インナーシェルとバックサポートとの分離斜視図である。
図9】(A)(B)は背インナーシェルの部分的な斜視図、(C)は背アウターシェルの部分的な斜視図である。
図10】(A)(C)は背アウターシェルの部分的な斜視図、(B)(D)は背インナーシェルの部分的な斜視図である。
図11】(A)はキャッチ部材と背アウターシェルとの分離斜視図、(B)はキャッチ部材を背インナーシェルに取り付けた状態での斜視図、(C)は背インナーシェルとキャッチ部材との分離斜視図、(D)はキャッチ部材の斜視図である。
図12】背もたれの略上半部を図6のY−Y線で切断した断面図である。
図13】背もたれの上半部を図6のY−Y線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用するが、この前後左右の文言は着座した人の向きを基準にしている。正面視方向は着座した人と対峙した方向であり、従って、正面視での左右と着座した人から見た左右とは逆になる。
【0022】
(1).椅子の概略
まず、椅子の概要を主として図1図3に基づいて説明する。本実施形態は事務用等に多用されている回転椅子に適用しており、図1に示すように、椅子は、脚支柱1及びキャスタを有する脚装置2と、脚支柱2の上端に固定したベース3と、ベース3の上に配置した座4と、着座した人がもたれ掛かり得る背もたれ5とを有している。
【0023】
ベース3の上には、図1(B)に表れている中間部材(座受け部材)6が配置されており、この中間部材6に樹脂製の座アウターシェル7が取り付けられている。座4は、樹脂製の座インナーシェル(座板)とその上面に重ね配置した座クッション材とを有しているが、本願との直接の関係はないので説明は省略する。
【0024】
図2に示すように、ベース3には背フレーム8が後傾動自在に連結されており、この背フレーム8に背アウターシェル12が取り付けられている。背フレーム8は、略前後方向に延びる左右のサイドアーム9とその後端に一体に繋がった左右横長のリア部10、及び、リア部10の後端から立ち上がった背支持部11とを有しており、この背支持部11に背アウターシェル12が取り付けられている。
【0025】
背支持部11は概ね板状の状態で立ち上がっており、その左右両側部には上向きに突出した背支柱13を一体に設けている(背支柱13も背支持部11の一部であり、従って、背支持部11は基部と左右背支柱13とを有する上向き開口コ字形になっている。)。左右サイドアーム9の前後中途部にはジョンイントバー14が一体に繋がっている。このため、背フレーム8は頑丈な構造になっている。
【0026】
なお、本実施形態の椅子はロッキングに際して座が後退しつつ後傾するシンクロタイプであり、ジョンイントバー14には、中間部材6に連結された連結軸15が一体成形又は溶接で設けられている。図3(A)で連結軸15の右端に嵌まっているのは、中間部材6に装着される抜け止めキャップである。
【0027】
背フレーム8は、ガラス繊維入りポリアミド系樹脂のようなエンジニアリングプラスチック製であるが、アルミ等の金属のダイキャスト品や板金製品も採用可能である。背アウターシェル12は、ポリプロピレン等の樹脂を素材にした成形品である。図1(B)に示すように、背アウターシェル12の上部は、側面視でカーブしながら斜め上向き姿勢で背もたれ5の後ろにはみ出た後ろ向き突出部12aになっており、この後ろ向き突出部12aの箇所は上下に開口している。すなわち、後ろ向き突出部12aには上下に貫通した開口12bが空いており、この開口12bは左右長手になっている。図1(C)や図13に明示するように、後ろ向き突出部12aの上端は、背もたれ5の上端よりも下に位置している。
【0028】
図1(A)に示すように、背もたれ5は、樹脂製の背インナーシェル(背板)16とその前面に張ったクッション17とを備えており、クッション17はクロス等の表皮材18で覆われている。表皮材18は背インナーシェル16の後ろに回り込んでいるが、背インナーシェル16の裏面の全体は覆っていない。背もたれ5は、背アウターシェル12に、2段階に高さを変えて取り付けられるようになっている。この点を次に説明する。
【0029】
(2).背フレームと背アウターシェルとの取り付け構造
まず、主として図3〜5を参照して背フレーム8に対する背アウターシェル12の取り付け構造を説明する。図4(A)に示すように、背支柱13は概ね角柱のような外観を呈しており、背支柱13の前面には、背支持部11の下端まで延びるサイド溝20が形成されている。また、背支柱13の上端には、左右外向きに突出したブロック部21が一体に形成されている。背支柱13の上端部とブロック部21との間には、上向き開口溝22が形成されている。
【0030】
他方、例えば図3に示すように、背アウターシェル12の左右側部には上下長手のサイドリブ23が形成されていると共に、サイドリブ23の内側には上下長手のミドルリブ24が形成されている。また、ミドルリブ24の外側に下向きに開口したポケット部25を形成しており、ポケット部25が背支柱13の上端部13aに上から嵌まっている。これにより、背アウターシェル12は背支柱13の上端部13aに対して左右動不能かつ前後動不能に保持されている。
【0031】
ポケット部25とサイドリブ23との間の空間には、ブロック部21がきっちり嵌まっている。また、ポケット部25の外側板25aが、背支柱13とブロック部21との間の上向き開口溝22に嵌まっている。なお、背アウターシェル12はその前面を成形する第1金型と裏面側を成形する第2金型とを主要要素とした金型装置で成形されるが、ポケット部25は第1金型に装着したスライド型によって成形される。
【0032】
サイドリブ23は、背アウターシェル12の側端からある程度の寸法だけ内側に寄った(入り込んだ)部位に設けている。従って、サイドリブ23の外側は、板状の外側部になっている。また、例えば図2(A)に示すように、左右サイドリブ23の上端には左右横長のアッパリブ26が一体に繋がっている一方、左右ミドルリブ23の下端には左右横長のロアリブ27が繋がって、ロアリブ27とアッパリブ26とは上下長手のインナーリブ28で繋がっている。アッパリブ26の上に位置した上部に、既述の後ろ向き突出部12aが形成されている。従って、アッパリブ26も、背アウターシェル12の上端よりも内側に入り込でいる。
つまり、背アウターシェル12の上部は板状になってアッパリブ26の上にはみ出ており、この上部に後ろ向き突出部12aが形成されている。また、例えば図6に明示するように、アッパリブ26の上にはみ出た上部とサイドリブ23の外側にはみ出た外側部とは、一体に連続している。
【0033】
図4(A)(B)に示すように、背アウターシェル12の下部の左右中間部には、左右側板29aの前端にバー部29bが連結された下部ストッパー29を前向きに突設している一方、背フレーム8の背支持部11には、下部ストッパー29が嵌まる下部ストッパー穴30を形成している。
【0034】
そして、下部ストッパー29のバー部29bに、側面視で斜め後ろ上に突出した爪片29cを形成している一方、下部ストッパー穴30の上内面には、爪片29cが手前から引っ掛かり係合する係合段部31を形成している。このため、背アウターシェル12は、上向き抜け不能に保持されている。下部ストッパー29と下部ストッパー穴30とは、背アウターシェル12を上向き移動不能及び後ろ向き離反不能に保持する係止手段の一例である。
【0035】
背アウターシェル12を背フレーム8に対して上向き動不能及び後ろ向き離反不能に保持することは、背アウターシェル12の下端の左右コーナー部の箇所でも行われている。すなわち、図4(A)(C)(D)に示すように、背アウターシェル12の左右コーナー部に、側面視で斜め後ろ上向きに突出したコーナー係合爪32を設けている一方、背フレーム8の左右後部のコーナー部には、コーナー係合爪32が嵌まるコーナー係合穴33を形成している。コーナー係合穴33には、コーナー係合爪32が弾性変形してから戻ることで引っ掛かる下向きのコーナー係合突起34を形成している。図4(A)(D)では、コーナー係合爪32の嵌め込み方向を矢印35で示している。
【0036】
なお、図5に示すように、ブロック部21には後ろ向きに開口した凹部36が形成されており、この凹部36には、固定式肘掛け37の上端部38を嵌め込んでビス39で固定することができる。固定式肘掛け37の上端部38には、ナット40が嵌まるナット穴41をその先端に開口するように形成しており、ビス39はブロック部21に前から挿通されてナット40にねじ込まれる。固定式肘掛け37を取り付けるときは、背アウターシェル12のサイドリブ23のうちポケット部25の外側の部分23aは除去又は内向きに折り込まれる。この除去又は折り込み(折り返し、折り畳み)を容易ならしめるため、サイドリブ23には上下2本のスリット42を形成している(除去される部分23aの付け根も薄肉化している。)。
【0037】
(3).第1係合部
次に、背もたれ5の取り付け構造を、主として図6以下の図面を参照して説明するが、これに先だって、背インナーシェル16の基本構成を説明しておく。
【0038】
背インナーシェル16はポリプロピレン等の樹脂を素材とした成形品であるが、略下半部には多数の横長スリット45が多段に形成されている。背インナーシェル16は横長スリット45の群を有しつつ全体としては連続しており、このため、おおよそ下半部はきわめて柔軟な構造になっている。また、背インナーシェル16には、ある程度の腰を持たせるために、多数の横長リブ46を形成している。
【0039】
本実施形態では、背もたれ5を背アウターシェル12に連結する手段として、背インナーシェル16の背面に、その上部でかつ左右両側部に位置した第1前部係合部47と、下端寄り部位でかつ左右両側部に位置した第2前部係合部48と、上側でかつ中心寄りに位置した左右一対の第3前部係合部49と、第3前部係合部49の左右外側に位置した第4前部係合部40とを形成している。他方、背アウターシェル12には、第1前部係合部47に対応した左右の第1後部係合部51と、第2前部係合部48に対応した第2後部係合部52と、第3前部係合部49に対応した第1後部係合部53と、第4前部係合部50に対応した第4後部係合部54とを設けている。
【0040】
図11(B)(C)に示すように、第1前部係合部47は、左右の羽根部47aを有していて基本的には底面視Tになっており、羽根部47aの上端には上面板47bが連続している。他方、第1後部係合部51は背アウターシェル12とは別体のキャッチ部材で構成されている。そしてこの第1後部係合部51は、背インナーシェル16に重なる基板51aから左右足部51bを手前に突出させた平面視コ字形の基本形態であり、左右足部51bの前端に、第1前部係合部47を手前から抱持する内向きフランジ51c形成されている。内向きフランジ51cの上下内面は、第1前部係合部47の誘い込みのため傾斜ガイド面になっている。
【0041】
第1後部係合部51の基部51aには、上下一対の外向きフランジ51dを形成している。他方、背アウターシェル12には、第1後部係合部51の上下外向きフランジ51dを手前から抱持するキャッチ部55の対が、上下に2対(2組)ずつ形成されている。キャッチ部55はサイドリブ23に寄った箇所に配置しており、従って、第1後部係合部51は、ミドルリブ24の側に寄せた状態で背アウターシェル12に近接させてから左右外側にずらすことにより、キャッチ部55に装着される。これにより、第1後部係合部51背アウターシェル12に前向き移動不能に取り付けられる。
【0042】
図11(B)に示すように、キャッチ部55の対の間には左右横長のリブ56を設けているが、このリブ56に凹所56aを形成している一方、図11(C)に示すように、第1後部係合部51の後面には、凹所56aに嵌まる後ろ向き突起51eを形成している。このため、第1後部係合部51は、簡単には脱落しない状態で背アウターシェル12に保持される(組み立て工程で背アウターシェル12をひっくり返す等しても、第1後部係合部51が脱落することはない。)。例えば図7に示すように、キャッチ部55の左右外側には、第1後部係合部51を位置決めするための規制板57が設けられている。
【0043】
そして、背もたれ5の上部を背アウターシェル12に重ねてから下にずらすことにより、背インナーシェル16の第1前部係合部47が背アウターシェルの第1後部係合部51に上から嵌合し、これにより、背もたれ5の上部は背アウターシェル12に対して前後離反不能で左右動不能に保持される。背もたれ5の高さ位置は、第1前部係合部47の上面板47bが第1後部係合部51に当たることで規制できる。
【0044】
また、背アウターシェル12にはキャッチ部55を上下に2組形成しているため、第1後部係合部51を上下いずれかのキャッチ部55に取り付けることにより、背もたれ5の高さを2段階に変更できる。図7図11(A)では上下2個の第1後部係合部51を表示しているが、実際に使用するのは上下いずれか一方(左右2個)である。また、図6では第1後部係合部51は表示していない。第1後部係合部51は樹脂の成形品である。
【0045】
(4).第2係合部
10(B)に示すように、背インナーシェル16の第2前部係合部48は後ろ向きに突出しており、その先端(後端)に平面視内向きの係合爪48aを設けている。他方、第2後部係合部52は、背フレーム8を構成する背支持部11のサイド溝20の内部に形成されており、従って、第1前部係合部48は、サイド溝20に嵌まって左右動不能に保持される。そして、第2後部係合部52は、第1前部係合部48の係合爪48aが弾性変形して乗り越えて、乗り越えると手前に戻り不能に引っ掛かる矢尻状の係合突起になっている。
【0046】
第1前部係合部47を第1後部係合部51に嵌め込んだ状態(すなわち通常の使用状態)では、第2前部係合部48は第2後部係合部52と重なる高さに位置しており、従って、背もたれ5の取り付けに際しては、まず、第1前部係合部47を第1後部係合部51に嵌め込んでから、背もたれ5を背アウターシェル12に対して強く押し付けると、第2前部係合部48の係合爪48aは弾性変形してから第2後部係合部52の後ろに移行し、これにより、背もたれ5は手前に離反不能に保持される。
【0047】
また、図10(B)に明示するように、第2後部係合部52は第2前部係合部48の上向き動を阻止する上規制部52aも有しており、このため、背もたれ5は上向き動不能に保持される。背もたれ5を取り外すに際しては、背もたれ5の下端部を下向きに引っ張ることで第2前部係合部48を下方にずらし、それから背もたれ5の下部を手前に移動させる。背インナーシェル16多数の横長スリット45存在することにより、背もたれ5の下端を引っ張ると背もたれの下半部が伸びて第2前部係合部48は下降動するため、第2後部係合部52に対する係合を解除することができる。
【0048】
(5).第3係合部・第4係合部
図7〜9に示すように、第3前部係合部49は下向きに延びるレバー形状になっており、背インナーシェル16に切り抜き形成した状態になっている。そして、第3前部係合部49の付け根寄りの上部に角形の係合穴59を空けており、この係合穴59が第3後部係合部53に嵌まるようになっている。第3後部係合部53は、下面を係合面とする側面視三角形に形成されている。
【0049】
図12,13に示すように、第3前部係合部49は、背インナーシェル16に形成した後ろ向き突出部60から下向きに延びるレバー状(舌状)の形態になっており、その全体が背インナーシェル16の後ろに位置している。第3前部係合部49はレバー状であるため指をかけて操作がしやすく、モーメントを掛けて容易に引き起こすことができる。第3前部係合部49の下端は指掛け部49aになっている。なお、背もたれ5の上向き動阻止機能は、この第3係合部49,53が最も強く担っている。
【0050】
第3前部係合部49は、背インナーシェル16のうち横長スリット45の群を設けている部分の上部に設けている。従って、図12に一点鎖線で示すように、背インナーシェル16は、第2前部係合部48と第2後部係合部52との係合を解除してから下端を手前に引くと、背インナーシェル16の下半部を手前に捲ることができる。これにより、人指先を第3前部係合部49に掛けてこれを手前に引くことにより、第3係合部49,53の係合状態を解除できる。
【0051】
このように、第3係合部49,53は背アウターシェル12の上下中途高さ位置に配置しているため、通常の状態で第3前部係合部49を手前を起こすことはできず、従って、背もたれ5を上向き動不能に的確に保持できるが、かかる保持機能を発揮しつつ、取り外しは簡単に行えるのである。
【0052】
例えば図7に示すように、第3前部係合部49の内側部には側面視上向き鉤型の補助係合爪49bを設けている。そして、背インナーシェル16のうち補助係合爪49bの上側には、第3前部係合部49を手前に引くと補助係合爪49bが引っ掛かる補助係止部49cを設けている。従って、第3前部係合部49を手前に引いた状態に保持できる。
【0053】
このように補助係合爪49bと補助係止部49cとを有するため、背もたれ5を取り外すに際しては、左右の第3前部係合部49を1つずつ簡単に係合解除できる。従って、片方の第3前部係合部49を手前に引いた状態に保持しておく必要がなくて、背もたれ5の取り外し作業を楽に行える。補助係合爪49bと補助係止部49cとは1つの第3前部係合部49について左右一対ずつ設けてもよい。また、片側だけに設ける場合、左右方向の外側に設けてもよい。
【0054】
図9に示すように、第4前部係合部50は略角形の形態を成して後ろ向きに突出しており、その先端に、平面視で斜め手前外向きに突出した係合爪50aを形成している。他方、第4後部係合部54は、ミドルリブ24の外側に配置した上下長手の補助リブ62の内側面に突設しており、爪状の形態を成している。第4前部係合部50は、補助リブ62とミドルリブ24との間に入り込んでいる。従って、背もたれ5は、第4係合部50,54の嵌まり合いによって手前にずれ不能に保持されているのみならず、補助リブ62とミドルリブ24との規制作用で左右動不能に保持されている。
【0055】
第3係合部49,53は背もたれ5を上下動不能に保持するものであり、背もたれ5が手前に離反することを阻止する機能は備えていないが、第4係合部50,54が第3係合部49,53と略同じ高さ位置にあってその左右外側に位置しているため、例えば、背インナーシェル16のうち使用者の体圧によって第3係合部49,53の近辺に前後方向の振動が作用しても、第3前部係合部49が第3後部係合部53から外れるようなことはない。この点、本実施形態の利点の一つである。
【0056】
背インナーシェル16を所定の高さよりやや高い状態にして背アウターシェル12に重ねてから下向きにずらすと、第1前部係合部47が第1後部係合部51に嵌まり込むと共に、第4前部係合部50が第4後部係合部54に係合し、かつ、第3前部係合部49は、第1及び第4係合部47,51,50,54の嵌まり合いに誘われて、弾性変形してから戻り変形することで、第3後部係合部53に嵌合する。これにより、背もたれ5は前後動不能及び左右動不能で前後動不能に保持される。背もたれ5を手前に捲ることにより(或いは上向きに折り返すことにより)、第3前部係合部49を手前に引いて第3後部係合部53から離脱させることができる。すると、背もたれ5を上にずらと、第4前部係合部50と第4後部係合部54との係合を解除できる。
【0057】
図9(B)に示すように、第4前部係合部50の付け根寄り部位には、第4後部係合部54に手前から当接するストッパー片50bを設けている。このため、背インナーシェル16のうち第4前部係合部50の近辺部が前後方向にバウンドするようなことはない。これにより、第3前部係合部49が第3後部係合部53から外れることを確実に防止できる。
【0058】
例えば図7に示すように、背インナーシェル16の上部でかつ左右中間部に角形のアッパ突起63を設けており、このアッパ突起63が背アウターシェル12における左右インナーリブ28の間にきっちり嵌まるようになっている。また、アッパ突起63の左右両側には、ミドル突起28に当接する段部64を形成している。このアッパ突起63と段部64とによっても、背もたれ5の上部の前後位置と左右位置とが規定されている。
【0059】
なお、例えば図7に示すように、背インナーシェル16の背面には、表皮材18の周縁に取り付けたテープを嵌め込み係止するテープキャッチ66が、周方向に沿って多数形成されている。このテープキャッチ66の群は、背アウターシェル12のサイドリブ23の内側に位置している。このため、背インナーシェル16はサイドリブ23の外側には露出しておらず、従って、美観を損なうことはない。
【0060】
(6).まとめ・その他
既に述べたように、最初に第1及び第4係合部47,51,50,54を嵌め合わせると、第3係合部49,53が互いに嵌まり合い、次いで、背もたれ5の下部を背アウターシェル12に向けて押し付けると、第2係合部48,52が互いに嵌まり合う。この簡単な操作により、背もたれ5を背アウターシェル12及び背支持部11に取り付けることができる。
【0061】
そして、後部係合部51〜54は上下に離間して2組ずつ形成されているため、前部係合部47〜50を上下いずれかの後部係合部51〜54に選択して係合させることにより、背もたれ5を上下後部係合部51〜54の高さ寸法H(図6参照)だけ高さ変更(調節 )することができる。すなわち、ローバックタイプをミドルバックタイプに変更したり、ミドルバックタイプをハイバックタイプに変更したりすることができる。
【0062】
取り外す場合は、背もたれ5の下端部を下向きに引っ張ってから手前に引くことで第2係合部48,52の係合を解除し、次いで、背もたれ5の下半部を手前に捲って(或いは折り返して)第3前部係合部49を第3後部係合部53から外し、次いで、背もたれ5の全体を上向きにずらして、第1係合部47,51と第4係合部50,54との係合を解除したらよい。
【0063】
本実施形態のように第4係合部50,54を設けると、上記したように第3係合部49,53の係合状態を確実に保持できる利点がある。また、本実施形態のように背フレーム8の背支持部11バックサポートの一部に利用すると、背アウターシェル12に過大な負担が作用することを防止して高い体圧支持強度を確保できる利点がある。
【0064】
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、適用対象はロッキング椅子には限らず、会議等に多用されているパイプ椅子などにも適用できる。バックサポートは背アウターシェルのみで構成してもよい
【0065】
各係合部は種々の形態に変更できる。キャッチ部材は第1後部係合部以外の部位に適用することも可能である。また、複数の係合部をキャッチ部材で構成することも可能である。背もたれに前部係合部を複数組形成して、バックサポートには後部係合部を1組だけ形成することも可能である。係合部の組を3組以上設けて、背もたれの高さを3段階以上に変えることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本願発明は椅子に具体化することができる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0067】
5 背もたれ
8 背フレーム
11 背支持部
12 背アウターシェル
12a 背アウターシェルの後ろ向き突出部
12b 背アウターシェルの開口
13 背支柱
16 背インナーシェル
23 サイドリブ
24 ミドルリブ
25 ポケット部
45 横長リブ
26 アッパリブ
47 第1前部係合部
48 第2前部係合部
49 第3前部係合部
50 第4前部係合部
51 第1後部係合部(キャッチ部材)
52 第2後部係合部
53 第3後部係合部
54 第4後部係合部
55 キャッチ部
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