特許第6353500号(P6353500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353500
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】DKK1抗体およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20180625BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20180625BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20180625BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20180625BHJP
【FI】
   C07K16/18ZNA
   A61K39/395 D
   A61K39/395 N
   A61P19/08
   !C12N15/13
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】94
(21)【出願番号】特願2016-175266(P2016-175266)
(22)【出願日】2016年9月8日
(62)【分割の表示】特願2013-536812(P2013-536812)の分割
【原出願日】2011年10月27日
(65)【公開番号】特開2017-43619(P2017-43619A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2016年9月29日
(31)【優先権主張番号】61/407,128
(32)【優先日】2010年10月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイリアム・グリーソン・リチヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】シエン・セン・ルウ
(72)【発明者】
【氏名】ホワ・ジユウ・コー
(72)【発明者】
【氏名】チヤオヤン・リー
(72)【発明者】
【氏名】フレデリツク・ダブリユ・ジエイコブセン
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−508881(JP,A)
【文献】 特表2009−523421(JP,A)
【文献】 JOURNAL OF BONE AND MINERAL RESEARCH,2009年,Vol.24, No.3,pp.425-436
【文献】 H. Glantschnig et al.,Fully Human anti-DKK1 Antibodies Increase Bone Formation and Resolve Osteopenia in Mouse Models of E,J Bone Miner Res,2008年,Vol.23 (Suppl 1),p.S60
【文献】 M. Grisanti et al.,Dkk-1 Inhibition Increases Bone Mineral Density in Rodents.,J Bone Miner Res,2006年,Vol.21 (Suppl 1),p.S25
【文献】 GLANTSCHNIG H. et al.,J Biol Chem.,2010年10月 7日,Vol.285, No.51,pp.40135-40147
【文献】 BLOOD,2007年,Vol.109, No.5,pp.2106-2111
【文献】 JOURNAL OF ORTHOPAEDIC RESEARCH,2010年 7月,Vol.28,pp.928-936
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00−16/46
A61K 39/395
A61P 19/08
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号223〜228のアミノ酸配列を、それぞれ、軽鎖CDR1〜3および重鎖CDR1〜3として含み、ヒトDKK1に結合し、ヒトDKK1活性を阻害する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号94および96に示されるアミノ酸配列をそれぞれ軽鎖可変部および重鎖可変部として含み、ヒトDKK1に結合する、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
配列番号2のアミノ酸221〜236および/または246〜262の不連続エピトープに特異的に結合する、請求項1または2に記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
エピトープが高次構造的である、請求項3に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
Kremin2のヒトDKK1への結合を遮断する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
2.510E−04(1/s)以下のKdでヒトDKK1と結合する、請求項5に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
患者において骨塩密度を増加させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
1×10−7M未満の親和性を有し、DKK1活性を阻害する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗体を含む、骨障害を治療するための薬学的組成物。
【請求項9】
骨障害が、骨折である、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、薬学的組成物。
【請求項11】
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体のうちの1つ以上と組み合わされる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
骨折修復を加速させるための薬学的組成物であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載のDKK1抗体またはその抗原結合断片およびスクレロスチン抗体またはその抗原結合断片の組み合わせを含む、薬学的組成物。
【請求項13】
前記DKK1抗体またはその抗原結合断片及びスクレロスチン抗体またはその抗原結合断片が、同時に投与される、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記DKK1抗体またはその抗原結合断片及びスクレロスチン抗体またはその抗原結合断片が、骨折から1日以内に投与される、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記DKK1抗体またはその抗原結合断片及びスクレロスチン抗体またはその抗原結合断片が、二重特異性または多特異性の成分である、請求項12に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年10月27日に出願された米国仮出願第61/407,128号の利益を主張し、これは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、電子形式の配列表と共に出願されている。この配列表は、2011年9月21日に作成された72.1kbの大きさのA−1574−WO−PCT_seqlist.txtと題されたファイルとして提供される。配列表の電子形式の情報は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、dickkopf−1(DKK1)タンパク質の選択的結合剤、より具体的には、DKK1タンパク質への選択的結合を媒介する抗体および抗原結合ドメインおよびCDR領域に関する。
【背景技術】
【0004】
個人の生涯にわたり、骨量に対して2、3の異なる段階の変化が生じる(Riggs,West J.Med.154:63 77(1991)を参照)。第1の段階は男性と女性の両方に起こり、ピーク骨量に到達するまで進行する。この第1の段階は、軟骨内の成長板の直線的な成長と、ある速度の骨膜付着による橈骨の成長を通して達成される。第2の段階は、30歳頃に海綿骨(椎骨および骨盤により一般的に見られる平らな骨)で、そして40歳頃に皮質骨(例えば、主に肢等の長骨に見られる)で始まり、老齢まで継続する。この段階は、緩徐な骨量減少によって特徴付けられ、男性と女性の両方に起こる。女性では第3の骨量減少段階も生じ、これは閉経後のエストロゲン欠乏に起因する可能性が最も高い。この段階の間だけで、女性は、皮質骨および骨梁内区画からさらなる骨量を失う恐れがある(Riggs、上記を参照)。
【0005】
骨塩量の減少は、多種多様な状態によって引き起こされ得、医学上の重大な問題を生じさせる場合がある。例えば、骨粗鬆症は、ヒトにおける衰弱性疾患であり、骨格の骨量と塩密度の著しい低下、骨微細構造の分解を含めた骨の構造上の劣化、ならびに罹患した個体における骨脆弱性(即ち、骨強度の低下)および骨折しやすさの対応する増大によって特徴付けられる。通常、ヒトにおける骨粗鬆症に先行して、米国における約2500万人の人々に見られる状態である臨床的な骨減少症(骨塩密度が1標準偏差より大きいが、若年成人の骨の平均値を下回る2.5標準偏差未満である)が起こる。米国ではさらに700〜800万人の患者が臨床的な骨粗鬆症であると診断されている(成熟した若年成人の骨の平均値を下回る2.5標準偏差より大きい骨塩密度として定義される)。ヒト集団における骨粗鬆症の頻度は、年齢と共に増大する。白人の間では、骨粗鬆症は、女性に圧倒的に多く、米国においては、骨粗鬆症患者プールの80%を占める。高齢者における骨格の骨の脆弱性および骨折しやすさの増大は、この集団における偶発的な転倒の危険性がより高いことによって悪化する。骨粗鬆症に伴う最も一般的な損傷には、腰、手首、および椎骨の骨折がある。股関節の骨折は特に、患者にとって極めて厄介であり、費用がかかり、また女性とっては、高い死亡率および罹患率と関連している。
【0006】
骨粗鬆症は、骨量低下による骨折のリスクが増大すると見なされているが、骨格障害のための現在利用可能な治療には成人の骨密度を増大させ得るものがほとんどなく、現在利用可能な治療の大部分は主に、新たな骨形成を刺激するというよりもさらなる骨吸収の阻害に効き目がある。エストロゲンは現在、骨量減少を遅延させるために処方されている。しかしながら、患者に何らかの長期の利点があるか、またエストロゲンが75歳を超える患者に対して何らかの効果を示すかをめぐるいくつかの論議が存在する。カルシトニン、ビタミンKを含むオステオカルシン、またはビタミンDを含むもしくは含まない高用量の食事性カルシウムが閉経後の女性のために提案されている。しかしながら、高用量のカルシウムは望ましくない胃腸の副作用を有することが多く、血清および尿のカルシウム濃度を持続的にモニターしなければならない(例えば、Khosla and Riggs,Mayo Clin.Proc.70:978982,1995)。
【0007】
骨粗鬆症への現在の他の治療的アプローチには、ビスホスホネート(例えば、Fosamax(商標)、Actonel(商標)、Bonviva(商標)、Zometa(商標)、オルパドロネート、ネリドロネート、スケリッド(skelid)、ボネフォス)、副甲状腺ホルモン、カルシウム分解物(calcilytic)、タンパク質同化ステロイド、ランタン塩およびストロンチウム塩、ならびにフッ化ナトリウムが挙げられる。しかしながら、そのような治療薬は、望ましくない副作用を伴うことが多い(Khosla and Riggs、上記参照)。
【0008】
Dickkopf−1(DKK1)は、骨発生および骨形成における中心的な役割を担うWntシグナル伝達経路の負の調節因子であることが分かっている、タンパク質のdickkopfファミリーのメンバーである(例えば、Glinka et al.,Nature 391:357−62(1998)、Fedi et al.,J Biol Chem 274(27):19465−72(1999)、Zorn,Curr Biol 11:R592−95(2001)、およびKrupnik et al.,Gene 238:301−13(1999)を参照)。DKK1は、Wnt共受容体LRP5またはLRP6およびクレメン(kremen)タンパク質との相互作用を通じてWntシグナル伝達を阻害する(例えば、Bafico et al.,Nature Cell Biol 3:683(2001)、Mao et al.,Nature 411(17):321(2001)、Mao et al.,Nature 417:664(2002)、およびSemenov et al.,Curr Biol 11:951−61(2001)を参照。LRP5(LRP6)およびクレメンタンパク質に結合させることによって、DKK1は、LRP5またはLRP6がWnt経路のメンバーと結合することを防いで、Wnt媒介シグナル変換を防ぎ、次いで骨形成阻害に至る。
【0009】
DKK1受容体LRP5/6は、骨質量を調節する上で重要なタンパク質である(例えば、Gong et al.,Cell 107:513−23(2001)、Patel,N Eng J Med 346(20):1572(2002)を参照)。低骨質量によって特徴付けられる常染色体性劣性障害(骨粗鬆症−偽性膠腫症候群、または「OPPG」)は、LRP5における機能喪失変異が原因であるものとして確認されている(Gong et al.,2001)。さらに、LRP5における機能獲得変異により、ヒトにおいて常染色体優性の高骨質量を生じさせることが示されている(Little et al.,Am J Human Genetics.70(1):11−19,2002)。高骨質量を生じさせるLRP5における同じ変異は、DKK1の能力を妨害してLRP5シグナル伝達を阻害することができる(例えば、Boyden et al.,N Eng J Med.346(20):1513−1521,2002を参照)。したがって、DKK1は、骨沈着の負の調節因子であるとして特徴付けられるのが相応である。
【0010】
骨の過成長および強くて緻密な骨によって示される骨格の疾患である硬結性骨化症では、SOST遺伝子産物であるスクレロスチンが欠如している(Brunkow et al.,Am.J.Hum.Genet.,68:577 589,2001、Balemans et al.,Hum.Mol.Genet.,10:537 543,2001)。スクレロスチン阻害剤は、骨鉱化の速度を増加させ、ひいては、骨塩密度を増大させることが示されている(Padhi et al.,J Bone Miner Res.2010 Jun、プリントに先んじて電子公開)。同様に、DKK1は、骨形成の調節、特に、骨折修復、ならびに骨量減少と関連する様々な他の疾患(例えば、癌および糖尿病)におけるその役割に関与することが分かっている。
【0011】
現行の治療法の欠点を考慮し、骨粗鬆症等の骨量減少の分野において改善された治療法、ならびに他の骨障害のうちで改善された骨折修復が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Riggs,West J.Med.154:63 77(1991)
【非特許文献2】Khosla and Riggs,Mayo Clin.Proc.70:978982,1995
【非特許文献3】Glinka et al.,Nature 391:357−62(1998)
【非特許文献4】Fedi et al.,J Biol Chem 274(27):19465−72(1999)
【非特許文献5】Zorn,Curr Biol 11:R592−95(2001)
【非特許文献6】Krupnik et al.,Gene 238:301−13(1999)
【非特許文献7】Bafico et al.,Nature Cell Biol 3:683(2001)
【非特許文献8】Mao et al.,Nature 411(17):321(2001)
【非特許文献9】Mao et al.,Nature 417:664(2002)
【非特許文献10】Semenov et al.,Curr Biol 11:951−61(2001)
【非特許文献11】Gong et al.,Cell 107:513−23(2001)
【非特許文献12】Patel,N Eng J Med 346(20):1572(2002)
【非特許文献13】Little et al.,Am J Human Genetics.70(1):11−19,2002
【非特許文献14】Boyden et al.,N Eng J Med.346(20):1513−1521,2002
【非特許文献15】Brunkow et al.,Am.J.Hum.Genet.,68:577 589,2001、Balemans et al.,Hum.Mol.Genet.,10:537 543,2001
【発明の概要】
【0013】
骨形成の増加を必要とする状態、例えば、多発性骨髄腫等の病的状態と関連する骨折修復または骨量減少を治療するのに効果的な新規のDKK1阻害剤が、本明細書に提供される。さらに、DKK1およびスクレロスチン阻害剤の組み合わせを含む骨同化を増大させる薬剤の組み合わせが、本明細書に提供される。これらの組み合わせは、例えば、骨粗鬆症の治療、骨折治癒の加速、および骨形成速度の増加を必要とする任意の数の状態の治療に使用することができる。組み合わせは、2つの別々の阻害剤、例えば、抗スクレロスチン抗体および抗DKK1抗体であり得るか、または単一の分子的実体、例えば、二重特異性抗体を含む二重特異性分子であり得る。
【0014】
また、DKK1と結合する様々な抗体も本明細書に提供される。抗DKK1剤はまた、DKK1とLRP5および/もしくはLRP6との間の結合を遮断するか、または低下させ、それによって、Wntシグナル伝達と関連する少なくとも1つの活性を刺激することもできる。薬剤は、抗体またはその免疫学的に機能的な断片であり得、それ故に、天然の構造を有する抗体、ならびに抗原結合ドメイン(例えば、ドメイン抗体)を有するポリペプチドが含まれる。抗体および断片は、骨量の減少に関連する状態の予防または治療を含む様々な異なる疾患を治療するために、または新しい骨の生成を刺激するために、ならびに様々な非骨関連障害に使用することができる。また、抗体の生成に有用な核酸分子、ベクター、および宿主細胞、ならびに選択的結合剤も提供される。
【0015】
提供される抗体および免疫学的に機能的な断片の一部には、以下の軽鎖(LC)相補性決定領域(CDR)のうちの1つ以上を含む:(i)配列番号97、103、109、115、121、127、133、139、145、151、157、163、169、175、181、187、193、199、205、211、217、または223と少なくとも80%の配列同一性を有するLC CDR1、(ii)配列番号98、104、110、116、122、128、134、139、146、152、158、164、170、176、182、188、194、200、206、212、218、または224と少なくとも80%の配列同一性を有するLC CDR2、および(iii)配列番号99、105、111、117、123、129、135、140、147、153、159、165、171、177、183、189、195、201、207、213、219、または225と少なくとも80%の配列同一性を有するLC CDR3。提供される抗体および免疫学的に機能的な断片の一部には、前述のLC CDRのうちの1つ以上、ならびに/または以下の重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)のうちの1つ以上が含まれる:(i)配列番号100、106、112、118、124、130、136、142、148、154、160、166、172、178、184、190、196、202、208、214、220、または226と少なくとも80%の配列同一性を有するHC CDR1、(ii)配列番号101、107、113、119、125、131、137、143、149、155、161、167、173、179、185、191、197、203、209、215、221、または227と少なくとも80%の配列同一性を有するHC CDR2、ならびに(iii)配列番号102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、または228と少なくとも80%の配列同一性を有するHC CDR3。提供される抗体および免疫学的に機能的な断片の一部にはまた、上記の1つ以上のLC CDRおよび1つ以上のHC CDRも含まれる。
【0016】
そのような抗体または断片は、DKK1ポリペプチドに特異的に結合することができる。ある抗体または断片は、前述のCDRのうちの1個、2個、3個、4個、5個、または6個全てが含まれる。
【0017】
他の抗体または断片の軽鎖および重鎖は、上記に記載される通りであるが、前述の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。またその他の抗体またはその断片は、CDR1が、配列番号97、103、109、115、121、127、133、139、145、151、157、163、169、175、181、187、193、199、205、211、217、もしくは223に記載されるアミノ酸配列を有し、CDR2が、配列番号98、104、110、116、122、128、134、139、146、152、158、164、170、176、182、188、194、200、206、212、218、もしくは224に記載されるアミノ酸配列を有する、および/またはCDR3が、配列番号99、105、111、117、123、129、135、140、147、153、159、165、171、177、183、189、195、201、207、213、219、もしくは225に記載されるアミノ酸配列を有する、軽鎖を有するものである。いくつかの抗体および断片はまた、CDR1が、配列番号100、106、112、118、124、130、136、142、148、154、160、166、172、178、184、190、196、202、208、214、220、もしくは226に記載されるアミノ酸配列を有し、CDR2が、配列番号101、107、113、119、125、131、137、143、149、155、161、167、173、179、185、191、197、203、209、215、221、もしくは227に記載されるアミノ酸配列を有する、および/またはHC CDR3が、配列番号102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、もしくは228に記載されるアミノ酸配列を有する、重鎖も有し得る。ある抗体または断片には、配列番号99、105、111、117、123、129、135、140、147、153、159、165、171、177、183、189、195、201、207、213、219、もしくは225のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、および/または配列番号102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、もしくは228のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3が含まれる。
【0018】
提供されるある他の抗体および免疫学的に機能的な断片には、(a)配列番号10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66、70、74、78、82、86、90、または94と80%、85%、90%、92%、95%、またはそれ以上の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)、(b)配列番号12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76、80、84、88、92、または96と少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)、あるいは(c)(a)のVLおよび(b)のVHが含まれる。
【0019】
その他の抗体または断片は、構造が類似しているが、VLが、配列番号10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66、70、74、78、82、86、90、もしくは94と少なくとも90%、92%、またはより好ましくは95%の配列同一性を有し、VHが、配列番号12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76、80、84、88、92、もしくは96と少なくとも90%の配列同一性を有する。ある抗体または断片では、VLが、配列番号84、28、または32と少なくとも98%の配列同一性を有し、VHが、配列番号10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66、70、74、78、82、86、90、または94と少なくとも98%の配列同一性を有する。また他の抗体または断片は、配列番号10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66、70、74、78、82、86、90、もしくは94のアミノ酸配列を有するVL、および/または配列番号12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76、80、84、88、92、または96のアミノ酸配列を有するVHを含むものである。
【0020】
いくつかの抗体または断片は、配列番号10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66、70、74、78、82、86、90、もしくは94のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる軽鎖、および/あるいは配列番号12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76、80、84、88、92、もしくは96のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる重鎖を含む。
【0021】
また、配列番号1に示される配列から発現した成熟ヒトDKK1タンパク質に特異的に結合する単離された抗体またはその免疫学的に機能的な断片も含まれ、当該抗体が、2つのループを含むエピトープに結合し、当該ループは、配列番号2のアミノ酸220〜237との間および配列番号2のシステイン残基245〜263との間のジスルフィド結合によって形成される。
【0022】
開示されている他の抗体または断片は、DKK1ポリペプチドに対する特異的結合に関して上記のもの等の抗体と競合する。例えば、いくつかの抗体および断片は、2本の同一重鎖および2本の同一軽鎖からなる抗体と競合し、該重鎖は、配列番号42を含み、当該軽鎖は、配列番号44を含む。
【0023】
提供される種々の抗体および断片は、単一の軽鎖および/または重鎖あるいは単一の可変軽ドメインおよび/または単一の可変重ドメインを含んでよい。他の抗体および断片は、2本の軽鎖および/または2本の重鎖を含む。抗体または断片が、2本の軽鎖および/または重鎖を含む場合、いくつかの場合において、2本の軽鎖は互いに同一であり、同様にいくつかの場合において、2本の重鎖が同一である。提供される抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体を含んでよい。免疫学的に機能的な断片としては、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)、またはドメイン抗体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例において、抗体または断片は、5×10−4以下のk(koff)でDKK1ポリペプチドから解離する。
【0024】
また、前述の抗体および免疫学的に活性な断片のいずれかを含む薬学的組成物も提供される。そのような組成物はまた、典型的には、緩衝剤、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、または保存剤も含む。薬学的組成物または医薬品の調製における前述の抗体および免疫学的に活性な断片の使用もまた提供される。
【0025】
前述の抗体をコードする種々の核酸もまた提供される。いくつかの核酸は、例えば、(a)配列番号9、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、53、57、61、65、69、73、77、81、85、89、および/もしくは93に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR、ならびに/または(b)配列番号11、15、19、23、27、31、35、39、43、47、51、55、59、63、67、71、75、79、83、87、91、および/もしくは95に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖CDRをコードし、そのため、コードされたCDRが、DKK1ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体またはその免疫学的に機能的な断片をコードする。ある他の核酸は、抗体または免疫学的に活性な断片の可変軽鎖領域(VL)および/または可変重鎖領域(VH)をコードする配列を含むか、またはそれからなり、VLは、配列番号9、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、53、57、61、65、69、73、77、81、85、89、または93と少なくとも80%、90%、または95%の配列同一性を有し、VHは、配列番号11、15、19、23、27、31、35、39、43、47、51、55、59、63、67、71、75、79、83、87、91、または95と少なくとも80%、90%、または95%の配列同一性を有する。いくつかの核酸は、配列番号9、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、53、57、61、65、69、73、77、81、85、89、もしくは93を含むか、またはそれからなるVLをコードする配列、ならびに/あるいは配列番号11、15、19、23、27、31、35、39、43、47、51、55、59、63、67、71、75、79、83、87、91、もしくは95を含むか、またはそれからなるVHをコードする配列を含む。前述の核酸を含む発現ベクター、またそのような発現ベクターを含む細胞(例えば、CHO細胞)もまた、本明細書に開示されている。そのような発現ベクターを含む細胞を培養することによって抗体またはその免疫学的に活性な断片を生成する方法も記載されている。
【0026】
別の態様では、種々の疾患の治療における前述の結合剤、例えば、抗体またはその免疫学的に機能的な断片または組み合わせの使用が開示されている。ある方法は、例えば、整形外科的処置、歯科的処置、移植外科、関節置換術、骨移植術、ならびに骨折の治癒、癒着不能の治癒、遷延治癒、および顔の形成等の骨美容整形および骨の修復が挙げられるが、これらに限定されない、骨の外傷への、本明細書に記載される有効量の抗体または免疫学的に活性な断片または組み合わせを、それを必要とする患者に投与することを含む。1つ以上の組成物は、処置、置換、移植、外科手術、もしくは修復、または骨損傷と関連する他の疾患の前、その間、および/またはその後に投与され得る。
【0027】
骨量の減少を治療または予防する方法が、本明細書にさらに提供され、本方法には、それを必要とする患者に、本明細書に記載される治療有効量の抗体またはその免疫学的に機能的な断片(例えば、配列番号97、103、109、115、121、127、133、139、145、151、157、163、169、175、181、187、193、199、205、211、217、もしくは223に示されるアミノ酸、または配列番号98、104、110、116、122、128、134、139、146、152、158、164、170、176、182、188、194、200、206、212、218、もしくは224に示されるアミノ酸、および配列番号99、105、111、117、123、129、135、140、147、153、159、165、171、177、183、189、195、201、207、213、219、もしくは225に示されるアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つの軽鎖CDR、ならびに/または配列番号100、106、112、118、124、130、136、142、148、154、160、166、172、178、184、190、196、202、208、214、220、もしくは226に示されるアミノ酸、配列番号101、107、113、119、125、131、137、143、149、155、161、167、173、179、185、191、197、203、209、215、221、もしくは227に示されるアミノ酸、および配列番号102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、もしくは228に示されるアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つの重鎖CDRを含む抗体または免疫学的に機能的な断片)を投与することを含む。本実施形態の一態様では、患者は骨に転移する癌を患っている患者であり、別の態様では、患者は多発性骨髄腫を患っている患者である。また別の態様では、患者は、骨粗鬆症、骨減少症、ページェット病、歯周病、リウマチ性関節炎、および固定化による骨喪失を患っている患者から選択される。また他の実施形態では、患者は、癌と関連する骨粗鬆症または溶骨性病変によって引き起こされるもの(例えば多発性骨髄腫)等の根底にある骨量の減少に起因され得るか、または起因され得ない骨の損傷を有する患者から選択される。そのような骨の損傷の例としては、整形外科的処置、歯科的処置、移植外科、関節置換術(例えば、人工股関節置換手術、膝の代替手術等)、骨移植術、ならびに骨折の治癒、癒着不能の治癒、遷延治癒、および顔の形成等の骨美容整形および骨の修復が挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の組成物は、処置、置換、移植、外科手術、もしくは修復の前、その間、および/またはその後に投与され得る。
【0028】
また他の実施形態では、患者は、癌と関連する骨粗鬆症、溶骨性病変によって引き起こされるもの(例えば多発性骨髄腫)等の状態に起因され得るか、または起因され得ない骨の損傷を有する患者から選択される。
【0029】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明および添付された図面を参照して明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ヒトDKK1抗体のエピトープ部位。トリプシン部位は、実線の矢印で示され、AspN部位は、点線の矢印で示される。トリプシン部位は、実線の矢印にあり、AspN部位は、点線の矢印にある。Ab5.25.1の結合領域は、2つの不連続部分を含み、第1の部分は、アミノ酸98〜104であり、アミノ酸107〜121および127〜140の領域である。最後の3つのジスルフィド結合が、全てのトリプシン部位がAb5.25.1によって保護され得る主要エピトープ領域を形成する。ARG102はまた、トリプシン消化からも保護される。CNBr処置によるアミノ酸121〜125位の除去は、結合の欠失を生じない。AspN消化への耐性として知られている領域は、抗体結合に対してアクセスされなくてもよい。
図2】パネルAのレーン1 LRP6−Hisのみが含まれる;レーン2 rhDKK1−Flag;レーン3 hLRP6−His+hDKK1−Flag;レーン4 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5.80.1;レーン5 hLRP6−His+hDKK1−Flag+6.37.5;レーン6 hLRP6−His+hDKK1−Flag+r11H10;レーン7 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5.25.1;レーン8 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5.77.1。パネルBのレーン1 LRP6−Hisのみが含まれる;レーン2 rhDKK1−Flag;レーン3 hLRP6−His+hDKK1−Flag;レーン4 hLRP6−His+hDKK1−Flag+0.5μg 5.80.1;レーン5 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5μg 5.80.1;レーン6 hLRP6−His+hDKK1−Flag+0.5μg 6.37.5;レーン7 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5μg 6.37.5;レーン8 hLRP6−His+hDKK1−Flag+0.5μg r11H10;レーン9 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5μg r11H10;レーン10 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5μg 5.25.1;レーン11 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5μg 5.77.1。
図3】ビヒクル、PTH、および異なる量の抗体2.40.2について、3週間での脛骨の骨塩密度の変化の割合を示す。20mg/kgの用量が、ビヒクルとは有意に異なった。
図4】5.25.1ビンからの抗体5.32.1および11H10ビンからの抗体5.80.1が、オステオカルシンを増加させる能力についてインビボで試験された。8週齢の雄BDF−1マウスに、精製されたモノクローナル抗体の3つの用量(3、10、または30mg/kg)のうちの1つを2週間にわたって皮下注入した。1群につき6匹のマウスを使用した。陰性対照マウスは、ビヒクル(PBS)を注入した。
図5】マウスは、1週間に2回、3週間、25mg/kgのそれぞれの抗体(6.37.5および6.116.6)を皮下注入した。1群につき10匹のマウスを使用した。対照群は、ビヒクル(1週間に2回)またはPTH(100μg/kgを1週間に5回)を注入した。データは、腰椎部の骨塩密度における基準からの変化の割合として表される。
図6】さらなる研究は、閉鎖骨折治癒ラットモデルにおいてラット11H10ビン抗体を用いて行われた。完全ラット11H10ビン抗体r11H10は、本明細書に記載される完全ヒト抗体に対するサロゲート分子として、本研究に使用された。最大負荷およびBMDの改善は、骨折仮骨での抗DKK1処置で達成され、これは骨折の治癒の加速を示した。
図7】疾患の動物モデルから単離された血清中のDKK1が検出され、DKK1タンパク質モデルは、薬理学的薬により腎臓損傷を誘発してから3週間で約5倍増加する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書で特に定義されない限り、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらに、文脈によって特に必要とされない限り、単数形の用語には複数形が含まれ、複数形の用語には単数形が含まれる。一般に、本明細書に記載される細胞および組織培養物、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝子学、タンパク質および核酸の化学、ならびにハイブリダイゼーションに関連して使用する学名は、当該技術分野で周知かつ一般的に使用されるものである。本発明の方法および技法は、一般に、特に指定しない限り、当該技術分野で周知の慣用方法に従って、本明細書全体にわたって引用および記述されている様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されているように行われる。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、およびHarlow and Lane Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)を参照。酵素反応および精製技法は、当該技術分野で一般的に行われるように、または本明細書に記載されるように、製造業者の仕様書に従って行われる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、および医薬品および薬学的化学に関連して使用する術語、ならびにそれらの実験室の手順および技法は、当該技術分野で周知かつ一般的に使用されるものである。標準的な技法は、化学合成、化学分析、薬学的調製、配合、および送達、ならびに患者の処置に使用することができる。
【0032】
本開示で利用する以下の用語は、特に指定しない限り、以下の意味を有すると理解される。
【0033】
本明細書で使用される「DKK1」には、例えば、ラット、マウス、カニクイザル、ヒトのネイティブ型のDKK1が含まれる。ヒト、マウス、ラット、およびカニクイザルDKK1タンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列はそれぞれ、配列番号1、3、5、および7に示され、対応するアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号2、4、6、および8に示される。ヒトDKK1タンパク質(配列番号2)は、配列番号2のアミノ酸1〜31からなるリーダー配列を有する。例示的なラットDKK1タンパク質配列は、GenBank受入番号XP219804に記載される。また、この用語には、これらのネイティブタンパク質と免疫学的に交差反応性を有する、そのようなネイティブ配列の変異体も含まれる。これらのタンパク質は、LRP5またはLRP6とWntとの間の相互作用を阻害することができる。また、この用語は、抗体が特異的に結合することができるエピトープを含有する、DKK1のネイティブまたは変異型の断片を指すこともできる。
【0034】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖のポリマーを意味する。ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドまたはいずれかの種類のヌクレオチドの修飾された形態であり得る。当該修飾には、ブロモウリジンおよびイノシン誘導体等の塩基修飾、2’,3’−ジデオキシリボース等のリボース修飾、ならびにホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデート、およびホスホロアミデート等のヌクレオチド間連結修飾が含まれる。この用語には一本鎖および二本鎖の形態の両方が含まれる。
【0035】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、200個以下のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを意味する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、10〜60の塩基長である。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40のヌクレオチド長である。オリゴヌクレオチドは、例えば、突然変異遺伝子の構築に使用するために、一本鎖または二本鎖であり得る。
【0036】
「単離された核酸分子」とは、単離されたポリヌクレオチドが天然で見つかるポリヌクレオチドの全体または一部分と会合していない、またはそれが天然で連結していないポリヌクレオチドと連結している、ゲノム、mRNA、cDNA、または合成起源のDNAもしくはRNA、またはそのいくつかの組み合わせを意味する。本開示の目的のために、特定のヌクレオチド配列「を含む核酸分子」には無傷の染色体が包含されないことを理解されるべきである。特定の核酸配列「を含む」単離された核酸分子には、特定の配列に加えて、10個まで、またはさらには20個までの他のタンパク質またはその一部分のコード配列が含まれていてもよく、または引用した核酸配列のコード領域の発現を制御する操作によって連結させる調節配列が含まれていてもよく、および/またはベクター配列が含まれていてもよい。
【0037】
特に指定されない限り、本明細書に記述される任意の一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端が5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向を5’方向と称される。新生RNA転写物の5’から3’への付加の方向を転写方向と称され、RNA転写物の5’末端の5’側であるRNA転写物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域を「上流配列」と称され、RNA転写物の3’末端の3’側であるRNA転写物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域を「下流配列」と称される。
【0038】
「制御配列」という用語は、それらが連結されているコード配列の発現およびプロセシングに影響を与えることができるポリヌクレオチド配列を指す。そのような制御配列の性質は宿主生物に依存し得る。特定の実施形態では、原核生物の制御配列には、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列が含まれ得る。例えば、真核生物の制御配列には、転写因子の1つまたは複数の認識部位を含むプロモーター、転写エンハンサー配列、および転写終結配列が含まれ得る。本発明による「制御配列」には、リーダー配列および/または融合パートナー配列を含むことができる。
【0039】
「ベクター」という用語は、タンパク質コード情報を宿主細胞に移すために使用される、任意の分子または実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ、またはウイルス)を意味する。
【0040】
「発現ベクター」または「発現構築体」という用語は、宿主細胞の形質転換に適しており、それに作動可能に連結した1つ以上の異種コード領域の発現を(宿主細胞と共に)指示および/または制御する核酸配列を含有するベクターを指す。発現構築体としては、転写、翻訳に影響を与えるまたはそれを制御する配列、およびイントロンが存在する場合、それに作動可能に連結したコード領域のRNAスプライシングに影響を与える配列が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で使用される「作動可能に連結した」とは、この用語が適用される構成成分が、それらが適切な条件下でその固有の機能を実行することを可能にする関係にあることを意味する。例えば、タンパク質コード配列と「作動可能に連結した」ベクター中の制御配列は、タンパク質コード配列の発現が制御配列の転写活性に適合する条件下で達成されるように、それに連結されている。
【0042】
「宿主細胞」という用語は、核酸配列で形質転換させた、または形質転換させることができ、それによって対象となる遺伝子を発現する細胞を意味する。この用語には、対象となる遺伝子が存在する限り、子孫と元の親細胞との形態学または遺伝的構成が同一であるかどうかに関わらず、親細胞の子孫が含まれる。
【0043】
「形質導入」という用語は、1つの細菌から別の細菌への、通常はバクテリオファージによる遺伝子の移行を意味する。また、「形質導入」とは、レトロウイルスによる真核細胞配列の獲得および移行も指す。
【0044】
「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来または外因性のDNAの取り込みを意味し、外因性DNAが細胞膜内に導入された場合に、細胞は「トランスフェクトされている」。多くのトランスフェクション技法が当該技術分野で周知であり、本明細書に開示されている。例えば、Graham et al.,1973,Virology 52:456、Sambrook et al.,2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Id.、Davis et al.,1986,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier、およびChu et al.,1981,Gene 13:197を参照。そのような技法は、1つ以上の外因性DNA部分を適切な宿主細胞内に導入するために使用することができる。
【0045】
「形質転換」という用語は、細胞の遺伝的特徴の変化を指し、新しいDNAまたはRNAを含有するように改変されている場合に、細胞は形質転換されている。例えば、細胞は、トランスフェクション、形質導入、または他の技法を介して新しい遺伝物質を導入することによってそのネイティブ状態から遺伝子改変されている場合に、形質転換されている。トランスフェクションまたは形質導入の後、形質転換DNAは、細胞の染色体内に物理的に組み込まれることによって細胞のそれと組み換えられ得るか、または複製されずにエピソーム要素として一過的に維持され得るか、またはプラスミドとして独立して複製され得る。細胞は、形質転換DNAが細胞の分裂に伴って複製される場合に、「安定に形質転換された」と見なされる。
【0046】
「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、ネイティブタンパク質のアミノ酸配列を有する巨大分子、即ち、天然に存在する非組換えの細胞によって産生される、または遺伝子操作されたもしくは組換えの細胞によって産生されるタンパク質を意味し、ネイティブタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、またはネイティブ配列の1つ以上のアミノ酸からの欠失、それへの付加、および/もしくはその置換を有する分子を含む。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、具体的には、抗DKK1抗体、または抗DKK1抗体の1つ以上のアミノ酸からの欠失、それへの付加、および/もしくはその置換を有する配列が包含される。「ポリペプチド断片」という用語は、完全長ネイティブタンパク質と比較してアミノ末端の欠失、カルボキシル末端の欠失、および/または内部の欠失を有するポリペプチドを指す。また、そのような断片は、ネイティブタンパク質と比較して修飾されたアミノ酸も含有し得る。ある実施形態では、断片は、5〜500のアミノ酸長である。例えば、断片は、少なくとも5、6、8、10、14、20、50、70、100、110、150、200、250、300、350、400、または450のアミノ酸長であり得る。本発明に有用なポリペプチド断片には、結合ドメインを含めた、抗体の免疫学的に機能的な断片が含まれる。抗DKK1抗体の場合、有用な断片としては、CDR領域、重鎖もしくは軽鎖の可変ドメイン、抗体鎖の一部分または2つのCDRを含む単にその可変領域等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書で言及される「単離されたタンパク質」という用語は、対象タンパク質が、(1)それが通常一緒に見つかる、少なくともいくつかの他のタンパク質を含まない、(2)同じ供給源、例えば同じ種からの他のタンパク質を本質的に含まない、(3)異なる種からの細胞によって発現される、(4)少なくとも約50パーセントのポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、または天然で会合している他の物質から分離されている、(5)それが天然で会合していないポリペプチドと作動可能に会合している(共有または非共有的な相互作用による)、または(6)天然に存在しないことを意味する。ゲノムDNA、cDNA、mRNA、もしくは合成起源の他のRNA、またはその任意の組み合わせがそのような単離されたタンパク質をコードし得る。好ましくは、単離されたタンパク質は、実質的に、その治療的、診断的、予防的、研究用、または他の使用を妨害する可能性のあるタンパク質もしくはポリペプチドまたはその天然環境中で見つかる他の汚染物質を含まない。
【0048】
ポリペプチド(例えば抗体)の「変異体」は、別のポリペプチド配列と比較して、1つ以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列内に挿入、それから欠失、および/またはそれに置換されているアミノ酸配列を含む。本発明の変異体には、融合タンパク質が含まれる。
【0049】
ポリペプチドの「誘導体」は、挿入、欠失、または置換の変異体とは明確に異なるいくつかの様式で、例えば、別の化学部分との共役によって化学修飾されたポリペプチド(例えば抗体)である。
【0050】
「抗体」という用語は、任意のイソタイプの無傷の免疫グロブリン、またはその断片を指し、標的抗原への特異的結合について無傷の抗体と競合することができ、これはキメラ、ヒト化、完全ヒト、および二重特異性抗体を含む。無傷の抗体は、一般には、少なくとも2つの完全長重鎖および2つの完全長軽鎖を含むが、いくつかの例において、重鎖のみを含み得るラクダ科動物において天然に存在する抗体等の少数の鎖を含み得る。本発明による抗体は、専ら単一の供給源に由来し得るか、または「キメラ」であり得る、即ち、抗体の異なる部分が2つの異なる抗体に由来し得る。例えば、CDR領域がラットまたはネズミ源に由来し得る一方で、V領域のフレームワーク領域が、ヒト等の異なる動物源に由来する。本発明の抗体または結合断片は、ハイブリドーマ中、組換えDNA技法によって、または無傷の抗体の酵素的または化学的切断によって生成され得る。特に指定されない限り、「抗体」という用語には、2本の完全長重鎖および2本の完全長軽鎖を含む抗体に加えて、その誘導体、変異体、断片、および突然変異タンパク質が含まれ、それらの例が以下に記載される。
【0051】
「軽鎖」という用語には、完全長軽鎖および結合特異性を与えるために十分な可変領域配列を有するその断片が含まれる。完全長軽鎖には、可変領域ドメインVL、および定常領域ドメインCLが含まれる。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にある。本発明による軽鎖には、カッパ鎖およびラムダ鎖が含まれる。
【0052】
「重鎖」という用語には、完全長重鎖および結合特異性を与えるために十分な可変領域配列を有するその断片が含まれる。完全長重鎖には、可変領域ドメインVH、ならびに3つの定常領域ドメインCH1、CH2、およびCH3が含まれる。VHドメインはポリペプチドのアミノ末端にあり、CHドメインはカルボキシル末端にあり、CH3が−−COOH末端に最も近い。本発明による重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4サブタイプが含まれる)、IgA(IgA1およびIgA2サブタイプが含まれる)、IgM、ならびにIgEを含む、任意のイソタイプのものであり得る。
【0053】
本明細書で使用される、免疫グロブリン鎖の「免疫学的に機能的な断片」(または単に「断片」)という用語は、完全長鎖中に存在するアミノ酸のうち少なくとも一部を欠くが、抗原に特異的に結合することができる、抗体の軽鎖または重鎖の一部分を指す。そのような断片は、これらが標的抗原に特異的に結合し、所定のエピトープとの特異的結合について無傷の抗体と競合することができるという点で、生物活性がある。本発明の一態様では、そのような断片は完全長軽鎖または重鎖中に存在する少なくとも1つのCDRを保持しており、いくつかの実施形態では、単一の重鎖および/もしくは軽鎖またはその一部分を含む。これらの生物活性のある断片は、組換えDNA技法によって生成させ得るか、または無傷の抗体の酵素的または化学的切断によって生成させ得る。本発明の免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体、および一本鎖抗体が挙げられるが、これらに限定されず、ヒト、マウス、ラット、ラクダ科動物、またはウサギが挙げられるが、これらに限定されない任意の哺乳動物源に由来し得る。さらに、本発明の抗体の機能的部分、例えば、1つ以上のCDRを、第2のタンパク質または低分子と共有結合させて、身体中の特定の標的を対象とする、二機能性治療特性を保有するか、または長期的な血清半減期を有する治療剤を作製できることが企図される。
【0054】
「Fab断片」は、1本の軽鎖および1本の重鎖のCH1および可変領域からなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0055】
「Fc」領域は、抗体のCH2およびCH3ドメインを含む2本の重鎖断片を含有し、いくつかの例において、低ヒンジ領域を含む。2本の重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合(典型的には、ヒンジ領域にある)およびCH3ドメインの疎水性相互作用によって一緒に結合される。
【0056】
「Fab’断片」は、1本の軽鎖ならびにVHドメインおよびCH1ドメインを含有する1本の重鎖の一部分を含有し、また、2つのFab’断片の2本の重鎖間で鎖間ジスルフィド結合が形成されて、F(ab’)分子を形成することができるように、CH1とCH2ドメインとの間の領域も含有する。
【0057】
「F(ab’)2断片」は、2本の軽鎖、および2本の重鎖間で鎖間ジスルフィド結合が形成されるようにCH1とCH2ドメインとの間の定常領域の一部分を含有する2本の重鎖を含有する。したがって、F(ab’)2断片は、2本の重鎖間のジスルフィド結合によって一緒に結合されている2つのFab’断片からなる。
【0058】
「Fv領域」は、重鎖および軽鎖の両方からの可変領域を含むが、定常領域を欠く。
【0059】
「一本鎖抗体」は、重鎖および軽鎖可変領域が柔軟なリンカーによって接続されて単一のポリペプチド鎖を形成し、これが抗原結合領域を形成する、Fv分子である。一本鎖抗体は、国際特許出願公開第WO88/01649号および米国特許第4,946,778号および第5,260,203号に詳述されている。
【0060】
「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含有する、免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片である。いくつかの例において、2つ以上のVH領域がペプチドリンカーによって共有結合されて、二価ドメイン抗体が作製される。二価ドメイン抗体の2つのVH領域は、同じまたは異なる抗原を標的とし得る。
【0061】
「二価抗体」は、2つの抗原結合部位を含む。いくつかの例において、2つの結合部位は、同じ抗原特異性を有する。しかしながら、二価抗体は、二重特異性であってもよい(以下を参照)。
【0062】
「多特異性抗体」は、1つを超える抗原またはエピトープを標的とするものである。
【0063】
「二重特異性」、「デュアル二相特異的」、または「二機能性」の抗体とは、2つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、多特異性抗体の1種であり、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の結合等を含むが、これらに限定されない様々な方法によって生成され得る。例えば、Songsivilai & Lachmann(1990),Clin.Exp.Immunol.79:315−321、Kostelny et al.(1992),J.Immunol.148:1547−1553を参照。二重特異性抗体の2つの結合部位は、同じまたは異なるタンパク質標的上に存在し得る2つの異なるエピトープと結合する。
【0064】
「中和抗体」という用語は、リガンドと結合する、リガンドとその結合パートナーとの結合を防止する、およびそうでなければその結合パートナーとのリガンド結合の結果生じる生物学的応答を妨げる抗体を指す。抗体またはその免疫学的に機能的な断片の結合および特異性を評価するにあたって、抗体または断片は、過剰量の抗体が、リガンドと結合した結合パートナーの量を少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%またはそれより多く(インビトロの競合的結合アッセイによって測定)低下させる場合に、リガンドとその結合パートナーとの結合を実質的に阻害する。DKK1に対する抗体の場合、中和抗体は、LRP5またはLRP6と結合するDKK1の能力を消失させ、それによって、Wnt活性の測定可能な増加を誘導する。
【0065】
「競合する」という用語は、同一のエピトープについて競合する抗体において使用される場合は、抗体間の競合が、試験下での抗体または免疫学的に機能的な断片が参照抗体と共通抗原(例えばDKK1またはその断片)との特異的結合を防止または阻害するアッセイによって決定されることを意味する。数々の種類の競合的結合アッセイ、例えば、固相の直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相の直接または間接酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al.(1983)Methods in Enzymology 9:242−253を参照)、固相の直接ビオチン−アビジンEIA(例えば、Kirkland et al.,(1986)J.Immunol.137:3614−3619を参照)、固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Pressを参照)、I−125標識を用いた固相直接標識RIA(例えば、Morel et al.(1988)Molec.Immunol.25:7−15を参照)、固相直接ビオチン−アビジンEIA(例えば、Cheung,et al.(1990)Virology 176:546−552を参照)、ならびに直接標識RIA(Moldenhauer et al.(1990)Scand.J.Immunol.32:77−82)を使用することができる。典型的には、そのようなアッセイは、これらのうちのいずれかを保有する固体表面または細胞と結合した精製した抗原、未標識の試験免疫グロブリン、および標識した参照免疫グロブリンの使用を含む。競合的阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で固体表面または細胞と結合した標識の量を決定することによって測定される。通常、試験免疫グロブリンは、過剰に存在する。競合アッセイによって同定される抗体(競合抗体)には、参照抗体と同一のエピトープと結合する抗体、および、参照抗体によって結合されるエピトープに、立体障害が起こるために十分に近位な隣接エピトープと結合する抗体が含まれる。競合結合性を判定するための方法に関するさらなる詳細は、本明細書の実施例に提供される。通常、競合抗体が過剰に存在する場合、これは、参照抗体と共通抗原との特異的結合を少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%阻害する。いくつかの場合において、結合は、抗体等の選択的結合剤によって少なくとも80%、85%、90%、95%、もしくは97%またはそれより多く阻害され、さらにその抗原と結合することができる抗体を産生するために動物に使用することができる。抗原は、異なる抗体と相互作用することができる1つ以上のエピトープを保有し得る。
【0066】
「エピトープ」という用語には、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意の決定基が含まれる。エピトープは、その抗原を特異的に標的とする抗体によって結合される抗原の領域であり、抗原がタンパク質である場合は、抗体と直接接触する特異的なアミノ酸が含まれる。ほとんどの場合、エピトープはタンパク質上に存在するが、場合によっては、核酸等の他の種類の分子上に存在し得る。エピトープ決定基には、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、またはスルホニル基等の、化学活性のある表面の分子の群が含まれる場合があり、特異的な三次元構造的特徴および/または特異的な負荷特徴を有し得る。一般に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質および/または巨大分子の複雑な混合物中で標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。
【0067】
本発明の抗体は、解離定数(K)が1×10−7Mである場合にその標的抗原「に特異的に結合する」と言われる。抗体は、Kdが1×10−8であるとき、「高親和性」を持つ抗原に特異的に結合し、より高い親和性は、M 5×10−9Mであり、Kdが5×10−10Mであるとき、「非常に高い親和性」を持つ。本発明の一実施形態では、抗体は、1×10−9MのKdおよび約1×10−4/秒のオフ速度を有する。本発明の一実施形態では、オフ速度は、<1×10−5である。本発明の他の実施形態では、抗体は、約1×10−8M〜1×10−10MのKdでヒトDKK1と結合し、また別の実施形態では、抗体は、2×10−10のKdで結合する。当業者は、特異的結合が排他的結合を意味せず、むしろ、互いに親和性のある群間での生物学的反応において一般的であるような、ある程度の非特異的結合を許容することを認識されよう。
【0068】
「同一性」という用語は、配列のアラインメントおよび比較によって決定される、2つ以上のポリペプチド分子または2つ以上の核酸分子の配列間の関係を指す。「パーセント同一性」とは、比較した分子中のアミノ酸またはヌクレオチド間の同一残基のパーセントを意味し、比較した分子の最小のものの大きさに基づいて計算される。これらの計算には、アラインメント中のギャップ(存在する場合)を特定の数学的モデルまたはコンピュータプログラム(即ち、「アルゴリズム」)によって対処しなければならない。アラインメントした核酸またはポリペプチドの同一性を計算するために使用することができる方法には、Computational Molecular Biology,(Lesk,A.M.,ed.),1988,New York:Oxford University Press、Biocomputing Informatics and Genome Projects,(Smith,D.W.,ed.),1993,New York:Academic Press、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.),1994,New Jersey:Humana Press、von Heinje,G.,1987,Sequence Analysis in Molecular Biology,New York:Academic Press、Sequence Analysis Primer,(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.),1991,New York:M.Stockton Press、およびCarillo et al.,1988,SIAM J.Applied Math.48:1073に記載されているものが含まれる。
【0069】
パーセント同一性を計算する際、比較される配列は、配列間の最大の一致を与える方法でアラインメントされる。パーセント同一性を決定するために使用されるコンピュータプログラムは、GAPが含まれるGCGプログラムパッケージである(Devereux et al.,1984,Nucl Acid Res 12:387、Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wisc.)。コンピュータアルゴリズムGAPを用いて、パーセント配列同一性を決定する2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドをアラインメントする。配列は、そのそれぞれのアミノ酸またはヌクレオチドの最適な一致についてアラインメントされる(アルゴリズムによって決定される「一致スパン」)。ギャップ開きペナルティ(これは平均対角の3倍として計算され、「平均対角」とは、使用される比較マトリックスの対角の平均であり、「対角」とは、特定の比較マトリックスによってそれぞれの完全なアミノ酸一致に割り当てられたスコアまたは数値である)およびギャップ伸長ペナルティ(これは、通常はギャップ開きペナルティの1/10倍である)、ならびにPAM250またはBLOSUM62等の比較マトリックスがアルゴリズムと併せて使用される。ある実施形態では、標準の比較マトリックス(Dayhoff et al.,1978,Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345−352 for the PAM 250 comparison matrix、Henikoff et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919 for the BLOSUM 62 comparison matrixを参照)もアルゴリズムによって使用される。
【0070】
GAPプログラムを用いてポリペプチドまたはヌクレオチド配列のパーセント同一性を決定するための推奨されるパラメータは、以下の通りである。
アルゴリズム:Needleman et al.,1970,J.Mol.Biol.48:443−453、
比較マトリックス:BLOSUM 62 from Henikoff et al.,1992,上記参照、
ギャップペナルティ:12(但し、末端ギャップにはペナルティを用いない)
ギャップ長ペナルティ:4
類似度の閾値:0
【0071】
2つのアミノ酸配列をアラインメントするためのあるアラインメントスキームでは、2つの配列の短い領域のみの一致しかもたらさない場合があり、この小さなアラインメントされた領域は、2つの完全長配列間には有意な関係が存在しないにも関わらず、非常に高い配列同一性を有する場合がある。したがって、選択したアラインメント方法(GAPプログラム)は、所望する場合は、標的ポリペプチドの少なくとも50個の連続的なアミノ酸にまたがるアラインメントをもたらすように調整することができる。
【0072】
本明細書で使用される「実質的に純粋な」とは、記載された分子種が存在する優勢の種である、即ち、モル濃度に基づいて、これが同じ混合物中の任意の他の個々の種よりも豊富であることを意味する。ある実施形態では、実質的に純粋な分子とは、目的の種が、存在する全ての高分子種の少なくとも50%(モル濃度に基づいて)を構成する組成物である。他の実施形態では、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種の少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%を構成する。他の実施形態では、汚染種が慣用の検出方法によって組成物中に検出され得ず、したがって、組成物は単一の検出可能な高分子種からなるように、目的の種を本質的に均質となるまで精製する。
【0073】
「骨減少症」という用語は、正常な骨塩密度(BMD)を有すると見なされる標準の患者と比較して、少なくとも1標準偏差の骨減少を有する患者を指す。この目的のために、測定値は二重エネルギーX線吸収測定(DEXA)によって決定され、患者のBMDは、年齢および性別が一致した標準(Zスコア)と比較される。骨減少症を決定する際、BMDの測定値は、1つ以上の骨から採り得る。
【0074】
「治療有効量」という用語は、哺乳動物において治療反応を生じると決定された抗DKK1抗体の量を指す。そのような治療有効量は、当業者によって容易に確認される。
【0075】
「アミノ酸」には、当該技術分野におけるその通常の意味が含まれる。20種の天然に存在するアミノ酸およびその略記は慣用の用法に従う。Immunology−−A Synthesis,2nd Edition,(E.S.Golub and D.R.Gren,eds.),Sinauer Associates:Sunderland,Mass.(1991)を参照。また、20種の慣用のアミノ酸の立体異性体(例えばD−アミノ酸)、α−,α−二置換アミノ酸等の非天然アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、および他の慣用でないアミノ酸も、本発明のポリペプチドの適切な構成成分であり得る。慣用でないアミノ酸の例には、4−ヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタミン酸、イプシロン−N,N,N−トリメチルリシン、イプシロン−N−アセチルリシン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、シグマ−N−メチルアルギニン、ならびに他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば4−ヒドロキシプロリン)が含まれる。本明細書で使用されるポリペプチドの表記法では、標準の用法および慣習に従って、左側方向がアミノ末端方向であり、右側方向がカルボキシル末端方向である。
【0076】
本発明は、DKK1(例えば、配列番号2のアミノ酸32〜266からなるポリペプチド)に特異的な免疫グロブリンの抗体および抗原結合部位を含む新規の組成物を提供する。これらの抗体および抗体断片の一部は、ラット、マウス、カニクイザル、およびヒトのDKK1を含むいくつかの哺乳動物源からのDKK1と交差反応することができる。抗体および断片の一部は、1つの種からのDKK1に対して別の種よりも高い親和性を有する(例えば、ある抗体および断片は、ラットまたはマウスのDKK1と比較してヒトのDKK1に対してより高い親和性を有する、その他の抗体は、ヒトのDKK1と比較してラットまたはマウスのDKK1に対してより高い親和性を有する)。本発明はまた、キメラ、ヒト化、およびヒト抗体、ならびにヒトDKK1において立体構造エピトープと結合する抗体およびその免疫学的に機能的な断片を含む新規の中和抗体も提供する。また、抗体および断片をコードする核酸、ならびにこれらの核酸を用いて抗体を発現させるための方法も開示される。別の態様では、本発明は、抗体抗原結合部位の免疫学的結合特性を示すことができる分子(例えば免疫学的に機能的な断片およびポリペプチド)に関する。
【0077】
本明細書に開示されている抗体および免疫学的に機能的な断片は、様々な利用性を有する。例えば、抗体および断片の一部は、特異的結合アッセイ、DKK1またはそのリガンドの親和性精製、およびDKK1活性の他のアンタゴニストを同定するためのスクリーニングアッセイに有用である。ある種の抗体を、DKK1の活性と関連する様々な疾患を処置するために使用することができる。したがって、いくつかの抗体および断片は、骨塩密度の増加、新しい骨の合成、全身性骨減少(例えば骨侵食)の処置、骨修復、および様々な形態の関節炎の処置等の骨に関連する様々な処置に使用することができる。いくつかの抗体はまた、破骨細胞活性を増加し、骨吸収を誘発するために使用することもできる。しかしながら、開示されているある種の抗体および断片は、骨疾患に関連しない様々な多様な疾患を処置するために使用することができる。以下にさらに詳述されるように、そのような疾患の例には、幹細胞再生を促進することが望ましい疾患(例えば、糖尿病および筋肉の疾患)、炎症性疾患(例えば、クローン病および炎症性腸疾患)、神経系の疾患、眼疾患、腎疾患、および様々な皮膚疾患が含まれる。
【0078】
DKK1の活性を調節するために有用な様々な選択的結合剤が提供される。これらの薬剤には、例えば、抗原結合ドメイン(例えば、一本鎖抗体、ドメイン抗体、免疫粘着、および抗原結合領域を有するポリペプチド)を含有し、DKK1ポリペプチド(例えば、ヒト、ラット、および/またはマウスのDKK1ポリペプチド)に特異的に結合する、抗体およびその免疫学的に機能的な断片が含まれる。薬剤の一部は、例えば、DKK1のLRP5および/またはLRP6への結合を阻害するのに有用であり、したがって、Wntシグナル伝達と関連する1つ以上の活性を刺激するために使用することができる。
【0079】
提供される結合剤の一部は、典型的には天然に存在する抗体と関連する構造を有する。これらの抗体の構造単位は、典型的にはそれぞれが2本の同一のポリペプチド鎖のカプレットからなる1つ以上の四量体を含むが、哺乳動物の一部の種は単一の重鎖のみを有する抗体も産生する。典型的な抗体では、それぞれの対またはカプレットには1本の完全長「軽」鎖(ある実施形態では、約25kDa)および1本の完全長「重」鎖(ある実施形態では、約50〜70kDa)が含まれる。それぞれの個々の免疫グロブリン鎖は、それぞれが約90〜110個のアミノ酸からなり、特徴的な折り畳みパターンを発現する、いくつかの「免疫グロブリンドメイン」からなる。これらのドメインが、抗体ポリペプチドが構成される基本単位である。それぞれの鎖のアミノ末端部分には、典型的には、抗原認識を司っている可変ドメインが含まれる。カルボキシ末端部分は、鎖の他方の末端よりも進化的に保存されており、「定常領域」または「C領域」と称される。ヒト軽鎖は、一般にカッパおよびラムダ軽鎖として分類され、これらのそれぞれが1つの可変ドメインおよび1つの定常ドメインを含有する。重鎖は、典型的にはミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロン鎖として分類され、これらにより、抗体のイソタイプがそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして定義される。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4が含まれるが、これらに限定されない、いくつかのサブタイプを有する。IgMサブタイプには、IgMおよびIgM2が含まれる。IgAサブタイプには、IgA1およびIgA2が含まれる。ヒトでは、IgAおよびIgDイソタイプは、4本の重鎖および4本の軽鎖を含有し、IgGおよびIgEイソタイプは、2本の重鎖および2本の軽鎖を含有し、IgMイソタイプは、5本の重鎖および5本の軽鎖を含有する。重鎖C領域は、典型的には、エフェクター機能を司っている可能性がある1つ以上のドメインを含む。重鎖定常領域ドメインの数は、イソタイプに依存する。例えば、IgG重鎖は、CH1、CH2、およびCH3として知られる3つのC領域ドメインをそれぞれ含有する。提供される抗体は、これらのイソタイプおよびサブタイプのうちのいずれかを有することができる。本発明のある実施形態では、抗DKK1抗体は、IgG1、IgG2、またはIgG4のサブタイプからなる。
【0080】
完全長軽鎖および重鎖では、可変および定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって結合され、重鎖には、約10個以上のアミノ酸の「D」領域も含まれる。例えば、Fundamental Immunology,2nd ed.,Ch.7(Paul,W.,ed.)1989,New York:Raven Pressを参照。それぞれの軽鎖/重鎖の対の可変領域は、典型的には抗原結合部位を形成する。
【0081】
免疫グロブリン鎖の可変領域は、一般に同じ全体的な構造を示し、3つの超可変領域、より頻繁には「相補性決定領域」またはCDRと称される領域によって結合された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)を含む。上述のそれぞれの重鎖/軽鎖の対の2本の鎖からのCDRは、典型的には、フレームワーク領域によってアラインメントされて、標的タンパク質上の特異的エピトープ(例えばDKK1)に特異的に結合する構造を形成する。N末端からC末端に、天然に存在する軽鎖および重鎖可変領域は両方とも、これらの要素の以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4と一致する。これらのドメインのそれぞれ中の位置を占有するアミノ酸に数字を割り当てるために、付番システムが考案されている。この付番システムは、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(1987 and 1991,National Institutes of Health,Bethesda,Md.)またはChothia & Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901−917、Chothia et al.,1989,Nature 342:878−883に定義されている。
【0082】
ヒト(配列番号1および2)、マウス(配列番号3および4)、ラット(配列番号5および6)、ならびにカニクイザル(配列番号7および8)の核酸およびタンパク質のDKK1配列が、それぞれ、表1に提供される。また、抗体の軽鎖および重鎖の特定の例、ならびにその対応するヌクレオチドおよびアミノ酸配列も本明細書に提供される。最も左の列に配列識別子、中央に配列(核酸またはタンパク質)、および最も右の列に配列の内部表示が提供される。さらに、それぞれのCDRが提供される(配列番号97〜228)。Vh=可変重鎖、Vk=可変カッパ軽鎖、Vl=可変ラムダ軽鎖。
【表1】
【0083】
当業者は、定常領域をさらに含む、完全長抗体の配列と比較して重鎖および軽鎖の両方の可変領域を包含する表1に示される配列間の違いを理解されよう。可変ドメインは、当該技術分野で公知の標準技術を用いて適切な定常ドメインと組み合わせることができる。表1中に記載される軽鎖のそれぞれは、表1に示される重鎖のいずれか(例えば、配列番号242または244に示されるポリペプチド)と組み合わせて、抗体を形成することができる。いくつかの例において、抗体は、表1中に記載されるものから少なくとも1本の重鎖および1本の軽鎖を含む。他の例では、抗体は、2本の同一の軽鎖および2本の同一の重鎖を含有する。一例として、抗体または免疫学的に機能的な断片は、2本のL1軽鎖および2本のH1重鎖、または2本のL2軽鎖および2本のH3重鎖、または2本のL2軽鎖および2本のH4重鎖、または2本のL2および2本のH5重鎖、ならびに表1中に記載される軽鎖の対および重鎖の対の他の同様の組み合わせを含んでもよい。
【0084】
提供される他の抗体は、表1に示される重鎖および軽鎖の組み合わせによって形成される抗体の変異体であり、これらの鎖のアミノ酸配列に対してそれぞれ、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の同一性を有する軽鎖および/または重鎖を含む。いくつかの例において、そのような抗体は、少なくとも1本の重鎖および1本の軽鎖を含む一方で、他の例では、そのような変異型は、2本の同一の軽鎖および2本の同一の重鎖を含有する。
【0085】
ある抗体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個のアミノ酸残基のみで本明細書に記載される軽鎖可変ドメインの配列とは異なるアミノ酸の配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、それぞれのそのような配列の違いは、独立して、1つのアミノ酸の欠失、挿入、または置換のいずれかである。いくつかの抗体において、軽鎖可変領域は、表1中の軽鎖可変領域のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
【0086】
提供されるいくつかの抗体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個のアミノ酸残基のみで表1中の重鎖可変ドメインの配列とは異なるアミノ酸の配列を含む重鎖可変ドメインを含む重鎖可変ドメインを含み、それぞれのそのような配列の違いは、独立して、1つのアミノ酸の欠失、挿入、または置換のいずれかである。いくつかの抗体において、重鎖可変領域は、表1に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。また他の抗体または免疫学的に機能的な断片には、ちょうど記載されるような、変異軽鎖および変異重鎖の変異型が含まれる。
【0087】
所与の抗体の相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)は、Kabatらによって、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,US Dept.of Health and Human Services,PHS,NIH,NIH Publication no.91−3242,1991に記載されるシステムを用いて同定され得る。
【0088】
提供される抗体および免疫学的に機能的な断片は、上述のCDRのうちの1個、2個、3個、4個、5個、または6個全てが含まれていてもよい。いくつかの抗体または断片には、軽鎖CDR3および重鎖CDR3の両方が含まれる。ある抗体は、CDRの変異型を有し、CDRのうちの1個以上(即ち、2個、3個、4個、5個、または6個)が、CDR配列に対してそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する。例えば、抗体または断片は、軽鎖CDR3配列および重鎖CDR3配列に対してそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、または95%の配列同一性をそれぞれ有する軽鎖CDR3および重鎖CDR3の両方を含むことができる。提供される抗体の一部のCDR配列はまた、任意の所与のCDRに対するアミノ酸配列が、たった1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸残基によって、表1中のCDR配列とは異なり得る。列挙された配列の違いは、通常、保存的置換である(下記参照)。
【0089】
軽鎖または重鎖CDRのうちの1つ以上を含むポリペプチドは、以下のさらに詳述される適切な宿主細胞中にポリペプチドを発現させるために好適なベクターを用いることによって産生され得る。重鎖および軽鎖可変領域ならびに表1中に開示されているCDRは、ドメイン抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、一本鎖抗体、およびscFvが含まれるが、これらに限定されない、当該技術分野で知られている様々な種類の免疫学的に機能的な断片のいずれかを調製するために使用することができる。
【0090】
抗体が、DKK1等の特定の残基内のエピトープと結合すると言われるとき、例えば、意味することは、抗体が特定の残基(例えば、DKK1の特定のセグメント)からなるポリペプチドに特異的に結合することである。そのような抗体は、必ずしもDKK1内の全ての残基と接触するわけではない。DKK1内の全ての単一のアミノ酸置換または欠失が、必ずしも結合親和性に有意な影響を及ぼすわけではない。抗体の厳密なエピトープ特異性は、様々な方法で測定され得る。例えば、1つのアプローチは、DKK1の配列をスパニングし、少数のアミノ酸(例えば3個のアミノ酸)単位で異なる約15個のアミノ酸の重複するペプチドの集合を試験することを含む。ペプチドは、マイクロタイター皿のウェル内で固定化される。固定化は、ペプチドの片方の末端をビオチン化することによって達成され得る。任意に、同じペプチドの異なる試料は、NおよびC末端でビオチン化され、比較のために、別々のウェル中に固定化され得る。これは、末端特異抗体を確認するために有用である。任意に、さらなるペプチドは、対象となる特定のアミノ酸で終了することが含まれ得る。このアプローチは、DKK1の内部断片に対して末端特異抗体を確認するために有用である。抗体または免疫学的に機能的な断片は、様々なペプチドのそれぞれに対する特異的結合についてスクリーニングされる。エピトープは、抗体が特異的結合を示す全てのペプチドに共通しているアミノ酸のセグメントで生じるものとして確定される。
【0091】
DKK1(表1を参照)のカルボキシ末端部分に位置する立体構造エピトープと結合する抗体およびその機能的な断片も提供される。DKK1のカルボキシ末端は、いくつかのループを創製するジスルフィド結合のクラスターを形成するいくつかのシステイン残基を含有する。本発明は、これらのループのうちの2つと結合し、それによってDKK1の能力を中和し、Wnt活性を抑制する抗体を提供する。前述の立体構造エピトープと結合することができる例示的な抗体は、モノクローナル抗体11H10および1F11であり、これらのそれぞれは、軽鎖および重鎖を含む。これらの抗体は、米国特許第7,709,611号に詳述されている。
【0092】
これらの2つのループを含むエピトープは、配列番号2のシステイン残基220と237との間および配列番号2のシステイン残基245と263との間のジスルフィド結合によって形成される。したがって、エピトープを形成する2つのループの本体は、配列番号2のアミノ酸221〜236および246〜262を含む。結合に関与するこのループ内のセグメントは、配列番号2のアミノ酸221〜229および配列番号2のアミノ酸246〜253を含む。したがって、本明細書に提供されるある抗体および断片は、前述の領域に特異的に結合する。抗体および断片の一部は、例えば、配列番号2のアミノ酸221〜262を含むか、またはそれらからなるペプチドと結合する。
【0093】
本発明の一態様では、配列番号2のアミノ酸221〜229および/または246〜253を含むか、またはそれらからなるペプチドが提供される。他のペプチドは、配列番号2のアミノ酸221〜236および/または246〜262を含むか、またはそれらからなる。提供されるさらに他のペプチドは、配列番号2の221〜262の領域または配列番号2のアミノ酸221〜253の領域を含むか、またはそれらからなる。そのようなペプチドは、ネイティブDKK1の完全長タンパク質配列よりも短い(例えば、ペプチドは、前述の領域の1つ以上を含み得、8、9、10、11、12、13、14、15、20、21、22、23、24、25、30、40、50、75、100、150、または200のアミノ酸長であり得る)。これらのペプチドは、免疫原性を増加させるために別のペプチドに融合させることができ、したがって、融合タンパク質の形態であり得る。
【0094】
また、DKK1に対する特異的結合に関して例示の抗体または機能的な断片の1つと競合する抗体およびその免疫学的に機能的な断片も提供される。そのような抗体および断片はまた、例示の抗体の1つと同じエピトープと結合し得る。例示の抗体または断片と同じエピトープと競合するか、または結合する抗体および断片は、同様な機能的特性を示すと思われる。例示の抗体および断片としては、表1中に記載される重鎖および軽鎖、可変領域ドメイン、ならびにCDRを有するものを含む、上記のものが挙げられる。競合抗体または免疫学的に機能的な断片には、上記の抗体およびエピトープの項に記載されるエピトープと結合するものを挙げることができる。
【0095】
特定の例として、いくつかの競合抗体または断片としては、配列番号2のアミノ酸32〜266からなるDKK1タンパク質に特異的に結合し、2本の同一の重鎖および2本の同一の軽鎖からなる抗体のヒトDKK1に対する結合を防止または減少させることができるものが挙げられる。他の競合抗体は、表1中に記載されるもの等の2本の同一の重鎖および2本の同一の軽鎖からなる抗体のヒトDKK1に対する結合を防止または減少させる。
【0096】
提供される抗体には、DKK1と結合するモノクローナル抗体が含まれる。モノクローナル抗体は、当該技術分野で公知の任意の技術を用いて、例えば、免疫化スケジュール完了後、形質転換動物から採取した脾臓細胞の固定化によって製造することができる。脾臓細胞は、当該技術分野で公知の任意の技術を用いて、例えば、それらを骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマを製造することによって不死化することができる。ハイブリドーマ製造融合法に用いられる骨髄腫細胞は、好ましくは、非抗体産生性であり、融合効率が高く、酵素が欠失しているために、ある選択培地中で増殖する能力がなく、所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持する。マウスの融合に用いられる好適な細胞株の例としては、Sp−20、P3−X63/Ag8、P3−X63−Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG 1.7、およびS194/5XXO Bulが挙げられ、ラット融合に用いられる細胞株の例としては、R210.RCY3、Y3−Ag 1.2.3、IR983F、および4B210が挙げられる。細胞融合に有用な他の細胞株は、U−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2、およびUC729−6である。
【0097】
いくつかの例において、ハイブリドーマ細胞株は、DKK1免疫原によって動物(例えば、ヒト免疫グロブリン配列を有する形質転換動物)を免疫化し;免疫化した動物から脾臓細胞を採取し;採取した脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合し、それによって、ハイブリドーマ細胞を作製し;ハイブリドーマ細胞からハイブリドーマ細胞株を構築し、DKK1ポリペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することによって生産される。このようなハイブリドーマ細胞株、およびそれらによって作製された抗DKK1モノクローナル抗体は、本発明に包含される。
【0098】
ハイブリドーマ細胞株によって分泌されたモノクローナル抗体は、当該抗体技術分野で公知の任意の技術を用いて精製することができる。ハイブリドーマまたはmAbは、Wnt誘導活性を阻止する能力等の特定の特性を有するmAbを同定するために、さらにスクリーニングすることができる。そのようなスクリーニングの例は、以下の実施例に提供される。
【0099】
また、前述の配列に基づいたキメラ抗体およびヒト化抗体も提供される。治療剤に用いられるモノクローナル抗体は、使用前に、様々な方法において修飾され得る。一例は、機能的な免疫グロブリンの軽鎖もしくは重鎖またはその免疫学的に機能的な部分を作製するために共有結合させた異なる抗体のタンパク質セグメントからなる抗体である「キメラ」抗体である。一般に、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種に由来する抗体における対応する配列と同一または相同であるか、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属しており、一方、その鎖の残部は、別の種に由来する抗体における対応する配列と同一または相同であるか、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属している。キメラ抗体に関する方法については、例えば、米国特許第4,816,567号およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1985)を参照のこと。CDRグラフティングは、例えば、米国特許第6,180,370号、第5,693,762号、第5,693,761号、第5,585,089号、および第5,530,101号を参照のこと。
【0100】
一般に、キメラ抗体を作製する目的は、意図された親種のアミノ酸数が最大化されているキメラを創製することである。一例は、抗体が、特定の種の1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含むか、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属しており、一方、その抗体鎖の残部が、別の種に由来する抗体における対応する配列と同一または相同であるか、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属している「CDRグラフト」抗体である。ヒトにおける使用では、齧歯類抗体のV領域または選択されたCDRが、ヒト抗体にグラフトされて、ヒト抗体の天然に存在するV領域またはCDRと置き換わることが多い。
【0101】
キメラ抗体の1つの有用なタイプは、「ヒト化」抗体である。一般に、ヒト化抗体は、最初、非ヒト動物において増加させたモノクローナル抗体から製造される。このモノクローナル抗体の非抗原認識部分に典型的に由来する該抗体におけるあるアミノ酸残基は、対応するイソタイプのヒト抗体において対応する残基と相同であるように修飾される。ヒト化は、例えば、齧歯類の可変領域の少なくとも一部を、ヒト抗体の対応する領域と置換することにより、様々な方法を用いて実施することができる(例えば、米国特許第5,585,089号および第5,693,762号、Jones et al.,1986,Nature 321:522−25、Riechmann et al.,1988,Nature 332:323−27、Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534−36を参照)。ある実施形態では、ヒト以外の種の定常領域をヒト可変領域と共に使用して、ハイブリッド抗体を製造することができる。
【0102】
また、完全ヒト抗体も提供される。ヒトを抗原に曝露させることなく、所与の抗原に特異的な完全ヒト抗体(「完全ヒト抗体」)を作製するための方法が利用できる。完全ヒト抗体の産生を実施する1つの手段は、マウスの体液性免疫系の「ヒト化」である。内因性Ig遺伝子を不活化したマウスにヒト免疫グロブリン(Ig)座を導入することは、任意の所望の抗原によって免疫化することができる動物であるマウスにおいて完全ヒトモノクローナル抗体(MAb)を産生する1つの手段である。完全ヒト抗体の使用により、マウスまたはマウス誘導Mabを治療薬としてヒトに投与することによって時折生じ得る免疫原性およびアレルギー性応答を最小限に抑えることができる。
【0103】
完全ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン産生の不在下で、ヒト抗体のレパートリーを産生することができる形質転換動物(通常はマウス)の免疫化によって産生できる。この目的のための抗原は、典型的に、6つ以上の連続アミノ酸を有し、任意に、ハプテン等の担体に共役させる。例えば、Jakobovits et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551−2555、Jakobovits et al.,1993,Nature 362:255−258、およびBruggermann et al.,1993,Year in Immunol.7:33を参照のこと。そのような方法の一例では、形質転換動物は、その中のマウスの重および軽免疫グロブリン鎖をコードする内因性マウス免疫グロブリン遺伝子座を不能化し、ヒト重鎖および軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座を含有するヒトゲノムDNAの大型フラグメントを、マウスゲノムに挿入することによって産生される。次いで、ヒト免疫グロブリン座の完全相補体未満を有する部分的に修飾された動物を交雑育種し、所望の免疫系修飾を全て有する動物を得る。免疫原を投与するとき、これらの形質転換動物は、その免疫原に免疫特異的ではあるが、可変領域を含む、マウスのアミノ酸配列ではなく、ヒトのアミノ酸配列を有する抗体を産生する。そのような方法のさらなる詳細に関しては、例えば、国際公開第WO96/33735号および第WO94/02602号を参照のこと。ヒト抗体を作製するためのトランスジニックマウスに関するさらなる方法は、米国特許第5,545,807号、第6,713,610号、第6,673,986号、第6,162,963号、第5,545,807号、第6,300,129号、第6,255,458号、第5,877,397号、第5,874,299号、および第5,545,806号に、PCT公開第WO91/10741号、第WO90/04036号に、欧州特許第EP546073B1号および第EP546073A1号に記載されている。
【0104】
本明細書に「HuMab」マウスと称される上記の形質転換マウスは、内因性のμおよびκ鎖座を不活化する標的突然変異と共に、再配列していないヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子の小型遺伝子座を含有する(Lonberg et al.,1994,Nature 368:856−859)。
【0105】
したがって、前述のマウスは、マウスIgMまたはκの発現減少を示し、免疫化に応答し、導入されたヒトの重鎖および軽鎖導入遺伝子は、クラス転換および体細胞の突然変異を受けて、高親和性ヒトIgG κモノクローナル抗体を生成する(Lonberg et al.,上記参照、Lonberg and Huszar,1995,Intern.Rev.Immunol.,13:65−93、Harding and Lonberg,1995,Ann.N.Y Acad.Sci 764:536−546)。HuMabマウスの調製は、Taylor et al.,1992,Nucleic Acids Research,20:6287−6295、Chen et al.,1993,International Immunology 5:647−656、Tuaillon et al.,1994,J.Immunol.152:2912−2920、Lonberg et al.,1994,Nature 368:856−859、Lonberg,1994,Handbook of Exp.Pharmacology 113:49−101、Taylor et al.,1994,International Immunology 6:579−591、Lonberg and Huszar,1995,Intern.Rev.Immunol.13:65−93、Harding and Lonberg,1995,Ann.N.Y Acad.Sci.764:536−546、Fishwild et al.,1996,Nature Biotechnology 14:845−851に詳述されている。さらに、米国特許第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,789,650号、第5,877,397号、第5,661,016号、第5,814,318号、第5,874,299号、および第5,770,429号、ならびに米国特許第5,545,807号、国際公開第WO93/1227号、第WO92/22646号、および第WO92/03918号を参照のこと。これらの形質転換マウスにおいてヒト抗体を産生するために利用される技術は、国際公開第WO98/24893号、およびMendez et al.,1997,Nature Genetics 15:146−156にも開示されている。例えば、HCO7およびHCO12形質転換マウス株を用いて、ヒト抗DKK1抗体を作出することができる。
【0106】
ハイブリドーマ技術を用いて、所望の特異性を有する抗原特異的ヒトMAbを産生し、上記のもの等の形質転換マウスから選択することができる。そのような抗体をクローン化し、好適なベクターおよび宿主細胞を用いて発現させることができるか、または培養したハイブリドーマ細胞から抗体を採取することができる。
【0107】
完全ヒト抗体はまた、ファージ表示ライブラリー(Hoogenboom et al.,1991,J.Mol.Biol.227:381、およびMarks et al.,1991,J.Mol.Biol.222:581に開示されている)に由来し得る。ファージ表示法は、糸状バクテリオファージの表面上の抗体レパートリーの表示による免疫選択、および引き続いて、選択抗原に対するそれらの結合によるファージの選択を模倣している。このような方法の1つが、PCT公開第WO99/10494号に記載されており、これには、そのようなアプローチを用いてMPLおよびmsk受容体に対する高親和性で機能的なアゴニスト抗体の単離が記載されている。
【0108】
本明細書に提供される抗DKK1剤はまた、DKK1とLRP5および/もしくはLRP6との間の結合を遮断するか、または低下させ、それによって、Wntシグナル伝達と関連する少なくとも1つの活性を刺激することもできる。薬剤は、抗体またはその免疫学的に機能的な断片であり得、それ故に、天然の構造を有する抗体、ならびに抗原結合ドメイン(例えば、ドメイン抗体)を有するポリペプチドが含まれる。抗体および断片は、骨量の減少に関連する状態を予防または治療することを含む様々な異なる疾患を治療する、または新しい骨の生成を刺激する、ならびに非骨関連障害を治療するために使用することができる。また、抗体および選択的結合剤の生成に有用な核酸分子、ベクター、および宿主細胞も提供される。
【0109】
提供される抗体および免疫学的に機能的な断片の一部は、以下の軽鎖(LC)相補性決定領域(CDR):(i)配列番号97、103、109、115、121、127、133、139、145、151、157、163、169、175、181、187、193、199、205、211、217、または223と少なくとも80%の配列同一性を有するLC CDR1、(ii)配列番号98、104、110、116、122、128、134、139、146、152、158、164、170、176、182、188、194、200、206、212、218、または224と少なくとも80%の配列同一性を有するLC CDR2、および(iii)配列番号99、105、111、117、123、129、135、140、147、153、159、165、171、177、183、189、195、201、207、213、219、または225と少なくとも80%の配列同一性を有するLC CDR3のうちの1つ以上を含む。提供される抗体および免疫学的に機能的な断片の一部は、前述のLC CDRのうちの1つ以上、ならびに/または以下の重鎖(HC)相補性決定領域(CDR):(i)配列番号100、106、112、118、124、130、136、142、148、154、160、166、172、178、184、190、196、202、208、214、220、または226と少なくとも80%の配列同一性を有するHC CDR1、(ii)配列番号101、107、113、119、125、131、137、143、149、155、161、167、173、179、185、191、197、203、209、215、221、または227と少なくとも80%の配列同一性を有するHC CDR2、ならびに(iii)配列番号102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、または228と少なくとも80%の配列同一性を有するHC CDR3のうちの1つ以上が含まれる。提供される抗体および免疫学的に機能的な断片の一部にはまた、上記の1つ以上のLC CDRおよび1つ以上のHC CDRも含まれる。
【0110】
そのような抗体または断片は、DKK1ポリペプチドに特異的に結合することができる。ある抗体または断片は、前述のCDRのうちの1個、2個、3個、4個、5個、または6個全てが含まれる。
【0111】
他の抗体または断片の軽鎖および重鎖は、上記に記載される通りであるが、前述の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。またその他の抗体またはその断片は、CDR1が、配列番号97、103、109、115、121、127、133、139、145、151、157、163、169、175、181、187、193、199、205、211、217、または223に記載されるアミノ酸配列を有するものであり、CDR2が、配列番号98、104、110、116、122、128、134、139、146、152、158、164、170、176、182、188、194、200、206、212、218、または224に記載されるアミノ酸配列を有する、および/またはCDR3が、配列番号99、105、111、117、123、129、135、140、147、153、159、165、171、177、183、189、195、201、207、213、219、または225に記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体および断片はまた、CDR1が、配列番号100、106、112、118、124、130、136、142、148、154、160、166、172、178、184、190、196、202、208、214、220、または226に記載されるアミノ酸配列を有し、CDR2が、配列番号101、107、113、119、125、131、137、143、149、155、161、167、173、179、185、191、197、203、209、215、221、または227に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖を有し得る、および/またはHC CDR3が、配列番号102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、または228に記載されるアミノ酸配列を有する。ある抗体または断片には、配列番号99、105、111、117、123、129、135、140、147、153、159、165、171、177、183、189、195、201、207、213、219、または225のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3および/または配列番号102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、198、204、210、216、222、または228のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3が含まれる。
【0112】
提供されるある他の抗体および免疫学的に機能的な断片には、(a)配列番号10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66、70、74、78、82、86、90、または94と80%、85%、90%、92%、95%、またはそれ以上の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)、(b)配列番号12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76、80、84、88、92、または96と少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)、あるいは(c)(a)のVLおよび(b)のVHが含まれる。
【0113】
その他の抗体または断片は、構造が類似するが、VLが、配列番号10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66、70、74、78、82、86、90、または94と少なくとも90%、92%、またはより好ましくは95%の配列同一性を有し、VHが、配列番号12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76、80、84、88、92、または96と少なくとも90%の配列同一性を有する。ある抗体または断片では、VLは、配列番号10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66、70、74、78、82、86、90、または94と少なくとも98%の配列同一性を有し、VHは、配列番号12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76、80、84、88、92、または96と少なくとも98%の配列同一性を有する。また他の抗体または断片は、配列番号10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66、70、74、78、82、86、90、または94のアミノ酸配列を有するVL、および/または配列番号12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76、80、84、88、92、または96のアミノ酸配列を有するVHを含むものである。
【0114】
いくつかの抗体または断片は、配列番号10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66、70、74、78、82、86、90、もしくは94のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる軽鎖、および/あるいは配列番号12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76、80、84、88、92、もしくは96のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる重鎖を含む。
【0115】
また、配列番号1に示される配列から発現した成熟ヒトDKK1タンパク質に特異的に結合する単離された抗体またはその免疫学的に機能的な断片も含まれ、当該抗体が、2つのループを含むエピトープに結合し、当該ループは、配列番号2のアミノ酸220〜237との間および配列番号2のシステイン残基245〜263との間のジスルフィド結合によって形成される。
【0116】
開示されている他の抗体または断片は、DKK1ポリペプチドに対する特異的結合に関して上記のもの等の抗体と競合する。例えば、いくつかの抗体および断片は、2本の同一の重鎖および2本の同一の軽鎖からなる抗体と競合し、該重鎖は、配列番号42を含み、当該軽鎖は、配列番号44を含む。
【0117】
提供される種々の抗体および断片は、単一の軽鎖および/または重鎖あるいは単一の可変軽ドメインおよび/または単一の可変重ドメインを含んでよい。他の抗体および断片は、2本の軽鎖および/または2本の重鎖を含む。抗体または断片が、2本の軽鎖および/または重鎖を含む場合、いくつかの場合において、2本の軽鎖は互いに同一であり、同様にいくつかの場合において、2本の重鎖が同一である。提供される抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体を含んでよい。免疫学的に機能的な断片としては、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)、またはドメイン抗体が挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、抗体または断片は、5×10−4以下のk(koff)でDKK1ポリペプチドから解離する。
【0118】
また、前述の抗体および免疫学的に活性な断片のいずれかを含む薬学的組成物も提供される。そのような組成物はまた、典型的には、緩衝剤、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、または保存剤も含む。薬学的組成物または医薬品の調製における前述の抗体および免疫学的に活性な断片の使用もまた提供される。
【0119】
前述の抗体をコードする種々の核酸もまた提供される。いくつかの核酸は、例えば、(a)配列番号9、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、53、57、61、65、69、73、77、81、85、89、および/もしくは93に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR、ならびに/または(b)配列番号11、15、19、23、27、31、35、39、43、47、51、55、59、63、67、71、75、79、83、87、91、および/もしくは95に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖CDRをコードし、そのため、コードされたCDRが、DKK1ポリペプチドに特異的に結合することができる抗体またはその免疫学的に機能的な断片をコードする。ある他の核酸は、抗体または免疫学的に活性な断片の可変軽鎖領域(VL)および/または可変重鎖領域(VH)をコードする配列を含むか、またはそれからなり、VLは、配列番号9、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、53、57、61、65、69、73、77、81、85、89、または93と少なくとも80%、90%、または95%の配列同一性を有し、VHは、配列番号11、15、19、23、27、31、35、39、43、47、51、55、59、63、67、71、75、79、83、87、91、または95と少なくとも80%、90%、または95%の配列同一性を有する。いくつかの核酸は、配列番号9、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、53、57、61、65、69、73、77、81、85、89、もしくは93を含むか、またはそれからなるVLをコードする配列、ならびに/あるいは配列番号11、15、19、23、27、31、35、39、43、47、51、55、59、63、67、71、75、79、83、87、91、もしくは95を含む、またはそれからなるVHをコードする配列を含む。前述の核酸を含む発現ベクター、またそのような発現ベクターを含む細胞(例えば、CHO細胞)もまた、本明細書に開示されている。そのような発現ベクターを含む細胞を培養することによって抗体またはその免疫学的に活性な断片を生成する方法も記載されている。
【0120】
骨形成の増加を必要とする状態、例えば、多発性骨髄腫等の病的状態と関連する骨折修復または骨量減少を治療するのに効果的な新規のDKK1抗体が、本明細書に提供される。さらに、DKK1およびスクレロスチン阻害剤の組み合わせを含む骨同化を増大させる薬剤の組み合わせが、本明細書に提供される。これらの組み合わせを、例えば、骨粗鬆症の治療、骨折の治癒の加速、および骨形成速度の増加を必要とする多くの状態に使用することができる。組み合わせは、2つの別々の阻害剤、例えば、抗スクレロスチンおよび抗DKK1抗体の形態をとり得るか、または単一の分子的実体、例えば、二重特異性抗体であり得る。
【0121】
本明細書で使用される二重特異性抗体は、その2つの結合抗体の1つの上のある抗原と結合し、その第2のアーム上の異なる抗原と結合する。したがって、二重特異性抗体は、2つの異なる抗原結合アームを有し、それが結合するそれぞれの抗原に対して一価である。本明細書に提供される二重特異性および二機能性DKK1抗体は、上述される1つ以上のCDRまたは1つ以上の可変領域を含むことができる。二重特異性および二機能性抗体は、場合によっては、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。これらの二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結が挙げられるが、これらに限定されない様々な方法によって産生され得る。例えば、Songsivilai & Lachmann,1990,Clin.Exp.Immunol.79:315−321、Kostelny et al.,1992,J.Immunol.148:1547−1553を参照のこと。
【0122】
二重特異性分子はまた、本発明に従って、融合によって作製することもできる。一例では、本発明の抗体は、1つ以上の他の結合分子に(例えば、融合タンパク質の発現、化学的連結、高親和性の非共有結合等によって)連結され得る。そのような結合分子の例としては、二重特異性分子が生じるような、別の抗体、抗体断片、ペプチド、または結合模倣剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
二重特異性分子はまた、スクレロスチンに対して第1の結合特異性および第2の標的に対して第2の結合特異性を含むこともできる。例えば、第2の標的は、第1のエピトープとは異なるスクレロスチンの別のエピトープであり得る。別の例は、スクレロスチンに対して少なくとも1つの第1の結合特異性およびDKK1内のエピトープに対して第2の結合特異性を含む二重特異性分子である。別の例は、スクレロスチンに対して少なくとも1つの第1の結合特異性およびLRP4内のエピトープに対して第2の結合特異性を含む二重特異性分子である。さらに、二重特異性分子が多特異性である本発明については、分子は、第1および第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性をさらに含むことができる。
【0124】
一実施形態では、本発明の二重特異性分子は、結合特異性として、少なくとも1つの抗体、またはその抗体断片を含み、これには、本明細書に提供される新規の抗DKK1抗体配列からの、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、または一本鎖Fvが含まれる。それはまた、Ladner eta/.米国特許第4,946,778号に記載されるように、軽鎖または重鎖の二量体、またはFvもしくは一本鎖構築物等の任意の最小断片であってもよい。
【0125】
二重特異性分子は、当該技術分野で公知の方法を用いて結合部分を化学的に共役させることによって調製され得る。結合部分がタンパク質またはペプチドであるとき、様々な結合剤または架橋剤は、共有結合共役のために使用することができる。例には、タンパク質A、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1カルボキシレート(スルホ−SMCC)が含まれる(例えば、Karpovsky et al.,1984 J.Exp.Med.160:1686、Liu,MA et al.,1985 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8648を参照)。他の方法は、Paulus,1985 Behring Ins.Mitt.No.78,118−1 32、Brennan et al.,1985 Science 229:81−83、およびGlennie et al.,1987 J.Immunol.139:2367−2375に記載されるものを含む。共役剤は、SATAおよびスルホ−SMCCを含み、いずれもPierce Chemical Co.(Rockford,IL)から入手可能である。結合部分が抗体であるとき、2本の重鎖のヒンジ領域のスルフヒドリル結合によって共役され得る。一実施形態では、ヒンジ領域を改変して、対応する重鎖または軽鎖の対応物を用いてジスルフィド結合を形成しない遊離スルフヒドリル基があるように、奇数のスルフヒドリル残基を含む。
【0126】
二重特異性分子は、少なくとも2つの一本鎖分子を含んでもよい。二重特異性分子を調製するための方法の限定されない例は、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,455,030号、米国特許第4,881,175号、米国特許第5,132,405号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,476,786号、米国特許第5,013,653号、米国特許第5,258,498号、米国特許第5,482,858号、米国特許出願第2010/0076178号を含む様々な特許刊行物に記載されている。
【0127】
DKK1阻害剤またはDKK1結合部分を含む二重もしくは多特異性分子を用いたいずれかの併用療法のためのパートナーの例は、スクレロスチンタンパク質を特異的に認識するスクレロスチン抗体または結合断片を含む。スクレロスチンは、wntシグナル伝達経路を通って骨密度を調節することに関与するものとして前述されている(PCT第WO06/119107号)。
【0128】
DKK1抗体およびスクレロスチン抗体の組み合わせが、モデル動物においていずれかの単独よりも網状骨または海綿骨の骨塩密度を増加させることができ(PCT第WO09/047356号)、全体の骨塩量、密度、および皮質厚の増加を改善したことを示唆している報告書がある。しかしながら、これらの例では、骨折骨ではなく、無傷骨が使用された。
【0129】
報告書は、DKK1発現が、偽関節の骨折モデルにおいて上昇していることを示す(Bajada,et al.,2009 Bone;45(4):726−35)。同様に、健常な骨は、無傷骨中のBMDにおけるDKK1抗体のみの限定された効果を説明するのに役立つより低いレベルのDKK1を発現する(実施例15を参照)。したがって、骨折を処置するためのスクレロスチンおよびDKK1阻害剤の組み合わせは、比較的短期間でのピーク負荷の有意な増加を含む驚くほど強力な治癒応答を得るのに特に有用である。
【0130】
変異体
【0131】
提供される抗体または免疫学的に機能的な断片の一部は、上で開示される抗体および断片の変異型である(例えば表1中に記載される配列を有するもの)。例えば、抗体または断片の一部は、表1中に記載される重鎖または軽鎖、可変領域、またはCDRのうちの1つ以上において1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するものである。
【0132】
天然のアミノ酸は、共通の側鎖特性に基づいたクラスに分けられ得る:[0149]1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;[0150]2)中性親和性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;[0151]3)酸性:Asp、Glu;[0152]4)塩基性:His、Lys、Arg;[0153]5)鎖の方向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および[0154]6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。保存的アミノ酸置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、同じクラスの他のメンバーと交換することを含み得る。保存的アミノ酸置換は、典型的には、生物系における合成ではなく、化学的ペプチド合成によって組み込まれる非天然アミノ酸残基を包含し得る。これらには、ペプチド模倣物およびアミノ酸部分の他の逆転または反転形態が含まれる。
【0133】
非保存的置換は、上記クラスの1つのメンバーを、他のクラスのメンバーと交換することを含み得る。このような置換残基は、ヒト抗体に相同的な抗体領域、または該分子の非相同領域内に導入することができる。
【0134】
このような変更を行う場合、ある実施形態によると、アミノ酸の疎水性親水性指標を考慮することができる。タンパク質の疎水性親水性プロフィルは、それぞれのアミノ酸に数値(「疎水性親水性指標」)を割り当て、次いで、ペプチド鎖に沿ってこれらの値を繰り返し平均化することによって算出される。それぞれのアミノ酸は、その疎水性および電荷特性に基づいて疎水性親水性指標が割り当てられている。それらは、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、トレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタメート(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパルテート(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)、およびアルギニン(−4.5)である。
【0135】
タンパク質における相互作用的な生物学的機能の検討における疎水性親水性プロフィルの重要性は、当該技術分野で認識されている(例えば、Kyte et al.,1982,J.Mol.Biol.157:105−131を参照)。あるアミノ酸は、類似の疎水性親水性の指標またはスコアを有し、かつ類似の生物学的活性を保持している他のアミノ酸と置換できることが知られている。疎水性親水性指標に基づいて交換を行う場合、ある実施形態では、疎水性親水性指標が±2以内のアミノ酸の置換が含まれる。本発明のいくつかの態様では、±1以内のものが含まれ、本発明の他の態様では、±0.5以内のものが含まれる。
【0136】
また、このようなアミノ酸置換は、特にそのことによって作出される生物学的に機能的なタンパク質またはペプチドが、この場合のように免疫学的実施形態における使用が意図されている場合、親水性に基づいて効率的に行うことができることも認識されている。ある実施形態では、隣接アミノ酸の親水性によって制御されるタンパク質の最大局所平均親和性は、その免疫原性と抗原結合性または免疫原性と相関しており、即ち、そのタンパク質の生物学的特性と相関している。
【0137】
これらのアミノ酸残基に、以下の親水性値が割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパルテート(+3.0±1)、グルタメート(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、トレオニン(−0.4)、プロリン(−0.5±1)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)、およびトリプトファン(−3.4)。類似の親水性値に基づいて交換を行う場合、ある実施形態では、親和性値が±2以内のアミノ酸の置換が含まれ、他の実施形態では、±1以内のものが含まれ、さらに他の実施形態では、±0.5以内のものが含まれる。いくつかの例においては、親和性に基づいて一次アミノ酸配列のエピトープを同定することもできる。これらの領域はまた、「エピトープコア領域」とも称される。
【0138】
当業者は、周知の技術を用いて、本明細書に記載されたポリペプチドの好適な変異体を判定できるであろう。当業者は、活性に重要ではないと考えられる領域を標的とすることにより、活性を消失させることなく交換し得る分子の好適な領域を確認することができる。当業者はまた、類似のポリペプチドの中で保存される分子の残基および部分を確認することもできるであろう。さらなる実施形態では、生物学的活性にとって、または構造にとって重要であり得る領域も、生物学的活性を消失させることなく、あるいは、該ポリペプチド構造に有害な影響を及ぼすことなく、保存的アミノ酸置換に供することができる。
【0139】
さらに、当業者は、活性または構造にとって重要である類似のポリペプチドにおける残基を同定する構造−機能試験を検討することができる。そのような比較を考慮して、類似のタンパク質における活性または構造にとって重要なアミノ酸残基に対応するタンパク質におけるアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者は、そのような予測された重要なアミノ酸残基による化学的に類似したアミノ酸の置換を選択することができる。
【0140】
当業者はまた、類似したポリペプチドにおける構造との関連で三次元構造およびアミノ酸配列を分析することもできる。そのような情報を考慮して、当業者は、その三次元構造に関して抗体のアミノ酸残基のアラインメントを予測することができる。当業者は、タンパク質の表面上にあると予想されたアミノ酸残基に根本的な変化を生じさせることがないように、選択を行うことができる。このような残基が、他の分子との重要な相互作用に関係していることがあり得るからである。さらに、当業者は、所望のそれぞれのアミノ酸残基における単一のアミノ酸置換を含有する試験変異体を作出することができる。次いで、これらの変異体を、DKK1中和化活性に関するアッセイ(下記実施例を参照)を用いてスクリーニングでき、このようにして、どのアミノ酸が交換でき、どのアミノ酸を交換してはいけないかということに関する知見が得られる。言い換えると、このようなルーチン実験から収集された知見に基づいて、当業者は、単独での、または他の変異体と組み合わせたさらなる置換を避けるべきアミノ酸位置を容易に判定することができる。
【0141】
多くの科学刊行物が、二次構造の予測に充てられてきた。Moult,1996,Curr.Op.in Biotech.7:422−427、Chou et al.,1974,Biochemistry 13:222−245、Chou et al.,1974,Biochemistry 113:211−222、Chou et al.,1978,Adv.Enzymol.Relat.Areas Mol.Biol.47:45−148、Chou et al.,1979,Ann.Rev.Biochem.47:251−276、およびChou et al.,1979,Biophys.J.26:367−384を参照のこと。さらに、二次構造の予測を補助するために、現在、コンピュータプログラムが利用可能である。二次構造を予測する1つの方法は、相同性モデリングに基づいている。例えば、30%超の配列同一性、または40%超の類似性を有する2つのポリペプチドまたはタンパク質は、類似の構造トポロジーを有することが多い。タンパク質構造データベース(PDB)の最近の増大により、ポリペプチド構造またはタンパク質構造内の可能な折り畳み数を含む二次構造の予測性が増強されている。Holm et al.,1999,Nucl.Acid.Res.27:244−247を参照のこと。所与のポリペプチドまたはタンパク質における折り畳み数には制限があり、一旦、構造の限界数が決まれば、構造式予測は飛躍的に正確になることが示唆されている(Brenner et al.,1997,Curr.Op.Struct.Biol.7:369−376)。
【0142】
二次構造を予測するさらなる方法としては、「スレッディング(threading)」(Jones,1997,Curr.Opin.Struct.Biol.7:377−87、Sippl et al.,1996,Structure 4:15−19)、「プロファイル分析」(Bowie et al.,1991,Science 253:164−170、Gribskov et al.,1990,Meth.Enzym.183:146−159、Gribskov et al.,1987,Proc.Nat.Acad.Sci.84:4355−4358)、および「進化的連関」(Holm,1999、上記参照およびBrenner,1997、上記参照)が挙げられる。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態では、(1)タンパク質分解に対する脆弱性を減少させる、(2)酸化に対する脆弱性を減少させる、(3)タンパク質複合体の形成に関する結合親和性を変化させる、(4)リガンドまたは抗原結合親和性を変化させる、および/または(4)このようなポリペプチドに関する他の物理化学的または機能的特性を与えるかまたは改変する、アミノ酸置換が行われる。例えば、天然配列において、単一のまたは複数のアミノ酸置換(ある実施形態では保存的アミノ酸置換)を行うことができる。ドメインの外側にあって、分子間接触を形成する抗体の一部に置換を行うことができる。このような実施形態では、親配列の構造的特性を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換(例えば、親抗体または天然抗体を特徴付けている二次構造を破壊しない1つ以上のアミノ酸置換)を用いることができる。当該技術分野で認知されているポリペプチドの二次および三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.),1984,W.H.New York:Freeman and Company、Introduction to Protein Structure(Branden and Tooze,eds.),1991,New York:Garland Publishing、およびThornton et at.,1991,Nature 354:105に記載されており、これらはそれぞれ、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0144】
本発明はまた、グリコシル化部位の数および/またはタイプが、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較して変化している、本発明の抗体のグリコシル化変異体も包含する。ある実施形態では、抗体タンパク質変異体は、ネイティブ抗体よりも多いまたは少ないN結合グリコシル化部位の数を含む。N結合グリコシル化部位は、配列Asn−X−SerまたはAsn−X−Thrによって特徴付けられており、Xと表されるアミノ酸残基は、プロリン以外の任意のアミノ酸残基である。この配列を作出するためのアミノ酸残基の置換により、N結合炭水化物鎖の付加のための潜在的な新しい部位が提供される。代替として、この配列を排除または変更する置換は、ネイティブポリペプチド中に存在するN結合炭水化物鎖の付加を防止する。例えば、グリコシル化は、Asnを欠失させることによって、またはAsnを異なるアミノ酸で置換することによって、減らすことができる。他の実施形態では、1つ以上の新しいN結合部位が作出される。抗体は、典型的にはFc領域中に1つのN結合グリコシル化部位を有する。
【0145】
さらなる好ましい抗体変異体には、親またはネイティブアミノ酸配列中の1つ以上のシステイン残基が欠失しているか、または別のアミノ酸(例えばセリン)で置換されている、システイン変異体が含まれる。システイン変異体は、とりわけ、抗体が生物活性のあるコンホメーションへと再折り畳みされなければならない場合に有用である。システイン変異体は、ネイティブ抗体よりも少ない数のシステイン残基を有する場合があり、典型的には、対合していないシステインから生じる相互作用を最小限にするために、偶数を有する。
【0146】
開示されている重鎖および軽鎖、可変領域ドメイン、ならびにCDRを用いて、DKK1ポリペプチドに特異的に結合することができる抗原結合領域を含有するポリペプチドを調製することができる。例えば、表1中に記載されるCDRのうちの1つ以上を、分子(例えば、ポリペプチド)内に共有的または非共有的に組み込ませて、免疫粘着を作製することができる。免疫粘着は、より大きなポリペプチド鎖の一部としてCDRを組み込み得るか、CDRを別のポリペプチド鎖と共有結合し得るか、またはCDRを非共有的に組み込み得る。CDRは、免疫粘着が特定の対象となる抗原(例えば、DKK1ポリペプチドまたはそのエピトープ)に特異的に結合することを可能にする。
【0147】
また、本明細書に記載される可変領域ドメインおよびCDRに基づく模倣体(例えば、「ペプチド模倣体」(peptide mimeticsまたはpeptidomimetics)も提供される。これらの類似体は、ペプチド、非ペプチド、またはペプチドと非ペプチド領域の組み合わせであり得る。Fauchere,1986,Adv.Drug Res.15:29、Veber and Freidinger,1985,TINS p.392、およびEvans et al.,1987,J.Med.Chem.30:1229であり、これらは任意の目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。治療上有用なペプチドに構造的に類似のペプチド模倣体を用いて、類似の治療的または予防的効果を生じ得る。そのような化合物は、コンピュータ化分子モデリングの補助によって開発されることが多い。一般に、本発明のペプチド模倣体は、本明細書ではDKK1に特異的に結合する能力等の所望の生物活性を示す抗体に構造的に類似しているが、当該技術分野で公知の方法により、−−CH2NH−−、−−CH2S−−、−−CH2−−CH.2−−、−−CH−−CH−(シスおよびトランス)、−−COCH2−−、−−CH(OH)CH2−−、および−CH2SO−−から選択される連結によって任意に置換された1つ以上のペプチド連結を有するタンパク質である。コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸の、同じタイプのD−アミノ酸(例えば、L−リシンの代わりにD−リシン)による系統的な置換を本発明の一定の実施形態で用いて、より安定なタンパク質を作出し得る。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列変異を含む拘束ペプチドを、当該技術分野で公知の方法により、例えば、ペプチドを環化する分子内ジスルフィド架橋を形成することのできる内部システイン残基の付加によって、作出し得る(Rizo and Gierasch,1992,Ann.Rev.Biochem.61:387)、参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0148】
また、本明細書に記載される抗体および免疫学的に機能的な断片の誘導体も提供される。誘導体化した抗体または断片は、抗体または断片に特定の使用における増加した半減期等の所望の特性を与える任意の分子または物質を含み得る。誘導体化した抗体は、例えば、検出可能な(または標識)部分(例えば、放射性、比色、抗原性、または酵素的分子、検出可能なビーズ(磁気または高電子密度(例えば金)ビーズ等)、または別の分子(例えば、ビオチンまたはストレプトアビジン)と結合する分子)、治療的または診断的部分(例えば、放射性、細胞毒性、または薬学的に活性な部分)、または特定の使用(例えば、ヒト対象等の対象への投与、または他のインビボもしくはインビトロの使用)における抗体の適切性を増加させる分子を含むことができる。抗体を誘導体化するために使用することができる分子の例には、アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)およびポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。抗体のアルブミン結合誘導体およびPEG化誘導体は、当該技術分野で公知の技法を用いて調製することができる。一実施形態では、抗体は、トランスサイレチン(TTR)またはTTR変異体と共役されるか、または連結される。TTRまたはTTR変異体は、例えば、デキストラン、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/酸化エチレンコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、およびポリビニルアルコールからなる群から選択される化学物質で化学修飾することができる。
【0149】
他の誘導体としては、抗DKK1抗体ポリペプチドのN末端またはC末端と融合した異種ポリペプチドを含む組換え融合タンパク質の発現等による、抗DKK1抗体またはその断片と、他のタンパク質またはポリペプチドとの共有複合体または凝集複合体が挙げられる。例えば、共役ペプチドは、異種シグナル(またはリーダー)ポリペプチド、例えば、酵母アルファ因子リーダー、またはエピトープタグ等のペプチドであり得る。抗DKK1抗体含有融合タンパク質は、抗DKK1抗体の精製または同定を容易にするために付加するペプチド(例えばポリ−His)を含むことができる。また、抗DKK1抗体ポリペプチドは、Hopp et al.,Bio/Technology 6:1204,1988および米国特許第5,011,912号に記載されているように、FLAGペプチドと連結させることもできる。FLAGペプチドは、抗原性が高く、特異的モノクローナル抗体(mAb)によって可逆的にされたエピトープを提供し、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。FLAGペプチドが所定のポリペプチドと融合した融合タンパク質の調製に有用な試薬が市販されている(Sigma,St.Louis,Mo.)。
【0150】
1つ以上の抗DKK1抗体ポリペプチドを含有するオリゴマーを、DKK1アンタゴニストとして使用することができる。オリゴマーは、共有結合または非共有結合した二量体、三量体、またはより高量体の形態であり得る。2つ以上の抗DKK1抗体ポリペプチドを含むオリゴマーが使用に企図され、その一例はホモ二量体である。他のオリゴマーには、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ四量体、ヘテロ四量体等が含まれる。
【0151】
一実施形態は、抗DKK1抗体ポリペプチドと融合したペプチド部分間の共有または非共有結合性相互作用によって結合された複数の抗DKK1抗体ポリペプチドを含むオリゴマーを対象とする。そのようなペプチドは、ペプチドリンカー(スペーサー)、またはオリゴマー化を促進する特性を有するペプチドであり得る。以下により詳細に記載されるように、ペプチドの中でも、それに付着した抗DKK1抗体ポリペプチドのオリゴマー化を促進することができる、抗体に由来するロイシンジッパーおよびある種のポリペプチドである。
【0152】
特定の実施形態では、オリゴマーは、2〜4個の抗DKK1抗体ポリペプチドを含む。オリゴマーの抗DKK1抗体部分は、上記の任意の形態、例えば変異体または断片であり得る。好ましくは、オリゴマーは、DKK1結合活性を有する抗DKK1抗体ポリペプチドを含む。
【0153】
一実施形態では、オリゴマーは、免疫グロブリンに由来するポリペプチドを用いて調製される。抗体由来のポリペプチドの様々な部分(Fcドメインが含まれる)と融合したある異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の調製は、例えば、Ashkenazi et al.,1991,PNAS USA 88:10535、Byrn et al.,1990,Nature 344:677、およびHollenbaugh et al.,1992 “Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins”,in Current Protocols in Immunology,Suppl.4,pages10.19.1−10.19.11に記載されている。
【0154】
本発明の一実施形態は、抗DKK1抗体のDKK1結合断片を抗体のFc領域と融合させることによって作製された2つの融合タンパク質を含む二量体を対象とする。二量体は、例えば、融合タンパク質をコードしている遺伝子融合体を適切な発現ベクター内に挿入し、遺伝子融合体を、組換え発現ベクターで形質転換させた宿主細胞中で発現させ、発現された融合タンパク質を抗体分子と同様にアセンブルさせ、それにより鎖間ジスルフィド結合がFc部分間で形成させて二量体を得ることによって、作製することができる。
【0155】
本明細書で使用される「Fcポリペプチド」という用語は、抗体のFc領域に由来するポリペプチドのネイティブおよび突然変異体の形態が含まれる。二量化を促進するヒンジ領域を含有するそのようなポリペプチドの切断された形態も含まれる。Fc部分を含む融合タンパク質(およびそこから形成されるオリゴマー)は、タンパク質Aまたはタンパク質Gカラム上での親和性クロマトグラフィーによる容易な精製の利点を提供する。
【0156】
PCT出願第WO93/10151号および米国特許第5,426,048号および第5,262,522号(これらのそれぞれは、参照によって本明細書に組み込まれる)に記載される1つの適切なFcポリペプチドは、ヒトIgG1抗体のFc領域のN末端ヒンジ領域からネイティブC末端まで延在している一本鎖ポリペプチドである。別の有用なFcポリペプチドは、米国特許第5,457,035号およびBaum et al.,1994,EMBO J.13:3992−4001に記載されるFc突然変異体タンパク質である。この突然変異体タンパク質のアミノ酸配列は、アミノ酸19がLeuからAlaに変化しており、アミノ酸20がLeuからGluに変化しており、アミノ酸22がGlyからAlaに変化していること以外は、第WO93/10151号に示されているネイティブFc配列と同一である。突然変異体タンパク質は、Fc受容体に対して低下した親和性を示す。
【0157】
他の実施形態では、本明細書に開示されるような抗DKK1抗体の重鎖および/または軽鎖の可変部分を、ある抗体の重鎖および/または軽鎖の可変部分で置換することができる。
【0158】
代替として、オリゴマーは、複数の抗DKK1抗体ポリペプチドを含み、ペプチドリンカー(スペーサーペプチド)を有する、または有さない融合タンパク質である。好適なペプチドリンカーの中では、米国特許第4,751,180号および第4,935,233号に記載されているものがある。
【0159】
オリゴマー抗DKK1抗体誘導体を調製するための別の方法は、ロイシンジッパーの使用を含む。ロイシンジッパードメインは、それが見つかるタンパク質のオリゴマー化を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは、もともといくつかのDNA結合タンパク質において確認され(Landschulz et al.,1988,Science 240:1759)、以来、様々な異なるタンパク質において見出されている。既知のロイシンジッパーには、二量体化または三量体化する天然に存在するペプチドおよびその誘導体がある。可溶性オリゴマータンパク質を産生するために適切なロイシンジッパードメインの例は、PCT出願第WO94/10308号、およびHoppe et al.,1994,FEBS Letters 344:191(参照により本明細書に組み込まれている)に記載されている肺界面活性剤タンパク質D(SPD)に由来するロイシンジッパーである。それと融合した異種タンパク質の安定な三量体化を可能にする、改変されたロイシンジッパーの使用は、Fanslow et al.,1994,Semin.Immunol.6:267−78に記載されている。あるアプローチでは、ロイシンジッパーペプチドと融合した抗DKK1抗体断片または誘導体を含む組換え融合タンパク質を、適切な宿主細胞中で発現させ、形成される可溶性オリゴマー抗DKK1抗体断片または誘導体を培養上清から回収する。
【0160】
提供されるいくつかの抗体は、例えば、以下の実施形態に記載されるように、測定された少なくとも10または10/M×秒のDKK1に対する結合親和性(K)を有する。他の抗体は、少なくとも10、10、10、または10/M×秒のkを有する。提供されるある種の抗体は、低い解離速度を有する。いくつかの抗体は、例えば、1×10−4−1、1×10−5−1またはより低いKoffを有する。
【0161】
別の態様では、本発明は、インビトロまたはインビボで(例えばヒト対象に投与したとき)、少なくとも1日の半減期を有する抗DKK1抗体を提供する。一実施形態では、この抗体は、少なくとも3日の半減期を有する。別の実施形態では、この抗体またはその部分は、4日以上の半減期を有する。別の実施形態では、この抗体またはその部分は、8日以上の半減期を有する。別の実施形態では、この抗体またはその抗原結合部分は、誘導体化されていない、または修飾されていない抗体と比較して、より長い半減期を有するように、誘導体化または修飾される。別の実施形態では、この抗体は、第WO00/09560号に記載されるように、血清半減期を増大させるために、点変異を含有する。
【0162】
また、本発明の抗体の一方または両方の鎖、その断片、誘導体、突然変異体タンパク質、または変異体をコードする核酸、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定、分析、突然変異、または増幅するためのハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマー、または配列決定プライマーとして使用するために十分なポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの発現を阻害するためのアンチセンス核酸、および前述のものの相補的配列も提供される。核酸は、任意の長さとすることができる。それらは、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、750、1,000、1,500、3,000、5,000またはそれより多いヌクレオチド長とすることができ、ならびに/または1つ以上の付加配列、例えば、調節配列を含む、および/もしくはより大きな核酸、例えば、ベクターの一部とすることができる。核酸は、一本鎖または二本鎖とすることができ、RNAおよび/またはDNAヌクレオチド、ならびにその人工変異体(例えばペプチド核酸)を含むことができる。
【0163】
また、本明細書に提供されるある種の抗体が結合するエピトープをコードする核酸も提供される。したがって、配列番号2のアミノ酸221〜229および/または246〜253をコードするいくつかの核酸が含まれ、また、配列番号2のアミノ酸221〜236および/または246〜262をコードする核酸、および配列番号2のアミノ酸221〜262または配列番号2のアミノ酸221〜253をコードする核酸が含まれる。これらのペプチドを含む融合タンパク質をコードする核酸もまた提供される。
【0164】
抗体ポリペプチド(例えば、重鎖または軽鎖、可変ドメインのみ、または完全長)をコードするDNAは、DKK1またはその免疫原性断片で免疫化されたマウスのB細胞から単離され得る。DNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の従来の手順により単離され得る。ファージ表示は、抗体の誘導体が調製され得る公知の技法の別例である。あるアプローチでは、対象となる抗体の成分であるポリペプチドを、任意の好適な組換え発現系において発現させ、発現したポリペプチドをアセンブルさせて抗体分子を形成する。
【0165】
提供された抗体および免疫学的に機能的な断片の軽鎖および重鎖、可変領域、ならびにCDRをコードする例示的な核酸が、上の表1に記載される。遺伝コードの縮重により、表1に記載されたポリペプチド配列のそれぞれは、表1に記載されたもの以外の多数の他の核酸配列によってもコードされる。本発明は、本発明のそれぞれの抗体をコードするそれぞれの縮重ヌクレオチド配列を提供する。
【0166】
本発明は、さらに、特定のハイブリダイゼーション条件下で、他の核酸(例えば、表1〜3に記載されるヌクレオチド配列を含む核酸)とハイブリダイズする核酸を提供する。核酸をハイブリダイズする方法は当該技術分野で公知である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6を参照のこと。本明細書に定義されているように、中等度ストリンジェントハイブリダイゼーション条件では、5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)、約50%ホルムアルデヒドのハイブリダイゼーション緩衝液、6×SSCを含有する予備洗浄溶液、および55℃ハイブリダイゼーション温度(または42℃のハイブリダイゼーション温度を用いて、約50%のホルムアミドを含有するもの等の他の同様なハイブリダイゼーション溶液)、および0.5×SSC、0.1%SDS中、60℃の洗浄条件を用いる。ストリンジェントハイブリダイゼーション条件では、45℃で、6×SSC中、ハイブリダイズし、続いて、68℃で、0.1×SSC、0.2%SDS中で1回以上洗浄する。さらに、当業者は、互いに少なくとも65、70、75、80、85、90、95、98、または99%同一性であるヌクレオチド配列を含む核酸が、典型的には互いにハイブリダイズしたままであるように、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増加または減少させるために、ハイブリダイゼーション条件および/または洗浄条件を操作することができる。
【0167】
ハイブリダイゼーション条件の選択に影響を及ぼす基本的パラメータおよび好適な条件を考察するための指針は、例えば、Sambrook,Fritsch,and Maniatis(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,chapters 9 and 11、およびCurrent Protocols in Molecular Biology,1995,Ausubel et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.,sections 2.10 and 6.3−6.4)に記載されており、例えば、DNAの長さおよび/または塩基組成に基づいて、当業者によって容易に決定することができる。
【0168】
変化は、核酸への突然変異によって導入され、それによって、核酸がコードするポリペプチド(例えば、本発明の抗体または抗体誘導体)のアミノ酸配列の変化をもたらすことができる。突然変異は、当該技術分野で公知の任意の技術を用いて導入することができる。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸残基を、例えば、部位特異的変異誘発プロトコルを用いて変化させる。別の実施形態では、1つ以上のランダムに選択された残基を、例えば、ランダム変異誘発プロトコルを用いて変化させる。どんな方法で作製されても、突然変異ポリペプチドは、所望の特性に関して、発現させ、スクリーニングすることができる。
【0169】
突然変異は、核酸がコードするポリペプチドの生物活性を有意に変化させることなく、核酸に導入され得る。例えば、ヌクレオチド置換を行って、非本質的なアミノ酸残基におけるアミノ酸置換をもたらすことができる。あるいは、核酸がコードするポリペプチドの生物活性を選択的に変化させる1つ以上の突然変異が、核酸にされ得る。例えば、突然変異は、生物活性を量的にまたは質的に変化させることができる。量的変化の例としては、活性の増大、減少、または除去が挙げられる。質的変化の例としては、抗体の抗原特異性の変化が挙げられる。
【0170】
別の態様では、本発明は、本発明の核酸配列を検出するためのプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブとしての使用に好適な核酸分子を提供する。本発明の核酸分子は、本発明の完全長ポリペプチドをコードする核酸配列の一部のみ、例えば、プローブまたはプライマーとして使用することができるフラグメント、または本発明のポリペプチドの活性部分(例えば、DKK1結合部分)をコードするフラグメントのみを含むことができる。
【0171】
本発明の核酸の配列に基づいたプローブは、本発明のポリペプチドをコードする核酸または類似の核酸、例えば転写体を検出するために使用することができる。プローブは、標識基、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子を含むことができる。そのようなプローブは、発現する細胞を同定するために使用することができる。
【0172】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドまたはその一部(例えば、1つ以上のCDRまたは1つ以上の可変領域ドメインを含有するフラグメント)をコードする核酸を含むベクターを提供する。ベクターの例としては、プラスミド、ウィルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクター、および発現ベクター、例えば組換え発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に好適な形態の本発明の核酸を含むことができる。組換え発現ベクターは、発現に用いられる宿主細胞に基づいて選択された、発現させる核酸配列に作動可能に連結した1つ以上の調節配列を含む。調節配列としては、多くのタイプの宿主細胞におけるヌクレオチド配列の構成的発現に関するもの(例えば、SV40初期遺伝子エンハンサー、ニワトリ肉腫ウィルスプロモーター、およびサイトメガロウィルスプロモーター)、ある宿主細胞のみにおけるヌクレオチド配列の発現に関するもの(例えば、組織特異的調節配列、Voss et al.,1986,Trends Biochem.Sci.11:287、Maniatis et al.,1987,Science 236:1237を参照されたく、これらは参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれている)、および特定の処置または条件に応答したヌクレオチド配列の誘導発現に関するもの(例えば、哺乳動物細胞におけるメタロチオニンプロモーターならびに原核系および真核系の両方におけるtet応答および/またはストレプトマイシン応答プロモーター(上記参照)が挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換させる宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等の因子に依存し得ることは、当業者には理解されよう。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入し、それによって、本明細書に記載される核酸によってコードされた融合タンパク質またはペプチドを含むタンパク質またはペプチドを産生することができる。
【0173】
別の態様では、本発明は、本発明の組換え発現ベクターを導入した宿主細胞を提供する。宿主細胞は、任意の原核細胞(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、酵母、昆虫、または哺乳動物の細胞(例えばCHO細胞))であり得る。ベクターDNAは、従来の形質転換法またはトランスフェクション法によって原核細胞または真核細胞に導入することができる。哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションに関しては、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション法により、それらのゲノムに外来DNAを組み込むのは、細胞の少フラクションのみでよいことが知られている。これらの組み込み体を同定および選択するために、一般的には、選択可能なマーカー(例えば、抗生物質に対する耐性に関する)をコードする遺伝子を、対象となる遺伝子と共に宿主細胞に導入する。好ましい選択可能なマーカーとしては、G418、ハイグロマイシン、およびメトトレキサート等の薬物に対する耐性を付与するものが挙げられる。他の方法の中で、導入された核酸を安定にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択によって同定することができる(例えば、選択可能なマーカー遺伝子を組み込んだ細胞が生存し、他の細胞は死滅する)。
【0174】
提供される非ヒト抗体は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ロバ、または非ヒト霊長類(サル(例えば、カニクイザルまたはアカゲザル)等)または類人猿(例えばチンパンジー))等の任意の抗体産生動物に由来し得る。非ヒト抗体は、例えば、インビトロ細胞培養および細胞培養に基づく適用、または抗体に対する免疫応答が生じないか、有意ではないか、防止することができるか、重要でないか、または所望されている任意の他の適用において使用することができる。本発明のある実施形態では、抗体は、完全長DKK1またはDKK1のカルボキシ末端側によって免疫化することによって産生することができる。あるいは、本明細書に提供されるある抗体が結合するエピトープの一部(例えば、11H10、図1を参照)を形成するヒトDKK1のセグメントである、配列番号2のアミノ酸221〜236および/またはアミノ酸246〜262によって免疫化することによって、ある種の非ヒト抗体を増加させることができる。抗体は、ポリクローナル、またはモノクローナルであり得るか、または組換えDNAの発現によって宿主細胞内で合成することができる。
【0175】
完全ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有する形質転換動物を免疫化することによって、またはヒト抗体のレパートリーを発現しているファージ表示ライブラリーを選択することによって、上記のように調製され得る。
【0176】
本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、従来のモノクローナル抗体方法論、例えば、Kohler and Milstein,1975,Nature 256:495の標準的体細胞ハイブリダイゼーション法等の様々な技法によって産生することができる。あるいは、モノクローナル抗体を産生する他の技法、例えば、Bリンパ球のウイルス性または発癌性の形質転換を使用することができる。ハイブリドーマを調製するためのある好適な動物系は、十分に確立された方法であるマウス系である。融合のために免疫化脾臓細胞を単離するための免疫化プロトコルおよび技法は、当該技術分野で知られている。そのような手順では、免疫化したマウスからのB細胞を、マウス骨髄腫細胞系等の好適な不死化融合パートナーと融合させる。所望する場合、マウスの代わりにラットまたはそれ以外の他の動物を免疫化し、そのような動物のB細胞をマウス骨髄腫細胞系と融合させて、ハイブリドーマを形成することができる。あるいは、マウス以外の源の骨髄腫細胞系を使用してもよい。ハイブリドーマを作製するための融合手順もまた十分に知られている。
【0177】
提供される一本鎖抗体は、アミノ酸架橋(短ペプチドリンカー)を介して重鎖および軽鎖の可変ドメイン(Fv領域)断片(例えば表1を参照)を連結させ、単一のポリペプチド鎖を生じさせることによって形成し得る。そのような一本鎖Fv(scFv)は、2つの可変ドメインポリペプチド(VLおよびVH)をコードするDNA間のペプチドリンカーをコードするDNAを融合することによって調製され得る。得られたポリペプチドは、それ自体で折り畳まれて抗原結合モノマーを形成することができるか、または、これらは、2つの可変ドメイン間の柔軟なリンカーの長さに応じて、多量体(例えば、二量体、三量体、または四量体)を形成することができる(Kortt et al.,1997,Prot.Eng.10:423、Kortt et al.,2001,Biomol.Eng.18:95−108)。異なるVLおよびVHを含むポリペプチドを組み合わせることによって、異なるエピトープに結合する多量体scFvを形成することができる(Kriangkum et al.,2001,Biomol.Eng.18:31−40)。一本鎖抗体の産生のために開発された技法としては、米国特許第4,946,778号、Bird,1988,Science 242:423、Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879、Ward et al.,1989,Nature 334:544、de Graaf et al.,2002,Methods Mol Biol.178:379−87に記載されるものが挙げられる。
【0178】
あるサブクラスのものである本明細書に提供される抗体を、サブクラス切り替え法を用いて異なるサブクラスからの抗体へと変化させることができる。例えば、表1に示される可変ドメインは、任意の所望のIgサブタイプの定常ドメインに付着させることができる。そのような技法により、所与の抗体(親抗体)の抗原結合性を保有するが、親抗体のイソタイプまたはサブクラスとは異なる抗体イソタイプまたはサブクラスと関連した生物学的特性も示す新規抗体の調製が可能となる。組換えDNA技法を使用することができる。そのような手順には、特定の抗体ポリペプチドをコードするクローン化したDNA、例えば、所望のイソタイプの抗体の定常ドメインをコードするDNAが使用され得る。例えば、Lantto et al.,2002,Methods Mol.Biol.178:303−16を参照のこと。
【0179】
したがって、提供される抗体としては、所望のイソタイプ(例えば、IgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、およびIgD)、ならびにそのFabまたはF(ab’)2断片が挙げられる。さらに、IgG4が所望される場合、IgG4抗体における異種性をもたらし得るH鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向性を減少させるために、Bloom et al.,1997,Protein Science 6:407)に記載されているヒンジ領域における点変異を導入することもまた望まれ得る。
【0180】
さらに、異なる特性(即ち、結合する抗原に対して親和性を変化させる)を有する抗体を誘導する技法も知られている。チェーンシャッフリングと称されるそのような技法の1つは、しばしばファージ表示とも称される、線維状バクテリオファージ表面上での免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子のレパートリー表示を含む。チェーンシャッフリングは、Marks et al.,1992,BioTechnology,10:779に記載されるように、ハプテン2−フェニルオキサゾール−5−オンに対する高親和性抗体を調製するために使用されている。
【0181】
機能的および生化学的特徴を有する抗DKK1抗体を産生するために、表1に記載される重鎖および軽鎖に対する保存的修飾(ならびにコードする核酸への対応する修飾)を行うことができる。そのような修飾を達成する方法は上述されている。
【0182】
本発明による抗体およびその機能的な断片は、様々な方法でさらに修飾し得る。例えば、これらを治療目的で使用する場合、これらをポリエチレングリコールと共役させて(ペグ化)、血清半減期を延長させる、またはタンパク質の送達を増強し得る。代替として、対象抗体またはその断片のV領域を異なる抗体分子のFc領域と融合させ得る。この目的のために使用するFc領域は、相補体と結合しないように、したがって、融合タンパク質を治療剤として使用するときに患者において細胞溶解が誘導される可能性が低下されるように、修飾され得る。さらに、対象抗体またはその機能的な断片は、抗体またはその断片の血清半減期を増大させるためにヒト血清アルブミンと共役させ得る。本発明の抗体またはその断片の別の有用な融合パートナーはトランスサイレチン(TTR)である。TTRは四量体を形成する能力を有しており、したがって、抗体−TTRの融合タンパク質は、結合力を増加させ得る多価抗体を形成することができる。
【0183】
代替として、本明細書に記載される抗体および断片の機能的および/または生化学的特徴の実質的な改変は、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列中に、(a)置換の領域中の、例えばシートまたはヘリカル構造としての分子主鎖の構造、(b)標的部位での分子の負荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩高さの維持におけるその効果が顕著に異なる置換を生じさせることによって達成され得る。「保存的アミノ酸置換」は、ネイティブアミノ酸残基を、その位置でのアミノ酸残基の極性または負荷に与える効果がわずかまたは存在しない、非ネイティブ残基で置換することを含み得る。さらに、アラニン走査突然変異誘発によって以前に記載されているように、ポリペプチド中の任意のネイティブ残基をアラニンで置換してもよい。
【0184】
対象抗体のアミノ酸置換(保存的または非保存的に関わらず)は、当業者によってルーチン的な技法を適用して実施することができる。本明細書に提供される抗体の重要な残基を同定するために、あるいはヒトDKK1に対するこれらの抗体の親和性を増加または減少させるために、あるいは本明細書に記載される他の抗DKK1抗体の結合親和性を改変するために、アミノ酸置換を用いることができる。
【0185】
抗DKK1抗体および免疫学的に機能的な断片は、任意の多数の慣用技術により調製することができる。例えば、抗DKK1抗体は、当該技術分野で公知の任意の技法を用いて組替え発現系により産生することができる。例えば、Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Kennet et al.(eds.)Plenum Press,New York(1980)およびAntibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988)を参照のこと。
【0186】
本発明の抗体は、ハイブリドーマ細胞系中またはハイブリドーマ以外の細胞系で発現させることができる。抗体をコードする発現構築体を用いて、哺乳動物、昆虫、または微生物の宿主細胞を形質転換させることができる。形質転換は、米国特許第4,399,216号、第4,912,040号、第4,740,461号、および第4,959,455号によって例示されているように、例えば、ポリヌクレオチドをウイルスまたはバクテリオファージ中にパッケージングし、当該技術分野で公知の形質移入手順によって、構築体を用いて宿主細胞を形質導入することを含む、ポリヌクレオチドを宿主細胞内に導入するための任意の既知の方法を用いて行うことができる。使用される最適な形質転換手順は、形質転換させる宿主細胞型に依存する。異種ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞内に導入する方法は、当該技術分野で公知であり、デキストラン媒介性形質移入、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介性形質移入、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソーム中へのポリヌクレオチドのカプセル封入、核酸と正負荷脂質との混合、およびDNAの核内への直接微量注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0187】
本発明の組換え発現構築体は、典型的には、重鎖定常領域(例えば、CH1、CH2、および/またはCH3)、重鎖可変領域、軽鎖定常領域、軽鎖可変領域、抗DKK1抗体の軽鎖または重鎖の1つ以上のCDRのうちの1つ以上を含むポリペプチドをコードする核酸分子を含む。これらの核酸配列を、標準的なライゲーション技法を用いて適切な発現ベクター内に挿入する。一実施形態では、11H10の重鎖または軽鎖定常領域を、DKK1に特異的な重鎖または軽鎖可変領域のC末端に付加させて、発現ベクターに連結する。ベクターは、典型的には、使用される特定の宿主細胞において機能的であるように選択される(即ち、ベクターは、宿主細胞の機構と適合性があり、遺伝子の増幅および/または発現を生じさせ得る)。いくつかの実施形態では、ジヒドロ葉酸還元酵素等のタンパク質レポーターを用いてタンパク質フラグメント相補性アッセイを使用するベクターが用いられる(例えば、米国特許第6,270,964号を参照)。好適な発現ベクターは、例えば、Invitrogen Life TechnologiesまたはBD Biosciences(旧名「Clontech」)から購入することができる。本発明の抗体および断片をクローニングおよび発現するのに他の有用なベクターとしては、Bianchi and McGrew,Biotech Biotechnol Bioeng 84(4):439−44(2003)に記載されているものが挙げられる。さらなる好適な発現ベクターは、例えば、Methods Enzymol,vol.185(D.V.Goeddel,ed.),1990,New York:Academic Pressに考察されており、これは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0188】
典型的には、宿主細胞のいずれかで使用される発現ベクターは、プラスミドまたはウイルスを維持するため、ならびに外因性ヌクレオチド配列をクローニングおよび発現させるための配列を含有する。「フランキング配列」と総称されるそのような配列には、典型的には、以下の作動可能に連結したヌクレオチド配列のうちの1つ以上が含まれる:プロモーター、1つ以上のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナーおよびアクセプターのスプライス部位を含有する完全イントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現させるポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択可能なマーカー要素。
【0189】
任意に、ベクターは、「タグ」コード配列、即ち、コード配列の5’または3’末端に位置するオリゴヌクレオチド分子、ポリHis(ヘキサHis等)をコードするオリゴヌクレオチド配列、または、FLAG(登録商標)、HA(インフルエンザウイルスからの赤血球凝集素)、もしくはmyc等の、市販の抗体が存在する別の「タグ」を含有し得る。タグは、典型的には、発現の際に抗体タンパク質と融合され、抗体を宿主細胞から親和性精製する手段として役割を果たすことができる。親和性精製は、例えば、タグに対する抗体をアフィニティーマトリックスとして使用するカラムクロマトグラフィーによって達成することができる。任意に、タグは、続いて開裂用のあるペプチダーゼを用いること等の様々な手段によって、精製した抗体ポリペプチドから除去することができる。
【0190】
発現ベクターにおけるフランキング配列は、同種(即ち、宿主細胞と同じ種および/または株に由来)でも、異種(即ち、宿主細胞種または株以外の種に由来)でも、ハイブリッド(即ち、1種を超える起源のフランキング配列の組み合わせ)でも、合成でも、または天然でもよい。したがって、フランキング配列の起源は、フランキング配列が、宿主細胞の機構において機能的であり、それによって活性化できる限りは、任意の原核生物もしくは真核生物、任意の脊椎生物もしくは無脊椎生物、また任意の植物であり得る。
【0191】
本発明のベクター中で有用なフランキング配列は、当該技術分野で公知のいくつかの方法のいずれかによって得られ得る。典型的には、本明細書で有用なフランキング配列は、マッピングおよび/または制限エンドヌクレアーゼ消化によって以前に同定されているはずであり、したがって、適切な制限エンドヌクレアーゼを用いて適切な組織起源から単離することができる。いくつかの例において、フランキング配列の完全なヌクレオチド配列が既知であり得る。ここでは、フランキング配列は、核酸を合成またはクローニングするための本明細書に記載される方法を用いて合成され得る。
【0192】
フランキング配列の全体または一部分のみが知られている場合は、これは、PCRを用いて、および/またはゲノムライブラリーを、同じまたは別の種からの適切なオリゴヌクレオチドおよび/またフランキング配列断片を用いてスクリーニングすることによって得られ得る。フランキング配列が知られていない場合は、フランキング配列を含有するDNAの断片を、例えば、コード配列またはさらには別の遺伝子を含有し得る、より大きなDNA片から単離し得る。単離は、制限エンドヌクレアーゼ消化によって適切なDNA断片を生じさせ、次いで、アガロースゲル精製、Qiagen(商標)カラムクロマトグラフィー(Chatsworth,Calif.)、または当業者に知られている他の方法を用いて単離することで達成され得る。この目的を達成するための好適な酵素の選択は、当業者に容易に明らかであろう。
【0193】
複製起点とは、典型的には、原核発現ベクター、特に購入したものの一部であり、起点は、宿主細胞中でのベクターの増幅を補助する。選択したベクターが複製起点部位を含有しない場合、既知の配列に基づいてそれを化学的に合成し、ベクター内に連結させ得る。例えば、プラスミドpBR322(New England Biolabs,Beverly,Mass.)からの複製起点がほとんどのグラム陰性細菌には好適であり、様々な起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、またはHPVもしくはBPV等のパピローマウイルス)が哺乳動物細胞中にベクターをクローニングするために有用である。一般に、哺乳動物複製起点は、哺乳動物発現ベクターには必要ない(例えば、SV40起点は、多くの場合、これが初期プロモーターを含有することのみが理由で使用する)。
【0194】
本発明の発現およびクローニングベクターは、典型的には、宿主生物によって認識され、かつ抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片をコードする核酸と作動可能に連結しているプロモーターを含有する。プロモーターとは、構造遺伝子の転写を制御する、構造遺伝子の開始コドンの上流(即ち5’側)に位置する(一般に約100〜1000bp以内)転写されない配列である。プロモーターは、誘導性プロモーターおよび構成的プロモーターの2つのクラスのうちの1つへと慣習的に分類される。誘導性プロモーターは、栄養素の存在もしくは非存在または温度の変化等の、培養条件の何らかの変化に応答して、その制御下にあるDNAからの増加したレベルの転写を開始させる。その一方で、構成的プロモーターは、連続的な遺伝子産物の産生を開始する、即ち、遺伝子発現の実験的制御はわずかしか存在しない、または存在しない。様々な潜在的な宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが公知である。好適なプロモーターは、制限酵素消化によってプロモーターを供給源DNAから除去することによって、またはプロモーターをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅し、所望のプロモーター配列をベクター内に挿入することによって、抗DKK1抗体をコードするDNAと作動可能に連結させる。
【0195】
また、酵母宿主で使用するための好適なプロモーターも当該技術分野で公知である。酵母エンハンサーは、酵母プロモーターと共に有利に使用される。哺乳動物宿主細胞での使用に好適なプロモーターは公知であり、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2等)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、および最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)等のウイルスのゲノムから得られたものが含まれるが、これらに限定されない。他の好適な哺乳動物プロモーターには、異種哺乳動物プロモーター、例えば、熱ショックプロモーターおよびアクチンプロモーターが含まれる。
【0196】
本発明の組換え発現ベクターの実施に有用な特定のプロモーターとしては、SV40初期プロモーター領域(Bemoist and Chambon,1981,Nature 290:304−10)、CMVプロモーター、ラウス肉腫ウイルスの3’末端反復配列中に含有されるプロモーター(Yamamoto,et al.,1980,Cell 22:787−97)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1444−45)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al.,1982,Nature 296:39−42)、ベータ−ラクタマーゼプロモーター等の原核発現ベクター(Villa−Kamaroff et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,75:3727−31)、またはtacプロモーター(DeBoer et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21−25)が含まれるが、これらに限定されない。また、組織特異性を示し、形質転換動物で利用されている、以下の動物転写制御領域も、使用が利用可能である:膵臓腺房細胞中で活性のあるエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift et al.,1984,Cell 38:63946、Ornitz et al.,1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399409、MacDonald,1987,Hepatology 7:425−515)、膵臓ベータ細胞中で活性のあるインスリン遺伝子制御領域(Hanahan,1985,Nature 315:115−22)、精巣、乳房、リンパ系、および肥満細胞中で活性のあるマウス乳癌ウイルス制御領域(Leder et al.,1986,Cell 45:485−95)、肝臓中で活性のあるアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al.,1987,Genes and Devel.1:268−76)、肝臓中で活性のあるアルファ−胎児タンパク質遺伝子制御領域(Krumlauf et al.,1985,Mol.Cell.Biol.5:1639−48、Hammer et al.,1987,Science 235:53−58)、肝臓中で活性のあるアルファ1−抗トリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al.,1987,Genes and Devel.1:161−71)、骨髄性細胞中で活性のあるベータ−グロビン遺伝子制御領域(Mogram et al.,1985,Nature 315:338−40、Kollias et al.,1986,Cell 46:89−94)、脳中のオリゴデンドロサイト細胞中で活性のあるミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readhead et al.,1987,Cell 48:703−12)、骨格筋中で活性のあるミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Sani,1985,Nature 314:283−86)、視床下部中で活性のある性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al.,1986,Science 234:1372−78)、ならびに最も具体的にはリンパ球細胞中で活性のある免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al.,1984,Cell 38:647−58、Adames et al.,1985,Nature 318:533−38;Alexander et al.,1987,Mol.Cell Biol.7:1436−44)。
【0197】
高等真核生物における、本発明の抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片をコードする核酸の転写を増加させるために、エンハンサー配列をベクター内に挿入し得る。エンハンサーとは、DNAのシス作用性要素であり、通常約10〜300bpの長さであり、プロモーターに作用して転写を増加させる。エンハンサーは、比較的、配向および位置から独立している。これらは、転写単位の5’および3’側に見られる。哺乳動物遺伝子から入手可能ないくつかのエンハンサー配列が知られている(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ−胎児タンパク質、およびインスリン)。また、ウイルスからのエンハンサー配列も使用することができる。SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが、真核プロモーターを活性化させるための例示的なエンハンサー要素である。エンハンサーは、核酸分子に対して5’または3’位でベクター内にスプライシングされ得るが、これは典型的にはプロモーターに対して5’側部位に配置される。
【0198】
発現ベクターにおいて、転写終結配列は、典型的にはポリペプチドコード領域の3’末端に位置し、転写を終結させる役割を果たす。原核生物細胞の発現に用いられる転写終結配列は、典型的にはポリ−T配列へと続くG−C豊富な断片である。配列は、ライブラリーから容易にクローン化されるか、またはさらにベクターの一部として商品として購入されるが、本明細書に記載されるもの等の核酸合成のための方法を用いて容易に合成することもできる。
【0199】
選択可能なマーカー遺伝子要素は、選択的培養培地中で増殖される宿主細胞の生存および増殖に必要なタンパク質をコードする。発現ベクターに用いられる典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)原核宿主細胞では、抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、テトラサイクリン、またはカナマイシンに対する耐性を付与する、(b)細胞の栄養要求欠乏性を補完する、または(c)複合培地から利用可能でない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。選択可能なマーカーの例としては、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、およびテトラサイクリン耐性遺伝子が挙げられる。細菌ネオマイシン耐性遺伝子もまた、原核生物および真核生物宿主細胞の両方における選択のために使用することができる。
【0200】
他の選択遺伝子を使用して、発現される遺伝子を増幅させることができる。増幅とは、単一のコピーでは、ある選択条件下で細胞の生存および増殖させるのに十分な高レベルで発現できない遺伝子を、組換え細胞の連続世代の染色体内で、タンデムに反復させるプロセスである。哺乳動物細胞に好適な増幅可能な選択可能なマーカーの例には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)およびプロモーターのないチミジンキナーゼが含まれる。これらのマーカーの使用において、哺乳動物細胞形質転換体を、形質転換体のみがベクター中に存在する選択遺伝子のおかげで生存するように唯一適応している選択圧下に置く。培地中の選択剤の濃度を次々に増加させる条件下で形質転換細胞を培養し、それによって、選択遺伝子が増幅された細胞のみの生存を可能にすることによって、選択圧が課される。これらの状況下で、本発明の抗体をコードするDNA等の選択遺伝子に隣接するDNAが選択遺伝子と共に同時増幅される。その結果、増加した量の抗DKK1ポリペプチドが増幅したDNAから合成される。
【0201】
リボソーム結合部位がmRNAの翻訳開始に通常必要であり、これはシャイン−ダルガノ配列(原核生物)またはコザック配列(真核生物)によって特徴付けられる。この要素は、典型的にはプロモーターの3’側および発現させるポリペプチドのコード配列の5’側に位置する。
【0202】
いくつかの例において、例えば、グリコシル化が真核宿主細胞発現系中に所望される場合は、グリコシル化または収率を向上させるために様々なプレ配列を操作することができる。例えば、特定のシグナルペプチドのペプチダーゼ切断部位を変更するか、または、やはりグリコシル化に影響を与え得るプロ配列を付加することができる。最終タンパク質産物は、発現から起こる1つ以上の付加アミノ酸を1位(成熟タンパク質の最初のアミノ酸に対して)に有し得、これらは完全に除去されていない場合がある。例えば、最終タンパク質産物は、アミノ末端に付着した、ペプチダーゼ切断部位中に見られる1つまたは2つのアミノ酸残基を有し得る。あるいは、いくつかの酵素切断部位の使用により、酵素が成熟ポリペプチド内のそのような領域で切断する場合は、わずかに切断されているが、それでも活性な形態の所望のポリペプチドが生じ得る。
【0203】
市販の発現ベクターが上述の所望のフランキング配列の一部を欠く場合は、これらの配列をベクター内に個々に連結させることによってベクターを改変することができる。ベクターが選択され、所望に応じて改変された後、抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片をコードする核酸分子をベクターの適切な部位内に挿入する。
【0204】
本発明の抗体またはその免疫学的に機能的な断片をコードする配列を含有する完成したベクターを、増幅および/またはポリペプチド発現のために好適な宿主細胞内に挿入する。抗DKK1抗体、その免疫学的に機能的な断片のための発現ベクターを選択された宿主細胞内に形質転換させることは、形質移入、感染症、塩化カルシウム、電気穿孔、微量注入、リポフェクション、DEAE−デキストラン方法、または他の知られている技法等の方法を含む、公知の方法によって達成され得る。選択された方法は、使用される宿主細胞の種類と部分的に相関関係にある。これらの方法および他の好適な方法は当業者に公知である。
【0205】
形質転換させた宿主細胞は、適切な条件下で培養した際に、抗DKK1抗体またはその機能的な断片を合成し、続いて、これを培養培地から収集するか(宿主細胞がそれを培地内に分泌する場合)、またはそれを産生する宿主細胞から直接収集することができる(それが分泌されない場合)。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性に望ましいまたは必要なポリペプチド修飾(グリコシル化またはリン酸化等)、および生物活性のある分子への折り畳みの容易さ等の、様々な要因に依存する。
【0206】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は当該技術分野で公知であり、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、および多くの他の細胞系等の、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞系が含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態では、特定のDNA構築体を発現させるための最良の細胞系は、様々な細胞系を試験して、どれが最高レベルの発現レベルを有し、構成的なDKK1結合特性を有する抗体を産生するかを決定することによって選択し得る。
【0207】
ある実施形態では、本発明はまた、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤、および/またはアジュバントのうちの1つ以上と共に対象の抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片を含む組成物を提供する。そのような組成物は、有効量の抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片を含有してもよい。したがって、薬学的組成物または医薬品の調製における本明細書に提供される抗体および免疫学的に活性な断片の使用も含まれる。そのような組成物は、下記の代表的な有用性の項に記載されたような種々の疾患の治療に使用することができる。
【0208】
薬学的調製物のために許容される製剤成分は、使用される投与量および濃度において、受容者に対して非毒性である。提供される抗体および免疫学的に機能的な断片に加えて、本発明による組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧、粘度、透明性、色、等張性、臭い、無菌性、安定性、解離または放出の速度、吸着または透過性、を改変、維持、または保存するための成分を含有することができる。薬学的組成物を製剤化するための好適な材料としては、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジン等);抗菌剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、または亜硫酸水素ナトリウム等);緩衝剤(酢酸塩、ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス−HCl、クエン酸塩、リン酸塩、または他の有機酸類等);増量剤(マンニトールまたはグリシン等);キレート化剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ−シクロデキストリン、またはヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン等);充填剤;単糖類、二糖類;および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリン類等);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等);着色剤、風味剤、および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー類(ポリビニルピロリドン等);低分子量ポリペプチド類;塩形成対イオン類(ナトリウム等);保存剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、または過酸化水素等);溶媒類(グリセリン、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコール等);糖アルコール類(マンニトールまたはソルビトール等);懸濁剤;界面活性剤または湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル類、ポリソルベート20、ポリソルベート80等のポリソルベート類、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパール);安定性増強剤(ショ糖またはソルビトール等);等張性増強剤(ハロゲン化アルカリ金属、好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、マンニトール ソルビトール等);送達媒体;希釈剤;賦形剤、および/または薬学的用アジュバント類が挙げられるが、これらに限定されない(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,(A.R.Gennaro,ed.),1990,Mack Publishing Companyを参照されたく)、これは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0209】
薬学的組成物における主要媒体または担体は、本来は、水性でも非水性でもよい。そのような組成物に好適な媒体または担体としては、注射用水、生理的食塩水、または人工脳脊髄液が挙げられ、場合によっては、非経口投与用組成物に一般的な他の材料が添加される。中性緩衝生理食塩水または血清アルブミンを混合した生理食塩水は、さらなる代表的媒体である。抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片を含む組成物は、所望の純度を有する選択された組成物を、凍結乾燥ケークまたは水溶液形態の任意の製剤化剤と混合することにより、保存用に調製され得る。さらに、抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片は、ショ糖等の適切な賦形剤を用いて凍結乾燥物として製剤化され得る。
【0210】
製剤成分は、許容される濃度で投与部位に存在する。緩衝剤は、生理的pHあるいはわずかにより低いpHで、典型的には約4.0から約8.5、あるいは約5.0から8.0の間でのpH範囲内に組成物を維持するために使用することが有利である。薬学的組成物は、約pH6.5〜8.5のトリス緩衝液、または約pH4.0〜5.5の酢酸緩衝液を含むことができ、さらにソルビトールまたはその好適な代替物を含んでよい。
【0211】
薬学的組成物は、錠剤の製造に好適である非毒性賦形剤と混合した、有効量の抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片を含んでよい。錠剤を滅菌水または別の適切な媒体に溶解することにより、液剤は、単位用量形態で調製され得る。好適な賦形剤としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウム、乳糖、またはリン酸カルシウム等の不活性材料;またはデンプン、ゼラチン、またはアラビアゴム等の結合剤;またはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルク等の潤滑剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0212】
さらなる薬学的組成物は、持続型または制御送達製剤の形態である。リポソーム担体、生体侵食性ミクロ粒子、または多孔性ビーズおよび蓄積注射等の種々の他の持続型または制御送達手段を製剤化する技法を用いることができる(例えば、薬学的組成物の送達用多孔性ポリマーミクロ粒子の制御放出を記載している、国際出願PCT/米国第93/00829号を参照)。持続型放出製剤としては、造形品の形態での半透過性マトリックス、例えば、薄膜、またはミクロカプセル、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号および欧州特許第058,481号)、L−グルタミン酸とガンマエチル−L−グルタメートとのコポリマー(Sidman et al.,1983,Biopolymers 22:547−556)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(Langer et al.,1981,J Biomed Mater Res 15:167−277およびLanger,1982,Chem Tech 12:98−105)、エチレンビニルアセテート(Langerら、同書)、またはポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号)を挙げることができる。持続型放出組成物としてはまた、当該技術分野で公知の任意のいくつかの方法により調製することができるリポソーム類を挙げることもできる。例えば、Eppstein et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688−3692、欧州特許第036,676号、欧州特許第088,046号、および欧州特許第143,949号を参照。
【0213】
インビボ投与に用いられる薬学的組成物は、一般的に滅菌である。滅菌は、滅菌ろ過膜を通すろ過により達成され得る。組成物が凍結乾燥される場合、滅菌は、凍結乾燥および再構成の前か後に実施され得る。非経口投与用の組成物は、凍結乾燥形態または溶液において保存され得る。ある実施形態では、非経口用組成物は、滅菌アクセス口を有する容器、例えば、皮下注射針により貫通可能な密栓を有する静脈溶液用バッグまたはバイアル、または注入用に即時使用できる前充填滅菌シリンジに入れる。
【0214】
一旦本発明の薬学的組成物が製剤化されると、この薬学的組成物は、溶液、懸濁液、ゲル、乳濁液、固体として、または乾燥または凍結乾燥粉末として滅菌バイアル中に保存され得る。そのような製剤は、即時使用できる形態または投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥された)で保存され得る。
【0215】
薬学的組成物を製剤化するために使用される成分は、高純度であることが好ましく、有害となる可能性のある汚染物質が実質的にないことが好ましい(例えば、少なくとも米国食品(NF)グレード、一般に少なくとも分析グレード、またより典型的には少なくとも薬学的グレード)。さらに、インビボ使用に意図された組成物は、通常は滅菌されている。所与の化合物を使用前に合成する必要がある限りは、生じた産物は典型的に、合成または精製工程時に存在し得る毒性となる可能性のある薬剤、特にエンドトキシン類のいずれもが実質的に無い。非経口用組成物はまた、滅菌で、実質的に等張性であり、GMP条件下で製造される。
【0216】
本発明は、複数回用量または単回用量投与単位を生成するためのキットを提供する。例えば、本発明によるキットはそれぞれ、例えば、単一および複数チャンバの前充填されたシリンジ(例えば、液体シリンジ、リオシリンジ、または針なしシリンジ)等の、乾燥タンパク質を有する第1の容器および水性希釈剤を有する第2の容器の両方を含み得る。
【0217】
本発明の薬学的組成物は、典型的には注入により非経口的に送達することができる。注入は、眼内、腹腔内、門脈内、筋肉内、静脈内、くも膜下腔内、大脳内(実質内)、脳室内、動脈内、病巣周囲、または皮下であり得る。点眼剤は、眼内投与のために使用することができる。いくつかの場合において、注入は、処置が標的とする特定の1本または複数本の骨の近傍に局在化させてよい。非経口投与のために、抗体は、薬学的に許容される媒体中、所望の抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片を含む、発熱物質のない非経口的に許容される水溶液中で投与され得る。特に非経口注射に好適な媒体は、抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片が、適切に保存された滅菌等張性液として製剤化されている滅菌蒸留水である。
【0218】
対象の抗DKK1抗体およびその機能的な断片を含む薬学的組成物は、ボーラス注射によって投与されても、もしくは注入によって連続的に投与されても、埋め込みデバイス、持続型放出システム、または放出持続を達成するための他の手段によって投与されてもよい。薬学的組成物はまた、所望の分子が吸収されているか、またはカプセル化されている膜、スポンジ、または別の適切な材料を介して局所的に投与することができる。埋め込みデバイスが用いられる場合、デバイスは、任意の好適な組織または臓器に埋め込まれ得、所望の分子の送達は、拡散、持続放出型ボーラス、または連続放出を介し得る。この調製物は、その後蓄積注射によって送達され得る産物の制御放出または持続放出を提供し得る、注射可能なミクロスフェア、生体内分解性粒子、ポリマー化合物(ポリ乳酸、ポリグリコール酸、もしくはコポリ(乳/グリコール)酸(PLGA)等)、ビーズまたはリポソーム等の薬剤によって製剤化され得る。ヒアルロン酸による製剤化は、循環中における持続時間を助長する効果を有する。
【0219】
抗DKK1抗体またはその機能的な断片を含む対象組成物は、吸入用に製剤化され得る。これらの実施形態では、抗DKK1抗体は、吸入用の乾燥粉末として製剤化されるか、または抗DKK1抗体の吸入溶液もまた、噴霧化等により、エーロゾル送達用噴射剤と共に製剤化され得る。肺投与は、化学的修飾タンパク質の肺送達が記載される、国際出願PCT/US94/001875号にさらに記載されており、これは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0220】
本発明のある薬学的組成物は、経口等、消化管を介して送達することができる。この様式で投与される対象の抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片は、錠剤およびカプセル剤等の固形剤形の配合に慣例的に使用される担体と共に、または担体なしで製剤化され得る。カプセル剤は、生物学的利用能が最大であり、全身前分解が最小である時に胃腸管内の箇所で製剤の活性部分を放出するように設計され得る。抗DKK1抗体またはその機能的な断片の吸収を促進させるために、追加の試剤を含ませることができる。経口投与では、消化酵素に対する耐性を付与するために、修飾アミノ酸を使用してもよい。また、希釈剤、風味剤、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤、および結合剤も使用してもよい。
【0221】
抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片を含む対象組成物はまた、エキソビボで使用してもよい。このような場合において、患者から取り出された細胞、組織、または臓器は、抗DKK1抗体に暴露されるか、またはそれと共に培養される。次いで、この培養細胞は、その患者または異なる患者に戻して移植しても、または他の目的のために使用してもよい。
【0222】
ある実施形態では、抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片は、ポリペプチドを発現し、分泌させるために、本明細書に記載されるもの等の方法を用いて、遺伝子操作されたある細胞を移植することによって送達することができる。このような細胞は、動物細胞でもヒト細胞でもよく、また、自己種でも、異種でも、異種間でもよく、また不死化のものであってもよい。免疫応答の機会を減少させるために、細胞はカプセル化して周囲組織の侵入を避け得る。カプセル化材料は、典型的には、タンパク質産物の放出を可能にするが、患者の免疫系または周囲組織からの他の有害な因子による細胞破壊を防ぐ、生体適合性のある、半透過性ポリマー封入物または膜である。
【0223】
投与量
【0224】
提供される薬学的組成物は、予防処置および/または治療処置のために投与することができる。「有効量」とは、一般に、症状の重症度および/または頻度の軽減または除去および/または損傷の改善または修復である所望の効果を達成するために、活性成分(即ち、抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片)の十分な量であるが、非毒性である量を指す。「治療的有効量」とは、疾患状態または症状を治療するために十分な量、あるいは、疾患または任意の他の望ましくない症状の進行を防ぐか、妨げるか、遅らせるか、または逆転させるのに十分な量を指す。「予防的有効量」とは、疾患状態または症状の発生を防ぐか、妨げるか、または遅らせるのに有効な量を指す。
【0225】
一般に、抗体または断片の毒性および治療的有効性は、例えば、LD50(集団の50%が致死する量)およびED50(集団の50%に治療的有効な用量)の測定等、細胞培養および/または実験動物における標準的薬学的手順に従って判定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指数を示す組成物が好ましい。
【0226】
細胞培養および/または動物実験から得られたデータは、ヒトへの投与量範囲を製剤化するのに使用することができる。活性成分の投与量は、典型的に、毒性がほとんど無いか、全く無いED50を含む濃度を循環させる範囲内にある。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路によってこの範囲内で変わり得る。
【0227】
治療的または予防的に使用される、抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片を含む薬学的組成物の有効量は、例えば、治療の背景および目的によって異なる。したがって、ある実施形態による治療のための適切な投与量レベルは、部分的に、送達される分子、抗DKK1抗体が用いられる適応症、投与経路、および患者のサイズ(体重、体表面、または臓器サイズ)および/または状態(年齢および全体的な健康)によって異なり得ることを当業者は認識するであろう。臨床医は、投与量の力価を測定するため、および最適の治療効果を得るために投与経路を変更してもよい。典型的な投与量は、上記の因子によって、約0.1μg/kgから約100mg/kgまで、またはそれ以上の範囲である。ある実施形態では、投与量は、0.1μg/kgから約150mg/kgまで;または1μg/kgから約100mg/kgまで;または5μg/kgから約50mg/kgまでの範囲であり得る。
【0228】
投与回数は、製剤中の抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片の薬物動態パラメータによって異なる。例えば、臨床医は、ある投与量が所望の効果達成に到達するまで、この組成物を投与するであろう。したがって、この組成物は、単回用量、または経時的に2回以上の用量(所望の分子の同一量を含有しても、しなくてもよい)、または埋め込みデバイスまたはカテーテルを介した連続輸液として投与してもよい。治療は、経時的に連続的であっても、または断続的であってもよい。適切な投与量のさらなる精緻化は、当業者により日常的に行われ、彼らにより日常的に行われる業務の範囲内である。適切な投与量は、適切な用量応答データの使用により確認され得る。
【0229】
DKK1を標的とすることによって内科的疾患を治療するために、対象の抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片を含む組成物は、疾患の重症度を反映する少なくとも1つの指標において持続した改善を誘導するのに十分な量および時間で、患者に投与され得る。患者が、少なくとも1日から7日、またはいくつかの場合においては1週間から6週間離れた少なくとも2つの機会に改善を示す場合に、改善が「持続されている」と考えられる。適切な間隔は、ある程度、治療されている病態に依存し、改善が持続されているかどうかを判定するための適切な間隔を決定するのは、主治医の権限内にある。改善の程度は、兆候または症状に基づいて判定され、また生活の質のアンケート等、患者に渡されるアンケートも使用され得る。
【0230】
患者の病気の程度を反映する種々の指標は、治療の量および時間が十分であるかどうかを判定するために評価され得る。選択された1つまたは複数の指標に関するベースライン値は、抗体の最初の用量投与前の患者の検査により確立される。ベースライン検査は、最初の用量の投与から約60日以内に行われることが好ましい。例えば、骨折の治療等の急性症状を治療するために抗体が投与される場合、傷害が生じてから実際にはできるだけ早く最初の用量が投与される。
【0231】
改善は、患者が選択された1つまたは複数の指標に関するベースラインを超えた改善が明示されるまで、抗DKK1抗体またはその免疫学的に機能的な断片を投与することにより誘導される。慢性状態の治療において、この改善度は、少なくとも1ヵ月以上の期間、例えば、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月以上、または無期限にわたってこの医薬品を反復投与することにより得られる。1週間から6週間の期間、または単回用量でも、急性病態の治療に十分であることが多い。傷害または急性状態に関しては、単回用量でも十分であり得る。
【0232】
治療後の患者の病気の程度が1つ以上の指標に従って改善したように見え得る場合でも、治療は、同じレベルでまたは用量もしくは回数を減じて無期限に継続してもよい。一旦治療を減少または中断しても、後で症状が再出現した場合は元のレベルで再開してもよい。
【0233】
対象の抗DKK1抗体およびその免疫学的に機能的な断片は、生体試料においてDKK1を検出するために使用することができる。このような使用は、このタンパク質を産生する細胞または組織の同定を可能にするか、あるいはDKK1が過剰産生、または過少産生される病態を検出するための診断として役立つ。提供される抗体および断片はまた、DKK1に結合する分子をスクリーニングするための方法に使用することもできる。例えば、種々の競合的スクリーニング法を使用することができる。いくつかの方法において、抗DKK1抗体が結合するDKK1分子またはその断片は、別の分子(即ち、候補分子)と共に、本明細書に開示される抗体または断片と接触される。抗体または断片とDKK1との間の結合の減少は、分子がDKK1に結合する指標である。抗体または断片の結合は、種々の方法、例えば、ELISAを用いて検出することができる。抗DKK1抗体または断片とDKK1との間の結合の検出は、抗体を検出可能に標識することによって簡便化することができる。いくつかの方法において、最初のスクリーニングで結合を示す分子は、それがDKK1活性を阻害するかどうか(例えば、分子がWntシグナル伝達を活性化するかどうか)を判定するためにさらに分析される。
【0234】
DKK1阻害剤またはスクレロスチン阻害剤または組み合わせ(例えば、それぞれの結合剤)の活性は、種々の方法で測定され得る。骨塩量または骨密度の結合剤の媒介による増加は、単一エネルギーおよび二重エネルギーX線吸収測定法、超音波、コンピュータ断層撮影法、X線撮影法、および磁気共鳴映像法を用いて測定され得る。骨量はまた、体重から、または他の方法を用いても計算され得る(Guinness−Hey,Metab.Bone Dis.Relat.Res.,5:177−181(1984)を参照)。例えば、骨量減少、骨吸収、骨形成、骨強度、または骨石灰化のパラメータにおける薬学的組成物および方法の効果を試験するために、骨粗鬆症および骨減少症等のヒト疾患の状態を模倣する動物および特定の動物モデルが、当該技術分野で使用される。そのようなモデルの例には、卵巣切除されたラットモデルが含まれる(Kalu,Bone and Mineral,15:175−192(1991)、Frost and Jee,Bone and Mineral,18:227−236(1992)、およびJee and Yao,J.Musculoskel.Neuron.Interact.,1:193−207(2001))。また、本明細書に記載される結合剤の活性を測定するための方法を使用して、他の阻害剤の有効性を決定してもよい。
【0235】
ヒトでは、例えば、臀部および脊椎の二重X線吸光光度法(DXA)を用いて骨塩密度を臨床的に測定することができる。他の技術には、定量的コンピュータ断層撮影法(QCT)、超音波検査、単一エネルギーX線吸光光度法(SXA)、およびX線撮影吸光光度法(radiographic absorptiometry)が含まれる。測定のための一般的な中枢骨格部位には、脊椎および臀部が含まれ、末梢部位には、前腕、手指、手関節、および踵が含まれる。超音波検査を除き、米国医師会(American Medical Association)は、BMD技術が、典型的に、X線の使用を含み、かつ、放射線の減衰が放射線経路中の組織の厚みおよび組成に依存するという原理に基づくことを指摘している。全ての技術は、結果と基準データベースとの比較を含む。
【0236】
あるいは、1つ以上のスクレロスチン結合剤に対する生理反応は、骨マーカーレベルをモニタリングすることによって計測することができる。骨マーカーは骨リモデリングプロセス中に生成される産物であり、骨、骨芽細胞、および/または破骨細胞によって放出される。骨吸収および/または骨形成「マーカー」レベルの変動は、骨リモデリング/モデリングの変化を意味する。国際骨粗鬆症財団(IOF)は、骨マーカーを用いて骨密度治療をモニタリングすることを推奨している(例えば、Delmas et al.,Osteoporos Int.,Suppl.6:S2−17(2000)を参照されたく、参照によって本明細書に組み込まれる)。骨吸収(または破骨細胞活性)を示すマーカーには、例えば、C−テロペプチド(例えば1型コラーゲンのC末端テロペプチド(CTX)または血清中の架橋型C−テロペプチド)、N−テロペプチド(1型コラーゲンのN末端テロペプチド(NTX))、デオキシピリジノリン(DPD)、ピリジノリン、尿ヒドロキシプロリン、ガラクトシルヒドロキシリシン、および酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(例えば、血清中の酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼアイソフォーム5b)が含まれる。骨形成/鉱化マーカーとしては、骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)、I型プロコラーゲンのNおよびC末端伸長部分から放出されるペプチド(P1NP,PICP)、およびオステオカルシン(OstCa)が挙げられるが、これらに限定されない。臨床試料、例えば尿および血液中のマーカーを検出および定量するためのいくつかのキットが市販されている。
【0237】
投与時に、治療剤は、好ましくは、1つ以上の骨吸収マーカーのレベル、例えばI型コラーゲンのC−テロペプチド(CTX)の血清レベルを減少させる。したがって、本発明は、療法をモニタリングする方法、即ち、スクレロスチン結合剤または他のスクレロスチン阻害剤に対する生理反応をモニタリングする方法をさらに提供する。本方法は、治療剤を投与すること、次いで1つ以上の骨吸収マーカーのレベルを測定することを含む。さらに、本方法は、投与前に1種以上の骨形成マーカーのレベルを測定することを含むことができる。治療中および/または治療後の骨吸収マーカーのレベルを治療前レベルと比較するか、あるいはその患者集団に典型的な標準範囲と比較してもよい。当業者は、類似の年齢、性別、疾患レベル、および/または患者集団の他の特性の代表的な数の患者を試験することによって、好適な標準範囲を容易に決定することができる。一回量の治療剤によって骨吸収マーカーのレベルを少なくとも約5%(例えば、約10%、約20%、または約30%)減少させることができる。いくつかの実施形態では、治療剤の投与は、投与前の骨吸収マーカーのレベルと比較して、骨吸収マーカーのレベルを少なくとも約40%(例えば、約50%、約60%、または約70%)減少させる。さらに、骨吸収マーカーレベルは、一回量の投与後、少なくとも約3日間(例えば、約7日間、約2週間、約3週間、約1か月、約5週間、約6週間、約7週間、約2か月、約9週間、約10週間、約11週間、または約3か月)減少し得る。
【0238】
骨吸収マーカーのレベルを減少させることに加えて、患者に投与される治療剤の量はまた、1つ以上の骨形成マーカーのレベル、例えばBSAPの血清レベル、P1NPの血清レベル、および/またはOstCaの血清レベルを増加させることもできる。一回量の治療剤は、骨形成マーカーのレベルを、例えば、少なくとも約5%(例えば約10%、約20%、または約30%)増加させることができる。いくつかの実施形態では、治療剤の投与は、骨形成マーカーのレベルを少なくとも約40%(例えば約50%、約60%、または約70%)上昇させる。他の実施形態では、治療剤の投与は、1つ以上の骨形成マーカーのレベルを少なくとも約75%(例えば約80%、約90%、約100%、または約110%)増加させる。また他の実施形態では、治療剤の投与は、骨形成マーカーのレベルを少なくとも約120%(例えば約130%、約140%、約150%、約160%、または約170%)増加させる。代替の実施形態では、治療剤は、骨形成マーカーのレベルを少なくとも約180%(例えば約190%または約200%)増加させる。骨形成マーカーレベルは、一回量の治療剤の投与後、少なくとも約3日間(例えば約7日間、約2週間、約3週間、約1ヶ月間、約5週間、約6週間、約7週間、約2ヶ月間、約9週間、約10週間、約11週間、または約3ヶ月間)(治療前の骨形成マーカーレベルまたはその患者集団に典型的な標準範囲と比較して)上昇したままである。
【0239】
典型的には、BMDは、「全身」(例えば、頭部、体幹、腕、および脚)または臀部(例えば臀部全体および/または大腿骨頸部)、脊椎(例えば腰椎)、手関節、手指、脛骨、および/または踵において測定することができる。骨粗鬆症の診断では、患者のBMDを30歳の成人健常者(即ち「若年成人」)のピーク密度と比較して、いわゆる「T−スコア」を作成する。また、患者のBMDを「年齢適合」骨密度と比較してもよい(例えば、骨粗鬆症の予防および管理に関する世界保健機構科学グループ(World Health Organization Scientific Group on the Prevention and Management of Osteoporosis),“Prevention and management of osteoporosis:report of a WHO scientific group WHO Technical Report Series;921,Geneva,Switzerland(2000)を参照のこと)。患者のBMDと若年成人健常者のBMDとの差異は、通常、様々な「標準偏差」の観点から言及され、それは典型的に骨密度の約10%〜約12%減少に等しい。世界保健機構は、BMD T−スコアに基づく4つの診断カテゴリーを提唱した。若年成人の参照平均の1標準偏差以内のBMD値(T−スコア≧−1)は「正常」である。低い骨量(骨減少症)は、1標準偏差を超えて若年成人平均を下回るが2標準偏差未満のBMD値(T−スコア<−1および>−2.5)によって示される。2.5標準偏差を超えて標準を下回るT−スコアは骨粗鬆症の診断を裏付ける。患者が1以上の脆弱性骨折にさらに罹患しているならば、その患者は重症骨粗鬆症を有すると見なされる。
【0240】
治療剤は、患者のT−スコアにかかわらず、骨密度を改善するために、患者に投与してよい。治療剤は、患者のBMDを少なくとも約1%(約2%、約3%、約4%、約5%、または約6%)増加させるために有効な用量でかつ期間で投与してよい。いくつかの実施形態では、BMDは、少なくとも約8%(例えば少なくとも約10%、約12%、約15%、または約18%)増加する。他の実施形態では、治療剤によって、臀部、脊椎、手関節、手指、脛骨、および/または踵でのBMDが、少なくとも約20%(例えば少なくとも約22%、約25%、または約28%)増加する。また他の実施形態では、BMDは、少なくとも約30%(例えば少なくとも約32%、約35%、約38%、または約40%)増加する。換言すれば、BMDは、若年成人健常者の正常BMDを下回る約1〜約2.5標準偏差の範囲(好ましくは約0〜約1標準偏差の範囲)まで増加させ得る。
【0241】
骨リモデリングまたはモデリングの変化は、身体全体の塩濃度の変動を引き起こし得る。骨は血流中のカルシウムレベルの主要な調節器の1つである。破骨細胞によって媒介される骨吸収は、貯蔵されたカルシウムを体循環に放出し、一方、骨芽細胞によって媒介される骨形成は、循環からカルシウムを取り出して骨組織に取り込む。正常な骨モデリング/リモデリングでは、これらのプロセスが循環して健康かつ強い骨を維持し、約8.5mg/dL〜約10.5mg/dLの遊離カルシウムレベルを維持する(例えば約2.2mmol/L〜約2.6mmol/L)。骨障害、他の疾病、およびある種の治療でさえ、全身カルシウムレベルを崩壊させ、恐ろしい結果を有し得る。高カルシウム血症は、血液中の高レベルの(例えば12mg/dLまたは3mmol/Lを超える)カルシウムと関連する。異常に高いカルシウムレベルは、例えば、疲労、錯乱、便秘、食欲低下、頻尿、心臓障害、および骨痛を引き起こす。低カルシウム血症は、血液中の異常に低レベル(例えば約9mg/dLまたは2.2mmol/L未満)なカルシウムによって示される電解質平衡障害である。7.5mg/dL未満(1.87mmol/L未満)のカルシウムレベルは、重症低カルシウム血症と考えられ、臨床症状を伴うことがある。
【0242】
治療方法および使用方法
本発明の方法は、骨関連障害、例えば、異常な骨芽細胞または破骨細胞活性と関連する骨関連障害の治療または予防に有用である。実際、本発明の治療剤は、軟骨形成不全、鎖骨頭蓋異骨症、内軟骨腫症、繊維性骨異形成症、ゴーシェ病、低リン血症、X連鎖低リン血症性くる病、マルファン症候群、多発性遺伝性外骨腫(multiple hereditary exotoses)、神経線維腫症、骨形成不全症、大理石骨病、骨斑紋症、硬化性病変、偽関節、化膿性骨髄炎、歯周病、抗てんかん薬誘発性骨量減少、原発性および続発性副甲状腺機能亢進症、家族性副甲状腺機能亢進症候群、無重力誘発性骨量減少、男性の骨粗鬆症、閉経後骨量減少、脊椎固定術、骨関節炎、腎性骨ジストロフィー、骨の浸潤性障害、口腔骨量減少、顎の骨壊死、若年性パジェット病、メロレオストーシス、代謝性骨疾患、肥満細胞症、鎌状細胞貧血/疾患、臓器移植関連骨量減少、腎臓移植関連骨量減少、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、てんかん、若年性関節炎症、地中海貧血症、ムコ多糖症、ファブリー病、ターナー症候群、ダウン症候群、クラインフェルター症候群、ハンセン病、ペルテス病(Perthe’s Disease)、青年期特発性脊柱側弯症、乳児性発症多系統炎症性疾患(infantile onset multi−system inflammatory disease)、ウィンチェスター症候群、メンケス病、ウィルソン病、虚血性骨疾患(例えばレッグ・カルベ・ペルテス病および局所遊走性骨粗鬆症)、貧血状態、ステロイドに起因する症状、糖質コルチコイド誘発性骨量減少、ヘパリン誘発性骨量減少、骨髄障害、壊血病、栄養不良、カルシウム欠乏症、骨粗鬆症、骨減少症、アルコール依存症、慢性肝疾患、閉経後状態、慢性炎症性症状、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、炎症性大腸炎、クローン病、希発月経、無月経、妊娠、真性糖尿病、甲状腺機能亢進症、甲状腺障害、副甲状腺障害、クッシング病、末端肥大症、性腺機能低下症、運動不足または廃用、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、局所骨粗鬆症、骨軟化症、関節置換に関連する骨量減少、HIV関連骨量減少、成長ホルモンの損失に関連する骨量減少、嚢胞性線維症に関連する骨量減少、化学療法関連骨量減少、腫瘍誘発性骨量減少、癌関連骨量減少、ホルモン切除の骨量減少(hormone ablative bone loss)、多発性骨髄腫、薬物誘発性骨量減少、神経性無食欲症、疾患関連顔面骨量減少、疾患関連頭蓋(cranial)骨量減少、顎の疾患関連骨量減少、頭蓋(skull)の疾患関連骨量減少、加齢に伴う骨量減少、加齢に伴う顔面骨量減少、加齢に伴う頭蓋(cranial)骨量減少、加齢に伴う顎骨量減少、加齢に伴う頭蓋(skull)骨量減少、および宇宙旅行に関連する骨量減少からなる群から選択される骨関連障害に罹患しているヒトに投与することができる。
【0243】
本発明の方法は、有益な生物学的応答を達成するために、骨関連障害の患者を治癒させなくてもよく、または骨関連障害の発症を完全に防がなくてもよい。本方法を予防的に使用してよく、それは骨関連障害またはその症状を完全にまたは部分的に防ぐことを意味する。また、本方法を治療的に使用して、骨関連障害またはその症状を完全にまたは部分的に軽減するか、または、骨関連障害またはその症状のさらなる進行を完全にまたは部分的に防ぎ得る。実際、本発明の材料および方法は、骨塩密度を増加させかつ増加したBMDを一定期間にわたって維持するために特に有用である。この関連で、本発明は、骨関連障害の治療方法であって、(a)全身(例えば、頭部、体幹、腕、および脚)に関して、または臀部(例えば臀部全体および/または大腿骨頸部)、脊椎(例えば腰椎)、手関節、手指、脛骨、および/または踵で測定されるBMDを、約1%、約2%、約3%、約6%、約8%、約10%、約12%、約15%、約18%、約20%、約25%、または30%またはそれ以上、増加させるために有効な、1つ以上の量のスクレロスチン結合剤を投与することを含む方法を提供する。スクレロスチン結合剤を含む薬学的組成物の1回以上の投与は、例えば、約1か月〜約18か月(例えば、約2か月、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約7か月、約8か月、約9か月、約10か月、または約11か月)の治療期間にわたって実施してよい。本方法はさらに、(b)それに続く、骨塩密度を維持するために有効な1つ以上の量のスクレロスチン結合剤を投与することを含む。「骨塩密度を維持する」とは、ステップ(a)で得られる増加したBMDがステップ(b)の過程にわたって(例えば、約6か月、約9か月 約1年、約18か月、約2年、または患者の一生の過程にわたって)、約1%〜約5%を超えて低下しないことを意味する。患者は骨密度の増加および骨密度の維持のための交互の治療段階を必要とし得ることが理解されよう。
【0244】
本明細書に記載されるように、単独で、または別の同化剤、例えば、中和抗体等のスクレロスチン阻害剤と組み合わせたDKK1阻害剤の治療上の使用は、根底にある骨量減少状態によって悪化していても、悪化していなくても骨修復を必要とするいかなる状態に有益である。必ずしも骨量減少と関連するとは限らない骨修復の特定の例には、遅延治癒または偽関節の治癒等の骨折修復が含まれる。したがって、当業者は、本明細書に記載されるある兆候が、例えば、骨粗鬆症と関連する骨量減少、または本明細書に記載される任意の他の骨量減少状態によって悪化したり、悪化しない場合があることを理解する。したがって、さらなる実施形態では、本発明の組成物は、整形外科的処置、歯周病、口腔骨量減少、歯科的処置、歯科インプラント、インプラント外科、関節置換術、骨移植術、骨美容整形、ならびに骨折治癒、脊椎固定術、インプラントの固定(例えば、臀部または膝等の関節置換術)、癒着不能の治癒、遅延した癒合の治癒、および顔の形成等の骨修復の結果を改善するのにも有用である。1つ以上の組成物は、処置、置換、移植、外科手術、もしくは修復の前、その間、および/またはその後に投与され得る。
【0245】
別の態様では、種々の疾患の治療における抗体または免疫学的に機能的な断片を含む前述の治療様式の使用が開示されている。例えば、ある方法は、関節炎、幹細胞の再生に応答する疾患、炎症性疾患、神経系疾患、眼疾患、腎疾患、肺疾患、および皮膚疾患を治療するために、本明細書に記載される有効量の抗体または免疫学的に活性な断片を、それを必要とする患者に投与することを含む。いくつかの治療方法は、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、または骨関節炎を治療することを含む。ある種の抗体および断片は、(a)幹細胞の再生に応答し、糖尿病、慢性心不全、および筋肉の疾患からなる群から選択される疾患、(b)クローン病、大腸炎、および炎症性腸疾患からなる群から選択される炎症性疾患、(c)アルツハイマー病、パーキンソン病、およびハンチントン病からなる群から選択される神経系疾患、(d)黄斑変性症および網膜症からなる群から選択される眼疾患、(e)末期腎不全、慢性腎不全、糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎、およびIgAネフロパシーからなる群から選択される腎疾患、(f)慢性閉塞性肺疾患、特発性肺線維症、および嚢胞性線維症からなる群から選択される肺疾患、または(g)腸上皮への化学療法で誘発される損傷から生じる皮膚疾患を治療するために使用される。
【0246】
スクレロスチン阻害剤、例えばスクレロスチン結合剤は、全身カルシウムレベルの最小限の変動しか伴わずに(例えば、カルシウムレベルはベースライン血清カルシウムレベルから10%以下しか変動しない)、骨形成を促進し、かつ骨吸収を阻害する(または遅らせる)ことが示されている。したがって、本明細書に示されるDKK1阻害剤を用いて治療する可能性のあるパートナーとしてそれ自体示し、治療応答性を増加させる。
【0247】
いくつかの病気および薬物療法は、系カルシウムレベルを変化させ、それによって消極的に骨密度に影響を及ぼし、それらの組み合わせを含む本発明のそのような治療法は、これらの状態における骨量減少を治療するために有用である。高カルシウム血症および低カルシウム血症は、例えば、慢性腎疾患、腎疾患、腎不全、原発性または二次性副甲状腺機能亢進症、偽性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、マグネシウム枯渇、アルコール依存症、ビスホスホネート治療、重症高マグネシウム血症、ビタミンD欠乏、高リン酸血症、急性膵炎、飢餓骨症候群、キレート化、骨芽細胞転移、敗血症、外科手術、化学療法、新生物症候群、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(familial hypocalciuric hypercalcemia)、サルコイドーシス、結核、ベリリウム症、ヒストプラスマ症、カンジダ症、コクシジオイデス症、組織球症X、ホジキンもしくは非ホジキンリンパ腫、クローン病、ウェゲナー肉芽腫症、白血病、肺炎、シリコーン誘発性肉芽腫、運動不足、または薬物療法、例えばチアジド系利尿薬、リチウム、エストロゲン、フッ化物、グルコース、およびインスリン等の投与に起因し得る。さらに、血清カルシウムの変動は多数の従来の骨関連治療、例えばビスホスホネートおよび副甲状腺ホルモン治療の副作用である。カルシウム不均衡の、潜在的に生命を危うくする影響のため、低カルシウム血症または高カルシウム血症に感受性の患者は、ある種の治療選択肢を差し控える(forego)必要がある。
【0248】
したがって、本発明の材料および方法、特に組み合わせは、不安定なカルシウムレベルに感受性であるかまたはその影響を受けやすい患者の治療に有益である。本発明のこの態様の関連でヒトに投与されるスクレロスチン結合剤の量は、低カルシウム血症または高カルシウム血症(例えば臨床的に有意な低カルシウム血症または高カルシウム血症)を生じさせない量である。さらに、本発明は、低カルシウム血症または高カルシウム血症に罹患しているかまたはそのリスクに曝されているヒト、またはビスホスホネート、副甲状腺ホルモン、もしくは副甲状腺ホルモン類似体での治療が禁忌であるヒトの骨関連障害を治療する方法を提供する。本方法は、骨形成のマーカーのレベル、例えばBSAP、P1NP、および/またはOstCaの血清レベルを増加させ、かつ/または骨吸収のマーカー、例えばCTXのレベルを減少させるために有効な量のスクレロスチン結合剤をヒトに投与することを含む。
【0249】
治療有効量の、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、および96から選択される可変領域を含む本明細書に記載される抗体またはその免疫学的に機能的な断片(例えば、配列番号97〜227および228からなる群から選択される少なくとも1つの軽鎖CDRを含む抗体または免疫学的に機能的な断片)を、それを必要とする患者に投与することを含む、骨量の減少を治療または予防するための方法が、本明細書にさらに提供される。本実施形態の一態様では、患者は骨に転移する癌を患っている患者であり、別の態様では、患者は多発性骨髄腫を患っている患者である。当業者は、これらの組成物が、単独でまたは1つ以上の他の治療剤と組み合わせて、医薬品の製剤に有用であり得ることを認識するであろう。本発明の抗体は、骨関連障害の治療に好適である。骨折の治療で用いる配列番号42および44で示される抗体。間隙の癒合不全の治療で用いる配列番号42および44で示される抗体。骨折の治療で用いる阻害性スクレロスチン抗体と組み合わせる、配列番号42および44で示される抗体。間隙の癒合不全の治療で用いる阻害性スクレロスチン抗体と組み合わせる、配列番号42および44で示される抗体。「骨折」という用語は、治療を必要とする患者における1つ以上の骨折を含むことを意味することを理解される。
【0250】
本発明の組成物によって治療され得る特定の状態には、骨の成長または発達が異常である異形成が含まれる。そのような状態の代表的な例には、軟骨形成不全症、鎖骨頭蓋骨形成不全症、内軟骨腫症、線維性骨異形成症、ゴーシェ病、マルファン症候群、多発性遺伝性外骨症、神経線維腫症、骨形成不全症、大理石骨病、骨斑紋症、硬化性病変、偽関節、および化膿性骨髄炎が含まれる。
【0251】
治療または予防され得る他の状態には、骨減少症、骨粗鬆症、および骨量減少の多種多様な原因が含まれる。そのような状態の代表的な例には、歯周病、抗てんかん薬誘発性骨量減少、原発性および二次性副甲状腺機能亢進症、家族性副甲状腺機能亢進症候群、無重力誘発性骨量減少、男性の骨粗鬆症、閉経後骨量減少、骨関節炎、腎性骨異栄養症、骨の浸潤性障害、口腔骨量減少、顎の骨壊死、若年性パジェット病、メロレオストーシス、代謝性骨疾患、肥満細胞症、鎌状細胞疾患、虚血性骨疾患(レッグ・カルベ・ペルテス病、局所性移動性骨粗鬆症等)、貧血状態、ステロイドに起因する症状、糖質コルチコイド誘発性骨量減少、ヘパリン誘発性骨量減少、骨髄障害、壊血病、栄養不良、カルシウム欠乏症、突発性骨粗鬆症または骨粗鬆症、先天性骨減少症または骨減少症、アルコール依存症、慢性肝疾患、閉経後状態、慢性炎症性症状、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、炎症性大腸炎、クローン病、希発月経、無月経、妊娠、真性糖尿病、甲状腺機能亢進症、甲状腺障害、副甲状腺障害、クッシング病、先端肥大症、性腺機能低下症、運動不足または廃用、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、局所骨粗鬆症、骨軟化症、関節置換に関連する骨量減少、HIV関連骨量減少、成長ホルモンの損失に関連する骨量減少、嚢胞性線維症に関連する骨量減少、線維性異形成、化学療法関連骨量減少、腫瘍誘発性骨量減少、癌関連骨量減少、ホルモン切除の骨量減少、多発性骨髄腫、薬物誘発性骨量減少、神経性無食欲症、疾患関連顔面骨量減少、疾患関連頭蓋骨量減少、顎の疾患関連骨量減少、頭蓋(skull)の疾患関連骨量減少、および宇宙旅行に関連する骨量減少が含まれる。さらなる状態は、加齢に伴う顔面骨量減少、加齢に伴う頭蓋骨量減少、加齢に伴う顎骨量減少、および加齢に伴う頭骨量減少を含む、加齢に伴う骨量減少に関する。
【0252】
ある国家管轄権に許可されるように、本明細書に開示される参考文献は、それぞれが、本発明の権限を付与し、説明することを含むあらゆる目的のために個別に組み込まれたように、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。以下の実施例は、本明細書に提供される抗体、断片、および組成物のある態様を単に説明するために提供されており、したがって請求された本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【実施例】
【0253】
実施例1
ヒトDKK1(huDKK1)免疫原の調製
ヒトDKK1のクローニングは、以下の修飾を用い、米国特許第6,344,541号に記載される通りに行った。ヒトDKK1の2つの異なるエピトープ標識された変形が、免疫原として使用され、1つはFLAGエピトープを含み、他方は、fc−融合分子であった。両方のエピトープタグは、当業者には明らかである標準の分子生物学技術を用いてヒトDKK1のカルボキシ末端に付加された。
【0254】
ヒトDKK1のエピトープ標識した変形を、CHO細胞中の発現のための発現ベクターにクローン化した。FLAGまたはFcエピトープのいずれかを含有するヒトDKK1変異体を、抗原として使用するために馴化培地から精製し、抗huDKK1抗体を生成した。エピトープ標識したhuDKK1は、濃縮馴化培地(CM)から精製した。また、当業者に公知の他のタンパク質産物および精製手順も使用することができる。
【0255】
実施例2
免疫化および力価決定
組換えFLAG標識したヒトDKK1(FLAG−DKK1)および組換えFc標識したヒトDKK1(DKK1−fc)を、抗原として使用した。DKK1に対するモノクローナル抗体は、XenoMouse(登録商標)マウス(Abgenix,Inc.Fremont,CA)を連続的に免疫化することによって開発した(例えば米国特許第7,435,871号およびその中の説明を参照)。XenoMouse動物は、全ての注射について足蹠経路によって免疫を行った。免疫化XenoMouseマウスからの血清中の抗DKK抗体力価はELISAにより決定した。
【0256】
実施例3
リンパ球回収、B細胞単離、融合、およびハイブリドーマの生成
リンパ節を採取し、それぞれのコホートからプールした。総流出物をCD90陰性分画(これらの細胞の大部分は、B細胞であることが期待された)として収集した。上記の洗浄された濃縮B細胞と、ATCC、カタログ番号CRL1580から購入した非分泌性骨髄腫P3X63Ag8.653細胞(Kearney et al,J.Immunol.123,1979,1548−1550)とを1:1に比率で混合することによって融合を行った。電気細胞融合(ECF)は、融合発生器、モデルECM2001,Genetronic,Inc.,San Diego,CAを用いて実施した。使用された融合チャンバの大きさは2.0mLであった。
【0257】
ECF後、細胞懸濁液を滅菌条件下で融合チャンバから慎重に取り出して、同じ体積のハイブリドーマ培養培地(DMEM(JRH Biosciences))を含む滅菌チューブに移した。細胞をインキュベートし、次いで、遠心分離した。細胞を小体積のハイブリドーマ選択培地(0.5×HA(Sigma、カタログ番号A9666)を補充したハイブリドーマ培養培地)中で再懸濁し、その体積をより多くのハイブリドーマ選択培地で適切に調整した。細胞を穏やかに混合し、96ウェルプレートに分注し、成長させた。
【0258】
実施例4
十分に培養した後、ハイブリドーマの上清をDKK1に特異的なモノクローナル抗体についてスクリーニングした。一次スクリーニングにおいて、ELISAプレートを、50μL/ウェルのFlag標識したrhDKK1(2μg/mL)で被覆し、次いで、4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、次いで、200μL/ウェルのブロッキング緩衝液を添加し、プレートを室温でインキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。ハイブリドーマの上清および陽性と陰性の対照のアリコート(50μL/ウェル)を添加し、プレートを室温で2時間インキュベートした。
【0259】
インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で洗浄した。50μL/ウェルの検出抗体を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、次いで、50μL/ウェルのTMBを添加し、(陰性対照ウェルがやっと色を示し始めるまで)プレートを約10分間発達させた。次いで、50μL/ウェルの停止溶液を添加し、プレートを650nmの波長でELISAプレートリーダー上で読んだ。カットオフ値ODは、陰性対照の2倍を超えるODで設定された。
【0260】
一次スクリーニングに基づいて陽性ハイブリドーマ細胞増殖ウェルからの古い培養懸濁液を完全に除去し、DKK1陽性ハイブリドーマ細胞を新鮮なハイブリドーマ培養培地で懸濁し、24ウェルプレートに移した。2日後、一次スクリーニングの陽性ハイブリドーマを(上記のように)Flag標識したrhDKK1を被覆ELISAおよびFlag標識した無関連抗原を被覆ELISAで確認した二次確認スクリーニングを行った。IgGおよびIgカッパまたはIgGおよびIgラムダまたはIgGおよびIgカッパに加えてラムダの両方に関して完全にヒト組成であることを示すために、抗原を被覆ELISAのための三組の検出系(一組がhIgG検出のため、一組がヒトIgカッパ軽鎖検出のため、もう一組がヒトラムダ軽鎖検出のため)。hIgG検出のみが、無関連抗原を被覆ELISAのために使用された。三組の抗原を被覆ELISAの手順は、3つの異なる検出抗体を別々に使用した以外は、上記載と同じである。最終選択は、抗原における陽性シグナルおよび無関連抗原における陰性シグナルに基づいた。
【0261】
生成したヒトIgG/カッパまたはIgG/ラムダDKK1特異的モノクローナル抗体を表2に詳述する。
【表2】
【0262】
機能的関心の対象であると見なされる抗体を分泌するハイブリドーマは、限界希釈法によって単細胞クローン化された。DKK1抗体に対する単細胞クローン化したハイブリドーマのスクリーニングが上記のようにELISAによって実施された。ハイブリドーマクローンを、ハイブリドーマ培養培地中で培養し、分泌したモノクローナル抗体を含有する消耗した培養上清を生成するために標準的な組織培養技術を用いて拡大した。また、ハイブリドーマクローンの冷凍ストックも生成した。
【0263】
実施例5
生物活性によるヒトDKK1への中和抗体を生成するハイブリドーマの選択
実施例2に記載されるように得られたハイブリドーマを、ルシフェラーゼ発現が標準Wnt経路の制御下にあるTCF/lefルシフェラーゼレポーター構築体を利用して試験した。この構築体により形質移入された細胞が、生物学的に活性なWntに曝露された場合、ルシフェラーゼ活性が誘導される。Wnt誘導ルシフェラーゼ活性は、この構築体を含有する細胞に組換えDKK1タンパク質を添加することによって抑制することができる。本実験に関して、Wnt3aおよびDKK1の両方を最初に、Wnt依存ルシフェラーゼ発現の約80%を抑制する最適化量で細胞に添加した。中和活性のある抗DKK1抗体のこれらの同じ細胞へのさらなる添加は、Wnt活性を再生させ、したがって、ルシフェラーゼ発現を増加させることが予想される。Wnt/ルシフェラーゼ構築体でトランスフェクトされた細胞中のルシフェラーゼ発現を再生することが可能であるかどうかを判定するために、ハイブリドーマの上清を試験した。ルシフェラーゼ活性は、下記のように定量化した。
【0264】
0日目に、新鮮にトリプシン化した293T細胞を、フィブロネクチンを被覆96ウェルプレート上に平板培養した。次いで、細胞を、ホタルルシフェラーゼをコードするDNAおよびウミシイタケルシフェラーゼをコードするDNAで同時トランスフェクトした。1日目のそれぞれのウェルで、30μLのDMEM中のTCF/lefルシフェラーゼDNAおよび1ngのウミシイタケルシフェラーゼDNAを、Polyfect Transfection Reagent(商標)(Qiagen 301107)と混合し、PolyFect−DNA複合体を形成させるために室温で10分間インキュベートした。このインキュベーション後、100μLの増殖培地をこの複合体に添加した。次いで、培養培地をそれぞれウェルから取り出し、増殖培地中の複合体をウェルに添加した。ウェル中の増殖培地を3時間後に取り出し、Wnt3aを含有する馴化培地、組換えヒトDKK1および抗DKK1ハイブリドーマの馴化培地と置き換えた。
【0265】
3日後、細胞をPBSで1回洗浄し、それぞれのウェルに受動溶解用緩衝液を添加した。プレートを室温で20分間振とうして、細胞溶解を生じさせた。1アッセイ当たり10μLの溶解液を用いて、製造元のプロトコルに従って96ウェル白色プレート中でアッセイを実施した。ホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼからの発光シグナルを両方とも記録し、これらのシグナルの比率を用いて、EC50を決定し、用量応答曲線をプロットした。最初に、ホタルルシフェラーゼの基質を細胞溶解液の入ったウェルに注入し、発光シグナルを記録し、次いで、ウミシイタケルシフェラーゼの基質を同じウェルに注入し、得られた第2の発光シグナルを記録した。
【0266】
中和活性を有する抗DKK1抗体を単離するためにさらなるスクリーニングとして、マウス骨髄由来のストロマ細胞株ST2を使用した。Wnt3aシグナル伝達に応答して、ST2細胞は、骨芽細胞マーカータンパク質アルカリホスファターゼ(ALP)を発現する骨芽細胞に分化する。これらの細胞中のWnt3aによるALPの誘導は、Wnt阻害剤DKK1を培養培地に添加することによって阻止することができる。ALP発現は、中和抗DKK1抗体等のDKK1活性を中和することが可能な薬剤に細胞を曝露することによってこれらの条件下で再生することができる。
【0267】
簡潔に言えば、のハイブリドーマをELISAアッセイにおいてスクリーニングし、ELISAアッセイにおける344の結合DKK1、および中和化アッセイ(TCR/lefレポーターアッセイまたはST2細胞アッセイ)のうちの1つまたは両方において25が陽性であった。3つの運動のそれぞれから最良の活性を示すハイブリドーマを表3に示す。これらの抗体の細胞活動から見ることができるように、第2(5.X.x)および第3(6.X.x)の活動から由来するもの、即ち、KLマウスにおいて生じるものは、一般に、Xenoマウスを用いた第1の(2.X.x)運動において生じるものよりも低いEC50から明白であるように、より良好な細胞ベースの活動を示した。
【表3】
【0268】
実施例6
抗体のクローニングおよび配列分析
総RNAは、抗DKK1ハイブリドーマ細胞株から調製された。DNA配列は、Abgenixによって提供されたか、またはクローン化したRACE(cDNA末端の迅速増幅)PCR(ポリメラーゼ鎖反応)産物の配列決定によって得られた。
【0269】
実施例7
CHO細胞中のヒト抗huDKK1抗体の発現および精製
抗DKK1細胞株を、標準的な電気穿孔法の手順を用いて、発現プラスミドpDC323−抗DKK1カッパ、ならびに2.40.3、6.35.5、6.116.6のHC−IgG2およびLC−カッパのpDC324[抗DKK1−IgG2]と共にCHO宿主細胞をトランスフェクトすることによって創出した。発現プラスミドと共に宿主細胞株をトランスフェクトした後、プラスミドの選択および細胞の回収を可能するために、細胞を、4% 透析したウシ胎仔血清(dsまたはdfFBS)を含有する−GHT選択培地中で2〜3週間生育させた。次いで、血清を培地から除去し、細胞をGHT選択培地中で、>85%生存率に達するまで生育させた。次いで、このトランスフェクトされた細胞プールを、高度発現細胞に対して選択するために、[150−300]nM MTXを含有する培地中で培養し、続いて、500−1000nM MTXを含有する培地中で培養した。
【0270】
細胞株を発現する抗huDKK1−1抗体を、無菌細胞培養技術を用いて拡大した。拡大時、細胞を生物反応器に接種し、必要に応じて培養液を供給した。回収時、細胞を遠心分離し、馴化培地を濾過した。ヒト抗huDKK1抗体を、プロテインAセファロース上の馴化培地から精製した。精製したDKK1抗体は、最適な緩衝液に緩衝液交換した。
【0271】
実施例8
ELISAベースの交差遮断アッセイ
本実施例において使用される液体体積は、96ウェルプレート ELISA(例えば、50〜200uL/ウェル)において一般的に使用されるものであった。本実施例では、Ab−XおよびAb−Yは、約145Kdの分子量を有し、1抗体分子当たり2つのDKK1結合部位を有することが想定された。抗DKK1抗体(Ab−X)を、96ウェルELISAプレート上に少なくとも1時間被覆した(例えば、50uLの1ug/mL)。このコーティングステップ後、抗体溶液を除去し、プレートを洗浄溶液で洗浄し、次いで、当該技術分野で公知の適切なブロッキング溶液および手順を用いて遮断した。ブロッキング溶液をELISAプレートから除去し、被覆抗体を交差遮断する能力について試験した第2の抗DKK1抗体(Ab−Y)を、ELISAプレートの適切なウェルにブロッキング溶液中で過剰に添加した(例えば、50uLの10ug/mL)。
【0272】
この後、ブロッキング溶液中の制限された量(例えば、50uLの10ug/mL)のhuDKK1を、適切なウェルに添加し、プレートを攪拌しながら室温で少なくとも1時間インキュベートし、次いで、プレートを洗浄した。ブロッキング溶液中の適切な量のDKK1検出試薬をELISAプレートに添加し、室温で少なくとも1時間インキュベートした。
【0273】
次いで、プレートを洗浄溶液で洗浄し、適切な試薬で発達させた。このアッセイのバックグラウンドシグナルは、被覆抗体(この場合はAb−X)、第2の溶液相抗体(この場合はAb−Y)、DKK1緩衝液のみ(即ち、DKK1なし)、およびDKK1検出試薬を有するウェルにおいて得られるシグナルとして定義された。このアッセイの陽性対照シグナルは、被覆抗体(この場合はAb−X)、第2の溶液相抗体緩衝液のみ(即ち、第2の溶液相抗体なし)、DKK1、およびDKK1検出試薬を有するウェルにおいて得られるシグナルとして定義された。ELISAアッセイは、バックグラウンドシグナルの少なくとも6倍である陽性対照シグナルを有するためにそのような様式で実行する必要がある。
【0274】
Ab−XおよびAb−Yは、形式1または形式2のいずれかで、溶液相抗DKK1抗体が、溶液相抗DKK1抗体(即ち、陽性対照ウェル)の不在下で得られたDKK1検出シグナルと比較して、DKK1検出シグナル(即ち、被覆抗体によって結合されるDKK1の量)の、60%〜100%、具体的には、70%〜100%、より具体的には、80%〜100%の減少を生じることができる場合、交差遮断すると定義される。「交差遮断する(cross block)」という用語は、試験分子の結合の完全な阻害を包含することを意図するのではなく、むしろ、本明細書に記載される、100%未満の一連の結合の減少を含み得ることが当業者によって理解されよう。一例では、単離された抗体またはその断片は、配列番号42および44に示される抗体の結合を交差遮断する、および/または配列番号42および44に示される抗体によるヒトDKK1への結合から交差遮断される。配列番号42および44に示される抗体の結合によってヒトDKK1への結合が交差遮断される抗体には、ヒトDKK1への結合の60%減少、ヒトDKK1への結合の70%減少、ヒトDKK1への結合の80%減少、ヒトDKK1への結合の90%減少、またはヒトDKK1への結合の95%減少を有するものが含まれる。配列番号42および44に示される抗体の結合によってヒトDKK1への結合を交差遮断する抗体には、ヒトDKK1への結合の60%でその結合を減少、ヒトDKK1への結合の70%減少、ヒトDKK1への結合の80%減少、ヒトDKK1への結合の90%減少、またはヒトDKK1への結合の95%減少させるものが含まれる。互いに交差遮断することができた抗体は、本明細書では同じビンにあると称される。
【0275】
N末端His標識したDKK1(R & D Systems,Minneapolis,MN,USA;2005 カタログ番号1406−ST−025)等のDKK1の標識した変形がELISAにおいて使用されるという場合には、適切なタイプのDKK1検出試薬がHRP標識した抗His抗体を含む。N末端His標識したDKK1の使用に加えて、C末端His標識したDKK1を使用してもよい。さらに、当該技術分野で公知の様々な他の標識および標識結合タンパク質の組み合わせを、このELISAベースの交差遮断アッセイに使用してもよい(例えば、抗HA抗体によるHA標識;抗FLAG抗体によるFLAG標識;ストレプトアビジンによるビオチン標識)。
【0276】
本明細書に記載されるヒト抗huDKK1中和抗体は、抗体が互いに交差遮断することができないことにより明らかであるように、2つの異なるエピトープを認識する。第1のエピトープは、前述される11H10と称される(米国特許第7,709,611号)。第2のエピトープは、以下に記載され、5.25.1(配列番号42および44)と称される。
【0277】
実施例9
5.25.1抗体に結合するヒトDKK1エピトープの特徴付け
ヒトDKK1は、N末端近傍およびC末端の端部に位置する2つのジスルフィドリッチドメインを含有し、本明細書では、N末端およびC末端ジスルフィドドメインと称される。N末端ジスルフィドドメイン(以後、「ジスルフィドドメイン1」または「D1」)は、55のアミノ酸残基(配列番号2のアミノ酸85〜139)を含有し、10個のシステインを有して、5つの分子内ジスルフィド結合を形成する。C末端ジスルフィドドメイン(以後、「ジスルフィドドメイン2」または「D2」)は、75のアミノ酸(配列番号2のアミノ酸189〜263)を含有し、10個のシステインを含有して、5つの分子内ジスルフィド結合も形成する。これらの2つのジスルフィドドメインは、約50のアミノ酸の伸長によって分離される。DKK1のジスルフィドドメイン2(D2)は、カノニカル補リパーゼ折り畳み体と同様の分子構造を有することが提案されており、その結晶構造は、ブタ補リパーゼを用いて決定されている(Aravind,A.and Koonin,E.V.,Current Biology 8:R477−479(1998))。DKK分子のN末端D1ドメイン中の10個のシステイン残基間で分子内ジスルフィド結合は、最近、決定されている。
【0278】
還元剤を用いた処置が5.25.1に結合するDKK1の能力を無効にし、したがって、この抗体によって標的とされたエピトープが高次構造的(または不連続)であり、D1およびD2ドメイン中の無傷ジスルフィド結合の維持を必要とすることが示された。この高次構造的エピトープを特徴付けるために、臭化シアン(CNBr)および数種の異なるプロテアーゼによるヒトDKK1の断片化を含んだ戦略が適用され、次いで、断片を分析し、抗体に結合する能力について試験した。また、抗体結合によるタンパク質分解から保護されるこれらのアミノ酸残基または配列領域を検出するために、5.25.1の存在下で消化も実施された。得られたデータは、エピトープの位置が決定されることを可能にした。要するに、抗体5.25.1の不在または存在下で、DKK1タンパク質分解消化を行い、次いで、HPLCペプチドマッピングに供した。抗体に曝露させた試料中のHPLCピークの高さの部分的もしくは完全な減少および/または新しく生成したピークの検出が観察され得る。
【0279】
それぞれのペプチド消化後、反応産物をHPLCによって分離し、個々のピークを採取し、ペプチドを同定し、N末端配列決定によってマップ化した。ペプチドが5.25.1に結合するかどうかを判定するために、結合のためのバイオセンサーとしてHuDKK1により共有結合したセンサーグラム表面を用いてBiaCoreワークステーションによるリアルタイムの生体特異的相互作用アッセイに供した。HPLCペプチドマッピングは、標準条件下で実施された。
【0280】
CNBr消化
hDKK1のCNBr開裂により、2つの大型断片が生成した。これらは、CNBr1およびCNBr2であり、これらはそれぞれ、D2およびD1ジスルフィドドメインを表した。CNBr1は、5つのジスルフィド結合により一緒に保持された2つのペプチド(配列番号2のアミノ酸179〜206および配列番号2のアミノ酸207〜266[または274(さらなるC末端flagペプチドを含む場合)])からなった。同様に、CNBr2は、2つのペプチド(配列番号2のアミノ酸32〜122および配列番号2のアミノ酸127〜178)からなり、5つのジスルフィド結合により一緒に保持された(表4)。BiaCore分析の結果は、5.25.1がCNBr2には有意に結合することができたが、CNBr1には全く結合しないことが示された。したがって、5.25.1は、HuDKK1のD1ジスルフィドドメインに位置したエピトープ領域に結合することが結論付けられた。
【0281】
トリプシン消化
次に、ヒトDKK1を、ARGおよびLYS残基の後で開裂するトリプシンで消化した。0.5〜1.0mg/mLで約200μgのDKK1を、8μgのこれらのプロテアーゼの1つまたは他のものと共に37℃で20時間PBS(pH7.2)中でインキュベートし、DKK1の完全消化を達成した。
【0282】
トリプシン消化物のHPLCクロマトグラフィーにより、複数のピークが生じ、これらを回収し、乾燥させ、0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液pH7.2に再構成した。表4は、CNBr開裂およびタンパク質分解に由来するN末端ジスルフィドドメインD1を含有するDKK1のペプチド断片を示す。
【表4】
【0283】
配列分析は、トリプシン消化後のHPLCから回収されたペプチドピークにおいて行われた。ジスルフィド結合のないペプチド配列を含有するペプチドピークはまた、LC−MS/MS分析によっても確認された。複数のジスルフィド結合したペプチドを含有する断片の分子量は、マトリックス支援レーザー脱離質量分光分析(MALDI−MS)によって確認された。2つのピーク、T2(内径1mmのカラムを用いて保持時間40.7分、または2.1mmのカラムを用いて43.5分)およびT3(内径1mmのカラムを用いて保持時間41.9分、または2.1mmのカラムを用いて44.7分)が、ジスルフィドドメイン1にマッピングされる配列を含有することが確認され、一方、T1ペプチド(1mmのC18カラムにおいて保持時間35分または2.1のC4カラムにおいて36.5分)は、ジスルフィドドメインD2にマッピングされた。BiaCore結合実験によって試験されたとき、T1、T2、およびT3のいずれも5.25.1に結合しなかった。T2およびT3は、配列番号2のアミノ酸74〜102、103〜115、121〜123、124〜134、135〜147を有するD1ドメイン中の5つのジスルフィド結合によって一緒に保持された5つの小型ペプチド(3から13アミノ酸長)からなる大型ペプチド断片である(表4)。ジスルフィドドメイン1で配列の1つの小型セグメントが、T2およびT3から欠落していた。全てのLysおよびArgを含有するこの欠落配列は、配列番号2のアミノ酸116〜120(ARG−ARG−LYS−ARGの配列)であった。
【0284】
ヒトDKK1はまた、PBS緩衝液中の1:1〜1:3のモル比で5.25.1を用いて室温で1時間インキュベートした。次いで、DKK1/抗体複合体のアリコートは、上記のような条件下で、トリプシンによって消化された。トリプシン消化のHPLCペプチドマッピングプロファイルは、T2およびT3のピークが消失し、新しいピークT4(1mmのカラムを用いて保持時間41.3分または内径2.1mmのカラムを用いて44.3分)が検出可能であったことを除いては、抗体5.25.1の不在下でDKK1消化から得られたものと完全に同一であった。T4はまた、N末端ドメインD1ペプチドであるだけでなく、配列番号2のアミノ酸74〜147を有する単一アミノ酸配列も含有する(表4)。Biacore結合アッセイでは、T4は、5.25.1に結合し、センサーチップ表面に結合したDKK1を用いた5.25.1結合のために競争させることができる。
【0285】
AspN消化
5.25.1結合エピトープをさらに描写するために、HuDKK1は、プロテアーゼAspNで消化し、得られた断片を上述のように分析した。AspN消化により生成した主要なHPLCピークのうち、抗体5.25.1に結合したピークは、AspN1、AspN2、およびAspN3であった。配列分析により、AspN1およびAspN2がジスルフィドドメインD1に由来することが示された。AspN1およびAspN2は、アミノ酸配列が同一であり、それらのそれぞれが、ジスルフィドドメインD1における5つのジスルフィド結合によって一緒に保持される2つのペプチドからなった。これらの2つのペプチドは、配列番号2のアミノ酸78〜104および105〜141からなった(表4を参照)。AspN3は、配列がドメインD1およびD2配列の両方を含有する部分的消化産物である。2つの他のピーク、AspN4およびAspN5はまた、単離され、ドメインD2においてジスルフィド結合したペプチドであることが確認され、AspN4またはAspN5は、5.25.1結合のためにはDKK1と競合しない。
【0286】
消化結果の分析
上記の結果により、5.25.1は、ジスルフィドドメインD1に位置しているヒトDKK1の非線形エピトープに結合することを示す。図1に示されるように、エピトープ領域は、以下に記載される観察により推定される。
【0287】
トリプシン開裂(図1中の102位でRおよび115位〜120位でRKRRKRおよび134位でK)は、ジスルフィドによって結合される5つのペプチドを生成する。このD1ドメインのトリプシンペプチドの分画は、5.25.1結合活性を失う。
【0288】
抗体5.25.1は、DKK1に結合し、トリプシンタンパク質分解からD1ドメインにおける全ての開裂部位(99位でRおよび115位〜120位でRKRRKRおよび134位でK)を保護することができる。異なる保持時間で回収して得られたD1のトリプシン断片は、単一のポリペプチド鎖であり、D1中の全てのArgおよびLysの部位でタンパク質分解から保護され、したがって、エピトープ領域で近傍に位置するか、またはエピトープ結合に含まれる。結合活性は、AspNまたはCNBr開裂を生じたD1断片中で維持される。結合活性を維持するために、D1ドメインにおける観察された最小の断片サイズは、Asp−Nが105位でGly105からAspの間のペプチド結合を切り取り、一緒に接続しないようにこの大型ジスルフィドループ(Cys97からCys111の間で形成された)を離すことを除いては、アミノ酸78〜141である。
【0289】
アミノ酸123〜126(ARG−HIS−ALA−METの配列)の除去のためのCNBr開裂およびGly114−Asp115ペプチド結合のAspN開裂は、5.25.1結合からのCNBr2およびAspN1(またはAspN2)断片に影響を及ぼさず、したがって、これらの領域における配列は、エピトープ中にはない。D1中の高度に負荷電した領域(アミノ酸83〜91)は、Abの不在下でGluCおよびAspN消化に対して耐性があり、この領域がタンパク質分解に利用しにくく(立体障害によるものであり得)、5.25.1にも利用できないことを示す。
【0290】
要約すると、5.25.1結合のためにHuDKK1に存在するエピトープは、N末端ジスルフィドドメインD1:配列番号2のアミノ酸98〜104、107〜121、および129〜140で不連続な配列を含む。そして、D1ドメインのジスルフィド結合は、5.25.1が結合するために正確な配座および三次元構造を保有するように、元の状態のままでなければならない。
【0291】
実施例10
DKK1に対するモノクローナル抗体の結合親和性
BiaCore2000(BIACORE,Uppsala,Sweden)を用いてヒト抗huDKK1抗体のDKK1への結合を試験するために分析が実施された。BiaCoreにより、選択した抗体のkdの測定が可能であった。より低いkdを有する抗体は、より高いkdを有するものよりも長くhDKK1と結合するためより望ましく、したがって、より大きな応答を生じさせる可能性が高い。結合のセンサーグラムを分析し、データを以下に要約する。
【表5】
【0292】
オフ速度に加えて、ka(オン速度)、KD(親和性)、細胞系およびインビボ活性等の他のパラメータはまた、治療薬の全体の選択に影響を及ぼす要因である。表5中のデータはまた、KLマウスの後の免疫化に由来するこれらの抗体が、より望ましいKdを有する抗体を産出したことも示した。huDkk4への結合はまた、特異性を決定するために、いくつかの抗体について試験され、ヒト抗huDKK1抗体が、Dkk4に対してよりもDKK1に対して少なくとも50倍の特異性の増加を有したと判断し、これは5.25.1および5.32.1がDkk4への検出可能な結合がないことを示した。
【0293】
興味深いことに、11H10および5.25.1ビンの両方で抗体を含んだ第2の活動抗体のBiaCore分析から生じたセンサーグラムが分析されたとき、ビン間で差異が存在することは明らかであった。所与の抗体濃度で11H10ビンからの抗体は、5.25.1ビンからの抗体で得たものよりも高い結合シグナルを得た。増加した最大シグナルは、11H10ビン抗体(2.40.2および5.80.2および5.80.3)から観察される。
【0294】
ヒト抗huDKK1抗体が、DKK1に対する親和性において変化し、ヒトDKK1に対するこれらのいくつかの親和性がBiaCoreアッセイの感度限界を超えたことが、BiaCoreの結果から明らかであった。したがって、DKK1に対するこれらの抗体のいくつかの親和性を、より高感度のKinExA(商標)3000を用いて平衡結合分析によってさらに評価した。これらの測定では、Reacti−Gel 6×ビーズ(Pierce,Rockford,IL)を、ヒト、カニクイザル、またはマウスDKK1で予め被覆し、BSAにより遮断した。100pM、300pM、または1000pMの抗体を、ヒト、マウス、またはサルDKK1の1pMから50nMまでの濃度範囲の種々の濃度で混合し、室温で8時間平衡化した。次いで、この混合物を、DKK1被覆ビーズ上に通過させた。ビーズ結合抗DKK1抗体量を、蛍光タグで標識されたヤギ抗ヒト−IgG抗体(Cy5;Jackson Immuno Research,West Grove,PA)を用いて定量化した。測定された蛍光シグナル量は、平衡でのそれぞれの反応混合物中の遊離抗DKK1抗体の濃度に比例した。解離平衡定数(Kd)は、KinExAソフトウェアを用いてデュアル曲線ワンサイト相同モデルを用いて競合曲線の非線形回帰式から得られた。選択した抗体に対するKinExAアッセイの結果を表6に示す。
【表6】
【0295】
実施例11
11H10ビン抗体のみが、huDKK1のLRP6およびKremin2への結合を遮断する
DKK1のWnt共受容体LRP6またはKremin2への結合を遮断するための11H10ビンおよび5.25.1ビン抗体の能力を、共免疫沈降法を用いて調べた。組換えマウスLRP6−HisおよびrhDKK1−Flagまたは組換えヒトクレメン2−hisおよびhDKK1−flagは、一晩振とうしながら、ハンクス平衡塩類溶液中の抗DKK1抗体を用いて、または用いないで予めインキュベートし、複合体形成を可能にした。
【0296】
図2Aでは、rhDKK1−flagを、LRP6−Hisおよび5μgの、11H10ビン(5.80.1、6.37.5、もしくはr11H10)または5.25.1ビン(5.25.1、5.77.1)のいずれかからの中和DKK1抗体のうちの1つでインキュベートした。この混合物を、his標識LRP6と結合し、関連したDKK1を破壊する抗his抗体で免疫沈降した。次いで、免疫沈降物を、rhDKK1を認識した抗flag抗体を用いてウエスタンブロット分析に供した。このようにして、溶液中のLRP6と関連したDKK1およびDKK1のLRP6への結合と競合する中和DKK1抗体の能力、およびLRP5に対する推測によって、測定され得た。レーン1のみにLRP6−Hisが含まれる;レーン2 rhDKK1−Flag;レーン3 hLRP6−His+hDKK1−Flag;レーン4 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5.80.1;レーン5 hLRP6−His+hDKK1−Flag+6.37.5;レーン6 hLRP6−His+hDKK1−Flag+r11H10;レーン7 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5.25.1;レーン8 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5.77.1。このデータは、5.25.1ビン抗体以外の全て3つの11H10ビン抗体が、DKK1のLRP6への相互作用を遮断することができることを示した。
【0297】
同様の方法では、DKK1のKremin2への結合を遮断する同じ前述の抗体の能力、およびKremin1に対する推測により決定された(図2B)。レーン1のみにLRP6−Hisが含まれる;レーン2 rhDKK1−Flag;レーン3 hLRP6−His+hDKK1−Flag;レーン4 hLRP6−His+hDKK1−Flag+0.5μg 5.80.1;レーン5 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5μg 5.80.1;レーン6 hLRP6−His+hDKK1−Flag+0.5μg 6.37.5;レーン7 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5μg 6.37.5;レーン8 hLRP6−His+hDKK1−Flag+0.5μg r11H10;レーン9 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5μg r11H10;レーン10 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5μg 5.25.1;レーン11 hLRP6−His+hDKK1−Flag+5μg 5.77.1。
【0298】
このデータは、5.25.1ビン抗体以外の全て3つの11H10ビン抗体が、DKK1のKremin2への相互作用を遮断することができることを示した。本実験で示されたデータは、2つの異なる抗体ビンがWntシグナル伝達におけるDKK1活性を中和する能力において異なる作用機構を示すことを示唆している。
【0299】
実施例12
選択した抗体のインビボ活性
マウス動物モデルにおけるDKK1の中和が、骨塩密度(BMD)および骨形成マーカー血清オステオカルシンの増加をもたらすかどうかを判定するために、実験を行った。試験した抗体は、2.40.2、5.32.5、5.80、6.37.5、6.116.6であり、上述のように精製した。
【0300】
第1の実験では、4週齢の雄BDF−1マウス(APR 233757,Charles River)を、精製された2.40.2モノクローナル抗体の3つの用量(5、10、または20mg/kg)のうちの1つを用いて週間にわたって皮下注入した。1群につき5匹のマウスを使用した。陰性対照マウスは、ビヒクル(PBS)を注入し、陽性対照マウスは、これらのマウスにおける骨密度の増加を刺激することが知られている(Dempster et al.,Endocrine Reviews 14(6):690−709(1993))副甲状腺ホルモン(アミノ酸1〜34)を注入した。1注入につき100μg/kgのPTH(1−34)を使用した。3週間での脛骨の骨塩密度の変化の割合に対する結果を図3に示す。
【0301】
2つの異なる抗体ビンのインビボ有効性を比較するために、代表的な抗体をそれぞれのビンから選択した。選択した抗体は、5.25.1ビンから5.32.1であり、11H10ビンから5.80.1であった。これらの抗体の両方が、類似の親和性を有するマウスDKK1に結合した。8週齢の雄BDF−1マウス(APR 233757,Charles River)を、精製されたモノクローナル抗体の3つの用量(3、10、または30mg/kg)のうちの1つを用いて2週間にわたって皮下注入した。1群につき6匹のマウスを使用した。陰性対照マウスは、ビヒクル(PBS)を注入した。このデータは、腰椎部の骨塩密度における基準からの変化の割合として図4に表され、11H10ビン抗体(5.80.1)が5.25.1ビン抗体(5.32.1)よりも優れた骨形成活性を示すことを示す。
【0302】
別の実験では、11H10ビンからの2つのさらなる抗体を、8週齢の雄BDF−1マウスに注入した。これらのマウスは、1週間に2回、3週間、25mg/kgのそれぞれの抗体(6.37.5および6.116.6)を皮下注入した。1群につき10匹のマウスを使用した。対照群は、ビヒクル(1週間に2回)またはPTH(100μg/kgを1週間に5回)を注入した。このデータは、腰椎部の骨塩密度における基準からの変化の割合として図5に表され、これらの抗体がPTHと同様の程度での骨密度を増加したことを示した。
【0303】
さらなる研究は、閉鎖骨折治癒ラットモデルにおいてラット11H10ビン抗体を用いて行われた。完全ラット11H10ビン抗体r11H10は、本明細書に記載される完全ヒト抗体に対するサロゲート分子として、本研究に使用された。本研究の長さは、ヒト抗体に対する齧歯類の免疫応答により完全ヒトDKK1抗体の使用を除外した。簡潔に述べると、閉鎖骨折は、7〜7.5月齢の雄ラットの大腿骨に生じた(実施例14の手法を参照)。大腿骨を、骨折前の大腿骨の骨髄空間に微細針(18G)の挿入によって安定化した。次いで、動物をビヒクルまたはr11H10(1週間に2回、25mg/kg)により処置した。骨折は7週間で治癒された。本研究の完了後、骨折した大腿骨は、骨塩密度、生体力学的強度、およびブリッジについて分析した。抗DKK1で処置した動物は、全てのこれらのパラメータの有意な改善を示し、これは抗DKK1療法が骨折および骨再生を必要とする他の兆候の治癒の処置に有用であることを示す。図6は、最大負荷およびBMDの改善が、骨折仮骨での抗DKK1処置で達成され、これは骨折の治癒の加速を示す。
【0304】
実施例13
ヒトおよび動物モデルの血清および組織試料中のDKK1の検出
本明細書に記載される抗体を用いて、血清が含まれるが、これに限定されないヒト試料中のDKK1レベルを検出する。このタイプのアッセイを開発するために、本明細書に記載される2つの異なるエピトープ等の同じエピトープを認識しなかった2つの抗体を選択することは重要であった。ヒト血清または他の組織中のDKK1に対してアッセイするために、標準曲線が、最初に、組換えhuDKK1を用いて構築された。この標準曲線は、huDKK1を欠いている、または低レベルのhuDKK1を含むヒト血清中で構築されることが好ましかった。一般には、血清のために使用される標準曲線の範囲は、この範囲が分析される試料中に得られるhuDKK1の最小値および最大値に応じて調整する必要があり得るが、25pg/mL〜10ng/mLのhuDKK1である。使用したプロトコルの一例は、以下の通りであるが、当業者には明らかである修正は、利用される特定の抗体および試料に応じて行われ得る。
【0305】
最初に、分析されるべきヒト血清を、非結合の半領域プレートに充填した。所定量のエピトープXからのビオチン化抗体(11H10等)および所定量のエピトープY(5.25.1等)からの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗体を、60μLの血清を含むウェル中の全体積に達するように、Iブロック緩衝液中50mg/mLのウサギIgGと共にウェルに添加した。この混合物を振とう器上に30分間置き、次いで、4℃で一晩インキュベートした。
【0306】
一晩インキュベーション後、50μLの溶液を396ウェルプレートに移した。次いで、このプレートを混合しながら室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBSで洗浄し、検出溶液を添加した。次いで、このプレートを適切なリーダー上で分析した。このアッセイは二重で行われ、血清中のDKK1濃度は、標準曲線との比較によって判定された。このデータは、患者が分析されるべき組織または血清試料中の変化したDKK1レベルを有するかどうかを判定するのに有用である。
【0307】
ヒト血清中のヒトDKK1の検出のために本明細書に記載される抗体の使用に加えて、抗体はまた、疾患の動物モデルから単離された血清中のDKK1を検出するために使用することもできる。包括されない例として、上述されるプロトコルを用いて、ラット慢性腎疾患(CKD)モデルにおいてDKK1レベルを検出した。罹患した腎臓および対照腎臓の抽出物を調製し、ラットDKK1タンパク質レベルを判定した。このデータを図7に示し、DKK1タンパク質レベルが薬理学的薬剤により腎臓損傷を誘発してから3週間でほぼ5倍上昇することを示す。これらの結果は、DKK1が腎疾患の進行に関与することを示し、DKK1の薬理学的調節が腎疾患において治療的有用性があることを示唆している。同様に、本実施例に記載される方法を用いて、DKK1調節が治療的有用性を有し得る他の疾患状態を同定することができる。
【0308】
実施例14
スクレロスチンおよびDKK1は、骨形成の負の調節因子である。スクレロスチンモノクローナル抗体(Scl−Ab)による全身療法によるスクレロスチンの阻害は、骨粗鬆症の動物モデルにおいて骨形成、骨量、および骨強度を有意に増加させた(Li XD,et al.J Bone Miner Res 2009;24:578)。さらに、Scl−Abによる処置が、骨修復の動物モデルにおいて骨折治癒を強化した(Ke HZ,et al.Trans ORS 2009;34:22、Ominsky M,et al.ASBMR abstract Sept 2009;Denver,CO)。同様に、モノクローナル抗体r11H10(DKK1−Ab)の全身投与によるDKK1の中和化は、マウス(Komatsu DE,et al.J Orthop Res 2010、DOI 10.1002/JOR.21078)およびラット骨折モデルの骨折部位での骨塩密度(BMD)および強度を増加した。Scl−AbおよびDKK1−Abの組み合わせが、成熟ラットモデルにおいて、骨形成を刺激し、骨折したおよび骨折していない骨における骨強度を増加させる上で相乗効果を有し得ると仮説を立てた。
【0309】
研究設計:7〜7.5月齢の雄Sprague−Dawley(SD)ラット(平均体重580g)を、前述に報告されるように、片側の閉鎖した大腿骨の中骨幹骨折を施した(Bonnarens F,et al.J Orthop Res 1984;2:97−101)。簡潔に言えば、18ゲージのシリンジ針を、大腿顆を通って髄管に挿入し、これが内固定としての役割を果たした。次いで、大腿骨を、大腿前面(側面)での鈍的衝撃負荷により横骨折させた。骨折から1日後、動物(n=14〜18/群)は、食塩水ビヒクルもしくはScl−Ab、またはDKK1−Ab(r11H10)、またはScl−AbおよびDKK1−Abの組み合わせ(組み合わせ)のいずれかで皮下注入した。Scl−AbおよびDKK1−Abの両方は、1週間に2回、25mg/kgで皮下注入した。骨折から7週間後、動物を殺処分し、骨折したおよび無傷の対側(CL)の大腿骨をデンシトメトリーおよび生体力学のために回収した。本研究は、Amgen’s Institution Animal Care and Use Committeeによって認可された。
【0310】
デンシトメトリー:大腿骨は、CL大腿骨中の骨折領域(骨折した大腿骨の中央30%)または対応する領域でDXA(GE Lunar PIXImus II)によりエクスビボで走査されて、面骨塩密度(BMD)を決定した。両方の大腿骨はまた、デスクトップマイクロCTシステム(eXplore Locus SP,GE Healthcare,London,Ontario,Canada)を用いて走査し、30μmの解像度まで再構成した。骨折仮骨の中央1mmの骨塩量(BMC、800mg/ccの閾値)が、前述のように、元の皮質を差し引いた後に評価された(Taylor DK,et al.J Bone Miner Res 2009;24:1043−1054)。全体積の割合としての仮骨体積(BV/TV)は、可変閾値(ビヒクル、Scl−Ab、およびDKK1−Abには570mg/cc、併用には615mg/cc)を用いて定量化した。無傷のCL大腿骨については、皮質骨の中央骨幹の大腿骨の高さの10%に広がる領域(閾値800mg/cc)ならびに遠位の大腿骨骨梁(ビヒクルおよびDKK1−Abには閾値450mg/cc、Scl−Abでは550mg/cc、および併用には600mg/cc)を調べた。平均皮質骨面積および海綿骨密度(BV/TV)はそれぞれ、これらの部位で評価された。
【0311】
生体力学:骨折仮骨の中央部または対側の大腿骨の中央骨幹での3点屈曲障害において大腿骨を試験し、骨強度のパラメータを評価した(MTS 858 Mini Bionix II、径間長=20mm、置換速度=0.1mm/秒)。
【0312】
統計的分析:GraphPad Prism(v.5.01)を用いて、統計的分析を行った。群変動は、F検定によって比較された。群変動が、有意に不均一(p≦0.05)であった場合、データは、対数変換され、分散の再度検定を行った。群変動間の差が有意でなかったとき、不対t検定を用いて、ビヒクルとScl−AbまたはDKK1−Abの間の群平均比較を実施した。群変動が不均一(p≦0.05)のままであったとき、この比較は、マンホイットニー検定を用いて行われた。データは、平均+標準偏差として報告され、p<0.05は有意であると見なされた。
【0313】
結果:骨折した大腿骨:Scl−AbおよびDKK1−Abの両方がそれぞれ、ビヒクルと比較して、骨折した仮骨の中央部1mmで、DXAによる骨幹BMDでの11%増加、およびμCTによるBMCでの24〜26%増加、およびμCTによるBV/TVの40〜60%増加、ならびに骨折した骨のピーク負荷76〜122%増加によって示されるように、骨折した仮骨での骨量および骨強度の同様の改善を示した。Scl−AbおよびDKK1−Abの併用療法は、いずれか1つの単独での療法よりも著しく高いレベルまで骨折した仮骨での骨量および骨強度を大いに増大させた。併用群において、ビヒクルと比較すると、それぞれ、骨折仮骨の中央1mmでの骨幹BMD、BMC、およびBV/TVの39%、60%、および93%増加があった。これらの変化は、ビヒクルと比較して併用群でのピーク負荷の230%増加をもたらした。加えて、BMD、BMC、およびBV/TV、ならびにピーク負荷は、Scl−Ab単独またはDKK1−Ab単独群と比較して併用群で著しく高かった。
【0314】
無傷の対側の大腿骨:
【0315】
DKK1−Abは、無傷の対側の大腿骨において、骨幹のBMD、皮質骨面積および海綿骨のBV/TV、ならびに骨強度に重大な影響を及ぼさなかった。しかしながら、ビヒクルと比較して、Scl−Abはそれぞれ、中央骨幹皮質骨のBMDで6%、皮質骨面積で10%、および遠位大腿海綿骨のBV/TVで43%著しく増加した。ビヒクルと比較して、Scl−Ab処置下の皮質骨および海綿骨の両方の部位での骨量のこれらの増加は、ピーク負荷の17%増加と関連した。
【0316】
骨折した骨と同様に、Scl−AbおよびDKK1−Abの併用は、ビヒクルと比較して、対側の大腿骨中央骨幹のBMDで12%、皮質骨面積で17%、遠位大腿海綿骨のBV/TVで107%、およびピーク負荷で27%著しく増加した。併用群における骨幹のBMDおよび遠位大腿海綿骨のBV/TVの平均値は、Scl−AbおよびDKK1−Abの単独群で観察されたものよりも著しく高く、一方、併用群における皮質骨面積およびピーク負荷はそれぞれ、DKK1−Ab単独群よりも15%および21%著しく高かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]