(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
キメラタンパク質が、Th2型の応答よりもアレルゲン特異的1型ヘルパーT細胞(Th1)の細胞応答を活性化することにより、MHC−II経路による細胞性免疫反応を誘起する、請求項1に記載の核酸分子。
キメラタンパク質がCRY J1−LAMPキメラタンパク質であり、該キメラタンパク質が配列番号5で表されるアミノ酸配列からなる、請求項1〜5の何れか一項に記載の核酸分子。
キメラタンパク質がCRY J2−LAMPキメラタンパク質であり、該キメラタンパク質が配列番号3で表されるアミノ酸配列からなる、請求項1〜5の何れか一項に記載の核酸分子。
アレルゲンタンパク質が、AraH1、AraH2及びAraH3からなる群より選ばれる少なくとも1のアレルゲンである、請求項1〜5の何れか一項に記載の核酸分子。
キメラタンパク質がAraH−LAMPキメラタンパク質であり、該キメラタンパク質が配列番号9で表されるアミノ酸配列からなる、請求項1〜5の何れか一項に記載の核酸分子。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の各種例示の実施形態を詳述するための参照を行う。以降の例示の実施形態の考察は、本願に広範に開示される本発明を制限することを意図するものではない。むしろ、以降の考察は、読者に、本発明の特定の態様及び特徴に関するより詳細な理解を与えるために提供されるものである。本発明の実施は、別途記載のない限り、当該技術分野における範囲内の一般的な分子生物学、微生物学、及び組み換えDNA法を採用する。このような手法は、当業者に既知の文献中に十分に説明されており、そのため本明細書において詳述する必要はない。同様に、薬物療法のための本発明の実施は、当業者に一般的なプロトコルに従うものであり、これらのプロトコルは本明細書において詳述する必要はない。
【0019】
本発明の実施形態を詳述する前に、本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のみのものであり、制限を意図するものではないことは理解されるであろう。更に、値について範囲が提供される場合、文脈上明記されていない限り、下限とする単位の少数第一位までが開示されているものとし、それ以外には、範囲の上限値及び下限値の間の各数値も明確に開示されているものとする。任意の規定の値又は規定の範囲に含まれる値と、その他の任意の規定の値又は規定の範囲に含まれる値とに挟まれる、より小さな各々の範囲も本発明に包含される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、独立して範囲に包含させることができ、あるいは除外させることができ、かつ各範囲が、記載の範囲内の任意の特定の制限を包含するよう、上限及び下限のいずれかを包含し、又はいずれも包含せず、又はいずれをも包含する、より小さな範囲も本発明に包含させる。規定の範囲が上限又は下限のいずれか又は両方を含有する場合、これらの含有される上限又は下限のいずれか又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。したがって、値の範囲が表される場合、範囲内の各値、及び範囲内に当てはまる各範囲は同様に本質的に引用されるものであり、各及び全ての値、並びに全ての可能性のある値範囲の具体的な引用の回避は、これらの値及び範囲を除外するものではなく、むしろ本開示の読者、及び本開示の簡潔性のための便宜的なものであることは理解される。
【0020】
別途記載のない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明の属する技術分野の業者により一般に理解される意味と同様の意味を持つ。本明細書に記載のものと同様の、又は本明細書に記載のものに相当する任意の方法及び材料を、本開示を実施又は試験するために使用できるが、好ましい方法及び材料を以降に記載する。本明細書において言及される全ての出版物は、引用される出版物に関連する方法及び/又は材料を開示及び記載するために、参照により本案件に援用される。本開示は、援用される任意の出版物と衝突する範囲を調節する。
【0021】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、単数冠詞「a」、「an」、及び「the」には、文脈上明記されない限り複数形も含む。したがって、例えば、「アレルゲン」には、このようなアレルゲンが複数包含され、「サンプル」を参照する場合には、当業者に知られる1つ以上のサンプル及びその同等物等が包含される。更に、等価の用語を使用して記載することのできる用語の使用には、これらの等価の用語が含まれる。したがって、例えば、用語「対象(subject)」の使用は、用語「動物」、「ヒト」、並びに薬物療法を行われる対象を指すために当該技術分野で使用されるその他の用語を包含するものと理解される。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「含む」は、コンストラクト、組成物、及び方法が、記載の要素及び/又は工程を含むものの、他の要素及び/又は工程を除外するものではないことを意味するものと意図する。コンストラクト、組成物、及び方法を定義するために使用するとき、「から本質的になる」は、記載のコンストラクト、組成物、及び方法に本質的に重要であるもの以外の要素及び工程を除外することを意味する。したがって、本明細書において定義される通りの要素から本質的になる組成物は、単離及び精製法並びに製薬上許容され得る担体(リン酸緩衝生理食塩水及び保存料など)から持ち込まれた微量の不純物を排除するものではない。「からなる」は、他の原材料の微量構成要素、及び本発明の組成物を投与するための実質的な方法を除外することを意味する。これらの遷移する用語の各々により定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0023】
「キメラDNA」は、天然においてより大きな分子と関連することが見出されていない、より大きなDNA分子内の識別可能なDNA断片である。したがって、キメラDNAがタンパク質断片をコードするとき、配列をコードする断片は、任意の天然型ゲノムにおいてはコード配列に隣接しないDNAにより隣接される。隣接するDNAがポリペプチド配列をコードする場合、コードされるタンパク質は、「キメラタンパク質」(すなわち、一緒に融合させた非天然型アミノ酸配列を有するタンパク質)と呼ばれる。対立遺伝子変異又は天然に生じる変異イベントは、本明細書において定義される通りのキメラDNA又はキメラタンパク質に対しては生じない。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」は、任意の長さの重合形態のヌクレオチドを指すために互換的に使用される。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、及び/又はそれらの類似体を含有し得る。ヌクレオチドは、任意の立体構造を有してよく、既知の又は未知の任意の機能を発揮し得る。用語「ポリヌクレオチド」は、例えば、一重、二重、及び三重らせん分子、遺伝子又は遺伝子断片、エキソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、アンチセンス分子、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分枝状ポリヌクレオチド、アプタマー、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、及びプライマーを包含する。核酸分子は、改変された核酸分子(例えば、改変された塩基、糖、及び/又はヌクレオチド間リンカーを含む)も包含し得る。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「ペプチド」は、2つ以上のアミノ酸サブユニット、アミノ酸類似体、又はペプチド模倣剤からなる化合物を指す。サブユニットは、ペプチド結合又はその他の結合(例えば、エステル、エーテル及び同様の結合など)により連結され得る。本明細書で使用するとき、用語「ペプチド」は、一般的に、ペプチド(すなわち、2〜約20残基のポリアミノ酸)、ポリペプチド(すなわち、約20残基〜約100残基のペプチド)、及びタンパク質(すなわち、約100個又はそれ以上の残基を有するペプチド)を指す。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「アミノ酸」は、天然及び/又は非天然又は合成アミノ酸のいずれかを指し、グリシン及びD又はL型光学異性体、及びアミノ酸類似体及びペプチド模倣剤を包含する。3つ以上のアミノ酸からなるペプチドは、ペプチド鎖が短鎖である場合には、一般にオリゴペプチドと呼ばれる。用語「タンパク質」は用語「ポリペプチド」を包含するのに対し、「ポリペプチド」は完全長に満たないタンパク質であり得る。
【0027】
用語「アレルゲン」は、患者への反復暴露時に、アレルギー性の、すなわち、IgE介在性応答を誘導することが報告されている、任意の天然型タンパク質又はタンパク質混合物を指す。アレルゲンは、アレルギー応答を誘起し得る任意の化合物、物質、又は材料である。アレルゲンは、通常、免疫応答を誘起し得る化合物、物質、又は材料である抗原のサブカテゴリーとして理解される。本発明を実施する差異、アレルゲンは、特に、天然又は未変性のアレルゲン、改変された天然のアレルゲン、合成アレルゲン、組み換えアレルゲン、アレルゴイド(allergoids)、及びこれらの混合物又は組み合わせから選択される。特に対象となるのは、IgE介在性の即時型過敏症を引き起こし得るアレルゲンである。
【0028】
天然型アレルゲンの例としては、花粉アレルゲン(例えば、樹木、雑草、薬草、及び草類の花粉アレルゲン)、ダニ・アレルゲン(例えば、ハウスダストのダニ、貯蔵に関係するダニ)、昆虫アレルゲン(例えば、吸入抗原、唾液及び毒液由来のアレルゲン)、例えば、唾液、毛髪及び由来の動物アレルゲン、並びに動物由来のフケ(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ラット、マウスなど)、菌類アレルゲン、及び食品アレルゲンが挙げられる。アレルゲンは、アレルゲン抽出物、精製アレルゲン、改変アレルゲン又は組み換えアレルゲン、又は組み換え変異アレルゲン、アミノ酸30個以上からなるアレルゲン断片、又はこれらの任意の組み合わせの形態であってよい。
【0029】
それらの化学的又は生化学的性質に関して、アレルゲンは、天然又は組み換えタンパク質又はペプチド、天然又は組み換えタンパク質又はペプチドの断片又はトランケート型、融合タンパク質、合成化合物(化学アレルゲン)、アレルゲンを模倣する合成化合物、あるいは化学的又は物理的に変更を加えたアレルゲン、例えば、熱変性により改変されたアレルゲンを表し得る。
【0030】
主要アレルゲンとしてのアレルゲンの分類には、数種類の試験を実施することができる。一般的に、少なくとも25%の患者が強いIgE結合(スコア3)を示し、50%の患者が少なくとも中等度の結合(スコア2)を示す場合に、アレルゲンは主要アレルゲンとして分類され、この結合はCRIE(交差放射性免疫電気泳動法)により測定される(CRIEの強力な結合(Le.,)では1日後に、CRIEの中等度の結合(Le.,)では3日後に、CRIEでの低強度(Le.,)の結合では10日後に、X線フィルム上でIgE結合が視認される)。患者の少なくとも10%で強力なIgE結合が生じると、そのアレルゲンは中強度のアレルゲンとして分類され、明らかな特異的結合が患者の10%未満である場合には、そのアレルゲンは弱強度アレルゲンとして分類される。IgEの結合を決定するにあたり、例えば、IgEブロットなどのその他の手法を使用することもできる。
【0031】
「エピトープ」は構造であり、通常は、免疫系の構成因子により特異的に認識される又は特異的に結合される短鎖ペプチド配列又はオリゴ糖から構成される。T細胞エピトープは、一般的に線状オリゴペプチドであることが示されている。同一の抗体により特異的に結合され得る場合、2つのエピトープは互いに対応する。2つのエピトープは、いずれもが同一のB細胞受容体又は同一のT細胞受容体に結合することができ、ある抗体がそのエピトープに結合することにより他のエピトープによる結合が実質的(例えば、他のエピトープによる結合の約30%未満、好ましくは約20%未満、及びより好ましくは約10%、5%、1%、又は約0.1%未満)に阻害され得る場合、互いに対応する。
【0032】
本明細書で使用するとき、配列又はそれらの相補鎖が同一のアミノ酸配列をコードする場合、2つの核酸コード配列は互いに「対応」する。
【0033】
本明細書で使用するとき、手作業により、あるいは当該技術分野で常規のソフトウェアプログラムを使用して最大限にアラインメントした場合に、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド領域(又はポリペプチド若しくはポリペプチド領域)は、別の配列に対し特定の割合(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%)の「配列同一性」を有し、これは2つの配列の比較において同一である塩基(又はアミノ酸)の割合を意味する。
【0034】
既定の長さのDNA配列にわたって、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、及び好ましくは少なくとも約80%、及び最も好ましくは少なくとも約90又は95%のヌクレオチドが一致するとき、2つのヌクレオチド配列は「実質的に相同」又は「実質的に類似」である。同様にして、既定の長さのポリペプチド配列にわたって、ポリペプチドの少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約66%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、及び好ましくは少なくとも約80%、及び最も好ましくは少なくとも約90又は95%又は98%のアミノ酸残基が一致するとき、2つのポリペプチド配列は「実質的に相同」又は「実質的に類似」である。実質的に相同な配列は、配列データバンクにおいて利用可能な標準的なソフトウェアを使用し、配列を比較することにより特定できる。同様に、実質的に相同な核酸配列は、例えば、特定の系に関し定義される通りの、厳密な条件下での、サザンハイブリダイゼーション実験において特定することができる。適切なハイブリダイゼーション条件の決定は、当該技術の範囲内である。例えば、厳密な条件は、「42℃、5xSSC及び50%ホルムアミド下でハイブリッド形成、並びに60℃、0.1xSSC及び0.1%ドデシル硫酸ナトリウム下で洗浄」であり得る。
【0035】
同様に、ドメイン配列の「保存的に改変された変異体」も提供され得る。特定の核酸配列に対して、用語「保存的に改変された変異体」は、同一又は本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指し、又は核酸は、本質的に同一である配列に対するアミノ酸配列はコードしない。具体的には、選択された1つ以上(又は全て)のコドンの第3番めの位置を、混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換し、配列を作製することにより、縮重しているコドンを置換できる(Batzer,et al,1991,Nucleic Acid Res.19:5081;Ohtsuka,et al,1985,J.Biol.Chem.260:2605〜2608;Rossolini et al,1994,Mol.Cell.Probes 8:91〜98)。
【0036】
用語、野生型タンパク質の「生物学的に活性な断片」、「生物学的に活性な形態」、「生物学的に活性な等価物」、及び「機能性誘導体」は、活性の検出に好適なアッセイを使用して測定したときに野生型タンパク質の生物活性と少なくとも実質的に等価である(例えば、大幅に異ならない)生物活性を保有する剤を意味する。例えば、輸送ドメインを含む生物学的に活性な断片は、輸送ドメインを含む完全長のポリペプチドと同一の区画に共局在し得るものである。
【0037】
細胞は、外来又は異種核酸が細胞の内側に導入されている場合、このような核酸により「形質転換」、「形質導入」、又は「形質移入」されている。形質転換DNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに(共有結合により)組み込まれていても又はいなくてもよい。例えば、原核生物、酵母、及び哺乳類細胞では、形質転換DNAは、プラスミドなどのエピソーム成分に維持され得る。真核細胞では、安定的に形質転換させた細胞は形質転換DNAが染色体に組み込まれており、染色体の複製を介し娘細胞に遺伝する。この安定性は、真核細胞が、形質転換DNAを含有する娘細胞集団から構成される細胞株又はクローンを樹立する能力により実証される。「クローン」は、有糸分裂によって単一細胞又は共通の祖先から派生した細胞の個体群である。「細胞株」は多数(例えば、少なくとも約10)の世代にわたり生体外で安定的に増殖し得る初代細胞クローンである。
【0038】
「レプリコン」は、生体内でのDNA複製に関係する自律性ユニットとして機能する、任意の遺伝子成分である(例えば、プラスミド、染色体、ウイルス)。
【0039】
本明細書で使用するとき、「ウイルスベクター」は、生体内、生体外、又は試験管内のいずれかで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む、ウイルス又はウイルス粒子を指す。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、及びこれに類するものなどが挙げられるがこれに限定されない。遺伝子の移動がアデノウイルスベクターにより介在される態様では、ベクターコンストラクトは、アデノウイルスゲノム又はそれらの部分と、アデノウイルスキャプシドタンパク質と関連させて選択された非アデノウイルス遺伝子と、を含む、ポリヌクレオチドを指す。
【0040】
本明細書で使用するとき、「核酸送達ベクター」は、対象とするポリヌクレオチドを細胞に輸送し得る核酸分子である。好ましくは、このようなベクターは、調節可能なように発現調節配列に連結されたコード配列を含む。しかしながら、対象とするポリヌクレオチド配列は、必ずしもコード配列を含む必要はない。例えば、一態様では、対象とするポリヌクレオチド配列は、標的分子に結合するアプタマーである。他の態様では、対象とする配列は、制御配列の相補的配列であり、制御配列に結合して制御配列の制御を阻害する。更に別の態様では、対象とする配列は、制御配列そのものである(例えば、細胞において制御因子を捕捉し、阻害する)。
【0041】
本明細書で使用するとき、「核酸送達ビヒクル」は、挿入されたポリヌクレオチド(例えば、遺伝子又は遺伝子断片、アンチセンス分子、リボザイム、アプタマー及び同様物など)を宿主細胞に運搬することができ、このような運搬が上記のような核酸送達ベクターと関連して生じる、任意の分子又は分子群又は巨大分子として定義される。
【0042】
本明細書で使用するとき、「核酸送達」又は「核酸移動」は、導入に使用される方法は関係なく、外来性のポリヌクレオチド(例えば、導入遺伝子など)を宿主細胞に導入することを指す。導入されたポリヌクレオチドは、宿主細胞において安定的に又は一過性に維持され得る。安定的な維持は、典型的には、導入されたポリヌクレオチドが宿主細胞と適合性のある複製起点を含有するか、あるいは宿主細胞の染色体外レプリコン(例えば、プラスミド)などのレプリコン又は核若しくはミトコンドリア染色体などに組み込まれるかのいずれかを必要とする。
【0043】
本明細書で使用するとき、「発現」は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるか及び/又はペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、ゲノムDNAから転写されたmRNAのスプライシングを包含し得る。
【0044】
本明細書で使用するとき、「転写調節下」又は「操作可能に連結される」は、ポリヌクレオチド配列の発現(例えば、転写又は翻訳)が、適切に近接する発現調節エレメント及びコード配列により調節されていることを指す。一態様では、DNA配列は、発現制御配列がDNA配列の転写を調節及び制御するとき、発現制御配列に「操作可能に連結され」ている。
【0045】
本明細書で使用するとき、「コード配列」は、適切な発現調節配列の調節下に配置されているときに、ポリペプチドに転写されかつ翻訳される配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンと、3’(カルボキシル)末端の翻訳終止コドンとにより決定される。コード配列としては、原核生物の配列、真核生物mRNA由来のcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNA由来のゲノムDNA配列、及び更には合成DNA配列を挙げることができるがこれらに限定されない。ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列は、通常、コード配列に対し3’に配置されることになる。
【0046】
本明細書で使用するとき、「遺伝子改変」は、細胞の通常のヌクレオチド配列の任意の付加又は欠失又は破壊を指す。APCの遺伝子改変をなすことのできる方法であれば、本発明の趣旨及び範囲内のものである。当業者であれば認識される方法としては、ウイルスにより介在される遺伝子移動、リポソームにより介在される移動、形質転換、形質移入及び形質導入、例えば、ウイルスにより介在される遺伝子移動(アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス及びヘルペスウイルスなどのDNAウイルス系ベクター、並びにレトロウイルス系ベクターの使用など)が挙げられる。
【0047】
本明細書で使用するとき、「リソソーム/エンドソーム区画コンパートメント」は、膜内にLAMP分子を含有する膜結合型酸性液胞、抗原プロセシングに機能する加水分解酵素、並びに抗原の認識及び提示のためのMHCクラスII分子を指す。
【0048】
このコンパートメントは、飲食作用、食作用、及び飲作用を含む任意の多様な機序により細胞表面から内部移行した外来物質、並びに特定の自己分解現象によりこの区画に送達された細胞内物質を分解するための部位として機能する(例えば、de Duve,Eur.J.Biochem.137:391,1983を参照されたい)。本明細書で使用するとき、用語「エンドソーム」は、リソソームを包含する。
【0049】
本明細書で使用するとき、「リソソーム関連性細胞小器官」は、リゾチームを含む任意の細胞小器官を指し、このような細胞小器官としては、MIIC、CUV、メラノソーム、分泌顆粒、溶解性顆粒、血小板密顆粒、好塩基性顆粒、バーベック顆粒、ファゴリソソーム、分泌リソソーム、及びこれに類するものなどが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、このような細胞小器官は、マンノース6−リン酸受容体を含まず、LAMPを含み、ただしMHCクラスII分子は含む場合と含まない場合とがある。評価のために、例えば、Blott and Griffiths,Nature Reviews,Molecular Cell Biology,2002;Dell’Angelica,et al,The FASEB Journal 14:1265〜1278,2000を参照されたい。
【0050】
本明細書で使用するとき、「LAMPポリペプチド」は、LAMP−1、LAMP−2、CD63/LAMP−3、DC−LAMP、又は任意のリソソーム関連性膜タンパク質、又はホモログ、オルソログ、変異体(例えば、対立遺伝子変異体)及び改変形態(例えば、天然に生じる又は遺伝子操作による1つ以上の変異を含む)を指す。一態様では、LAMPポリペプチドは、哺乳動物のリソソーム関連性膜タンパク質であり、例えば、ヒト又はマウスリソソーム関連性膜タンパク質である。更に一般的に、「リソソーム膜タンパク質」は、エンドソーム/リソソームコンパートメント又はリソソームに関連する細胞小器官の膜に見られるドメインを含み、更に筒状ドメインを含む、任意のタンパク質を指す。
【0051】
本明細書で使用するとき、「標的とする」は、ポリペプチド配列が、本発明のキメラタンパク質を、抗原のプロセシング及びMHC IIに対する結合が生じる好ましい部位(細胞小器官又はコンパートメントなど)に向かわせることを意味する。そのようなものとして、「標的ドメイン」は、細胞コンパートメント/細胞小器官の送達に必要とされる一連のアミノ酸を指す。好ましくは、標的ドメインは、アダプタ又はAPタンパク質(例えば、AP1、AP2、又はAP3タンパク質など)に結合する配列である。標的ドメイン配列例は、例えば、Dell’Angelica,2000に記載される。
【0052】
本明細書で使用するとき、生体内核酸送達、核酸移動、核酸療法、及びこれに類するものなどは、外来性ポリヌクレオチドを含むベクターを、ヒト又は非ヒト哺乳動物などの生物の体内に直接導入することにより、生体内で、外来性ポリヌクレオチドをこのような生物の細胞に導入することを指す。
【0053】
本明細書で使用するとき、用語「その場で(in situ)」は、ある種の生体内核酸送達を指し、この送達では、核酸は標的細胞に近接させて持ち込まれる(例えば、核酸は全身投与されない)。例えば、その場送達法としては、核酸を部位(例えば、腫瘍又は心筋などの組織)に直接的に注入すること、開腹部位を介し、核酸を細胞(1つ又は複数)又は組織と接触させること、あるいはカテーテルなどの医療用アクセス装置を使用して部位に核酸を送達すること、が挙げられるがこれに限定されない。
【0054】
本明細書で使用するとき、用語「単離」及び「精製」は、折にふれて互換的に使用され、細胞構成要素、及びあるいは通常は天然において関連するポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、又はそれらの断片中の構成要素からの分離を意味する。例えば、ポリヌクレオチドに対して、単離ポリヌクレオチドは、通常では染色体において関連付けられる5’及び3’配列から分離されている。当業者には明白であるとおり、天然に生じるものではないポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、又はこれらの断片は、天然に生じるその他の分子から「単離」して識別する必要はない。更に、用語「単離」及び「精製」は、完全な単離及び完全な純度を意味しない。これらの用語は、ポリヌクレオチドなどに関連して天然において見いだされる、いくつかの又は全てのその他の物質からの部分的な及び完全な純度の両方を指すために使用される。したがって、これらの用語は、天然に関連する物質(例えば、RNAからのDNAの単離又は精製)からの単離又は精製、一般的に同様に分類されるその他の分子のからの単離又は精製(例えば、特定のタンパク質は、サンプル中の全タンパク質と比較した場合に純度20%を示す)、又は任意の組み合わせを意味し得る。単離及び精製は、100%を包含する、約1%〜約100%の任意の濃度を意味し得る。そのため、「単離」又は「精製」された細胞集団は、天然において関連する細胞及び物質を実質的に含まない。実質的に不含である、又は実質的に精製されたAPCにより、細胞集団の少なくとも50%がAPCであることが意味され、天然において関連する非APC細胞のうち好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、及び更により好ましくは少なくとも90%を不含有であることを意味する。言うまでもなく、当業者であれば、値の分数を含む全ての値は、本明細書において各々の具体的な値を記載せずともこれらの範囲内に包含されることを認識するであろう。簡潔さのため、各値は具体的には開示されないものの、各及び全ての具体的な値は本質的に開示されており、本明細書に包含されることは読者により理解されるであろう。
【0055】
本明細書で使用するとき、「標的細胞」又は「レシピエント細胞」は、各細胞、又は外来性核酸分子、ポリヌクレオチド、及び/若しくはタンパク質のレシピエントとして所望される又はレシピエントとされてきた細胞を指す。用語は、単一細胞の子孫を包含することも意図し、子孫は、天然、偶発的、又は計画的な変異に起因し、由来する親細胞と必ずしも完全に同一(形態学的に、又は遺伝的に、又は全体的なDNA相補性において)ではなくてもよい。標的細胞は他の細胞と接触していてもよく(例えば、組織において見られるように)、又は生物の体内を循環していてもよい。
【0056】
本明細書で使用するとき、用語「抗原提示細胞」又は「APC」は、主要組織適合性複合体分子、又はその部分、あるいは1つ以上の非古典的MHC分子、又はその部分と関連する抗原を表面上に提示する任意の細胞を意図する。好適なAPCの例は以降に詳細に記載され、限定するものではないが、マクロファージ、樹状細胞、B細胞、ハイブリッドAPC、及びフォスター抗原提示細胞などのホールセルが挙げられる。
【0057】
本明細書で使用するとき、「遺伝子操作された抗原提示細胞」は、表面上に非天然分子部分を有する抗原提示細胞を指す。例えば、このような細胞は、天然には、表面上に共刺激分子を有していなくてもよく、あるいは、表面上に、天然の共刺激分子に加えて追加の人工共刺激分子を有してもよく、あるいは表面上に非天然のクラスII分子を発現してもよい。
【0058】
本明細書で使用するとき、用語「免疫エフェクター細胞」は、抗原に結合して免疫応答を介在することのできる細胞を指す。これらの細胞としては、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、NK細胞、及び細胞傷害性T細胞(CTL)、例えば、腫瘍、炎症、又はその他の浸潤由来のCTL株、CTLクローン、及びCTLが挙げられるがこれに限定されない。
【0059】
本明細書で使用するとき、用語「対象」及び「患者」は、本発明の対象とされる動物を指すために互換的に使用される。用語「動物」は、ヒト及び非ヒト動物を包含するものと理解され、これらの2種は区別されることが望ましく、用語「ヒト」及び/又は「非ヒト動物」が使用される。実施形態では、対象又は患者は脊椎動物であり、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物としては、マウス、サル、ヒト、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ)、競技動物(例えば、ウマ)、及び愛玩動物(例えば、イヌ及びネコ)が挙げられるがこれに限定されない。
【0060】
臨床的なアレルギー症状は当業者に既知のものであり、本願において網羅的に掲載する必要はない。非限定例としては、眼及び鼻の発赤及びかゆみ、鼻のかゆみ及び鼻汁、咳(coaching)、喘鳴、息切れ、掻痒、及び組織の膨張などの一般的な症状を示す皮膚、眼、鼻、上下気道における反応を含む、鼻炎、結膜炎、ぜんそく、じんま疹、湿疹が挙げられる。
【0061】
「免疫学的生体内試験」の例は、皮膚パッチ試験(SPT)、眼粘膜誘発試験(CPT)、アレルゲンによる気管支誘発試験(BCA)、並びに1つ以上のアレルギー症状が観察される各種臨床試験である。例えば、Haugaard et al,J Allergy Clin Immunol,Vol.91,No.3,pp 709〜722,March 1993を参照されたい。
【0062】
本明細書で使用するとき、用語「製薬学的に許容され得る担体」は、リン酸緩衝生理食塩水、水、及びエマルジョン(水中油型又は油中水型エマルジョンなど)、及び各種湿潤剤などの当該技術分野において既知の任意の標準的な医薬担体を包含する。組成物には、安定剤及び保存料も含有させることができる。担体、安定剤、及び補助剤の例は、Martin Remington’s Pharm.Sei.,15th Ed.(Mack PubL Co.,Easton(1975))を参照されたい。
【0063】
本明細書で使用するとき、「治療に有効な量」は、本願において、異常な生理学的応答を予防、矯正及び/又は正常に戻すのに十分な量を意味するために使用される。一態様では、「治療に有効な量」は、臨床的に十分な病理的特徴、例えば、腫瘍体積の大きさ、抗体産生、サイトカイン産生、発熱又は白血球数、又はヒスタミン濃度などを少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも90%低減させるのに十分な量である。
【0064】
「抗体」は、特異的なエピトープに結合する抗体及びそれらの断片を含む、任意の免疫グロブリンである。この用語は、ポリクローナル、モノクローナル、及びキメラ抗体(例えば、二重特異性抗体)を包含する。「抗体結合部位」は、抗原に特異的に結合する重鎖及び軽鎖可変及び超可変領域から構成される抗体分子の立体構造部分である。代表的な抗体分子は、未変化の免疫グロブリン分子、実質的に未変化の免疫グロブリン分子、並びにFab、Fab’、F(ab’)
2及びF(v)部分などのパラトープを含有するこれらの免疫グロブリン分子の部分であり、部分は、本明細書に記載の治療方法に使用するのに好ましい。
【0065】
用語「口腔粘膜投与」は、活性成分の局所的又は全身的な作用を得る目的で、剤形を舌下又は口腔内のどこかしらに配置し、活性成分を患者の口腔又は咽頭粘膜に接触させる、投与経路を指す。口腔粘膜投与経路の例は舌下投与である。用語「舌下投与」は、活性成分の局所的又は全身的な作用を得る目的で、剤形を舌下に配置する、投与経路を指す。本明細書で使用するとき、用語「皮内送達」は、ワクチンを皮膚内の真皮に送達することを意味する。しかしながら、ワクチンをほとんど真皮のみに配置する必要はない。真皮は、ヒトの皮膚表面から約1.0〜約2.0mmの場所に位置する層であるものの、個人間及び身体の異なる部位間においてその量は異なる。一般に、皮膚表面から1.5mm深部に進むことで真皮に到達することが見込まれ得る。真皮は、表面の角質層及び表皮と、皮下層との間に位置する。送達系式に応じ、ワクチンは、最終的に真皮内部のみに又は主に真皮内部に配置してよく、あるいは最終的に表皮及び真皮内部に分布させてもよい。
【0066】
本明細書で使用するとき、アレルギーの免疫療法の文脈において、用語「予防」、あるいはアレルギー患者に対し意図される治療介入を述べるその他の用語は、全患者の少なくとも20%においてIgE応答を予防することを意味する。用語「予防」は、全患者においてIgE介在性疾患の発症を完全に予防することを意味するものではなく、このような定義は、アレルギー症状を低減させる機序を介してアレルギーを治療するための本発明の範囲外であり、当該技術分野における用語の用途に合致するものではない。アレルギー治療は、100%の患者に100%有効なものではないことは、アレルギーの免疫療法に関係する当業者に周知であり、そのため「予防」に関する絶対的な定義は、本発明の文脈において適用されない。当業者であれば、予防の概念は、本発明により想到される。
【0067】
本発明は、ポリ核酸、ポリアミノ酸、並びにポリ核酸及びポリアミノ酸を必要としている対象を治療する方法を提供する。概して、細胞内で産生され、ポリ核酸を投与された対象の体内で防御免疫応答を誘導するアレルゲン製配列(ポリアミノ酸)のための、核酸(例えば、DNA、RNA)ワクチンとして、ポリ核酸を見なすことができる。投与されたとき、ポリ核酸は、好ましくはMHC−II経路により細胞性免疫反応を誘起し、IgE抗体、顆粒球(例えば、好酸球)、及びその他の物質の産生に関与するTh2型の応答よりも、APC、NK細胞、及びT細胞によるインターフェロンの産生を用いるアレルゲン特異的1型ヘルパーT細胞(Th1)の細胞応答を活性化することにより、IgG抗体を産生する。ある程度、MHC−II及びMHC−I応答の両方を生成させ得るものの、本発明は、主に又は実質的にMHC−IIの応答をもたらす。好ましくは、核酸は抗生物質耐性遺伝子をコードしない。
【0068】
本発明は、少なくとも部分的に、特定の構造的な及びひいては機能的な組み合わせの認識に基づくものであり、構成要素は、核酸ワクチン及びコードされるアレルゲンに有利な特性を提供し、当業界で未だ実現されていない、安全なアレルギー治療を可能にする。独立実施形態として、並びに独立実施形態の2つ以上の特徴が組み合わせられた実施形態として、単剤投与型として理解されることことが意図される本発明の各種実施形態では、組み合わせには、MHC IIタンパク質を有するリソソームにアレルゲンアミノ酸配列を移動させるためのリソソーム輸送ドメインの使用が包含される。そうすることで、アレルゲン配列に対するIgE応答ではなく、主にIgG応答が行われるようになる。更には、独立実施形態、又は実施形態の組み合わせは、天然に生じるエピトープの三次元構造をもたらすアミノ酸配列をコードさせるのに十分な長さの核酸配列を含有するコンストラクトを提供する。好ましい実施形態では、核酸配列は、完全長のアレルゲンコード配列を提供/コードするものの、アレルゲン配列に関連して天然に生じる任意のシグナルペプチド配列は非存在である。他の実施形態では、核酸配列は少なくとも1つのアレルゲン性領域をコードするが、完全長のアレルゲンタンパク質はコードしない(同様に、天然にシグナル配列が存在する場合には、このシグナル配列も非存在である)。当該技術分野では、免疫応答はエピトープの一次配列に対し生じ得るものであると認識されるが、本発明は、好ましくは、コードされているエピトープに対しMHC−II免疫応答を生じさせるための核酸ワクチンは、少なくともアレルゲン性配列がプロセシングのためリソソームに送達される際に、アレルゲン性エピトープを含む領域に適切な三次元ペプチド構造をもたらすのに十分な配列データをコードする核酸コンストラクトを使用するものであると認識する。任意の特定の分子理論に制限されるものではないが、適切な立体構造にフォールディングされたタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをエンドソームに送達することで、免疫応答のためのアレルゲン性エピトープのプロセシング及び提示が改良されると考えられる。
【0069】
単独で、又は組み合わせられた実施形態の一部として実施することのできる更に別の実施形態例によると、単一のコンストラクトから複数のアレルゲンの発現がもたらされる。これまでに、アレルゲンに対して防御的な核酸ワクチンを効果的に産生及び使用できることが示されたことはない。本発明は、アレルゲンに対して有効な核酸ワクチンを提供するだけでなく、更に、同時に複数のアレルゲンに対して有効な核酸ワクチンを提供する。アレルゲンは、同一種(例えば、単一の植物)由来のアレルゲンであってよく、あるいは2つ以上の種(例えば、樹木、花、食品など)由来のアレルゲンであってよい。上記の通り、完全長のアレルゲン配列を使用でき(アレルゲンに天然に関連付けられる任意のシグナル配列が非存在)、あるいはアレルゲン性部分を使用できる。複数のアレルゲン配列を含むコンストラクトにおいて、完全長又はトランケート型のアレルゲン配列の任意の組み合わせを使用することができる。更に、他の実施形態と同様、各アレルゲン配列に関し天然に生じるシグナル配列を除去する(すなわち、各アレルゲン配列に関し天然に生じるシグナル配列がコンストラクトに存在しない)ことは好ましい。
【0070】
アレルゲンドメイン内で、別個のアレルゲン性配列のためにシグナル配列を使用すると、核酸コンストラクトの機能に悪影響が生じることが判明しているものの、核酸ワクチンコンストラクト内でシグナル配列領域又はドメインを使用することは重要な特徴であることが判明している。そのため、実施形態では、核酸ワクチンは、コードされているペプチドを膜に及び膜を通して配置するためにシグナル配列ドメイン内に少なくとも1つのシグナル配列を含有する。シグナル配列のアミノ酸配列はコンストラクト間で変化し得るものであり、任意の既知のシグナル配列が選択され得るものの、好ましい実施形態では、シグナル配列が存在し、かつアレルゲン配列(1つ又は複数)のコード配列とインフレームで提供されることが判明している。単一のシグナル配列の使用は、コードされている完全なキメラタンパク質を、膜に及び膜を通して配置するのに適切である。そのため、各アレルゲン配列のシグナル配列は必要ではなく、実際に、免疫細胞表面上のアレルゲンエピトープの適切な局在、プロセシング及び発現に悪影響を及ぼすことが判明している。
【0071】
更には、特定の実施形態及び実施形態の組み合わせにおいて、細胞表面で提示させるためにポリペプチドをユニットへと分解する前のエンドソームにおける時間も含め、ポリペプチドを細胞質からエンドソームに移動させる間にアレルゲン配列を隔離又は物理的に保護することは、本発明に従う有用な核酸ワクチンの提供において重要な要素となり得ることが判明している。そのため、一般に、本発明は、アレルゲン配列を保護するために細胞小器官内安定化ドメイン(IOSD)を含むコンストラクトを包含する。
【0072】
本発明の核酸は、少なくとも次のドメイン、シグナル配列ドメイン、細胞小器官内安定化ドメイン、アレルゲンドメイン(単一のアレルゲン又は2つ以上のアレルゲンを含んでよく、各々1つ以上のアレルゲン性エピトープを含む)、膜貫通ドメイン、及び細胞質リソソーム/エンドソーム標的ドメインを含む。各種ドメインは、単一のキメラ上に又は遺伝子操作された核酸上に存在する。各種ドメインは、当該技術分野で既知でありかつ広く実施されている任意の配置順で組み合わせることができる。好ましい実施形態では、ドメインは、キメラタンパク質をコードする単一の翻訳領域を含むよう組み合わせられかつ配置され、翻訳領域は、転写に関係する構成要素に操作可能に連結されており、キメラタンパク質を発現させるのに十分なものである。したがって、核酸は、プラスミド、ファージミド、ウイルスベクター、又は同様物などの発現ベクターであり得る。好ましくは、核酸は、ヒト細胞などの哺乳動物細胞において発現させるのに好適な、転写に関係する構成要素を含む。このような発現ベクター構成要素及び発現ベクターは、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2004/0157307号により例示されるとおり、当該技術分野で既知であり、かつ広く使用されている。本発明に従う核酸コンストラクトの作製に使用するためのプラスミド骨格の非限定例は、本明細書において、折に触れて「pITI」プラスミドとして参照され、この配列は配列番号1として提供される。
【0073】
本発明の核酸の構成例3つを、
図1、3及び4に概略する。
図1は、コードされるキメラタンパク中に、単一のエピトープを含む単一のアレルゲンが包含されるドメインの、配列配置を示す。
図3は、単一のアレルゲンの複数の異なるエピトープが、アレルゲンドメイン内にコードされるキメラタンパク質に含有されるドメインの、配列配置を示す。2つのエピトープは、同一の読み枠中にあり、かつひいてはいずれもがキメラタンパク質の一部として産生されるよう配置される。標準的な分子生物学的手法を使用して、エピトープドメイン内の同一の読み枠に、3つ以上のエピトープが提供され得ることは、当業者であれば直ちに認識されるであろう。
図4は、2つの異なるアレルゲンがアレルゲンドメイン内に存在するドメインの、配列配置を示す。言うまでもなく、当業者であれば、各々のアレルゲン配列が1つ又は複数のアレルゲンエピトープを含有し得ることは認識するであろう。本発明の核酸の実施形態のこれらの3つの略図をもとに、読者は、任意の数の供給源由来の任意の数のアレルゲン、並びに含有する任意の数のエピトープを、アレルゲンドメイン内に含有させることができ、並びに標準的な分子生物学手法を使用し、インフレームで連結させることができることを直ちに認識されるであろう。
【0074】
図2は、一般的に、
図1に概略される本発明の実施形態に関連する、本発明の一実施形態に従う核酸のベクターマップ(「pITI−CRY J2−LAMP」;場合により、本明細書において「CRYJ2−LAMP」とも参照される)を示す。ベクター又は送達ビヒクルには、pUC複製起点と、コードされるタンパク質を産生させるための各種翻訳及び発現構成要素とを有するプラスミド骨格が含まれる。より詳細には、pITI骨格配列(配列番号1)を含有する。本発明の好ましい実施形態に従い、核酸コンストラクトは、抗生物質耐性遺伝子を含有しないことにも留意されたい。核酸は、シグナル配列及び細胞小器官内安定化ドメインを含有するヒトLAMPタンパク質のN末端領域を含む、コードされているタンパク質のための配列を更に含む。核酸は、LAMPタンパク質のN末端領域にインフレームで融合させたCryJ2アレルゲン配列(シグナル配列が非存在である)を含みコードされているタンパク質のための配列を、更に提供する。核酸は、膜貫通領域及び標的領域を含有するヒトLAMPタンパク質のC末端領域の部分をコードする配列を更に含む。CRY J2−LAMPキメラタンパク質配列のコード領域を配列番号2として提供する。CRY J2−LAMPキメラタンパク質のアミノ酸配列を配列番号3として提供する。
【0075】
例示的な実施形態では、本発明は、CryJ1アレルゲンを含む、その他のC.ジャポニカ(C. japonica)アレルゲンの送達及び発現のための核酸コンストラクトにも関する。同様のプラスミド骨格を使用して、pITI−CRYJ1−LAMPコンストラクトが作成されている。キメラタンパク質は、MHC II型免疫応答を誘導し得る。pITI−CRYJ1−LAMPコンストラクトのためのコード領域を配列番号4として示す。CRY J1−LAMPキメラタンパク質のアミノ酸配列を配列番号5として示す。
【0076】
図3及び4に示すとおり、アレルゲンドメインには、複数のアレルゲン性エピトープを有するアレルゲンを1つ含有させることができ、あるいは複数のアレルゲン(各々が1つ以上のアレルゲン性エピトープを有する)を含有させることができる。
図5は、アレルゲンドメインがアレルゲン性配列を2つ含有する核酸コンストラクトの特定の例示的な実施形態の、ベクターマップを示す。本例示的な実施形態では、アレルゲンドメインはインフレームで、かつN末端でLAMPシグナル配列ドメイン及び細胞小器官内安定化ドメインと融合させたC.ジャポニカ(C. japonica)のCryJ1及びCryJ2アレルゲン(各々天然のシグナル配列は非存在)を含有する。CryJ1−CryJ2配列も、C末端において、LAMP膜貫通ドメイン及び標的ドメインと融合される。キメラタンパク質のためのコード領域の完全なヌクレオチド配列は、配列番号6として表される。コードされるキメラタンパク質の完全なアミノ酸配列は配列番号7として示し、配列中、残基1〜27はキメラタンパク質のシグナル配列を表し、残基28〜380は細胞小器官内安定化ドメインを表し(ヒトLAMPから採用された配列)、残基381及び382はリンカーを表し、残基383〜735はCryJ1のコード領域を表し(シグナル配列は除く)、残基736〜741はリンカー領域を表し、残基742〜1232はCryJ2アレルゲンのコード領域を表し、残基1233〜1234はリンカー領域を表し、残基1235〜1258は膜貫通及び標的ドメインを表し、並びに残基1259〜1270は追加のC末端残基を表す。
【0077】
本発明の核酸コンストラクトでは、協調的に産生され得るアレルゲンの数は本質的に無限である。そのため、2、3、4、5、6、10、20、又はそれ以上の異なるアレルゲン(同一供給源又は異なる供給源の組み合わせに由来)を、本発明の核酸コンストラクトに含有させることができる。
図6Aは、本発明の実施形態に従う別の例示的な核酸のベクターマップを示す。ベクター又は送達ビヒクルには、pUC複製起点と、コードされるタンパク質を産生させるための各種翻訳及び発現構成要素とを有するプラスミド骨格が含まれる。骨格は、必須ではないものの、配列番号1のpITI骨格とすることができる。核酸は、シグナル配列ドメイン及び細胞小器官内安定化ドメインを含有するヒトLAMPタンパク質のN末端領域を含む、コードされているタンパク質のための配列を更に含む。核酸は、落花生アレルゲンポリタンパク質AraH1/AraH2/ArafBを含む、コードされているキメラタンパク質の配列を更に提供する。核酸は、膜貫通領域及び標的領域を含有するヒトLAMPタンパク質のC末端領域の部分をコードする配列を更に含有する。キメラタンパク質のコード領域のヌクレオチド配列は、配列番号8として提供される。
図6Aのベクターによりコードされるキメラタンパク質を、
図6Bに概略的に表す(配列番号9として)。
【0078】
本発明の核酸中に存在するドメインは、コードされているキメラタンパク質により提供される機能に関し以降に詳述される。本発明の実施は、任意の特定の核酸又はタンパク質配列に依存せず、あるいはこれにより制限されず、むしろ、コンストラクトに利点及び特性をもたらす構成要素及びドメインの組み合わせであることは理解されるであろう。同様に、コードされるタンパク質の物理的及び機能的特徴の文脈において議論されるとき、あるいはその逆について議論されるとき、各種核酸コンストラクトのドメインに関する記載であることも理解される。核酸又はタンパク質のいずれかの物理的及び機能的特徴については、当業者に十分に開示される。コンピューター及び遺伝子暗号の縮重を使用して、既知のタンパク質配列をコードする、可能性のある全ての核酸分子にたどり着くこと、並びに核酸によりコードされるタンパク質にたどり着くことは簡単である。したがって、特定のタンパク質配列の物理的又は機能的特徴の参照により、当業者には、物理的又は機能的特徴と関連付けられる、可能性のある全ての核酸配列が、並びにその逆も同様に、直ちに開示される。
【0079】
同様に、2つ以上の核酸分子又は配列を設計及び組み合わせて、本発明に従うキメラタンパク質をコードする配列にたどり着くことは十分当業者の範囲内である。同様に、転写及び翻訳制御配列を選択及び組み合わせて、所望されるとおりに生体内又は試験管内でコード配列及びキメラタンパク質を発現させる能力も、十分に当業者の範囲内である。したがって、これらの一般的に使用される手法は、本発明の実施を可能にするために本明細書において詳細に議論する必要はない。
【0080】
本発明の核酸はシグナル配列ドメインを含む。シグナル配列ドメインは、コードされるキメラタンパク質を外部環境及び内部環境の境界を区別する生体膜に挿入するために提供される、シグナル配列を含有する。同様に、シグナル配列は、タンパク質を外部環境から内部環境に移動させる。シグナル配列の一般的な構造は当業者に周知であり、特定のシグナル配列の数多くの例の通りのものである。当業者は、本発明の範囲内の各実施形態の各種選択パラメータに従って、自由に任意の適切なシグナル配列を選択する。例示的な実施形態では、シグナル配列は、キメラタンパク質を小胞体に移動させる配列である。この接合点では、シグナル配列ドメインが、シグナル配列を含有するキメラタンパク質の唯一の部分であることには留意されたい。そのため、アレルゲンに関しアレルゲンドメイン内に属する天然に生じるシグナル配列は、アレルゲン配列をコンストラクトに包含させるより前に除去される。これらのそれぞれのシグナル配列を除去することで、生体内におけるコンストラクトの全体的な性能が向上することが判明している。
【0081】
本発明の核酸は、細胞小器官内安定化ドメイン(IOSD)を含有する。IOSDは、キメラタンパク質がエンドソーム/リソソームコンパートメントにたどり着くより前に、化学結合によりアレルゲンドメイン中の1つ以上の配列に結合し、これらの配列を分解(例えば、タンパク質分解)から保護するアミノ酸配列をコードする配列を含む。本質的に、IOSDは、これらの配列、詳細には、アレルゲン性エピトープ配列を、タンパク質分解酵素、低pH、及びその他のタンパク質不安定化させる物質及び条件から保護する、アレルゲンドメイン配列のための保護キャップとして想定され得る。IOSDは、任意の数の既知の又は遺伝子操作された配列であってよく、LAMPポリペプチド筒状ドメイン、並びに非常にグリコシル化された膜貫通型タンパク質であり、後期エンドソームタンパク質としてマクロファージ及びマクロファージ様細胞で発現されるマクロシアリン/CD68タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。IOSDの重要な特徴は、IOSDは、MHC class II分子が不変異体ペプチドから放出されるまでの間、アレルゲンドメインに結合し、かつタンパク質分解から保護し得るというものである。この方法では、アレルゲン性エピトープ(1つ又は複数)の立体構造は、相互作用に関し活性なMHC class II分子が利用可能となるまでの間保存される。好ましい実施形態では、IOSDは、リソソームタンパク質の配列の全て又は一部を含む。一部の実施態様では、IOSDは、限定するものではないがマクロシアリン/CD68などのLAMPポリペプチド筒状ドメイン以外のタンパク質又はポリペプチドである。
【0082】
本発明の核酸コンストラクトはアレルゲンドメインを含む。アレルゲンドメインは、1つ以上のアレルゲン性エピトープを含むアレルゲンタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをコードする1つ以上の配列を含む。アレルゲンドメインは、アレルゲンに存在するシグナル配列を含有しない。数多くのタンパク質性のアレルゲンが当該技術分野において既知であり、いずれか1つ、あるいはアレルゲン及び/又はアレルゲン性エピトープの組み合わせを、本発明に従って使用できる。完全長に満たないアレルゲン性配列が使用される場合、好ましくは、アレルゲン性タンパク質内のそれらの天然の位置との関連において、完全長アレルゲンタンパク質の1つ以上のエピトープが提供される。より詳細には、本発明は、改良された核酸ワクチンを提供し、ワクチンは、MHC class II分子がコンピテントとなってキメラタンパク質上のエピトープと結合するまでの間、3次元構造を保持又は実質的に保持するキメラタンパク質コードする。この方法では、一般的に適切な3次元構造を失っているMHC class II分子の短鎖ペプチドを送達させた場合と比較して、改良された免疫応答を誘導できる。したがって、元々アレルゲンタンパク質上に存在する場合、アレルゲンドメインが、1つ以上のエピトープを含有する比較的長鎖のアミノ酸配列をコードすることは好ましい。
【0083】
アレルゲンドメインには、2つ以上のアレルゲンを含有させることができ、各々は1つ以上のアレルゲン性エピトープを含有する。ある種のアレルゲン性タンパク質が2つ以上のエピトープを含有することは既知である。本発明の好ましい実施形態は、アレルゲン性タンパク質の、完全なアレルゲン性コード領域(すなわち、シグナル配列を含まないコード領域)、あるいはそれらの大部分を使用することから、特定のアレルゲンドメインは、天然に生じる関連性において2つ以上のエピトープを含有することになる。あるいは、2つ以上の既知のエピトープを1つのコード領域中に融合させることができる。更には、例示的な実施形態では、2つ以上のアレルゲン性タンパク質、又はそれらのアレルゲン性の領域は、アレルゲンドメイン中に存在する。2つ以上のエピトープが単一のエピトープドメイン中に存在するよう遺伝子操作されている場合、エピトープは同一の抗原性タンパク質に由来するものであり得る。あるいは、それらは同一種の2つの異なるタンパク質に由来するものであり得る。更には、それらは異なる2種の同一タンパク質に由来するものであり得る。更に、それらは2つ以上の異種由来の2つ以上の異なるタンパク質に由来するものであり得る。本質的に、同種又は異種由来の同一又は異なるタンパク質由来のエピトープの任意の組み合わせが本発明により想到される。同様に、各種アレルゲン及びエピトープの順番は、考えられる場合の数だけ変更することができる。複数種由来のアレルゲン性タンパク質及び/又はアレルゲン性ペプチドを組み合わせることで、複数のアレルゲンに基づく単一のアレルゲン性生物(例えば、特定の樹木種)のアレルギー用の治療、並びに複数のアレルゲンに基づく複数のアレルゲン性(例えば、1年の同じ季節の間に胞子を放出する複数の植物)のアレルギー用の治療を提供し得るロバストな核酸ワクチンを作製することができる。単一の核酸ワクチン由来の複数のアレルギーと対抗する能力については現在も証明されていない。
【0084】
本発明の核酸コンストラクトは、膜貫通ドメインを更に含む。膜貫通ドメインは周知であり、生体膜の両面に部分的に存在するタンパク質の物理的及び機能的構成要素がよく特徴付けられている。本質的に、膜貫通ドメインは、アミノ酸の線状配列であり、天然の状態で一般的に疎水性又は親油性であり、タンパク質を生体膜に係留するよう機能する。一般的に、このような配列は長さにして20〜25残基である。当業者であれば、このような配列を良好に認識し、かつ本発明において使用するのに好適な膜貫通配列を容易に得ることができ、又は設計できる。
【0085】
上記の構成要素に加えて、本発明の核酸は標的ドメインを含む。標的ドメインは、エンドソーム/リソソームコンパートメントのため、コードされるキメラタンパク質を標的とするよう機能するアミノ酸配列をコードする配列である。同一性において限定されないものの、好ましい実施形態では、標的ドメインは、LAMPポリペプチド、DC−LAMP、LAMP2、LAMP−3、LIMP II、ENDOLYN、又はマクロシアリン/CD68のC末端細胞質標的配列を含む。
【0086】
一実施形態では、本発明の核酸は、アレルゲンドメインの一部として配列番号2の配列(すなわち、シグナル配列を含まないCry J2ヌクレオチド配列)、あるいは配列番号3をコードする別の配列(すなわち、シグナル配列を含まないCry J2タンパク質配列)を、アレルゲンドメイン中に含む。配列番号2は、シグナル配列(すなわち、配列番号2)は除外してCry J2(クリプトメリア・ジャポニカ(Cryptomeria japonica)の花粉に見られるペクチン酸リアーゼ)の完全長のタンパク質コード配列をコードするヌクレオチドから構成される。Cry J2が、ヒマラヤスギ花粉の存在する地域における季節性及び通年性アレルギーと関連することは当該技術分野において周知である。ヒマラヤスギ林付近の地域に住んでいるアレルギー患者においては、Cry J2に特異的なIgEが一般に見られる。本開示の一部として提供される配列表において、存在する場合、各アレルゲンのシグナル配列が記載されていることには留意されたい。本発明のコンストラクトの文脈の範囲内で、これらのシグナル配列は存在しないことは理解されるであろう。
【0087】
他の実施形態では、核酸は配列番号4(すなわち、シグナル配列を含まないCry J1ヌクレオチド配列)の配列、あるいは配列番号5(すなわち、シグナル配列を含まないCry J2タンパク質配列)をコードする別の配列を含む。更なる他の実施形態では、核酸は、それぞれ、配列番号2及び配列番号4の両方の配列、又は配列番号3及び配列番号5をコードするその他の配列を含む。一実施形態では、核酸は本明細書で開示されるその他の配列を1つ以上含み、例えばそれらの配列は、次のアレルゲンのうちのいずれかをコードする:Cry J3(Cry J3.8;C.ジャポニカ(C. japonica);配列番号10;シグナル配列は残基1〜26)、CJP−4(C.ジャポニカ(C. japonica):配列番号11)、CJP−6(C.ジャポニカ(C. japonica):配列番号12)、CJP−8(C.ジャポニカ(C. japonica):配列番号13;シグナル配列は残基1〜35)、CPA63(C.ジャポニカ(C. japonica);配列番号14;シグナル配列は残基1〜20)、CJP38(C.ジャポニカ(C. japonica):配列番号15;シグナル配列は残基1〜28)、Cha o 1(C.オブツセ(C. obtuse);配列番号16;シグナル配列は残基1〜21)、Jun a 1(J.アセイ(J. ashei);配列番号17;シグナル配列は残基1〜21)、Jun v 1(J.バージニアナ(J. virginiana):配列番号18;シグナル配列は残基1〜21)、Cup a 1(H.アリゾニカ(H. arizonica);配列番号19;シグナル配列は残基1〜21)、Jun o 1(J.オキシセドラス(J. oxycedrus);配列番号20;シグナル配列は残基1〜21)、Cup s 1(C.セムパービレンス(C. sempervirens);配列番号21;シグナル配列は残基1〜21)Cha o 2(C.オブツセ(C. obtuse);配列番号22;シグナル配列は残基1〜22)、Jun a 2(J.アセイ(J. ashei);配列番号23;シグナル配列は残基1〜22)、Cup a 2(H.アリゾニカ(H. arizonica);配列番号24)、Jun a 3(J.アセイ(J. ashei);配列番号25;シグナル配列は残基1〜16)、Jun r 3(J.リジダ(J. rigida);配列番号26;シグナル配列は残基1〜26)、Cup s 3(C.セムパービレンス(C. sempervirens);配列番号27;シグナル配列は残基1〜26)、Cup a 3(H.アリゾニカ(H. arizonica);配列番号28)、Ch4A(P.モンチコラ(P. monticola);配列番号29;シグナル配列は残基1〜25)、Ch4−1(P.メンジエシイ(P. menziesii);配列番号30;シグナル配列は残基1〜26)、PT−1(P.タエダ(P. taeda);配列番号31)、及びLTP(P.アビエス(P. abies);配列番号32;シグナル配列は残基1〜25)。配列番号を参照することにより掲載されていない核酸及びアミノ酸配列も公的に利用可能である。コンピュータープログラムを実装し核酸配列に基づき本発明に従うタンパク質配列にたどり着くことは大して難しいことではない。言うまでもなく、これらのタンパク質配列に対し生化学的に相同の配列は、これらの実施形態により包含される。例えば、開示される配列に対し、30%以上、例えば、40%以上、50%以上、75%以上、90%又は95%以上、98%以上、又は99%以上の同一性を示す配列が、これらの実施形態により包含される。このコンセプトは、本明細書で開示されるアレルゲンの特定の配列だけでなく、本明細書で提供されるすべてのタンパク質及び核酸配列に適用されることは理解されるであろう。更に、上記のように、開示される範囲内の各値は、本開示により具体的に包含されることは理解される。
【0088】
本発明の具体例において、アレルゲンドメイン内に配列番号2、又は配列番号3をコードする別の配列を含むDNAワクチンが提供される。日本赤杉アレルギーに関係する重要な所見が見られる患者にこのようなワクチンが投与されるとき、ワクチンにより、アレルゲンCry J2(配列番号3内に示される)を含む融合又はキメラ(これらの用語は本明細書において互換的に使用される)タンパク質のデノボ合成が得られる。キメラタンパク質上に存在するドメインの組み合わせにより、タンパク質は小胞体からエンドリソソーム経路に誘導され、結果として、融合タンパク質のMHCビヒクル中エピトープへのプロセシングが生じ、その内のいくつかはMHCクラスII分子に結合して、液性免疫応答の増強をもたらす。
【0089】
本発明の別の例では、アレルゲンドメイン内に配列番号4の配列、又は配列番号5をコードする別の配列を含むDNAワクチンが提供される。日本赤杉アレルギーに関係する重要な所見が見られる患者にこのようなワクチンが投与されるとき、ワクチンにより、アレルゲンCry J1(配列番号4の配列内に見られる)を含む融合又はキメラ(これらの用語は本明細書において互換的に使用される)タンパク質のデノボ合成が得られる。キメラタンパク質上に存在するドメインの組み合わせにより、タンパク質は小胞体からエンドリソソーム経路に誘導され、結果として、融合タンパク質のMHCビヒクル中エピトープへのプロセシングが生じ、その内のいくつかはMHCクラスII分子に結合して、液性免疫応答の増強をもたらす。
【0090】
本発明の別の例では、アレルゲンドメイン内に配列番号6を含むDNAワクチンが提供される。日本赤杉アレルギーに関係する重要な所見が見られる患者にこのようなワクチンが投与されるとき、ワクチンにより、アレルゲンCryJ1及びCry J2(配列番号7)を含む融合又はキメラ(これらの用語は本明細書において互換的に使用される)タンパク質のデノボ合成が得られる。キメラタンパク質上に存在するドメインの組み合わせにより、タンパク質は小胞体からエンドリソソーム経路に誘導され、結果として、融合タンパク質のMHCビヒクル中エピトープへのプロセシングが生じ、その内のいくつかはMHCクラスII分子に結合して、液性免疫応答の増強をもたらす。
【0091】
本発明の別の例では、Jun a 1(ジュニペラス・アセイ(Juniperus ashei)族に属するペクチン酸リアーゼ)の配列をコードする完全長のタンパク質をコードする核酸が、アレルゲンドメインに提供される。Jun a 1はCry J1と高度の配列同一性を示し、いずれもがCry J1に対し類似する酵素活性を保持し、既知のエピトープにおいて高い類似性を保有する。
【0092】
その他のポリペプチドがCry J1に対し交差反応性であることは既知であり、この交差反応性は、ペクチン酸リアーゼファミリーのポリペプチドの酵素活性に関連するエピトープが共通することに起因する。このファミリーはヒノキ(Japanese cypress)(カマエキパリス・オブツサ(Chamaecyparis obtusa)(Ch o 1))の主要なアレルゲンを含み、ジュニペラス・アセイ(Juniperus ashei)(Jun a 1)、ジュニペラス・バージニアナ(Juniperus virginiana)(Jun V 1)、キュプレッサス・アリゾニカ(Cuppressus arizonica)(Cup a 1)、ジュニペラス・オキシセドラス(Juniperus oxycedrus)(Jun o 1)、及びキュプレッサス・セムパービレンス(Cupressus sempervirens)(Cup s 1)由来のアレルゲンを含む。文献中に、アレルギー患者間で、ヒマラヤスギ科(イトスギ属(Cupressus))由来の花粉に対する強い交差反応性が存在することが観察されている。以下の表Iには、関連するタンパク質間の交差反応性の強度を示す表を掲載する。本発明は、Cry J1及びCry J2に関して詳述するものの、本明細書及び特に表Iにおいて開示されるアレルゲンのうちの1つ以上に加えて、あるいはその代替として、Cry J1及びCry J2配列を使用できることは理解されるであろう。
【0094】
コード領域のヌクレオチド配列を、異なるコード領域(すなわち、融合部位)のヌクレオチド配列に挿入するための特定部位は、その他のものと比較してより望ましいことは当業者には周知である。アレルゲン配列の位置は教示されており、例えば、
図1〜5は、本発明において教示される組成物を使用するのに望ましい位置として教示される。アレルゲン配列の位置を、LAMPポリペプチドの筒状ドメイン又はその他の細胞小器官内安定化ドメイン内などの他の位置に移動させることも本発明の範囲内である。しかしながら、アレルゲンは、膜貫通又は細胞質ドメインのいずれかのコード領域内に配置させないことが好ましい。本発明の好ましい例では、LAMPポリペプチドの筒状ドメインの膜貫通ドメイン接合部からアミノ酸5残基内及びLAMPポリペプチド筒状ドメインの5’N末端の最大でアミノ酸20残基内に、アレルゲン配列が挿入される。
【0095】
本発明の核酸は、精製又は単離分子として提供できる。核酸は、組成物の一部として提供することもできる。組成物は本質的に核酸から構成することができ、すなわち核酸は、コード配列を発現させるのに好適な組成物中の唯一の核酸である。あるいは、組成物は本発明の核酸を含み得る。例示的な実施形態では、組成物は、本発明の核酸と、1つ以上の製薬学的に許容され得る物質又は担体とを含む医薬組成物である。一部の実施態様では、組成物は、細胞による核酸の取り込みを促進する物質を含む。一部の実施態様では、組成物は、核酸の、免疫細胞(例えば、APC)などの特定の細胞型への送達を補助する、標的分子を含む。一実施形態では、核酸は、核酸を細胞又は組織に送達するための送達ビヒクル又は送達ベクターの一部である。
【0096】
本発明の特定例では、組成物は、2種のDNAワクチンの混合物を含み、1種のワクチンは1種のアレルゲンに関係する配列を含み、かつ他方のワクチンは別のアレルゲンに関係する配列を含む。2種のワクチンコンストラクトは、1:1、1:2、1:3、1:4から、順次最大1:10比で一緒に混合することができる。好ましい比は1:1である。
【0097】
本発明の特定の例では、Cry J1、Cry J2、及び/又はJun a2の核酸は、核酸送達ベクター内に存在する。本発明の好ましい実施形態では、核酸送達ベクターは、米国特許出願公開第2008/006554号により教示される核酸送達ベクター、あるいは米国特許出願公開第2006/003148号において開示される又はこれの結果として得られるベクターなどの抗生物質耐性遺伝子を含有しない。本発明の特定の例では、核酸はアデノウイルスベクターなどのウイルスベクターである。
【0098】
核酸及び組成物は新規のものであり、患者におけるアレルギー応答を低減させるのに有用である。例えば、核酸及び組成物は、日本赤杉の花粉に関連する、あるいはホモログの花粉又はアレルゲンに由来する例示的なアレルギー応答を示す患者において、花粉症を低減させるのに有用である。別の非限定例としては、核酸は、落花生又はその他の殻果類に対するアレルギーなどの、食品アレルギーの低減に有効である。核酸及び組成物を抗原提示細胞に遺伝子導入する、日本赤杉の花粉由来の花粉症を治療するための核酸及び組成物の送達は、Cry J1及び/又はCry J2内に含有されるエピトープに特異的な免疫グロブリンG(IgG)の血清濃度の増加をもたらす。この応答は、アレルギー症状の低減に有用である。同様に、ブタクサ、その他の樹木の花粉、及び食品を含むその他のアレルギーに関係するアレルゲンの送達も、結果としてIgGの血清濃度の増加をもたらす。
【0099】
本発明により、必要のある対象を治療する方法も提供される。方法は、1つ以上のアレルゲンに対するアレルギー応答を発症する又は発症する危険性のある対象を予防的に処置又は治療的に処置する方法である。方法は、APCによるDNAワクチンの取り込み及び発現を生じるのに十分な量で、本発明に従うDNAワクチンを対象に投与することを含む。DNAワクチンの発現により、結果として、コードされているアレルゲン性エピトープ(1つ又は複数)がAPC上に提示され、IgG免疫応答が発症する。
【0100】
本発明の特定の例では、配列番号2、配列番号4、及び/又は配列をコードする別のアレルゲンが細胞に投与される。好ましい実施形態では、細胞は、樹状細胞などの抗原提示細胞である。好ましくは、樹状細胞はヒト樹状細胞である。本発明は、筋肉注射、皮下注射、電気穿孔法、遺伝子銃予防接種、又はリポソーム介在性移動など、当該技術分野において核酸ワクチンに有効な送達方法であることが既知である方法により投与され得る。
【0101】
本発明は、日本赤杉の花粉に関連する花粉症の治療に有用な処方を提供する。動物に対するアレルゲンのタンパク質コード配列をコードするDNAプラスミドを送達することで、IFN−γ産生を増加させ、かつIL−4産生を低下させ得ることがこれまでに判明しており、これは特定のアレルゲンに対してアレルギーを示す動物の治療に有用である。本発明は、日本赤杉の花粉に関連するアレルギー患者を治療するための、改良されたDNAワクチン組成物を提供する。本発明の融合タンパク質は、MHCクラスII小胞と交差し、結果として免疫系に対するアレルゲンエピトープの提示を増強させ、具体的には、抗体応答の増強をもたらす、特異的な細胞内輸送パターンを有する。本発明により提供される核酸及び組成物は、アレルギー免疫療法の実施に有用である。
【0102】
本発明は、細胞に投与したときに特異的な抗体応答の増加をもたらす処方を提供する。アレルゲンに対する抗体応答の増加は、IgE介在性のアレルギー性疾患の治療に有用である。IgEは、細胞の限定に関連する特定の特徴を有し、同族アレルゲンに結合し細胞内シグナル伝達をもたらす。IgEは、Th2細胞により分泌されたIL−4をB細胞が受容したときに、アレルゲンに対して作成される。B細胞にIgEクラス抗体を産生するよう指示するのに役立つ。B細胞による分泌に応じ、IgEは、高親和性受容体が肥満細胞及び好酸球により発現されるFc−eRIに結合し、結果として、これらの細胞及び動物は将来的なアレルゲン暴露に感作されることになる。結果として、アレルギー症状は、アレルゲンの摂取、吸入、又は粘膜への接触に応じ誘発され得る。抗体には結合特性があることに起因し、アレルギー症状を低減させる手法の1つとして、他の抗体クラスと競合させることによりIgEによる結合に利用され得る遊離アレルゲンをキレートすることが提案される。特に、IgGを増加させるアレルギー製剤は、アレルギー性疾患を低減させる経路となり得ることが提案されている。本明細書に記載の本発明は、IgG産生の増強を誘導し、ひいては臨床的に重要な手法により、IgGに対するIgEの比を低減させる。実施した試験結果により、Cry J2−LAMPコンストラクトにより誘導されるIgG濃度が、第98日目に、改変されていないCry J2をコードするヌクレオチドの送達により誘導されるものを上回ることが示される。
【0103】
本発明の別の例では、方法は、Cry J1(ペクチン酸リアーゼ)のアミノ酸又は核酸配列との配列の程度を決定するための、ヒマラヤスギの樹木の花粉に見られるペクチン酸リアーゼポリペプチドの選択を教示し、そのため、Cry J1に類似する物質の新規組成物が生成され、物質の相同組成物を患者に投与することで、ヒマラヤスギの花粉に関連するアレルギーの治療に有用な治療結果がもたらされる。
【実施例】
【0104】
本発明は、本発明の実施形態例に対する参照を記載する。以降の実施例は、本発明のコンストラクトの作成及び活性を読者に良好に理解させることを意図するものであり、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。
【0105】
実施例1:遺伝子材料及び方法
免疫化及び血清採取
6〜8週齢のBALB/c雌性マウスをHarlan Laboratories(Frederick,Maryland)から購入し、出願者らの動物施設(Rockville,Maryland)で維持した。DNA免疫は、50μgのプラスミドDNAを100μLの滅菌PBSに入れて、筋肉内又は皮内のいずれかに行った。血清は眼窩内出血により得て、以降に解析するために−20℃で保存した。感作させる際、マウスには、5ug/mLの組み換えCRYJ2(rCRYJ2)又は組み換えCRYJ1(rCYRJ1)のいずれかと、100μLのミョウバン(2mg/mL)とを合計200μLで注射した。毎週、マウスから採血し、血清は、CRYJ特異的な抗体に関し、ELISAにより解析した。
【0106】
モルモット
雌性モルモットを購入し、Spring Valley Laboratories(Woodline,MD)にて収容した。200μLの滅菌生理食塩水に入れた100μgのプラスミドDNAを筋肉内に投与し、DNA免疫化した。心臓出血から血清を得て、後の解析のため20℃で保存した。
【0107】
CYRJ2特異的免疫グロブリン応答の検出
Nunc Maxisorpイムノアッセイプレートを、rCRYJ2の5ug/mL濃度PBS溶液で、4℃で一晩コーティングした。1% BSA(PBS)により一晩ブロッキングした後、0.05% Tween−20(PBS−T)を含有させたPBSにより血清を希釈し、1時間インキュベートした。ペルオキシダーゼ複合ヤギ抗マウスIgG、IgG1又はIgG2a抗体(Jackson Laboratories)を使用し、ウェルに固定したCRYJ2に結合したIgG、IgG1、又はIgG2を検出した。TMB基質(KPL)を加え、酵素活性をTMB停止液により停止させた。このプレートを450nmで読み取りした。場合によっては、Sure Stop Solution(KPL)を使用し、プレートを650nmで読み取りした。
【0108】
サイトカイン測定用の脾細胞の調製
無菌下で脾臓を摘出し、引裂き、単個細胞懸濁液を調製した。一次応答を試験するため、脾細胞を24ウェルプレート(4×10
5個/ウェル)で、10μg/mL、5μg/mL、又は2.5μg/mLのrCRYJ2存在下又は非存在下で72時間培養した。
【0109】
サイトカインアッセイ
IFN−γ及びIL−4の存在に関し、ELISAにより上清を解析した。IFN−γ及びIL−4に関しては、適した抗体対を使用し、製造元の指示に従って実施した。マウス組み換えIFN−γ及びIL−4を用い標準曲線を作成した。全ての抗体及びサイトカインはInvitrogen(Carlsbad,CA)から購入した。IFN−γ及びIL−4アッセイの検出限界はそれぞれ20及び10pg/mLであった。
【0110】
実施例2:コンストラクトからのアレルゲンの発現
本発明の核酸コンストラクトを使用して、形質転換細胞において1つ又は複数のアレルゲンを発現させることができることを示すため、ヒト293細胞をCryJ2−LAMPプラスミド、CryJ1+J2−LAMPプラスミド(
図4)、CryJ1−LAMPプラスミド、CryJ1プラスミド(CryJ1シグナル配列は非存在;
図7)、及びベースとなるプラスミドベクターのみ(陰性対照;配列番号1)により形質移入した。実験結果を
図9に示す。
【0111】
図9Aはトランスフェクション反応の結果を示す。検出には抗CryJ2抗体を使用した。簡潔に述べると、30μgの細胞可溶化物を電気泳動させ、次に免疫ブロット法のためメンブレンに転写した。CryJ2モノクローナル抗体を用い免疫ブロットを行った後、化学発光によりタンパク質を検出した。図に見られるとおり、CryJ2アレルゲンのみ及びCryJ1+CryJ2アレルゲンを含むコンストラクトが検出されたのに対し(レーン2及び3)、その他のアレルゲンは検出されなかった。この実験では、レーン5のコンストラクトを除き、CryJ1及びCryJ2アレルゲンに関し天然に生じるシグナル配列は実験より前に除去した。これらの結果は、発明のコンストラクトはアレルゲンの発現に好適なだけでなく、複数のアレルゲンを共発現させることもできることを示す。
【0112】
図9Bはトランスフェクション反応の結果を示す。検出には抗CryJ1抗体を使用した。簡潔に述べると、30μgの細胞可溶化物を電気泳動させ、次に免疫ブロット法のためメンブレンに転写した。CryJ1モノクローナル抗体を用い免疫ブロットを行った後、化学発光によりタンパク質を検出した。図に見られるとおり、CryJ1+CryJ2アレルゲン(天然のシグナル配列は非存在)を含むコンストラクト(レーン3)が検出され、同様に、天然に生じるシグナル配列が除去されていないCryJ1アレルゲンを含むコンストラクト(レーン5)が検出された。しかしながら、Cry1アレルゲンが天然のシグナル配列を含有するコンストラクトは検出されなかった。これらの結果は、本発明のコンストラクトが複数のアレルゲンの発現及び検出に好適であり、天然に生じるシグナル配列を除去することが産物の発現及び検出に重要であることを示す。
【0113】
実施例3:コンストラクトのMHC IIプロセシング経路を支持するデータ
プラスミド上のコード領域として、あるいは本発明に従うコンストラクトに対するアレルゲンドメインとして投与したとき、本発明のコンストラクトから産生されたキメラタンパク質が、MHC II経路によりプロセシングを受けているか決定するために、一連の実験を実施して、CryJ2タンパク質に対する免疫応答を比較した。結果を、
図10のパネルA及びBに示す。
【0114】
より詳細には、図は、4種のDNA免疫及び粗花粉抽出物感作による、CryJ2特異的な応答を示す。第0、7、14、及び21日目に、マウス群(n=5)を、CRYJ2−LAMPプラスミドDNA又はCRYJ2プラスミド(
図8を参照されたい)DNAのいずれかにより皮下感作した。最後のDNA感作から6週間(77日間)後、マウスは粗花粉のミョウバン中抽出物により感作し、3週間(91日間)後に追加免疫した。データは、各時点でプールした血清から生成された値を示す。CRYJ2−LAMP DNAの免疫を受けたマウスにおけるIgG1(パネルA)及びIgG2a(パネルB)応答は、第112日まで高濃度で維持され、LAMPを含まないCRYJ2プラスミドDNAの免疫を受けたマウスを良好に上回った。したがって、本発明に従うコンストラクトの手法によるアレルゲン送達は、本発明のコンストラクトを含まないアレルゲン送達と比較して優れたMHC II応答を提供する。
【0115】
実施例4:投与量の論拠−投与濃度の異なるコンストラクト及びベクター単独に対する免疫応答の比較
図11は、IgG2a産物及びIgG1産物の両方を異なる濃度で投与した4種のDNA免疫後のCryJ2特異的応答を示す。マウス群(n=5)には、第0、7、14、及び21日目に、10μg、50μg、又は100μgのCRYJ2−LAMPプラスミドDNA又はベクターDNAのいずれかを筋肉内投与した。最後のDNA免疫から3週間後、マウスを屠殺し、サイトカイン誘導アッセイのため脾臓を摘出した。
【0116】
データは、各ワクチン投与に関しプールした血清から生成された値を示す。全3種の濃度のCRYJ2−LAMPプラスミドDNAによりIgG1及びIgG2a応答が得られた。50μgでの投与で最も強い抗体応答が得られることが判明した。いずれの濃度でも、ベクター単独では、何ら抗体応答は誘導されなかった。これらのデータは、免疫応答の惹起には用量依存性の応答が存在し、免疫応答の少なくとも一部はMHC II型応答であることを示す。
【0117】
実施例5:MHC II経路を介する免疫応答を示す更なるデータ
この一連の実験では、刺激した脾臓細胞の上清中のサイトカイン分泌は、マーカーとしてIL−4及びIFN−γを使用して求めた。具体的には、第42日目にマウス(n=3)脾臓細胞を採取し、10μg/mL、5μg/mL、2.5μg/mLの存在下で、又はrCRYJ2の比存在下で培養した。無感作のマウス由来の脾臓細胞を陰性対照として使用した。rCRYJ2刺激した脾細胞のIF−4及びIFN−γ濃度は、pg/mLでEFISAにより測定した。
【0118】
データを、
図12のパネルA及びBに示す。データは、50μgのCRYJ2−LAMPプラスミドDNAを免疫したマウスは、低投与量のプラスミドDNAにより免疫されたものと比較して、IFN−γ(MHC II免疫応答経路の活性化について確立されているバイオマーカー)の発現が著しく高かったことを示す。MHC I経路について確立されているバイオマーカーであるIF−4濃度に関しては、いずれの群においても観察された応答は非常にわずかであった。IF−5に関しても、観察された場合にも応答はごくわずかであった(データ不掲載)。組み換えCry J2タンパク質による刺激後、IFN−γが産生され及びIF−4は産生されなかったことに示されるとおり、これらの結果は、Cry J2−LAMP DNA免疫がTh1記憶細胞の補充を誘導し、Th2細胞に関しては誘導しなかったことを意味する。
【0119】
実施例6:予めCryJ2により感作したマウスにおいてCryJ2−LAMP DNAワクチンを用いる免疫の治療効果の試験
DNA−LAMP−CryJ2ワクチンの治療効果を試験するため、マウス群(n=5)に、5μgのrCRYJ2組み換えタンパク質を3回注射して感作し、4週間後から、CRYJ2−LAMPプラスミドDNAを、間隔を一週間ずつ(7日間)開けて4回注射し処置した。DNA免疫により、IgG2aの追加免疫効果が誘導され、IgG1抗体が一過性に増加したことから、DNAワクチンのTh1誘導性の調節効果が示される。追加して、第167日目及び第174日目の2回DNAを免疫することにより、CRYJ2特異的なIgG2a応答が追加免疫され、かつIgG1応答においては、ほとんど変化はなかった。マウスの視認試験により、肉体的な困難性又は皮膚反応は存在しないことが明らかとなった。同様に、食欲において変化は見られず、あるいは明らかな嗜眠も見られなかった。IgG1及びIgG2aの力価に対する影響を、それぞれ
図13のパネルA及びBに示す。
【0120】
実施例7:マウス脾細胞培養におけるIFN−γ及びIL−4の誘導
サイトカイン誘導に関しCryJ2−LAMP DNAワクチンの治療効果も試験した。第183日めにマウス(n=3)の脾細胞を採取し、濃度を変えてrCRYJ2により刺激した。無感作のマウス由来の脾臓細胞を陰性対照として使用した。rCRYJ2刺激した脾細胞のIL−4及びIFN−γ濃度は、pg/mLでELISAにより測定した。CRYJ2−LAMPワクチン投与群において、ベクター群と比較して、IFN−γの著しい発現増加が検出された。しかしながら、IL−4発現はベクター群と差は見られなかった。Cry 12−LAMP DNA免疫の結果、IFN−γが増加することは、抗原特異的Th1細胞の補充及びTh1サイトカイン環境の生成に関与する可能性がある。この実験により得られたデータを、
図14、パネルA及びBに示す。
【0121】
実施例8:血清中の循環Cry J2タンパク質の検出
Cry J2タンパク質、pDNA−Cry J2(LAMP不含有)及びCry 12−LAMP−vaxによりマウスを免疫した。第0、1、2、3、4、及び7日目に血清サンプルを採取し、感受性のサンドイッチイムノアッセイにおいて、遊離のCry J2タンパク質の存在を評価した。タンパク質及びLAMP不含有免疫において遊離のCry J2が検出された。しかしながら、Cry J2−LAMP−vax免疫マウスを用いる任意の実験におけるいずれの時点においても、遊離アレルゲンは検出されなかった(検出限界2ng/mL)。これらの上清が示すデータを
図12に提供する。
【0122】
本発明に従うLAMPワクチンは、アレルギーを治療するものの遊離のアレルゲンを患者の全身にもたらすことのない、唯一の製剤である。これは、アレルゲンが全身にもたらされることに起因してアナフィラキシー反応を時折生じさせる、従来の免疫療法剤とは異なる。本実験は、Cry J2−LAMP DNAプラスミドを投与したマウスは、遊離のCry J2タンパク質を有しておらず、したがってタンパク質単独又はCry J2 DNA(LAMP不含有)を投与したマウスに見られるような、体循環への放出がないことを示す。
【0123】
実施例9:DNAワクチンのモルモットにおける効果
その他の哺乳動物における、本発明の核酸コンストラクトの機能に関する化学的な理解を深めるために、CryJ2−LAMP DNAワクチンを免疫した後、組み換えCryJ2タンパク質に暴露した雌性モルモットで試験を実施した。試験結果を
図16、パネルA及びBに示す。
【0124】
具体的には、第0、7、及び14日目に、100μgのCRYJ2−LAMP DNAワクチン又はベクター単独を雌性モルモットに筋肉内注射した。第14日目の最後のDNAワクチン免疫から4週間後、モルモットに、10μg/mLのrCRYJ2タンパク質/ミョウバンを第42日目及び第49日目に皮下注射した。第0、21、35、63、及び77日目にモルモットから血清サンプルを得た。データは、CRYJ2−LAMP DNAを投与したモルモットの平均吸光度は、第35日目までの間、IgG2に関しわずかに増加し、あるいはIgG1に関しては変化がなかったことを示す。IgG2aの増加は、Th1偏向性の応答で典型的に見られるものと一致する。
【0125】
実施例10:その他の哺乳動物における更なる調査−毒性データにより安全性が示された
ニュージーランド白色種ウサギに、4.128mgのCRYJ2−LAMP DNAを筋肉内注射した。年齢及び性別を一致させた対照ウサギには生理食塩水のみを投与した。ウサギは第1、14、28、42、及び56日目に免疫した。第1、14、28、42、56、58、及び85日目にウサギから血清サンプルを得た。CryJ2−LAMPプラスミド又は生理食塩水の複数回筋肉内注射後1:100希釈したウサギ血清の平均吸光度を
図17に示す。図に見られるとおり、データは、生理食塩水を投与したウサギの平均吸光度は0.100未満であることを示す。CRYJ2−LAMP DNAによる処置群のウサギの吸光度は、一般的に、第42日目まで増加し、一部の場合では、第85日目まで増加した。
【0126】
実施例11:食品アレルギーに対する適用性
直近25年をかけて、落花生アレルギー患者における感作をもとに、8種の重大な落花生アレルゲンを同定した。3種の主要な落花生アレルゲンは、ほとんど共通して落花生アレルギー患者のIgEにより認識され、65〜100%はAra h1(63.5kDaの種子貯蔵タンパク質ビシリンファミリータンパク質)を認識し、71〜100%はAra h2(17kDaの種子貯蔵コングルチニンファミリータンパク質)を認識し、45〜95%はAra h3(14kDaの種子貯蔵グリシニンファミリータンパク質)を認識する。これらの3種のタンパク質は、落花生依存性アレルギー応答及び即時型過敏反応を誘引する一般的な原因となるだけでなく、強力なアレルギー応答を促進することも明白である。落花生アレルギーの免疫療法のための基盤としてこれらのアレルゲンを標的とすることには、多様な落花生アレルギー集団の中でも強力なアレルギー応答からの広範な保護をもたらす可能性がある。現在、アレルギーの免疫療法剤として、低アレルギー性の形態の、3種の主要なアレルゲン及び加熱殺菌細菌アジュバントを使用する、第I相臨床試験が実施中である。この試験は進行中であるものの、製造プロセスが非常に複雑であることに起因して、このような治療法の最終的な商業化には課題がある。
【0127】
食品アレルギー、及び特に落花生アレルギーの発症に対処するため、本発明に従う核酸コンストラクトを創出した。上記の通りのコンストラクトを
図6Aに示し、コードされるキメラタンパク質の概略を
図6Bに示す。このコンストラクトは、投与された対象において主にMHC II応答をもたらすために使用できる。単一のキメラタンパク質において最も一般的な3種の落花生アレルゲンを存在させることで、集団における落花生アレルギーのほとんど大部分を治療する広範な免疫が可能である。
【0128】
コンストラクトを発現させ、得られた結果を
図18に示す。
図19は、全3種のアレルゲンを発現させることができ、これらはウェスタンブロットにおいて単一のポリタンパク質として検出されたことをを示す。
【0129】
本発明の実施において及び核酸コンストラクトの作成において、本発明の範囲又は趣旨から逸脱せずに、各種実施形態及びその変形をなすことができることは当業者には明白であろう。本発明の他の実施形態は、本発明の明細書及び実施に照らして判断することで、当業者には明白となろう。明細書及び実施例は例示のみを目的とするものであり、本発明の正確な範囲及び趣旨は以降の特許請求の範囲により示される。
【0130】
配列リスト用の更なる配列
本出願の一部として提供される公式の配列リストに提供される配列に加えて、以降の配列が本開示の一部を構成する:
1.Cry1−Cry2−LAMPキメラコンストラクトのコード領域のヌクレオチド配列は次のとおりである。
【0131】
2.he Ara H1/H2/h3ポリタンパク質のコード領域の核酸配列:
【0132】
2.Ara H1/H2/H3ポリタンパク質キメラコンストラクトのコード領域のアミノ酸配列は次のとおりである: